説明

表面形状認識センサ装置

【課題】容量検出領域内にインピーダンス検出ユニットを配置して生体判定を行う場合でも、表面形状認識率の低下を抑制する。
【解決手段】データ補填部50により、A/D変換部27からの凹凸データ27Aのうちインピーダンス検出ユニット30の配置領域に隣接する容量検出ユニット20の配置位置の凹凸データに基づいて、選択列のうち配置領域の行範囲における凹凸データ27Aを補填する補填データを生成し、凹凸データ50Sとして行セレクタ28へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認識技術に関し、特に被検体から指紋などの生体情報を検出して個人認識を行う際に、その被検体が生体か否かを判定する表面形状認識技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体から指紋などの生体情報を検出して個人認識を行う表面形状認識センサ装置において、その被検体が生体か否かを判定する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
図11は、従来の表面形状認識センサ装置の概観図である。図12は、従来の表面形状認識センサ装置の概略構成を示すブロック図である。図13は、従来の表面形状認識センサ装置の全体構成を示すブロック図である。
【0003】
この表面形状認識センサ装置10のセンサアレイ4には、表面形状検出用の複数の容量検出ユニット20が対となる検出素子1Aとともに格子状(行列マトリクス状)に配置されている。容量検出ユニット20は、被検体9の表面形状との間に生じた容量を、対となる検出素子1Aで検出し、表面形状の凹凸に応じた値を示す容量信号20Sを出力する機能を有している。制御部25、列セレクタ26、A/D変換部27、および行セレクタ28は、各容量検出ユニット20とともに、表面形状検出部2を構成する回路部である。
【0004】
表面形状検出部2は、制御部25および列セレクタ26から各容量検出ユニット20を列単位で順に走査し、各容量検出ユニット20で得られた容量信号20SをA/D変換部27で凹凸データ27SへA/D変換した後、行セレクタ28でこれら凹凸データ27Sを行単位で順に選択することにより、被検体9の表面形状を示す2次元の表面形状データ2Sを生成して出力する。
【0005】
表面形状認識センサ装置10では、容量検出ユニット20のうちのいずれか1つ、図13の例では、センサアレイ4の中央に配置されている容量検出ユニット20に代えて、生体認識用のインピーダンス検出ユニット30が対となる検出素子1Bとともに配置されている。インピーダンス検出ユニット30は、対となる検出素子1Bを介して被検体9と電気的に接触することにより、被検体9のインピーダンスを検出し、そのインピーダンスに応じた検出信号30Sを出力する。A/D変換部35および生体判定部36は、インピーダンス検出ユニット30とともに、生体認識部3を構成する回路部である。
【0006】
生体認識部3は、インピーダンス検出ユニット30から出力された検出信号30Sを、A/D変換部35でA/D変換し、得られた判定データ35Sに基づいて生体判定部36で被検体9が生体か否かを判定し、その判定結果を生体認識結果3Sとして出力する。
【0007】
【特許文献1】国際公開番号:WO2005/019767A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来の表面形状認識センサ装置10のように、センサアレイ4のうち、格子状に配置された容量検出ユニット20の一部に代えて、インピーダンス検出ユニット30を配置した場合、このインピーダンス検出ユニット30が配置されている領域では、被検体9の表面形状の凹凸に対応した容量を検出できない。このため、前述した従来の表面形状認識センサ装置10では、インピーダンス検出ユニット30が配置されている領域の表面形状データ2Sを、指紋の凸部すなわち隆線部を示す領域に固定的に置換している。
【0009】
図14は、従来の表面形状認識センサ装置で取得した指紋画像例(要部)である。ここでは、表面形状認識センサ装置10において、インピーダンス検出ユニット30が配置されている領域のすべてが、指紋の凸部すなわち隆線部を示す黒に置換されている。
表面形状認識動作において、図14に示すように、インピーダンス検出ユニット30の領域が、指紋の谷部線と重なった場合、通常では、凹部を示す白が出力されるべきインピーダンス検出ユニット30の領域が、凸部を示す黒に置換される。
【0010】
したがって、表面形状認識センサ装置10からは、インピーダンス検出ユニットの領域を挟んで隣接する2つの隆線部が、インピーダンス検出ユニットの領域により繋がった表面形状データ2Sが表面形状検出部2から出力されてしまう。このため、このような隆線部の繋がり部分を指紋の特徴として捉えて認識処理を行うような場合には、表面形状認識率が低下する原因となるという問題があった。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、容量検出領域内にインピーダンス検出ユニットを配置して生体判定を行う場合でも、表面形状認識率の低下を抑制することができる表面形状認識センサ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明にかかる表面形状認識センサ装置は、格子状に配置された第1の検出素子ごとに設けられ、被検体との間に生じた容量を当該第1の検出素子で検出し、その値を示す容量信号をそれぞれ出力する複数の容量検出ユニットと、容量検出ユニットのうち列方向に並ぶ容量検出ユニットを結ぶ複数の制御線と、容量検出ユニットのうち行方向に並ぶ容量検出ユニットを結ぶ複数のデータ線と、制御線のいずれか1つを順次選択することにより当該制御線に接続された容量検出ユニット列を選択する列セレクタと、容量検出ユニットのいずれかに代えて、第2の検出素子とともに配置され、当該第2の検出素子を介して被検体と電気的に接触することにより被検体のインピーダンスを検出し、そのインピーダンスに応じた検出信号を出力するインピーダンス検出ユニットと、インピーダンス検出ユニットからの検出信号に基づき被検体が生体であるか否かを判定する生体判定部と、列セレクタにより選択された選択列の容量検出ユニットから当該データ線に出力された容量信号を、当該選択列における被検体表面形状を示す凹凸データにA/D変換してそれぞれ出力するA/D変換部と、A/D変換部からの凹凸データのうちインピーダンス検出ユニットの配置領域に隣接する容量検出ユニットの配置位置の凹凸データに基づいて、選択列のうち配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成し、列セレクタにより選択された選択列が配置領域の列範囲に含まれる場合には、当該選択列のうち配置領域の行範囲に対応するA/D変換部からの凹凸データに代えて補填データを出力し、当該選択列が配置領域の列範囲に含まれない場合には、当該選択列のうち配置領域の行範囲に対応するA/D変換部からの凹凸データを出力するデータ補填部と、列セレクタにより容量検出ユニット列が選択されるごとに、A/D変換部から出力された凹凸データとデータ補填部から出力された凹凸データとを、列方向に1つずつ順次選択することにより、被検体の表面形状を示す表面形状データとして出力する行セレクタとを備えている。
【0013】
この際、データ補填部に、選択列のうち配置領域に対して列方向に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、当該選択列のうち配置領域の行範囲に対応する補填データをそれぞれ生成して出力する列データ処理部と、当該選択列が配置領域の列範囲に含まれる場合には、列データ処理部からの補填データを選択出力するとともに、当該選択列が配置領域の列範囲に含まれない場合には、A/D変換部からの凹凸データを選択出力するセレクタとを設けてもよい。
【0014】
また、データ補填部に、配置領域の行範囲に含まれる容量検出ユニット行ごとに設けられて、当該容量検出ユニット行のうち配置領域の列範囲における凹凸データを補填する補填データを生成して出力する行データ補填部を設け、行データ補填部に、配置領域に対して行方向に隣接する容量検出ユニット列が列セレクタにより選択された場合に、A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持するレジスタと、レジスタで保持された凹凸データに基づいて、当該容量検出ユニット行のうち配置領域の列範囲に対応する補填データをそれぞれ生成して出力する行データ処理部と、列セレクタで選択された選択列が配置領域の列範囲に含まれる場合には、行データ処理部からの補填データのうち当該選択列に対応する補填データを選択出力するとともに、当該選択列が配置領域の列範囲に含まれない場合には、A/D変換部からの凹凸データのうち当該容量検出ユニット行に対応する凹凸データを選択出力するセレクタとを設けてもよい。
【0015】
また、データ補填部に、列セレクタで選択された選択列のうち配置領域に対して列方向に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、当該選択列のうち配置領域の行範囲の容量検出ユニット行に対応する列補填データをそれぞれ生成して出力する列データ処理部と、配置領域の行範囲に含まれる容量検出ユニット行ごとに設けられて、当該容量検出ユニット行のうち配置領域の列範囲における凹凸データを補填する補填データを生成して出力する行データ補填部とを設け、行データ補填部に、配置領域に対して行方向に隣接する容量検出ユニット列が列セレクタにより選択された場合に、列データ処理部からの列補填データのうち当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持するレジスタと、レジスタで保持された凹凸データに基づいて、当該容量検出ユニット行のうち配置領域の列範囲に対応する補填データをそれぞれ生成して出力する行データ処理部と、列セレクタで選択された選択列が配置領域の列範囲に含まれる場合には、行データ処理部からの補填データのうち当該選択列に対応する補填データを選択出力するとともに、当該選択列が配置領域の列範囲に含まれない場合には、A/D変換部からの凹凸データのうち当該容量検出ユニット行に対応する凹凸データを選択出力するセレクタとを設けてもよい。
【0016】
また、列データ処理部で、選択列のうち配置領域に対して列方向に隣接するいずれか一方の容量検出ユニット行の凹凸データを、当該選択列のうち配置領域の行範囲に対応する各補填データとして出力するようにしてもよい。
【0017】
また、列データ処理部で、選択列のうち配置領域に対して列方向に隣接する2つの容量検出ユニット行の凹凸データの平均値を、当該選択列のうち配置領域の行範囲に対応する各補填データとして出力するようにしてもよい。
【0018】
また、列データ処理部で、選択列のうち配置領域に対して列方向に隣接する2つの容量検出ユニット行の凹凸データから特定した近似関数に基づき、当該選択列のうち配置領域の行範囲に対応する各補填データを算出して出力するようにしてもよい。
【0019】
また、レジスタで、配置領域に対して行方向に隣接するいずれか一方の容量検出ユニット列が列セレクタにより選択された場合に、A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持し、行データ処理部で、レジスタで保持された凹凸データを、当該容量検出ユニット行のうち配置領域の列範囲に対応する各補填データとして出力するようにしてもよい。
【0020】
また、レジスタで、配置領域に対して行方向に隣接する2つの容量検出ユニット列が列セレクタにより個別に選択された場合に、A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを、当該容量検出ユニット列ごとに個別に保持し、行データ処理部で、レジスタで個別に保持された容量検出ユニット列ごとの2つの凹凸データの平均値を、当該容量検出ユニット行のうち配置領域の列範囲に対応する各補填データとして出力するようにしてもよい。
【0021】
また、レジスタで、配置領域に対して行方向に隣接する2つの容量検出ユニット列が列セレクタにより個別に選択された場合に、A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを、当該容量検出ユニット列ごとに個別に保持し、行データ処理部で、レジスタで個別に保持された容量検出ユニット列ごとの2つの凹凸データから特定した近似関数に基づき、当該容量検出ユニット行のうち配置領域の列範囲に対応する各補填データを算出して出力するようにしてもよい。
【0022】
また、データ補填部に、配置領域の行範囲に含まれる容量検出ユニット行ごとに設けられて、当該容量検出ユニット行のデータ線に出力された容量信号の変化に応じて、A/D変換部から出力された当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持して出力するレジスタを設けてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、インピーダンス検出ユニットの配置領域に隣接する容量検出ユニットの配置位置の凹凸データに基づいて、被検体の実際の表面形状に近しい表面形状データを生成することができる。したがって、容量検出領域内にインピーダンス検出ユニットを配置して生体判定を行う場合でも、インピーダンス検出ユニットの配置領域において推定した凹凸データに起因する表面形状認識率の低下を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
この表面形状認識センサ装置100は、指の指紋などの微細な凹凸を有する被検体の照合対象表面の形状と照合データと比較照合することにより被検体の認証を行う表面形状認識装置において、被検体の表面形状を検出する回路装置として用いられる。
表面形状認識センサ装置100の概観や概略構成は、前述した従来の表面形状認識センサ装置10で示した図11および図12と同等である。なお、以下では、前述した図11〜13と同じまたは同等部分について、同一符号を用いて説明する。
【0026】
表面形状認識センサ装置100には、前述した図11に示すように、LSIチップの上に2次元(アレイ状や格子状)に配置された多数の微細な検出素子1(1A,1B)を有するセンサアレイ4が設けられている。
この表面形状認識センサ装置100のセンサ面8に指など被検体9を接触させることにより、その被検体9の表面、ここでは指紋の凹凸形状がそれぞれの検出素子1を介して個別に検出され、被検体9の表面形状を示す表面形状データが出力される。
【0027】
図1に示すように、センサアレイ4には、表面形状検出用の複数の容量検出ユニット20が対となる検出素子(第1の検出素子)1Aとともに2次元(アレイ状や格子状)に配置されている。また、容量検出ユニット20のうちのいずれか、図1の例では格子状に配置されたセンサアレイ4の中央に配置されているm行×n列分の容量検出ユニット20に代えて、生体認識用のインピーダンス検出ユニット30が対となる検出素子(第2の検出素子)1Bとともに配置されている。
【0028】
この表面形状認識センサ装置100には、図12と同様に、機能ブロックとして、検出素子1A,1B、表面形状検出部2、および生体認識部3が設けられている。
表面形状検出部2には、主な回路として、容量検出ユニット20のほか、制御部25、列セレクタ26、A/D変換部27、および行セレクタ28が設けられている。
また、生体認識部3には、主な回路として、インピーダンス検出ユニット30のほか、A/D変換部35、および生体判定部36が設けられている。
【0029】
表面形状認識センサ装置100は、全体として1つのチップから構成されており、基板上のうち、センサアレイ4内の各検出素子1A,1Bに対応する位置に、各容量検出ユニット20およびインピーダンス検出ユニット30が形成され、その上側に層間絶縁膜を介して各検出素子1A,1Bが形成されている。また、制御部25、列セレクタ26、A/D変換部27、行セレクタ28、およびデータ補填部50や、A/D変換部35および生体判定部36は、容量検出ユニット20やインピーダンス検出ユニット30が形成されている領域の周部、すなわち基板上の周辺空き領域に形成されている。
【0030】
各容量検出ユニット20のうち、列方向(上下方向)に並ぶ各容量検出ユニット20は、当該列に対応する制御線26Lを介して列セレクタ26にそれぞれ接続されている。また、行方向(左右方向)に並ぶ各容量検出ユニット20は、当該行に対応するデータ線20Lを介してA/D変換部27にそれぞれ接続されている。また、インピーダンス検出ユニット30は、個別制御線25Lを介して制御部25に接続されているとともに、個別データ線30Lを介してA/D変換部35に接続されている。
【0031】
表面形状認識センサ装置100は、センサ面8に載置された指など被検体9の表面形状を検出する際、表面形状検出部2により、被検体9から検出した被検体9との間の容量を示す容量信号に基づき、被検体9の表面形状を示す2次元の表面形状データ2Sを生成して出力するとともに、生体認識部3により、被検体9から検出したインピーダンスに基づき、被検体9が生体か否かを示す生体認識結果3Sを出力する。
【0032】
この際、表面形状検出部2は、列セレクタ26で、制御部25からのアドレス信号25Aおよび容量検出制御信号25Bに基づき、制御線26Lのいずれか1つを順に選択することにより、各容量検出ユニット20を列単位で、例えば図1のセンサアレイ4において左から右へ、順に走査する。各容量検出ユニット20は、上記選択に応じて対応する制御線26Lに列セレクト信号26Sが出力された場合、検出素子1Aと被検体9との間の容量を検出し、その容量を示す容量信号20Sをそれぞれのデータ線20Lへ出力する。
【0033】
A/D変換部27は、データ線20Lを介して入力された容量信号20Sを、被検体9の表面形状を示す凹凸データ27SにA/D変換して出力する。このうち凹凸データ27Aは、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の行範囲m行に配置された容量検出ユニット20からの凹凸データであり、A/D変換部27からデータ補填部50を介して行セレクタ28へ入力される。一方、凹凸データ27Sのうち凹凸データ27A以外の凹凸データは、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の行範囲以外の行に配置されたその他の容量検出ユニット20からの凹凸データであり、A/D変換部27から行セレクタ28へ入力される。
【0034】
データ補填部50は、インピーダンス検出ユニット30と隣接する容量検出ユニット20からの凹凸データに基づいて、列セレクタ26により選択された選択列のうちインピーダンス検出ユニット30の配置領域の行範囲m行における凹凸データを補填する補填データを生成する。また、データ補填部50は、列セレクタ26により選択された選択列が、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列に含まれる場合には、凹凸データ27Aに代えて上記補填データからなる凹凸データ50Sを行セレクタ28へ出力し、当該選択列が列範囲n列に含まれない場合には凹凸データ27Aからなる凹凸データ50Sを行セレクタ28へ出力する。
【0035】
行セレクタ28は、列セレクタ26により容量検出ユニット20の列が選択されるごとに、A/D変換部27から出力された凹凸データ27A以外の凹凸データ27Sと、データ補填部50から出力された凹凸データ50Sとを、容量検出ユニット20の列方向に1つずつ順次選択することにより、被検体9の表面形状を示す表面形状データ2Sを生成して出力する。
【0036】
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。このデータ補填部50には、列データ処理部51Aとm個のセレクタ51Bとが設けられている。
列データ処理部51Aは、凹凸データ27Sのうち、インピーダンス検出ユニット30の上下(列方向)に隣接する容量検出ユニット20の行の凹凸データ27B,27Cを入力とし、この凹凸データ27B,27Cから凹凸データ27Aに相当するm行分の補填データを生成して出力する。
【0037】
セレクタ51Bは、インピーダンス検出ユニット30の配置行に対応してそれぞれ設けられており、列セレクタ26からの列セレクト信号26Aにより、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列内のいずれかの列が選択された場合には、列データ処理部51Aで生成された補填データを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力し、列セレクト信号26A以外の列セレクト信号26Sにより、列範囲n列以外の列が選択された場合には、A/D変換部27からの凹凸データ27Aを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力する。
【0038】
列データ処理部51Aにおける凹凸データの補填方法として、インピーダンス検出ユニット30の上下に隣接する容量検出ユニット20の2つの行の凹凸データ27B,27Cの両方を演算処理することにより、凹凸データ27Aに相当するm行分の補填データを算出する方法がある。
【0039】
図3は、凹凸データの補填方法を示す説明図である。ここでは、横軸が容量検出ユニット20の位置を示し、縦軸がそれぞれの容量検出ユニット20で検出された凹凸データ27Sの画素値(階調値)を示している。列データ処理部51Aでの補填動作の場合、横軸が列セレクタ26により選択され任意の列の凹凸データ27Sの検出位置となる。すなわち、隣接容量検出ユニットBが、インピーダンス検出ユニット30の上側に隣接する容量検出ユニットに相当し、その画素値Pbが凹凸データ27Bに相当する。また、隣接容量検出ユニットCが、インピーダンス検出ユニット30の下側に隣接する容量検出ユニットに相当し、その画素値Pcが凹凸データ27Cに相当する。
【0040】
図3の補填方法は、インピーダンス検出ユニット30に隣接する2つの容量検出ユニット20の画素値Pb,Pcの平均値を算出し、この平均値をインピーダンス検出ユニット30の領域における凹凸データ27Aの画素値Paとして用いる方法である。したがって、この補填方法を列データ処理部51Aでの補填動作に適用した場合、列セレクタ26で選択された列ごとに、凹凸データ27Bと凹凸データ27Cの平均値が補填データとして各セレクタ51Bへ出力されることになる。
【0041】
図4は、凹凸データの他の補填方法を示す説明図であり、横軸および縦軸は図3と同様である。この補填方法は、インピーダンス検出ユニット30に隣接する2つの容量検出ユニット20の画素値Pb,Pcから、これら画素値Pb,Pcを直線で結ぶ近似関数式を特定し、この近似関数式に基づきインピーダンス検出ユニット30の領域における個々の凹凸データ27Aの画素値Paを求める方法である。したがって、この補填方法を列データ処理部51Aでの補填動作に適用した場合、列セレクタ26で選択された列ごとに、関数式により当該列の位置に応じた画素値が算出されて補填データとして各セレクタ51Bへ出力されることになる。なお、上記近似関数式は直線を示す線形式に限定されるものではなく、曲線式や階段式など、他の関数式を用いてもよい。
【0042】
また、列データ処理部51Aにおける凹凸データの他の補填方法として、凹凸データ27Sのうち、インピーダンス検出ユニット30の上側に隣接する容量検出ユニット20の行の凹凸データ27Bのみを入力とし、この凹凸データ27Bを凹凸データ27Aに相当するm行分の補填データとして出力する方法がある。この際、インピーダンス検出ユニット30の下側に隣接する容量検出ユニット20の行の凹凸データ27Cを、凹凸データ27Aに相当するm行分の補填データとして出力してもよい。
【0043】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、データ補填部により、A/D変換部からの凹凸データのうちインピーダンス検出ユニットの配置領域に隣接する容量検出ユニットの配置位置の凹凸データ、例えば配置領域の上下に隣接する容量検出ユニットの配置位置の凹凸データに基づいて、選択列のうち配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成するようにしたので、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データが、その周囲の凹凸データ、例えば当該選択列の上下に隣接する凹凸データに応じて変化する。
【0044】
このため、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データとして、すべて凸部を示す領域に固定的に置換した場合と比較して、被検体の実際の表面形状に近しい表面形状データを生成することができる。したがって、容量検出領域内にインピーダンス検出ユニットを配置して生体判定を行う場合でも、インピーダンス検出ユニットの配置領域において推定した凹凸データに起因する表面形状認識率の低下を抑制することが可能となる。
【0045】
[第2の実施の形態]
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置について説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。なお、本実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成については、データ補填部50が異なるものの、その他の構成については第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0046】
第1の実施の形態では、表面形状認識センサ装置100のデータ補填部50において、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の上下(列方向)に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成する場合を例として説明した。本実施の形態では、データ補填部50において、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左右(行方向)に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成する場合について説明する。
【0047】
図5のデータ補填部50には、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の行範囲m行に含まれる行ごとに行データ補填部52が設けられている。行データ補填部52は、当該容量検出ユニット20の行のうち、配置領域の左右(行方向)に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、配置領域の列範囲n列における凹凸データを補填する補填データを生成して出力する。
【0048】
行データ補填部52には、レジスタ52A,52B、行データ処理部52C、およびセレクタ52Dが設けられている。
レジスタ52Aは、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左側の列を選択する列セレクト信号26Bに応じて、凹凸データ27Aのうち当該行に対応する凹凸データを保持する。
レジスタ52Bは、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の右側の列を選択する列セレクト信号26Cに応じて、凹凸データ27Aのうち当該行に対応する凹凸データを保持する。
【0049】
行データ処理部52Cは、レジスタ52Aとレジスタ52Bで保持された2つの凹凸データに基づき、当該行のうちインピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列に対応する凹凸データを補填する補填データを生成する。
セレクタ52Dは、列セレクタ26からの列セレクト信号26Aにより、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列内のいずれかの列が選択された場合には、行データ処理部52Cで生成された補填データを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力し、列セレクト信号26A以外の列セレクト信号26Sにより、列範囲n列以外の列が選択された場合には、A/D変換部27からの凹凸データ27Aを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力する。
【0050】
行データ処理部52Cにおける凹凸データの補填方法として、インピーダンス検出ユニット30の左右に隣接する容量検出ユニット20の2つの列の凹凸データ27Aの両方を演算処理することにより、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列に対応する凹凸データの補填データを算出する方法がある。
具体的には、前述した図3のように、レジスタ52A,52Bで保持された2つの凹凸データの画素値の平均値を算出し、この平均値をインピーダンス検出ユニット30の領域における凹凸データを補填する補填データとして用いる方法がある。また、前述した図4のように、レジスタ52A,52Bで保持された2つの凹凸データの画素値から特定した近似関数式に基づき補填データを求める方法もある。
【0051】
また、行データ処理部52Cにおける凹凸データの他の補填方法として、レジスタ52A,52Bのいずれか一方のみを設け、このレジスタで保持されたインピーダンス検出ユニット30の配置領域の左側または右側の列の凹凸データを、インピーダンス検出ユニット30の領域における個々の凹凸データ27Aに相当するm行分の補填データとして出力してもよい。
【0052】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、データ補填部において、インピーダンス検出ユニットの配置領域の左右(行方向)に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成するようにしたので、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データが、その左右の列に隣接する凹凸データに応じて変化する。
【0053】
このため、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データとして、被検体の実際の表面形状に近しい表面形状データを生成することができる。したがって、容量検出領域内にインピーダンス検出ユニットを配置して生体判定を行う場合でも、インピーダンス検出ユニットの配置領域において推定した凹凸データに起因する表面形状認識率の低下を抑制することが可能となる。
【0054】
[第3の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置について説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。なお、本実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成については、データ補填部50が異なるものの、その他の構成については第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0055】
第2の実施の形態では、表面形状認識センサ装置100のデータ補填部50において、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左右(行方向)に隣接する容量検出ユニット列の凹凸データに基づいて、配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成する場合を例として説明した。本実施の形態では、データ補填部50において、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左右(行方向)に隣接する容量検出ユニット列のうち、配置領域の上下(列方向)に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成する場合について説明する。
【0056】
図6のデータ補填部50には、列データ処理部54とm個の行データ補填部53が設けられている。
列データ処理部54は、凹凸データ27Sのうち、インピーダンス検出ユニット30の上下(列方向)に隣接する容量検出ユニット20の行の凹凸データ27B,27Cを入力とし、この凹凸データ27B,27Cから凹凸データ27Aに相当するm行分の列補填データを生成して出力する。
【0057】
行データ補填部53は、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の行範囲m行に含まれる行ごとに設けられており、当該容量検出ユニット20の行のうち、列データ処理部54からの列補填データに基づいて、配置領域の列範囲n列における凹凸データを補填する補填データを生成して出力する。
【0058】
行データ補填部53には、レジスタ53A,53B、行データ処理部53C、およびセレクタ53Dが設けられている。
レジスタ53Aは、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左側の列を選択する列セレクト信号26Bに応じて、列データ処理部54からの列補填データのうち当該行に対応する凹凸データを保持する。これにより、レジスタ53Aには、配置領域の左側に隣接する列のうち配置領域の上側と下側の行の凹凸データから生成された列補填データが、当該行における配置領域の左側に隣接する列の凹凸データとして保持される。
【0059】
レジスタ53Bは、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の右側の列を選択する列セレクト信号26Cに応じて、列データ処理部54からの列補填データのうち当該行に対応する凹凸データを保持する。これにより、レジスタ53Aには、列データ処理部54により、配置領域の右側に隣接する列のうち配置領域の上側と下側の行の凹凸データから生成された列補填データが、当該行における配置領域の右側に隣接する列の凹凸データとして保持される。
【0060】
行データ処理部53Cは、レジスタ53Aとレジスタ53Bで保持された2つの凹凸データに基づき、当該行のうちインピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列に対応する凹凸データを補填する補填データを生成する。
セレクタ53Dは、列セレクタ26からの列セレクト信号26Aにより、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列内のいずれかの列が選択された場合には、行データ処理部53Cで生成された補填データを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力し、列セレクト信号26A以外の列セレクト信号26Sにより、列範囲n列以外の列が選択された場合には、A/D変換部27からの凹凸データ27Aを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力する。
【0061】
列データ処理部54における凹凸データの補填方法としては、第1の実施の形態で説明した補填方法と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
また、行データ処理部53Cにおける凹凸データの補填方法としては、第2の実施の形態で説明した補填方法と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0062】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、データ補填部において、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左右(行方向)に隣接する容量検出ユニット列のうち、配置領域の上下(列方向)に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成するようにしたので、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データが、配置領域の左右上下の角に隣接する凹凸データに応じて変化する。
【0063】
このため、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データとして、被検体の実際の表面形状に近しい表面形状データを生成することができる。したがって、容量検出領域内にインピーダンス検出ユニットを配置して生体判定を行う場合でも、インピーダンス検出ユニットの配置領域において推定した凹凸データに起因する表面形状認識率の低下を抑制することが可能となる。
【0064】
[第4の実施の形態]
次に、図7を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置について説明する。図7は、本発明の第4の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成を示すブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。なお、本実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成については、データ補填部50が異なるものの、その他の構成については第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0065】
第2の実施の形態では、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左側に隣接する列の凹凸データを補填データとして用い、列セレクタ26からの列セレクト信号26Aに基づき凹凸データ50Sとして出力する例について説明した。本実施の形態では、インピーダンス検出ユニット30の配置行m行に対応する容量検出ユニット20からデータ線20Lに出力される容量信号の変化に応じて、A/D変換部27からの凹凸データ27Aを順次保持し、保持した凹凸データ27Aを凹凸データ50Sとして出力する場合について説明する。
【0066】
容量検出ユニット20からデータ線20Lに出力される容量信号は、列セレクタ26で新たな列が選択されるごとに変化する。一般的な容量検出ユニット20では、例えば特許文献1に開示されているように、被検体9と検出素子1Aとの間の静電容量に応じた電圧信号を信号発生回路により発生させ、当該電圧信号を増幅した後、当該電圧信号に応じた時間長を有するパルスからなる容量信号に電圧−時間変換して出力することにより、検出した容量値を正確に伝えている。
【0067】
したがって、容量検出ユニット20が容量検出動作を行った場合、その容量検出ユニット20が接続されているデータ線20Lには、このような容量信号によるパルスの立ち上がりが出力される。一方、インピーダンス検出ユニット30の配置領域には、容量検出ユニット20が配置されていないため、インピーダンス検出ユニット30の配置列nのいずれかの列が選択された際、配置行m行に対応するデータ線20Lには、容量信号によるパルスの立ち上がりは出力されない。
【0068】
本実施の形態では、このような容量信号の変化に着目し、A/D変換部27からの凹凸データ27Aを、データ補填部50において、それぞれの行の容量信号の変化に基づき保持して出力することにより、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の左側に隣接する列の凹凸データを補填データとして保持し、凹凸データ50Sとして出力するようにしたものである。
なお、列セレクタ26により、例えば図1のセンサアレイ4において右から左へ、順に走査する場合には、データ補填部50において、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の右側に隣接する列の凹凸データが補填データとして保持される。
【0069】
図8は、本発明の第4の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。
データ補填部50には、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の行範囲に含まれる行ごとにレジスタ55が設けられている。
レジスタ55は、当該行のデータ線20Lに出力された容量信号の変化に応じて、A/D変換部27から出力された当該容量検出ユニット行の凹凸データ27Aを保持し、凹凸データ50Sとして出力する。
【0070】
したがって、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列以外の列が選択された場合、当該行のデータ線20Lに容量信号が出力されるため、その変化に応じて凹凸データ27Aがレジスタ55により保持されて凹凸データ50Sとして出力される。一方、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲nに含まれる列が選択された場合、当該行のデータ線20Lに容量信号が出力されないため、それまでにレジスタ55で保持されていた凹凸データ27A、すなわち補填データが凹凸データ50Sとして出力されることになる。
【0071】
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、データ補填部において、インピーダンス検出ユニット30の配置行m行に対応する容量検出ユニット20からデータ線20Lに出力される容量信号の変化に応じて、A/D変換部27からの凹凸データ27Aを順次保持し、保持した凹凸データ27Aを凹凸データ50Sとして出力するようにしたので、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データが、配置領域の左または右に隣接する凹凸データに応じて変化する。
【0072】
このため、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データとして、被検体の実際の表面形状に近しい表面形状データを生成することができる。したがって、容量検出領域内にインピーダンス検出ユニットを配置して生体判定を行う場合でも、インピーダンス検出ユニットの配置領域において推定した凹凸データに起因する表面形状認識率の低下を抑制することが可能となる。
【0073】
[第5の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置について説明する。図9は、本発明の第5の実施の形態におけるデータ補填部を示す構成例である。なお、本実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成については、データ補填部50が異なるものの、その他の構成については第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0074】
図9に示すように、本実施の形態におけるデータ補填部50には、m個の行データ補填部56が設けられている。
行データ補填部56は、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の行範囲m行に含まれる行ごとに設けられており、当該容量検出ユニット20の行のうち、予め設定された補填データに基づいて、配置領域の列範囲n列における凹凸データを補填する補填データを生成して出力する。
【0075】
行データ補填部56には、n個のレジスタ56Aと、セレクタ56Bとが設けられている。
レジスタ56Aは、配置領域の列範囲n列における凹凸データを補填する補填データをそれぞれ個別に保持する。この際、補填データは、被検体9の表面形状の凹部、指紋の場合には谷線部を示す画素値からなる。
【0076】
セレクタ56Bは、列セレクタ26からの列セレクト信号26Aにより、インピーダンス検出ユニット30の配置領域の列範囲n列内のいずれかの列が選択された場合には、当該選択列に対応するレジスタ56Aで保持されている補填データを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力し、列セレクト信号26A以外の列セレクト信号26Sにより、列範囲n列以外の列が選択された場合には、A/D変換部27からの凹凸データ27Aを凹凸データ50Sとして選択して行セレクタ28へ出力する。
【0077】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、データ補填部において、予めレジスタに設定された補填データに基づいて、配置領域の列範囲n列における凹凸データとして、被検体の表面形状の凹部、指紋の場合には谷線部を示す画素値を補填するようにしたので、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データが、被検体の表面形状の凹部、指紋の場合には谷線部を示す画素値で補填される。
【0078】
インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データとして、被検体の表面形状の凸部、指紋の場合には隆線部を示す画素値で補填した場合、前述したように、インピーダンス検出ユニットの領域により繋がった表面形状データが表面形状検出部から出力されてしまうため、このような隆線部の繋がり部分を指紋の特徴として捉えて認識処理を行うような場合には、表面形状認識率が低下する原因となるという問題があった。
【0079】
本実施の形態によれば、インピーダンス検出ユニットの配置領域における凹凸データとして、被検体の表面形状の凹部、指紋の場合には谷線部を示す画素値で補填されるため、図10に示すように、インピーダンス検出ユニットの領域により繋がった表面形状データが出力されることはない。したがって、隆線部の繋がり部分を指紋の特徴として捉えて認識処理を行うような場合でも、表面形状認識率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。
【図3】凹凸データの補填方法を示す説明図である。
【図4】凹凸データの他の補填方法を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。
【図6】本発明の第3の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。
【図7】本発明の第4の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態におけるデータ補填部の構成例である。
【図9】本発明の第5の実施の形態におけるデータ補填部を示す構成例である。
【図10】本発明の第5の実施の形態にかかる表面形状認識センサ装置で指紋画像例(要部)である。
【図11】従来の表面形状認識センサ装置の概観図である。
【図12】従来の表面形状認識センサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】従来の表面形状認識センサ装置の全体構成を示すブロック図である。
【図14】従来の表面形状認識センサ装置で取得した指紋画像例(要部)である。
【符号の説明】
【0081】
100…表面形状認識センサ装置、1,1A,1B…検出素子、2…表面形状検出部、20…容量検出ユニット、20L…データ線、20S…容量信号、25…制御部、25A…アドレス信号、25B…容量検出制御信号、25L…個別制御線、26…列セレクタ、26A,26B,26C,26S…列セレクト信号、26L…制御線、27…A/D変換部、27A,27B,27C,27S…凹凸データ、28…行セレクタ、2S…表面形状データ、3…生体認識部、30…インピーダンス検出ユニット、30S…検出信号、35…A/D変換部、35S…判定データ、36…生体判定部、3S…認識結果、4…センサアレイ、50…データ補填部、51A,54…列データ処理部、51B,52D,53D,56B…セレクタ、52,53,56…行データ補填部、52A,52B,53A,53B,55,56A…レジスタ、52C,53C…行データ処理部、8…センサ面、9…被検体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に配置された第1の検出素子ごとに設けられ、被検体との間に生じた容量を当該第1の検出素子で検出し、その容量に応じた容量信号をそれぞれ出力する複数の容量検出ユニットと、
前記容量検出ユニットのうち列方向に並ぶ容量検出ユニットを結ぶ複数の制御線と、
前記容量検出ユニットのうち行方向に並ぶ容量検出ユニットを結ぶ複数のデータ線と、
前記制御線のいずれか1つを順次選択することにより当該制御線に接続された容量検出ユニット列を選択する列セレクタと、
前記容量検出ユニットのいずれかに代えて、第2の検出素子とともに配置され、当該第2の検出素子を介して前記被検体と電気的に接触することにより前記被検体のインピーダンスを検出し、そのインピーダンスに応じた検出信号を出力するインピーダンス検出ユニットと、
前記インピーダンス検出ユニットからの検出信号に基づき前記被検体が生体であるか否かを判定する生体判定部と、
前記列セレクタにより選択された選択列の容量検出ユニットから当該データ線に出力された容量信号を、当該選択列における前記被検体表面形状を示す凹凸データにA/D変換してそれぞれ出力するA/D変換部と、
前記A/D変換部からの凹凸データのうち前記インピーダンス検出ユニットの配置領域に隣接する容量検出ユニットの配置位置の凹凸データに基づいて、前記選択列のうち前記配置領域の行範囲における凹凸データを補填する補填データを生成し、前記列セレクタにより選択された選択列が前記配置領域の列範囲に含まれる場合には、当該選択列のうち前記配置領域の行範囲に対応する前記A/D変換部からの凹凸データに代えて前記補填データを出力し、当該選択列が前記配置領域の列範囲に含まれない場合には、当該選択列のうち前記配置領域の行範囲に対応する前記A/D変換部からの凹凸データを出力するデータ補填部と、
前記列セレクタにより前記容量検出ユニット列が選択されるごとに、前記A/D変換部から出力された凹凸データと前記データ補填部から出力された凹凸データとを、前記列方向に1つずつ順次選択することにより、前記被検体の表面形状を示す表面形状データとして出力する行セレクタと
を備えることを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記データ補填部は、
前記選択列のうち前記配置領域に対して列方向に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、当該選択列のうち前記配置領域の行範囲に対応する前記補填データをそれぞれ生成して出力する列データ処理部と、
当該選択列が前記配置領域の列範囲に含まれる場合には、前記列データ処理部からの補填データを選択出力するとともに、当該選択列が前記配置領域の列範囲に含まれない場合には、前記A/D変換部からの凹凸データを選択出力するセレクタと
を含むことを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記データ補填部は、
前記配置領域の行範囲に含まれる容量検出ユニット行ごとに設けられて、当該容量検出ユニット行のうち前記配置領域の列範囲における凹凸データを補填する補填データを生成して出力する行データ補填部を含み、
前記行データ補填部は、
前記配置領域に対して行方向に隣接する容量検出ユニット列が前記列セレクタにより選択された場合に、前記A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持するレジスタと、
前記レジスタで保持された凹凸データに基づいて、当該容量検出ユニット行のうち前記配置領域の列範囲に対応する前記補填データをそれぞれ生成して出力する行データ処理部と、
前記列セレクタで選択された選択列が前記配置領域の列範囲に含まれる場合には、前記行データ処理部からの補填データのうち当該選択列に対応する補填データを選択出力するとともに、当該選択列が前記配置領域の列範囲に含まれない場合には、前記A/D変換部からの凹凸データのうち当該容量検出ユニット行に対応する凹凸データを選択出力するセレクタとを含む
ことを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記データ補填部は、
前記列セレクタで選択された選択列のうち前記配置領域に対して列方向に隣接する容量検出ユニット行の凹凸データに基づいて、当該選択列のうち前記配置領域の行範囲の容量検出ユニット行に対応する列補填データをそれぞれ生成して出力する列データ処理部と、
前記配置領域の行範囲に含まれる容量検出ユニット行ごとに設けられて、当該容量検出ユニット行のうち前記配置領域の列範囲における凹凸データを補填する補填データを生成して出力する行データ補填部とを含み、
前記行データ補填部は、
前記配置領域に対して行方向に隣接する容量検出ユニット列が前記列セレクタにより選択された場合に、前記列データ処理部からの列補填データのうち当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持するレジスタと、
前記レジスタで保持された凹凸データに基づいて、当該容量検出ユニット行のうち前記配置領域の列範囲に対応する前記補填データをそれぞれ生成して出力する行データ処理部と、
前記列セレクタで選択された選択列が前記配置領域の列範囲に含まれる場合には、前記行データ処理部からの補填データのうち当該選択列に対応する補填データを選択出力するとともに、当該選択列が前記配置領域の列範囲に含まれない場合には、前記A/D変換部からの凹凸データのうち当該容量検出ユニット行に対応する凹凸データを選択出力するセレクタとを含む
ことを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項5】
請求項2または請求項4に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記列データ処理部は、前記選択列のうち前記配置領域に対して列方向に隣接するいずれか一方の容量検出ユニット行の凹凸データを、当該選択列のうち前記配置領域の行範囲に対応する各補填データとして出力することを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項6】
請求項2または請求項4に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記列データ処理部は、前記選択列のうち前記配置領域に対して列方向に隣接する2つの容量検出ユニット行の凹凸データの平均値を、当該選択列のうち前記配置領域の行範囲に対応する各補填データとして出力することを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項7】
請求項2または請求項4に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記列データ処理部は、前記選択列のうち前記配置領域に対して列方向に隣接する2つの容量検出ユニット行の凹凸データから特定した近似関数に基づき、当該選択列のうち前記配置領域の行範囲に対応する各補填データを算出して出力することを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項8】
請求項3に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記レジスタは、前記配置領域に対して行方向に隣接するいずれか一方の容量検出ユニット列が前記列セレクタにより選択された場合に、前記A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持し、
前記行データ処理部は、前記レジスタで保持された凹凸データを、当該容量検出ユニット行のうち前記配置領域の列範囲に対応する各補填データとして出力することを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項9】
請求項3に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記レジスタは、前記配置領域に対して行方向に隣接する2つの容量検出ユニット列が前記列セレクタにより個別に選択された場合に、前記A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを、当該容量検出ユニット列ごとに個別に保持し、
前記行データ処理部は、前記レジスタで個別に保持された容量検出ユニット列ごとの2つの凹凸データの平均値を、当該容量検出ユニット行のうち前記配置領域の列範囲に対応する各補填データとして出力することを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項10】
請求項3に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記レジスタは、前記配置領域に対して行方向に隣接する2つの容量検出ユニット列が前記列セレクタにより個別に選択された場合に、前記A/D変換部からの凹凸データのうち当該選択列における当該容量検出ユニット行の凹凸データを、当該容量検出ユニット列ごとに個別に保持し、
前記行データ処理部は、前記レジスタで個別に保持された容量検出ユニット列ごとの2つの凹凸データから特定した近似関数に基づき、当該容量検出ユニット行のうち前記配置領域の列範囲に対応する各補填データを算出して出力することを特徴とする表面形状認識センサ装置。
【請求項11】
請求項1に記載の表面形状認識センサ装置において、
前記データ補填部は、前記配置領域の行範囲に含まれる容量検出ユニット行ごとに設けられて、当該容量検出ユニット行のデータ線に出力された容量信号の変化に応じて、前記A/D変換部から出力された当該容量検出ユニット行の凹凸データを保持して出力するレジスタを含むことを特徴とする表面形状認識センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−287990(P2009−287990A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139059(P2008−139059)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】