説明

表面弾性波デバイスおよび集積回路

【課題】入力信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタを接続することなく、表面弾性波を励振することができる表面弾性波デバイスおよび該表面弾性波デバイスを有する集積回路を提供することにある。
【解決手段】トランスバーサルフィルタ10は、サファイア基板11と、GaNからなる伝搬層12と、GaNと比較して広いバンドギャップを持つAlGaNからなるバリア層13と、バリア層13の表面に形成された一対の櫛形電極16a、16bとを有する。更に、一対の櫛形電極16a、16b間にゲート電極16を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性を有する半導体材料からなる伝搬層上に櫛形電極を形成した表面弾性波デバイス(SAWデバイス)および該表面弾性波デバイスを有する集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面弾性波デバイスについて、その一種であるトランスバーサルフィルタを例として説明する。図6は、従来のトランスバーサルフィルタ50の構造図で、図6(a)はトランスバーサルフィルタ50の平面図、図6(b)はトランスバーサルフィルタ50を矢視DDから見た断面図である。
【0003】
図6に示すように、トランスバーサルフィルタ50は、サファイア基板51上に、不純物を積極的に含まないGaNからなる伝搬層52が形成されている。更に、伝搬層52上に、不純物を積極的に含まないAlGaNからなるバリア層53が形成されている。AlGaNは、GaNと比較して広いバンドギャップを有する窒化物系半導体材料である。また、伝搬層52とバリア層53は、積層構造54を形成している。そして、バリア層53の表面上に、櫛形電極56a、56bからなる第一のすだれ状電極56および櫛形電極57a、57bからなる第二のすだれ状電極57が形成されている。更に、図6に示すように、櫛形電極56aは、コンデンサCとインダクタンスLからなるフィルタが接続され、更に当該フィルタに高周波(RF)信号源(入力信号源)と負のバイアス電圧源が接続されている。当該フィルタは高周波信号(入力信号)と負のバイアス電圧を電気的に分離するために設けられている。また、櫛形電極57aは、コンデンサCとインダクタンスLからなるフィルタが接続され、更に当該フィルタに図示しない出力回路と負のバイアス電圧源が接続されている。当該フィルタは高周波信号と負のバイアス電圧を電気的に分離するために設けられている。一方、櫛形電極56b、57bは接地されている。
【0004】
図7は、図6に示す従来のトランスバーサルフィルタ50の第一のすだれ状電極56の拡大図である。第一のすだれ状電極56は、NiAuからなる櫛形電極56a、56bから構成されている。櫛形電極56a、56bは、所定の電極長および線幅hを有する電極指58が、電極指ピッチTを隔てて、複数配列されて形成されている。また、櫛形電極56a、56bは、配列間隔sを隔てて配置されている。よって、電極指ピッチTは2×(線幅h+配列間隔s)に等しくなる。同様に、第二のすだれ状電極57も、NiAuからなる櫛形電極57a、57bから構成されている。櫛形電極57a、57bも、所定の電極長および線幅hを有する電極指58が、電極指ピッチTを隔てて、複数配列されて形成されている。同様に、櫛形電極57a、57bは、配列間隔sを隔てて配置されている。よって、電極指ピッチTは2×(線幅h+配列間隔s)に等しくなる。更に、トランスバーサルフィルタ50の第一のすだれ状電極56および第二のすだれ状電極57は、所定の間隔をおいて対向する位置に配置されている。これより、第一のすだれ状電極56に高周波信号を印加することで、表面弾性波を励振させている。表面弾性波は、伝搬層52を伝搬し、第二のすだれ状電極57で高周波信号に変換される。その後、高周波信号は、上記のフィルタを介して、図示しない出力回路に出力される。
【0005】
図8は、図6に示すトランスバーサルフィルタ50のバンドダイアグラムである。図6では、負のバイアス電圧を印加していない状態と、負のバイアス電圧を印加した状態の櫛形電極56a-56b間のバンドダイアグラムを示している。ここで、バリア層53の表面は、通常はIII族元素面からなることが知られている。その結果、負のバイアス電圧が印加されていない場合、窒化物系半導体材料の圧電性およびGaNとAlGaNとの格子定数の相違により、伝搬層52とバリア層53のヘテロ界面付近、すなわち、接合面付近に二次元電子ガス55(図6(b)および図8のP部参照)が形成される。そのため、負のバイアス電圧が印加されていない場合、二次元電子ガス55により、高周波信号により発生した電界はすべて遮蔽され、伝搬層52中に進入するのは困難である。このため、表面弾性波を励振させることができなかった。すなわち、トランスバーサルフィルタ50としての機能は実現されていなかった。
【0006】
そこで、第一のすだれ状電極56において、櫛形電極56aに負のバイアス電圧を印加し、櫛形電極56bを接地する。これにより、両櫛形電極56a、56b間には、負のバイアス電圧による電界が発生するので、二次元電子ガス55を櫛形電極56a直下の領域(図8のQ部参照)から櫛形電極56b直下の領域(図8のR部参照)に移動させ、櫛形電極56a直下の領域を空乏化させている。櫛形電極56a直下の領域を空乏化させることで、高周波信号により発生した電界を伝搬層52内に進入させて、表面弾性波を励振・伝搬させている。また、負のバイアス電圧を調整することで、二次元電子ガス55の移動を制御し、伝搬層52に進入する電界の強度を変更し、表面弾性波の強度を変調している。同様に、第二のすだれ状電極57においても、櫛形電極57aに負のバイアス電圧を印加し、櫛形電極57bを接地する。これにより、二次元電子ガス55を櫛形電極57a直下の領域から櫛形電極57b直下の領域に移動させ、櫛形電極57a直下の領域を空乏化させている。
【0007】
ここで、第一のすだれ状電極56に入力される高周波信号の波長が、上述した電極指ピッチTに等しいとき、表面弾性波が最も効率良く励振されることが知られている。この場合、励振される表面弾性波の速度v0とすると、表面弾性波の中心周波数f0は、第一のすだれ状電極56の電極指ピッチT、電極指58の線幅h、配列間隔sから、f0=v0/T=v0/{2(h+s)}と表される。すなわち、電極指ピッチTに等しい波長を持つ高周波信号を第一のすだれ状電極56に入力することで、中心周波数f0の表面弾性波を最も効率良く励振させて、第二のすだれ状電極57へ伝搬させることができる。第二のすだれ状電極57においても、負のバイアス電圧が印加されて櫛形電極57a直下の領域が空乏化されていることから、中心周波数f0の表面弾性波は効率よく高周波信号に変換され出カされる。一方、中心周波数f0から離れる程、表面弾性波の伝搬効率が低下する。この特性により、中心周波数f0以外の周波数を著しく減衰させることができ、トランスバーサルフィルタ50としての機能を実現している。
【0008】
逆に、櫛形電極56a、57aを接地し、櫛形電極56b、57bに正のバイアス電圧を印加した場合、二次元電子ガス55は櫛形電極56a、57a直下の領域から櫛形電極56b、57b直下の領域に移動する。これから、伝搬層52の櫛形電極56a、57a直下の領域を空乏化させている。更に、バイアス電圧に重畳して高周波信号を第一のすだれ状電極56に印加することにより、高周波信号により発生した電界は伝搬層52中に進入する。従って、上記と同様に、表面弾性波の励振・伝搬が実現される。すなわち、従来のトランスバーサルフィルタ50では、第一のすだれ状電極56に印加される正或いは負のバイアス電圧によって励振・伝搬される表面弾性波の強度が変調され、トランスバーサルフィルタ50としての機能が制御される。また、バイアス電圧を所定の周波数で変化させることにより、表面弾性波に振幅変調を加えている。なお、従来のトランスバーサルフィルタ50では、サファイア基板51上の有限の厚さを有する積層構造54において表面弾性波が励振されることから、同一の形状の櫛形電極によって、伝搬速度が異なる、すなわち、周波数が異なる複数の表面弾性波のモードを励振させている。
【非特許文献1】Voltage Controlled SAW filters on 2DEG AlGaN/GaN heterostructures(2004 IEEE MTT-S Digest PP.387-390).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のトランスバーサルフィルタ50では、図6に示したように、表面弾性波を励振させるために第一のすだれ状電極56に印加する高周波信号と、表面弾性波の強度を制御するバイアス電圧とを同一の櫛形電極56aに印加する構造とし、更に、伝搬層52を伝搬した表面弾性波に基づいて第二のすだれ状電極57から出力される出力信号と、二次元電子ガス55を移動させるバイアス電圧とを同一の櫛形電極57aに印加する構造としていることから、高周波信号とバイアス電圧を電気的に分離するバイアスティなどのフィルタが必要であるといった問題があった。
【0010】
また、バイアス電圧を所定の変調周波数によって変調し、表面弾性波に振幅変調を加える場合、振幅変調を行う周波数に応じてフィルタの特性を設定する必要があった。
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、入力信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタを接続することなく、表面弾性波を励振することができる表面弾性波デバイスおよび該表面弾性波デバイスを有する集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的達成のため、本発明に係る表面弾性波デバイスでは、基板と、第一の半導体材料からなる伝搬層と、前記第一の半導体材料と比較して広いバンドギャップを持つ第二の半導体材料からなるバリア層と、前記バリア層の表面に形成された一対の櫛形電極と、を備える表面弾性波デバイスにおいて、前記一対の櫛形電極間にゲート電極を形成することを特徴としている。
【0013】
また、請求項2に記載のように、請求項1に記載の表面弾性波デバイスにおいて、前記伝搬層は、(0001)方向に配向する前記第一の窒化物系半導体材料から形成され、前記バリア層は、(0001)方向に配向する前記第二の窒化物系半導体材料から形成され、前記バリア層の前記表面は、III族元素面であることを特徴としている。
【0014】
また、請求項3に記載のように、請求項1に記載の表面弾性波デバイスにおいて、前記伝搬層は、(11−20)方向に配向する前記第一の窒化物系半導体材料から形成され、前記バリア層は、(11−20)方向に配向する前記第二の窒化物系半導体材料にn型不純物を積極的に添加させて形成され、前記櫛形電極は、該櫛形電極の電極指の配列方向を(0001)方向と整合させて形成されることを特徴としている。
【0015】
また、請求項4に記載の集積回路は、請求項1〜3のいずれかに記載の表面弾性波デバイスと、該表面弾性波デバイスと同一積層構造にオーミック特性を有するソース電極、ドレイン電極およびショットキ特性を有するゲート電極を形成することにより構成される電界効果型トランジスタを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、入力信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタを接続することなく、表面弾性波を励振させることができる。
【0017】
また、振幅変調を行う周波数に応じて、入力信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタの特性を設定することなく、表面弾性波の振幅変調を実現することができる。
【0018】
また、(11−20)方向に配向する第一の窒化物系半導体材料からなる伝搬層を形成し、(11−20)方向に配向する第二の窒化物系半導体材料にn型不純物を積極的に添加させてバリア層を形成し、櫛形電極の電極指の配列方向を(0001)方向と整合させて櫛形電極を形成したときは、高周波信号と表面弾性波との間の変換効率(電気機械結合常数)をより高くすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の第1乃至第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10乃至30について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る表面弾性波デバイスの一種であるトランスバーサルフィルタ10の構造図で、図1(a)はトランスバーサルフィルタ10の平面図、図1(b)はトランスバーサルフィルタ10を矢視AAから見た断面図である。
【0021】
図1に示すように、トランスバーサルフィルタ10は、(0001)方向に配向するサファイア基板11上に、同じく(0001)方向に配向する不純物を積極的には含まない第一の窒化物系半導体材料であるGaNからなる伝搬層12が形成されている。更に、(0001)方向に配向する不純物を積極的には含まない第二の窒化物系半導体材料であるAlGaNからなるバリア層13が伝搬層12上に形成されている。AlGaNは、GaNと比較して広いバンドギャップを有する窒化物系半導体材料である。伝搬層12とバリア層13は積層構造14を形成している。トランスバーサルフィルタ10の伝搬層12の厚さは2μm、バリア層13の厚さは20nmである。
【0022】
積層構造14の表面、すなわち、バリア層13の表面は、III族元素面からなり、従来のトランスバーサルフィルタ50と同様に、伝搬層12を形成するGaNの圧電性およびGaN−AlGaN間の格子定数の相違により伝搬層12とバリア層13のヘテロ界面付近、すなわち、接合面付近に二次元電子ガス15が形成されている。また、バリア層13の表面上には、第一のすだれ状電極16および第二のすだれ状電極17が、所定の間隔をおいて対向する位置に配置されている。第一のすだれ状電極16は、例えば、厚さ100nmのアルミニウムからなる櫛形電極16a、16bから構成されている。また、櫛形電極16aに入力信号である高周波(RF)信号が印加され、櫛形電極16bは接地されている。なお、図1(b)では、バイアス電圧が印加されていない状態の二次元電子ガス15を示している。
【0023】
ここで、櫛形電極16a、16bは、従来のトランスバーサルフィルタ50と同様に、所定の電極長、線幅hを有する電極指が電極指ピッチTを隔てて、複数配列されて形成されている。また、櫛形電極16a、16bは、配列間隔sを隔てて配置されている。これから、電極指ピッチTは2×(線幅h+配列間隔s)に等しくなる。第一のすだれ状電極16に入力される高周波信号の波長が、電極指ピッチTに等しいとき、表面弾性波が最も効率良く励振される。そこで、励振される表面弾性波の速度v0とすると、表面弾性波の中心周波数f0は、第一のすだれ状電極16の電極指ピッチT、電極指の線幅h、配列間隔sから、f0=v0/T=v0/{2(h+s)}と表すことができる。すなわち、電極指ピッチTに等しい波長を持つ高周波信号を第一のすだれ状電極16に入力することで、中心周波数f0の表面弾性波を最も効率良く励振させることができ、第二のすだれ状電極17へ伝搬させることができる。一方、中心周波数f0から離れる程、表面弾性波の伝搬効率が低下することから、中心周波数f0以外の周波数を著しく減衰させることができ、トランスバーサルフィルタ10としての機能を実現している。
【0024】
また、第二のすだれ状電極17は、第一のすだれ状電極16と同様に、例えば、厚さ100nmのアルミニウムからなる櫛形電極17a、17bから構成されている。また、櫛形電極17aに図示しない出力回路が接続され、櫛形電極17bは接地されている。第一のすだれ状電極16と同様に、櫛形電極17a、17bは、所定の電極長、線幅hを有する電極指が電極指ピッチTを隔てて、複数配列されて形成されている。櫛形電極17a、17bは配列間隔sを隔てて、配置されている。これから、電極指ピッチTは2×(線幅h+配列間隔s)に等しくなる。第二のすだれ状電極17に伝搬される高周波信号の波長が、電極指ピッチTに等しいとき、上記の中心周波数f0の表面弾性波が出力信号に最も効率良く変換される。このようにして、第一のすだれ状電極16から伝搬した表面弾性波は、第二のすだれ状電極17で出力信号に変換される。その後、当該出力信号は図示しない出力回路に出力される。
【0025】
しかし、トランスバーサルフィルタ10では、伝搬層12とバリア層13のヘテロ界面付近、すなわち、接合面付近に二次元電子ガス15が形成されているので、第一のすだれ状電極16に入力された高周波信号により発生した電界は、二次元電子ガス15によって、すべて遮蔽される。すなわち、上記の電界における伝搬層12への進入が困難となる。よって、伝搬層12で表面弾性波が励振されない。また、表面弾性波が励振し、第二のすだれ状電極17に伝搬したとしても、表面弾性波による電界が二次元電子ガス15によって遮蔽されるので、表面弾性波が変換されない。
【0026】
そこで、図1に示したように、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10では、櫛形電極16a、16b間で、櫛形電極16a、16bから等間隔隔てた位置に、ミアンダ状のゲート電極16cを形成している。更に、ゲート電極16cに負のバイアス電圧を印加している。なお、ゲート電極16cは、例えば厚さ100nm、線幅hのアルミニウムからなる。同様に、櫛形電極17a、17b間で、櫛形電極17a、17bから等間隔隔てた位置に、ミアンダ状のゲート電極17cを形成している。更に、ゲート電極17cに負のバイアス電圧を印加している。なお、ゲート電極17cも、例えば厚さ100nm、線幅hのアルミニウムからなる。
【0027】
図2は、図1に示す第一のすだれ状電極16における電気力線19a、19bを示す図である。図2(a)は、ゲート電極16cにバイアス電圧を印加しない状態の電気力線19aを示す図、図2(b)は、ゲート電極16cに負のバイアス電圧を印加した状態の電気力線19bを示す図である。ここで、上述したように、第一のすだれ状電極16の櫛形電極16aに高周波信号を印加し、櫛形電極16bを接地している。
【0028】
上述したように、ゲート電極16cにバイアス電圧が印加されていない状態では、伝搬層12とバリア層13のヘテロ界面付近に二次元電子ガス15が形成されているため、第一のすだれ状電極16に入力された高周波信号により発生した電界(電気力線19a)は二次元電子ガス15によって、すべて遮蔽される。すなわち、上記の電界(電気力線19a)における伝搬層12への進入が困難となる。その結果、高周波信号の周波数の値に依拠することなく、伝搬層12中に表面弾性波が励振されることはない。よって、ゲート電極16cに負のバイアス電圧が印加されていない状態では、トランスバーサルフィルタ10としての動作は実現されない。一方、図2(b)に示すように、ゲート電極16cに負のバイアス電圧を印加すると、伝搬層12の櫛形電極16a−ゲート電極16c間には、負のバイアス電圧による電界が発生する。また、櫛形電極16b−ゲート電極16c間にも、負のバイアス電圧による電界が発生する。上記の電界によって、ゲート電極16c直下の二次元電子ガス15は、櫛形電極16a直下の領域および櫛形電極16b直下の領域へ移動する。これにより、ゲート電極16c直下の領域が空乏化する。すなわち、櫛形電極16a直下の領域および櫛形電極16b直下の領域だけに二次元電子ガス15は存在する。
【0029】
よって、ゲート電極16cに負のバイアス電圧を印加することで、ゲート電極16c直下の領域を空乏化することができ、第一のすだれ状電極16の櫛形電極16aに入力された高周波信号により発生した電界(電気力線19b)を伝搬層12に進入させることができる。従って、表面弾性波が励振され、第二のすだれ状電極17に伝搬させることができる。ゲート電極17cにも負のバイアス電圧が印加されていれば、上記の表面弾性波を出力信号に変換することができ、図示しない出力回路に出力信号を出力できる。このとき、櫛形電極16aに入力された高周波信号の波長が電極指ピッチTと一致すると、トランスバーサルフィルタ10は上記の高周波信号を中心周波数f0の表面弾性波に、最も効率良く変換することができる。同様に、トランスバーサルフィルタ10は、第二のすだれ状電極17に伝搬された上記の表面弾性波を出力信号に、最も効率良く変換することができる。一方、中心周波数f0から離れる程、表面弾性波の伝搬効率が低下することから、中心周波数f0以外の周波数を著しく減衰させることができ、トランスバーサルフィルタ10としての機能を実現することができる。
【0030】
更に、トランスバーサルフィルタ10では、高周波信号を印加・出力する電極(櫛形電極16a、17a)とバイアス電圧を印加する電極(ゲート電極16c)を異なる構成としていることから、高周波信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタを接続することなく、表面弾性波を励振・変換することができる。これから、回路構成を簡略化することもできる。更に、サファイア基板11上の有限の厚さを有する伝搬層12において表面弾性波が励振されることから、同一の形状の第一のすだれ状電極16によって、伝搬速度、すなわち、周波数が異なる複数の表面弾性波のモードを励振させることができる。
【0031】
また、伝搬層12に進入する電界の強度は、ゲート電極16c直下の二次元電子ガス15の濃度によって決定される。これは、伝搬層12に励振される表面弾性波の強度が、上記の二次元電子ガス15の濃度によることを意味する。そして、上記の二次元電子ガス15の濃度は、図2(a)、(b)に示したように、ゲート電極16cに印加される負のバイアス電圧値によって決定される。よって、ゲート電極16cに印加される負のバイアス電圧値を変調することで、二次元電子ガス15の濃度を変調でき、伝搬層12を伝搬する表面弾性波の強度も変調でき、更に、第二のすだれ状電極17で変換される出力信号の強度も変調することができる。よって、バイアス電圧を所定の周波数を伴って変調することにより、振幅変調を行う周波数に応じて、高周波信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタの特性を設定することなく、表面弾性波の振幅変調を実現することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ20について、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10と異なる点を中心に図3および図4を参照して説明する。また、第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ20について、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10と同様の構造には同じ番号を付し、説明を省略する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ20の構造図、図3(a)はトランスバーサルフィルタ20の平面図、図3(b)はトランスバーサルフィルタ20を矢視BBから見た断面図である。
【0033】
図3に示すように、トランスバーサルフィルタ20は、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10と同様に、サファイア基板11上に伝搬層12が、伝搬層12上にバリア層13が形成されている。伝搬層12とバリア層13は積層構造14を形成している。また、伝搬層12とバリア層13のヘテロ界面付近に二次元電子ガス15が形成されている。更に、バリア層13の表面上には、櫛形電極16a、16bからなる第一のすだれ状電極16および櫛形電極17a、17bからなる第二のすだれ状電極17が配置されている。櫛形電極16aに高周波信号が印加され、櫛形電極16bは接地されている。櫛形電極17aに図示しない出力回路が接続され、櫛形電極17bは接地されている。また、櫛形電極16a、16b間で、櫛形電極16a、16bから等間隔隔てた位置に、ミアンダ状のゲート電極16cが形成されている。同様に、櫛形電極17a、17b間で、櫛形電極17a、17bから等間隔隔てた位置に、ミアンダ状のゲート電極17cが形成されている。更に、ゲート電極16c、17cに正のバイアス電圧が印加されている。なお、図3(b)では、バイアス電圧が印加されていない状態の二次元電子ガス15を示している。
【0034】
第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ20が、第1の実施形態と異なる点は、ゲート電極16c、17cに正のバイアス電圧が印加されていることだけである。これから、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10と同様の効果を取得することができる。また、第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ20では、第1の実施形態と異なり、ゲート電極16c、17cに正のバイアス電圧が印加されているが、後述するように、二次元電子ガス15をゲート電極16c、17c直下の領域に移動させることができる。これから、櫛形電極16aに入力された高周波信号により発生した電界(図4の電気力線29参照)を伝搬層12に進入させることができる。更に、第二のすだれ状電極17に伝搬した表面弾性波を出力信号に変更することができる。
【0035】
図4は、図3に示す第一のすだれ状電極16おける電気力線29を示す図である。図4に示すように、ゲート電極16cに正のバイアス電圧を印加すると、伝搬層12の櫛形電極16a−ゲート電極16c間には、正のバイアス電圧による電界が発生する。また、櫛形電極16b−ゲート電極16c間にも、正のバイアス電圧による電界が発生する。上記の電界によって、櫛形電極16a、16b直下の二次元電子ガス15は、ゲート電極16c直下の領域へ移動する。これにより、櫛形電極16a直下の領域および櫛形電極16b直下の領域が空乏化する。すなわち、ゲート電極16c直下の領域だけに二次元電子ガス15は存在する。よって、ゲート電極16cに正のバイアス電圧を印加することで、櫛形電極16a直下の領域および櫛形電極16b直下の領域を空乏化することができ、第一のすだれ状電極16の櫛形電極16aに入力された高周波信号により発生した電界(電気力線29)を伝搬層12に進入させることができる。従って、表面弾性波が励振され、第二のすだれ状電極17に伝搬される。以上より、ゲート電極16cに正のバイアス電圧が印加された場合でも、第1の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10と同様の効果を取得することができる。
【0036】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ30の構造図、図5(a)はトランスバーサルフィルタ30の平面図、図5(b)はトランスバーサルフィルタ30を矢視CCから見た断面図である。
【0037】
図5に示すように、トランスバーサルフィルタ30は、(11−20)方向に配向するサファイア基板31上に、同じく(11−20)方向に配向する不純物を積極的には含まない第一の窒化物系半導体材料であるGaNからなる伝搬層32が形成されている。更に、(11−20)方向に配向するn型不純物を積極的に添加した窒化物系半導体材料であるAlGaNからなるバリア層33が伝搬層32上に形成されている。AlGaNは、GaNと比較して広いバンドギャップを有する窒化物系半導体材料である。伝搬層32とバリア層33は積層構造34を形成している。トランスバーサルフィルタ30の伝搬層32の厚さは2μm、バリア層33の厚さは20nmである。また、バリア層33に添加されたn型不純物の作用により、伝搬層32とバリア層33のヘテロ界面付近、すなわち、接合面付近に二次元電子ガス35が形成されている。なお、図5(b)では、バイアス電圧が印加されていない状態の二次元電子ガス35を示している。
【0038】
バリア層33の表面上には、第一のすだれ状電極36および第二のすだれ状電極37が所定の間隔をおいて配置されている。第一のすだれ状電極36は、例えば、厚さ100nmのアルミニウムからなる櫛形電極36a、36bから構成されている。櫛形電極36a、36bは、櫛形電極36a、36bの電極指の配列方向を(0001)方向と整合させて形成されている。また、櫛形電極36aに高周波(RF)信号が印加され、櫛形電極36bは接地されている。
【0039】
ここで、櫛形電極36a、36bは、従来のトランスバーサルフィルタ50と同様に、所定の電極長、線幅hを有する電極指が電極指ピッチTを隔てて、複数配列されて形成されている。なお、第3の実施形態において、櫛形電極36a、36bの電極指の配列方向は、(0001)方向と整合する。すなわち、高周波信号によって励振された表面弾性波は、(0001)方向に伝搬する。
【0040】
更に、櫛形電極36a、36bは、配列間隔sを隔てて配置されている。これから、電極指ピッチTは2×(線幅h+配列間隔s)に等しくなる。第一のすだれ状電極36に入力される高周波信号の波長が、電極指ピッチTに等しいとき、表面弾性波が最も効率良く励振される。そこで、励振される表面弾性波の速度v0とすると、表面弾性波の中心周波数f0は、第一のすだれ状電極36の櫛形電極36a、36bの電極指ピッチT、電極指の線幅h、配列間隔sから、f0=v0/T=v0/{2(h+s)}と表すことができる。すなわち、電極指ピッチTに等しい波長を持つ高周波信号を第一のすだれ状電極36に入力することで、中心周波数f0の表面弾性波を最も効率良く励振させることができ、第二のすだれ状電極37へ伝搬させることができる。一方、中心周波数f0から離れる程、表面弾性波の伝搬効率が低下することから、中心周波数f0以外の周波数を著しく減衰させることができ、トランスバーサルフィルタ30としての機能を実現している。
【0041】
また、第二のすだれ状電極37は、第一のすだれ状電極36と同様に、例えば、厚さ100nmのアルミニウムからなる櫛形電極37a、37bから構成されている。櫛形電極37a、37bは、第一のすだれ状電極36と同様に、櫛形電極37a、37bの電極指の配列方向を(0001)方向と整合させて、形成されている。また、櫛形電極37aに図示しない出力回路が接続され、櫛形電極37bは接地されている。第一のすだれ状電極36と同様に、櫛形電極37a、37bは、所定の電極長、線幅hを有する電極指が電極指ピッチTを隔てて、複数配列されて形成されている。なお、櫛形電極37a、37bの電極指の配列方向も、(0001)方向と整合する。
【0042】
更に、櫛形電極37a、37bは配列間隔sを隔てて、配置されている。これから、電極指ピッチTは2×(線幅h+配列間隔s)に等しくなる。第二のすだれ状電極37に伝搬される高周波信号の波長が、電極指ピッチTに等しいとき、上記の中心周波数f0の表面弾性波が出力信号に最も効率良く変換される。このようにして、第一のすだれ状電極36から伝搬した表面弾性波は、第二のすだれ状電極37で出力信号に変換される。その後、当該出力信号は図示しない出力回路に出力される。
【0043】
しかし、トランスバーサルフィルタ30では、伝搬層32とバリア層33のヘテロ界面付近、すなわち、接合面付近に二次元電子ガス35が形成されているので、第一のすだれ状電極36に入力された高周波信号により発生した電界は、二次元電子ガス35によって、すべて遮蔽される。すなわち、上記の電界における伝搬層32への進入が困難となる。よって、伝搬層32で表面弾性波が励振されない。また、表面弾性波が励振し、第二のすだれ状電極37に伝搬したとしても、表面弾性波による電界が二次元電子ガス35によって遮蔽されるので、表面弾性波が変換されない。
【0044】
そこで、図5に示したように、第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ30では、櫛形電極36a、36b間で、櫛形電極36a、36bから等間隔隔てた位置に、ミアンダ状のゲート電極36cを形成している。更に、ゲート電極36cに負のバイアス電圧を印加している。なお、ゲート電極36cは、例えば厚さ100nm、線幅hのアルミニウムからなる。同様に、櫛形電極37a、37b間で、櫛形電極37a、37bから等間隔隔てた位置に、ミアンダ状のゲート電極37cを形成している。更に、ゲート電極37cに負のバイアス電圧を印加している。なお、ゲート電極37cは、例えば厚さ100nm、線幅hのアルミニウムからなる。よって、ゲート電極36cに負のバイアス電圧を印加しているので、第1の実施形態と同様に、伝搬層32の櫛形電極36a−ゲート電極36c間には、負のバイアス電圧による電界が発生する。また、櫛形電極36b−ゲート電極36c間にも、負のバイアス電圧による電界が発生する。上記の電界によって、ゲート電極36c直下の二次元電子ガス35は、櫛形電極16a直下の領域および櫛形電極16b直下の領域へ移動するので、櫛形電極36a直下の領域および櫛形電極36b直下の領域だけに二次元電子ガス35が集中し、ゲート電極36c直下の領域を空乏化させることができる。
【0045】
これから、ゲート電極36c直下の領域が空乏化するので、第一のすだれ状電極36の櫛形電極36aに入力された高周波信号により発生した電界を伝搬層32に進入させることができる。従って、表面弾性波が励振され、第二のすだれ状電極37に伝搬させることができる。ゲート電極37cにも負のバイアス電圧が印加されていれば、上記の表面弾性波を出力信号に変換することができ、図示しない出力回路に出力信号を出力できる。このとき、櫛形電極36aに入力された高周波信号の波長が電極指ピッチTと一致すると、トランスバーサルフィルタ30は上記の高周波信号を中心周波数f0の表面弾性波に、最も効率良く変換することができる。同様に、トランスバーサルフィルタ30は、第二のすだれ状電極37に伝搬された上記の表面弾性波を出力信号に、最も効率良く変換することができる。一方、中心周波数f0から離れる程、表面弾性波の伝搬効率が低下することから、中心周波数f0以外の周波数を著しく減衰させることができ、トランスバーサルフィルタ30としての機能を実現することができる。
【0046】
更に、トランスバーサルフィルタ30では、高周波信号を印加・出力する電極(櫛形電極36a、37a)とバイアス電圧を印加する電極(ゲート電極36c)を異なる構成としていることから、高周波信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタを接続することなく、表面弾性波を励振することができる。これから、回路構成を簡略化することもできる。更に、サファイア基板31上の有限の厚さを有する伝搬層32において表面弾性波が励振されることから、同一の形状の第一のすだれ状電極36によって、伝搬速度、すなわち、周波数が異なる複数の表面弾性波のモードを励振させることができる。
【0047】
また、伝搬層32に進入する電界の強度は、ゲート電極36c直下の二次元電子ガス35の濃度によって決定される。これは、伝搬層32に励振される表面弾性波の強度が、上記の二次元電子ガス35の濃度によることを意味する。そして、上記の二次元電子ガス35の濃度は、第1の実施形態と同様に、ゲート電極36cに印加される負のバイアス電圧値によって決定される。よって、ゲート電極36cに印加される負のバイアス電圧値を変調することで、二次元電子ガス35の濃度を変調でき、伝搬層32を伝搬する表面弾性波の強度も変調でき、更に、第二のすだれ状電極37で変換される出力信号の強度も変調することができる。よって、バイアス電圧を所定の周波数を伴って変調することにより、振幅変調を行う周波数に応じて、高周波信号とバイアス電圧を電気的に分離するフィルタの特性を設定することなく、表面弾性波の振幅変調を実現することができる。
【0048】
また、第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ30は、第1の実施形態と異なり、(11−20)方向に配向するサファイア基板31上に形成された、(11−20)方向に配向する不純物を積極的には含まないGaNからなる伝搬層32上に、(11−20)方向に配向するn型不純物を積極的に添加したAlGaNからなるバリア層33が形成されている。更に、櫛形電極36a、36b、37aおよび37bの電極指の配列方向を(0001)方向と整合させて、伝搬層32を伝搬する表面弾性波が(0001)方向に伝搬するように、櫛形電極36a、36b、37aおよび37bをバリア層33上に形成している。これにより、表面弾性波の伝搬方向を(0001)方向とすることで、(0001)面内方向の場合と比較して、高周波信号と表面弾性波との変換効率(電気機械結合常数)をより高くすることができる。同様に、表面弾性波と出力信号との変換効率(電気機械結合常数)もより高くすることができる。よって、より高い電気機械結合常数を持つトランスバーサルフィルタ30を提供することができる。
【0049】
なお、以上に述べた実施形態は、本発明の実施の一例であり、本発明の範囲はこれらに限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、他の様々な実施形態に適用可能である。例えば、第1、第2および第3の実施形態では、トランスバーサルフィルタ10、20、30について、本発明に係る構造を適用したが、特にこれに限定されるものでなく、他の表面弾性波デバイス、例えば共振器にも適用可能である。また、本発明の第1、第2および第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10、20、30中のいずれか一つと、当該トランスバーサルフィルタと同一の積層構造の表面にオーミック特性を有するソース電極、ドレイン電極およびショットキ特性を有するゲート電極が形成されて構成された電界効果型トランジスタと、を備えた集積回路を形成することも可能である。
【0050】
また、第1、第2および第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10、20、30では、第一の窒化物系半導体材料としてGaNを使用して、伝搬層12、32を形成しているが、特にこれに限定されるものでなく、窒化物系半導体材料であれば、他の材料で伝搬層を形成することもできる。
【0051】
また、第1および第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10、20では、第二の窒化物系半導体材料としてAlGaNを使用して、AlGaNに積極的に不純物を添加しないでバリア層13を形成しているが、特にこれに限定されるものでなく、窒化物系半導体材料であれば、他の材料でバリア層13を形成することもできる。
【0052】
また、第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ30では、第二の窒化物系半導体材料としてAlGaNを使用して、AlGaNにn型不純物を積極的に添加してバリア層33を形成しているが、特にこれに限定されるものでなく、窒化物系半導体材料であれば、他の材料でバリア層33を形成することもできる。
【0053】
また、第1および第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10、20では、(0001)方向に配向するサファイア基板11上に積層構造14を形成しているが、特にこれに限定されるものでなく、(0001)の面方位を有する他の基板、例えば、半絶縁性SiC基板上に積層構造14を形成しても良い。
【0054】
また、第1、第2および第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10、20、30では、一組のすだれ状電極をバリア層13、33の表面上に形成しているが、特にこれに限定されるものでなく、数組のすだれ状電極をバリア層の表面上に形成しても良い。
【0055】
また、第1、第2および第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10、20、30に形成されたゲート電極16c、17c、36cおよび37cは、ミアンダ状の電極であるが、特にこれに限定されるものでなく、他の構造の電極であっても良い。例えば、エアブリッジ構造を用いることにより、マルチフィンガ型の電極とすることも可能である。
【0056】
また、第1および第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ10、20では、櫛形電極16aに高周波信号を印加し、櫛形電極16bを接地しているが、特にこれに限定されるものでなく、櫛形電極16aを接地しても良い。同様に、櫛形電極17aに図示しない出力回路を接続し、櫛形電極16bを接地しているが、櫛形電極17aを接地しても良い。更に、第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタ30でも、櫛形電極36aに高周波信号を印加し、櫛形電極16bを接地しているが、櫛形電極36aを接地しても良い。同様に、櫛形電極37aに図示しない出力回路を接続し、櫛形電極36bを接地しているが、櫛形電極37aを接地しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表面弾性波デバイスの一種であるトランスバーサルフィルタの構造図である。
【図2】図1に示す第一のすだれ状電極おける電気力線を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るトランスバーサルフィルタの構造図である。
【図4】図3に示す第一のすだれ状電極おける電気力線を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るトランスバーサルフィルタの構造図である。
【図6】従来のトランスバーサルフィルタの構造図である。
【図7】図6に示す従来のトランスバーサルフィルタの第一のすだれ状電極の拡大図である。
【図8】図6に示すトランスバーサルフィルタのバンドダイアグラムである。
【符号の説明】
【0058】
10 トランスバーサルフィルタ、11 サファイア基板、12 伝搬層、
13 バリア層、14 積層構造、15 二次元電子ガス、
16 第一のすだれ状電極、16a、16b 櫛形電極、
16c ゲート電極、17 第二のすだれ状電極、
17a、17b 櫛形電極、17c ゲート電極、
19a、19b 電気力線、20 トランスバーサルフィルタ、
29 電気力線、30 トランスバーサルフィルタ、
31 サファイア基板、32 伝搬層、33 バリア層、34 積層構造、
35 二次元電子ガス、36 第一のすだれ状電極、
36a、36b 櫛形電極、36c ゲート電極、
37 第二のすだれ状電極、37a、37b 櫛形電極、
37c ゲート電極、
50 従来のトランスバーサルフィルタ、51 サファイア基板、
52 伝搬層、53 バリア層、54 積層構造、55 二次元電子ガス、
56 第一のすだれ状電極、56a、56b 櫛形電極、
57 第二のすだれ状電極、57a、57b 櫛形電極、58 電極指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、第一の半導体材料からなる伝搬層と、前記第一の半導体材料と比較して広いバンドギャップを持つ第二の半導体材料からなるバリア層と、前記バリア層の表面に形成された一対の櫛形電極と、を備える表面弾性波デバイスにおいて、
前記一対の櫛形電極間にゲート電極を形成することを特徴とする表面弾性波デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の表面弾性波デバイスにおいて、
前記伝搬層は、(0001)方向に配向する前記第一の窒化物系半導体材料から形成され、
前記バリア層は、(0001)方向に配向する前記第二の窒化物系半導体材料から形成され、
前記バリア層の前記表面は、III族元素面であることを特徴とする表面弾性波デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の表面弾性波デバイスにおいて、
前記伝搬層は、(11−20)方向に配向する前記第一の窒化物系半導体材料から形成され、
前記バリア層は、(11−20)方向に配向する前記第二の窒化物系半導体材料にn型不純物を積極的に添加させて形成され、
前記櫛形電極は、該櫛形電極の電極指の配列方向を(0001)方向と整合させて形成されることを特徴とする表面弾性波デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の表面弾性波デバイスと、該表面弾性波デバイスと同一積層構造にオーミック特性を有するソース電極、ドレイン電極およびショットキ特性を有するゲート電極を形成することにより構成される電界効果型トランジスタを備えることを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−288313(P2007−288313A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110721(P2006−110721)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】