説明

表面検査装置

【課題】被測定物の表面に長い溝等の凹凸部がある場合の表面検査精度を向上させる。
【解決手段】被測定物Wの凹凸部Weに直交するようにラインファイバ照明10を配置し、被測定物Wからの反射光をラインセンサカメラ11に入射させて画像信号を得る。凹凸部Weの斜面ではラインファイバ照明10からの光の正反射光が少なくなるため、ラインファイバ照明10の両側に複数の小型のファイバ照明14、15を設けて斜め方向から光を照射し、均一な照明による表面検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に長い溝等の凹凸部を持つ樹脂や硝子、金属製の被測定物に付着した異物やコーティング不良を検査するための表面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラインセンサを用いて検査をする場合、対象物の表面を均一に照明するために、特許文献1に開示されたように、LEDを多数並べて、被測定物の表面に均一な光をあてる構成等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−202294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検査対象の表面がこの照明の長手方向と直交する方向に長い溝や山を有し、かつ、硝子やミラーのように光沢が強い検査対象では、ラインセンサの光軸に垂直な表面からの反射光は強く反射して帰ってくるが、溝等の斜面では反射光が弱くなる。そのため、検査領域全体で均一な映像信号を得ることができないといった問題点があった。
【0005】
本発明は、表面に溝や山等の凹凸部を有する被測定物の表面検査を高精度で行うことのできる表面検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表面検査装置は、凹凸部を有する被測定物の表面を検査する表面検査装置において、前記被測定物の表面に対して第1の検査光を入射させる第1の光源と、前記被測定物の表面に対して斜め方向から第2の検査光を入射させる第2の光源と、前記第1及び前記第2の検査光を、前記被測定物によって反射させた反射光を検出する検出手段と、前記検出手段の出力に基づく前記被測定物の画像を処理する画像処理装置と、前記被測定物の前記凹凸部と残りの表面による前記反射光が均一になるように、前記第1及び前記第2の光源の相対位置及び光量をそれぞれ制御するための制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
被測定物の平面部分を照射する第1の光源と、溝等の凹凸部の斜面を照射する第2の光源をそれぞれ独立して制御することで、全体を均一な光量で照射し、被測定物の画像信号を得ることができる。そのため、表面全体にわたって、一様な条件で欠陥の検出ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1に示すように、表面に長い溝等の凹凸部Weがある被測定物Wの表面検出を行う表面検査装置は、凹凸部Weの長さ方向に直交するように被測定物Wの上に配置されたラインファイバ照明10と、検出手段であるラインセンサカメラ11と、を有する。また、ラインセンサカメラ11の信号を画像処理する画像処理装置12と、コンピュータ13と、を備える。
【0010】
第1の光源であるラインファイバ照明10は、ラインセンサカメラ11に平行な方向に長いライン状の第1の検査光を、被測定物Wの表面に対して照射するために、被測定物Wの上に配置される。
【0011】
ラインファイバ照明10の両側には、一対の第2の光源である小型のファイバ照明14、15が配置される。ファイバ照明14、15は、被測定物Wの凹凸部Weの斜面で正反射した反射光がラインセンサカメラ11に入射するような、斜め方向から第2の検査光を入射させるため、ラインセンサカメラ11の光軸に対して対称な位置に配置される。
【0012】
ラインファイバ照明10とその両側のファイバ照明14、15はそれぞれ独立して光量を調節することが可能である。また、ファイバ照明14、15は、ラインセンサカメラ11の長さ方向に一直線上に複数並べて配置され、配置する角度等を独立に調整可能である。
【0013】
制御手段であるコンピュータ13によって、ラインファイバ照明10及びファイバ照明14、15の光量及び角度等の相対位置を制御することで、被測定物Wの表面を検査するための均一な光(検査光)を照射することができる。
【0014】
ファイバ照明14、15は、平行光線を放射する光源であって、被測定物Wの凹凸部Weの斜面の垂線に対してラインセンサカメラ11の光軸と対称な角度から照明する。
【0015】
従来では、検査対象の表面が照明の長手方向と直交する方向に長い溝や山を有し、かつ、硝子やミラーのように光沢が強い検査対象では、ラインセンサカメラの光軸と直交する表面からの反射光は強いが、検査対象の斜面の部分では反射光が弱くなっていた。その結果、検査領域全体で均一な映像信号を得ることができないという問題があった。本発明は、このような問題点を解決し、検査対象表面全体にわたって、一様な条件で欠陥の検出ができるため、光量変化の小さい欠陥に対する検出感度を向上させることができる。
【実施例1】
【0016】
図1〜3は実施例1を説明するものである。被測定物Wは、表面に複数の長い溝又は山形状の凹凸部Weをもった細長い部材である。ラインセンサカメラ11は、被測定物Wの長さ方向と直角の方向に配置したもので、結像レンズ11aを有し、検査対象である被測定物Wの表面の画像をラインセンサカメラ11に結像させる。ラインファイバ照明10は、ラインファイバ照明10から照射された光が、被測定物Wの平面部又は山や溝の頂上部もしくは底部で正反射して結像レンズ11aに入射するような位置に配置されている。
【0017】
一対の小型のファイバ照明14、15は、それぞれ、ファイバ先端にレンズが設けられていて強い指向性のある光を発生する。ラインファイバ照明10と、ラインセンサカメラ11の光軸の両側に複数ずつ配置された小型のファイバ照明14、15は、別々に輝度コントローラ17、18、19を備え、それぞれ独立に照明輝度等を制御できる。ラインセンサカメラ11からの画像信号は画像処理装置12に入力され、ラインセンサカメラ11の信号が2次元画像として信号処理され、被測定物Wの表面の状態を検知することができる。検出した信号はコンピュータ13に出力され、図示しない上位生産ラインコントローラへ通信される。
【0018】
検査対象である被測定物Wの表面は、図2に示すように、平らな平面部分だけでなく、凹凸部Weの山や溝のところに斜面が存在する。平面部分での正反射光R1は、平面部分に垂直に入射する入射光L1を反射するため、例えば同軸落射照明のような照明を用いることで明るい画像信号が得られる。しかしながら山のところや溝のところでは、山の頂上や溝の底の部分といった一部だけからの正反射光Reしか、平面と同様な反射は得られない。そのため、ライン状の照明だけを用いた場合に得られる信号波形は、図3(a)のグラフA1のようになり、左端の平面部分では明るい信号が得られるものの、斜面のところでは正反射光がないので暗くなる。このままでは検査対象の斜面部分に不良が存在した場合には検出信号が小さいので、欠陥の検出能力も小さくなる。
【0019】
そこで、ファイバ照明14、15からの入射光L2により、溝等の左からと右からの両側から斜面を照明し、斜面での正反射光R2が結像レンズ11aに入射するように配置する。これにより、図3(a)のグラフA2、A3で示すような斜面で反射する光による信号が得られる。グラフA2は左側のファイバ照明14だけを点灯させたときのラインセンサ信号波形であり、グラフA3は右側のファイバ照明15だけを点灯させたときのラインセンサ信号波形である。そこで、3方向からの照明を全て用いて、3つの光源の光量や角度等を調整することで、図3(a)のグラフA4のように、検査対象全体にわたって均一な反射光が得られるように制御する。このようにして、均一な条件の検出信号が得られる。
【0020】
ここで検査対象の表面に、例えば図2のCで示すような異物があった場合、異物で正反射光が遮られるために、図3(b)に示すようなラインセンサ信号波形になる。グラフB1はラインファイバ照明10だけを用いたときの波形であり、グラフB2は左側のファイバ照明14だけを用いたときの波形、そして、グラフB3は右側のファイバ照明15だけを用いたときのラインセンサ信号波形である。そして3方向からの照明を全て用いると、グラフB4のように異物Cのところだけ暗く、他の良品部分は一様な明るさの画像信号が得られるので、異物検出能力が向上する。
【0021】
なお、図1(a)の配置を側面からみると、(b)に示すように、ラインファイバ照明10は、検査対象の平面の垂線に対し、ラインセンサカメラ11の光軸と対象な位置に配置され、正反射光が結像レンズ11aに入るようになっている。また、ラインファイバ照明10の両側に配置した小型のファイバ照明14、15は、検査対象の斜面の正反射が結像レンズ11aに入る位置に配置されているので、ラインファイバ照明10よりも大きい角度に配置してある。
【0022】
また、図示しない固定手段により、レンズつきの小型のファイバ照明14、15はそれぞれ角度を独立して調整することができる。これは円柱に任意の角度で固定してもよく、回転ステージ等で高精度に固定してもよい。そして照射される指向性のある光線が検査対象で正反射して、効率よく結像レンズ11aに入射するように角度を設定する。
【0023】
第2のラインファイバ照明20は、正反射光が結像レンズ11aに入らない位置に寝かせて設置してある。これは、検査対象の表面に存在する散乱物体を明るい画像信号として検出するための光源である。
【実施例2】
【0024】
図4は実施例2を示す。本実施例は、実施例1の複数の小型のファイバ照明14、15の代わりに、被測定物Wに平行光を照射する平行光源34、35で左右から照明する。この光は被測定物Wの凹凸部Weの斜面で正反射して、結像レンズ11aに入射し、ラインセンサカメラ11に結像する。
【0025】
この構成においても、実施例1と同様に、検査対象の表面にライン照明の長手方向と直交する方向の長い溝や山があり、かつ、硝子やミラーのように光沢が強い場合でも、検査領域全体にわたって、一様な光量レベルの信号が得られる。一様な条件で欠陥の検出ができるため、光量変化の小さい欠陥に対する検出感度を向上させることができる。
【実施例3】
【0026】
図5は実施例3を示す。本実施例は、被測定物Wを点光源44、45で左右から照明する。点光源44、45は、検査範囲全体にわたって照明角度が一定とみなせるように、検査対象と光源の距離を離して配置する。点光源44、45からの光は被測定物Wの凹凸部Weの斜面で正反射して、結像レンズ11aに入射し、ラインセンサカメラ11に結像する。
【0027】
この構成においても、実施例1と同様に、検査対象の表面にライン照明の長手方向と直交する方向の長い溝や山があり、かつ、硝子やミラーのように光沢が強い検査対象でも、検査領域全体にわたって、一様な光量レベルの信号が得られる。一様な条件で欠陥の検出ができるため光量変化の小さい欠陥に対する検出感度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1を示すもので、(a)は表面検査装置の光学系を示す図であり、(b)は(a)を側面からみた図である。
【図2】検査対象の凹凸部に対する検査光の反射を説明する図である。
【図3】ラインセンサカメラの出力を示すもので、(a)は正常部分のラインセンサ信号波形を説明するグラフ、(b)は異物が存在するときのラインセンサ信号波形を説明するグラフである。
【図4】実施例2の光学系を示す図である。
【図5】実施例3の光学系を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ラインファイバ照明
11 ラインセンサカメラ
11a 結像レンズ
12 画像処理装置
13 コンピュータ
14、15 ファイバ照明
34、35 平行光源
44、45 点光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸部を有する被測定物の表面を検査する表面検査装置において、
前記被測定物の表面に対して第1の検査光を入射させる第1の光源と、
前記被測定物の表面に対して斜め方向から第2の検査光を入射させる第2の光源と、
前記第1及び前記第2の検査光を、前記被測定物によって反射させた反射光を検出する検出手段と、
前記検出手段の出力に基づく前記被測定物の画像を処理する画像処理装置と、
前記被測定物の前記凹凸部と残りの表面による前記反射光が均一になるように、前記第1及び前記第2の光源の相対位置及び光量をそれぞれ制御するための制御手段と、を有することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記第1の光源はラインファイバ照明を有し、前記第2の光源は複数のファイバ照明を有することを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記凹凸部は、複数の溝を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−222614(P2009−222614A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68716(P2008−68716)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】