説明

表面欠陥検査方法及びその装置

【課題】群発すると問題となる微小欠陥について、顧客側の要求品質に応じた格付けをすることを可能にした表面欠陥検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】被検査体の表面を検査し、その検査信号から欠陥判定のための特徴量を検出し、該特徴量から欠陥の種別及び程度を判定する表面欠陥検査方法において、欠陥の種別及び程度に基づいて被検査体を単位面積毎に分割して形成される各領域の欠陥数を計算する工程と、欠陥数と欠陥数閾値とを比較して等級を判定し、各単位面積領域の代表欠陥及び代表等級を決定するとともに、代表等級が被検査体に混入する群発欠陥の欠陥混入率を演算する工程と、演算結果と予め設定された欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、群発欠陥による被検査体の格付けを行う工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送される帯状の被検査体の表面欠陥を検査する表面欠陥検査方法及びその装置に関し、特に、鋼板やアルミニウム板等の金属帯やフィルム等の被検査体の格付けに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の被検査体の格付けには、例えば、欠陥の種別及び程度に基づいて、被検査体を単位長さ毎に分割して形成される各領域の代表欠陥を決定し、該代表欠陥が被検査体に混入する割合を演算し、前記演算結果と予め設定された許容範囲から被検査体の合否判定を行うことにより被検査体の格付けを行うようにした方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−242906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の被検査体の格付けでは、欠陥の種別及び程度に基づいて、被検査体を単位長さ毎に分割して形成される各領域の代表欠陥を決定し、代表欠陥が被検査体に混入する割合を演算し、前記演算結果と予め設定された許容範囲から被検査体の合否判定を行うことにより被検査体の格付けを行っている。この方法は、単発で問題となる欠陥について合否を判定する方法としては有効である。しかし、近年、顧客の鋼板表面品質への要求レベルが厳しくなっており、従来は問題にならなかったレベルの微小な欠陥(Φ0.2〜0.5mm程度)が客先で問題となるケースが増えてきている。微小欠陥は、単発では問題にはならないが、群発すると問題となるレベルのものであり、従来の合否の判定方法では微小欠陥の合否判定はできないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を考慮したものであり、群発すると問題となる微小欠陥について、顧客側の要求品質に応じた格付けをすることを可能にした表面欠陥検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表面欠陥検査方法は、被検査体の表面を検査し、その検査信号から欠陥判定のための特徴量を検出し、該特徴量から欠陥の種別及び程度を判定する表面欠陥検査方法において、前記欠陥の種別及び程度に基づいて被検査体を単位面積毎に分割して形成される各領域の欠陥数を計算する工程と、前記欠陥数と欠陥数閾値とを比較して等級を判定し、各単位面積領域の代表欠陥及び代表等級を決定するとともに、前記代表等級が被検査体に混入する群発欠陥の欠陥混入率を演算する工程と、前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、群発欠陥による被検査体の格付けを行う工程とを備える。
また、本発明に係る表面欠陥検査方法は、前記各単位面積領域の欠陥数を計算する工程においては、前記欠陥の種別又は程度に応じた重み係数を予め設定しておき、各領域の欠陥数を重み付き欠陥数として求める。
また、本発明に係る表面欠陥検査方法は、前記欠陥の種別及び程度に基づいて、被検査体を単位長さ毎に分割して形成される各領域の代表欠陥を決定する工程と、該代表欠陥が被検査体に混入する単発欠陥の欠陥混入率を演算する工程と、前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、単発欠陥による被検査体の格付けを行う工程とを備える。
また、本発明に係る表面欠陥検査方法は、前記単発欠陥による被検査体の格付けを行って合格と判定されたものについて、前記群発欠陥による被検査体の格付けを行い、又は前記群発欠陥による被検査体の格付けを行うまでの一連の処理を行う。
【0007】
本発明に係る表面欠陥検査装置は、被検査体の表面を検査し、その検査信号から欠陥判定のための特徴量を検出し、該特徴量から欠陥の種別及び程度を判定する表面欠陥検査装置において、 被検査体の格付けを行う判定手段を備え、 前記判定手段は、前記欠陥の種別及び程度に基づいて被検査体を単位面積毎に分割して形成される各領域の欠陥数を計算する処理と、前記欠陥数と欠陥数閾値とを比較して等級を判定し、各単位面積領域の代表欠陥及び代表等級を決定するとともに、前記代表等級が被検査体に混入する群発欠陥の欠陥混入率を演算する処理と、前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、群発欠陥による被検査体の格付けを行う処理とを行うものである。
また、本発明に係る表面欠陥検査装置において、前記判定手段は、前記各単位面積領域の欠陥数を計算する処理において、前記欠陥の種別又は程度に応じた重み係数を予め設定しておき、各領域の欠陥数を重み付き欠陥数として求める。
また、本発明に係る表面欠陥検査装置において、前記判定手段は、前記欠陥の種別及び程度に基づいて、被検査体を単位長さ毎に分割して形成される各領域の代表欠陥を決定する処理と、該代表欠陥が被検査体に混入する単発欠陥の欠陥混入率を演算する処理と、前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、単発欠陥による被検査体の格付けを行う処理とを備えたものである。
また、本発明に係る表面欠陥検査装置において、前記判定手段は、前記単発欠陥による被検査体の格付けを行って合格と判定されたものについて、前記群発欠陥による被検査体の格付けを行い、又は前記群発欠陥による被検査体の格付けを行うまでの一連の処理を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単発では問題にはならないが、群発すると問題となる微小欠陥については、上記の群発欠陥による被検査体の格付けを行うことにより、顧客側の要求品質に応じたコイルを製造、出荷することができるとともに製造コストを下げることができる。
また、本発明によれば、上記の群発欠陥による被検査体の格付けに加えて、被検査体を単位長さ毎に評価する方法(単発欠陥による被検査体の格付け)も併せて行うようにしたので、検査可能な欠陥の大きさの範囲が拡大し、微小欠陥から大きな欠陥まで広範囲に検査が可能になり、検査漏れがなく高精度な欠陥検査が可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る表面欠陥検査装置の概略構成図。
【図2】図1の判定部の処理過程を示したフローチャート。
【図3】欠陥混入率の計算単位(長さ)の説明図。
【図4】欠陥混入率の計算単位(面積)の説明図。
【図5】代表欠陥及び代表等級の決定方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る表面欠陥検査装置の概略構成を示す図である。
図1に示されるように、鋼板やアルミニウム等の比較的厚さが薄い被検査体10の表面側及び裏面側に、それぞれ対向して画像入力部11a,11bが設置されている。画像入力部11a,11bは、CCDカメラやフォトマル(光電子増倍管)等の画像入力手段と、画像入力手段に被検査体表面からの光を導くためのレンズ、ミラーや光学的な補正を行うためのフィルタから構成されている。画像入力部11a,11bには画像処理部12a,12bがそれぞれ接続されている。画像処理部12a,12bは、画像入力部11a,11bからの電気信号を増幅する増幅器、電気的ノイズをカットするフィルタ、画像入力部からのアナログ出力をデジタル信号に変換するA/D変換器などの入力手段、入力された信号に対して地合いの影響を除くためのシェーディング補正など各種補正処理や空間フィルタなどの前処理部分、及び得られた画像から2値以上にクラス分けするn値化や所定のしきい値により欠陥(疵)候補を抽出する処理部から構成されている。
【0011】
画像処理部12a,12bには特徴量演算部13a,13bがそれぞれ接続されている。特徴量演算部13a,13bは、画像処理部12a,12bで得られた欠陥候補の長さや幅、面積、被検査体基準線から長手方向の距離、被検査体基準端部からの幅方向の距離などの特徴量を演算する。特徴量演算部13a,13bには記憶部16が接続されている。記憶部16は、欠陥候補の長さや幅、面積、被検査体基準線から長手方向の距離、被検査体基準端部からの幅方向の距離等の特徴量等を記憶する。欠陥種別判定部14は、欠陥の特徴量から、所定のアルゴリズムにしたがって欠陥種別を判定する。また、この欠陥種別判定部14は、欠陥程度判定部15に接続されており、欠陥程度判定部15は、欠陥(疵)の特徴量、及び欠陥種別判定部14で判定された欠陥種別から、欠陥の程度を判定する。また、欠陥種別判定部14及び欠陥程度判定部15には判定部17が接続されている。欠陥種別判定部14及び欠陥程度判定部15により得られた欠陥種別及び欠陥程度についてのデータは、記憶部16に格納される。
【0012】
判定部17は、記憶部16に格納されたデータに基づいて次に述べるように、
(1)表、裏、両面欠陥混入率、
(2)欠陥程度別欠陥混入率、
(3)欠陥発生要因別欠陥混入率、及び
(4)組み合わせ欠陥混入率をそれぞれ求めて、
(5)コイル格付けを行う。
判定部17には結果出力部18が接続されており、結果出力部18は判定された結果をCRTなどのモニタ、プリンタ、ランプ、ブザーなどのアナンシエータに出力する。
【0013】
図2は、上記の判定部17の処理過程を示したフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて、単発欠陥(単発でも問題となる欠陥)及び群発欠陥(単発では問題にならないが、群発すると問題になる微小欠陥)を判定する場合についての処理を説明する。ここで、単発欠陥の大きさは0.5〜1.0mmに定める閾値以上、微小欠陥の大きさは0.5〜1.0mmに定める閾値未満とし、その閾値は被検査体に要求される品質レベルにより調整できるものとする。また、群発欠陥は、微小欠陥が単位面積内に2個以上ある場合に、それらの微小欠陥の集まりを総称して群発欠陥と呼ぶ。
【0014】
まず、単発欠陥の判定について説明する。
(1A)単発欠陥の欠陥混入率
図3に示されるように、単位長さをn、コイル長さをLとすると、欠陥混入率を以下のようにして演算する。
<1>単発欠陥を抽出する(S11)。
まず、コイルの欠陥情報を単位長さで分割する。なお、1つの欠陥が単位長さで分割した2つの領域に跨る場合には、例えば以下の何れかとして扱う。
(a)両方の領域に欠陥がある。
(b)どちらか一方(例えば欠陥の長さの長い方が存在する領域)のみに欠陥がある。また、この(b)の場合でも、3領域以上に跨る非常に長い欠陥がある場合は例外的に全ての領域に欠陥があるとしてもよい。何れにしても長い欠陥(疵)の場合には処理は特に限定されない。
【0015】
<2>各単位長さごとに代表欠陥を決定する(S12)。
代表欠陥は最も欠陥の程度の悪いものとする。また同じ程度の欠陥が複数ある場合は予め決められた欠陥の優先順にしたがい、最も優先度の高いものとする。これは、例えば、「欠陥種:ヘゲ、程度:C」、「欠陥種:スリキズ、程度:C」、及び「欠陥種:押し疵、程度:C」が検出された場合には、予め、欠陥種優先度:(高)ヘゲ→スリキズ→押し疵(低)と決めておいて、代表欠陥を「欠陥種:ヘゲ、程度:C」と決定する。この場合には、欠陥混入率には残りの2つの欠陥の存在はなかったことになる。なお、上記の程度は後述の表1を参照されたい。
【0016】
<3>ここで、例えば代表欠陥と判定した部分がコイル全長内にm個あるとすると、
欠陥混入率=(m×n/L)×100(%)
と定義する(S13)。
なお、この欠陥混入率については、表、裏、両面欠陥混入率、欠陥程度別欠陥混入率、欠陥発生要因別欠陥混入率、さらにはこれらの組み合わせ欠陥混入率についてそれぞれ求める。
【0017】
(2A)表、裏、両面欠陥混入率(単発欠陥)
表面、裏面それぞれの代表欠陥による欠陥混入率をそれぞれ表面欠陥混入率、裏面欠陥混入率とする。また、同じ単位長さにおける表裏それぞれの代表欠陥を比較し、さらに両面における代表欠陥を上記の<1>及び<2>と同様に決定して、これにより欠陥混入率を演算したものを両面欠陥混入率とする。これは、表面、裏面を別々にカウントするのでなく、一体物としてカウントすることを意味しており、例えば、表側に、「欠陥種:ヘゲ、程度:C」と「欠陥種:スリキズ、程度:B」、裏面に「欠陥種:押し疵、程度:C」がある場合は、表側の「欠陥種:ヘゲ、程度:C」を表裏の代表欠陥とする。なお、表裏の代表欠陥が同一欠陥種、等級であった場合には、どちらかの面の欠陥を代表欠陥としても同じ結果になるが、例えば表面側の欠陥を優先(採用)するように設定しておく。
【0018】
(3A)欠陥程度別欠陥混入率(単発欠陥)
欠陥の程度を複数のランクに分けたとき、それぞれの欠陥程度別の欠陥混入率を演算する。また、或る欠陥程度より悪い程度のものを全て累積した欠陥混入率を演算する。これは、例えば、次の表1に示されるように、程度が、大分類A〜Eの5ランクに設定(Eほど悪い)された場合には、それぞれの程度の欠陥混入率x1〜x5を算出する(欠陥程度別の欠陥混入率)。x1〜x5の累積は最大で100%である。例えば、C〜Eを管理項目とした場合には、x3〜x5を累積する(累積した欠陥混入率)。
【0019】
【表1】

【0020】
(4A)欠陥発生要因別欠陥混入率(単発欠陥)
欠陥発生の要因別、例えば上工程以前を発生場所とする原板性欠陥、自ラインで発生した自ライン性欠陥等に予め分類しておき、各分類ごとに欠陥混入率を演算する。例えば、表面欠陥計で検出された欠陥種によって、4種類に分類して、各欠陥種の程度毎に欠陥混入率を例えば次の表2のように整理する。ここで、欠陥種と欠陥原因とは、例えば、ヘゲ、スリバー→製鋼起因、スケール→熱延起因、ドロス、不めっき→めっき起因、スリキズ、押し疵→通板トラブル、のような関係がある。
【0021】
【表2】

【0022】
(5A)組み合わせ欠陥混入率(単発欠陥)
以上述べた各欠陥混入率単独又は組み合わせた欠陥混入率を演算する。
例えば表2に示されるケースにおいて、製鋼起因欠陥、熱延起因欠陥、めっき起因欠陥、通板トラブル欠陥のそれぞれにおいて、程度C〜Eの欠陥混入率の累積値を演算したり、製鋼起因欠陥と熱延起因欠陥とを組み合わせた欠陥混入率の累積を演算する。なお、欠陥種類の組み合わせは、必要な情報にあわせて適宜設定される。
【0023】
(6A)コイル格付け(単発欠陥:S14、S15)
顧客要求仕様別に、各欠陥混入率の許容範囲を予め決めておき、以上述べた各欠陥混入率と比較することにより、コイル格付けを行い(S14)、合格か不合格か格付けを決定する(S15)。
例えば
<1>顧客(又は用途)αの程度C以上(C〜Eを含む悪いもの)欠陥混入率の許容範囲1%以下→ 格付けA級品
<2>顧客(又は用途)βの程度C以上欠陥混入率の許容範囲2%以下
→ 格付けB級品
<3>顧客(又は用途)γの程度C以上欠陥混入率の許容範囲5%以下
→ 格付けC級品
という条件があった場合には、混入率が1.5%の場合には、格付けがB級品であり、顧客αには販売不可となるが、顧客β、γには販売ができる。また、混入率が3%の場合には格付けがC級品であり、顧客γにしか販売できない。混入率が7%の場合には、格付けがC級品にもならないので、格付けがスクラップとなる。
【0024】
次に、群発欠陥の格付けについて説明する。
(1B)群発欠陥の欠陥混入率
図4に示されるように、単位面積S(S=n×w 単位長さをn、単位幅wとする)、コイル長さをL、コイル幅Wとすると、欠陥混入率を以下のようにして演算する。
<1>微小欠陥を抽出する(S21)。
まず、コイルの欠陥情報を単位面積で分割する。そして、各単位面積ごとに欠陥の中心位置がある微小欠陥データを抽出する。
【0025】
<2>各単位面積ごとに、さらに微小欠陥種類ごとに重み付き欠陥数を計算する(S22)。
個別の欠陥数N個、重み係数をKとすると
【数1】

【0026】
その具体例を例えば次の表3に示す。
【表3】

【0027】
<3>重み付き欠陥数と欠陥数閾値を比較し、等級を判定する(S23)。
【表4】

【0028】
<4>代表欠陥及び代表等級を決定する。
各単位面積ごとに微小欠陥種類別の等級を比較し、等級値の大きい欠陥種類を代表欠陥及び代表等級とする。
【0029】
図5は、代表欠陥及び代表等級の決定方法の説明図である。
同図に示されるように、ここでは、微小欠陥種類A〜Dのそれぞれについて、単位面積位置で等級が特定されているものとする。このような状態で、微小欠陥種類A〜Dについて同一単位面積位置で等級を比較し、等級値の大きい(程度の悪い)欠陥を代表欠陥、代表等級とする。例えば単位面積位置aに着目すると、微小欠陥Aでは等級5、微小欠陥Bでは等級1、微小欠陥Cでは等級2、微小欠陥Dでは等級3となっている。そこで、微小欠陥Aが等級5であり、等級が1番大きいので、この単位面積位置aにおける代表欠陥及び代表等級は、代表欠陥A・代表等級5となる。他の単位面積位置においても同様にして代表欠陥及び代表等級が求められ、図5の下に示されるように、コイル全体の代表欠陥及び代表等級が求められる。
【0030】
<5>ここで、例えば代表等級nと判定した部分(単位面積)がm個あるとすると、代表等級nの欠陥混入率を次式により求める(S24)。なお、この欠陥混入率については、表、裏、両面欠陥混入率、欠陥程度別欠陥混入率及び欠陥発生要因別欠陥混入率についてそれぞれ求める。
【数2】

【0031】
(2B)表、裏、両面欠陥混入率(群発欠陥)
表面、裏面それぞれの代表欠陥による欠陥混入率をそれぞれ表面欠陥混入率、裏面欠陥混入率とする。また、同じ単位面積位置における表裏それぞれの代表等級を比較し、さらに両面における代表等級を上記の<1>及び<2>と同様に決定して、これにより欠陥混入率を演算したものを両面欠陥混入率とする。これは、表面、裏面を別々にカウントするのでなく、一体物としてカウントすることを意味しており、例えば、表側が、「等級5」、裏面が 「等級4」がある場合には、表側の「等級5」を表裏の代表等級とする。なお、表裏の代表欠陥が同一欠陥種、等級であった場合には、どちらかの面の欠陥を代表欠陥としても同じ結果になる。
【0032】
(3B)欠陥程度別欠陥混入率(群発欠陥)
欠陥の程度を複数のランクに分けたとき、それぞれの欠陥程度別の欠陥混入率を演算する。また、或る欠陥程度より悪い程度のものを全て累積した欠陥混入率を演算する。これは、例えば、次の表5に示されるように、程度が、等級1〜5の5ランクに設定(値が大きいほど悪い)された場合には、それぞれの程度の欠陥混入率y1〜y5を算出する(欠陥程度別の欠陥混入率)。y1〜y5の累積は最大で100%である。例えば、等級3〜等級5を管理項目とした場合には、y3〜y5を累積する(累積した欠陥混入率)。
【0033】
【表5】

【0034】
(6B)コイル格付け(群発欠陥:S25、S26)
例えば、
<1>顧客(又は用途)αの程度等級3以上(等級3〜5を含む悪いもの)欠陥混入率の許容範囲1%以下 → 格付けA級品
<2>顧客(又は用途)βの程度等級3以上欠陥混入率の許容範囲2%以下
→ 格付けB級品
<3>顧客(又は用途)γの程度等級3以上欠陥混入率の許容範囲5%以下
→ 格付けC級品
という条件があった場合には、欠陥混入率が1.5%の場合には、格付けがB級品であり、顧客αには販売不可となるが、顧客β、γには販売ができる。また、欠陥混入率が3%の場合には格付けがC級品であり、顧客γにしか販売できない。欠陥混入率が7%の場合には、格付けがC級品にもならないので、格付けがスクラップとなる。
【0035】
以上のように本実施の形態によれば、単発でも問題となる欠陥は、被検査体を単位長さ毎に評価する方法(単発欠陥による被検査体の格付け、S11〜S15)を用いるが、単発では問題にはならないが、群発すると問題となる微小欠陥については、上記の群発欠陥による被検査体の格付けを行うことにより(S21〜S26)、顧客側の要求品質に応じたコイルを製造、出荷することができるとともに製造コストを下げることができる。
【0036】
なお、図2のフローチャートにおいては、単発欠陥の格付け判定までの処理(S11〜S14)と、群発欠陥の格付け判定までの処理(S21〜S25)とが平行して行われる例について図示されている。しかし、本発明においては、図2の処理S11〜S15の処理をして、単発欠陥の格付け判定結果が合格であった場合に、上記の処理S21〜26を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
10…被検査体、11…画像入力部、12…画像処理部、13…特徴量演算部、14…欠陥種別判定部、15…欠陥程度判定部、16…記憶部、17…判定部、18…結果出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の表面を検査し、その検査信号から欠陥判定のための特徴量を検出し、該特徴量から欠陥の種別及び程度を判定する表面欠陥検査方法において、
前記欠陥の種別及び程度に基づいて被検査体を単位面積毎に分割して形成される各領域の欠陥数を計算する工程と、
前記欠陥数と欠陥数閾値とを比較して等級を判定し、各単位面積領域の代表欠陥及び代表等級を決定するとともに、前記代表等級が被検査体に混入する群発欠陥の欠陥混入率を演算する工程と、
前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、群発欠陥による被検査体の格付けを行う工程と
を備えたことを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項2】
前記各単位面積領域の欠陥数を計算する工程においては、前記欠陥の種別又は程度に応じた重み係数を予め設定しておき、各領域の欠陥数を重み付き欠陥数として求めることを特徴とする請求項1に記載の表面欠陥検査方法。
【請求項3】
前記欠陥の種別及び程度に基づいて、被検査体を単位長さ毎に分割して形成される各領域の代表欠陥を決定する工程と、
該代表欠陥が被検査体に混入する単発欠陥の欠陥混入率を演算する工程と、
前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、単発欠陥による被検査体の格付けを行う工程と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面欠陥検査方法。
【請求項4】
前記単発欠陥による被検査体の格付けを行って合格と判定されたものについて、前記群発欠陥による被検査体の格付けを行い、又は前記群発欠陥による被検査体の格付けを行うまでの一連の処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の表面欠陥検査方法。
【請求項5】
被検査体の表面を検査し、その検査信号から欠陥判定のための特徴量を検出し、該特徴量から欠陥の種別及び程度を判定する表面欠陥検査装置において、
被検査体の格付けを行う判定手段を備え、
前記判定手段は、
前記欠陥の種別及び程度に基づいて被検査体を単位面積毎に分割して形成される各領域の欠陥数を計算する処理と、
前記欠陥数と欠陥数閾値とを比較して等級を判定し、各単位面積領域の代表欠陥及び代表等級を決定するとともに、前記代表等級が被検査体に混入する群発欠陥の欠陥混入率を演算する処理と、
前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、群発欠陥による被検査体の格付けを行う処理と
を行うことを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記各単位面積領域の欠陥数を計算する処理において、前記欠陥の種別又は程度に応じた重み係数を予め設定しておき、各領域の欠陥数を重み付き欠陥数として求めることを特徴とする請求項5に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項7】
前記判定手段は、
前記欠陥の種別及び程度に基づいて、被検査体を単位長さ毎に分割して形成される各領域の代表欠陥を決定する処理と、
該代表欠陥が被検査体に混入する単発欠陥の欠陥混入率を演算する処理と、
前記演算結果と予め設定された前記欠陥混入率の許容範囲とに基づいて被検査体の合否判定を行うことにより、単発欠陥による被検査体の格付けを行う処理と
を備えたことを特徴とする請求項5又は6に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項8】
前記判定手段は、
前記単発欠陥による被検査体の格付けを行って合格と判定されたものについて、前記群発欠陥による被検査体の格付けを行い、又は前記群発欠陥による被検査体の格付けを行うまでの一連の処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の表面欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−73119(P2012−73119A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218202(P2010−218202)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】