説明

表面性状測定装置及びその走査方法

【課題】探針やサンプルの破損等を防止し、走査時間を短縮可能な、高分解能な表面性状測定装置を提供する。
【解決手段】探針とサンプルを、任意の測定点において近接または接触させて測定データを取得した後、それらを離間させると共に次の測定点に相対的に走査して、再び近接または接触させて測定データを取得する動作を繰り返しながら複数の測定点でサンプル表面の形状または物性を計測する表面性状測定装置の走査方法において、探針4とサンプル11を走査したときにサンプル上の凸部11aに対峙する探針の側面4gを探針先端を通るサンプル表面への垂線20に対して探針先端4aから探針末端4hに掛けてサンプル上の凸部方向に広がるように垂線20に対して任意の角度θで傾斜させ、測定点間の距離をΔx、探針とサンプルの離間量をΔhとした場合に、Δh>Δx/tanθの条件を満たすように探針4とサンプル11の離間量を設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探針によりサンプル表面を走査し、サンプル表面の形状観察や物性測定を行う表面性状測定装置及びその走査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面性状測定装置の一種である走査型プローブ顕微鏡では、探針を有するカンチレバーを使用して、探針とサンプルを近接させて、半導体レーザとフォトディテクタを使用した光てこ方式やカンチレバーに設けた抵抗体の抵抗値変化を検出する方式になどによる変位検出機構によりカンチレバーのたわみ量やカンチレバーを振動させたときの振幅量を検出し、たわみ量や振幅の減衰量または位相や共振周波数の変化量などにより探針とサンプル表面間の距離を垂直方向微動機構で制御しながら、水平方向微動機構により両者を相対的にスキャンすることで、サンプル表面の形状や物性の測定が行われる。カンチレバーを振動させずにたわみ量を検出する方式をコンタクト方式、カンチレバーを振動させながら測定する方式を振動方式と呼ぶ。
【0003】
このうち、コンタクト方式の走査型プローブ顕微鏡では探針とサンプルが常時接触しているために、走査に伴い探針やサンプルに損傷や摩耗が発生する。また吸着しやすいサンプルでは探針がトラップされてしまい正確なデータが測定できない場合がある。また、振動方式の方は間欠的な接触であるためコンタクト方式に比較して、探針とサンプルが接触している時間が短くなる。そのため探針やサンプルに与えるダメージや摩耗が減り、吸着の影響も少なくなるが、いずれも完全には防ぐことができない。
【0004】
サンプルに与えるダメージや摩耗や吸着の影響をさらに少なくする方式として、測定点以外の場所では探針とサンプルを離間させて、測定点では探針とサンプルを近接させてデータを測定する走査型プローブ顕微鏡の走査方法が用いられている。
【0005】
コンタクト方式の走査型プローブ顕微鏡としては、探針を測定点のみで設定したたわみ量までサンプルに近づけ、測定データを取得した後、探針を該サンプルからいったん離間させ、次の測定点に移動して探針を再び近接させる動作を繰り返すことで表面性状の測定を行うものが開示されている(例えば、特許文献1)。このときの離間量は、サンプルの最大高さ以上としたり、あるいは、通常探針とサンプル間の吸着を離脱するのに最低限必要な距離まで離間させ、カンチレバーの側面に段差部が衝突した際には、カンチレバーのねじれ信号により段差部との衝突を検出し離間量を大きくする方式も記載されている。
【0006】
また、振動方式の走査型プローブ顕微鏡としては、探針を測定点のみで設定した振幅減衰量まで近接させて、探針をいったん離間させ、次の測定点に移動してから再び探針を近接させる動作を繰り返すことで表面性状の測定を行う走査型プローブ顕微鏡が開示されている(例えば、特許文献2)。このときの離間量は例えば大気中や高湿度環境下では吸着水層の影響を受けないように10nm、湿度が低く吸着水の影響を受けない環境下では1nmという実施形態が開示されている。また、走査中における探針とサンプルの接触を振幅の減衰量から認識して探針をさらに引き上げる方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−125540号公報
【特許文献2】特開2005−69851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記2つの特許文献には吸着回避のための離間量の一例は記載されているものの、離間量についての最適値の記載はない。
【0009】
離間量が小さい場合には水平移動の際に離間量よりも高い凹凸があったときに探針とサンプルが衝突してしまう。特許文献1ではカンチレバーのねじれ信号により、特許文献2では振幅の減衰量により探針とサンプルの衝突を認識して両者を離間させる方式が示されているが、探針の先端がサンプル表面に垂直に接触する場合にカンチレバーが変形する方向のバネ定数に比べて、探針の側面からの衝突に対してカンチレバーが変形する方向のバネ定数は大きく、探針先端やサンプルに大きな力がかかり探針やサンプルが破損してしまう。また側面からの衝突に備えるためには水平走査中もサーボ動作を継続する必要がありサーボ動作に伴う応答時間の確保や、衝突時の衝撃緩和のために水平方向の走査速度を遅くする必要がある。
【0010】
また、サンプルの最大高さが分かっていれば最大高さ以上に探針とサンプルを離間させることで衝突を防ぐことができるが、離間量が大きくなると再接近に時間がかかりトータルの測定時間が長くなってしまう。また形状が分からないサンプルの場合には最大高さを測定前に完全に把握することは不可能である。
【0011】
したがって、本発明の目的は、上記の課題に鑑みて発明されたものであり、探針とサンプルの離間量を最適化し、探針とサンプルが衝突することなしに探針とサンプルを走査して、両者の破損を防止するとともに、走査時間を短縮する表面性状測定装置及びその走査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明では表面性状測定装置において以下のような走査方法を実施した。
【0013】
本発明では、探針先端をサンプル表面に対向するように配置し、任意の測定点において前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得した後、前記探針と前記サンプルを離間させ、次の測定点に前記探針と前記サンプルを相対的に走査して、再び前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得する動作を繰り返しながら複数の測定点でサンプル表面の形状または物性を計測する表面性状測定装置の走査方法において、前記探針と前記サンプルを走査したときに前記サンプル上の凸部に対峙する前記探針の側面を前記探針先端を通る前記サンプル表面への垂線に対して前記探針先端から前記探針末端掛けて前記サンプル上の凸部方向に広がるように前記垂線に対して任意の角度θで傾斜させ、測定点間の距離をΔx、前記探針と前記サンプルの離間量をΔhとした場合に、Δh>Δx/tanθの条件を満たすように前記探針と前記サンプルの離間量を設定した。
【0014】
また本発明では、探針先端をサンプル表面に対向するように配置し、任意の測定点において前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得した後、前記探針と前記サンプルを離間させ、次の測定点に前記探針と前記サンプルを相対的に走査して、再び前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得する動作を繰り返しながら複数の測定点でサンプル表面の形状または物性を計測する表面性状測定装置の走査方法において、前記探針と前記サンプルを走査したときに前記サンプル上の凸部に対峙する前記探針の側面が多段の傾斜角を有し、少なくとも1段以上の傾斜角が前記探針先端を通る前記サンプル表面への垂線に対して前記探針先端から前記探針末端にかけて前記サンプル上の凸部方向に広がるように前記垂線に対して任意の角度で傾斜し、前記垂線に対する前記傾斜角のうち最も大きな角度をθMAXとし、θMAXが前記探針の最先端部の角度ではない場合には、前記最大傾斜角を持つ部分よりも先端側の前記垂線に沿った探針の高さをL、測定点間の距離をΔx、前記探針と前記サンプルの離間量をΔhとした場合に、Δh>L+Δx/tanθMAXの条件を満し、θMAXが最先端の場合にはΔh>Δx/tanθMAXの条件を満たすように前記探針と前記サンプルの離間量を設定した。
【0015】
また、本発明では、前記走査が直線上の走査を含む場合に、1ラインの長さXと1ライン中での等間隔の測定点の数Pを指定して、前期測定点間の距離Δx=X/Pを求め、前記探針と前記サンプルの離間量を設定するようにした。
【0016】
さらに、さらに、本発明では前記探針とサンプルの離間量をΔh>Δx/tanθまたはL+Δx/tanθMAXまたはΔx/tanθMAXを満たし、かつ、測定領域におけるサンプル表面の最大高さ未満とした。
【0017】
さらに、前記探針とサンプルの離間量がΔx/tanθまたはL+Δx/tanθMAXまたはΔx/tanθMAXの1.2倍以下とした。
【0018】
さらに本発明では、前記探針と前記サンプルを相対的に移動させる制御装置を備え、前記傾斜角θまたはθMAXと前記測定点間の距離Δxを含む情報を前記制御装置に入力または自動認識させることで、前記制御装置が前記探針と前記サンプルの離間量を自動的に設定するように構成した。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明の表面性状測定装置及びその走査方法では、探針先端をサンプル表面に対向するように配置し、任意の測定点において探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得した後、両者を離間させ、次の測定点に探針とサンプルを相対的に走査して、再び両者を近接または接触させて測定データを取得する動作を繰り返しながら複数の測定点でサンプル表面の形状または物性を計測することで探針やサンプルの接触回数を少なくできて探針やサンプルの摩耗や破損を少なくすることができ高分解能を維持したままの測定が可能となった。また、探針とサンプルの離間量をΔh>Δx/tanθまたはΔh>L+Δx/tanθMAX またはΔh>Δx/tanθMAXの条件を満たすように設定することで離間量が最適化でき、探針とサンプルが側面から衝突することなしに両者を走査でき、破損が防止されるとともに、走査時間を短縮することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態の表面性状測定装置の概観図。
【図2】(a)本発明の第1の実施形態の表面性状測定装置で使用されるカンチレバーを長手方向側からみた探針とサンプルの模式図。(b)本発明の第1の実施形態の表面性状測定装置で使用されるカンチレバーを探針側から見た模式図([図2](a)の左側面図)
【図3】従来の走査方法を示す模式図。
【図4】本発明の第1の実施形態の走査方法を説明するための探針とサンプルの関係を示す模式図。
【図5】本発明の第1の実施形態の走査方法を説明するための探針とサンプルの関係を示す模式図。
【図6】本発明の第2の実施形態の走査方法を説明するための探針とサンプルの関係を示す模式図。
【図7】本発明の第3の実施形態の表面性状測定装置で使用される探針とサンプルの模式図。
【図8】本発明の第3の実施形態の表面性状測定装置で使用される探針とサンプルの模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面に示した実施形態は表面性状測定装置の一種である走査型プローブ顕微鏡に関するものであるが、本発明の説明に必要な部分を中心に記載しており、一般に公知の構成の図面と詳細な説明は省略する。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る表面性状測定装置の一種である走査型プローブ顕微鏡の全体構成を示す概観図である。
【0023】
図1の走査型プローブ顕微鏡1では、カンチレバー部3の先端に探針4を有し末端に基端部3を有するカンチレバー2がカンチレバーホルダ6に取り付けられる。
【0024】
このカンチレバー2はシリコン製で半導体プロセスを利用して作製され、1度のプロセスでウエハ上に同一形状のカンチレバーが多数製作される。カンチレバー部3の背面には後述する光てこ方式の変位検出機構のレーザ光を反射するためにアルミニウムがスパッタによりコートされている。
【0025】
カンチレバーホルダ6には振動方式で測定を行う場合にカンチレバー部3を共振周波数近傍で加振するための圧電素子7が取り付けられている。
【0026】
カンチレバー部3の上方には、半導体レーザ8と表面が4分割されたフォトディテクタ9から構成される光てこ方式の変位検出機構10が設けられており、半導体レーザ8の光をカンチレバー部3の背面に照射しカンチレバー部3の背面で反射した光を4分割されたフォトディテクタ9で検出することでカンチレバー部3のたわみ量とねじれ量が検出される。
【0027】
探針先端4aと対向する側には探針4とサンプル11を相対的にサンプル面内で操作する水平方向微動機構12aと探針先端4aとサンプル11間の距離制御を行うための垂直方向微動機構12bからなる円筒型圧電素子により構成される3軸微動機構12が設けられ、3軸微動機構上12にサンプル11が載置されている。
【0028】
3軸微動機構12は探針先端4aとサンプル11を近接させるための粗動機構13に取り付けられている。この粗動機構13は送りねじとステッピングモータにより駆動されるメカニカルステージが用いられている。
【0029】
この走査型プローブ顕微鏡1では、振動方式とコンタクト方式の両方の測定を行うことができる。振動方式により測定を行う場合にはカンチレバーホルダ6に設けられた圧電素子7によりカンチレバー部3を共振周波数近傍で加振し探針4とサンプル11を近接させたときのカンチレバー部3の振幅の減衰量が一定となるように垂直方向微動機構12bにより距離制御を行いながら水平方向微動機構12aで走査を行うことでサンプル11の表面の形状像の測定が可能となる。
【0030】
また、コンタクト方式の測定の場合には、加振用の圧電素子7を振動させずにカンチレバー部3のたわみ量を検出して探針4とサンプル11を近接させたときのたわみ量が一定となるように垂直方向微動機構12bにより距離制御を行いながら水平方向微動機構12aで操作を行うことでサンプル11の表面の形状像の測定が可能となる。
【0031】
次に図2の模式図を参照して図1のカンチレバー2の探針4とサンプル11の詳細な構造を説明する。図2(a)はカンチレバー部3の側面を長手方向に沿って見た図面である。また、図2(b)はカンチレバー部3を探針4側から見た図面であり図2(a)の左側面図に相当する。
【0032】
図2(a)では垂直な段差構造を持つサンプル11を探針4で走査している様子が示されている。この例ではカンチレバー部3の長手方向に沿ってサンプル11を図面に矢印で示したように右側から左側に水平方向微動機構12aで移動させることにより、サンプル表面の左側から右側に向かって探針4で走査が行われる。
【0033】
図2(a)に示されるように、カンチレバー2は変位検出機構10のレーザ光をフォトディテクタ9の方向に反射させるとともにカンチレバー2の末端部がサンプル11に衝突しないようにするために走査面に対して10°傾けて固定されている。
【0034】
カンチレバー部3は長さ160μm、幅50μm、厚さ4.6μmである。探針4は高さ11μmの三角錐形状であり先端半径は10nmである。図2(b)の方向から見た場合の中心に稜線のうちの1本4bがあり、残りの2本の稜線4c、4dは図2(b)の中心の稜線に対して対称な位置にある。また、三角錐は3つの側面4e、4f、4gで囲まれている。したがって図2(a)の配置において、探針4とサンプル11を走査したときにサンプル上の凸部11aに対峙する探針4の側面4gが探針先端4aを通りサンプル11の表面に直交する垂線20に対して探針先端4aから探針末端4h掛けてサンプル上の凸部11a方向に広がるように垂線20に対して角度θで傾斜している。
【0035】
本実施形態では、図2(a)の方向から見たときの三角錐の頂角は35°であり、走査面に対して10°傾けて固定した状態なのでθは25°である。
【0036】
また、図2(b)の方向から見た場合の稜線4bと4c、4bと4dが成す角はそれぞれ18°である。
【0037】
ここで、図3の模式図を用いて図1に示す本実施形態と同一の装置とカンチレバーを使用し、カンチレバーを同一の配置にした場合の従来の走査方法を説明する。本実施形態では3軸ともサンプルが駆動されており図面中の矢印はサンプルの動作方向を示している。
【0038】
図3では振動方式で探針4とサンプル11の距離制御が行われる。本実施形態で使用されるカンチレバー部3の共振周波数300kHzであり、探針4は加振用の圧電素子7により共振周波数より0.5kHz程度低周波側の周波数で加振されている。このとき変位検出機構10により振幅量の計測が行われる。探針先端4aとサンプル11が十分離れている場合の振幅量は10nmであり、振幅が10%減衰して9nmの振幅量になる位置で探針先端4aとサンプル11間の距離制御が行われる。サンプル11は段差1μmの垂直なエッジ11aを持ちガラス基板21上にクロム22により2μmピッチのパターンを形成したライン・アンド・スペースのサンプルである。
【0039】
測定に際しては図1の装置で、垂直方向微動機構12bの動作範囲内で測定が可能な位置、好ましくはカンチレバー部3の振幅が10%減衰する位置で垂直方向微動機構12bの動作中心位置になるように粗動機構13により探針4とサンプル11が近接される。また測定は50μm×50μmの領域をラスタスキャンする。したがって1ラインの測定長さXはX=50μmである。また、ライン方向の測定点数Pは256点で等間隔とした。すなわち測定点間の距離をΔxとすると、Δx=X/P=195nmである。
【0040】
まず、図3(a)では走査を実施しておらず、垂直方向微動機構12bに接続されるサーボ機構をONすることで振幅が10%減衰した位置まで探針4とサンプル11が近接し、このときの垂直方向微動機構12bの圧電素子に印加される電圧によりサンプル11の高さが認識される。
【0041】
図3(b)では、垂直方向微動機構12bのサーボ機構をOFFにして探針4とサンプル11を10nmだけ引き離す。今回の測定環境では探針4とサンプル11が10nm以上離れていれば探針先端4aをサンプル11の表面の吸着水層から離すことができる。
【0042】
図3(c)ではΔxだけ水平方向微動機構12aによりサンプル11を走査する。このとき、探針4とサンプル11の衝突を監視するためにサーボ機構はONの状態で走査が行われる。後述するように探針4とサンプル11が衝突したときの衝撃をできるだけ小さくするために、水平方向微動機構12aの圧電素子にランプ波を印加することで等速走査が行われる。
【0043】
図3(d)では水平方向の走査をやめ、再び振幅が10%減衰する位置まで探針とサンプルを近づけ、サンプル高さを認識する。
図3(e)では図3(b)と同様に再び10nmだけ探針4とサンプル11を引き離す。
【0044】
図3(f)では図3(c)と同様に水平方向微動機構12aによりサンプル11を走査する。サンプルのエッジ部11aの高さは1μmであり、探針4とサンプル11の離間量10nmよりも高いため、走査の途中で探針4の側面にサンプルのエッジ部11aが衝突する。この衝突によりカンチレバー部3の振幅量が減少する。走査中はサーボ機構はONの状態で振幅量は常に監視されているため走査中の振幅の減少により探針4とサンプル11が接近したと判断し振幅が減衰したら瞬時に走査を中断する。
【0045】
図3(g)では衝突を検知し走査を中断した後、垂直方向微動機構12bのサーボ機構をOFFにして再び10nmだけ探針4とサンプル11を離間させる。
図3(h)垂直方向微動機構12bのサーボ機構をONにして図3(e)の位置からΔxの位置まで再び走査を行う。
【0046】
図3(i)水平方向の走査をやめ、再び振幅が10%減衰する位置まで探針4とサンプル11を近づけ、サンプル11の高さを認識する。探針4を近づける場合には探針先端4aよりも側面4gの方が先にサンプルのエッジ部11aが接触する。したがって段差部における形状像には探針4の側面のアーティファクトが入る。なお、このアーティファクトは探針4の形状をあらかじめ認識しておくか、測定の都度探針4の形状を測定する専用のサンプルで測定することで補正することができる。
【0047】
図3(j)垂直方向微動機構12bのサーボをOFFにして探針4を10nm離間させる。
図3(k)垂直方向微動機構12bのサーボをONにして再びΔxだけ水平方向に走査する。
図3(l)再び振幅が10%減衰する位置まで探針4とサンプル11を近づけ、サンプル11の高さを認識する。
【0048】
以下同様の動作を所定の走査点数まで繰り返すことで1ラインのサンプル11の表面の形状像を測定することができる。1ラインの測定が終わったら次のラインに移り同様の動作で測定を行っていく。
【0049】
ここで、図3(f)のようにサンプルのエッジ部11aが探針4の側面4gから衝突する場合と、図3(i)のように上下方向の動作中に探針側面4gとにサンプルのエッジ部11aが衝突する場合を比較すると、側面から当たる方が同じ振幅減衰量を得るのにより大きな力がかかる。また、図3(i)の場合には上下方向に加振も行っているので衝突に伴う探針4とサンプル11のダメージはわずかである。したがって先鋭化されている探針の先端4aは側面からの衝突の衝撃で大きな力がかかり破損してしまう場合がある。探針の先端4aが破損してしまうと正確な形状像測定ができなくなり分解能も低下してしまう。
【0050】
また、万一側面からの衝突が行ったときに衝撃緩和のために水平方向の走査速度も遅くする必要があり測定に時間がかかってしまう。
【0051】
衝突を完全に回避するためにはサンプル11の最大段差以上(この例では1μm以上)の離間を行うとよいが、測定点で探針4とサンプル11を接近させるのに時間がかかりトータルの測定時間が長くなってしまう。また、形状が未知のサンプルでは最大段差を認識することは不可能である。
【0052】
ここで、図4の模式図を参照してサンプル11の垂直な段差11aを超えるときの探針の側面4gからサンプルのエッジ部11aが衝突する場合の衝突回数を計算する。なお図4の矢印はスキャンに伴うサンプルの移動方向を示す。
【0053】
サンプルのエッジ部11aの段差の高さをh、探針4とサンプル11を走査したときにサンプル上の凸部(エッジ部)11aに対峙する探針の側面4gが探針先端4aを通りサンプル11の表面に直交する垂線20に対して探針先端4aから探針末端4hに掛けてサンプル上の凸部(エッジ部)11a方向に広がるように垂線20に対して角度θで傾斜させた場合に、探針側面4gに最初に衝突した位置から探針先端4aまでの水平距離はh×tanθとなる。すなわち探針先端4aが段差を越える間にh×tanθ/Δx回以上、探針側面4gとサンプルのエッジ部11が衝突する。例えば、図3の例では、h=1μm、θ=25°、Δx=195nmなので約2.4回の衝突が起きてしまう。
【0054】
これに対して本実施形態の動作原理を図5の模式図で説明する。本実施形態では離間量と水平走査速度以外の基本的な動作方法は図3で説明したものと同じであるため離間量の設定方法と水平走査速度以外の説明は省略する。また、図5においても3軸ともサンプル側が駆動され図中の矢印はスキャンに伴うサンプルの移動方向を示す。
【0055】
図5において離間量をΔhとした場合に、サンプルのエッジ部11aとサンプルの側面4gの間に隙間ができる。この隙間量はΔh×tanθである。したがって、測定点間の距離ΔxをΔh×tanθ よりも小さくに設定すると、走査中に探針側面4gに側面からサンプルのエッジ部11aが衝突することが物理的に起きなくなる。
【0056】
したがって、離間量の最適値は、Δh>Δx/tanθの条件を満たすように設定すればよい。1ラインの長さXと1ライン中での等間隔の測定点の数Pを指定する場合には、Δh>(X/P)/tanθとなる。
【0057】
θの値は、あらかじめ探針の種類ごとに代表値を設定しておくか、探針の頂角よりも小さい頂角を持つ探針形状測定用の専用サンプルをスキャンしたときの測定データや電子顕微鏡の観察データなどで測定の都度計測を行ってもよい。θの値を手動で入力する場合には、測定者があらかじめθの値が設定されたカンチレバーの種類を選択したり、測定前に探針形状測定用のサンプルを測定者が測定して制御装置にθの値を入力する。また、探針形状測定用のサンプルを測定前に自動測定を行ったり電子顕微鏡や光学顕微鏡における画像処理により制御装置に自動認識させることで制御装置が自動的にθの値を認識する。このように手動または自動で制御装置にθの値を認識させることで制御装置は自動的に離間量を設定する。
【0058】
離間量が大きくなると測定時間が掛かってしまうので、上記の条件を満たす範囲でできるだけ離間量は小さいことが好ましい。また、探針の形状のばらつきや探針の形状を測定する場合の測定誤差、垂直方向微動機構や水平方向微動機構のヒステリシスやクリープに伴う動作量の誤差を考慮する場合には、安全のためΔh>Δx/tanθを満たす範囲で若干余裕度を持たすことが好ましい。従来よりも高速走査を行うために離間量はサンプルの最大高さ未満で、さらに好ましくは Δx/tanθの1.2倍以下であることが好ましい。
【0059】
本実施形態の場合には、Δx/tanθ=419nmであるので、1.2倍してΔh=503nmに設定をした。
【0060】
また、図3で水平方向に走査行う場合には側面衝突の衝撃を少なくするためにランプ波を印加して等速走査を行ったが、本実施形態では側面衝突は物理的に起こりえないので、ステップ波で水平方向移動機構12bを駆動し、測定時間の短縮をはかった。万一残留振動の静定時間が長い場合には従来よりも高速なランプ波駆動を行ってもよい。また任意の加速信号により駆動を行うこともできる。また水平走査中のサーボ動作は側面衝突の監視を行う必要がないのでOFFしておくことができ、サーボ動作にかかっていた時間だけ測定時間を短くすることができる。
【0061】
ここで、サンプル表面の垂線に対するサンプル側面の傾斜角θがθ=25°の場合の、1ラインの長さXと1ライン中での等間隔の測定点の数PにおけるΔhの閾値を表1に示す。離間量はこの表の値よりも大きい任意の値に設定するとよい。
【0062】
【表1】

【0063】
なお、本実施形態ではサンプルの最大高さが分からなくても表1を超える値に設定しておけば側面衝突は起こらないが、もし最大高さが分かっている場合で、表1の条件の最大高さを超えない場合には表1の値以下でも側面衝突は起きないので、この場合にはサンプルの最大高さ以上に設定しておけばよい。なお図2〜図5の模式図上ではサンプルを置いたときの傾きは簡略化のため記載していないが実際にはサンプルの最大高さはサンプルの傾きも考慮する必要がある。
【0064】
また本実施形態ではサンプル11を垂直な段差11aをもつサンプルとして一番厳しい条件を仮定したが、サンプルの形状は任意のものが適用できる。
【0065】
以上のように離間量を設定することで、サンプルが探針に側面衝突を行うことなく、探針やサンプルの損傷なしで、高速走査が可能となる。
【0066】
<第2の実施形態>
図6は本発明の第2実施形態を示す探針4とサンプル11の関係を示す模式図である。測定装置と探針の形状は第1の実施形態と同一のものを使用しており、図6は図2(b)の方向と同一の方向からの図面である。また、図6の矢印もスキャンに伴うサンプルの移動方向を示す。
【0067】
サンプル11は第1の実施形態と同じく段差1μmをもつパターンサンプルであり、第1実施形態がカンチレバーの長手方向に沿って走査したのに対して、本実施形態ではカンチレバーの長手に直交する方向に走査を行っている。またカンチレバーは長さ400μmと第1の実施形態よりも長くしてバネ定数の小さいものを使用し、探針4とサンプル11間の距離制御方法はコンタクト方式を採用している。第1の実施形態が振幅の減衰量をもとに制御を行っているのに対して本実施形態ではたわみ量を設定して距離制御が行われる。
【0068】
本実施形態の動作方法で離間量の最適化を行わずに走査する従来の走査方法を適用する場合にはカンチレバー部3のたわみ量の計測の他、長軸まわりのねじれ方向の計測も行っており、探針4にサンプル11のエッジ部11aが側面からの衝突することを監視し、衝突が起こったときにはねじれを検出して離間動作が行われていた。その他の動作方法は図3で説明した動作方法と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施形態の探針4は探針先端4aを通りサンプル11の表面に直交する垂線に対する左右の稜線のなす角度がそれぞれ18°で対称な形状をしている。また、探針4とサンプル11を走査したときにサンプル上の凸部(エッジ部)11aが近づく側面の部位は第1の実施形態が三角錐の斜面4gであるのに対して、側面の稜線4dが最も先にサンプル11aに衝突する。
【0070】
本実施形態では1ラインあたりの測定点数を1024ピクセルとし、20μm×20μmの領域をラスタスキャンした。
【0071】
この実施形態の場合はθ=18°であり、X=20μm、P=1024であるので、Δh>Δx/tanθ=61nmの条件を満たすように離間量を設定した。安全のため1.2倍してΔh=73nmとした。
【0072】
ねじれ方向のバネ定数は、たわみ方向のバネ定数に対して大きい場合がほとんどであり、側面からの衝突の場合には大きな力が掛かり探針4やサンプル11が破損するが、本実施形態のように離間量を設定することで側面4dからの衝突は物理的に起こらないので、ねじれの検出は不要で、探針4やサンプル11が破損することなしに、走査時間を短縮することができる。
【0073】
<第3の実施形態>
図7は本発明の第3の実施形態の探針4とサンプル11の関係を示す模式図でありカンチレバー部3の側面を長手方向に沿って見た図面である。図7の矢印もスキャンに伴うサンプルの移動方向を示す。
【0074】
本実施形態は図2に示す第1の実施形態のカンチレバーの先端部分にサンプル表面に垂直に長さLのカーボンナノチューブ30を設けたものである。その他の構成は第1実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。本実施形態では母材の探針4とカーボンナノチューブ30を含めて探針部25と定義することができる。
【0075】
探針部25とサンプル11を走査したときにサンプル上の凸部11aに対峙する探針部25の側面4gが2段の傾斜角を有している。このうち、カーボンナノチューブ30は探針部の先端25aを通り、サンプル11の表面に垂直な方向と平行な角度で取り付けられている。したがって探針先端25aを通りサンプル11の表面に直交する垂線20に対して探針先端25aから探針末端25bに掛けてサンプル上の凸部11a方向に広がるような傾斜角θを持つのは母材の探針部4の側面4gである。
【0076】
このため本実施形態では離間量設定に影響する傾斜角θはカーボンナノチューブ30が取り付く母材となるカンチレバーの探針4の角度であるθ=25°となる。
【0077】
この場合の離間量は、カーボンナノチューブ30の長さを考慮して、Δh>L+(Δx/tanθ)を満たすように設定する。本実施形態ではL=200nmのカーボンナノチューブを取り付け、100μmの領域を512ピクセルで走査したので、表1よりΔh>200+419=619nmの条件を満たすとよく、安全のため1.2倍してΔh=743nmとした。
【0078】
<第4の実施形態>
図8は本発明の第4の実施形態の探針とサンプルの関係を示す模式図でありカンチレバーの側面を長手方向に沿って見た図面である。図8の矢印もスキャンに伴うサンプルの移動方向を示す。
【0079】
本実施形態は図2に示す第1の実施形態のカンチレバーの先端部分4aに長さL1のカーボンナノチューブ31が斜めに取り付けられた場合である。その他の構成やサンプル11の形状や走査方向は第1、第3の実施形態と同じであるため詳細な説明は省略する。本実施形態でも母材となる探針4とカーボンナノチューブ31が一体となって探針部26を形成する。
【0080】
本実施形態では、電子顕微鏡による計測や垂直なエッジを持つ探針形状測定サンプルによりカーボンナノチューブ31の取付角を計測する。
【0081】
このときサンプル11の表面に垂直な垂線20に対して長さL1のカーボンナノチューブθ2の角度で取り付いているとすると、垂線に沿ったカーボンナノチューブ31の高さLはL=L1cosθ2である。
【0082】
探針部26とサンプル11を走査したときにサンプル11の凸部(エッジ部)11aが近づく側の探針部26の側面は、探針先端26aを通りサンプル表面11に直交する垂線20に対して探針先端26aから探針末端26b掛けてサンプル11の凸部(エッジ部)11a方向に広がるように垂線20に対して2段のテーパを持つ。
【0083】
このうち母材となる探針4側が垂線と成す角θ1としカーボンチューブ31の取付角をθ2としたときに、θ1>θ2であれば探針26の側面との衝突を回避するためには、探針26を離間させたときに探針26の側面とエッジ部11aの水平方向の間隔は角度が大きい方が狭くなるので、離間量の設定には角度の大きい母材となる探針側の側面4gが依存するためカーボンナノチューブ31の垂線に沿った高さを考慮して離間量を Δh>L1cosθ2+(Δx/tanθ1)の条件を満たすように離間量を設定する。本実施形態ではθ1=25°の探針にL=200nmのカーボンナノチューブをθ2=10 °で取り付け、100μmの領域を512ピクセルで走査したので、Δh>616nmの条件を満たすように離間量を設定する。今回も余裕度を見て1.2倍しΔh=740nmに設定した。
【0084】
なお、θ1≦θ2の場合には探針26のサンプル11の凸部(エッジ部)11a方向のテーパ角のうち最先端部のカーボンナノチューブの角度が大きくなるためΔh>Δx/tanθ2を満たすように高さを設定する。例えばθ1=25°の探針にθ2=30°で図8と同じ長さのカーボンナノチューブが取り付けられていて、測定領域と測定点数が同じ場合には、Δh>339nmを満たせばよい。
【0085】
以上、本発明の走査型プローブ顕微鏡について説明したが、本発明は上記の発明に限定されず、さまざまな形態に用いることができる。
【0086】
探針やカンチレバーの形状は任意のものが適用可能である。例えばカンチレバーは短冊型の他上面視トライアングル形状のものも使用できる。また探針はサンプル上の凸部に対峙する探針の側面が探針先端を通るサンプル表面への垂線に対して探針先端から前記探針末端掛けてサンプル上の凸部の方向に広がるように傾斜角を持てば、三角錐の以外でも円錐や四角錘など任意の形状のものが適用できる。材質もシリコンに限定されるシリコンナイトライドやダイヤモンド、ガラスなど様々な材質のものに適用できる。また探針のテーパ角が多段になっていてもよい。多段の場合の離間量の設定方法は第4の実施形態で説明したカーボンナノチューブが斜めに取り付けられている場合と同じ考え方ができる。例えば根元側の角度がθ1先端側の角度がθ2の2段のテーパの場合には、先端側の角度θ2が根元側の角度θ1以上の場合θ1≦θ2には、先端が垂線となす角度のみを考慮すればよくΔh>Δx/tanθ2の条件を満たすように離間量を設定する。また、先端側の角度θ2が根元側θ1に比べて小さい場合には、離間量は先端側の垂線に沿った高さLをするとΔh>L+(Δx/tanθ1)に設定する。このように多段のテーパを持つ探針はカーボンナノチューブを取り付けた探針の他にも、シリコン製の探針の先端をエッチングにより先鋭化した探針などにも適用される。
【0087】
また装置構成や3軸微動機構の動作原理も円筒型圧電素子に限定されす、積層型圧電素子と並行バネや変位拡大機構を組み合わせたステージや、電磁モータやボイスコイルモータで動作するメカニカルステージなど任意のものが適用可能である。3軸微動機構の配置もサンプル側に限定されず探針側に3軸微動機構を設けてもよいし、探針とサンプル側に分割して設けてもよい。また、水平方向微動機構は1軸のみで構成してもよい。カンチレバーの変位検出方法も光てこ法の以外にもカンチレバーに抵抗体を設けて抵抗値の変化により変位を検出する自己検知方式も使用できる。またスキャン方法もラスタスキャンに限定されず、1ラインのみのスキャンやスキャン方向での探針の傾斜角が分かれば自由曲線のスキャンも可能である。水平走査や垂直動作の方法も任意の方法が適用可能である。
【0088】
また、本発明は走査型プローブ顕微鏡の形状像測定に限定されず、粘弾性測定、電気特性、摩擦力、磁気力、光学特性などさまざまな物性測定にも適用される。
【0089】
さらに本発明は走査型プローブ顕微鏡に限定されず、例えばダイヤモンド探針を使用して差動トランスにより測定力を制御しながら表面の走査を行う表面粗さ計や、段差計、3次元測定器などの接触式の表面性状測定装置全般に適用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 走査型プローブ顕微鏡
2 カンチレバー
3 カンチレバー部
4 探針
4a 探針先端部
4b、4c、4d 探針の稜線
4e、4f、4g 探針の側面
4h 探針の末端部
5 カンチレバーの基端部
6 カンチレバーホルダ
7 加振用圧電素子
8 レーザ
9 フォトディテクタ
10 変位検出機構
11 サンプル
11a サンプルのエッジ部
12 3軸微動機構
12a 水平方向微動機構
12b 垂直方向微動機構
13 粗動機構
20 垂線
21 ガラス基板
22 クロム薄膜
25、26 探針部
25a、26a 探針先端部
25b、26b 探針末端部
30、31 カーボンナノチューブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
探針先端をサンプル表面に対向するように配置し、任意の測定点において前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得した後、前記探針と前記サンプルを離間させ、次の測定点に前記探針と前記サンプルを相対的に走査して、再び前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得する動作を繰り返しながら複数の測定点でサンプル表面の形状または物性を計測する表面性状測定装置の走査方法において、
前記探針と前記サンプルを走査したときに前記サンプル上の凸部に対峙する前記探針の側面を前記探針先端を通る前記サンプル表面への垂線に対して前記探針先端から前記探針末端にかけて前記サンプル上の凸部方向に広がるように前記垂線に対して任意の角度θで傾斜させ、測定点間の距離をΔx、前記探針と前記サンプルの離間量をΔhとした場合に、
Δh>Δx/tanθ
の条件を満たすように前記探針と前記サンプルの離間量を設定することを特徴とする表面性状測定装置の走査方法。
【請求項2】
探針先端をサンプル表面に対向するように配置し、任意の測定点において前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得した後、前記探針と前記サンプルを離間させ、次の測定点に前記探針と前記サンプルを相対的に走査して、再び前記探針と前記サンプルを近接または接触させて測定データを取得する動作を繰り返しながら複数の測定点でサンプル表面の形状または物性を計測する表面性状測定装置の走査方法において、
前記探針と前記サンプルを走査したときに前記サンプル上の凸部に対峙する前記探針の側面が多段の傾斜角を有し、少なくとも1段以上の傾斜角が前記探針先端を通る前記サンプル表面への垂線に対して前記探針先端から前記探針末端かけて前記サンプル上の凸部方向に広がるように前記垂線に対して任意の角度で傾斜し、前記垂線に対する前記傾斜角のうち最も大きな角度をθMAXとし、θMAXが前記探針の最先端部の角度ではない場合には、前記最大傾斜角を持つ部分よりも先端側の前記垂線に沿った探針の高さをL、測定点間の距離をΔx、前記探針と前記サンプルの離間量をΔhとした場合に、
Δh>L+Δx/tanθMAX
の条件を満し、
θMAXが前記探針の最先端部の角度の場合にはΔh>Δx/tanθMAXの条件を満たすように前記探針と前記サンプルの離間量を設定することを特徴とする表面性状測定装置の走査方法。
【請求項3】
前記走査が直線上の走査を含む場合に、1ラインの長さXと1ライン中での等間隔の測定点の数Pを指定して、前期測定点間の距離Δx=X/Pを求め、前記探針と前記サンプルの離間量を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の表面性状測定装置の走査方法。
【請求項4】
前記探針とサンプルの離間量が、測定領域におけるサンプル表面の最大高さ未満である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表面性状測定装置の走査方法。
【請求項5】
前記探針とサンプルの離間量が、Δx/tanθまたはL+Δx/tanθMAXまたはΔx/tanθMAXの1.2倍以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の表面形状測定装置に走査方法。
【請求項6】
前記探針と前記サンプルを相対的に移動させる制御装置を備え、前記傾斜角θまたは前記θMAXと前記測定点間の距離Δxを含む情報を前記制御装置に入力または自動認識させることで、前記制御装置が前記探針と前記サンプルの離間量を自動的に設定するように構成された、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の走査方法により動作する表面形状測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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