表面検査装置
【課題】被検査体の移動速度が大幅に変化する場合でも、被検査体上の疵を安定して検出する。
【解決手段】移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔に達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体の表面の疵候補点を検出する疵検出部とを備える表面検査装置。
【解決手段】移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔に達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体の表面の疵候補点を検出する疵検出部とを備える表面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の表面上に存在する疵を検出する表面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼板等の走行する帯状の被検査体を光学式に検査する場合、ラインセンサカメラ等の一次元の撮像素子が用いられている。この場合、被検査体の幅方向(X方向)については撮像素子による一定周期の電子的な走査が行われ、被検査体の移動方向である長手方向(Y方向)については被検査体自体の移動による走査が行われる。そして、撮像素子からの撮像信号を用いることにより、被検査体の表面上に存在する様々な疵を検出する表面検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、被検査体が長手方向(Y方向)分解能の所定回数分の1だけ進む毎に撮像信号を取り込み、同一画素の信号を加算し、加算されたデータを当該所定回数で除して平均値を算出することで、被検査体の表面上に存在する疵の検出漏れが生じないようにする、あるいは、被検査体の移動速度が増減した場合の被検査体画像のブレを一定にする表面検査装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−113465号公報
【特許文献2】特開平11−166904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の表面検査装置では、被検査体の速度が増減すると、画像のブレにより画像の分解能が変化し、検出能が一定にならないという問題があった。また、表面検査は、ヘゲ疵、穴、異物付着などの大きさが数mm程度以上の疵(いわゆる通常疵)を検出することが最重要ではあるが、一方で、検出レベルを上げて微小欠陥を多数検出させるようにすると、有害・無害を問わず、多数の疵候補を検出してしまう。その結果、信号処理の時間が追いつかなくなり、通常の検査に影響が出てしまうという問題があった。また、特許文献2記載の被検査体が所定距離進む毎に撮像信号を加算して平均値を算出する表面検査装置では、被検査体が高速で移動する場合に処理速度が間に合わなくなる、あるいは処理速度を高速化するために装置が高価になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検査体の移動速度が大幅に変化する場合でも、被検査体上の疵を安定して検出できる表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる表面検査装置は、移動する被検査体から反射された光を受光する一次元撮像素子と、前記一次元撮像素子から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶するバッファと、被検査体の移動距離を検出する位置検出器と、位置検出器によって検出された前記被検査体の移動距離が所定間隔に達した時点で、前記バッファに一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御部と、前記バッファから読み出された撮像信号から前記被検査体の表面の疵候補点を検出する疵検出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる表面検査装置によれば、被検査体の移動速度が大幅に変化する場合でも、被検査体上の疵を安定して検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ラインセンサカメラと被検査体と光源との配置を示す図である。
【図2】図2は、被検査体におけるラインセンサの撮像範囲を示す図である。
【図3】図3は、鋼鈑の製造ラインにおけるライン速度の例を示す図である。
【図4】図4は、ラインセンサカメラの撮像範囲の露光時間を示す図である。
【図5】図5は、被検査体が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで次の撮像を行った場合の露光時間を示す図である。
【図6】図6は、被検査体が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出す方法で撮像をした場合の露光時間を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態にかかる表面検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態で用いる形状特徴量について説明する図である。
【図9】図9は、特徴量を用いて周期疵判定する方法のフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態にかかる表面検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、加算平均化ユニットを除いた構成の変形実施形態を示すブロック図である。
【図13】図13は、疵総合判定部にて周期疵および通常疵の判定を行う構成の変形実施形態を示すブロック図である。
【図14A】図14Aは、本発明の第1実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板のコイルマップの例である。
【図14B】図14Bは、検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。
【図15A】図15Aは、本発明の第2実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板のコイルマップの例である。
【図15B】図15Bは、検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の基本原理)
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の基本原理について説明する。
【0011】
まず、図1および図2を用いて、本発明の実施形態に用いるラインセンサカメラ1と被検査体2と光源3との配置、および被検査体2におけるラインセンサカメラ1の撮像範囲について説明する。図1に示されるように、ラインセンサカメラ1と被検査体2と光源3とは、光源3から射出された光線が入射角θで被検査体2を照射し、被検査体2の表面で反射した光線をラインセンサカメラ1が受光角θで検出するように配置されている。そして、ラインセンサカメラ1のライン方向と垂直方向に被検査体2が速度Vで移動することにより、ラインセンサカメラ1は被検査体2の表面を走査する。以下、説明を容易にするために、被検査体2の表面におけるラインセンサカメラ1のライン方向(被検査体2の幅方向)をX方向とし、被検査体2の移動方向(被検査体2の長手方向)をY方向とする。
【0012】
図2は、図1の配置における被検査体上2の撮像範囲について説明する図である。被検査体2が停止している場合のラインセンサカメラ1の1画素に対応する被検査体上2の撮像範囲は、図2の実線の範囲で示すように、X方向がδx,Y方向がδy/cosθの矩形である。δxおよびδyは、ラインセンサカメラ1の撮像素子サイズ、レンズ焦点距離および撮像距離などから決まる量であり、撮像素子のサイズに光学倍率を掛けたものに相当する。また、一般に、ラインセンサカメラ1の1画素のサイズの縦横比は等しいのでδx=δyである。
【0013】
一方、被検査体2が速度Vで移動している状況で被検査体2を撮像する場合、δx×δyの撮像範囲がY方向にV・δtだけブレて、図2における実線および破線の領域を重畳して露光していることになる。ここで、δtは、ラインセンサカメラ1の露光時間である。
【0014】
ここで、図3および図4を参照して、製造ライン上を搬送する鋼板を被検査体2の例として、ラインセンサカメラ1の1画素に対応する被検査体上2の撮像範囲がどのように検出しているかについて検討する。図3は、鋼鈑の製造ラインにおけるライン速度の例を示す図である。そして、図4は、ライン速度Vによって場合分けした、ラインセンサカメラ1の撮像範囲がどのような露光時間で被検査体2の表面を露光しているかを示す図である。図4に示されるグラフは、被検査体2の表面のY方向(搬送方向)の相対位置を横軸とし、各相対位置についての露光時間を縦軸に表したグラフである。
【0015】
図3に示されるように、製造ラインのライン速度Vは、定常時のライン速度増減(図中のハッチング部分:V2からV3まで)以外に、ルーパに溜まった被検査体2を払い出すための一時的な最高速度Vmax、被検査体2の継ぎ目をシャーカットするための低速度V1、および、被検査体2を目視検査するための完全停止速度(V=0)がある。
【0016】
まず、ライン速度Vが比較的低く、V・δt≦δy/cosθを満たす場合を考える。図4(a)は、この場合のラインセンサカメラ1の撮像範囲が、どのような露光時間で被検査体2の表面を露光しているかを示している。図4(a)に示すように、Y方向におけるV・δtからδy/cosθまでの領域はδt秒間の露光時間であるが、その前後の領域では、δt秒間の露光とならずに部分的な露光となっていることが解る。
【0017】
一方、図4(b)は、ライン速度Vが比較的高く、V・δt>δy/cosθとなる場合のラインセンサカメラ1の撮像範囲が、どのような露光時間で被検査体2の表面を露光しているかを示している。図4(b)に示すように、Y方向におけるδy/cosθからV・δtまでの領域は一定の露光時間であるが、δt秒よりも少ない露光時間(δy/(cosθ・V))となることが解る。
【0018】
以上まとめると、図4(a)、(b)に示されるいずれの場合も、ラインセンサカメラ1の撮像範囲がY方向についてはδy/cosθ+V・δtまでの範囲を露光しており、この範囲は、ライン速度VがVminからVmaxまで可変する場合、δy/cosθ+Vmin・δtからδy/cosθ+Vmax・δtまで変化することが解る。
【0019】
上記の検討から、被検査体2の長手方向(Y方向)の画像取り込み間隔が一定となるように表面検査を行おうとした場合、被検査体2の速度が最大であるVmaxとなる場合を考慮すると、Y方向の画像取り込み間隔Δが
Δ≧Vmax・δt (1)
を満たすように設定することが必要である。そして、できるだけ微小サイズの疵を検査しようとした場合、ラインセンサカメラ1の光学倍率など調節してδxおよびδyを小さくするように設計するので、V・δt>δy/cosθとなる条件が満たされることが多い。すなわち、ラインセンサカメラ1の1画素は、図4(b)で例示したような撮像範囲を露光することになる。
【0020】
上記(1)の条件を満たす状況において、被検査体2が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで次の撮像を行った場合、ラインセンサカメラ1の露光時間の状況を表したものが図5である。とくに、図5(a)は、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合について、図5(b)は、被検査体2の速度Vが最大速度Vmaxである場合について、それぞれ被検査体2が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで、ラインセンサカメラ1が次の撮像をしたときの露光の状況を表している。
【0021】
図5(b)から読み取れるように、被検査体2の速度Vが最大速度Vmaxである場合、最初の撮像と2回目の撮像の境目(横軸でΔ〜δy/cosθ+Vmax・δt)付近の領域では、他の領域に比べ露光時間が短く、この位置に微小疵が存在した場合、ラインセンサカメラ1が疵を検出し難くなる。
【0022】
一方、図5(a)から読み取れるように、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合、被検査体2が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで次の撮像をした場合、被検査体2の移動による画像のブレはない(あるいは無視可能である)が、ラインセンサカメラ1は、δy/cosθからΔまでの範囲を露光しないことになる。つまり、この範囲に微小疵が存在する場合に検出できないことがわかる。
【0023】
従って、上記(1)式の条件を満たしていた場合、露光時間を一定に維持しながら、微小疵が存在する領域によらずに検出漏れが発生しない検出方法を実現することは困難であることが解る。そこで、本発明では(1)式の条件を緩和することを考えることにする。
【0024】
そのために、本発明では、被検査体2がΔだけ移動するタイミングで撮像するのではなく、一定の露光時間間隔で連続的に撮像している中で、Δだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出し、当該撮像信号を各画素の撮像信号として利用する方法を採用する。なお当該方法は、Vmax・δt>Δとなる状況において撮像信号が更新される前に被検査体2がΔだけ移動してしまう。その結果、同じ撮像信号を複数の画素で重複して利用してしまうことになる。しかしながら、当該方法に従うシステムは矛盾せずに動作するので問題とならない。
【0025】
図6は、上記方法に従い、被検査体2がΔだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出す方法で撮像をした場合のラインセンサカメラ1の露光時間の状況を表した図である。とくに、図6(a)は、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合について、図6(b)は、被検査体2の速度Vが最大速度Vmaxである場合について、それぞれΔだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出す方法で撮像をした場合の露光の状況を表している。
【0026】
このとき、図6(b)に示されるように、最初の撮像領域と2回目の撮像領域の重複領域(図中のV・δt〜δy/cosθ+V・δt)は、最初の撮像と2回目の撮像の露光時間を合わせると、重複領域ではない領域の露光時間(δy/(cosθ・V))となる。つまり、全範囲に亘り各点の露光時間が一定になる。なお、条件によって、微小疵が1回の周期内で完全に撮像されたり、1回目と2回目の撮像に分離して撮像されたりする場合が起こるが、微小疵の情報を量子化した画素の信号として処理するのでやむを得ない。また、図6(a)に示されるように、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合についても、各点の露光時間が一定(δt)となる。
【0027】
更に、被検査体2の移動速度が最も低い速度(これをVminとする)の場合にも検出漏れが生じないようにするためには、画像取り込み間隔Δが
Δ≦δy/cosθ+Vmin・δt (2)
を満たしている必要がある。
【0028】
ここで、(2)式を緩和するためには被検査体2の移動速度の最小値Vminを制限することも考えられる。しかしながら、被検査体2の移動速度は他の要因から決定され、一般に変更することができないことが多い。そこで、検査対象とする移動速度の最小値V’minを決めて、その範囲内(V’minからVmaxまで)のみで検査をするようにしてもよい。これは例えば、最小値V’minをシャーカット速度(図3中ではV1)として、停止しているなどシャーカット速度以下での検出を除いたり、最小値V’minを定常時ライン速度範囲の下限値(図3中ではV2)とし、シャーカット速度での検出も除いたりするようなことである。通常の疵検査であれば、このような検査範囲を限定することは許されないが、対象の疵を連続して発生する周期疵とすれば、検査対象外とした速度で被検査体2が移動している場合には検出できないとしても、同一コイル内のいずれかの領域で周期疵を検出できればよいという方式も実用性がある。
【0029】
以下に、撮像信号から疵を抽出するための閾値について検討する。
【0030】
なお、対象とする最小の微小疵は、長手方向に一画素分の撮像範囲に相当する大きさである。このような大きさの疵の場合、図6(b)に示すように、
V・δt>δy/cosθ (3)
の場合、一画素に対する露光時間は、δy/(cosθ・V)となり、
V・δt≦δy/cosθ (4)
の場合の露光時間δtに対してδy/(cosθ・V・δt)倍だけ小さくなる。ここで、δy、cosθ、δtはいずれも定数であるから、被検査体2の移動速度Vを測定して、(3)式を満たす場合には、(4)式を満たす場合の閾値をδy/(cosθ・V・δt)倍して新たな閾値として採用する。これにより、長手方向の1画素程度の疵に対しては、検出能を一定に保つことが可能である。ただし、被検査体2の移動速度が大きくなり、一画素に対する露光時間が短くなっても、十分検出能が確保できる場合には、このような対策は不要であることは言うまでもない。
【0031】
なお、疵検出の閾値を変えると、状況によって疵以外の正常部分のいわゆる地肌ノイズを過検出することが懸念される。しかしながら、地肌ノイズ自体も大きさが一画素程度の変動であるので、移動速度が大きい場合には、同様に信号レベルも低下していることにより過検出の問題はない。また、長手方向に複数画素連続し、長手方向のサイズがV・δt程度以上の通常の疵については、小さい露光時間でも長手方向複数画素の積算で効いてくるので、信号レベルの低下は発生しない。
【0032】
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、以下に本発明の詳細を実施形態によって説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図7は、本発明の第1実施形態にかかる表面検査装置4の概略構成を示すブロック図である。第1実施形態にかかる表面検査装置4は、受光素子を直線上に配列した一次元撮像素子を有するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1の出力(撮像信号)をデジタル化するA/D変換部5と、デジタル化された撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、撮像信号を読み出して被検査体2の表面の疵候補点を検出する疵検出部7と、カメラおよび画像取り込みを制御する制御部8と、被検査体2を搬送するロールに取り付けられたロータリエンコーダ9と、特徴量算出部10と、周期疵判定部11とを備える。
【0034】
なお、疵検出部7は、画像処理ユニット7aと二値化ユニット7bとを内部に備え、制御部8は、カメラ制御ユニット8aと画像取り込み制御ユニット8bとを内部に備える。画像処理ユニット7aは、撮像信号用バッファ6から撮像信号を読み出して所定の画像処理を行うユニットであり、二値化ユニット7bは、後述する閾値により疵候補点を抽出するユニットである。カメラ制御ユニット8aは、ラインセンサカメラ1、A/D変換部5、および撮像信号用バッファ6を制御し、画像取り込み制御ユニット8bは、ロータリエンコーダ9の出力に基づいて画像処理ユニット7aを制御するものである。
【0035】
ラインセンサカメラ1は、先に説明した図1に示されるように、光源3から射出された光線が入射角θで被検査体2を照射し、被検査体2の表面で反射した光線をラインセンサカメラ1が受光角θで受光するように配置されている。つまり、被検査体2がラインセンサカメラ1のライン方向と垂直方向(Y方向)に速度Vで移動することにより、ラインセンサカメラ1は被検査体2の表面を走査する配置である。
【0036】
なお、本実施形態にかかるラインセンサカメラ1は、クロック周波数40MHz、画素数2048画素、かつ一画素の縦横比が1のものを用いている。また、入射角θ(受光角θ)を10°となるように配置し、ラインセンサカメラ1の光学系は、X方向の視野範囲δxが0.1mmとなるように構成してある。従って、Y方向の視野範囲δyは、
δy=δy/cos10°≒0.1015mm
である。
【0037】
また、被検査体2の最大速度Vmaxは10m/sであり、
Vmax・δt≒10×2048/(40×106)=0.512mm
である。また、シャーカット時の移動速度V1は、1m/sであるので、
V1・δt≒1×2048/(40×106)=0.0512mm
である。従って、前述した従来技術のように、最高速度に合わせて画像取り込み間隔Δを設定すると、0.512mm以上にせざるを得ないため、Y方向の視野範囲δy≒0.1015mmまで小さくしていることが効果を発揮しない。
【0038】
そこで、本発明の第1実施形態に係る表面検査装置では、Δ=0.1mmに設定する。その結果、シャーカット時の移動速度V1においては、Y方向の視野範囲δyに鋼板の移動によるブレV1・δtを加えても、
δt+V1・δt≒0.1527
程度の高分解能での検査が可能になる。
【0039】
A/D変換部5は、ラインセンサカメラ1の出力(撮像信号)をデジタル化するものである。A/D変換部5によってデジタル化された撮像信号は、後段の撮像信号用バッファ6に入力される。
【0040】
撮像信号用バッファ6は、デュアルポートメモリを用いており、一方のポートAで撮像信号をそれぞれ対応するアドレスに記憶し、他方のポートBから撮像信号を画像処理ユニット7aへ送出する構成としている。また、撮像信号用バッファ6は、データ書き込み中の読み出しを避けるために、ダブルバッファとしており、内部のタイミングはバッファ内のメモリ制御ユニット6aが制御している。
【0041】
メモリ制御ユニット6aは、カメラ制御ユニット8aからのタイミングに従い、撮像信号を第1および第2の入力用バッファ6b,6cに交互に書き込み、書き込んだ信号を内部バスにて高速に第1および第2の転送用バッファ6d,6eへ転送する。一方、メモリ制御ユニット6aは、画像処理ユニット7aからのリクエスト信号に従い、書き込みと読み出しとが競合しないタイミングを選んで、転送用バッファのデータを疵検出部7の画像処理ユニット7aへ転送する制御を行う。なお、各入力用および転送用バッファの容量は、ラインセンサカメラ1の画素数に合わせてそれぞれ2048バイトとする。
【0042】
画像処理ユニット7aは、画像取り込み制御ユニット8bからの制御信号に基づいてメモリ制御ユニット6aへリクエスト信号を発信する。先述のように、画像取り込み制御ユニット8bは検査体を搬送するロールに取り付けられたロータリエンコーダ9の出力により被検査体2の移動距離を把握し、被検査体2が設定値Δだけ移動したタイミングで画像処理ユニット7aを制御する。つまり、画像処理ユニット7aからメモリ制御ユニット6aへのリクエスト信号は、被検査体2が設定値Δだけ移動したタイミングで発信され、すなわち、このタイミングで、撮像信号用バッファ6に保存されている最新の撮像信号が読み出される構成となっている。
【0043】
また、画像処理ユニット7a、二値化ユニット7b、特徴量算出部10は、FPGA、DSPなどにより構成され、撮像信号を一周期(一ライン)毎に処理を行う。具体的には、画像処理ユニット7aが、画像のフィルタリングなどの前処理により正規化を行い、二値化ユニット7bが、閾値と各画素の輝度を比較し、閾値を越える画素を疵候補と判定する。そして、特徴量算出部10は、各ラインの信号を並べて二次元的な信号を作成するとともに、検出した疵のラベリング処理および特徴量の算出処理を行う。
【0044】
被検査体上2の疵の特徴量は、大きく分けて、形状の特徴量と濃度の特徴量がある。形状の特徴量には、例えば、図8に示すように、長さ、幅、および面積(検出された画素の数)などの一次特徴量と、一次特徴量の演算で計算されるアスペクト比(長さと幅の比)、平均幅(面積と長さの比)などの二次特徴量がある。また、濃度の特徴量には、同様に、最大濃度値、最小濃度値、濃度積算値(各画素の濃度を積算した積分値)、および正極性面積比(全面積のうち正極のものの比率)などの一次特徴量と、平均濃度(濃度積算値と面積の比)などの二次特徴量があり、検出したい疵に対応して、種々考案されている。
【0045】
これらの特徴量を用いて周期疵判定部11が周期疵を判定する方法について、図9のフローチャートに基づいて説明する。なお、周期疵判定部11は、例えば外部計算機等によって実現される。また、被検査体2のある領域(コイル1本、あるいは、コイル1本を長手方向に分割した領域など)にN個の疵候補が存在し、それぞれの疵候補に対し、特徴量算出部10により特徴量が計算されているものとし、特徴量のリストは、Yアドレス順に予め並んでいるようにしておくものとする。
【0046】
手順としては、まず、初期化を行う(ステップS1)。ここで変数pは、何周期分の周期疵候補が見つけられたかを表すパラメータであり、初期値を0とする。また、変数iは疵候補の番号を表す連番(i=1、2、・・・、N)であり、初期値を1とする。
【0047】
次に、周期疵判定を行う元になる疵候補の番号を表すパラメータNo[p](ただし、p=0)を初期値iに初期化する(ステップS2)。今後、No[p]を、p周期目の疵候補の番号を表すパラメータとして使用するが、ここでは、まだ周期疵判定が成立していないので、周期疵判定を行う元になる疵候補は、0周期目と考えている。
【0048】
次に、周期疵判定の元になる疵候補が最後の疵かどうかを判定する(ステップS3)。最後の疵(すなわちi=N)であれば(ステップS3:Yes)、それ以降に周期疵判定すべき疵候補は存在しないので、周期疵判定は終了する。最後の疵でなければ(ステップS3:No)、周期疵か否かを判定する対象の疵の番号を示す変数jを初期化する(ステップS4)。初期値は、周期疵判定の元になる疵候補の番号の次の番号である。
【0049】
そして、No[p]番目の疵候補とj番目の疵候補とが周期条件を満たすかどうか判定する(ステップS5)。
【0050】
周期条件を満たすための条件は、(1)X(幅方向)アドレスが許容ずれ量以内で一致、(2)Y(長手方向)アドレスの差が許容ずれ量以内で周期と一致することである。一致するかどうかを判定する周期は、1周期目の判定では、ロール疵の発生原因として考えられるロールを考慮して予め設定されている周期を用い、2周期目以降の判定では、0周期目と1周期目の疵候補の長手方向の位置から計算した仮の周期を用いる。ここで、Xアドレスの許容ずれ量、周期、周期の許容ずれ量は予め設定しておく。また、更に、幅・面積などが類似している、正/負の極性(明欠陥/暗欠陥)が一致している、信号のピーク値・積分値などが類似しているなど、形状あるいは濃度の特徴量の条件を加え、類似の疵候補間のみで周期判定を行い、周期判定精度を向上させることも可能である。
【0051】
ステップS5にて周期条件を満たした場合には(ステップS5:Yes)、見つかった疵候補が1周期目かどうか判断する(ステップS6)。1周期目である場合には(ステップS6:Yes)、ラベルiとラベルjの疵候補のYアドレスから周期を仮決定する(ステップS7)。そして、見つかった周期数を表す変数pをインクリメントし、p周期目の疵候補番号N[p]をjにセットする(ステップS8)。一方、1周期目でない場合には(ステップS6:No)、仮に周期を決定しないで、見つかった周期数を表す変数pをインクリメントし、p周期目の疵候補番号N[p]をjにセットする(ステップS8)。
【0052】
そして、変数pが、疵を何周期分見つければ周期疵と判定するかの設定値「周期疵判定周期数」に達しているか否かを判断する(ステップS9)。pが周期疵判定周期数に達していなければ(ステップS9:No)、ラベルjの疵候補が最後の疵候補かどうか判断し(ステップS10)する。最後の疵候補であれば(ステップS10:Yes)、そのときのi=No[0]に対しては周期疵判定成立しないということで、変数iをインクリメントして次の疵候補を元に周期疵判定を行う(ステップS13)。
【0053】
一方、最後の疵候補でなければ(ステップS10:No)、変数jをインクリメントして(ステップS11)、更に以降の疵候補点の中で周期条件を満たすものがあるか否かを探す(ステップS5)。なお、この時の周期条件では、ステップS7で仮決定された周期を用いる。ステップS5で周期条件を満たさなかった場合には(ステップS5:No)、上述のステップS10に合流する。
【0054】
また、ステップS9で周期疵判定周期数に達していれば(ステップS9:Yes)、それまで候補としていたNo[0]、・・・、No[p]を周期疵として確定する(ステップS12)。このようにして、予め指定された周期疵判定周期数だけ連続して疵候補が並んでいる場合には、それらを周期疵として最終判定する。
【0055】
そして、一組の周期疵が確定した場合、あるいは、i=No[0]に対して周期疵判定周期数だけ連続して疵候補が並んでいなかった場合は、変数iをインクリメントし(ステップS13)、次の疵候補を元に周期疵判定を繰り返す(ステップS2)。
【0056】
ここで、図14Aおよび図14Bを参照して、本実施形態で検査を行った結果例について説明する。図14Aは、第1実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板について、検出した疵候補位置をプロットしたコイルマップの例である。このように本実施形態の検査では多数疵候補が検出されるが、周期疵判定部11で判定される実際の周期疵は、図中破線で囲った一連の疵候補のみであり、その他の疵候補は過検出として排除することができる。また、周期疵の周期は、3168mmと計算され、直径1000mmのロールによるものであると特定できる。
【0057】
図14Bは、上記検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。図14Aと図14Bとを比較することにより解るように、検出された周期疵は、ライン速度がシャーカット速度60m/分(1m/s)の時に検出されている。すべての鋼板は、前後を必ずシャーカットで切断されるので、シャーカット速度で鋼板を検査できる期間が必ず存在する。したがって、本発明の第1実施形態に係る表面検査装置は、この期間において全長に亘って発生するような周期疵を確実に検出することができる。
【0058】
以上より、本発明の第1実施形態にかかる表面検査装置は、移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔Δに達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体2の表面の疵を検出する疵検出部7とを備えるので、被検査体2の速度の大小に拘らず、検出漏れのない安定的な表面検査ができる。
【0059】
さらに、特徴量算出部10が抽出された疵候補点から位置、形状、または濃度の特徴量を算出し、周期疵判定部11が、この特徴量を用いて周期疵か否かを判定するようにしたので、過検出することなく疵候補点の中から微小周期疵を安定して検出することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態に加え、被検査体2の速度に応じて閾値を変更するための機能を追加した実施形態である。したがって、本実施形態の説明では、第1実施形態と共通部分については、同符号を参照することによって、説明を省略する。
【0061】
図10は、本発明の第2実施形態にかかる表面検査装置4の概略構成を示すブロック図である。図10に示されるように、第2実施形態にかかる表面検査装置4は、第1実施形態と共通構成として、ラインセンサカメラ1と、A/D変換部5と、撮像信号用バッファ6と、疵検出部7と、制御部8と、ロータリエンコーダ9と、特徴量算出部10と、周期疵判定部11とを備える。しかし、第2実施形態にかかる表面検査装置4は、第1実施形態と異なり、疵検出部7が、画像処理ユニット7aと、二値化ユニット7bと、発振器7cと、カウンタ7dと、閾値演算ユニット7eを備える。
【0062】
発振器7cは、一般的な局所発振器である。カウンタ7dは、発振器7cからの一定周期パルスのパルス数を計数する。このように、カウンタ7dがパルス数を計測することにより、被検査体2がΔだけ移動して、撮像信号の取り込みを行うべき時間間隔を測定する構成としている。なお、厳密には、A/D変換部5のタイミングと二値化ユニット7bのタイミングは時間差があるので、遅延を考慮する必要があるが、被検査体2の速度変化が急激でなければ、Δ×数ライン分移動する間の速度変化は測定に影響しない。
【0063】
また、図6を参照して先述したように、被検査体2の速度Vが
V・δt>δy/cosθ (3)
の場合、ラインセンサカメラ1の一画素に対する露光時間は、δy/(cosθ・V)となり、
V・δt≦δy/cosθ (4)
の場合の露光時間δtに対してδy/(cosθ・V・δt)倍だけ小さくなる。
【0064】
そこで、閾値演算ユニット7eは、カウンタ7dにより計測されたパルス数から計算された被検査体2の移動速度Vに基づいて、(3)式を満たす場合には、基準となる閾値をδy/(cosθ・V・δt)倍する。ここで、基準となる閾値とは、(4)式を満たす場合に適用される閾値である。
【0065】
二値化ユニット7bは、閾値演算ユニット7eによって演算された閾値と各画素の輝度を比較し、閾値を越える画素を疵候補と判定する。そして、以下第1実施形態と同様に、特徴量算出部10が特徴量の算出処理を行い、その後、周期疵判定部11が周期疵の判定を行う。
【0066】
図15Aは、本発明の第2実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板について、検出した疵候補位置をプロットしたコイルマップの例である。そして、図15Bは、上記検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。図15Aに示されるように、本発明の第2実施形態に係る表面検査装置によれば、ライン速度によらずに周期疵を全長に亘り検出することができることが解る。
【0067】
一方、図14Aに示された第1実施形態に係る表面検査装置による検出の例では、ライン速度が最高速の600m/分(10m/秒)の時には、鋼板の移動による画像のブレのために実質的な分解能が下がっているため、疵候補をほとんど検出できていない。この違いは、第2実施形態に係る表面検査装置がライン速度に応じて閾値を変更していることによる。したがって、周期疵が全長に亘って発生している場合は、第1実施形態、第2実施形態のいずれでも差異はないが、途中で発生したりしなくなったり、一部分のみで発生するような周期疵が存在するような場合には、第2実施形態の方が望ましい。
【0068】
以上より、本発明の第2実施形態にかかる表面検査装置は、移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔Δに達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体2の表面の疵を検出する疵検出部7とを備えるので、被検査体2の速度の大小に拘らず、検出漏れのない安定的な表面検査ができる。
【0069】
さらに、被検査体2の移動速度に応じて閾値を演算する閾値演算ユニット7eと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から、閾値演算ユニット7eにより演算された閾値に基づいて疵候補点を抽出する二値化ユニット7bとを備えたので、過検出することなく安定して撮像信号中から疵候補点を検出することができる。
【0070】
また、特徴量算出部10が抽出された疵候補点から位置、形状、または濃度の特徴量を算出し、周期疵判定部11が、この特徴量を用いて周期疵か否かを判定するようにしたので、過検出することなく疵候補点の中から微小周期疵を安定して検出することができる。
【0071】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第2実施形態に加え、周期疵と通常疵を並行して検出するための機能を追加した実施形態である。したがって、本実施形態の説明では、第2実施形態と共通部分については、同符号を参照することによって、説明を省略する。
【0072】
図11は、本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置4の概略構成を示すブロック図である。図11に示されるように、第3実施形態にかかる表面検査装置4は、第2実施形態と共通構成である、ラインセンサカメラ1と、A/D変換部5と、撮像信号用バッファ6と、疵検出部7と、制御部8と、ロータリエンコーダ9と、特徴量算出部10と、周期疵判定部11とを備える。これに加え、第3実施形態にかかる表面検査装置4は、さらに、加算平均化ユニット12aおよび第2の二値化ユニット12bを内部に備える第2の疵検出部12と、第2の特徴量算出部13と、通常疵判定部14とを備える。
【0073】
加算平均化ユニット12aは、画像処理ユニット7aにより処理された信号を、複数ライン分加算して、平均化を行うことにより長手方向の画像処理上の分解能を変換するものである。ここで、本発明の第3実施形態では、A/D変換部5によってデジタル信号に変換された撮像信号を扱っているので、上記加算平均は撮像信号のデジタル値について演算を意味する。また、撮像信号のデジタル値は、検出した被検査体2の輝度に相当する情報であるので、複数ライン分の撮像信号のデジタル値を加算平均することにより、長手方向の画像処理上の分解能を変換することができる。したがって、上記加算平均処理後の長手方向の画像処理上の分解能をVmax・δt以上にすることにより、被検査体2の速度によらず、一定の露光時間および長手方向分解能が実現できる。
【0074】
第2の二値化ユニット12bおよび第2の特徴量算出部13は、それぞれ二値化ユニット7bおよび特徴量算出部10と同様の機能をもつものであり、加算平均化ユニット12aによって変換された撮像信号から、疵候補を抽出して特徴量を算出するためのものである。また、通常疵判定部14は、例えば上位計算機で実現されるものであり、第2の特徴量算出部13が算出した特徴量を用いて通常疵の判定を行うものである。
【0075】
以上より、本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置は、移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離または移動速度を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔Δに達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体2の表面の疵を検出する疵検出部7とを備えるので、被検査体2の速度の大小に拘らず、検出漏れのない安定的な表面検査ができる。
【0076】
さらに、被検査体2の移動速度に応じて閾値を演算する閾値演算ユニット7eと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から、閾値演算ユニット7eにより演算された閾値に基づいて疵候補点を抽出する二値化ユニット7bとを備えたので、過検出することなく安定して撮像信号中から疵候補点を検出することができる。
【0077】
また、特徴量算出部10が抽出された疵候補点から位置、形状、または濃度の特徴量を算出し、周期疵判定部11が、この特徴量を用いて周期疵か否かを判定するようにしたので、過検出することなく疵候補点の中から微小周期疵を安定して検出することができる。
【0078】
加えて、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号を加算平均する加算平均化ユニット12aと、加算平均化された撮像信号から疵候補点を抽出する第2の二値化ユニット12bとを備えたので、通常疵の検出に全く影響を与えることなく、微小疵および微小周期疵を検出できる。
【0079】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、ラインセンサカメラとしてCCDカメラを用いたが、CCDに限らず各種の固体撮像装置を用いることができる。さらに、撮像装置の画素サイズや画素数等は、仕様に応じて適宜変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。例えば、図12は、図11に示された表面検査装置4において加算平均化ユニット12aを除いた構成の変形実施形態を示すブロック図である。さらに、図13は、周期疵用および通常疵用の特徴量算出部10を共通構成として、疵総合判定部15にて周期疵および通常疵の判定を行う構成の変形実施形態を示すブロック図である。これらの変形実施形態は、通常疵の発生数が多いときにはシステムの計算負荷増大に繋がるので、適用に際し注意が必要であるが、システムの簡素化および低廉化に資する構成である。
【符号の説明】
【0080】
1 ラインセンサカメラ
2 被検査体
3 光源
4 表面検査装置
5 A/D変換部
6 撮像信号用バッファ
6a メモリ制御ユニット
6b 第1の入力用バッファ
6c 第2の入力用バッファ
6d 第1の転送用バッファ
6e 第2の転送用バッファ
7 疵検出部
7a 画像処理ユニット
7b 二値化ユニット
7c 発振器
7d カウンタ
7e 閾値演算ユニット
8 制御部
8a カメラ制御ユニット
8b 画像取り込み制御ユニット
9 ロータリエンコーダ
10 特徴量算出部
11 周期疵判定部
12 疵検出部
12a 加算平均化ユニット
12b 二値化ユニット
13 特徴量算出部
14 通常疵判定部
15 疵総合判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の表面上に存在する疵を検出する表面検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼板等の走行する帯状の被検査体を光学式に検査する場合、ラインセンサカメラ等の一次元の撮像素子が用いられている。この場合、被検査体の幅方向(X方向)については撮像素子による一定周期の電子的な走査が行われ、被検査体の移動方向である長手方向(Y方向)については被検査体自体の移動による走査が行われる。そして、撮像素子からの撮像信号を用いることにより、被検査体の表面上に存在する様々な疵を検出する表面検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、被検査体が長手方向(Y方向)分解能の所定回数分の1だけ進む毎に撮像信号を取り込み、同一画素の信号を加算し、加算されたデータを当該所定回数で除して平均値を算出することで、被検査体の表面上に存在する疵の検出漏れが生じないようにする、あるいは、被検査体の移動速度が増減した場合の被検査体画像のブレを一定にする表面検査装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−113465号公報
【特許文献2】特開平11−166904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の表面検査装置では、被検査体の速度が増減すると、画像のブレにより画像の分解能が変化し、検出能が一定にならないという問題があった。また、表面検査は、ヘゲ疵、穴、異物付着などの大きさが数mm程度以上の疵(いわゆる通常疵)を検出することが最重要ではあるが、一方で、検出レベルを上げて微小欠陥を多数検出させるようにすると、有害・無害を問わず、多数の疵候補を検出してしまう。その結果、信号処理の時間が追いつかなくなり、通常の検査に影響が出てしまうという問題があった。また、特許文献2記載の被検査体が所定距離進む毎に撮像信号を加算して平均値を算出する表面検査装置では、被検査体が高速で移動する場合に処理速度が間に合わなくなる、あるいは処理速度を高速化するために装置が高価になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、被検査体の移動速度が大幅に変化する場合でも、被検査体上の疵を安定して検出できる表面検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる表面検査装置は、移動する被検査体から反射された光を受光する一次元撮像素子と、前記一次元撮像素子から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶するバッファと、被検査体の移動距離を検出する位置検出器と、位置検出器によって検出された前記被検査体の移動距離が所定間隔に達した時点で、前記バッファに一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御部と、前記バッファから読み出された撮像信号から前記被検査体の表面の疵候補点を検出する疵検出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる表面検査装置によれば、被検査体の移動速度が大幅に変化する場合でも、被検査体上の疵を安定して検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ラインセンサカメラと被検査体と光源との配置を示す図である。
【図2】図2は、被検査体におけるラインセンサの撮像範囲を示す図である。
【図3】図3は、鋼鈑の製造ラインにおけるライン速度の例を示す図である。
【図4】図4は、ラインセンサカメラの撮像範囲の露光時間を示す図である。
【図5】図5は、被検査体が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで次の撮像を行った場合の露光時間を示す図である。
【図6】図6は、被検査体が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出す方法で撮像をした場合の露光時間を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態にかかる表面検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態で用いる形状特徴量について説明する図である。
【図9】図9は、特徴量を用いて周期疵判定する方法のフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態にかかる表面検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、加算平均化ユニットを除いた構成の変形実施形態を示すブロック図である。
【図13】図13は、疵総合判定部にて周期疵および通常疵の判定を行う構成の変形実施形態を示すブロック図である。
【図14A】図14Aは、本発明の第1実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板のコイルマップの例である。
【図14B】図14Bは、検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。
【図15A】図15Aは、本発明の第2実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板のコイルマップの例である。
【図15B】図15Bは、検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の基本原理)
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の基本原理について説明する。
【0011】
まず、図1および図2を用いて、本発明の実施形態に用いるラインセンサカメラ1と被検査体2と光源3との配置、および被検査体2におけるラインセンサカメラ1の撮像範囲について説明する。図1に示されるように、ラインセンサカメラ1と被検査体2と光源3とは、光源3から射出された光線が入射角θで被検査体2を照射し、被検査体2の表面で反射した光線をラインセンサカメラ1が受光角θで検出するように配置されている。そして、ラインセンサカメラ1のライン方向と垂直方向に被検査体2が速度Vで移動することにより、ラインセンサカメラ1は被検査体2の表面を走査する。以下、説明を容易にするために、被検査体2の表面におけるラインセンサカメラ1のライン方向(被検査体2の幅方向)をX方向とし、被検査体2の移動方向(被検査体2の長手方向)をY方向とする。
【0012】
図2は、図1の配置における被検査体上2の撮像範囲について説明する図である。被検査体2が停止している場合のラインセンサカメラ1の1画素に対応する被検査体上2の撮像範囲は、図2の実線の範囲で示すように、X方向がδx,Y方向がδy/cosθの矩形である。δxおよびδyは、ラインセンサカメラ1の撮像素子サイズ、レンズ焦点距離および撮像距離などから決まる量であり、撮像素子のサイズに光学倍率を掛けたものに相当する。また、一般に、ラインセンサカメラ1の1画素のサイズの縦横比は等しいのでδx=δyである。
【0013】
一方、被検査体2が速度Vで移動している状況で被検査体2を撮像する場合、δx×δyの撮像範囲がY方向にV・δtだけブレて、図2における実線および破線の領域を重畳して露光していることになる。ここで、δtは、ラインセンサカメラ1の露光時間である。
【0014】
ここで、図3および図4を参照して、製造ライン上を搬送する鋼板を被検査体2の例として、ラインセンサカメラ1の1画素に対応する被検査体上2の撮像範囲がどのように検出しているかについて検討する。図3は、鋼鈑の製造ラインにおけるライン速度の例を示す図である。そして、図4は、ライン速度Vによって場合分けした、ラインセンサカメラ1の撮像範囲がどのような露光時間で被検査体2の表面を露光しているかを示す図である。図4に示されるグラフは、被検査体2の表面のY方向(搬送方向)の相対位置を横軸とし、各相対位置についての露光時間を縦軸に表したグラフである。
【0015】
図3に示されるように、製造ラインのライン速度Vは、定常時のライン速度増減(図中のハッチング部分:V2からV3まで)以外に、ルーパに溜まった被検査体2を払い出すための一時的な最高速度Vmax、被検査体2の継ぎ目をシャーカットするための低速度V1、および、被検査体2を目視検査するための完全停止速度(V=0)がある。
【0016】
まず、ライン速度Vが比較的低く、V・δt≦δy/cosθを満たす場合を考える。図4(a)は、この場合のラインセンサカメラ1の撮像範囲が、どのような露光時間で被検査体2の表面を露光しているかを示している。図4(a)に示すように、Y方向におけるV・δtからδy/cosθまでの領域はδt秒間の露光時間であるが、その前後の領域では、δt秒間の露光とならずに部分的な露光となっていることが解る。
【0017】
一方、図4(b)は、ライン速度Vが比較的高く、V・δt>δy/cosθとなる場合のラインセンサカメラ1の撮像範囲が、どのような露光時間で被検査体2の表面を露光しているかを示している。図4(b)に示すように、Y方向におけるδy/cosθからV・δtまでの領域は一定の露光時間であるが、δt秒よりも少ない露光時間(δy/(cosθ・V))となることが解る。
【0018】
以上まとめると、図4(a)、(b)に示されるいずれの場合も、ラインセンサカメラ1の撮像範囲がY方向についてはδy/cosθ+V・δtまでの範囲を露光しており、この範囲は、ライン速度VがVminからVmaxまで可変する場合、δy/cosθ+Vmin・δtからδy/cosθ+Vmax・δtまで変化することが解る。
【0019】
上記の検討から、被検査体2の長手方向(Y方向)の画像取り込み間隔が一定となるように表面検査を行おうとした場合、被検査体2の速度が最大であるVmaxとなる場合を考慮すると、Y方向の画像取り込み間隔Δが
Δ≧Vmax・δt (1)
を満たすように設定することが必要である。そして、できるだけ微小サイズの疵を検査しようとした場合、ラインセンサカメラ1の光学倍率など調節してδxおよびδyを小さくするように設計するので、V・δt>δy/cosθとなる条件が満たされることが多い。すなわち、ラインセンサカメラ1の1画素は、図4(b)で例示したような撮像範囲を露光することになる。
【0020】
上記(1)の条件を満たす状況において、被検査体2が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで次の撮像を行った場合、ラインセンサカメラ1の露光時間の状況を表したものが図5である。とくに、図5(a)は、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合について、図5(b)は、被検査体2の速度Vが最大速度Vmaxである場合について、それぞれ被検査体2が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで、ラインセンサカメラ1が次の撮像をしたときの露光の状況を表している。
【0021】
図5(b)から読み取れるように、被検査体2の速度Vが最大速度Vmaxである場合、最初の撮像と2回目の撮像の境目(横軸でΔ〜δy/cosθ+Vmax・δt)付近の領域では、他の領域に比べ露光時間が短く、この位置に微小疵が存在した場合、ラインセンサカメラ1が疵を検出し難くなる。
【0022】
一方、図5(a)から読み取れるように、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合、被検査体2が画像取り込み間隔Δだけ移動したタイミングで次の撮像をした場合、被検査体2の移動による画像のブレはない(あるいは無視可能である)が、ラインセンサカメラ1は、δy/cosθからΔまでの範囲を露光しないことになる。つまり、この範囲に微小疵が存在する場合に検出できないことがわかる。
【0023】
従って、上記(1)式の条件を満たしていた場合、露光時間を一定に維持しながら、微小疵が存在する領域によらずに検出漏れが発生しない検出方法を実現することは困難であることが解る。そこで、本発明では(1)式の条件を緩和することを考えることにする。
【0024】
そのために、本発明では、被検査体2がΔだけ移動するタイミングで撮像するのではなく、一定の露光時間間隔で連続的に撮像している中で、Δだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出し、当該撮像信号を各画素の撮像信号として利用する方法を採用する。なお当該方法は、Vmax・δt>Δとなる状況において撮像信号が更新される前に被検査体2がΔだけ移動してしまう。その結果、同じ撮像信号を複数の画素で重複して利用してしまうことになる。しかしながら、当該方法に従うシステムは矛盾せずに動作するので問題とならない。
【0025】
図6は、上記方法に従い、被検査体2がΔだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出す方法で撮像をした場合のラインセンサカメラ1の露光時間の状況を表した図である。とくに、図6(a)は、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合について、図6(b)は、被検査体2の速度Vが最大速度Vmaxである場合について、それぞれΔだけ移動したタイミングで撮像信号を抜き出す方法で撮像をした場合の露光の状況を表している。
【0026】
このとき、図6(b)に示されるように、最初の撮像領域と2回目の撮像領域の重複領域(図中のV・δt〜δy/cosθ+V・δt)は、最初の撮像と2回目の撮像の露光時間を合わせると、重複領域ではない領域の露光時間(δy/(cosθ・V))となる。つまり、全範囲に亘り各点の露光時間が一定になる。なお、条件によって、微小疵が1回の周期内で完全に撮像されたり、1回目と2回目の撮像に分離して撮像されたりする場合が起こるが、微小疵の情報を量子化した画素の信号として処理するのでやむを得ない。また、図6(a)に示されるように、被検査体2の速度Vが0もしくは略0である場合についても、各点の露光時間が一定(δt)となる。
【0027】
更に、被検査体2の移動速度が最も低い速度(これをVminとする)の場合にも検出漏れが生じないようにするためには、画像取り込み間隔Δが
Δ≦δy/cosθ+Vmin・δt (2)
を満たしている必要がある。
【0028】
ここで、(2)式を緩和するためには被検査体2の移動速度の最小値Vminを制限することも考えられる。しかしながら、被検査体2の移動速度は他の要因から決定され、一般に変更することができないことが多い。そこで、検査対象とする移動速度の最小値V’minを決めて、その範囲内(V’minからVmaxまで)のみで検査をするようにしてもよい。これは例えば、最小値V’minをシャーカット速度(図3中ではV1)として、停止しているなどシャーカット速度以下での検出を除いたり、最小値V’minを定常時ライン速度範囲の下限値(図3中ではV2)とし、シャーカット速度での検出も除いたりするようなことである。通常の疵検査であれば、このような検査範囲を限定することは許されないが、対象の疵を連続して発生する周期疵とすれば、検査対象外とした速度で被検査体2が移動している場合には検出できないとしても、同一コイル内のいずれかの領域で周期疵を検出できればよいという方式も実用性がある。
【0029】
以下に、撮像信号から疵を抽出するための閾値について検討する。
【0030】
なお、対象とする最小の微小疵は、長手方向に一画素分の撮像範囲に相当する大きさである。このような大きさの疵の場合、図6(b)に示すように、
V・δt>δy/cosθ (3)
の場合、一画素に対する露光時間は、δy/(cosθ・V)となり、
V・δt≦δy/cosθ (4)
の場合の露光時間δtに対してδy/(cosθ・V・δt)倍だけ小さくなる。ここで、δy、cosθ、δtはいずれも定数であるから、被検査体2の移動速度Vを測定して、(3)式を満たす場合には、(4)式を満たす場合の閾値をδy/(cosθ・V・δt)倍して新たな閾値として採用する。これにより、長手方向の1画素程度の疵に対しては、検出能を一定に保つことが可能である。ただし、被検査体2の移動速度が大きくなり、一画素に対する露光時間が短くなっても、十分検出能が確保できる場合には、このような対策は不要であることは言うまでもない。
【0031】
なお、疵検出の閾値を変えると、状況によって疵以外の正常部分のいわゆる地肌ノイズを過検出することが懸念される。しかしながら、地肌ノイズ自体も大きさが一画素程度の変動であるので、移動速度が大きい場合には、同様に信号レベルも低下していることにより過検出の問題はない。また、長手方向に複数画素連続し、長手方向のサイズがV・δt程度以上の通常の疵については、小さい露光時間でも長手方向複数画素の積算で効いてくるので、信号レベルの低下は発生しない。
【0032】
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、以下に本発明の詳細を実施形態によって説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図7は、本発明の第1実施形態にかかる表面検査装置4の概略構成を示すブロック図である。第1実施形態にかかる表面検査装置4は、受光素子を直線上に配列した一次元撮像素子を有するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1の出力(撮像信号)をデジタル化するA/D変換部5と、デジタル化された撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、撮像信号を読み出して被検査体2の表面の疵候補点を検出する疵検出部7と、カメラおよび画像取り込みを制御する制御部8と、被検査体2を搬送するロールに取り付けられたロータリエンコーダ9と、特徴量算出部10と、周期疵判定部11とを備える。
【0034】
なお、疵検出部7は、画像処理ユニット7aと二値化ユニット7bとを内部に備え、制御部8は、カメラ制御ユニット8aと画像取り込み制御ユニット8bとを内部に備える。画像処理ユニット7aは、撮像信号用バッファ6から撮像信号を読み出して所定の画像処理を行うユニットであり、二値化ユニット7bは、後述する閾値により疵候補点を抽出するユニットである。カメラ制御ユニット8aは、ラインセンサカメラ1、A/D変換部5、および撮像信号用バッファ6を制御し、画像取り込み制御ユニット8bは、ロータリエンコーダ9の出力に基づいて画像処理ユニット7aを制御するものである。
【0035】
ラインセンサカメラ1は、先に説明した図1に示されるように、光源3から射出された光線が入射角θで被検査体2を照射し、被検査体2の表面で反射した光線をラインセンサカメラ1が受光角θで受光するように配置されている。つまり、被検査体2がラインセンサカメラ1のライン方向と垂直方向(Y方向)に速度Vで移動することにより、ラインセンサカメラ1は被検査体2の表面を走査する配置である。
【0036】
なお、本実施形態にかかるラインセンサカメラ1は、クロック周波数40MHz、画素数2048画素、かつ一画素の縦横比が1のものを用いている。また、入射角θ(受光角θ)を10°となるように配置し、ラインセンサカメラ1の光学系は、X方向の視野範囲δxが0.1mmとなるように構成してある。従って、Y方向の視野範囲δyは、
δy=δy/cos10°≒0.1015mm
である。
【0037】
また、被検査体2の最大速度Vmaxは10m/sであり、
Vmax・δt≒10×2048/(40×106)=0.512mm
である。また、シャーカット時の移動速度V1は、1m/sであるので、
V1・δt≒1×2048/(40×106)=0.0512mm
である。従って、前述した従来技術のように、最高速度に合わせて画像取り込み間隔Δを設定すると、0.512mm以上にせざるを得ないため、Y方向の視野範囲δy≒0.1015mmまで小さくしていることが効果を発揮しない。
【0038】
そこで、本発明の第1実施形態に係る表面検査装置では、Δ=0.1mmに設定する。その結果、シャーカット時の移動速度V1においては、Y方向の視野範囲δyに鋼板の移動によるブレV1・δtを加えても、
δt+V1・δt≒0.1527
程度の高分解能での検査が可能になる。
【0039】
A/D変換部5は、ラインセンサカメラ1の出力(撮像信号)をデジタル化するものである。A/D変換部5によってデジタル化された撮像信号は、後段の撮像信号用バッファ6に入力される。
【0040】
撮像信号用バッファ6は、デュアルポートメモリを用いており、一方のポートAで撮像信号をそれぞれ対応するアドレスに記憶し、他方のポートBから撮像信号を画像処理ユニット7aへ送出する構成としている。また、撮像信号用バッファ6は、データ書き込み中の読み出しを避けるために、ダブルバッファとしており、内部のタイミングはバッファ内のメモリ制御ユニット6aが制御している。
【0041】
メモリ制御ユニット6aは、カメラ制御ユニット8aからのタイミングに従い、撮像信号を第1および第2の入力用バッファ6b,6cに交互に書き込み、書き込んだ信号を内部バスにて高速に第1および第2の転送用バッファ6d,6eへ転送する。一方、メモリ制御ユニット6aは、画像処理ユニット7aからのリクエスト信号に従い、書き込みと読み出しとが競合しないタイミングを選んで、転送用バッファのデータを疵検出部7の画像処理ユニット7aへ転送する制御を行う。なお、各入力用および転送用バッファの容量は、ラインセンサカメラ1の画素数に合わせてそれぞれ2048バイトとする。
【0042】
画像処理ユニット7aは、画像取り込み制御ユニット8bからの制御信号に基づいてメモリ制御ユニット6aへリクエスト信号を発信する。先述のように、画像取り込み制御ユニット8bは検査体を搬送するロールに取り付けられたロータリエンコーダ9の出力により被検査体2の移動距離を把握し、被検査体2が設定値Δだけ移動したタイミングで画像処理ユニット7aを制御する。つまり、画像処理ユニット7aからメモリ制御ユニット6aへのリクエスト信号は、被検査体2が設定値Δだけ移動したタイミングで発信され、すなわち、このタイミングで、撮像信号用バッファ6に保存されている最新の撮像信号が読み出される構成となっている。
【0043】
また、画像処理ユニット7a、二値化ユニット7b、特徴量算出部10は、FPGA、DSPなどにより構成され、撮像信号を一周期(一ライン)毎に処理を行う。具体的には、画像処理ユニット7aが、画像のフィルタリングなどの前処理により正規化を行い、二値化ユニット7bが、閾値と各画素の輝度を比較し、閾値を越える画素を疵候補と判定する。そして、特徴量算出部10は、各ラインの信号を並べて二次元的な信号を作成するとともに、検出した疵のラベリング処理および特徴量の算出処理を行う。
【0044】
被検査体上2の疵の特徴量は、大きく分けて、形状の特徴量と濃度の特徴量がある。形状の特徴量には、例えば、図8に示すように、長さ、幅、および面積(検出された画素の数)などの一次特徴量と、一次特徴量の演算で計算されるアスペクト比(長さと幅の比)、平均幅(面積と長さの比)などの二次特徴量がある。また、濃度の特徴量には、同様に、最大濃度値、最小濃度値、濃度積算値(各画素の濃度を積算した積分値)、および正極性面積比(全面積のうち正極のものの比率)などの一次特徴量と、平均濃度(濃度積算値と面積の比)などの二次特徴量があり、検出したい疵に対応して、種々考案されている。
【0045】
これらの特徴量を用いて周期疵判定部11が周期疵を判定する方法について、図9のフローチャートに基づいて説明する。なお、周期疵判定部11は、例えば外部計算機等によって実現される。また、被検査体2のある領域(コイル1本、あるいは、コイル1本を長手方向に分割した領域など)にN個の疵候補が存在し、それぞれの疵候補に対し、特徴量算出部10により特徴量が計算されているものとし、特徴量のリストは、Yアドレス順に予め並んでいるようにしておくものとする。
【0046】
手順としては、まず、初期化を行う(ステップS1)。ここで変数pは、何周期分の周期疵候補が見つけられたかを表すパラメータであり、初期値を0とする。また、変数iは疵候補の番号を表す連番(i=1、2、・・・、N)であり、初期値を1とする。
【0047】
次に、周期疵判定を行う元になる疵候補の番号を表すパラメータNo[p](ただし、p=0)を初期値iに初期化する(ステップS2)。今後、No[p]を、p周期目の疵候補の番号を表すパラメータとして使用するが、ここでは、まだ周期疵判定が成立していないので、周期疵判定を行う元になる疵候補は、0周期目と考えている。
【0048】
次に、周期疵判定の元になる疵候補が最後の疵かどうかを判定する(ステップS3)。最後の疵(すなわちi=N)であれば(ステップS3:Yes)、それ以降に周期疵判定すべき疵候補は存在しないので、周期疵判定は終了する。最後の疵でなければ(ステップS3:No)、周期疵か否かを判定する対象の疵の番号を示す変数jを初期化する(ステップS4)。初期値は、周期疵判定の元になる疵候補の番号の次の番号である。
【0049】
そして、No[p]番目の疵候補とj番目の疵候補とが周期条件を満たすかどうか判定する(ステップS5)。
【0050】
周期条件を満たすための条件は、(1)X(幅方向)アドレスが許容ずれ量以内で一致、(2)Y(長手方向)アドレスの差が許容ずれ量以内で周期と一致することである。一致するかどうかを判定する周期は、1周期目の判定では、ロール疵の発生原因として考えられるロールを考慮して予め設定されている周期を用い、2周期目以降の判定では、0周期目と1周期目の疵候補の長手方向の位置から計算した仮の周期を用いる。ここで、Xアドレスの許容ずれ量、周期、周期の許容ずれ量は予め設定しておく。また、更に、幅・面積などが類似している、正/負の極性(明欠陥/暗欠陥)が一致している、信号のピーク値・積分値などが類似しているなど、形状あるいは濃度の特徴量の条件を加え、類似の疵候補間のみで周期判定を行い、周期判定精度を向上させることも可能である。
【0051】
ステップS5にて周期条件を満たした場合には(ステップS5:Yes)、見つかった疵候補が1周期目かどうか判断する(ステップS6)。1周期目である場合には(ステップS6:Yes)、ラベルiとラベルjの疵候補のYアドレスから周期を仮決定する(ステップS7)。そして、見つかった周期数を表す変数pをインクリメントし、p周期目の疵候補番号N[p]をjにセットする(ステップS8)。一方、1周期目でない場合には(ステップS6:No)、仮に周期を決定しないで、見つかった周期数を表す変数pをインクリメントし、p周期目の疵候補番号N[p]をjにセットする(ステップS8)。
【0052】
そして、変数pが、疵を何周期分見つければ周期疵と判定するかの設定値「周期疵判定周期数」に達しているか否かを判断する(ステップS9)。pが周期疵判定周期数に達していなければ(ステップS9:No)、ラベルjの疵候補が最後の疵候補かどうか判断し(ステップS10)する。最後の疵候補であれば(ステップS10:Yes)、そのときのi=No[0]に対しては周期疵判定成立しないということで、変数iをインクリメントして次の疵候補を元に周期疵判定を行う(ステップS13)。
【0053】
一方、最後の疵候補でなければ(ステップS10:No)、変数jをインクリメントして(ステップS11)、更に以降の疵候補点の中で周期条件を満たすものがあるか否かを探す(ステップS5)。なお、この時の周期条件では、ステップS7で仮決定された周期を用いる。ステップS5で周期条件を満たさなかった場合には(ステップS5:No)、上述のステップS10に合流する。
【0054】
また、ステップS9で周期疵判定周期数に達していれば(ステップS9:Yes)、それまで候補としていたNo[0]、・・・、No[p]を周期疵として確定する(ステップS12)。このようにして、予め指定された周期疵判定周期数だけ連続して疵候補が並んでいる場合には、それらを周期疵として最終判定する。
【0055】
そして、一組の周期疵が確定した場合、あるいは、i=No[0]に対して周期疵判定周期数だけ連続して疵候補が並んでいなかった場合は、変数iをインクリメントし(ステップS13)、次の疵候補を元に周期疵判定を繰り返す(ステップS2)。
【0056】
ここで、図14Aおよび図14Bを参照して、本実施形態で検査を行った結果例について説明する。図14Aは、第1実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板について、検出した疵候補位置をプロットしたコイルマップの例である。このように本実施形態の検査では多数疵候補が検出されるが、周期疵判定部11で判定される実際の周期疵は、図中破線で囲った一連の疵候補のみであり、その他の疵候補は過検出として排除することができる。また、周期疵の周期は、3168mmと計算され、直径1000mmのロールによるものであると特定できる。
【0057】
図14Bは、上記検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。図14Aと図14Bとを比較することにより解るように、検出された周期疵は、ライン速度がシャーカット速度60m/分(1m/s)の時に検出されている。すべての鋼板は、前後を必ずシャーカットで切断されるので、シャーカット速度で鋼板を検査できる期間が必ず存在する。したがって、本発明の第1実施形態に係る表面検査装置は、この期間において全長に亘って発生するような周期疵を確実に検出することができる。
【0058】
以上より、本発明の第1実施形態にかかる表面検査装置は、移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔Δに達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体2の表面の疵を検出する疵検出部7とを備えるので、被検査体2の速度の大小に拘らず、検出漏れのない安定的な表面検査ができる。
【0059】
さらに、特徴量算出部10が抽出された疵候補点から位置、形状、または濃度の特徴量を算出し、周期疵判定部11が、この特徴量を用いて周期疵か否かを判定するようにしたので、過検出することなく疵候補点の中から微小周期疵を安定して検出することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態に加え、被検査体2の速度に応じて閾値を変更するための機能を追加した実施形態である。したがって、本実施形態の説明では、第1実施形態と共通部分については、同符号を参照することによって、説明を省略する。
【0061】
図10は、本発明の第2実施形態にかかる表面検査装置4の概略構成を示すブロック図である。図10に示されるように、第2実施形態にかかる表面検査装置4は、第1実施形態と共通構成として、ラインセンサカメラ1と、A/D変換部5と、撮像信号用バッファ6と、疵検出部7と、制御部8と、ロータリエンコーダ9と、特徴量算出部10と、周期疵判定部11とを備える。しかし、第2実施形態にかかる表面検査装置4は、第1実施形態と異なり、疵検出部7が、画像処理ユニット7aと、二値化ユニット7bと、発振器7cと、カウンタ7dと、閾値演算ユニット7eを備える。
【0062】
発振器7cは、一般的な局所発振器である。カウンタ7dは、発振器7cからの一定周期パルスのパルス数を計数する。このように、カウンタ7dがパルス数を計測することにより、被検査体2がΔだけ移動して、撮像信号の取り込みを行うべき時間間隔を測定する構成としている。なお、厳密には、A/D変換部5のタイミングと二値化ユニット7bのタイミングは時間差があるので、遅延を考慮する必要があるが、被検査体2の速度変化が急激でなければ、Δ×数ライン分移動する間の速度変化は測定に影響しない。
【0063】
また、図6を参照して先述したように、被検査体2の速度Vが
V・δt>δy/cosθ (3)
の場合、ラインセンサカメラ1の一画素に対する露光時間は、δy/(cosθ・V)となり、
V・δt≦δy/cosθ (4)
の場合の露光時間δtに対してδy/(cosθ・V・δt)倍だけ小さくなる。
【0064】
そこで、閾値演算ユニット7eは、カウンタ7dにより計測されたパルス数から計算された被検査体2の移動速度Vに基づいて、(3)式を満たす場合には、基準となる閾値をδy/(cosθ・V・δt)倍する。ここで、基準となる閾値とは、(4)式を満たす場合に適用される閾値である。
【0065】
二値化ユニット7bは、閾値演算ユニット7eによって演算された閾値と各画素の輝度を比較し、閾値を越える画素を疵候補と判定する。そして、以下第1実施形態と同様に、特徴量算出部10が特徴量の算出処理を行い、その後、周期疵判定部11が周期疵の判定を行う。
【0066】
図15Aは、本発明の第2実施形態に係る表面検査装置により検査を行った鋼板について、検出した疵候補位置をプロットしたコイルマップの例である。そして、図15Bは、上記検査における鋼板の移動速度を示したグラフである。図15Aに示されるように、本発明の第2実施形態に係る表面検査装置によれば、ライン速度によらずに周期疵を全長に亘り検出することができることが解る。
【0067】
一方、図14Aに示された第1実施形態に係る表面検査装置による検出の例では、ライン速度が最高速の600m/分(10m/秒)の時には、鋼板の移動による画像のブレのために実質的な分解能が下がっているため、疵候補をほとんど検出できていない。この違いは、第2実施形態に係る表面検査装置がライン速度に応じて閾値を変更していることによる。したがって、周期疵が全長に亘って発生している場合は、第1実施形態、第2実施形態のいずれでも差異はないが、途中で発生したりしなくなったり、一部分のみで発生するような周期疵が存在するような場合には、第2実施形態の方が望ましい。
【0068】
以上より、本発明の第2実施形態にかかる表面検査装置は、移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔Δに達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体2の表面の疵を検出する疵検出部7とを備えるので、被検査体2の速度の大小に拘らず、検出漏れのない安定的な表面検査ができる。
【0069】
さらに、被検査体2の移動速度に応じて閾値を演算する閾値演算ユニット7eと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から、閾値演算ユニット7eにより演算された閾値に基づいて疵候補点を抽出する二値化ユニット7bとを備えたので、過検出することなく安定して撮像信号中から疵候補点を検出することができる。
【0070】
また、特徴量算出部10が抽出された疵候補点から位置、形状、または濃度の特徴量を算出し、周期疵判定部11が、この特徴量を用いて周期疵か否かを判定するようにしたので、過検出することなく疵候補点の中から微小周期疵を安定して検出することができる。
【0071】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第2実施形態に加え、周期疵と通常疵を並行して検出するための機能を追加した実施形態である。したがって、本実施形態の説明では、第2実施形態と共通部分については、同符号を参照することによって、説明を省略する。
【0072】
図11は、本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置4の概略構成を示すブロック図である。図11に示されるように、第3実施形態にかかる表面検査装置4は、第2実施形態と共通構成である、ラインセンサカメラ1と、A/D変換部5と、撮像信号用バッファ6と、疵検出部7と、制御部8と、ロータリエンコーダ9と、特徴量算出部10と、周期疵判定部11とを備える。これに加え、第3実施形態にかかる表面検査装置4は、さらに、加算平均化ユニット12aおよび第2の二値化ユニット12bを内部に備える第2の疵検出部12と、第2の特徴量算出部13と、通常疵判定部14とを備える。
【0073】
加算平均化ユニット12aは、画像処理ユニット7aにより処理された信号を、複数ライン分加算して、平均化を行うことにより長手方向の画像処理上の分解能を変換するものである。ここで、本発明の第3実施形態では、A/D変換部5によってデジタル信号に変換された撮像信号を扱っているので、上記加算平均は撮像信号のデジタル値について演算を意味する。また、撮像信号のデジタル値は、検出した被検査体2の輝度に相当する情報であるので、複数ライン分の撮像信号のデジタル値を加算平均することにより、長手方向の画像処理上の分解能を変換することができる。したがって、上記加算平均処理後の長手方向の画像処理上の分解能をVmax・δt以上にすることにより、被検査体2の速度によらず、一定の露光時間および長手方向分解能が実現できる。
【0074】
第2の二値化ユニット12bおよび第2の特徴量算出部13は、それぞれ二値化ユニット7bおよび特徴量算出部10と同様の機能をもつものであり、加算平均化ユニット12aによって変換された撮像信号から、疵候補を抽出して特徴量を算出するためのものである。また、通常疵判定部14は、例えば上位計算機で実現されるものであり、第2の特徴量算出部13が算出した特徴量を用いて通常疵の判定を行うものである。
【0075】
以上より、本発明の第3実施形態にかかる表面検査装置は、移動する被検査体2から反射された光を受光するラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶する撮像信号用バッファ6と、被検査体2の移動距離または移動速度を検出するロータリエンコーダ9と、ロータリエンコーダ9によって検出された被検査体2の移動距離が所定間隔Δに達した時点で、撮像信号用バッファ6に一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御ユニット8bと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から被検査体2の表面の疵を検出する疵検出部7とを備えるので、被検査体2の速度の大小に拘らず、検出漏れのない安定的な表面検査ができる。
【0076】
さらに、被検査体2の移動速度に応じて閾値を演算する閾値演算ユニット7eと、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号から、閾値演算ユニット7eにより演算された閾値に基づいて疵候補点を抽出する二値化ユニット7bとを備えたので、過検出することなく安定して撮像信号中から疵候補点を検出することができる。
【0077】
また、特徴量算出部10が抽出された疵候補点から位置、形状、または濃度の特徴量を算出し、周期疵判定部11が、この特徴量を用いて周期疵か否かを判定するようにしたので、過検出することなく疵候補点の中から微小周期疵を安定して検出することができる。
【0078】
加えて、撮像信号用バッファ6から読み出された撮像信号を加算平均する加算平均化ユニット12aと、加算平均化された撮像信号から疵候補点を抽出する第2の二値化ユニット12bとを備えたので、通常疵の検出に全く影響を与えることなく、微小疵および微小周期疵を検出できる。
【0079】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、ラインセンサカメラとしてCCDカメラを用いたが、CCDに限らず各種の固体撮像装置を用いることができる。さらに、撮像装置の画素サイズや画素数等は、仕様に応じて適宜変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。例えば、図12は、図11に示された表面検査装置4において加算平均化ユニット12aを除いた構成の変形実施形態を示すブロック図である。さらに、図13は、周期疵用および通常疵用の特徴量算出部10を共通構成として、疵総合判定部15にて周期疵および通常疵の判定を行う構成の変形実施形態を示すブロック図である。これらの変形実施形態は、通常疵の発生数が多いときにはシステムの計算負荷増大に繋がるので、適用に際し注意が必要であるが、システムの簡素化および低廉化に資する構成である。
【符号の説明】
【0080】
1 ラインセンサカメラ
2 被検査体
3 光源
4 表面検査装置
5 A/D変換部
6 撮像信号用バッファ
6a メモリ制御ユニット
6b 第1の入力用バッファ
6c 第2の入力用バッファ
6d 第1の転送用バッファ
6e 第2の転送用バッファ
7 疵検出部
7a 画像処理ユニット
7b 二値化ユニット
7c 発振器
7d カウンタ
7e 閾値演算ユニット
8 制御部
8a カメラ制御ユニット
8b 画像取り込み制御ユニット
9 ロータリエンコーダ
10 特徴量算出部
11 周期疵判定部
12 疵検出部
12a 加算平均化ユニット
12b 二値化ユニット
13 特徴量算出部
14 通常疵判定部
15 疵総合判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被検査体から反射された光を受光する一次元撮像素子と、
前記一次元撮像素子から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶するバッファと、
前記被検査体の移動距離を検出する位置検出器と、
前記位置検出器によって検出された前記被検査体の移動距離が所定間隔に達した時点で、前記バッファに一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御部と、
前記バッファから読み出された撮像信号から前記被検査体の表面の疵候補点を検出する疵検出部と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記所定間隔は、前記一定周期の間に前記被検査体が移動する距離よりも小さい値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記バッファへの撮像信号の書き込みを制御するカメラ制御部を更に備え、
前記カメラ制御部と前記画像取り込み制御部とは、それぞれ独立したタイミングで制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記バッファは、デュアルポートメモリであり、一方のポートから前記一定周期で撮像信号が書き込まれ、他方のポートから前記画像取り込み制御部に従うタイミングで撮像信号が読み出されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記疵検出部は、疵候補点を抽出するための閾値を前記被検査体の移動速度に応じて演算する閾値演算手段と、
前記バッファから読み出された撮像信号から得られる被検査体の輝度と、前記閾値演算手段により演算された閾値とを比較して疵候補点を抽出する二値化手段とを備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記撮像信号から前記被検査体の表面の疵候補点を検出する第2の疵検出部を更に備え、
前記第2の疵検出部が疵候補点を抽出するための閾値は、前記被検査体の移動速度によらず一定であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記第2の疵検出部は、前記バッファから読み出された撮像信号の輝度情報を加算平均化する加算平均化手段を有し、
前記加算平均化された撮像信号から疵候補点を抽出することを特徴とする請求項6に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量算出部が算出した疵特徴量を用いて疵候補点が周期疵か否かを判定する周期疵判定部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記第2の疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量を算出する第2の特徴量算出部と、
前記第2の特徴量算出部が算出した疵特徴量を用いて疵の有無を判定する通常疵判定部を更に備えることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項10】
前記疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量および前記第2の疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量算出部により算出された疵特徴量を用いて、前記疵検出部により抽出された疵候補点が周期疵か否か、および前記第2の疵検出部により抽出された疵候補点が疵か否かを判定する疵総合判定部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項1】
移動する被検査体から反射された光を受光する一次元撮像素子と、
前記一次元撮像素子から一定周期で出力される撮像信号を一時記憶するバッファと、
前記被検査体の移動距離を検出する位置検出器と、
前記位置検出器によって検出された前記被検査体の移動距離が所定間隔に達した時点で、前記バッファに一時記憶されている最新の撮像信号を読み出す制御を行う画像取り込み制御部と、
前記バッファから読み出された撮像信号から前記被検査体の表面の疵候補点を検出する疵検出部と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記所定間隔は、前記一定周期の間に前記被検査体が移動する距離よりも小さい値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記バッファへの撮像信号の書き込みを制御するカメラ制御部を更に備え、
前記カメラ制御部と前記画像取り込み制御部とは、それぞれ独立したタイミングで制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記バッファは、デュアルポートメモリであり、一方のポートから前記一定周期で撮像信号が書き込まれ、他方のポートから前記画像取り込み制御部に従うタイミングで撮像信号が読み出されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記疵検出部は、疵候補点を抽出するための閾値を前記被検査体の移動速度に応じて演算する閾値演算手段と、
前記バッファから読み出された撮像信号から得られる被検査体の輝度と、前記閾値演算手段により演算された閾値とを比較して疵候補点を抽出する二値化手段とを備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記撮像信号から前記被検査体の表面の疵候補点を検出する第2の疵検出部を更に備え、
前記第2の疵検出部が疵候補点を抽出するための閾値は、前記被検査体の移動速度によらず一定であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記第2の疵検出部は、前記バッファから読み出された撮像信号の輝度情報を加算平均化する加算平均化手段を有し、
前記加算平均化された撮像信号から疵候補点を抽出することを特徴とする請求項6に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量算出部が算出した疵特徴量を用いて疵候補点が周期疵か否かを判定する周期疵判定部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記第2の疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量を算出する第2の特徴量算出部と、
前記第2の特徴量算出部が算出した疵特徴量を用いて疵の有無を判定する通常疵判定部を更に備えることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の表面検査装置。
【請求項10】
前記疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量および前記第2の疵検出部により抽出された疵候補点の疵特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量算出部により算出された疵特徴量を用いて、前記疵検出部により抽出された疵候補点が周期疵か否か、および前記第2の疵検出部により抽出された疵候補点が疵か否かを判定する疵総合判定部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の表面検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【公開番号】特開2012−127941(P2012−127941A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241297(P2011−241297)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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