説明

表面改質材料、その製造方法及びその使用

【課題】腐食、摩耗に耐えるに十分な厚さ及び/又は構造を有するポリマー層で被覆される導体又は半導体領域を含む材料を提供する。
【解決手段】開始剤官能基を有する少なくとも1種のジアゾニウム塩を使用して、前記ジアゾニウム塩由来のグラフトのグラフト化により得られるアンダーコートを形成して、前記アンダーコートにおいて導体材料又は半導体材料の表面に開始剤官能基をもたらす、及び、前記開始剤官能基により開始される、少なくとも1種のモノマーのインサイチュー重合、特にフリーラジカル重合、によって得られるポリマー層を、前記アンダーコート上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明の主題は、表面が改質されている材料(特に、金属材料)、及びその製造方法である。本発明は更に、材料(特に、インプラント、ステント又は人工器官)の製造のための使用にも関する。
【0002】
有機層による金属表面の被覆は、一連の重要な工業的方法を構成する(Plankaert,1994;Biethan et al.,1991;Hochberg,1979)。これらの方法は、液体若しくは固体ポリマーシートからのいずれか又は更に電気泳動による金属シート上へのポリマーの堆積を含む。これらの方法では、金属と有機層との間にわずかに弱い結合が形成される。他の方法が記載されているが、それらも、例えばPt上へのポリフェノールの堆積(McCarley,1990)や、特に鉄上への導電性ポリマーの電着(Lu et al.,1988;Cheung et al.,1988;Troch−Nagels et al.,1992;Schirmeisen et al.,1989;Beck et al.,1994;Otero et al.,1992;Ferreira et al.,1990;Ferreira et al.,1996;Krstajic et al.,1997;Su et al.,1997;Fraoua et al.,1999)における弱い結合を含む。
【0003】
金属と有機層との間のより強い結合を作り出すための二つの型の方法が存在する。第1の型において、結合は、有機層と金属表面の酸化物との間に形成され(Biethan,1991;Hochberg,1979;Boenig,1984;d’Agostino,2000;Vautrin−Ul et al.,2000)、そして、第2の型において、結合は金属自体と有機層との間に形成される。
【0004】
共有結合を用いて金属表面にポリマーを結合させることを可能にする電気化学的方法が既にいくつか存在する。N−ビニルピロリドンの酸化によりポリマー層を白金に結合することができる(Doneux et al.,1997;Calberg et al.,1998)。更に、アミン類の電気化学的酸化は、白金上に−NHR単位のグラフト化を引き起こす。ω−ジアミン(例えば、エチレンジアミン)を用いることにより、ポリエチレンイミンをAu、Pt又はAlに結合することが可能である(Herlem et al.,1997;Herlem et al.,2000;Fahys et al.,2002;Herlem et al.,2003;Lakard et al.,2002)。しかしながら、有機基質の電気化学的酸化を用いる方法は、一般に非常に酸化しやすい工業用金属に適用可能でないことに注意しなければならない。従って電気化学的還元法が特に望ましい。これらの方法(Lecayon et al.,1982;De
niau et al.,1992;Viel et al.,1993;Bureau
et al.,1994;Tanguy et al.,1993;Tanguy et al.,1994;Tanguy et al.,1996;Deniau et al.,1997;Bureau et al.,1997;Deniau et al.,1998;Charlier et al.,1999;Viel et al.,1999;Jerome et al.,2001;Baute et al.,199
9;Mertens et al.,1998;Calberg et al.,1997)の一つは、活性なアクリルモノマーを金属表面(例えば、ニッケル又は鉄)上に還元することを含む。無水の条件下に形成されるラジカルアニオンが、金属との反応及び重合の継続の原因となる。ポリマー(2〜10nm)の細かい層が表面上に共有結合型に結合する。同時に、より厚い層のポリマーはただ堆積するだけであるが、洗浄処理で除去することができる。
【0005】
官能化(functionalized)表面上に前もって形成したポリマーをグラフト化する方法(「グラフティング−オントゥ(grafting-onto)」)はいくつか既に記載されており、ジ
アゾニウム塩の電気化学的還元によって得られるポリアリール基層にポリマーを付着することを可能にしている。第1の方法は、光化学的照射下にポリスチレンと反応するベンゾフェノン単位を金属上にグラフト化することからなる。第2の方法は、マグネシウムイオン及び表面に機械的に堆積しているポリエステルの遊離型のカルボキシル基と反応することができる安息香酸単位をグラフト化することからなる(Adenier et al.,2002)。最初の二つと同様の方法も記載されている(Lou et al.,2002)が、これは電気化学によりペンダントアクリレート基を含むポリエステルをグラフト化することを含んでいる。このようにしてグラフト化されたポリ−ε−カプロラクトンはポリ(塩化ビニル)と混和性があり、従って得られるPVC層は接着性が強い。
【0006】
「グラフティング−フロム(grafting-from)」型の方法がいくつか開発されており、
官能化表面からポリマーを成長させることを可能にしている。鉄の表面上で、低分子量のポリアクリレートの電気化学的グラフト化を実施することが可能であり、そのアクリレート単位はその後に別のモノマーの重合を可能にする化学的官能基(chemical function)を含有している。例えば、エチル2−クロロプロピオネートアクリレートは、原子移動ラジカル重合(ATRP)によるスチレンの重合開始を可能にし(Claes et al.,2003)、ノルボルネニルメチレンアクリレートは、開環メタセシス重合(ROMP)によるノルボルネンの重合可能性を提供し(Detrembleur et al.,2001)、そして2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−イルオキシ)−エチルアクリレート(PTEA)は、アルコキシアミン(重合開始剤)が存在するため、ニトロキシド媒介プロセス(NMP)によるスチレンの重合を可能にしている(Voccia et al.,2003)。
【0007】
本発明の目的は、ジアゾニウム塩の還元によって得る基層の前グラフト化により、導体又は半導体領域(特に、金属領域)を含む表面上に、ポリマーのグラフト化を可能にするグラフト化の新規な「グラフティング−フロム」法を提供することである。
【0008】
本発明の目的は特に、腐食(例えば、生物学的媒体における)、及び摩耗(例えば、摩擦による)に耐えるのに十分な厚さ、及び/又は適した構造を有するポリマー層で被覆される導体又は半導体領域を含む材料を提供することである。
【0009】
本発明の目的の一つは、人工器官、ステント又はインプラントの枠内での使用を可能にするポリマーで被覆される導体又は半導体領域を含む材料(特に生物学的適合性のある)を提供することである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、前記材料の導体又は半導体領域の表面改質方法であって、前記材料上に任意のポリマーをグラフト化させることができる方法を提供する。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、工業的に応用可能であり、そして水の影響を受けない、導体又は半導体領域の表面改質方法を提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、任意の形態の導体又は半導体領域の表面改質方法を提供することである。
【0013】
本発明は、重合開始官能基(polymerization-initiation function)を有する少なくとも1種のジアゾニウム塩の使用に関するものであって、一方では、前記ジアゾニウム塩由来のグラフトのグラフト化により得られる基層を形成して、導体材料又は半導体材料の表面に重合開始官能基をもたらすための前記ジアゾニウム塩の使用、及び他方では、前記重合開始剤官能基(polymerization initiator function)により開始される、少なくとも
1種のモノマーの非アニオンインサイチュー(in situ)重合によって得られるポリマー層を、前記基層上に形成するための前記ジアゾニウム塩の使用に関する。
【0014】
本発明は、ポリマー層がラジカル重合により又は開環重合により得られることを特徴とする、上記定義の使用に関する。
【0015】
ラジカル重合法のうちで、原子移動ラジカル重合法(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)及び光重合に言及することができる。
【0016】
本発明は、ポリマー層が次の重合方法;開環重合(ROP)、光重合、原子移動重合及びニトロキシド重合、のうちの一つにより得られることを特徴とする、上記定義の使用に関する。
【0017】
前記ジアゾニウム塩由来で重合開始剤官能基を有するグラフトは、以下、重合開始剤グラフトと称する。このグラフトは材料表面上にグラフト化した実在物、従って前記表面に結合した実在物に相当する。
【0018】
語句「重合開始剤グラフト」は、重合連鎖反応の最初の種を形成することの可能な化合物を示す。
【0019】
前記ジアゾニウム塩由来で重合開始剤官能基を有するグラフトもまた、重合開始剤グラフトと呼ばれ、炭素骨格及び重合開始剤官能基を含有することを特徴とする。前記のラジカル重合反応、特にATRP又はNMPにおいて、前記開始剤グラフトは、重合開始剤官能基を有し、表面上にグラフト化され、還元的開裂を受けて、開始剤の炭素骨格が材料表面に残される結果となる。一方、前記のポリマー層を形成する重合開始剤官能基がポリマー鎖の末端に見いだされる。
【0020】
語句「導体又は半導体材料」は、禁止帯を持たない導体材料又はその禁止帯が電子ボルト程度である半導体材料のいずれかを示す。
【0021】
語句「インサイチュー重合」は、未処理か又は本発明の方法(「グラフティング−フロム」法)により改質されるかいずれかの、導体又は半導体表面の存在下に実施される重合反応を示す。この重合反応は、既に形成されたポリマー(「グラフティング−オントゥ」)を用いて、表面がグラフト化される場合に対するものである。
【0022】
好ましい重合方法は、原子移動ラジカル重合(ATRP)(Claes et al.,2003)、ニトロキシド媒介重合(NMP)(Voccia et al,2003
)、開環重合(ROP)(Edmondson et al.,2004;Husseman et al.,1999)の諸方法、並びに可逆的付加−開裂連鎖移動重合(RAFT)(Edmondson et al.,2004;Baum et al.,2002)及び開環メタセシス重合(ROMP)(Detrembleur et al.,2001)の諸方法である。
【0023】
本発明は更に、材料の対象となる導体又は半導体領域に関するものであって、前記領域の表面が改質されており、以下の層を含む材料の所定の導体又は半導体領域に関する。
(A)ジアゾニウム塩由来の開始剤グラフトにより構成され、そして前記表面に結合している基層であって、前記基層と対象となる前記導体又は半導体領域の表面との間に介在する結合はすべて共有結合であり、前記基層が
(a)厚さ約1nm〜約1μm、好ましくは約3nm〜約100nmを有し、
(b)対象となる前記導体又は半導体領域の表面に直接に結合するグラフトが、特に領域のグラフト原子の原子結合により結合し、特に前記領域のグラフト原子の共有炭素結合により結合する、
ことを特徴とする前記基層、及び
(B)前記基層の上に位置するポリマー層であって、前記定義の開始剤存在下に少なくとも1種のモノマーのインサイチュー非アニオン重合に起因するポリマーにより構成されるポリマー層であり、
(a)前記ポリマー層が厚さ約0.1μm〜約100μmを有し、
(b)ポリマー層が対象となる前記導体又は半導体領域の表面の約80%〜約100%を被覆し、特に前記領域の約95%〜約100%を被覆するポリマー層、
を含む材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
【0024】
本発明は更に、材料の対象となる導体又は半導体領域に関するものであって、前記領域の表面が改質されており、上記定義のポリマー層がラジカル重合又は開環重合に起因するポリマーにより構成されることを特徴とする領域に関する。
【0025】
ラジカル重合法のうち、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)及び光重合法に言及できる。
【0026】
本発明は更に、材料の対象となる導体又は半導体領域に関するものであって、上記定義のように、前記領域の表面が改質されており、上記定義のポリマー層が次の重合方法;開環重合(ROP)、光重合、原子移動重合及びニトロキシド媒介重合から選択される非アニオン重合に起因するポリマーにより構成されていることを特徴とする材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
【0027】
語句「材料の所定の導体又は半導体領域」は、処理、例えば本発明に記載する処理が適用される導電体又は半導体から構成される材料の部分を示す。
【0028】
導体又は半導体領域を含む複合材料上に、これらの領域の特定の領域だけを官能化することができ、従って対象となる領域を構成することができる。従って、電気化学的ルートによれば、これらは電気グラフト化が起こる電気的に接続される領域であり、そして化学的ルートによれば、これらは溶液と接触するに至る領域であり、他の領域は必要に応じて任意にマスクされる。
【0029】
語句「ジアゾニウム塩由来の開始剤グラフト」は、有利に、一方で表面と結合を形成し、他方で重合を開始できる化学的官能基を所有する、芳香族基又はポリアリール型連鎖のいずれかを示す。
【0030】
本発明の枠内で使用される重合開始剤は、例えば1種以上のハロゲン原子を有する分子であることができ、前記ハロゲン原子が重合開始剤官能基に相当する。
従って、前述のように、前記の重合反応の間、前記ハロゲン原子はポリマー鎖の末端に位置し、前記ポリマー層を形成する。
【0031】
従って、本発明は、重合開始を可能にする官能基(function)を有するジアゾニウム塩を含有する。本発明の特定の実施態様によれば、前記の基層は、いくつかのジアゾニウム塩の連続的グラフト化により形成され、例えばAAA−BBBの形態であり、Aはジアゾニウム塩AN起源のアリール基であり、Bはジアゾニウム塩BN起源のアリール基である。
【0032】
語句「領域のグラフト原子の原子結合」は、いかなる型であっても、グラフトの原子をその領域の原子に結合し、そして、そのためにグラフトが表面に強く結合することを確実にする化学結合を示す。
【0033】
語句「領域のグラフト原子の共有炭素結合」は、特定の結合、例えばグラフトの原子と領域の原子との間に2個の電子を共有することにより得られる結合を示す。
【0034】
本発明による特に有利な基層は、ポリアリール型基層である。
【0035】
有利な実施態様によれば、本発明の導体又は半導体領域の前記定義の基層は、前記領域の表面上のグラフトのグラフト化面積が、対象となる前記導体又は半導体領域表面に対して少なくとも90%の割合で、特に少なくとも99%の割合にあり、欠如部の全表面が、導体又は半導体領域の面積の10%未満、特に5%未満であることを特徴とする。
【0036】
「欠如部」とは、本発明の処理によって改質されていない、従って材料が改質されることなく現れている基層の部分を意味する。
【0037】
これは例えば近視野顕微鏡検査により、特に原子間力顕微鏡検査(AFM)により観察することができる(Adenier et al.,2002;Bernard et al.,2003)。
【0038】
基層はまた、その粗さによって特徴付けることもできる。
【0039】
基層は、導体又は半導体領域に結合する原子が強く結合して、種々の溶媒での、超音波浴中、長期繰り返し洗浄処理に耐えるような基層である。
【0040】
有利な実施態様によれば、本発明の導体又は半導体領域の上記定義の基層は緻密(compact)であり、AFM像上μmスケールで観察できる(Adenier et al.,
2002;Bernard et al.,2003)。
【0041】
緻密さ(compactness)に着想を集中するために、本発明の導体又は半導体領域の上記
定義の基層は、前記領域の表面に直接結合するグラフトの濃度が多くても、cmにつきグラフトのモル数で約20×10−10であり、それは表面に垂直な基、特にアリール基、にアクセス可能な最大表面濃度に相当するものであり、好ましくは前記領域表面のcmにつきグラフトのモル数で約1×10−10〜18×10−10であることを特徴とする。
【0042】
これらの表面濃度は、対象となる領域の表面上に単分子層を形成し、形成された基層が単分子層であることをAFMにより確認し、そして単分子層のグラフトのボルタンモグラムを実施し、次いでこのボルタンモグラムを積分することにより測定することができる(Allongue et al.,1997)。
【0043】
有利な実施態様によれば、前記定義のポリマー層は、特に残存モノマー、非グラフト化ポリマー及び溶媒を含まないことを特徴とする。従って、重合段階の後、材料のプレートは注意深くジクロロメタン中で超音波洗浄される。次いで、洗浄サイクルが材料表面に吸着されたポリマー残渣を除去するのに十分であることを確かめることができる。PMMA−トルエン溶液と接触する材料のプレートを、開始剤及び塩化銅の不存在下に、90℃で4時間加熱する。次いで、4回の5分間ジクロロメタン中での超音波洗浄の後、IRRASによるプレートの分析では、ポリマーのシグナルがないことが明らかになる。このとき、PMMA(ポリメチルメタクリレート)は洗浄溶媒に残存するが(IR分析)、5回目の洗浄後にポリマーはジクロロメタンから消失した。この洗浄サイクルをCuClと開始剤を含有する重合溶液に浸漬したプレートに適用したとき、IRRSとXPSによるPMMAとPAnBuの特徴的なシグナルは、グラフト化した非吸着のポリマーによるものとすることができる。従って、この試験はグラフト化していないポリマーが材料表面から除去されていることを確認することを可能にする。
【0044】
「残存モノマー」とは、インサイチュー重合に含有されるモノマーを意味し、「非グラフト化ポリマー」とは、基層に結合しないモノマーから形成されるいずれかのポリマーを意味する。
【0045】
「溶媒」とは、特にインサイチュー重合の溶媒を意味する。ポリマー層は有利に、インサイチュー重合が実施される溶媒又はポリマーが可溶である溶媒と接触する場合でさえ基層上に残存するという特性を有している。
【0046】
ポリマー層を特徴付ける一つのパラメーターは、粗さである。
【0047】
平均粗さは、中心平面(mid-plane)に関する偏差の計算の平均を表す。
【数1】

【0048】
cpは中心平面(mid-plane)に対するZの値であり、ZはZの現在値(current value)であり、Nは与えられた場(field)における点の数である。従ってRは完全平面
に対してはゼロに等しくなければならない。
【0049】
本発明は更に、基層が、XPS又は赤外線分析により確認される純度レベルを、少なくとも約80%、特に約90%〜約100%有すること、及び特に溶媒、ジアゾニウム塩、並びにその誘導体を含まないこと、を特徴とする前記定義の材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
【0050】
「溶媒」によるとは、特に、溶媒が基層の形成を実施するために使用されることを意味する。これは赤外線試験又はXPS試験により確認することができる。
【0051】
「ジアゾニウム塩誘導体」とは、特にArN、ArOH又はArHを意味する。
【0052】
溶媒のシグナルが存在しないことは、赤外線により確認することができる。例えば、溶媒の性質に従って、アセトニトリルについては2254cm−1におけるニトリル吸収帯が無いこと、又はジメチルホルムアミドについては1675cm−1におけるカルボニル吸収帯が無いことにより確認することができる。
【0053】
電解質が存在しないことは、それぞれIR分析(cm−1)及びXPS分析(eV)により、(電解質が過塩素酸塩である場合には)約1095cm−1及び約208eV(Cl2p)に現れる塩素原子が無いことにより、又は(電解質がテトラフルオロホウ酸塩である場合には)約1050と1075cm−1及び約687eV(F1s)に現れるフッ素原子が無いことにより確認することができる。残存ジアゾニウム塩(ArN)が存在しないことは、IRによって、ジアゾニウム塩に特徴的な約2300cm−1の吸収帯が無いことにより確認することができる。
【0054】
ジアゾニウム加水分解生成物(ArOH)が存在しないことについては、対応するフェノール基を、IRによって、約3300〜3500cm−1のOH吸収帯が無いことにより観察することができる。
【0055】
ジアゾニウム還元生成物(ArH)が存在しないことは、洗浄溶媒において、ガスクロマトグラフィー(GC)又は液体クロマトグラフィー(HPLC)により、基準試料と比較して、確認することができる。
【0056】
更に、もともと特にジアゾニウム塩が有していて、ジアゾニウム塩由来の開始剤グラフトをグラフト化するプロセスに含まれる可能性のある電解質を、基層は含まない。同じことがジアゾニウム塩の対イオン、例えばテトラフルオロホウ酸イオンに適用される。電解質が存在しないことは、前記のように確認することができる。
【0057】
本発明の改質した導体又は半導体領域の利点の一つは、基層にモノマーが存在し得ないということである。このことは、一方でアクリレート官能基(acrylate function)を、
他方ではビニル化合物の重合を開始できる官能基を有するモノマーの、重合開始剤としての使用に起因するものである。特に、基層をビニルポリマーベースで製造しないため、本発明の導体又は半導体領域の基層においては、ビニルモノマーは存在しない。
【0058】
本発明の方法によって改質した有利な材料の対象となる導体又は半導体領域は、基層のグラフトに含まれる結合で、ポリマー層に至るまで前記材料表面の共有結合の連続的系列を形成する結合が、非加水分解性であることを特徴とする。
【0059】
表面と基層のグラフトの間に含まれる結合は非加水分解性である。
【0060】
語句「基層のグラフトに含まれる結合」は、グラフトが結合する表面の原子とポリマー層の最初の原子との間に含まれる化学結合を示す。
【0061】
語句「非加水分解性の結合」は、水溶液若しくは部分的水溶液(partially aqueous solution)と材料との接触により又は、もっと一般的に、酸若しくは塩基の特性を有する溶媒との反応により切断することができない結合を示し、そして特にpH0〜pH14、好ましくはpH1〜pH13で非加水分解性の結合を示す。しかしながら、加水分解可能な(横の)ペンダント基(例えば、PMMAエステル)の存在の可能性は、除外されるべきではない。
【0062】
有利な実施態様によれば、本発明は、材料の対象となる導体又は半導体領域に関するものであって、基層のグラフトに含まれる結合で、ポリマー層末端に至るまで前記材料表面の共有結合の連続的系列を形成する結合が、非加水分解性の結合であることを特徴とする材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
【0063】
語句「ポリマー層末端に至るまで前記材料表面の共有結合」は、グラフトが結合する表面の原子とポリマー層の最後の原子との間に含まれる共有化学結合を示す。
【0064】
語句「共有結合の連続的系列」は、表面の原子とポリマー層の最後の原子との間の最短経路をたどることにより、この経路に位置する原子をつなぐ結合がすべて共有結合であるような状況に相当する。
【0065】
本発明の方法により改質される、好ましい材料の対象となる導体又は半導体領域は、対象となる導体又は半導体領域のグラフト原子の原子結合によるポリマー層のポリマー鎖を含み、特に領域のグラフト原子の共有炭素結合によるポリマー層のポリマー鎖を含む。
【0066】
本発明の方法により改質される、好ましい材料の対象となる導体又は半導体領域は、特にATRP、ROP又はNMPにより得られるポリマー鎖が、互いに実質的に等しい分子量を有すること、及び前記鎖が前記材料表面に対し実質的に垂直に連結することにより高密度のブラシを形成することを特徴とする。
【0067】
語句「前記材料表面に対し実質的に垂直に連結する鎖」は、ポリマー鎖の平均方向が、表面自体に近い方向にある鎖とは反対に、表面に局所的に垂直に近いポリマー鎖を表す。
【0068】
語句「高密度のブラシ」は、ポリマー鎖の方向が表面に対して実質的に垂直であり、それらの長さが実質的に等しく、これらの鎖間の距離が明瞭にそれらの長さよりも小さいような方式で表面に連結するポリマー鎖のすべてを示す(Edmondson et al.,2004)。
【0069】
より詳細には、ポリマー層が一定の粗さを保持しながら、全体のポリマー層の厚さは、厚さにおいて成長するため、すべてのポリマー鎖がほぼ同じ長さであることをよく示している。
【0070】
有利な実施態様によれば、本発明の方法により改質される材料の対象となる導体又は半導体領域は、基層がほぼ一様な厚さを有すること、及び前記基層を構成するグラフトが前記材料表面に対して実質的に垂直に結合することを特徴とする。
【0071】
語句「ほぼ一様な厚さの層」は、層の厚さがその領域の表面全体にわたり同程度の大きさであるような層を示す。
【0072】
本発明は更に、グラフトが芳香族化合物であり、特にアリール基であり、芳香族基が、1個以上の官能性置換基(functional substituents)、特にハロゲン原子、例えば臭素
原子で置換されているC〜C20の芳香族ラジカル、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子若しくはリン原子から選択される1個以上のヘテロ原子を含む1個以上の官能性置換基により置換されている4〜20原子を有するヘテロ芳香族ラジカルであることを特徴とする本発明の方法により改質される前記定義の材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
【0073】
有利な実施態様によれば、領域の原子と領域に直接結合するグラフトの原子との間に脂肪族型の結合は存在しない。換言すれば、有利に、領域の原子に直接結合するグラフトの原子は、グラフトにおいて、芳香族結合に含まれる。
【0074】
本発明は更に、本発明の方法により改質される上記定義の材料の対象となる導体又は半導体領域に関するものであって、芳香族基が以下により構成される基から選択される1個以上の置換基を含む、材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
(A)炭素原子1〜20個を有する脂肪族の、直鎖状又は分岐状のラジカルであって、任意に1個以上の二重結合若しくは三重結合を含み、任意にカルボキシルラジカル、NO、OH、二置換保護アミノ基、一置換保護アミノ基、シアノ基、ジアゾニウム基、炭素原子1〜20個を有するアルコキシ基、炭素原子1〜20個を有するアルコキシカルボニル基、炭素原子1〜20個を有するアルキルカルボニルオキシ基により置換され、任意にフッ素化したビニル基若しくはアリル基、ハロゲン原子、炭素原子1〜20個を含むアンモニウム基、炭素原子1〜20個を含む酸無水物、炭素原子1〜20個を含む尿素若しくはチオ尿素誘導体、オキシム官能基(oxime function)及びホスホン酸により置換される脂肪族の、直鎖状又は分岐状のラジカル、
(B)アリールラジカルであって、任意にカルボキシルラジカル、NO、OH、二置換保護アミノ基、一置換保護アミノ基、シアノ基、ジアゾニウム基、炭素原子1〜20個を有するアルコキシ基、炭素原子1〜20個を有するアルコキシカルボニル基、炭素原子1〜20個を有するアルキルカルボニルオキシ基により置換され、任意にフッ素化したビニル基若しくはアリル基、ハロゲン原子、炭素原子1〜20個を含むアンモニウム基、炭素原子1〜20個を含む酸無水物、炭素原子1〜20個を含む尿素若しくはチオ尿素誘導体、オキシム官能基及びホスホン酸により置換されるアリールラジカル、
(C)カルボキシルラジカル、NO、OH、二置換保護アミノ基、一置換保護アミノ基、シアノ基、ジアゾニウム基、炭素原子1〜20個を有するアルコキシ基、炭素原子1〜20個を有するアルコキシカルボニル基、炭素原子1〜20個を有するアルキルカルボニルオキシ基により置換され、任意にフッ素化したビニル基若しくはアリル基、ハロゲン原子、炭素原子1〜20個を含むアンモニウム基、炭素原子1〜20個を含む酸無水物、炭素原子1〜20個を含む尿素若しくはチオ尿素誘導体、オキシム官能基及びホスホン酸。
【0075】
本発明の方法により改質される材料の対象となる導体又は半導体領域は、基層が、各々が単一のアリール基からなり、単分子層(monolayer)に相当するグラフトの形態に在る
ことを特徴とする。
【0076】
語句「グラフトの単分子層」は、基層のグラフトがアリール基だけを含む基層を示す。この種の単分子層の形成は、AFMによりその厚さを測定することにより確認することができる(Anariba et al.,2003)。
【0077】
例えば、マイクロエレクトロニクスにおいて、及びもっと一般的にナノテクノロジーの枠内において、可能な最も精巧な層を製造することが求められる適用に、単分子層を得ることは有用である。
【0078】
本発明の有利な実施態様によれば、本発明の方法により改質される材料の対象となる導体又は半導体領域は、モノマーからポリマー層を得る場合のモノマーが、少なくとも1個の末端二重結合を含む化合物、例えばビニル化合物(アクリル系、メタクリル系、スチレン系)、特には
スチレン、任意に置換したスチレン、アルキルアクリレート、置換したアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、置換したアルキルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N−ジアルキルアクリルアミド、N−ジアルキルメタクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレン、ビニルアセテート及びその誘導体、ビニルエーテル、N−ビニル−ピロリドン、4−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、
並びに、特には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート及びその異性体、ブチルメタクリレート及びその異性体、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート及びその異性体、ブチルアクリレート及びその異性体、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びその異性体、ヒドロキシブチルメタクリレート及びその異性体、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、無水イタコン酸、イタコン酸、ベンジルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート異性体、ヒドロキシブチルアクリレート及びその異性体、N−ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチロールメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、ビニル安息香酸及びその異性体、ジエチルアミノスチレン及びその異性体、メチルビニル安息香酸及びその異性体、ジエチルアミノメチルスチレン及びその異性体、p−ビニル安息香酸及びそのナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル、2−メチル−2−プロパノエート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、1−[2−[[2−ヒドロキシ−3−(2−プロピル)プロピル)]アミノ]エチル]−2−イミダゾリジン−オン、クロトン酸、ビニルスルホン酸及びその誘導体、2−メタクリロイル−オキシエチルホスホリルコリン、ホスホリルコリン−型モノマー、オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート、スルファトエチルメタクリレートアンモニウム塩、グリセロメタクリレート、2−(N−モルホリノ)エチルメタクリレート及び2−(N−3−スルホプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレート、
並びに、少なくとも1個のビニル性官能基(vinylic function)、例えばテレケリクス(telechelics)、架橋剤、を含む化合物、
から選択されることを特徴とする。
【0079】
好ましいモノマーは以下のものである。
(A)ATRPにより重合されるスチレン類、
【化1】

(B)ATRPにより重合されるメタクリレート類、
【化2】

(C)ATRPにより重合されるアクリレート類、
【化3】

(D)ATRPにより重合されるN−イソプロピルアクリルアミド。
【化4】

【0080】
本発明は更に、モノマーが、スチレン又はアクリレート及びメタクリレートの単官能性若しくは多官能性誘導体から選択されることを特徴とする、本発明の方法により改質される前記定義の材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
【0081】
本発明は更に、ポリマー層のポリマーが、ポリスチレン又はポリアクリレート若しくはポリメタクリレートの誘導体から選択されることを特徴とする、本発明の方法により改質される前記定義の材料の対象となる導体又は半導体領域に関する。
【0082】
本発明の方法により改質される材料の対象となる導体又は半導体領域は、ポリマー層のポリマーが、以下の重合方法、;光重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)又は開環重合(ROP)、の一つにより得られることを特徴とする。
【0083】
有利な実施態様によれば、前記で定義され、そして本発明の方法により改質される材料の対象となる導体又は半導体領域は、前記ポリマーが、重合(特に原子移動ラジカル重合又はニトロキシド媒介重合)により得られること、及び前記ポリマー鎖の末端が、任意に第2のブロックを形成する共重合体、又は活性分子(例えば、アミノアルコール、アリルアルコール、無水マレイン酸、糖類、核酸、ペプチド、タンパク質、ペルフルオロ化した分子若しくは医薬活性を有する分子)により、任意に置換することができる官能性基(特にハロゲン原子又はニトロキシド基)を含むことを特徴とする。
【0084】
より詳細には、前記定義され、そして本発明の方法により改質される材料の対象となる導体又は半導体領域は、前記ポリマーが重合により、特に原子移動ラジカル重合により得られること、及び前記ポリマー鎖の末端が、任意に第2のブロックを形成する共重合体、又は活性分子(例えば、アミノアルコール、アリルアルコール、無水マレイン酸、糖類、核酸、ペプチド、タンパク質、ペルフルオロ化した分子若しくは医薬活性を有する分子)により置換することができるハロゲン原子(特に、臭素原子)を含むことを特徴とする。
Edmondson et al.(2004)の論文が示すように、ATRPにより形成されるポリマー鎖はその末端上に、例えばハロゲン原子により、官能化され、従って2ブロック又は3ブロックポリマー形成のための開始剤として使用することができる。例えば、厚さ10nmを有するポリスチレンブラシはブロック共重合体PS−b−PMA(PS=ポリスチレン、PMA=ポリメタクリレート)を製造するために使用されている。
【0085】
アリルアルコール及び無水マレイン酸は化学的改質を実施すること、即ち表面を再官能化(refunctionalize)することを可能にする;糖類、核酸、ペプチド及びタンパク質は
バイオセンサー及び生体適合性表面に関連する;ペルフルオロ化した分子は特に、コネクター技術及び表面保護に関連する;医薬活性を有する分子は人工器官に関連し、その場合、薬物の堆積が人工器官の適合性を改善することを可能にする。
【0086】
発明は更に、上記定義の及び本発明の方法により改質される材料の所定の導体又は半導体領域に関するものであって、開始剤がハロゲン化誘導体、特に臭素化誘導体、又はアルコキシアミン型誘導体、又はα−ヒドロキシアルキルフェノン誘導体、α−ジアルコキシアセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、α−アミノアルキルフェノン誘導体、芳香族ケトン誘導体、例えばベンゾフェノン若しくはアントラキノン、N−脂肪族若しくはN−芳香族マレイミド誘導体、キサンテート誘導体、ジチオカルバメート誘導体、チオキサントン誘導体、ホスフィンオキシド誘導体、又はアルコール、トリチオカーボネート若しくはジチオエステル誘導体であることを特徴とする材料の所定の導体又は半導体領域に関する。
【0087】
有利な実施態様によれば、ポリマー層のポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)により得られる。この種の方法の枠内で、開始剤グラフトは、好ましくはハロゲン原子に相当する開始剤官能基を含む;このように改質した対象となる導体又は半導体領域は、ハロゲン原子(開始剤起源である)又は塩素原子(ATRP法の枠内で使用する触媒起源である)により停止したポリマー鎖を含有する。
【0088】
有利な実施態様によれば、ポリマー層のポリマーは、ニトロキシド媒介重合(NMP)により得られる。この種の方法の枠内で、開始剤グラフトは、ニトロキシド基に相当する重合開始剤官能基を含む;このように改質した対象となる導体又は半導体領域は、このニトロキシド基により停止したポリマー鎖を含有する。
【0089】
有利な実施態様によれば、ポリマー層のポリマーは、開環重合(ROP)により得られる。従って、得られた改質材料は、エステル官能基(ester functions)の鎖形成を含むポリマー鎖を含有する。
【0090】
有利な実施態様によれば、本発明により改質した本発明の材料の対象となる導体又は半導体領域は、基層のグラフトと前記領域の表面との間の、前記領域のグラフト原子の原子結合(特にその領域の共有炭素原子結合)が超音波洗浄に耐えるような結合であることを特徴とする。
【0091】
他の有利な実施態様によれば、本発明により改質した本発明の材料の対象となる導体又は半導体領域は、ポリマー層を構成するポリマーが、基層のグラフトに非加水分解性の共有結合(特に炭素間共有結合)によって結合していることを特徴とする。
【0092】
本発明の方法により改質した、本発明による特に有利な材料の対象となる導体又は半導体領域は、基層のグラフトとポリマー層のポリマーとの間の共有結合が、前記ポリマー層を形成するポリマーの加水分解による剥離を防止するような結合であることを特徴とする。
【0093】
本発明は更に、材料が純粋な金属又は合金、特に鉄、ニッケル、白金、金、銅、亜鉛、コバルト、チタン、クロム、銀、タンタル、鋼、特にステンレス鋼、チタン合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、マンガン、バナジウム、ニチノールから選択されるか、あるいは半導体、特に単結晶若しくは多結晶の半導体、ドープ若しくは非ドープのケイ素、水素化ケイ素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化タンタル、炭化ケイ素、リン化インジウム、若しくはヒ化ガリウムから選択されるものである、本発明により改質した、上記定義の材料の所定の導体又は半導体領域に関する。
【0094】
本発明により改質した、本発明による好ましい材料の対象となる導体又は半導体領域は、それが生物学的安定性、生体適合性及び耐食性であることを特徴とするか、又はポリマー層のポリマーが生分解性であることを特徴とする。
【0095】
本発明は更に、材料の所定の導体又は半導体領域の表面の改質方法に関するものであって、前記定義の重合開始剤グラフトをこの領域の表面上に結合すること、特に、前記導体又は半導体領域を、重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液へ接触させることによって結合することを含むことを特徴とする、前記定義の、表面が改質されている導体又は半導体領域を得るための前記方法に関する。
【0096】
本発明は更に、前記定義の重合開始剤由来のグラフトをこの領域の表面上に結合することが、導体又は半導体領域を、溶媒、特に非プロトン性溶媒又は酸性のプロトン性溶媒中の重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液と、前記定義のグラフトの基層を前記領域表面上に結合させるのに十分な時間、接触させることを含む化学反応により実施されることを特徴とする、前記定義された材料の対象となる導体又は半導体領域の表面の改質方法に関する。
【0097】
本発明は更に、前記定義の重合開始剤由来のグラフトをこの領域の表面に結合することが、導体又は半導体領域を、溶媒、特に非プロトン性溶媒又は酸性のプロトン性溶媒中の重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液と、前記定義のグラフトの基層を前記領域表面上に結合させるのに十分な時間、接触させることを含む不均一電子移動反応により実施されることを特徴とする、前記定義された材料の所定の導体又は半導体領域の表面の改質方法に関する。
【0098】
語句「不均一電子移動反応」は、反応中に、溶液中の化学種が、以下の反応工程式:
金属+A→金属+A
に従って、この溶液と接触している表面と電子を交換するような反応(Lund et al.,2001)を示す。
【0099】
語句「非プロトン性溶媒」は、例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドなどのプロトンを供与するのが困難である溶媒を示す。
【0100】
語句「酸性のプロトン性溶媒」は、プロトンにある一定量の酸を付加しているようなプロトンを容易に供与できる溶媒を示す。例えば、水、アルコール、酸の存在下におけるそれらの混合物である。事実、ジアゾニウム塩は、pHが約2未満の媒体においてのみ安定である。
【0101】
本発明の枠内で、酸性水性媒体において、例えば水ともう一つの溶媒との混合物(酸性媒体中)において、ジアゾニウム塩をグラフト化することが可能である。
【0102】
語句「グラフトの基層を領域表面上に結合させるのに十分な時間」は、求める厚さの基層を得るのに必要な時間を示し、1時間程度である。
【0103】
この実施態様は、電気化学的装置は必要でなく、試料を浸漬する簡単な容器で十分であるという程度に有利である。
【0104】
本発明による有利な方法は、ジアゾニウム塩が、式ArNで表され、式中、Arは前記定義の重合を開始できる官能基を有する芳香族基であり、Xはハロゲン原子、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カルボン酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩から有利に選択されるアニオンを表すことを特徴とする。
【0105】
本発明は更に、材料の対象となる導体又は半導体領域の表面の改質方法であって、導体又は半導体領域を溶媒中のジアゾニウム塩の溶液と接触させることにより、重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の電気化学的還元によって、この領域の表面上に、前記定義の開始剤グラフトを結合することを含むことを特徴とする、その表面が前記定義のように改質される導体又は半導体領域を得るための前記方法に関する。
【0106】
この実施態様は、1ミクロン程度の非常に厚い基層を得ることを可能にする。
【0107】
有利な実施態様によれば、本発明の方法は、グラフト結合段階が、ジアゾニウム塩の電気化学的還元の段階であり、陽極と陰極は、例えば隔壁又は膜によって任意に互いに隔てることができるが、やはりジアゾニウム塩の溶液と接触している基準電極又は陽極について、材料の対象となる導体又は半導体領域をマイナスに分極することを含む、ことを特徴とする。
【0108】
本発明の好ましい方法は、前記定義の方法であって、電気化学的還元が、電解質の存在下に起こり、陽極及び陰極コンパートメントが任意に隔てられ、陽極コンパートメントは任意に溶媒と電解質を含み、陰極コンパートメントは任意に溶媒、電解質及びジアゾニウム塩を含むことを特徴とする方法である。
【0109】
有利な実施態様によれば、本発明の方法は、ジアゾニウム塩が式ArNで表され、式中、Arは前記定義の重合開始剤官能基を有する芳香族基を表し、Xはアニオンであり、ジアゾニウム塩のアニオンXがハロゲン原子、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カルボン酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩から有利に選択されることを特徴とする。
【0110】
本発明は更に、
(A)導体又は半導体領域を、溶媒中の重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液と接触させることにより、前記領域の表面上に上記定義の重合開始剤グラフトを結合する段階であって、前記結合段階が特にジアゾニウム塩の電気化学的還元によって実施され、その表面上に前記開始剤グラフトの共有結合により改質された表面を有する導体又は半導体領域を得ることを可能にし、前記グラフトは前記定義の基層を形成するものである段階、及び
(B)特にラジカル重合又は開環重合(ROP)による、非アニオン重合の段階であって、前記非アニオン重合反応が上記定義のモノマー、及び基層のグラフトが有する開始剤官能基、を含有し、上記定義のポリマー層を構成するポリマー形成につながるものである段階、
を含むことを特徴とする、前記定義の材料の対象となる導体又は半導体領域の表面改質方法に関する。
【0111】
表面から開始されるこのような重合(「グラフティング−フロム」重合)は、得られるブラシの官能性、密度及び厚さの容易な制御を可能にする。
【0112】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、それが光重合による重合の段階を含むことを特徴とし、
前記重合段階は、前記表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の前記導体又は半導体領域を、少なくとも1種の前記定義のモノマーと接触させること、並びに前記導体又は半導体材料及び前記モノマーを、重合を開始するために、電磁放射線又は化学線、特に紫外線、に暴露することを含み、
前記重合反応は、前記定義のモノマー、及び基層のグラフトが有する開始剤官能基、を含有し、前記定義のポリマー層を構成するポリマー形成につながる。
【0113】
この実施態様は、複雑な形状を有する表面のために使用され、常温で実施される。
【0114】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、それが原子移動ラジカル重合(ATRP)による重合段階を含むことを特徴とする:
その重合段階は、その表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の前記導体又は半導体領域を、少なくとも1種の上記定義のモノマーと接触させること、並びに前記開始剤をモノマーと反応できるラジカルに変換するために、遷移金属錯体により前記開始剤を活性化することからなり、
前記重合反応は、上記定義のモノマー、及び基層のグラフトが有する開始剤官能基、を含有し、上記定義のポリマー層を構成するポリマー形成につながる。
【0115】
この実施態様において、表面上にグラフト化される、基層のグラフトが有する開始剤官能基は、前記モノマーと反応できるラジカルを産生するために遷移金属錯体により活性化される。その方法は、鎖の長さを制御すること及びブロック共重合体を形成することを可能にするリビング重合である。
【0116】
この実施態様の利点は、多種多様なモノマーを用いて表面からブラシを成長させることの可能性に存在する;制御されたリビング重合の特徴は、官能化連鎖停止を有する低い多分子性指数を有するポリマー鎖を得ることを可能にし、従ってそれを2又は3ブロック共重合体を製造するためにマクロ開始剤として使用することができる。前記方法も、「グラフティング−オントゥ(grafting-onto)」法を行うのが困難な、複雑な形状を有する表
面のためにも使用される。
【0117】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、それがニトロキシド媒介重合(NMP)に相当する重合段階を含むことを特徴とし、その重合段階は、その表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の前記導体又は半導体領域を、少なくとも1種の前記定義のモノマーと接触させること、及び均一開裂により、前記開始剤をモノマーと反応できるラジカルに変換するために、前記開始剤を熱的に活性化することを含み、
前記重合反応は、前記定義のモノマー、及び基層のグラフトが有する開始剤官能基、を含み、前記定義のポリマー層を構成するポリマー形成につながる。
【0118】
前記実施態様において、グラフトが有する開始剤官能基は、熱的に活性化されるアルコキシアミン官能基(alkoxyamine function)であり、それが均一開裂を引き起こし、前記モノマーと反応できるラジカルを産生する。この過程はリビング重合であり、鎖の長さを制御し、ブロック共重合体を形成し、そして低い多分子性指数を有する鎖を得ることを可能にする。
【0119】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、それが開環重合(ROP)による重合段階を含むことを特徴とし、
前記重合段階は、前記表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の前記導体又は半導体領域を、少なくとも1種の前記定義の環状モノマーと接触させること、及び前記環状モノマーを開裂することを可能にする有機金属触媒を用いて重合活性中心を作り出すことを含み、
前記重合反応は、上記定義のモノマー、及び基層のグラフトが有する開始剤官能基、を含み、前記定義のポリマー層を構成するポリマー形成につながる。
【0120】
この実施態様は、多数の市販のポリマーを用いて開始することができ、低多分散性を有する鎖を得ることを可能にする制御されたリビング重合である。
【0121】
環状エステルの開環重合(ROP)は、生体適合性、及び生分解性の脂肪族ポリエステルをもたらす。開環のメカニズムは、環状モノマーのエステル結合と、アルミニウム、スズ又は希土類アルコレートの配位−挿入反応に基づいている。適切な触媒は、アルコール(この場合、ヒドロキシル官能基(hydroxyl function)を含むグラフト化開始剤)と、
オクタン酸スズ又はトリエチルアルミニウム、トリイソプロパン酸アルミニウム若しくはトリイソプロパン酸ランタニドなどの触媒との配位子交換によりインサイチューに得ることができる。
【0122】
開環重合は、制御されたリビング重合であり、OH、NH又はSOCFの官能化表面から、EtAl、Sn(Oct)などの触媒存在下に、ラクトン、ラクチド及びオキサゾリンなどの環状モノマーの開環による重合を可能にする。本発明の枠内で、表面に、即ち基層上に固定された開始剤は、アリール基、特にヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基により置換されたアリール基である。
【0123】
本発明は更に、
(A)前記領域の表面上に、ジアゾニウム塩由来、そして前記定義の重合開始剤官能基を有するグラフトを結合する段階であって、前記段階は、導体又は半導体領域を、溶媒中の前記重合開始剤官能基を有する前記ジアゾニウム塩の溶液と接触させることによるものであり、前記結合段階は、特に不均一電子移動反応により又は化学反応により実施され、その表面への開始剤グラフトの共有結合により改質された表面の導体又は半導体領域を得ることを可能にし、前記グラフトが上記定義の基層を形成するものである段階、及び
(B)光重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)又は開環重合(ROP)による非アニオン重合の段階であって、前記重合反応は、前記定義のモノマー、及び基層のグラフトが由来する開始剤を含み、前記定義のポリマー層を構成するポリマーの形成につながるものである段階、
を含むことを特徴とする、前記定義の導体又は半導体領域の表面の改質方法に関する。
【0124】
この実施態様は、表面から実質的に等しい長さのポリマー鎖を成長させることを可能にし、この方法はまた、「グラフティング−オントゥ」が実施困難であるような複雑な形状を有する表面に対しても使用される。
【0125】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、光重合による重合段階を含むことを特徴とし、
前記重合段階は、前記表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の導体又は半導体領域を、前記定義の少なくとも1種のモノマーと接触させること、及び重合を開始するために、前記導体又は半導体領域及び前記モノマーにより形成される混合物を電磁放射線又は化学線、特に紫外線に暴露することからなり、
前記重合反応は、前記定義のモノマーと基層のグラフトが有する開始剤官能基とを含み、そのことが、前記定義のポリマー層を構成するポリマーの形成につながる。
【0126】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、原子移動ラジカル重合(ATRP)による重合段階を含むことを特徴とし、
前記重合段階は、前記表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の導体又は半導体領域を、前記定義の少なくとも1種のモノマーと接触させること、及び前記開始剤をモノマーと反応できるラジカルに変換するために、遷移金属錯体により前記開始剤を活性化することからなり、
前記重合反応は、前記定義のモノマーと基層のグラフトが有する開始剤官能基とを含み、そのことが、上記定義のポリマー層を構成するポリマーの形成につながる。
【0127】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、ニトロキシド媒介重合(NMP)に相当する重合段階を含むことを特徴とし、
前記重合段階は、前記表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の導体又は半導体領域を、前記定義の少なくとも1種のモノマーと接触させること、及び均一開裂により、前記開始剤をモノマーと反応できるラジカルに変換するために、前記開始剤を熱的に活性化することからなり、
前記重合反応は、前記定義のモノマーと基層のグラフトが有する開始剤官能基とを含み、そのことが上記定義のポリマー層を構成するポリマーの形成につながる。
【0128】
この実施態様は、複雑な形状を有する表面に対して使用され、常温で実施される。
【0129】
本発明による有利な導体又は半導体領域の表面改質方法は、開環重合(ROP)に相当する重合段階を含むことを特徴とし、
前記重合段階は、前記表面上に開始剤グラフトの共有結合により改質される表面の導体又は半導体領域を、前記定義の少なくとも1種の環状モノマーと及び有機金属触媒と接触させること、及び前記環状モノマーを開裂し活性重合中心を付与することを可能にすることからなり、
前記重合反応は、前記定義のモノマーと基層のグラフトが有する開始剤官能基とを含み、そのことが前記定義のポリマー層を構成するポリマーの形成につながる。
【0130】
有利な実施態様によれば、本発明の方法は、ATRP又はNMP重合段階の前に、光化学開始段階を含むことができる。
【0131】
本発明は更に、前記定義の方法に関するものであって、ラジカル重合段階が溶媒及び触媒、例えば遷移金属錯体の存在下に実施されることを特徴とする。
【0132】
本発明は更に、前記定義の方法に関するものであって、ラジカル重合段階が、ハロゲン化誘導体、特に臭素化誘導体又はアルコキシアミン型誘導体又はα−ヒドロキシアルキルフェノン誘導体、α−ジアルコキシアセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、α−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾフェノン若しくはアントラキノンなどの芳香族ケトン誘導体、N−脂肪族若しくはN−芳香族マレイミド誘導体、キサンテート誘導体、ジチオカルバメート誘導体、チオキサントン誘導体、ホスフィンオキシド誘導体、又はアルコール、トリチオカーボネート若しくはジチオエステル誘導体などの外部開始剤の存在下に実施されることを特徴とする方法に関する。
【0133】
溶液中で開始剤を使用することは、溶液中でポリマー鎖を成長させることを可能にし、従って、重合が満足すべき基準を検証することを可能にする。
【0134】
本発明は更に、前記定義の方法の実施によって得られる導体又は半導体領域に関する。
【0135】
本発明は更に、
(A)前記領域を含む材料により構成されるもの全ての任意の形態の物体、又は
(B)腐食に対して強化された抵抗性を有する金属表面、又は
(C)ステント、インプラント、人工器官若しくはマイクロエレクトロニクスに使用することができる要素、
の製造のための、前記定義の導体又は半導体領域の使用に関する。
【0136】
発明は更に、追加の層、特にブロック共重合体により構成される追加のポリマー層、又は活性分子(例えば、アミノアルコール、アリルアルコール、無水マレイン酸、糖類、核酸、ペプチド若しくはタンパク質)により構成される追加の官能層(functional layer)を有する導体若しくは半導体領域を含む材料の製造のための、前記定義の導体若しくは半導体領域の使用に関する。
【0137】
本発明は更に、以下の化学式の一つであるジアゾニウム塩に関する:
【化5】

【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】ガラス質炭素電極上のアセトニトリル溶液(ACN)+0.1MNBuBFにおけるのボルタンモグラムを示す(参照ECS.v=0.2Vs−1:(a)第1サイクル、(b)第2サイクル、(c)第3サイクル)。
【図2】ACN溶液+0.1MNBuBF+2mMのにおける鉄電極上のクロノアンペロメトリーの結果を示す(E=−0.85V/SCE.参照ECS)。
【図3】a)ACN溶液+0.1MNBuBFにおけるCV+2によりグラフト化したガラス質炭素電極と、b)クリーンなガラス質炭素電極上のNEtBr溶液(1mM)との、サイクリックボルタンメトリーの結果を示す(参照ECS.v=0.2Vs−1)。
【図4】a)ACN溶液+0.1MNBuBFにおけるCV+1によりグラフト化したガラス質炭素電極と、b)クリーンなガラス質炭素電極上のNEtBr溶液(1mM)との、サイクリックボルタンメトリーの結果を示す(参照ECS.v=0.2Vs−1)。
【図5】(a)Fe+1と(b)グラフト化前の1とのIRRASスペクトルを示す。
【図6】Fe+1によりグラフト化した鉄表面のXPSスペクトルを示す。
【図7】Fe+1試料のC1sのXPSスペクトルを示す。
【図8A】Feに対するAFMイメージを示す。
【図8B】Fe+1、に対するAFMイメージを示す。
【図8C】Fe+1+PMMA(溶液中に開始剤無し)に対するAFMイメージを示す。
【図8D】Fe+1+PAnBu(溶液中に開始剤無し)に対するAFMイメージを示す。
【図8E】Fe+1+PMMA(溶液中に開始剤有り)に対するAFMイメージを示す。
【図9】ポリマーPMAnBuの層の厚さ及び粗さを重合時間の関数として示す。菱形を有する曲線は、ポリマー層の粗さの測定値に相当し、正方形を有する曲線はポリマー層の厚さに相当し、三角形を有する曲線は集合体の高さに相当する。y軸はポリマー層の粗さ、ポリマー層の厚さ、又は集合体の高さ(mm)に相当する。x軸はATRP重合時間(hours)を表す。
【図10】Fe+1+PMMA試料のXPSスペクトルを示す。
【図11】Fe+1+PMMA(溶液中に開始剤有りで製造)のC1sのXPSスペクトルを示す。
【図12】Fer+1+PAnBu(溶液中に開始剤無しで製造)のC1sのXPSスペクトルを示す。
【図13】(a):Fe+1、(b):Fe+1+PMMA(溶液中に開始剤有り)、(c):Fe+1+PMMA(溶液中に開始剤無し)、のIRRASスペクトルを示す。
【図14】(a):Fe+1、(b):Fe+1+PAnBu(溶液中に開始剤有り)、のIRRASスペクトルを表す。
【図15A】GC+1+PS(ジアゾニウム塩1で処理し、その上にポリスチレンフィルムをグラフト化したガラス質炭素のプレート)、及びGC+1+PS+HSA(ジアゾニウム塩1で処理し、その上にポリスチレンフィルムをグラフト化し、その上にHSAを固定化したガラス質炭素のプレート)の高分解能C1s線を示す。
【図15B】GC+1+PMMA(ジアゾニウム塩1で処理し、その上にメチルポリメタクリレートフィルムをグラフト化したガラス質炭素のプレート)、及びGC+1+PMMA+HSA(ジアゾニウム塩1で処理し、その上にメチルポリメタクリレートフィルムをグラフト化し、その上にHSAを固定化したガラス質炭素のプレート)の高分解能C1s線を示す。
【0139】
《I−グラフト化及びATRP重合
【化6】

【0140】
1−金属上にグラフトを固定する
1−1.ジアゾニウム塩の合成
出発アミンを、「ワンポット」法により、1−(4−アミノフェニル)エタノール及び(4−アミノフェニル)メタノールから合成した。最初の2種のジアゾニウム塩、BF CH(CH)Br及びBF CHBrを、標準のジアゾ化により合成した。
【0141】
1の合成
【化7】

1gの2−アミノ−5−メチルベンジルアルコール(7.28.10−3mol;1eq.)及び1.23gのテトラメチルアンモニウムブロミド(8.10−3mol;1.1eq)を、50mlフラスコ中の5mlの48%臭化水素酸(1.82.10−2mol;2 ,5eq.)水溶液に入れる。得られた溶液を、アルゴン雰囲気下に、150℃で15時間撹拌しておく。黄色沈殿が形成される。反応混合物を0℃まで冷却し、5mLの予め0℃まで冷却した48%テトラフルオロホウ酸(1.68.10−2mol;5.6eq.)水溶液を添加する。撹拌を15分間維持する。0.55gの亜硝酸ナトリウム(8.10−3mol;1.1eq.)を最小量の脱塩水に溶解する。得られた溶液を0℃まで冷却し、次いでそれを徐々に反応媒体に添加する。褐色沈殿が現れる。0℃で撹拌を30分間維持し、次いで溶液を一晩冷蔵庫に置き、ジアゾニウム塩を沈殿させる。焼結ガラス上で濾過後、沈殿を5%テトラフルオロホウ酸ナトリウム水溶液、メタノール、及びジエチルエーテルで洗浄し、次いで真空下に乾燥する。褐色粉末を得る。
【0142】
2の合成
【化8】

0.5gの2−アミノベンジルアルコール(4.6.10−3mol,1eq.)及び0.78gのテトラメチルアンモニウムブロミド(5.06.10−3mol;1.1eq)を50mlフラスコ中の5mlの48%臭化水素酸(1.82.10−2mol;3.96eq.)水溶液に入れる。得られた溶液を、アルゴン雰囲気下に、150℃で15時間撹拌しておく。黄色沈殿が形成される。反応混合物を0℃まで冷却し、予め0℃まで冷却した4.5mLの48%テトラフルオロホウ酸(1.64.10−2mol;3.56eq.)水溶液を添加する。撹拌を15分間維持する。0.34gの亜硝酸ナトリウム(5.06.10−3mol;1.1eq.)を最小量の脱塩水に溶解する。得られた溶液を0℃まで冷却し、次いでそれを徐々に反応媒体に添加する。褐色沈殿が現れる。撹拌を0℃で30分間維持し、次いで溶液を一晩冷蔵庫に置き、ジアゾニウム塩を沈殿させる。焼結ガラス上で濾過後、沈殿を5%テトラフルオロホウ酸ナトリウム水溶液、メタノール、及びジエチルエーテルで洗浄し、次いで真空下に乾燥する。褐色粉末を得る。
【0143】
1−2.アリール基のグラフト化
反応を炭素電極上で実施し、次いで鉄の上に置き換えた(図1)。幅広い不可逆の一電子波がEp=−0.31V/SCEで観察され、反応R1に従って鉄表面と反応するアリールラジカルに対する、ジアゾニウム塩の協奏還元に相当する(反応工程式1参照)。連続走査の間、アリール基のグラフト化により表面が次第にブロックされるにつれて、ジアゾニウム塩では通常のことであるように、この波の高さは非常に低くなる。鉄はあまりにも容易に酸化されるので、鉄の上で、この波は観察できない。
【0144】
表面の酸化を最大限まで回避するために、鉄電極をダイヤモンドペースト(1μm)で注意深く磨き、次いで脱酸素化したアセトン中で5分間超音波洗浄処理する。グラフト化を達成するために、炭素上で測定されるピークよりもマイナスの電圧(ΔE=−0.54V)(及び鉄の酸化電位よりも陰極の電圧)を印加することによるクロノアンペロメトリーによって、操作を進める。図2は、電極のブロッキングに相当する、電流の急降下を示す。
【0145】
グラフト化後、表面に物理的に吸着されるだけの分子を除去するために、電極をACN中で注意深く超音波洗浄処理をする。
【0146】
前述したように処理される鉄プレートを、又はの20mMのアルゴン気流で脱酸素化した溶液中に1時間、単に浸漬することによりグラフト化を達成することも可能である。
【0147】
1−3.サイクリックボルタンメトリーによるグラフト化表面のキャラクタリゼーション
電極を超音波浴中のアセトンで注意深く洗浄後、溶媒及び電解質(ACN+0.1MNBuBF)だけを含む溶液中に移動する。図3は、CV+2の還元によりグラフト化されるガラス質炭素電極のボルタンモグラムを示す;C−Br結合の還元に相当する不可逆波が、Ep=−1.98V/SCEで観察される。戻り走査(return scan)で
は、ピークがEp=+0.83V/SCEで観察される。これは、陰極のピークのレベルで形成される臭化物の酸化に相当する。比較すると、同じ条件下での臭化ベンジルの還元は、Ep=−1.95V/SCEにピークを生じ、テトラエチルアンモニウムブロミドの酸化は、Ep=0.86V/SCEでピークを生じる。同様のボルタンモグラムがCV+1の場合に得られる(図4)。従って、陰極ピーク及び陽極ピークはそれぞれ、以下の図2のR6及びR7の反応に相当する。
【化9】

【0148】
従って、図3及び図4の二つのボルタンモグラムは、及びが起源のアリール基によるガラス質炭素表面のグラフト化を証明する。
【0149】
1−4.IR分光法によるグラフト化表面のキャラクタリゼーション
図5は、Fe+1によりグラフト化した鉄表面の反射(IRRAS)によるIRスペクトルを表す。
【0150】
ジアゾニウムのスペクトルとグラフト化した有機層のスペクトルとの間の最も著しい違いは、2258cm−1のバンドの不存在であり、これはジアゾニウム塩が実際に還元されていること及び表面に吸着されているだけではないことを示している。1579及び1508cm−1で環振動を有する芳香族基の特性吸収;1083cm−1でのC−H結合の面内振動、並びに最後に834,793及び700cm−1でのC−H面外振動が、Fe+1のスペクトルには明瞭に観察される。CHsの領域には興味ある違いが観察される;芳香族環の振動がのスペクトルの3086cm−1で明瞭に見られるのに対して、前記振動が、Fe+1のスペクトルでは、2964cm−1にある脂肪族CH振動のために消失している。これは、一部はの脂肪族CHの振動を有する場合のように、振動の双極子モーメントが表面に垂直である振動を強めるという選択則によるものである。これはおそらくFe+1のスペクトルにおける1083cm−1にあるバンドの減衰の原因と同じ効果である。
【0151】
1−5.XPSによるグラフト化表面のキャラクタリゼーション
図6は、表面Fe+1のワイドスキャンスペクトルを表す。鉄ピークの存在が観察され、それによって比較的薄い有機層(約5nmのXPS分析深度未満)の存在を示している。69eVにある臭素原子のピーク及び285eVにある炭素原子のピークは、有機層の存在を(しかし炭素原子については外部からの汚染の存在も)証明する。530eVにある酸素原子は、表面に残っている酸化物の存在に相当し、窒素原子(400eV)も、雰囲気による汚染が起源であり、フッ素原子(685eV)はおそらくは試料を洗浄しているにもかかわらず表面に残っている微量の電解質に相当する。図7は、Fe+1の試料の炭素原子のC1sピークのスペクトルを示す。デコンボリューション後、283.2eVに位置するピークに相当する肩が観察されるが、これは、炭化鉄が283eVに現れることに比較すると、金属に結合した炭素原子を示すものである。
【0152】
前記分光学的キャラクタリゼーションは、臭素化したグラフトが本当に鉄の表面に固定されていることを明らかに示している。開始剤として使用するこれらのグラフトで開始することにより、ポリマーを表面に成長させることが可能であることが今や示されるであろう。プレートを単に浸漬することによりグラフト化した表面は、前記の特性と同様の特性を有する。
【0153】
2−グラフトからのポリマー成長
2−1.重合
グラフト化のための実験条件は、溶液中の開始剤を使用することにより調整され、そして重合が原子移動ラジカル重合(ATRP)基準を明瞭に示すことを確認した。
【0154】
2種のモノマーを使用した:一方でメチルメタクリレート(MMA)、他方でn−ブチルアクリレート(AnBu)であり、これらはそれぞれ、メチルポリメタクリレート(ガラス転移温度Tg=100℃)及びn−ブチルポリアクリレート(Tg=−55℃)を生じる。典型的な実験条件を下の表1に示す;上記の予めグラフト化したペレットを重合溶液に浸漬する(表1の実験条件を参照)。
【0155】
この段階の後に、鉄プレートをジクロロメタン中で注意深く超音波洗浄する洗浄サイクルが鉄表面に吸着するポリマー残渣を除去するのに十分であったことを確認するために、試験を行なった。PMMA−トルエンの溶液と接触して置かれる鉄プレートを、開始剤及び塩化銅の不存在下に、90℃で4時間加熱する。次いで、ジクロロメタン中で5分間持続する超音波洗浄を4回行なった後、IRRASによるプレートの分析はポリマーシグナルを示さない。このとき、PMMAは洗浄溶媒に残存する(IR分析)が、5回目の洗浄後に、ポリマーはクロロホルムから完全に消失している。この洗浄サイクルを、Cu/Cl及び開始剤を含む重合溶液に浸漬した鉄プレートに適用したので、IRRAS及びXPSを用いるPMMA及びPAnBuの特徴的シグナルは、グラフト化した非吸着ポリマーに帰することができる(図10、11、12、13、14)。
【表1】

a)濃度mol L−1;T=90℃;[開始剤]/[PMDETA]/[Cu]=2/1/1;[MMA]/[開始剤]=200;[AnBu]/[開始剤]=120;(b)配位子PMDETA:ペンタメチルジエチレントリアミンを含む予め脱気した溶液(反応工程式1参照)、モノマー、及び開始剤1−PEBrを、窒素雰囲気下に、鉄ペレット及び塩化銅に添加する。反応時間:MMA 250分(近似モノマー転化率およそ40%に対して)、AnBu 400分(転化率80%に対して)。
【0156】
2−2.ポリマーで覆われた表面のキャラクタリゼーション
ジアゾニウム塩から得た表面は以下の化学式を有することが好ましい:
【化10】

【0157】
2−2−1.AFMによるキャラクタリゼーション
図8A、8B、8C及び8Dは、FeFe+1鉄+1+PMMA及び鉄+1+PAnBuのプレートについて、AFMによって得られる画像を示す。これらの最後の2個の場合は、溶液中の開始剤を使用しないで、鉄基質と結合した開始剤だけでグラフト化したポリマーの被覆だけでなく、溶液に添加した開始剤の存在下に得られる鉄+1+PMMA表面をも含む。
【0158】
画像は、開始剤のグラフト化及びその結果として生じるポリマーコーティングにより、鉄の表面の形態が、明らかに改質されることを示している。最大粗さは、Fe鉄+1鉄+1+PAnBu鉄+1+PMMAの方向に増加する。鉄+1及び鉄+1+ポリマーについて得られる最大高さの違いは、100ナノメートルもの大きさに達することができる。従って、開始剤を有する鉄+1+PMMAを示している図8Eにおいて、厚さはおよそ200nmに達し、比較的厚いコーティングを得ることが可能であることを示している。
【0159】
図9は、グラフト化層の厚さ、表面上に観察できる集合体の高さ、及び後者の粗さにおける変化を、Fe+1表面上のPAnBuの重合時間の関数として表す。このように、層が成長するとき、粗さは一定のままであることが観察される。これは高密度のブラシが得られる、即ちポリマー鎖は長くなるが長さの違いはそのサイズとともに変化しないという事実を確認するものである。
【0160】
2−2−2.XPSによるキャラクタリゼーション
図6は、ジアゾニウム塩によりグラフト化した鉄の表面のスペクトルを示す。図10は、MMAグラフト化後の、即ちPMMA(Fe+1+PMMA)で覆われる同じ表面を有する。それは、鉄の相対強度に比較して、C1s及びO1s線の相対強度の明らかな増加を示す。表2は、によりグラフト化し次いでポリマーで覆われる表面に対する表面の組成を示す。
【表2】

【0161】
ポリマーをグラフト化した後の炭素原子の相対割合の増加が観察される。酸素原子の表面割合は、特にPMMAの場合により多く増加しており、PAnBuよりも酸素原子が豊富である。鉄の割合は実質的に減少し、何よりもPMMAの場合に減少している。これは明らかに表面の有機層の成長を示している。AnBuの重合におけるわずかな減少は、層が薄いか又は多くの欠陥を有する不規則な層かのいずれかを示している。
【0162】
興味深いことに、鉄+1に対するBr3d線が70.8eVに中心があることに注意されたい。これは、臭素原子が有機的環境(より詳細にはC−Br結合)に存在することの明瞭な徴候である。しかしながら、ポリマー鎖の成長後、臭素原子の存在はグラフト化されたプレートの表面に持続している。これは、グラフト化されたATRP開始剤の類縁体であるジアゾニウム塩のすべてが反応するわけではないことを示唆する。更に、鉄+1+ポリマーの表面上にある、低い結合エネルギーの肩は、おそらくポリマーに捕捉され、超音波洗浄サイクルでも除去できなかった、臭素イオンが存在する可能性を示唆する。
【0163】
鉄+1+PAnBuの場合、塩素原子は、199.2eVに中心がある主Cl2p線により検出される。この値は、PVCのCl2pに対する結合エネルギー範囲(196.5〜198ev)の下限値に近い。疑いなくこれは、触媒起源の塩化物が成長過程のグラフト化ポリマー鎖と反応し、最終的に-CH-CH-Clの形態での後者の停止を構成す
る(反応工程式2参照)ことを示している。
【0164】
ATRPが表面で効果的に開始されるかどうかを確かめるために、溶液中に添加した開始剤の存在下に又は不存在下に処理される鉄プレートの表面の化学組成を比較した(表3)。溶液中の開始剤の不存在は、表面で生じる重合を妨げることがないと思われ、それは鉄の表面での電気化学的還元による臭素化ジアゾニウム塩の事前のグラフト化に起因すると思われる。溶液中の開始剤の不存在下に炭素原子の割合がより高値であるのは、より長い高分子鎖の存在を示すと思われる。
【表3】

【0165】
鉄+1+PMMAのC1sの高分解能スペクトル(図11)は、PMMAのO−=O炭素原子に特徴的な、289eVに中心のある成分を示す。同じことは、図12に表される鉄+1+PAnBuに対しても当てはまる。
【0166】
従って、XPS分析の結果は、鉄の表面上に2種のポリマーの存在を明らかに実証する。
【0167】
2−2−3.IRRASによるキャラクタリゼーション
図13は、溶液中に開始剤有りと無しでのFe+1及びFe+1+PMMAのスペクトルを示す。Fe+1のスペクトルと他の二つとの間の最も著しい違いは、重合段階後に1735cm−1にある非常に強いバンドの出現である。これはそのカルボニルペンタント基によるポリマーの存在を意味する。表面上にグラフト化されたPMMAの存在のこの証拠は、C−O結合に特徴的な、1271及び1148cm−1にある幅広い対象的な吸収帯の出現により強化される。同じことは、Fe+1+PAnBuに対しても当てはまる(図14参照)。
【0168】
従って、IRRASスペクトルは、表面上にポリマーの存在を反論の余地なく確認するものである。
【0169】
《II−ニトロキシドを用いるグラフト化及び重合(NMP)》
ニトロキシドを用いる重合は、ニトロキシドラジカルによる活性連鎖の担体ラジカルの可逆的ブロッキングに基づく制御された重合法である。それは、ケイ素上に、100nmより多くのポリスチレンブラシを成長させるために使用されている(Huang et al.,2001)。反応工程式5(この後を参照)に示すように、アルコキシアミン官能基を含む開始剤が表面上にグラフト化される。加熱時に、表面に結合したアルコキシアミン基は切断されて、アルキルラジカル及び安定ニトロキシドラジカル:TEMPOを生じる。スチレンラジカルと安定ニトロキシドラジカル(TEMPO)との再結合は、熱分解可能な新たなアルコキシアミンをもたらす。TEMPOラジカルによる成長連鎖の可逆的ブロッキングの結果、休眠種(dormant species)と活性種(active species)との間に平衡が成立することで、停止反応を制限し、それにより成長段階の制御を可能にする。
【0170】
1−ジアゾニウム塩の合成及びグラフト化
反応工程式5のジアゾニウム塩を、NaNOの存在下に、HBF中において、対応するアミンから合成した。このジアゾニウム塩を、予め300sに対して処理される鉄ペレットの電位を、ACN+0.1MNBuBF中で−0.8V/SCEに維持しながら、電気化学的にグラフト化する。開始剤のグラフト化をXPSにより確認した。XPSは比率C/N=19及びO/N=1.3を示し、これはグラフト化表面に対して期待される値(C/N=17及びO/N=1)に近い(反応工程式4)。
【0171】
2.グラフト化されたアルコキシアミンからの重合
前記のようにグラフト化された鉄のペレットを、蒸留したスチレン(10mL)中に浸漬し、温度を24時間130℃に保つ。次いで、表面に堆積しているだけのポリスチレンを除去するために、ペレットをジクロロメタンで洗浄する(超音波で5分サイクル)。表面にポリスチレンが存在することは、標準のポリスチレンフィルムと比較してIRRASにより確認する。
【化11】

【0172】
《III−グラフト化及び開環重合(ROP)》
環状エステルの開環重合は、生体適合性、生分解性及び生体吸収性の脂肪族ポリエステルを生じる。この方法で合成されるポリマーは、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド)、ポリ(γ−バレロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(β−プロピオラクトン)である。ポリ(ε−カプロラクトン)は、多くの他のポリマーと混和可能であるので興味あるポリマーである。
【0173】
重合は、スズオクトエート(Sn(oct))又はアルミニウムトリイソプロパノレート(Al(OiPr))又はトリエチルアルミニウム(AlEt)型の開始剤から開始する配位−挿入メカニズムにより行われる(反応工程式5参照)。アルミニウム又はスズアルコレートは、入手可能なヒドロキシル官能基との交換によりインサイチューに形成することができる。この場合、ヒドロキシル官能基は、鉄の表面上にグラフト化したジアゾニウム塩により与えることができる(反応工程式6参照)。
【化12】

【0174】
1.ジアゾニウム塩の合成及びグラフト化
4−アミノフェノールOH、4−アミノベンジルアルコールCHOH、及び2−(4−アミノフェニル)エタノールのジアゾニウム塩を、HBF酸性媒体中で、NaNOによる標準のジアゾ化法に従って合成した。これら3種の化合物は、サイクリックボルタンメトリーにおいて、それぞれEp=−0.28、−0.39、−0.12V/SCEに位置する不可逆の幅広い波を示す。グラフト化を、ACN+0.1M NBuBF中の300sに対するピークよりも負の電位300mVに維持することにより実施する。グラフト化される表面は、IRRASにより、3380cm−1にアルコール基に特徴的なシグナルを示す。
【0175】
2.ヒドロキシル化されたグラフトからの開環重合
【化13】

【0176】
モノマー(ε−カプロラクトン)及び溶媒(トルエン)をCaH上で蒸留により精製する。ヒドロキシル官能基を含有する鉄プレートを、冷壁上でトルエンの共沸蒸留により精製する(微量の水の除去)。次いで、モノマー(ε−カプロラクトン c=10−2molL−1)及び開始剤(アルミニウムトリイソピロピレート c=10−3molL−1)の溶液を、不活性の窒素雰囲気下に、カニューレ移送によりトルエン(20mL)に添加し、重合を100℃で20時間行なう。次いで、ペレットを、トルエン中で、次にエーテル中で、20分間注意深く超音波洗浄する。表面のIRRASスペクトルは、1730cm−1にエステル官能基の特徴的なピークを示す。
【0177】
《IV−一般的光重合プロトコル》
重合すべき少量の調合物を、ピペットを用いて、予め電気グラフト化した基層で覆ったステンレス鋼スライド上に堆積する。次いで、(得るべき任意の厚さを可能にする)「ワイヤコーター」を使用して調合物を薄く広げることにより、フィルムを形成する。紫外線に暴露する前に、ステンレス鋼スライドをガラスプレート上に配置する。LC6E型コンベヤ上に備え付けたFusion F300S UVランプを使用して、暴露を行なう。
【0178】
照射後、いずれの非重合モノマーをも除去するために、ステンレス鋼スライドをアセトンで洗浄する。
【0179】
変化することができるパラメーター:
堆積物の厚さ: 使用する「ワイヤコーター」によって、10又は26μm。
受ける照射線量: コンベヤの輸送速度及びランプ下の通過数により制御される。
照射範囲: 使用するランプの型により制御される(H又はD)(Fusion UV Systems,Inc.,Maryland,USA)。
【0180】
使用する電球は、通常圧下にアルゴン、ネオン及び水銀により構成される不活性ガス混合物を含む石英水銀灯である。電流を流すと、混合物の温度が上がり、存在する少量の水銀を蒸発させる:その結果、水銀蒸気アークが発生する;これが、240〜270nm及び350〜380nmの間に発光極大を有するH型電球に相当する。D型の電球は発光極大を修正するためにドーパントを添加して製造される。
【0181】
試料が受ける照射量及びランプの選択は、重合すべき調合物により、及び電気グラフト化した光開始剤(PI)の性質により決定される。
【0182】
実施例:
1)処方: 79.9%SR610(ポリエチレングリコール600ジアクリレート(ラジカル重合用モノマー);Cray−Valley)+20%SR454(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ラジカル重合用モノマー);Cray−Valley)+0.1%トリエタノールアミン(TEA)

光開始剤(PI):ベンゾフェノン
厚さ:26μm
線量:ベルト輸送速度2cm/sで20回通過
電球:D

2)処方:79.5%SR610+20%SR454+0.5%TEA
PI:ベンゾフェノン
厚さ:26μm
線量:ベルト輸送速度2cm/sで5回通過
電球:D

3)処方:79.5%SR610+20%SR454+0.5%TEA
PI:ベンゾフェノン
厚さ:26μm
線量:ベルト輸送速度2cm/sで3回通過
電球:D

4)処方:79%SR610+20%SR454+1%TEA
PI:ベンゾフェノン
厚さ:26μm
線量:ベルト輸送速度2cm/sで2回通過
電球:D

5)処方:79%SR610+20%SR454+1%TEA
PI:ベンゾフェノン
厚さ:26μm
線量:ベルト輸送速度1.5cm/sで1回通過
電球:D

6)処方:79.5%SR610+20%SR454+0.5%TEA
PI:マレイミド
厚さ:26μm
線量:ベルト輸送速度2cm/sで2回通過
電球:D
【0183】
ベンゾフェノン由来のジアゾニウム塩から開始するステンレス鋼スライドを用いる合成
試験を、0.1N硫酸媒体で行い、ベンゾフェノン由来のジアゾニウム塩を2.10−3Mの濃度で使用する。
【化14】

作用電極は、洗剤できれいにし、蒸留水で超音波洗浄処理をした316Lステンレス鋼電極である。
対極は白金シートである。対極と作用電極との表面比率は少なくとも3である。
基準電極は、銀電極(Ag/AgClO)である。
溶液中への連続的アルゴン気流は、酸素を追い出すことを可能にする。
使用する電気化学的合成技術は、サイクリックボルタンメトリーである。いくつかの試みを、最終走査電位を修正することにより行なう。その場合、他のパラメーターを固定した状態に保つ。即ち、走査速度は200mV/s、実施サイクル数は10、最初の電位は平衡電位である。試験を3つの最終電位:−1、−1.3及び−1.5V/(Ag/Ag)で実施した。
そして、3つの場合すべてにおいて、赤外線分析は、1665cm−1(C=O)、1600cm−1(C=C伸縮振動)にあるグラフトの特徴的なカルボニル吸収帯の存在により、ステンレス鋼の表面が明らかに改質されていることを示すことを可能にする。
【0184】
4−ジアゾニウムN−フェニルマレイミドテトラフルオロボーレートで開始するステンレス鋼スライドを用いる合成
【化15】

試験を、0.1N硫酸媒体中で行い、ベンゾフェノン由来の4−ジアゾニウムN−フェニルマレイミドテトラフルオロボーレート塩を2,10−3Mの濃度で用いる。
使用する電極は、前記の場合と同じである。実験全体にわたり、溶液中にアルゴンをバブリングする。
使用する電気化学的合成技術は、サイクリックボルタンメトリーである。いくつかの試みを、走査速度を修正することにより行なう。その場合、他のパラメーターを固定して保つ。即ち、最終電位は−1.7V/(Ag/Ag)、実施するサイクル数は10、最初の電位は平衡電位である。試験を3つの走査速度:20、50及び200mV/sで実施した。
そして、3つの場合すべてにおいて、赤外線分析は、1730cm−1(C=O)、1600及び1535cm−1(C=C伸縮振動)にあるグラフトに特徴的なカルボニル吸収帯の存在により、ステンレス鋼の表面が明らかに改質されていることを示すことを可能にする。
【0185】
イルガキュア(irgacure)から開始するステンレス鋼スライドを用いる合成
試験を、ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として、テトラエチルアンモニウムパークロレートを塩として5.10−2Mの濃度で、4−ニトロベンゼンジアゾニウム塩を重合開始剤として2.10−3Mの濃度で、及びモノマー、イルガキュア(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、CIBA)を2Mの濃度で使用して、有機溶媒中で実施する。
使用する電極は、前記の場合と同じである。
実験全体にわたり、溶液中にアルゴンをバブリングする。
使用する電気化学的合成技術は、サイクリックボルタンメトリーである。いくつかの試みを、走査速度(20及び50mV/s)及びサイクル数(10及び20)を修正することにより行なう。最終電位は−3V/(Ag/Ag)であり、最初の電位は平衡電位である。
赤外線分析は、特徴的な吸収帯の強度がかなり低い(透過率1%未満)けれどもその特徴的な吸収帯:3350cm−1(OH)、1672cm−1(C=O)、〜1600cm−1(C=C伸縮振動)が存在するので、表面がポリマーにより明らかに改質されていることを示すことを可能にする。
【0186】
《V−PS及びPMMAにより改質したガラス質炭素表面へのヒト血清アルブミン(HSA)の固定化》
で処理したガラス質炭素プレート上にATRP(原子移動ラジカル重合)によりグラフト化して得たPMMA(メチルポリメタクリレート)及びPS(ポリスチレン)のフィルム(実施例I参照)上へのHSAの固定化を、水溶液(0.1MCHCOONa−CHCOOH)中、pH5で、6mg/mlタンパク質濃度を用い、周囲温度で実施した。(上記の操作法に従い)ポリマーブラシで被覆したガラス質炭素プレートを、タンパク質の溶液中で、撹拌しながら、24時間インキュベートした。インキュベーション後、物理吸着したタンパク質分子を除去するために、基材(その上にHSAタンパク質を固定化したプレート)を、Tween 20(界面活性剤)の5%(v/v)水溶液中で、30分間3回洗浄し、次いで蒸留水で30分間洗浄した。乾燥後、ポリマーブラシで改質し、タンパク質を固定化しているガラス質炭素プレートを、真空下に1時間乾燥し、XPS装置の準備室で超高真空下に保存した。
【0187】
前記プレート上にこのように固定化したHSAタンパク質は、静電的相互作用により、又はファンデルワールス相互作用により、又は水素結合により吸着している。
【0188】
従って、本発明により改質した材料は、多かれ少なかれ親水性であり、多かれ少なかれ高密度である、ポリマーブラシと、タンパク質の吸着を制御することを可能にする。
【0189】
図15A及び15Bは、GC+1+PS、GC+1+PS+HSA、GC+1+PMMA及びGC+1+PMMA+HSAの高分解能でのC1sスペクトルを示す。HSAの固定化後、基材GC+1+PS及びGC+1+PMMAは、その微細構造が特に286.2及び288.6eVに中心がある成分により著しく修飾されているC1s線を示す。これらはそれぞれ、物理吸着したタンパク質に特徴的な化学的環境C−N/C−O及びN−C=Oにある炭素原子に特徴的な成分である。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始官能基を有する少なくとも1種のジアゾニウム塩の使用であって、一方では、前記ジアゾニウム塩由来のグラフトのグラフト化により得られる基層を形成して、導体材料又は半導体材料の表面に重合開始官能基をもたらすための使用、及び他方では、前記重合開始剤官能基により開始される、少なくとも1種のモノマーの非アニオンインサイチュー重合によって得られるポリマー層を、前記基層上に形成するための使用。
【請求項2】
ポリマー層が、ラジカル重合により又は開環重合により得られることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリマー層が次の重合方法;光重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)又は開環重合(ROP)、のうちの一つによって得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
材料の対象となる導体又は半導体領域であって、前記領域の表面が改質されており、以下の層;
(A)ジアゾニウム塩由来の開始剤グラフトにより構成され、そして前記表面に結合している基層であって、前記基層と対象となる前記導体又は半導体領域の表面との間に介在する結合はすべて共有結合であり、前記基層が
(a)厚さ約1nm〜約1μm、好ましくは約3nm〜約100nmを有し、
(b)対象となる前記導体又は半導体領域の表面に直接に結合するグラフトが、特に領域のグラフト原子の原子結合により結合し、特に前記領域のグラフト原子の共有炭素結合により結合する、
ことを特徴とする前記基層、及び
(B)前記基層の上に位置するポリマー層であって、前記定義の開始剤存在下に少なくとも1種のモノマーのインサイチュー非アニオン重合に起因するポリマーにより構成されるポリマー層であり、
(a)前記ポリマー層が厚さ約0.1μm〜約100μmを有し、
(b)ポリマー層が対象となる前記導体又は半導体領域の表面の約80%〜約100%を被覆し、特に前記領域の約95%〜約100%を被覆するポリマー層、
を含む材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項5】
ポリマー層のポリマーが、ラジカル重合又は開環重合によって得られることを特徴とする、請求項4に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項6】
ポリマー層のポリマーが、以下の重合方法;光重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)又は開環重合(ROP)、のうちの一つによって得られることを特徴とする、請求項4又は5に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項7】
基層が、純度レベルを少なくとも約80%有し、特に約90%〜約100%を有し、そして、特に溶媒、ジアゾニウム塩及びその誘導体を含まないことを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項8】
基層のグラフトに含まれる結合が、非加水分解性の結合であることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項9】
対象となる導体又は半導体領域のグラフト原子の原子結合、特に領域のグラフト原子の共有炭素結合による、ポリマー層のポリマー鎖を含むことを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項10】
ポリマー鎖が、互いに実質的に等しい分子量を有し、そして前記鎖が前記材料表面に対し実質的に垂直に連結して高密度のブラシを形成することを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項11】
グラフトが芳香族化合物であり、特にアリール基であり、芳香族基が、1個以上の官能性置換基、特にハロゲン原子、例えば臭素原子で置換されているC〜C20の芳香族ラジカル、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子若しくはリン原子から選択される1個以上のヘテロ原子を含む1個以上の官能性置換基により置換されている4〜20原子を有するヘテロ芳香族ラジカルであることを特徴とする、請求項4〜10のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項12】
グラフト各々が単一のアリール基からなり、単分子層に相当するグラフトの形態に、基層が存在することを特徴とする、請求項4〜11のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項13】
モノマーが、少なくとも1個の末端二重結合を含む化合物、特にスチレン又はアクリレート及びメタクリレートの単官能性若しくは多官能性誘導体、から選択されることを特徴とする、請求項4〜12のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項14】
前記ポリマーが、ラジカル重合(特に原子移動ラジカル重合又はニトロキシド重合)により得られ、そして前記ポリマー鎖の末端が、ブロック共重合体、又は活性分子(例えば、アミノアルコール、アリルアルコール、無水マレイン酸、糖類、核酸、ペプチド、タンパク質、ペルフルオロ化した分子若しくは医薬活性を有する分子)により、任意に置換することができる官能性基(特にハロゲン原子又はニトロキシド基)を含むことを特徴とする、請求項13に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項15】
前記ポリマーがラジカル重合(特に原子移動ラジカル重合)により得られ、そして前記ポリマー鎖の末端が、ブロック共重合体、又は活性分子(例えば、アミノアルコール、アリルアルコール、無水マレイン酸、糖類、核酸、ペプチド、タンパク質、ペルフルオロ化した分子若しくは医薬活性を有する分子)により、任意に置換することができるハロゲン原子(特に臭素原子)を含むことを特徴とする、請求項13又は14に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項16】
請求項4〜15のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域であって、開始剤がハロゲン化誘導体、特に臭素化誘導体、又はアルコキシアミン型誘導体、又はα−ヒドロキシアルキルフェノン誘導体、α−ジアルコキシアセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、α−アミノアルキルフェノン誘導体、芳香族ケトン誘導体、例えばベンゾフェノン若しくはアントラキノン、N−脂肪族若しくはN−芳香族マレイミド誘導体、キサンテート誘導体、ジチオカルバメート誘導体、チオキサントン誘導体、ホスフィンオキシド誘導体、又はアルコール、トリチオカーボネート若しくはジチオエステル誘導体であることを特徴とする材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項17】
基層のグラフトと前記領域の表面との間の、前記領域のグラフト原子の原子結合、特に前記領域の共有炭素原子結合が超音波洗浄に耐えるような結合であることを特徴とする、請求項4〜16のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項18】
材料が純粋な金属又は合金、特に鉄、ニッケル、白金、金、銅、亜鉛、コバルト、チタン、クロム、銀、タンタル、鋼、特にステンレス鋼、チタン合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、マンガン、バナジウム、ニチノールから選択されるか、あるいは半導体、特に単結晶若しくは多結晶の半導体、ドープ若しくは非ドープのケイ素、水素化ケイ素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化タンタル、炭化ケイ素、リン化インジウム、若しくはヒ化ガリウムから選択される、請求項4〜17のいずれか一項に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域。
【請求項19】
材料の対象となる導体又は半導体領域の表面の改質方法であって、その方法が請求項4に定義の重合開始剤由来のグラフトを前記領域の表面上に結合すること、特に、前記導体又は半導体領域を、重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液とへ接触させることによって結合すること、を含むことを特徴とする、請求項4〜18のいずれか一項に記載の、表面が改質されている導体又は半導体領域を得るための前記方法。
【請求項20】
請求項4に定義の重合開始剤由来のグラフトをこの領域の表面上に結合することが、導体又は半導体領域を、溶媒、(特に非プロトン性溶媒又はプロトン性酸性溶媒)中の重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液と、請求項2に定義のグラフトの基層を前記領域表面上に結合させるのに十分な時間、接触させることを含む不均一電子移動反応により実施されることを特徴とする、請求項19に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域の表面の改質方法。
【請求項21】
材料の対象となる導体又は半導体領域の表面の改質方法であって、導体又は半導体領域を溶媒中のジアゾニウム塩の溶液と接触させることにより、重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の電気化学的還元によって、請求項4に定義の開始剤グラフトをこの領域の表面上に結合することを含むことを特徴とする、請求項4〜18のいずれか一項に記載の、表面が改質されている導体又は半導体領域を得るための前記方法。
【請求項22】
ジアゾニウム塩が、式ArNで表され、式中、Arは請求項4に定義の重合開始剤官能基を有する芳香族基であり、Xはアニオンであり、ジアゾニウム塩のアニオンXがハロゲン原子、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、カルボン酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩から有利に選択されることを特徴とする、請求項20又は21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(A)導体又は半導体領域を、溶媒中の重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液と接触させることにより、前記領域の表面上に請求項4に定義の重合開始剤グラフトを結合する段階であって、前記結合段階が特にジアゾニウム塩の電気化学的還元によって実施され、前記表面上に前記開始剤グラフトの共有結合により改質された表面を有する導体又は半導体領域を得ることを可能にし、前記グラフトが請求項4に定義の基層を形成するものである段階、及び
(B)非アニオン重合、特にラジカル重合又は開環重合(ROP)、の段階であって、前記非アニオン重合反応が請求項13に定義のモノマー、及び基層のグラフトが有する開始剤官能基を含有し、請求項4に定義のポリマー層を構成するポリマー形成につながるものである段階、
を含むことを特徴とする、請求項21に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域の表面改質方法。
【請求項24】
(A)導体又は半導体領域を、溶媒中の重合開始剤官能基を有するジアゾニウム塩の溶液と接触させることによって、前記領域の表面上に、ジアゾニウム塩由来であり、そして請求項4に定義の重合開始剤官能基を有する、グラフトを結合する段階であって、前記結合段階が特に不均一電子移動反応によって実施され、その表面上に前記開始剤グラフトの共有結合により改質される表面を有する導体又は半導体領域を得ることを可能にし、前記グラフトが請求項4に定義の基層を形成するものである段階、及び
(B)非アニオン重合、特にラジカル重合又は開環重合(ROP)の段階であって、前記非アニオン重合反応が請求項13に定義のモノマー、及び基層のグラフトが由来する開始剤を含有し、請求項4に定義のポリマー層を構成するポリマー形成につながるものである段階、
を含むことを特徴とする、請求項20に記載の材料の対象となる導体又は半導体領域の表面改質方法。
【請求項25】
(A)前記領域を含む材料により構成されるもの全ての任意の形態の物体、又は
(B)腐食に対して強化された抵抗性を有する金属表面、又は
(C)ステント、インプラント、人工器官若しくはマイクロエレクトロニクスに使用することができる要素、又は
(D)追加の層、特にブロック共重合体により構成される追加のポリマー層、又は活性分子(例えば、アミノアルコール、アリルアルコール、無水マレイン酸、糖類、核酸、ペプチド若しくはタンパク質)により構成される追加の官能層、を有する導体若しくは半導体領域を含む材料、
の製造のための、請求項4〜18のいずれか一項に記載の導体又は半導体領域の使用。
【請求項26】
以下の化学式の一つであるジアゾニウム塩。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2012−102330(P2012−102330A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245384(P2011−245384)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2007−514029(P2007−514029)の分割
【原出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(506402300)ユニヴェルシテ パリ セット−デニス ディデロ (4)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS 7−DENIS DIDEROT
【出願人】(310007737)
【氏名又は名称原語表記】ALCHIMEDICS
【Fターム(参考)】