説明

表面性状測定装置および表面性状測定方法

【課題】周囲温度によって変化するスタイラスの長さ変化を、簡易にかつ短時間で求めることができ、これを基に測定値を補正できる表面性状測定装置を提供する。
【解決手段】スタイラス、加振素子4、検出素子5を有するセンサ1と、これを被測定物に対して相対移動させる駆動用アクチュエータ11と、センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する検出器12と、設定周波数の加振信号を発振し加振素子に与える発振器34と、制御手段31とを備える。制御手段は、検出素子からの検出信号の振幅が最大となる周波数に発振器の設定周波数を補正する周波数補正手段と、この周波数補正手段によって補正された設定周波数を共振周波数としてスタイラスの長さ情報を取得するスタイラス長さ情報取得手段と、このスタイラス長さ情報取得手段によって取得されたスタイラス長さ情報を補正値として測定位置情報を補正する測定位置情報補正手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定装置および表面性状測定方法に関する。例えば、加振型センサにより被測定物の形状や表面粗さなどの表面性状を測定する表面性状測定装置および表面性状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面を走査して被測定物の形状や表面粗さなど表面性状を測定する表面性状測定装置として、粗さ測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。
このような測定機において、接触部が被測定物の表面に接触したときの微小変位に基づいて被測定物表面を検出するセンサとして、加振型力センサが利用されている。
【0003】
<加振型力センサについて>
加振型力センサ1は、図7に示すように、金属製のベース2と、このベース2と一体的に形成されたスタイラス3と、このスタイラス3を振動(軸方向へ振動)させる加振素子4と、スタイラス3の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子5とから構成されている。スタイラス3の先端には、ダイヤモンドチップやルビーなどで構成された接触部としての触針6が接着固定されている。加振素子4および検出素子5は、1枚の圧電素子によって構成され、ベース2の表裏にそれぞれ1枚ずつ接着固定されている。
【0004】
いま、図8に示すように、力センサ1の加振素子4に対して、特定の周波数と振幅をもつ加振信号Pi(電圧信号)を与えると、検出素子5では、特定の周波数と振幅の検出信号Qo(電圧信号)が得られる。
被測定物Wとの接触に伴う検出信号Qoの振幅変化を図9に示す。スタイラス3が被測定物Wと非接触状態にあるとき、スタイラス3の共振周波数で一定の振幅をもつ加振信号Piを加振素子4に加えると、スタイラス3が共振し、検出素子5に振幅Aoの検出信号Qoが得られる。スタイラス3が被測定物Wに接触すると、検出信号Qoの振幅がAoからAxに減衰する。
従って、力センサ1を被測定物Wに接触させる際、減衰率k(Ax/Ao)が常に一定となるように、駆動用アクチュエータなどを用いて力センサ1と被測定物Wとの距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物Wの形状や粗さを測定することができる。
【0005】
ところで、上述した構造の力センサ1を用いた形状測定システムでは、次のような課題がある。
近時、マイクロパーツの測定に向けて、力センサ1の小型化、高精度化が図られているが、測定環境に温度変化があると、スタイラス3が熱膨張あるいは収縮するため、この熱膨張や収縮によるスタイラス3の長さ変化が測定精度上無視できない。たとえば、鉄系のスタイラスの線膨張係数を考えた場合、スタイラスの長さ変化は10のマイナス5乗オーダーである。スタイラスの長さが100mmであれば、1μmとなる。
これを解決するための方法として、スタイラスを空間座標上に固定されたマスターボールなどに接触させてマスターボールを測定し、このときの測定値からスタイラスの先端座標を補正する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2005−181293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、スタイラスをマスターボールに接触させてマスターボールを測定し、この測定値からスタイラスの先端座標を補正する方法では、マスターボールを別途用意しておく必要があるうえ、測定に手間と時間がかかる。
【0008】
本発明の目的は、温度によって変化するスタイラスの長さ情報を、簡易にかつ短時間で求めることができ、これを基に測定値を補正して高精度な測定を実現できる表面性状測定装置および表面性状測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表面性状測定装置は、先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、設定周波数の加振信号を発振し、前記加振素子に与える発振手段と、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する共振周波数補正手段と、この共振周波数補正手段によって補正された設定周波数を共振周波数として前記スタイラスの長さ情報を取得するスタイラス長さ情報取得手段と、このスタイラス長さ情報取得手段によって取得されたスタイラスの長さ情報を補正値として前記位置検出手段の測定位置情報を補正する測定位置情報補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、検出素子からの検出信号が設定値に一致すると、位置検出手段の測定位置情報が取り込まれ、この測定位置情報から被測定物の表面性状が測定される。
たとえば、検出素子からの検出信号が設定値に一致するように、相対移動手段を制御して、センサと被測定物との相対距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物表面の形状や粗さなどを倣い測定することができる。また、スタイラスの接触部を被測定物の任意の点に接触させ、検出素子からの検出信号が設定値に一致したときの位置検出手段の測定位置情報を取り込めば、接触点の座標値を求めることができる。そして、これら複数の接触点の座標値を基に被測定物の形状などを測定できる。
【0011】
ところで、周囲温度が変化すると、スタイラスが熱膨張あるいは収縮し、スタイラスの長さが変化する。すると、スタイラスが被測定物に接触する接触部の位置が変化するので、測定誤差となる。
本発明では、周波数補正手段を備えているので、たとえば、測定開始直前において、検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数を求め、これを発振手段の設定周波数として設定する。検出信号の振幅が最大となる周波数、つまり、共振周波数が得られれば、共振周波数からスタイラスの長さ情報を得ることができる。
つまり、本発明では、検出信号から共振周波数を求め、これを基にスタイラスの長さ情報を得るため、従来のマスターボールを測定する方法に比べて、周囲温度によって変化するスタイラスの長さ変化を、簡易にかつ短時間で求めることができる。また、スタイラスの長さ情報を補正値として位置検出手段の測定位置情報を補正することができるから、温度変化によるスタイラスの長さ変化に基づく測定誤差を低減できる。
【0012】
とくに、本発明は、スタイラスを振動させ、その振動状態の変化から、被測定物の接触点を求める測定原理において、スタイラスを振動させる構成要素やスタイラスの振動状態を検出して検出信号として出力する構成要素、つまり、発振手段、加振素子、検出素子などを利用して、スタイラスの共振周波数を検出できるので、共振周波数を検出する装置を別途設ける必要がなく、測定に利用される装置構成をそのまま利用できる。従って、経済的に構成できる利点がある。
【0013】
本発明の表面性状測定装置において、前記検出素子からの検出信号を基に前記スタイラスの共振周波数情報を得る周波数情報検出手段を有し、前記スタイラス長さ情報取得手段は、前記周波数情報検出手段からの周波数情報またはこの周波数情報と加振信号周波数情報との位相差情報から前記スタイラスの長さ情報を得るようにしてもよい。
【0014】
本発明の表面性状測定装置において、前記スタイラス長さ情報取得手段は、前記スタイラスの長さL情報を、次式から取得することが好ましい。
【数1】


ただし、f:スタイラスの共振周波数
λ:モードの次数、
E:スタイラスのヤング率
r:スタイラスの半径
w:スタイラスの重さ
:基準温度でのスタイラスの長さ
【0015】
この構成によれば、上記計算式から、スタイラスの長さ情報を求めることができるから、予め、スタイラスの各パラメータ(λ,E,r,w)などを求めておけば、簡単かつ迅速にスタイラスの長さ情報が得られる。
【0016】
本発明の表面性状測定方法は、先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定方法であって、設定周波数の加振信号を発振し、前記加振素子に与える加振信号印加工程と、前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する共振周波数補正工程と、この共振周波数補正工程によって補正された設定周波数を共振周波数として前記スタイラスの長さ情報を取得するスタイラス長さ情報取得工程と、このスタイラス長さ情報取得工程によって取得されたスタイラスの長さ情報を補正値として前記位置検出手段の測定位置情報を補正する測定位置情報補正工程とを備えたことを特徴とする。
この発明によれば、表面性状測定装置と同様な効果が期待できる。
【0017】
本発明の表面性状測定方法において、前記共振周波数補正工程、および、前記スタイラス長さ情報取得工程は、測定開始直前または測定開始直後に実行することが好ましい。
この構成によれば、測定開始直前または測定開始直後に、共振周波数補正工程、および、スタイラス長さ情報取得工程を実行するので、測定時の温度に最も近い環境下でスタイラスの長さ情報を得ることができ、温度変化による誤差をより低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<全体構成(図1)の説明>
図1は、本発明に係る表面形状測定装置の一実施形態を示すブロック図である。なお、図1の説明にあたって、前述した図7と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
本実施形態の表面形状測定装置は、プローブ10と、このプローブ10を制御するコントローラ30とから構成されている。
プローブ10は、図2にも示すように、力センサ1と、この力センサ1を被測定物Wに対して相対移動(進退)させる相対移動手段としての駆動用アクチュエータ11と、この駆動用アクチュエータ11による力センサ1の変位量(つまり、力センサ1による被測定物の測定位置情報)を検出する位置検出手段としての検出器(スケールと検出ヘッドからなる)12とから構成されている。なお、力センサ1は、図7と同一構造であるので、説明を省略する。
【0019】
コントローラ30は、制御手段(Digital Signal Processor)31と、ROM(Read Only Memory)/RAM(Random Access Memory)を有する記憶手段32と、インターフェース(I/F)33と、発振手段としての発振器(Direct Digital Synthesizer)34と、ピークホールド回路37と、ADコンバータ(Analog Digital Converter)38と、DAコンバータ(Digital Analog Converter)39と、接触検知回路40と、アクチュエータ駆動回路41と、カウンタ42とを含んで構成されている。
【0020】
制御手段(DSP)31は、マイクロプロセッサとしての機能を持ち、ROMやRAMを有する記憶手段32とともにシステム全体をコントロールする役目を果たす。また、制御手段(DSP)31は、検出素子5からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に発振器34の設定周波数を補正する共振周波数補正手段、この共振周波数補正手段によって補正された新設定周波数を基にスタイラス3の長さ情報を取得するスタイラス長さ情報取得手段、このスタイラス長さ情報取得手段によって取得されたスタイラス長さ情報を補正値として位置検出手段としての検出器12の測定位置情報を補正する測定位置情報補正手段などを構成している。
【0021】
インターフェース(I/F)33は、PCなどのホストとの通信機能をもつ。
発振器(DDS)34は、設定周波数の加振信号を発振し、加振素子4に与えるもので、制御手段(DSP)31により発振周波数が設定される。
ピークホールド回路37は、検出素子5からの検出信号(交流信号)を直流信号に変換し、ADコンバータ38へ与える。
【0022】
ADコンバータ38は、ピークホールド回路37から与えられる直流信号をデジタル信号に変換して制御手段(DSP)31へ与える。
DAコンバータ39は、制御手段(DSP)31からの指令に基づいて、アクチュエータ駆動回路41に対して駆動信号を出力するとともに、接触検知回路40における接触(タッチ)レベルを設定する。
【0023】
接触検知回路40は、ピークホールド回路37からの検出信号(直流信号)とDAコンバータ39によって設定された接触レベルとから、カウンタ42をラッチするラッチ信号(タッチ信号)を発生し、カウンタ42へ与える。
アクチュエータ駆動回路41は、DAコンバータ39からの駆動信号によって駆動用アクチュエータ11を駆動させる。
カウンタ42は、検出器12からの信号をカウントし、力センサ1の先端測定位置とプローブ駆動制御用フィードバックを算出するため、力センサ1の変位量をカウントする。
【0024】
<測定作業>
測定にあたっては、図3に示すフローチャートに従って、処理を行う。
まず、測定時の環境温度が基準温度と異なっていると、スタイラス3の長さが変化し、測定誤差を生じるため、測定に先立って、共振周波数補正工程(ST1)、スタイラスの長さ情報取得工程(ST2)を行う。つまり、共振周波数補正工程において、発振器34に設定する周波数(共振周波数)を補正したのち、スタイラス長さ情報取得工程において、補正した共振周波数からスタイラス3の長さを求める。
この後、測定工程(ST3)において、被測定物の測定処理を行ったのち、スタイラスの長さ情報を補正値として、測定工程で得られた測定位置情報を補正する(測定位置情報補正工程)。たとえば、スタイラスの長さ情報を、測定工程で得られた測定位置情報のうち、スタイラスの長さ方向と同じ軸方向の座標値に対して補正を行う。
【0025】
ここで、スタイラスの長さと共振周波数との関係を説明する。
まず、L :スタイラスの長さ(支点から接触部までの距離)
:基準温度(ここでは、20℃)でのスタイラスの長さ
(図5では約3mm)
ΔT:温度変化
r :スタイラスの半径(図5では約10μm)
λ :モードの次数
E :スタイラスのヤング率
ρ :スタイラスの密度
f :スタイラスの共振周波数
w :スタイラスの重さ
α :スタイラスの線膨張係数
β :スタイラスの体積膨張係数
とすると、次の関係式(1)〜(10)が得られる。
【0026】
【数2】

【0027】
式(5)は、式(4)を式(3)に代入した式、
式(6)は、式(5)(2)を式(1)に代入した式、
式(7)は、式(6)において、定数Kを表す式、
式(8)は、式(2)を書き換えた式、
式(9)は、式(8)を式(6)に代入した式、
式(10)は、スタイラスの長さLと共振周波数fとの関係を表す式である。
従って、式(10)において、定数K、L(基準温度でのスタイラスの長さ)は既知であるから、スタイラスの共振周波数fを求めれば、スタイラスの長さLを求めることができる。
【0028】
スタイラスの共振周波数fを求めるには、たとえば、図4に示すフローチャートの処理を行う。
ST11において、加振信号の周波数を予め設定した周波数だけ変更し、この変更した周波数を発振器(DDS)34にセットし、加振素子4を介してスタイラス3を振動させる。
ST12において、検出素子5からの検出信号を取り込み、検出信号の振幅を検出。
ST13において、検出した検出信号の振幅が今まで検出した振幅の中で最大か否かを判定する。最大でなければ、ST15へ進む。最大であれば、ST14に進む。
ST14において、補正した加振信号の周波数を記憶。
ST15において、処理が終了か否かを判断し、終了でなければ、ST11〜ST14の処理を繰り返す。終了であれば、ST16へ進む。
ST16において、記憶した周波数(共振周波数)を発振器(DDS)34に設定し、加振素子4を介してスタイラス3を振動させる。
【0029】
従って、ST14において記憶した周波数から、長さが変化したスタイラス3の共振周波数を求めることができる。そして、求めた共振周波数を式(10)に代入すれば、スタイラス3の長さLを求めることができる。
【0030】
<実施形態の効果>
(1)検出信号から共振周波数を求め、これを基にスタイラス3の長さ情報を得るため、従来のマスターボールを測定する方法に比べて、周囲温度によって変化するスタイラス3の長さ変化を、簡易にかつ短時間で求めることができる。また、スタイラス3の長さ情報を補正値として位置検出手段の測定位置情報を補正することができるから、温度変化によるスタイラスの長さ変化に基づく測定誤差を低減できる。
【0031】
(2)また、スタイラス3を振動させ、その振動状態の変化から、被測定物の接触点を求める測定原理において、スタイラス3を振動させる構成要素やスタイラス3の振動状態を検出して検出信号として出力する構成要素、つまり、発振器34、加振素子4、検出素子5などを利用して、スタイラス3の共振周波数を検出できるので、共振周波数を検出する装置を別途設ける必要がなく、測定に利用される装置構成をそのまま利用できる。従って、経済的に構成できる利点がある。
【0032】
(3)スタイラス3の長さを求める際、式(10)から求めるようにしたので、予め、スタイラス3の各パラメータ(λ,E,r,w)などを求めておけば、簡単かつ迅速にスタイラス3の長さ情報が得られる。
(4)また、測定開始直前に、共振周波数補正工程、および、スタイラス長さ情報取得工程を実行するようにしたので、測定時の温度に最も近い環境下でスタイラス3の長さ情報を得ることができ、温度変化による誤差をより低減できる。
【0033】
<変形例の説明>
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれる。
前記実施形態では、スタイラス3の共振周波数fを求めるにあたって、毎回、図4に示すフローチャートの処理(ピークスキャン方式)を実行するようにしたが、最初に、図4に示すフローチャートの処理によって、発振器(DDS)34にスタイラス3の共振周波数を設定した後は、図5または図6に示す方式によって、スタイラス3の共振周波数を求めるようにしてもよい。
【0034】
図5では、検出素子5からの検出信号を同期検波して周波数情報を抽出し、この周波数情報を制御手段(DSP)31へ与える周波数情報検出手段としての同期検波回路35が付加されている。
この構成によれば、同期検波回路35において、検出素子5からの検出信号が同期検波され、周波数情報が制御手段(DSP)31に与えられると、制御手段(DSP)31は、与えられた周波数情報を式(10)に代入して、スタイラス3の長さ情報を求めることができる。
【0035】
図6では、同期検波回路35のほかに、同期検波回路35からの周波数情報と発振器34からの加振信号周波数情報との位相を比較し、この位相差情報(周波数変化情報)を制御手段(DSP)31へ与える位相比較器36が付加されている。
この構成によれば、同期検波回路35および位相比較器36により、位相差情報(周波数変化情報)が制御手段(DSP)31に与えられると、制御手段(DSP)31は、位相差情報(周波数変化情報)から、スタイラス3の長さ変化として求めることができる。
【0036】
前記実施形態では、式(10)を用いて、スタイラス3の長さLを求めるようにしたが、共振周波数とスタイラス3の長さLとの関係を実験的に求め、これを対応させてテーブルに記憶させておき、求めた共振周波数に対応する長さLをテーブルから読み出して、スタイラス3の長さLを取得するようにしてもよい。
【0037】
前記実施形態では、測定開始前に共振周波数変更工程、スタイラスの長さ情報取得工程を行ったが、これらの工程については、力センサ1が被測定物に接触していないときならば、何時でも可能なので、測定工程終了直後でもよく、あるいは、被測定物と接触していない移動区間などを利用して実行することもできる。
【0038】
上記実施形態では、力センサ1のベース2とスタイラス3とを一体的に構成したが、これに限らず、別体であってもよい。つまり、ベース2とスタイラス3とを別体として構成し、ベース2に対してスタイラス3を接着固定するようにしてもよい。
上記実施形態では、スタイラス3を軸方向へ振動させるようにしたが、これに限らず、スタイラス3の軸に対して交差する方向に振動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定機、形状測定機、輪郭測定機、真円度測定機、三次元測定機などに適用可能である。とくに、微細形状の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る表面形状測定装置の一実施形態を示すブロック図。
【図2】同上実施形態のプローブを示す図。
【図3】同上実施形態の測定手順を示すフローチャート。
【図4】同上実施形態の共振周波数取得工程の手順を示すフローチャート。
【図5】本発明に係る表面性状測定装置の変形例を示すブロック図。
【図6】本発明に係る表面性状測定装置の他の変形例を示すブロック図。
【図7】力センサの構成を示す分解斜視図。
【図8】力センサに与える加振信号と検出信号を示す図。
【図9】力センサが被測定物と接触した際の検出信号の変化を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1…加振型力センサ、
3…スタイラス、
4…加振素子、
5…検出素子、
10…プローブ、
30…コントローラ、
31…制御手段(共振周波数補正手段、スタイラス長さ情報取得手段、
測定値情報補正手段)、
34…発振器(発振手段)、
35…同期検波回路(周波数情報検出手段)、
Pi…加振信号、
Qo…検出信号、
W…被測定物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置であって、
設定周波数の加振信号を発振し、前記加振素子に与える発振手段と、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する共振周波数補正手段と、
この共振周波数補正手段によって補正された設定周波数を共振周波数として前記スタイラスの長さ情報を取得するスタイラス長さ情報取得手段と、
このスタイラス長さ情報取得手段によって取得されたスタイラスの長さ情報を補正値として前記位置検出手段の測定位置情報を補正する測定位置情報補正手段とを備えたことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定装置において、
前記検出素子からの検出信号を基に前記スタイラスの共振周波数情報を得る周波数情報検出手段を有し、
前記スタイラス長さ情報取得手段は、前記周波数情報検出手段からの周波数情報またはこの周波数情報と加振信号周波数情報との位相差情報から前記スタイラスの長さ情報を得ることを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表面性状測定装置において、
前記スタイラス長さ情報取得手段は、前記スタイラスの長さL情報を、次式から取得することを特徴とする表面性状測定装置。
【数1】

ただし、f;スタイラスの共振周波数
λ:モードの次数
E:スタイラスのヤング率
r:スタイラスの半径
w:スタイラスの重さ
:基準温度でのスタイラスの長さ
【請求項4】
先端に接触部を有するスタイラス、このスタイラスを振動させる加振素子および前記スタイラスの振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子を有するセンサと、このセンサと被測定物とを相対移動させる相対移動手段と、前記センサによる被測定物の測定位置を測定位置情報として出力する位置検出手段とを備え、前記スタイラスの接触部を被測定物表面に接触させ、前記検出素子からの検出信号が設定値に略一致したときの前記位置検出手段の測定位置情報から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定方法であって、
設定周波数の加振信号を発振し、前記加振素子に与える加振信号印加工程と、
前記検出素子からの検出信号を検出し、この検出信号の振幅が最大となる周波数に前記発振手段の設定周波数を補正する共振周波数補正工程と、
この共振周波数補正工程によって補正された設定周波数を共振周波数として前記スタイラスの長さ情報を取得するスタイラス長さ情報取得工程と、
このスタイラス長さ情報取得工程によって取得されたスタイラスの長さ情報を補正値として前記位置検出手段の測定位置情報を補正する測定位置情報補正工程とを備えたことを特徴とする表面性状測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の表面性状測定方法において、
前記周波数補正工程、および、前記スタイラス長さ情報取得工程は、測定開始直前または測定開始直後に実行することを特徴とする表面性状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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