説明

表面検査装置

【課題】検査対象物の搬送速度に変動が生じた場合であっても均一な表面画像データを得ること。
【解決手段】このカード印刷装置1は、媒体を搬送路L1,L2,L3上を搬送させながら、媒体表面を検査する装置において、撮像部5aの走査タイミングを制御すると同時に、撮像部5aからの照明光の照明時間を、予め記憶した複数の走査ライン毎の照明時間データに基づいて、複数の走査ライン毎に制御する制御部15を備え、制御部15は、検査用試料を対象にして、撮像部5aを制御することにより複数の走査ライン毎の撮像データの平均輝度を予め取得した後に、平均輝度が目標値に近づくような照明光の照明時間の補正値を算出し、補正値を反映した複数の走査ライン毎の照明時間データを予め記憶し、検査対象の媒体の撮像時には該照明時間データに基づいて照明光の照明時間を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の表面状態を検査する表面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カードや紙幣等の表面画像データを撮像素子によって取り込み、その表面の状態を検査する装置が知られている。このような装置の例としては、検査対象物を調光機能付きの照明装置によって照明して、その検査対象物をラインセンサによって撮像し、そのラインセンサからの出力を画像処理装置によって処理する装置や、被検査物にライン状に光を照射し、被検査物表面の光照射ラインに対して平行な検出ラインを撮像する検査装置がある(下記特許文献1〜2参照)。
【0003】
このような従来の装置では、ラインセンサの出力を基にして得られる平均受光レベルに基づいて、目標とする受光レベルを得るための照明装置に対する出力レベルを求め、その出力レベルを照明装置に出力することによって照明装置の光量を調整している。また、撮像した検出ラインの光量分布をモニタテレビに表示させて、照明手段やラインセンサの位置を、その表示された光量分布を見て調整することも行われている。
【特許文献1】特開平9−179960号公報
【特許文献2】特開平9−297107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の検査装置を用いて、装置内を搬送されている検査対象物を検査しようとした場合には搬送速度の変動が生じることがあるので、照明装置に対する出力レベルを調整したとしても検査対象物の表面全体において均一な撮像データを得ることは困難であった。また、照明装置やラインセンサの位置をマニュアルで調整する必要があるため、調整作業が面倒であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、検査対象物の搬送速度に変動が生じた場合であっても均一な表面画像データを得ることが可能な表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の表面検査装置は、検査対象物を搬送手段によって所定の搬送速度で搬送路上を搬送させながら、検査対象物に向けて発光部から照明光を照射するとともに、ラインセンサによって該検査対象物を所定の走査周期で複数の走査ラインに区切って順次撮像する表面検査装置において、ラインセンサの走査タイミングを制御すると同時に、発光部の照明光の照明時間を、予め記憶した複数の走査ライン毎の照明時間データに基づいて、複数の走査ライン毎に制御する制御手段を備え、制御手段は、搬送手段によって搬送される補正用試料を対象にして、発光部及びラインセンサを制御することにより複数の走査ライン毎の撮像データの輝度値を予め取得した後に、輝度値が目標値に近づくような照明光の照明時間の補正値を算出し、補正値を反映した複数の走査ライン毎の照明時間データを予め記憶し、検査対象物の撮像時には該照明時間データに基づいて照明光の照明時間を変更する。
【0007】
このような表面検査装置によれば、検査対象物を検査する前に、補正用試料が搬送路上に搬送され、走査ライン毎に予め記憶した照明時間データに基づいて照明光が照射されると同時に所定の走査周期で撮像される。その結果として得られた走査ライン毎の撮像データの輝度値に基づいて、輝度値が目標値に近づくような走査ライン毎の照明時間の補正値が算出され、その後に検査対象物を検査する際には、その補正値に基づいて走査ライン毎に照明時間が変更されて検査対象物の表面の撮像データが取得される。これにより、検査対象物の搬送の際に搬送速度にムラが生じる場合であっても、それに起因して発生する撮像データにおける濃度ムラの発生を効率よく防止することができ、検査対象物の検査の精度が向上する。特に、照明光の照明時間を変更する場合は発光部の応答性が高いので、画像データの輝度補正の精度がより向上する。
【0008】
制御手段は、補正用試料を対象にして得られた輝度値に所定の係数を乗ずることによって補正値を算出する、ことが好ましい。この場合、輝度値と照明時間との関係が線形関係に近似されることを利用して補正値を算出することができ、画像データの濃度ムラを確実に補正することができる。
【0009】
また、搬送手段による検査対象物の搬送速度を検出するエンコーダを更に備え、制御手段は、エンコーダからの出力に基づいて、走査タイミング及び照明光の照明時間を制御することも好ましい。かかる構成を採れば、ラインセンサの走査タイミングと照明光の照明時間を搬送速度に応じて制御することができるので、検査対象物における走査ラインのピッチを一定にして、画像データの伸縮を防止することができるとともに、照明光の照射タイミングも走査ラインのピッチに合わせることにより輝度のムラを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面検査装置によれば、検査対象物の搬送速度に変動が生じた場合であっても均一な表面画像データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る表面検査装置について詳細に説明する。
【0012】
図1に示すカード印刷装置1は、ICカード、クレジットカード等の媒体(検査対象物)を印刷した後に、その媒体の表面の印刷状態を検査する装置である。
【0013】
このカード印刷装置1には、装置内部に媒体を供給するためのホッパー部2が設けられ、ホッパー部2から供給された媒体は、図示しない搬送機構によってその表面を搬送路L1の上側に向けた状態で搬送路L1上を搬送されて、媒体の表面を印刷するための印刷部3の内部に導入される。印刷部3によって表面が印刷された媒体は、搬送機構によって搬送路L1に沿って設けられた反転機4まで戻された後、反転機4によって搬送路L1に交差する搬送路L2に沿った方向に回転されてから、搬送機構によって搬送路L2に沿って搬送される。搬送路L2上には撮像部5aが設けられ、搬送路L2上に搬送される媒体の表面の印刷状態が撮像部5aによって検査される。
【0014】
さらに、撮像部5aによって検査された媒体は、搬送路L2に沿って設けられた反転機6まで搬送された後、反転機6によって搬送路L2に交差する搬送路L3の上側にその裏面を向けるまで回転される。そして、その媒体は、搬送路L3上に設けられた印刷部7の内部に導入されてその裏面が印刷される。裏面が印刷された媒体は、搬送路L3上の撮像部5bの内部を通されることによりその裏面の印刷状態が検査された後、ラミネート部8へ導入されて、ラミネート材(保護シート)で被覆される。最後に、媒体は、撮像部5a,5bの検査結果の良否に応じて、2つに分割されたスタッカ9に分別して排出される。
【0015】
次に、撮像部5aの構成についてより詳細に説明する。なお、撮像部5bの構成は撮像部5aと同一であるのでその説明を省略する。
【0016】
撮像部5aは、図2に示すように、長尺状の形状を有し、搬送路L2を構成する2本の互いに平行な搬送ベルト10をまたがるように、すなわち、搬送ベルト10による搬送方向がその長手方向と略垂直になるように配置されている。この撮像部5aは、CCD(Charge Coupled Device)ラインセンサを内蔵し、搬送ベルト10上に搬送されてきた媒体Aが搬送ベルト10と撮像部5aとの間を通過する際に、媒体Aの搬送ベルト10の上側の表面を、撮像部5aの長手方向に沿った複数の走査ラインに区切って順次撮像する。この搬送ベルト10による媒体Aの搬送速度は様々な速度に設定されうるが、例えば、58mm/secで一定の速度になるように設定されている。また、撮像部5aには、媒体Aの表面の走査ラインに向けて照明光を照射するLED発光部も内蔵されている。さらに、搬送ベルト10には、媒体Aの実際の搬送速度を検出するためのロータリエンコーダ11が取り付けられている。
【0017】
図3を参照して、カード印刷装置1の内部構成についてより詳細に説明する。同図に示すように、撮像部5aには撮像部5aの走査周期及び照明タイミングを制御するカメラ制御基板12が接続され、カメラ制御基板12には、媒体の搬送速度を設定するためのホストコントローラ13が接続されている。さらに、ホストコントローラ13には、搬送速度の設定信号に応じて搬送路L2上の媒体の搬送速度を調整する搬送制御部14が接続され、この搬送制御部14は搬送ベルト10を駆動する搬送機構(図示せず)に接続されている。また、カメラ制御基板12には、搬送ベルト10の駆動軸の回転角度、すなわち媒体の搬送距離を検出するロータリエンコーダ11が接続されている。
【0018】
このカメラ制御基板12は、制御部15、カメラI/F部16、照明調光回路部17、エンコーダ入力部18、メモリ部19、及びホストI/F部20を備えている。
【0019】
カメラI/F部16は、制御部15又はメモリ部19と撮像部5a内のCCDラインセンサとの間で送受信される信号を中継及び変換し、照明調光回路部17は、制御部15から撮像部5a内のLED照明部に送信される照明タイミングの制御信号を中継及び変換する。また、ホストI/F部20は、ホストコントローラ13と制御部15との間で送受信される信号を中継及び変換する。エンコーダ入力部18は、搬送路L2上の媒体が所定距離搬送される度にロータリエンコーダ11から出力されるパルス信号を受信し、そのパルス信号の受信を制御部15に通知する。
【0020】
制御部15は、図示しない媒体の到来センサによって搬送路L2における媒体の到来を検知すると同時に、ロータリエンコーダ11からのパルス信号をカウントすることにより、搬送路L2上の媒体の位置を検出する。そして、制御部15は、検出した媒体の位置に基づいて、媒体表面上での走査ラインが等間隔になるように、撮像部5aのCCDラインセンサによる走査タイミングを制御する。具体的には、制御部15は、媒体がCCDラインセンサの撮像可能範囲に到来してから所定ピッチだけ移動する毎に、撮像部5aに対して走査タイミングを通知する走査パルス信号を送出する。これにより、撮像部5aのCCDラインセンサは、1つの走査パルス信号を受けてから次の走査パルス信号を受けるまでの間に媒体の走査ライン上の像を露光する。CCDラインセンサにより生成された走査ライン毎の画像データは、カメラI/F部16を経由して制御部15に順次出力された後、媒体の表面全体の画像データとして合成されて、ホストI/F部20を経由してホストコントローラ13に出力される。そして、ホストコントローラ13によって媒体の画像データが予め格納された基本画像パターンと一致するか否かが判定されて、媒体表面の印刷状態の良否が判定される。
【0021】
同時に、制御部15は、照明調光回路部17に照明制御信号を送出することにより、撮像部5aによる照明光の照明時間を、媒体の走査ライン毎に制御する。すなわち、メモリ部19には、予め媒体表面のn本の走査ライン毎に照明光の照明時間データT〜Tが格納されており、制御部15は、その照明時間データT〜Tをその都度読み出して、各走査ラインの走査開始タイミングからそれぞれの照明時間T〜Tを経過するまでの間で照明光を照射するように、照明調光回路部17に照明制御信号を順次送出する。従って、各走査ラインの走査開始タイミングが照明光の照射開始タイミングと一致する。なお、メモリ部19には、初期に設定される照明時間データとして、全ての走査ラインに関して同一の照明時間データTが設定されている。
【0022】
ここで、図4は、搬送路L2上における媒体の搬送速度がほぼ一定に維持されている状態における(a)走査パルス信号、(b)照明制御信号、及び(c)撮像部5aによる露光時間を示すタイミングチャート、図5は、搬送路L2上における媒体の搬送速度に走査ライン間でムラが発生した状態における(a)走査パルス信号、(b)照明制御信号、及び(c)撮像部5aによる露光時間を示すタイミングチャートである。媒体の搬送速度が隣り合う走査ライン間で一定の場合は、走査パルス信号が一定周期Ta1で生成され、露光時間も走査ライン間で同一となっている(図4(a)、(c))。この場合は、照明時間が各走査ライン間で同一時間Tに設定されれば(図4(b))、全走査ラインにおける画像の輝度のムラが少ないことが容易に理解できる。これに対して、媒体の搬送速度が変動している場合は、走査パルス信号の間隔が走査ライン間で変動し、各走査ライン間で露光時間が変化してしまう(図5(a)、(c))。この場合に、照明時間を各走査ライン間で同一時間Tとしてしまうと(図5(b))、媒体表面全体の画像において輝度ムラが発生してしまうことになる。一般には、搬送ベルト等を利用した搬送機構は、長時間使用していくうちに駆動系において搬送ムラが発生するようになったり、製造過程における精度変動によりがたつきが生じることは避けられない。
【0023】
そこで、媒体の表面画像における輝度ムラを防止するために、カメラ制御基板12は、以下のような照明時間の自動調整機能を有する。
【0024】
すなわち、メモリ部19には、予め撮像部5aによって検査対象の媒体と同一形状で白色の検査用試料を静止状態で撮像した場合の照明時間と平均ライン輝度との関係を示す標準データが格納されている。制御部15は、照明時間と平均ライン輝度とがほぼ比例関係にあることを利用して、予めこの標準データに基づいて、撮像部5aにおける照明時間Tと平均ライン輝度Yとの関係を示す係数α=Y/Tを算出して、この係数αをメモリ部19に格納しておく。ここで、平均ライン輝度とは走査ライン内の画素の輝度値の平均である。
【0025】
そして、制御部15は、上記の検査用試料を搬送路L2上に搬送させた状態で、撮像部5aによって各走査ラインの画像データを取得し、走査ライン毎の平均ライン輝度Yを算出する。その後、制御部15は、メモリ部19から係数αを読み出して、平均ライン輝度Yから各走査ラインの照明時間TBnを下記式(1);
Bn=Y/α …(1)
により導出する。さらに、制御部15は、導出した照明時間TBnと初期設定された照明時間Tとの差分|TBn−T|を算出し、ロータリエンコーダ11からのパルス信号を基にして検出される実際の搬送速度と、ホストコントローラ13によって設定されている搬送速度とを比較する。この比較の結果、実際の搬送速度のほうが大きい場合は、制御部15は、メモリ部19に格納されている走査ライン毎の照明時間データTに差分値|TBn−T|を加算して更新し、実際の搬送速度のほうが小さい場合は、メモリ部19に格納されている走査ライン毎の照明時間データTから差分値|TBn−T|を減算して更新する。このような補正処理が全走査ラインに関して完了した後に、検査対象の媒体を搬送路L1〜L3上に搬送させて検査対象の媒体表面の画像を検査することにより、平均ライン輝度が均一になるように走査ライン毎の照明時間が補正される。
【0026】
図6は、制御部15によって補正された照明時間データに基づいて撮像処理された場合であって、(a)は、搬送ムラにより媒体の実際の搬送速度が設定値よりも大きい場合の走査パルス、照明制御信号、及び撮像部5aによる露光時間を示すタイミングチャートであり、(b)は、搬送ムラにより媒体の実際の搬送速度が設定値よりも小さい場合の走査パルス、照明制御信号、及び撮像部5aによる露光時間を示すタイミングチャートである。図6(a)に示すように、実際の搬送速度が大きい場合は、走査周期Ta4が短くなるのに従って露光時間が相対的に短くなるので、照明時間データの初期値に差分値ΔT=|TBn−T|が加算されることによって照明時間が長くされる。これに対して、図6(a)に示すように、実際の搬送速度が小さい場合は、走査周期Ta5が長くなるのに従って露光時間が相対的に長くなるので、照明時間データの初期値から差分値ΔT=|TBn−T|を減算されることによって照明時間が短くされる。
【0027】
以下、図7及び図8を参照して、カード印刷装置1を利用した媒体表面の印刷状態の検査方法について説明する。図7は、媒体検査前の前工程における標準データの設定手順を示すフローチャートであり、図8は、照明時間データの補正データの設定手順を示すフローチャートである。
【0028】
まず、検査用試料を静止状態で撮像部5aの下部に配置させる(ステップS01)。この場合の検査用試料の位置は、実際の搬送路L2に相当する位置と一致させる。次に、搬送路L2の搬送速度の設定値と目標とする解像度とに基づいて走査ラインの理論上の走査周期を算出し、その走査周期をカメラ制御基板12に設定する(ステップS02)。さらに、スキャンする撮像部5aの照明時間の最小値及び最大値をカメラ制御基板12に設定する(ステップS03)。そして、カメラ制御基板12の制御部15によって撮像部5aが制御されて、照明時間の最小値に基づいて照明光が照射されると同時に検査用資料が1走査周期分撮像される(ステップS04)。さらに、カメラ制御基板12の制御部15により、取得された1走査ライン分の画像データに基づいて平均ライン輝度が算出されてそのデータが記憶される(ステップS05)。そして、制御部15により、照明時間の最大値に至るまで照明時間が50μsecずつ増加されながら、ステップS04及びステップS05の処理が繰り返される(ステップS06及びステップS07)。
【0029】
次に、制御部15により、照明時間ごとの画像データに基づいて、各走査ラインの照明時間データの初期値Tとして適切な輝度が得られるような値が選択され、メモリ部19に設定される(ステップS08)。そして、制御部15により、ステップS05で算出した平均ライン輝度と照明時間との対応データ表が作成されてメモリ部19に格納される(ステップS09)。図9は、制御部15により算出された平均ライン輝度と照明時間との関係の一例を示すグラフであり、平均ライン輝度と照明時間との関係はほぼ線形関係に近似される。
【0030】
図8に移って、以上のようにして照明時間と平均ライン輝度との関係を示す標準データである対応データ表が予め作成された状態で対応データ表を作成した際に用いた検査用試料を、搬送路L2上に搬送させる(ステップS11)。そして、カメラ制御基板12によって撮像部5aの走査タイミング及び照明タイミングを制御させることによって、検査用試料の走査ライン毎の画像データが取得される(ステップS12)。その後、制御部15によって走査ライン毎の平均ライン輝度Y〜Yが算出される(ステップS13)。次に、制御部15により、得られた第1の走査ラインの平均ライン輝度Yと目標とする平均ライン輝度が比較される(ステップS14)。この比較の結果、目標値との間で差分が生じている場合には、制御部15により、対応データ表から予め計算された係数αを式(1)に適用することにより、第1走査ラインの照明時間TB1が算出された後、メモリ部19に格納されている第1走査ラインの照明時間データTに、差分値ΔTが加算又は減算される(ステップS15)。その後、制御部15により、全ての走査ラインについての平均ライン輝度が取得されながら、ステップS14及びステップS15の処理が繰り返される(ステップS16及びステップS17)。最後に、制御部15により補正された全走査ラインに対応する照明時間データが、メモリ部19に格納される(ステップS18)。
【0031】
上述した標準データの設定及び照明時間データの補正は、撮像部5bに対しても同様に処理される。この状態において、検査対象の媒体をカード印刷装置1の搬送路L1,L2,L3に搬送させることにより、媒体の表面及び裏面の検査が行われる。
【0032】
以上説明したカード印刷装置1によれば、媒体表面を検査する前に、検査用試料が搬送路L2,L3上に搬送され、走査ライン毎に予め記憶した照明時間データに基づいて照明光が照射されると同時に所定の走査周期で撮像される。その結果として得られた走査ライン毎の撮像データの平均輝度に基づいて、平均輝度が目標値に近づくような走査ライン毎の照明時間の補正値が算出され、その後に検査対象の媒体を検査する際には、その補正値に基づいて走査ライン毎に照明時間が変更されて媒体表面の撮像データが取得される。これにより、媒体搬送の際に搬送速度にムラが生じる場合であっても、それに起因して発生する撮像データにおける濃度ムラの発生を効率よく防止することができ、媒体の検査精度が向上する。特に、照明光の照明時間を変更する場合は光強度を調整する場合に比較して撮像部5a,5bのLED発光部の応答性が高いので、画像データの輝度補正の精度がより向上する。
【0033】
また、制御部15により検査用試料を対象にして得られた平均ライン輝度に係数1/αを乗ずることによって補正値が算出されるので、画像データの輝度値と照明時間との関係が線形関係に近似されることを利用して補正値を算出することができ、画像データの濃度ムラを確実に補正することができる。
【0034】
また、ロータリエンコーダ11からの出力に基づいて、撮像部5a,5bによる走査タイミング及び照明時間が制御されるので、CCDラインセンサの走査タイミングとLED発光部の照明時間を媒体の搬送速度に応じて制御することができ、媒体表面における走査ラインのピッチを一定にして、画像データの伸縮を防止することができるとともに、照明光の照射タイミングも走査ラインのピッチに合わせることにより輝度のムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の好適な一実施形態であるカード印刷装置の内部構成を示す正面図である。
【図2】図1の搬送路及び撮像部の位置関係を示す斜視図である。
【図3】図1のカード印刷装置の主要部のブロック図である。
【図4】搬送路上における媒体の搬送速度がほぼ一定に維持されている状態における(a)走査パルス信号、(b)照明制御信号、及び(c)撮像部5aによる露光時間を示すタイミングチャートである。
【図5】搬送路上における媒体の搬送速度に走査ライン間でムラが発生した状態における(a)走査パルス信号、(b)照明制御信号、及び(c)撮像部5aによる露光時間を示すタイミングチャートである。
【図6】(a)は、搬送ムラにより媒体の実際の搬送速度が設定値よりも大きい場合の走査パルス、照明制御信号、及び露光時間を示すタイミングチャート、(b)は、搬送ムラにより媒体の実際の搬送速度が設定値よりも小さい場合の走査パルス、照明制御信号、及び露光時間を示すタイミングチャートである。
【図7】媒体検査前の前工程における標準データの設定手順を示すフローチャートである。
【図8】照明時間データの補正データの設定手順を示すフローチャートである。
【図9】図3の制御部により算出された平均ライン輝度と照明時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1…カード印刷装置、5a,5b…撮像部、10…搬送ベルト(搬送手段)、11…ロータリエンコーダ、15…制御部(制御手段)、A…媒体、L1,L2,L3…搬送路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を搬送手段によって所定の搬送速度で搬送路上を搬送させながら、前記検査対象物に向けて発光部から照明光を照射するとともに、ラインセンサによって該検査対象物を所定の走査周期で複数の走査ラインに区切って順次撮像する表面検査装置において、
前記ラインセンサの走査タイミングを制御すると同時に、前記発光部の前記照明光の照明時間を、予め記憶した前記複数の走査ライン毎の照明時間データに基づいて、前記複数の走査ライン毎に制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記搬送手段によって搬送される補正用試料を対象にして、前記発光部及び前記ラインセンサを制御することにより前記複数の走査ライン毎の撮像データの輝度値を予め取得した後に、前記輝度値が目標値に近づくような前記照明光の照明時間の補正値を算出し、前記補正値を反映した前記複数の走査ライン毎の前記照明時間データを予め記憶し、前記検査対象物の撮像時には該照明時間データに基づいて前記照明光の照明時間を変更する、
ことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記補正用試料を対象にして得られた前記輝度値に所定の係数を乗ずることによって前記補正値を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記搬送手段による前記検査対象物の搬送速度を検出するエンコーダを更に備え、
前記制御手段は、前記エンコーダからの出力に基づいて、前記走査タイミング及び前記照明光の照明時間を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−133764(P2009−133764A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311030(P2007−311030)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】