説明

表面特性を改善するための塗料配合物

【課題】プラスチック及び天然皮革並びに人工皮革等を被覆するのに好適な透明度の高いクリヤーコーティング剤を提供する。
【解決手段】ポリオルガノシロキサン及び/又は変性されたポリオルガノシロキサン等で被覆された少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物において、60゜反射率計値が3未満の場合、少なくとも140のシアーズ数Mを有することを特徴とする、塗料配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された応用技術的特性を有する、表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物並びに該塗料配合物の使用に関する。
【0002】
クリヤーコートは、幅広い範囲で工業的に種々の表面、例えば木材、プラスチック又は金属の表面を被覆するために使用されている(Ullmann, 第4版, 第15巻, 第589頁以下)。塗装された物品の表面は通常良好に認識可能であるべきであるため、そのような塗料の透明度は該塗料の重要な特性である。被覆すべき表面はしばしば高度の光沢を有する。従って、しばしば、表面を艶消しに見せるための塗料が必要とされる。これは、クリヤーコート中に混入される艶消し剤の添加により達成することができる。
【0003】
前記の艶消し剤は天然の材料から成るか、又は合成により製造される。前記の艶消し剤は微粒子の形(約1〜30μm)で存在し、理想的には以下の特性を有する:高い細孔容積、狭い粒子分布、それぞれの適用に適合された適当な粒径及び狭い細孔分布。通常、艶消し剤として、シリカ(沈降シリカ及び熱分解法シリカをベースとして製造されたシリカ)及び/又はシリカゲルが使用される。
【0004】
艶消し剤を使用する場合、塗料の粒径及び屈折率のみならず、艶消し剤の粒径及び屈折率によってもクリヤーコートの透明度が妨げられるという問題が生じ得る。クリヤーコートを光沢のある黒色の下地に施与する場合は殊に顕著である。透明度が劣悪である場合、観察者には黒色の面が灰色に見えてしまい、これは適用において望ましくない。
【0005】
従って、前記の先行技術から出発して、本発明の課題は、上記の欠点が少なくとも部分的に改められている新規の塗料配合物を提供するという課題であった。殊に、本発明による塗料配合物は、改善された応用技術的特性、例えば極めて良好な透明度を有するはずである。
【0006】
驚異的にも、前記の課題は、以下の記載並びに請求項及び実施例において詳細に定義された本発明による塗料配合物により解決されることが見出された。
【0007】
従って本発明の対象は、60゜反射率計値が3未満の場合、少なくとも140のシアーズ数Mを有することを特徴とする、少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物である。
【0008】
更に、本発明の対象は、有利に自動車の内装のために使用される殊にプラスチック及び天然皮革及び人工皮革を被覆するための、本発明による塗料配合物の使用である。前記塗料配合物は殊に有利にクリヤーコートとして使用される。
【0009】
本発明による塗料配合物を用いて、透明度が二酸化ケイ素により不利な影響を受けないか又は少なくとも極めてわずかに不利な影響を受けるに過ぎない、二酸化ケイ素を含有する塗料配合物を製造することに成功する。
【0010】
卓越した透明度値の他に、本発明による塗料配合物は以下の点:
・良好な浮動挙動、
・高い艶消し効果、及び
・塗料表面の良好な耐引掻性
が顕著である。従って、本発明による塗料配合物は、自動車の内装のために使用されるプラスチックの被覆のために抜群に適している。
【0011】
本発明による塗料配合物のもう1つの驚異的な効果は、前記塗料配合物が改善されたソフトフィール(Soft-Feel)効果を示すことである。即ち、本発明による塗料で被覆された表面は、手触りが好ましく柔らかであり、かつ自然である。前記の特性により、本発明による塗料配合物は、殊に自動車の居室の装備又は内装の範囲内での適用の際に、公知の塗料配合物と比較して大きな利点を有する。
【0012】
本発明を以下に詳細に記載するが、その際、まず若干の重要な概念を定義する。
【0013】
本発明の意味における塗料配合物とは、少なくとも1種のポリマー成分及び/又は複数の物理的又は化学的架橋性ポリマー成分から成る混合物、少なくとも1種の溶剤及び少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物であると解釈すべきである。本発明による塗料配合物は、有利に1成分塗料、2成分塗料及びUV塗料、殊にポリウレタン塗料であり、極めて殊に有利にクリヤーコート及び艶消し塗料配合物である。
【0014】
本発明の意味におけるクリヤーコートは、下地の上に施与され、保護特性、装飾特性又は特定の技術的特性を有する透明な被覆を形成する被覆物質である。被覆系において、クリヤーコートは最上層として、その下にある層を機械的損傷及び気候の影響から保護する。クリヤーコートは顔料を含有しない。
【0015】
殊にクリヤーコートの場合、塗料の透明度、即ち、クリヤーコートで塗装された材料の表面を、その乾燥後に該クリヤーコートを通してどの程度明瞭かつ歪曲なく識別することができるかという光学的印象は、塗料の等級のための1つの尺度である。クリヤーコートを光沢のある黒色の下地に施与する場合、この塗料の透明度のための尺度として、シアーズ数Myを考慮することができる。
【0016】
ソフトフィール効果を有する塗料は、その表面の固有の触覚特性が顕著である。例えば、そのような塗料の場合、手で該塗料の上をこすった時に、好ましい手触り感、ゴムの様な効果を達成することが出来る。
【0017】
本発明の意味における二酸化ケイ素は、沈降シリカ、熱分解法シリカ、シリカゲル、変性された熱分解法シリカ並びに前記二酸化ケイ素の混合物から成る群から選択されている。二酸化ケイ素の表面を少なくとも1種のポリマーで変性させた場合、これを表面変性された二酸化ケイ素と呼称する。変性された熱分解法シリカ(熱分解法シリカから製造されたシリカ)とは、この場合、DE2414478に記載された熱分解法シリカをベースとして製造することができるシリカであると解釈される。
【0018】
表面変性とは、二酸化ケイ素粒子の表面への、有機成分の化学的及び/又は物理的な結合であると解釈すべきである。即ち、表面変性された二酸化ケイ素の場合、二酸化ケイ素粒子の少なくとも一部の表面の少なくとも一部が表面変性剤で被覆されている。
【0019】
本発明による塗料配合物は、0.5〜15質量%、有利に1〜10質量%の含分を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有し、かつ、60゜反射率計値が3未満の場合、少なくとも140、有利に少なくとも142、殊に有利に少なくとも144のシアーズ数Mを有することを特徴とする。シアーズ数Mは、250まで、有利に200まで、殊に有利に180まで、極めて殊に有利に165まで、殊に155までの値をとることができる。更に、本発明による塗料配合物は、以下の成分:
− ポリマー成分又は2種以上の物理的又は化学的架橋性ポリマー成分から成る混合物(バインダー及び硬化剤成分)5〜99.5質量%、有利に20〜80質量%、殊に35〜70質量%、及び/又は
− 溶剤として作用する低分子成分又はそのような低分子成分の混合物 0〜80質量%、有利に20〜70質量%、殊に30〜55質量%
を1種以上含有することができる。
【0020】
上記の成分の他に、本発明による塗料配合物は、更に通常塗料中で使用される他の助剤及び添加剤、例えば可塑剤、安定剤、相媒介剤(Phasenvermittler)、顔料、界面活性物質、乾燥剤、触媒、開始剤、感光剤、阻害剤、遮光剤及び保存剤を有してよい。上記の全ての有利な範囲を互いに独立して調節することができるが、その際、本発明による塗料配合物の特別な特性は、前記の全ての成分の組合せにより達成されることに留意しなければならない。殊に、使用される表面変性された二酸化ケイ素は、塗料配合物の特性に重大な影響を及ぼす。
【0021】
本発明による塗料配合物は、バインダーとして、塗料及び被覆技術において慣用の樹脂、例えば”Lackharze, Chemie, Eigenschaften und Anwendungen, Hrsg. D. Stoye, W. Freitag, Hanser Verlag, ミュンヘン, ウィーン 1996”に記載されている樹脂を有することができる。これにより、前記刊行物の内容は明確に本発明の明細書の内容に引用される。特に、(メタ)アクリル酸のポリマー及びコポリマー、及び、(メタ)アクリル酸と他のオレフィン性不飽和化合物、例えばスチレンとの他の官能基を有してよいエステルのポリマー及びコポリマー;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール及びエポキシ樹脂、並びに前記ポリマーの任意の混合物、並びにUllmann, 第3版, 第11巻, 第334頁以下に記載されているような重縮合により製造された脂肪酸変性”アルキド樹脂”を例示的に挙げることができる。これにより、前記刊行物の内容は明確に本発明の明細書の内容に引用される。
【0022】
有利に、ポリマー成分として、ヒドロキシル基含有有機化合物、例えばポリアクリレート−、ポリエステル−、ポリカプロラクトン−、ポリエーテル−、ポリカーボネート−、ポリウレタンポリオール及びヒドロキシ官能性エポキシ樹脂並びに前記ポリマーの任意の混合物が使用される。殊に有利なポリマー有機化合物として、水性又は溶剤含有ないし溶剤不含のポリアクリレート−及びポリエステルポリオール並びにその任意の混合物が使用される。
【0023】
適当なポリアクリレートポリオールは、特にヒドロキシル基を有するモノマーと他のオレフィン性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン−、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエステル、マレイン酸−及びフマル酸−モノ−及び−ジアルキルエステル、α−オレフィン及び他の不飽和オリゴマー及びポリマーとのコポリマーである。
【0024】
殊に適当なポリアクリレートポリオールは、ゲル透過クロマトグラフィー(標準ポリスチレン)を用いて測定可能な2000〜100000g/モル、有利に2500〜50000g/モル、殊に有利に3100〜40000g/モルの平均重量平均分子量、−50℃〜100℃、有利に−40℃〜90℃、殊に有利に−30℃〜80℃のガラス転移温度TG、<30mgKOH/g、有利に<25mgKOH/gの酸価、並びに、0.5〜14.0質量%、有利に0.5〜10質量%、極めて殊に有利に1.0〜8.0質量%のヒドロキシル基含分を有し、かつ、以下:
a)少なくとも1種の不飽和芳香族モノマー、例えばスチレン、メチルスチレン又はビニルトルエン 0〜70質量%、有利に5〜70質量%、
b)(シクロ)アルキル基中に1〜18個の炭素原子を有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸の少なくとも1種の(環式)脂肪族エステル 0〜70質量%、有利に5〜70質量%、
c)ヒドロキシアルキル基中に2〜4個の炭素原子を有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸の少なくとも1つのヒドロキシアルキルエステル、及び/又はモノエポキシドとアクリル酸及び/又はメタクリル酸との付加生成物 4〜95質量%、有利に10〜60質量%
d)3〜7個の炭素原子を有する少なくとも1種のモノオレフィン性不飽和モノ−又はジカルボン酸及び/又はアルコール基中に1〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種のマレイン酸−ないしフマル酸半エステル 0〜10質量%、有利に0.1〜5質量%、及び
e)他の共重合可能な(多重)オレフィン性不飽和モノマー及び/又はポリマー化合物 0〜30質量%、有利に0〜20質量%
から成っていてよい。
【0025】
前記のヒドロキシ官能性ポリオールは、1成分塗料系で使用することもできるし、塗料及び被覆技術において慣用の硬化剤と一緒の2成分塗料系で使用することもできる。このための硬化剤として、例えば”Lackharze, Chemie, Eigenschaften und Anwendungen, Hrsg. D. Stoye, W. Freitag, Hanser Verlag, ミュンヘン, ウィーン 1996”に記載されているような、例えばポリイソシアネート、又は開裂剤、例えばメチルエチルケトキシム、カプロラクタム、マロン酸エステル、トリアゾール又は2,5−ジメチルピラゾールでブロックされたポリイソシアネート又は(部分的に)エーテル化されたメラミンホルムアルデヒド樹脂が該当する。これにより、前記刊行物の内容は明確に本発明の明細書の内容に引用される。
【0026】
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、テトラ−メチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−及び2,3,3−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(THDI)、1,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−1−メチル−1−イソシアナトシクロヘキサン(IMCI)、a,a,a’,a’−テトラメチル−m−又は−p−キシリレン−ジイソシアネート(TMXDI)、1,4−及び1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート(H6−XDI)及び/又はその混合物、並びに場合により、例えばDE4136618に記載されているような水性バインダーのためのその親水化変形をベースとするポリイソシアネートと一緒の2成分系中での水性又は溶剤含有バインダーの適用は有利である。これにより、DE4136618の内容は本発明の明細書の内容に明確に引用される。
【0027】
しかしながら、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンをベースとするポリイソシアネートは殊に有利である。
【0028】
上記のポリイソシアネートは、硬化剤として、卓越した耐化学薬品性及び高い機械的安定性を有する価値の高いポリウレタン塗料中で使用される。
【0029】
溶剤として、本発明による塗料配合物は、慣用の溶剤、例えば芳香族、脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式炭化水素、部分的か又は完全にハロゲン化された芳香族、脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式炭化水素、アルコール、例えばメタノール、エタノール、i−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、エステル、例えばエチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、エーテルエステル、例えばメトキシプロピルアセテート又はブチルグリコールアセテート、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノン、強極性溶剤、例えばジメチルホルムアミド及び水並びにその混合物を有してよい。
【0030】
前記の溶剤を分散媒体として本発明による塗料配合物のために使用する場合、前記の溶剤に他の物質を添加することができる。この場合、後の更なる使用のためにも予定されている物質、又は、解凝集ないし解凝集された材料の安定性を改善する物質、例えば分散樹脂又は分散添加剤は有利である。
【0031】
オリゴマー又はポリマーの有機化合物、例えば上記の塗料及び被覆技術において慣用の樹脂及びバインダーは有利である。
【0032】
多成分系中で使用される樹脂組合せ物、例えば硬化剤として作用するアミン樹脂及びメラミン樹脂、ポリイソシアネート、芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートといわゆる開裂剤とから構成されている、ブロックトポリイソシアネートと呼称される付加物、例えばメチルエチルケトキシム、カプロラクタム、マロン酸エステル又はトリアゾール及び2,5−ジメチルピラゾールも、割合に応じて分散媒体中で併用することができる。水を分散媒体の本質的成分として使用する処理方式のためには、添加物質として、殊に水溶性又は水と相容性である化合物、例えば部分的か又は完全に鹸化されたポリビニルアセテート又は又は前記の化合物クラスの親水化された変形が適当である。
【0033】
分散媒体の製造のために該当する溶剤及び添加物質を、任意に互いに混合することができる。本発明による塗料配合物を、被覆の製造のために全ての慣用の硬化剤と混合することができる。
【0034】
他の成分として、本発明による塗料配合物は特定の表面変性された二酸化ケイ素を含有する。上記の二酸化ケイ素は、表面がポリマーで変性された、沈降シリカ、熱分解法シリカ、シリカゲル又は熱分解法シリカから製造されたシリカである。適当な表面変性されたシリカの選択は、塗料配合物の特性に決定的な影響を及ぼす。
【0035】
有利に、本発明による塗料配合物は、表面が少なくとも1種の熱可塑性エラストマー及び/又はポリオルガノシロキサン及び/又は変性されたポリオルガノシロキサンで変性された少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有する。二酸化ケイ素の表面変性のために、水性及び/又は溶剤含有分散液の形の熱可塑性エラストマーを使用することができる。
【0036】
有利な実施態様において、本発明による塗料配合物は、表面が少なくとも1種のポリシロキサン及び/又は変性されたポリシロキサンで変性された少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有し、その際、これは殊に有利に、DE102004012090に記載されているような表面変性された二酸化ケイ素であるか、もしくは、DE3627782に記載されているようなポリシロキサン及び/又は変性されたポリシロキサンである。これにより、上記の特許出願/特許の内容は本発明の明細書の内容に明確に引用される。
【0037】
もう1つの有利な実施態様において、本発明による塗料配合物は、表面が熱可塑性エラストマーで変性された少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有し、その際、熱可塑性エラストマーとして、末端エポキシ基を有する、殊に100000を上回る分子量を有するジメチルポリシロキサン−エラストマーが使用される。
【0038】
もう1つの有利な実施態様において、本発明による塗料配合物は、表面が少なくとも1種の熱可塑性エラストマーで変性された少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有し、その際、使用される熱可塑性エラストマーは、
(I)以下:
(A)25℃〜275℃の融点又はガラス転移温度を有するレオロジー安定ポリアミド樹脂;
(B)以下のものを含むシリコーンベース:
(B’)少なくとも30の可塑度及びその分子中に平均して少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン−ゴム100質量部、及び
(B’’)補強充填剤5〜200質量部、その際、シリコーンベースとポリアミド樹脂との質量比は35:65を上回って85:15までである;
(C)ポリアミド樹脂各100質量部に対して、以下から選択される相容性促進剤(Vertraeglichkeitsvermittler):
(i)800未満の分子量を有し、かつ分子中に、エチレン性不飽和基、エポキシ、無水物、シラノール、カルボキシル、オキサゾリン又は1〜20個の炭素原子を有するアルコキシから無関係に選択された少なくとも2個の基を含む付着促進剤0.1〜5質量部、
(ii)分子中に、エポキシ、無水物、シラノール、カルボキシル、アミン、オキサゾリン又は1〜20個の炭素原子を有するアルコキシから選択された少なくとも1個の基を有する、官能性ジオルガノポリシロキサン0.1〜10質量部、又は
(iii)少なくとも1個のジオルガノポリシロキサン−ブロックと、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリカーボネート又はポリアクリレートから選択された少なくとも1個のブロックとを含むコポリマー0.1〜10質量部
(D)分子中にケイ素に結合した水素基を平均して少なくとも2個有するオルガノヒドリドケイ素化合物;及び
(E)ヒドロシリル化触媒、
(但し、成分(D)及び(E)は、ジオルガノポリシロキサン(B’)の加硫に十分である量で存在する)
を混合し;その際、
(II)ジオルガノポリシロキサン(B’)を動力学的に加硫する
ことにより製造することができる。
【0039】
本発明は更に、上記の方法により製造される熱可塑性エラストマーに関する。
【0040】
極めて殊に有利に、本発明による塗料配合物は、上記の方法により製造された、表面が熱可塑性ポリマーで変性された、少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有し、その際、成分(A)〜(E)は以下の様に定義されている:
成分(A):
成分(A)は熱可塑性ポリアミド樹脂である。この一般的に「ナイロン」の概念で公知である樹脂は、ポリマー主鎖に沿ってアミド結合(即ち−C(O)−NH−)を含有する長鎖合成ポリマーである。本発明の目的のために、ポリアミド樹脂は、室温(即ち25℃)〜275℃の、融点(Schmp.)か、又はポリアミドが非晶質である場合にはガラス転移温度(Tg)を有する。より高い融点を有するポリアミド(例えばナイロン4/6)からTPSiV(=thermoplastic silicone vulcanizate)エラストマーの製造を試みたところ劣悪な物理的特性が生じ、その際、そのような生成物の引裂点伸びは、本発明により必要な引裂点伸びを25%下回る。更に、有利に、高められた温度で乾燥不活性ガスを樹脂小球又は樹脂粉末を介して導くことにより、ポリアミド樹脂を本発明の目的のために乾燥する。受容可能な特性と加工とが両立可能な乾燥等級は特定のポリアミドに依存し、かつそのそれぞれの値は製造者により推奨されているか又は単純な試験により決定することができる。一般に有利に、ポリアミド樹脂は高くても約0.1質量%の湿分を含有する。最後に、ポリアミドは、以下に記載するように、TPSiV−エラストマーの製造のために必要な混合条件下でもレオロジー安定でなければならない。前記の安定性は純粋な樹脂に関して適当な加工温度で評価され;通常相応するTPSiVの製造のために必要な時間(例えばタンク型混合機中で10〜30分)以内に溶融粘度(混合の際のトルク)が20%を上回って変化する場合、これは樹脂が本発明の範囲内にないことを示す。従って、例えば、融点が198℃である乾燥ナイロン−11−試験体を約15分間タンク型混合機中で窒素ガスフラッシュ下に210℃〜220℃で混合し、その際、認められたトルクは混合の際に約200%増加した。そのようなポリアミド樹脂は、本発明の方法のための適当な候補ではない。
【0041】
上記の制限とは異なり、樹脂(A)は、ポリマー鎖中に繰り返しのアミド単位を有する、高い分子量を有する、熱可塑性の結晶質又は非晶質の、固体のホモポリマー、コポリマー又はターポリマーであってよい。
【0042】
コポリマー系及びターポリマー系の場合、50モルパーセントを上回る繰り返し単位はアミド含有単位である。適当なポリアミドのための例は、ポリラクタム、例えばナイロン6、ポリエナントラクタム(ナイロン7)、ポリカプリルラクタム(ナイロン8)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等;アミノ酸のホモポリマー、例えばポリピロリジノン(ナイロン4);ジカルボン酸とジアミンとのコポリアミド、例えばナイロン6/6、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン6/9)、ポリヘキサメチレン−セバカミド(ナイロン6/10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6,1)、ポリヘキサメチレンドデカン酸(ナイロン6/12)等;芳香族及び部分的な芳香族ポリアミド;コポリマー、例えばカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドとのコポリマー(ナイロン6/6)又はターポリアミド(例えばナイロン6,6/6,6);ブロックコポリマー、例えばポリエーテル−ポリアミド;又はその混合物である。有利なポリアミド樹脂は、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6/12及びナイロン6/6である。
【0043】
シリコーンベース(B):
シリコーンベース(B)はジオルガノポリシロキサン−ゴム(B’)と補強充填剤(B’’)とからの一様な混合物である。
【0044】
この場合、ジオルガノポリシロキサン(B’)は、分子中に2〜20個の炭素原子を有する少なくとも2個のアルケニル基を有する、高稠性の(ゴム)ポリマー又はコポリマーである。アルケニル基のための例として、殊にビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル及びデセニルを挙げることができる。アルケニル官能基の位置は重大ではなく、分枝鎖の末端、分子の非末端の位置、又は双方の位置で結合していてよい。アルケニル基がビニル又はヘキセニルであり、前記基が0.001〜3質量%、有利に0.01〜1質量%の割合でジオルガノポリシロキサン−ゴム中に存在しているのが有利である。
【0045】
成分(B’)中の残りの(即ち非アルケニルの)ケイ素に結合した有機基は、無関係に、脂肪族不飽和性を含まない、炭化水素基又はハロゲン炭化水素基から選択される。前記基のための例として、殊に以下のものが挙げられる:1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル;シクロアルキル基、例えばシクロヘキシル及びシクロヘプチル;6〜12個の炭素原子を有するアリール基、例えばフェニル、トリル及びキシリル;7〜20個の炭素原子を有するアラルキル基、例えばベンジル及びフェネチル;及び1〜20個の炭素原子を有するハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル及びクロロメチル。
【0046】
当然のことながら、前記基は、ジオルガノポリシロキサン−ゴム(B’)が室温を下回るガラス転移温度(又は融点)を有し、従ってゴムがエラストマーであるように選択される。メチルは、成分(B’)中の、非不飽和の、ケイ素に結合した有機基の有利に少なくとも50モル%、有利に少なくとも90モル%を占める。
【0047】
従って、ポリジオルガノシロキサン(B’)はそのような有機基を含有するホモポリマー又はコポリマーであってよい。例は、特に以下のものを含むゴムである:ジメチルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位;ジメチルシロキシ単位及びジフェニルシロキシ単位;及びジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位及びフェニルメチルシロキシ単位。分子構造も重大ではなく;前記分子構造のための例として、直鎖及び部分的に分枝鎖の直鎖構造を挙げることができ、その際、直線状構造が有利である。
【0048】
オルガノポリシロキサン(B’)のための特定の例は、特に以下のものである:トリメチルシロキシ末端ブロックを有するジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサン−コポリマー;ジメチルヘキセニルシロキシ末端ブロックを有するジメチルシロキサン−メチルヘキセニルシロキサン−コポリマー;トリメチルシロキシ末端ブロックを有するジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−コポリマー;トリメチルシロキシ末端ブロックを有するメチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−コポリマー;ジメチルビニルシロキシ末端ブロックを有するジメチルポリシロキサン;ジメチルビニルシロキシ末端ブロックを有するジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−コポリマー;ジメチルビニルシロキシ末端ブロックを有するメチルフェニル−ポリシロキサン;ジメチルビニルシロキシ末端ブロックを有するメチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−コポリマー;及び類似のコポリマー、その際、少なくとも1個の末端基はジメチルヒドロキシシロキシである。低温適用のための有利な系には、メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−コポリマー及びジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサン−コポリマーが含まれ、その際、殊にジメチルシロキサン単位のモル含分は約93%である。
【0049】
成分(B’)は2種以上のオルガノポリシロキサンの組合せからなってもよい。最も有利には、成分(B’)は、分子の各末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン−ホモポリマーか、又は、少なくとも1個のビニル基を主鎖に沿って含有するようなホモポリマーである。
【0050】
ジオルガノポリシロキサン−ゴムの分子量は、米国材料試験協会(ASTM)の試験法926に準拠した少なくとも約30のウィリアムズ塑性指数を達成するという本発明の目的のために十分である。ここで使用される塑性指数は、体積2cm及び高さ約10mmの円筒状試験体を25℃で3分間49ニュートンの圧力負荷にさらした後の厚さをミリメートル値×100で示したものと定義される。
【0051】
前記成分の可塑度が、Arkles(US4,714,739)により使用された低粘度の液体のシロキサンの場合のように約30未満である場合、本発明による方法による動力学的加硫によって製造されたTPSiVは劣悪な均一性を示すため、高いシリコーン含分(例えば50〜70質量%)の場合、本質的にシリコーンのみを有するか又は本質的に熱可塑性樹脂のみを有する領域が生じ、かつ混合物は弱くかつブロック状である。本発明のゴムは、先行技術において使用されるシリコーン液体よりも著しく粘性である。例えば、Arkles(上記を参照のこと)により考察されたシリコーンは100000cS(0.1m/s)の粘度上限を有し、そのような低粘度の液体の可塑度をASTM−D−926法に準拠して測定することは困難であるが、これは約24の可塑度に相当することが確認された。成分(B’)の可塑度のための絶対的な上限は存在しないが、この値は一般に、慣用の混合装置中での加工性に関する実地の考察により制限される。塑性指数は約100〜200、最も有利には約120〜185であるべきである。
【0052】
高稠性の不飽和基含有ポリジオルガノシロキサンの製造法は十分に公知であり、本発明の明細書において詳細に論ずる必要はない。アルケニル官能性ポリマーの典型的な製造法には、例えば、類似のアルケニル官能性種の存在下での塩基触媒を用いた環式及び/又は直鎖ジオルガノポリシロキサンの平衡化が含まれる。
【0053】
成分(B’’)は、ジオルガノポリシロキサン(B’)の補強剤として公知である微粒子状の充填剤であり、有利に微細な熱安定性の鉱物、例えばシリカの熱分解法形及び沈降形、シリカエアロゲル及び少なくとも50m/gの比表面積を有する二酸化チタンから選択される。シリカの熱分解法形は、450m/gまでであってよいその大きな表面のために比較的有利な補強充填剤であり;50〜400m/gの表面、及び最も有利に200〜380m/gの表面を有する熱分解法シリカは殊に有利である。シリコーンゴム技術において通常実施するように、有利に、熱分解法シリカからの充填剤が疎水性表面を得るようにこの充填剤を処理する。これは、シリカを、シラノール基又はシラノール基の加水分解可能な前駆体を含有する液体のケイ素有機化合物と反応させることにより達成することができる。液体処理剤として使用することができ、かつシリコーンゴム技術において耐クリープ剤又は可塑剤とも呼称される化合物には、例えば、低い分子量を有する液体のヒドロキシ末端又はアルコキシ末端のポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、シクロジメチルシラザン及びヘキサオルガノジシラザンのような内容物が含まれる。処理化合物は、有利に、2〜約100、有利に約2〜約10の平均重合度(DP)を有するオリゴマーのヒドロキシ末端ジオルガノポリシロキサンであり、前記のジオルガノポリシロキサンはシリカ充填剤各100質量部に対して約5〜50質量部が使用される。成分(B’)が有利なビニル官能性又はヘキセニル官能性ポリジメチルシロキサンである場合、前記の処理剤は有利にヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。
【0054】
本発明の目的のために、補強充填剤(B’’)5〜200、有利に5〜150、最も有利には20〜100質量部をゴム(B’)100質量部と均一に混合し、シリコーンベース(B)を製造する。前記の混合は、シリコーンゴム技術において十分に公知である方法により、一般に室温で、2ロールミル、内部ミキサー又は別の適当な装置を用いて実施される。それとは別に、以下で詳細に記載するように、シリコーンベースを、現場で混合の間にゴムの動力学的加硫の前に形成することができる。後者の場合、補強充填剤が良好にジオルガノポリシロキサンゴム中に分散されるまで、混合温度を、ポリアミド樹脂の軟化点又は融点未満に保持する。
【0055】
相容性促進剤(C):
相容性促進剤(C)は、付着促進剤、オルガノ官能性ジオルガノポリシロキサン又はシロキサン−コポリマーであってよい。本発明の目的のために、少なくとも1種の相容性促進剤を熱可塑性エラストマーの製造の際に使用する。
【0056】
1つの実施態様において、相容性促進剤(i)は、エチレン性不飽和基(例えばビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、アクリレート及びメタクリレート)、エポキシ、無水物、シラノール、ヒドロキシル、1〜20個、有利に1〜10個、有利に1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、カルボキシル又はオキサゾリンから無関係に選択された少なくとも2個の基を分子中に含有する800未満の分子量を有する付着促進剤である。最後の基は式(i)
【0057】
【化1】

[式中、
環の炭素原子は、1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基から選択された1個以上の置換基を含有してよい]
の構造式を有する。付着促進剤は、該付着促進剤が少なくとも2個の上記の基を含有する場合、有機又はシロキサンベース骨格構造を有してよく、その際、該骨格構造は末端位に、主鎖に沿って、又は双方に配置されている。シロキサン主鎖の場合、上記の官能性有機基(即ち非シラノール)は、Si−C−結合を介して、ケイ素原子に結合している(例えば2価の炭化水素基、例えばトリメチレン、テトラメチレン及びジメチレンにより)か、又は酸素−及び/又は窒素−ヘテロ原子を有する2価の有機基、例えばエステル、エーテル又はアミドに結合している。基は同一であってよいが、有利に、そのうちの少なくとも1個はエチレン性不飽和基 −有利にビニル基− であり、一方で少なくとも1個の別の基は上記の基エポキシ、無水物、アルコキシ、シラノール、ヒドロキシル、カルボキシル又はオキサゾリンから選択されている。
【0058】
適当な付着促進剤の為の例は、特に:アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、アリル−無水コハク酸、ビニルオキサゾリン、ビニルオキサゾリン誘導体、例えば2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、ガンマ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマグリシドキシピルトリメトキシシラン、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1,3−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート及び不飽和ジアミド、例えばCH=CH−(CH−CO−NH−(CH−NH−CO−(CH−CH=CHである。
【0059】
前記の付着促進剤の濃度は、ポリアミド(A)各100質量部に対して、0.1〜5質量部、有利に0.2〜3質量部であってよい。
【0060】
もう1つの実施態様において、相容性促進剤(ii)は、少なくとも800、有利に800〜50000、更に有利に800〜15000の数平均分子量を有する官能性ジオルガノポリシロキサンである。有利な実施態様を含めて上記で成分(B’)のために記載したように、官能性ジオルガノポリシロキサン(ii)は、有機基が脂肪族不飽和性を含まない炭化水素基又はハロゲン炭化水素基から選択されるポリマー又はコポリマーである。しかしながら、前記ポリマー又はコポリマー中には、上記のようにエポキシ、無水物、シラノール、1〜20個、有利に1〜10個、更に有利に1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ、アミン、カルボキシル又はオキサゾリンから選択された少なくとも1個の官能基が存在しなければならない。
【0061】
適当な成分(ii)のための例は、特に:エポキシ官能性ポリジメチルシロキサン、例えばモノ(2,3−エポキシ)プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシプロポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサン−コポリマー及び(エポキシプロポキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサン−コポリマー、アミン官能性ポリジメチルシロキサン、例えばアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノエチルアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルグラフトポリジメチルシロキサン、アミノエチルアミノプロピルグラフトポリジメチルシロキサン;無水基、例えば無水コハク酸末端ポリジメチルシロキサン及び無水コハク酸グラフトポリジメチルシロキサンを含有するポリジメチルシロキサン;シラノール末端ポリジメチルシロキサン;カルボキシル基、例えば(モノ)カルボキシデシル末端ポリジメチルシロキサン及びカルボキシデシル末端ポリジメチルシロキサンを含有するポリジメチルシロキサン;及びオキサゾリン基、例えばビニルオキサゾリングラフトポリジメチルシロキサンを含有するポリジメチルシロキサンである。
【0062】
官能性ジオルガノポリシロキサンの濃度は、ポリアミド(A)各100質量部に対して0.5〜10質量部、有利に0.5〜5質量部であってよい。
【0063】
相容性促進剤(i)及び(ii)の場合、時として、相容性促進剤を樹脂融点を上回る温度でポリアミド樹脂と混合し、その後シリコーンベースを添加することが有利である。理論又は機序に固執することに尽力するのではなく、前記方法が相容性促進剤の官能基と樹脂のアミド基もしくは末端基のいずれかとの反応を導き、それにより相容性促進剤の作用が最大化されることに根ざしている。それとは別に、時には、相容性促進剤をポリアミドとシリコーンベースとの混合物に添加することは有利である。全ての場合において、有利な方法を単純にルーチン試験により決定することができる。
【0064】
もう1つの実施態様において、相容性促進剤(iii)は、少なくとも1つのジオルガノポリシロキサンブロックと少なくとも1つのブロックとを含むブロック−又はグラフトコポリマーであり、これはポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリカーボネート又はポリアクリレートから選択される。コポリマー(iii)は、例えば構造AB、(AB)、ABA、BAB、A−g−B及びB−g−Aを有してよく、その際、nは1を上回る値を有する整数であり、Aはジオルガノポリシロキサン−ブロックを表し、Bは上記の有機ブロックを表す。ジオルガノポリシロキサン−ブロックは、全ての有機基が、脂肪族不飽和性を含まない炭化水素基又はハロゲン炭化水素基から無関係に選択されたポリマー又はコポリマーであり、その際、前記基は既に成分(B’)に関連して記載されている。従って、前記成分は、例えば、ジオルガノポリシロキサン−ポリエーテル−ブロック−又はグラフトコポリマー、ジオルガノポリシロキサン−ポリアミド−ブロック−又はグラフトコポリマー、ジオルガノポリシロキサン−ポリウレタン−ブロック−又はグラフトコポリマー、ジオルガノポリシロキサン−ポリ尿素−ブロック−又はグラフトコポリマー、ジオルガノポリシロキサン−ポリカーボネート−ブロック−又はグラフトコポリマー、ジオルガノポリシロキサン−ポリアクリレート−ブロック−又はグラフトコポリマー、又はジオルガノポリシロキサン−ポリメタクリレート−ブロック−又はグラフトコポリマーから選択されてよく、その際、ジオルガノポリシロキサンは有利にポリジメチルシロキサン−ブロックである。有利に、コポリマー(iii)の数平均分子量は1500〜50000、有利に2000〜20000である。
【0065】
コポリマー(iii)のための例は、特に、ポリアミド−ポリジメチルシロキサン−コポリマー、例えば、(例えばUS特許5981680においてPetroffらにより記載されているように)SiH官能性ジメチルシロキサンを、オレフィン性酸とジアミンとからの反応生成物と反応させることにより製造されるシロキサンベースのポリアミド;α,ω−ビス(アミノアルキル)ポリジメチルシロキサンと、1500〜3000の分子量を有するヒドロキシ末端ポリアミド−プレポリマーとの反応により製造されるコポリマー;α,ω−ビス(アミノアルキル)官能性ポリジメチルシロキサンと、例えば1500〜3000の平均分子量を有する芳香族、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートとの反応により製造されるコポリマー;及びポリ(アルキレンオキシド)とポリジメチルシロキサンとのコポリマー、例えばポリ(エチレンオキシド)ポリジメチルシロキサン−ポリ(エチレンオキシド)−ブロックコポリマー及びポリ(プロピレンオキシド)−ポリジメチルシロキサン−ポリ(プロピレンオキシド)−ブロックコポリマー並びにそのような系のグラフトコポリマーである。
【0066】
前記コポリマーの濃度は、ポリアミド(A)各100質量部に対して0.5〜10質量部、有利に0.5〜5質量部であってよい。
【0067】
オルガノヒドリド−ケイ素化合物(D):
オルガノヒドリド−ケイ素化合物(D)は、本発明による組成物のジオルガノポリシロキサン(B’)のための架橋剤(加硫剤)であり、各分子中にケイ素に結合した少なくとも2個の水素原子を含有するが、少なくとも約0.1質量%、有利に0.2〜2質量%、最も有利に0.5〜1.7質量%の、ケイ素に結合した水素を有するオルガノポリシロキサンである。ジオルガノポリシロキサン(B’)を加硫すべき場合、成分(B’)もしくは成分(D)のいずれか又は双方が2を上回る官能価を有していなければならない(即ち、前記官能価の合計は平均して4を上回らなければならない)ことは当業者にとって自明である。成分(D)中のケイ素に結合した水素の位置は重大ではなく;分枝鎖末端、分子鎖に沿った非末端位、又は双方の位置で結合していてよい。成分(D)のケイ素に結合した有機基は、有利な実施態様を含めて上記でジオルガノポリシロキサン(B’)に関連して記載した、(非アルケニル)炭化水素基又はハロゲン炭化水素基から無関係に選択される。成分(D)の分子構造は同様に重大ではなく;例として、直鎖、部分的に分枝鎖の直鎖、環式及び網状構造が挙げられ、その際、直鎖ポリマー又はコポリマーは有利であり;上記成分はジオルガノポリシロキサン(B’)と相容性であるべきである(即ち、前記成分は成分(B’)の加硫の際に有効である)。
【0068】
成分(D)のための例として以下:低い分子量を有するシロキサン、例えばPhSi(OSiMeH);トリメチルシロキシ−末端ブロックを有するメチルヒドリドポリシロキサン;トリメチルシロキシ−末端ブロックを有するジメチルシロキサン−メチルヒドリドシロキサン−コポリマー;ジメチルヒドリドシロキシ末端ブロックを有するジメチルポリシロキサン;ジメチル水素シロキシ末端ブロックを有するメチル水素ポリシロキサン;ジメチルヒドリドシロキシ末端ブロックを有するジメチルシロキサン−メチルヒドリドシロキサン−コポリマー;環式メチル水素ポリシロキサン;環式ジメチルシロキサン−メチルヒドリドシロキサン−コポリマー;テトラキス(ジメチル水素シロキシ)シラン;単位(CHHSiO1/2、(CHSiO1/2及びSiO4/2から構成されているシリコーン樹脂;及び単位(CHHSiO1/2、(CHSiO1/2、CHSiO3/2、PhSiO3/2及びSiO4/2から構成されているシリコーン樹脂を挙げることができ、その際、Me及びPhは以下でメチル基ないしフェニル基を示す。
【0069】
殊に有利なオルガノヒドリド−ケイ素化合物は、末端RSiO1/2又はHRSiO1/2を有するRHSiO単位を含むポリマー又はコポリマーであり、その際、Rは無関係に、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル又はトリフルオロプロピル、有利にメチルから選択される。成分(D)の粘度が25℃で約0.5〜1000mPa・s、有利に2〜500mPa・sであるのも有利である。更に、前記成分は有利に、ケイ素に結合した水素0.5〜1.7質量%を有する。成分(D)が、本質的にメチルヒドリドシロキサン単位から成るポリマーか、又は本質的にジメチルシロキサン単位とメチルヒドリドシロキサン単位とから成るコポリマーから選択され、かつケイ素に結合した水素0.5〜1.7%並びに25℃で2〜500mPa・sの粘度を有することは殊に有利である。当然のことながら、そのような特に有利な系は、トリメチルシロキシ基又はジメチルヒドリドシロキシ基から選択された末端基を有する。
【0070】
成分(D)は、2種以上の上記系からの組合せであってもよい。オルガノヒドリド−ケイ素化合物(D)は、その中に含有されるSiHと成分(B’)中のSi−アルケニルとのモル比が1を上回る、有利に約50未満、有利に3〜30、最も有利には4〜20であるような量で使用される。
【0071】
ヒドロシリル化触媒(E):
前記のSiH官能性材料は工業において十分に公知であり、その多くが市販されている。ヒドロシリル化触媒(E)は、本発明の組成物においてジオルガノポリシロキサン(B’)の加硫を促進する触媒である。前記のヒドロシリル化触媒の例として、以下のものが挙げられる:白金触媒、例えば白金黒、シリカ担持白金、炭素担持白金、クロロ白金酸、クロロ白金酸のアルコール溶液、白金−/オレフィン錯体、白金−/アルケニルシロキサン錯体、白金−/ベータ−ジケトン錯体、白金−/ホスフィン錯体等;ロジウム触媒、例えば塩化ロジウム、塩化ロジウム/ジ(n−ブチル)スルフィド錯体等;及びパラジウム触媒、例えば炭素担持パラジウム、塩化パラジウム等。成分(E)は有利に、白金ベースの触媒、例えばクロロ白金酸;二塩化白金;四塩化白金;WillingによりUS3419593により製造された、クロロ白金酸と、ジメチルビニルシロキシ末端ブロックを有するポリジメチルシロキサンで希釈されたジビニルテトラメチルジシロキサンとの反応により製造される白金錯体触媒;及びBrownらによりUS5175325により製造された、二塩化白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中和された錯体である。最も有利に、触媒(E)は二塩化白金とジビニルテトラメチルジシロキサンとの中和された錯体である。
【0072】
成分(E)は、本発明による組成物に、成分(B’)と(D)との反応を促進し、それによりジオルガノポリシロキサンをエラストマーの形成下に加硫するのに十分な触媒量で添加される。触媒は有利に、金属原子が熱可塑性エラストマーの組成物の全質量に対して約0.1〜500ppm、更に有利に0.25〜100ppm(1000000部当たりの部)であるように添加される。
【0073】
本発明の有利な実施態様において、ヒンダードフェノール(F)が配合物中に導入される。前記の任意成分は、分子中に以下の構造:
【0074】
【化2】

を有する基を少なくとも1個有する有機化合物である。上記の式において、Rは4個までの炭素原子を有するアルキル基であり、R’は4〜8個の炭素原子を有する炭化水素基である。本発明の目的のために、1,5−ジ−オルガノフェノールを形成するために式(ii)による基は水素に結合してよい。有利に、前記基1〜4個は相応する原子価の有機部に結合しているため、当該の化合物は約1500未満の分子量(M)を有する。最も有利に、4個のそのような基が成分(F)中に存在し、その際、前記化合物は1200未満の分子量を有する。前記の一価(又は多価)の有機部分は、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、リン又は硫黄を含有してよい。上記式中のR’基のための例として、t−ブチル、n−ペンチル、ブテニル、ヘキセニル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルが挙げられる。RのみならずR’も、有利にt−ブチルである。
【0075】
成分(F)のための限定しない特定の例には、Ciba Specialty Chemicals Corporationから商品名IrganoxTMで市販されている以下の種々のヒンダードフェノールが含まれる:
IrganoxTM1076=オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、
IrganoxTM1035=チオジエチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、
IrganoxTM MD1024=1,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、
IrganoxTM1330=1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、
IrganoxTM1425 WL=カルシウム−ビス(モノエチル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート)、
及び
IrganoxTM3114=1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン。
【0076】
有利なヒンダードフェノールは、IrganoxTM245{トリエチレングリコール−ビス(3−(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−メチルフェニル)プロピオネート)}、IrganoxTM1098{N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)}及びIrganoxTM1010{テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート))メタン}である。
【0077】
有利に、ポリアミド(A)+シリコーンベース(B)各100質量部に対してヒンダードフェノール(F)0.1〜5質量部が使用される。有利に、(A)+(B)各100質量部に対して0.1〜0.75、有利に0.475〜0.525質量部が添加される。
【0078】
上記成分に対して付加的に、少量の任意の添加剤(G)を本発明の組成物に導入することができる。上記の任意の成分は、全組成物を基礎として有利に0.5〜40質量%、更に有利に0.5〜20質量%の量で添加される。前記の任意の添加剤のための限定しない例として、ポリアミド樹脂のための補強充填剤、例えばガラス繊維及び炭素繊維;不活性充填剤、例えば石英、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び珪藻土;顔料、例えば酸化鉄及び酸化チタン;導電性充填剤、例えばカーボンブラック及び微細金属、耐熱性安定剤、例えば酸化セリウム水和物;酸化防止剤;難燃剤、例えばハロゲン炭化水素、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及びリン有機化合物;及び他の難燃性(FR)材料が挙げられる。有利なFR添加剤は、ケイ酸カルシウム固体、有利に2〜30μmの平均粒径を有する珪灰石である。更に、任意成分(G)は、シリコーンゴム成分 −例えばポリジメチルシロキサン油− のための可塑剤及び/又はポリアミド成分のための可塑剤であってよい。後者のための例には、フタレートエステル、例えばジシクロヘキシルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート及びベンジルフタレート;トリメリテートエステル、例えばC〜C−アルキルトリメリテート;スルホンアミド、例えばN−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−o,p−トルエンスルホンアミド及びo−トルエンスルホンアミド及び液体のオリゴマーの可塑剤が含まれる。有利な可塑剤は、ポリアミドの通常の溶融温度で可塑剤放出を最小化するわずかに揮発性の液体である。
【0079】
上記の添加剤は通常最終的な熱可塑性組成物の動力学的加硫の後に添加されるが、前記の添加剤が動力学的加硫機序を妨害しないことを前提として、製造の際にいかなる時点で添加されてもよい。上記の付加的な内容物は当然のことながら、採取的な組成物の所望の特性を本質的に損なわない量でのみ使用される。
【0080】
本発明の方法によれば、シリコーンベース(B)及び相容性促進剤(C)を慎重にポリアミド(A)中に分散させ、ジオルガノポリシロキサンをオルガノヒドリドケイ素化合物(D)及び触媒(E)の使用下に動力学的にベース中で加硫させるによって、本発明による塗料配合物中で使用される二酸化ケイ素の被覆のために使用される熱可塑性エラストマーを製造することができる。本発明の目的のために、シリコーンベース(B)とポリアミド樹脂(A)との質量比は35:65を上回る。前記比が35:65か又はそれを下回る場合、生じる硫化物は一般に、熱可塑性エラストマーの弾性率よりもむしろポリアミド樹脂の弾性率に近い弾性率を有する。他方では、上記の比は約85:15よりも高くなるべきではなく、それというのも、その場合組成物が弱くなる傾向にあり、かつ加硫されたシリコーンエラストマーに上記の値を上回って似るためである。前記の上限にもかかわらず、成分の何らかの所定の組合せのための(A)に対する(B)の最大の比は、加工性に関する考慮によっても制限され、それというのも、高過ぎるシリコーンベース含分は少なくとも部分的に架橋された関連する相を導き、この相はもはや可塑性でないためである。前記の実質的に制限された限界は、本発明の目的のためにルーチン試験により容易に確認され、TPSiVを圧縮成形することのできる成分(B)の最大の量である。しかしながら有利に、最終的な可塑性エラストマーは他の慣用のプラスチック処理、例えば射出成形及び押出し成形で容易に加工することができ、この場合、成分(B)と(A)との質量比は約75:25を上回らないべきである。後で再加工されるそのような有利な熱可塑性エラストマーは、しばしば、もとのTPSiVの相応する値の10%以内の引張強度及び引裂点伸びを有する(即ち、熱可塑性エラストマーは再加工によりほとんど変化されない)。上記の方法と統合可能なシリコーンベース量は特定のポリアミド樹脂と他の選択された成分とに依存するが、成分(B)と(A)との質量比は有利に40:60〜75:25、有利に40:60〜70:30である。
【0081】
混合は、成分を均一にポリアミド樹脂中に分散させることができる何らかの装置内、例えば内部ミキサー又は二軸スクリュー押出機中で実施され、その際、後者は大工業的製造のために有利である。温度は有利に、良好な混合の際に実質的に出来る限り低く維持され、従って樹脂は損害を受けない。特定の系に依って、混合の際の順序は通常重大ではないため、例えば成分(A)、(C)、(D)及び −場合により− (F)を、(A)の軟化点(即ち融点又はガラス転移温度)を上回る温度で(B)に添加することができ、その際、触媒(E)を導入し、動力学的加硫を行うことができる。当然のことながら、動力学的加硫を開始する前に成分(B)〜(F)は良好に樹脂(A)中に分散されているべきである。既に述べたように、当然のことながらシリコーンベースを現場で形成させることができる。補強充填剤を、例えば、既にポリアミド樹脂とジオルガノポリシロキサン−ゴムとを樹脂の軟化点未満の温度で含有する混合機中に充填し、充填剤を根本的にゴム中に分散させることができる。温度を樹脂の溶融のために高め、別の内容物を添加し、混合/動力学的加硫を実施する。最適な温度、混合時間及び他の混合プロセスの条件は固有の樹脂及び他の当該の成分に依存し、ルーチン試験により当業者によって測定されることができる。しかしながら、混合及び動力学的加硫は有利に、乾燥した不活性雰囲気(即ち、成分と不利な反応を起こさないか又はさもなくばヒドロシリル化加硫を妨害する大気)下で、例えば乾燥窒素、ヘリウム又はアルゴン下で実施される。
【0082】
上に述べたように、TPSiV−エラストマーのために有効な引張強度又は引裂点伸び又は双方を本発明の範囲内のままにするためには、TPSiV−エラストマーのために有効な引張強度又は引裂点伸び又は双方は、相応する単純な混合物の引張強度又は引裂点伸びよりも少なくとも25%大きくなければならない。本発明のもう1つの要求は、下記の試験において確認されたように、TPSiVが少なくとも25%の引裂点伸びを有することである。本発明の明細書中において、「単純な混合物」(又は物理的混合物)という概念は、樹脂(A)、ベース(B)及び相容性促進剤(C)の質量比がTPSiV中で同一であり、そのために加硫剤を使用しない(即ち、成分(D)もしくは(E)のどちらかか又は双方を排除するため、ゴムを加硫しない)組成物を指す。固有の組成物が上記の条件を満たすか否かを確認するために、TPSiVの引張強度を、ASTM法D412により、50mm/分の延長率で、長さ25.4mm、幅3.2mmでありかつ典型的な厚さ1〜2mmを有するバーベル状の試験体に関して測定する。試験体の不均質性(例えば間隙、汚染物質又は封入物)により条件付けられる明らかに低過ぎる値を排除した後に、前記試験体少なくとも3つを評価し、結果を平均する。この結果を、単純な混合物の組成物から製造した試験体の引張強度及び引裂点伸びに関する相応する平均値と比較する。単純な混合物と比較して、引張強度及び/又は引裂点伸びの少なくとも25%の改善を達成しない場合、動力学的加硫から利点を導くことができず;その場合、そのようなTPSiVは本発明の範囲内でない。前記の熱可塑性エラストマー及びその製造法の詳細は、US6,362,288から引用することができる。前記特許文献の内容は、明確に本発明の明細書の内容に引用される。
【0083】
上記の方法を用いて製造された熱可塑性エラストマーを、慣用の方法、例えば押出し成形、真空成形、射出成形、ブロー成形、多成分射出成形又は圧縮成形により加工することができる。更に、前記組成物を、機械的特性をわずかに損なうか又は損なわずに再加工(リサイクル)することができる。
【0084】
本発明による塗料配合物は、殊に有利に、表面が熱可塑性エラストマーDow Corning 33 添加剤(Dow Corning社, 2003年2月25日付技術データシート)で被覆された二酸化ケイ素を含有する。
【0085】
本発明による塗料配合物中で使用される表面変性二酸化ケイ素は、互いに無関係に以下の物理化学的パラメータを1つ又はそれ以上有する。
炭素含分 :0.5〜30%、有利に1〜20%、殊に2〜10%
DBP(水不含):100〜600g/100g、有利に200〜450g/100g、殊に250〜380g/100g
平均粒径d50 :0.5〜50μm、有利に1〜30μm、殊に2〜20μm
pH値 :<8
既に記載し、かつ本発明による塗料配合物中に含有される表面変性された二酸化ケイ素は、既に記載したポリマーを用いて、市販の、又は公知の方法により製造可能な二酸化ケイ素を表面処理することにより製造することができる。この場合、表面処理を自体公知の方法により行うことができる。
【0086】
例えば、市販の二酸化ケイ素、例えばGrace社の艶消し剤(Syloid ED 2、Syloid ED 3、Syloid ED 5、Syloid C 805、Syloid C 807、Syloid C 809、Syloid C 812)、Ineos社の艶消し剤(HP 260、HP 270、HP 285、HP 39、HP 395)、Silysia社の艶消し剤(Sylysia 350、Sylysia 370、Sylysia 270)又はDegussa AG社の艶消し剤を既に記載したポリマーと混合し、室温か又は高められた温度にさらすことが可能である。
【0087】
更に、シリカの製造の間にエラストマーでシリカを被覆することが可能である。エラストマーを、例えば二酸化ケイ素の沈降懸濁液中に添加することができる。しかしながら、二酸化ケイ素をエラストマーと一緒に噴霧乾燥機中に噴霧し、表面変性を乾燥の間に実施することも可能である。最後に、二酸化ケイ素の被覆を乾燥後に、例えばシリカの粉砕の間に実施することも可能である。既に記載したように、二酸化ケイ素の変性のための方法は当業者に公知であるか又は明らかである方法であり、相応するエラストマーの使用により容易に変更することができる。従って、既に挙げた処理変形は完全なものではない。表面変性を他の方法により実施することは可能である。相応して適応可能な表面変性法の詳細を、EP1281733A1から引用することができる。これにより、前記特許の内容は明確に本願の明細書の内容に引用される。
【0088】
表面変性された殊に有利な二酸化ケイ素は、PCT/EP03/12380;PCT/EP03/12381並びに欧州特許出願番号EP02028310.7に記載されている。これにより、前記特許出願の内容は本発明の内容に明確に引用される。
【0089】
本発明による塗料配合物は、当業者に公知の全ての方法により製造することができる。
【0090】
本発明による塗料配合物は、自動車の内装のために使用される、プラスチック及び天然皮革並びに人工皮革を被覆するために有利に使用される。前記塗料配合物は有利にクリヤーコートとして使用される。
【0091】
測定方法
本発明による塗料配合物及び該塗料配合物中に導入された二酸化ケイ素の物理/化学的データは以下の方法で測定される:
突固め密度の測定
突固め密度の測定をDIN EN ISO787−11に従って行う。まだ篩別されていない試料の規定量を測定用ガラスシリンダーに満たし、そして突固め容積計を用いて固定回数の突き固めを行う。突き固めの間に試料は圧縮される。実施された調査の結果として突固め密度が得られる。
【0092】
その測定はEngelsmann社、ルートヴィヒスハーフェン、STAV2003型の計数器を有する突固め容積計で実施する。
【0093】
まず250mlのガラスシリンダーの風袋を精密計量器で測定して補正する。引き続き、二酸化ケイ素250mlを、粉末漏斗を用いて、風袋を測定して補正したメスシリンダー中に中空部が形成しないように満たす。引き続き試料の量を0.01gにまで正確に秤量する。次いでシリンダーを軽くたたくと、シリンダー中の粉末の表面は水平になる。メスシリンダーを突固め容積計のメスシリンダーホルダ中にはめ込み、そして1250回突き固める。突き固めた試料の容量を、1回の突き固め行程の後に1mlにまで正確に読み取る。突固め密度D(t)を以下のように計算する:
D(t)=m×1000/V
その際、
D(t):突固め密度(g/l)
V :突き固め後の二酸化ケイ素の容量(ml)
m :二酸化ケイ素の質量(g)。
【0094】
乾燥減量(TV)の測定
二酸化ケイ素の湿分又は乾燥減量(TV)をISO787−2に従って105℃で2時間乾燥させた後に測定する。この乾燥減量は、主に水湿分からなる。
【0095】
乾燥ガラスビーカー中に、精密計量器(Satorius LC621S)で粉末状二酸化ケイ素10gを0.1mgにまで正確に秤量する(初期秤量E)。ガラスビーカーを、複数の穿孔(φ1mm)を有するアルミニウム箔で被覆する。そのように被覆したガラスビーカーを105℃で2時間乾燥炉中で乾燥させる。引き続き、高温のガラスビーカーをデシケーター中で乾燥剤の上方で少なくとも1時間に亘り室温に冷却する。
【0096】
ガラスビーカーを最終秤量Aの測定のために精密計量器で0.1mgにまで正確に秤量する。湿分(TV)を%で
TV=(1−A/E)×100
但し、A=最終秤量(g)、E=初期秤量(g)
に従って測定する。
【0097】
強熱減量(GV)の測定
前記の方法により二酸化ケイ素の質量損失をDIN EN ISO3262−1に従って1000℃で測定する。前記の温度で、物理的及び化学的に結合した水並びに別の揮発性成分を抜く。調査する試料の湿分(TV)を前記の方法“乾燥減量の測定”によりDIN EN ISO787−2に従って測定する。
【0098】
二酸化ケイ素0.5gを、予熱して風袋を測定して補正した磁製坩堝中に0.1mgにまで正確に秤量する(初期秤量E)。試料をマッフル炉中で1000±50℃で2時間加熱する。引き続き磁製坩堝をデシケータ室中で乾燥剤としてのシリカゲルと一緒に室温に冷却する。最終秤量Aを重量法で測定する。
【0099】
強熱減量GVを%で
GV=(1−A/F)×100
に従って得る。
【0100】
Fは乾燥させた物質に対する補正した初期秤量(g)であり、
F=E×(1−TV/100)
に従って算出される。
【0101】
その計算においてA=最終秤量(g)を意味し、E=初期秤量(g)を意味し、そしてTV=乾燥減量(%)を意味する。
【0102】
炭素含有率の測定(C%)
二酸化ケイ素の炭素含有率の測定を、“C-mat 500”(Stroehlein Instruments社)を用いて行う。試料を約1350℃で熱処理し、そして炭素を酸素流により酸化させてCOにする。COを赤外セル中で測定する。
【0103】
その測定では、炭素含有率が1%より大きいか又は小さいかどうかで区別される。均質なシリカ試料の炭素含有量が1%を上回るのであれば、装置の“高い”領域で測定され、それが1%未満であれば、“低い”領域で測定される。
【0104】
まず対照試料を測定する。このために、焼鈍し、室温に冷却した磁器ボート(Porzellanschiffchen)に0.14〜0.18gの対照試料を分析計量器で秤量する。計量器が“C-mat”と連結されているので、スタートキーの操作により質量が受け渡される。前記のボートは、燃焼管の中央を30秒以内で移動せねばならない。燃焼の完了後に、測定値をインパルスに変換し、そして計算機により評価する。少なくとも3回の測定(合致に応じて)を実施する。場合により、装置の係数を新たに調整せねばならない(詳細については、操作マニュアル“C-mat 500”、Stroehlein Instruments社を参照のこと)。前記の係数は以下の式により計算される:
【0105】
【化3】

【0106】
引き続き二酸化ケイ素を測定する。初期秤量は0.04〜0.05gである。磁製ボートを磁製の蓋で覆う。偏差>0.005%で複数の測定を行い、そして平均値を算出する。
【0107】
“C-mat 500”の操作は、Stroehlein Instruments社の操作マニュアルを引用する。
【0108】
炭素含有率を以下のように算出し、%の単位で示す:
炭素含有率=(I×F×10−8)/E
I=インパルス
F=係数
E=初期秤量(g)
pH値の測定(pH)
DIN EN ISO787−9に従う方法を20℃での二酸化ケイ素の水性懸濁液のpH値測定のために用いる。
【0109】
pH測定の実施前に、pH測定装置(Knick社、型:766の温度センサを有するpH計Climatic)及びpH電極(Schott社の単一棒測鎖(Einstabmesskette)、N7680型)をバッファー溶液を使用して20℃で較正しなければならない。較正関数は、2種の使用されるバッファー溶液が、見込まれる試料のpH値(pH4.00及び7.00、pH7.00及びpH9.00及び場合によりpH7.00及び12.00を有するバッファー溶液)を計算に入れるように選択されねばならない。
【0110】
5.00gの粉末状の、4±2%の湿分含有率を有する二酸化ケイ素を精密計量器で0.01gにまで、事前に風袋を測定して補正したガラス製の広口フラスコ中に秤量する。100mlを印すまで、20℃の冷たい脱イオン水を補充する。種々の試料が不十分に水湿潤可能であるべき場合、100mlを印すまで50.0mlのメタノール(p.A.)及び50.0mlの脱イオン水で補充する。
【0111】
引き続き該懸濁液を閉容器中で5分間にわたり振とう器(Gerhardt社、モデルLS10、55W、ステップ7)を用いて20℃で振盪する。
【0112】
pH値の測定を引き続いてすぐに行う。このために電極をまず脱イオン水ですすぎ、次いで懸濁液の一部ですすぎ、そして引き続き懸濁液中に浸漬する。懸濁液中にマグネットフィッシュ(Magnetfisch)を添加した後に、懸濁液が軽く渦を形成する一定の撹拌速度でpH測定を実施する。pHメータが一定の値を示したら、pH値をディスプレイ上で読み取る。
【0113】
DBP吸収の測定(DBP)
二酸化ケイ素の吸収度のための尺度であるDBP吸収(DBP数)を規格DIN53601に従って以下のように測定する:
12.50gの粉末状の二酸化ケイ素(湿分含有率4±2%)をブラベンダー吸収計”E”の混練室(商品番号279061)に投入する(トルク入力の出力フィルタ(Ausgangsfilter)の減衰なく)。永続的に混合して(混練ブレードの回転速度 125回転/分)、室温で“Dosimaten Brabender T 90/50”によってジブチルフタレートを4ml/分の速度で混合物中に滴加する。混入を低い所要エネルギーでのみ行い、そしてデジタルディスプレイをもとに追跡する。測定の終わり頃に混合物はペースト状になり、これは所要エネルギーの急上昇により示される。600桁(0.6Nmのトルク)を指示した場合に、電気接点を通じて混練機もDBP計量供給も切断する。DBP供給のための同期電動機がデジタル計数器と連結されているので、DBPの消費量をmlで読み取ることができる。
【0114】
DBP吸収量はg/100gで示され、そして以下の式をもとに計算される:
【0115】
【化4】

【0116】
DBP吸収量は水不含の乾燥された二酸化ケイ素について定義されている。湿式の二酸化ケイ素を使用する場合にはDBP吸収量を計算するために補正値Kを考慮しなければならない。この値は、補正表をもとに決定でき、例えば二酸化ケイ素の含水率5.8%はDBP吸収量について33g/(100g)の上乗せを意味する。二酸化ケイ素の湿分は記載された方法”乾燥減量の測定”に従って測定される。
【0117】
ジブチルフタレート吸収(無水)についての湿分補正表
【0118】
【表1】

【0119】
60゜−及び85゜−反射率計値の測定
塗料被膜表面の意図的な粗面処理による反射特性の影響は、SiOベースの艶消し剤の傑出した特性である。従って、反射率計値は艶消し塗料被膜の特性決定のための1つの重要な基準である。
【0120】
測定のための前提条件は、測定すべき塗料被膜表面が平坦で汚れがなくかつ硬化されていることである。
【0121】
測定を、試料の少なくとも3つの代表的箇所において、DIN 67530による測定幾何を有する反射率計(例えばHaze-gloss, BYK-Instruments)を用いて実施することができる。個々の測定値の大き過ぎる偏差が得られた場合には、通常、再度、代表的な箇所での測定を行うか、又は個々の測定値の数を>3に増加すべきである。BYK haze-glossにおいて、ディスプレイに測定値の標準偏差が示される。標準偏差が>0.5の場合、上記の方法を実施することが推奨される。平均値は小数点第1位まで定める。
【0122】
艶消しした塗料被膜表面の特性決定の際に、60゜及び85゜の測定幾何で測定するのが有効であることが判明した。従って、DIN67530とは異なり、艶消しした塗料被膜表面の反射率計値を双方の測定幾何で測定する。
【0123】
シアーズ数Myとしての透明度の測定
シアーズ数Myの測定を、DIN55979に準拠して測定装置PauschQ-Color35を用いて行う。
【0124】
予め、試験すべきクリヤーコートを調製1又は2に従って製造し、場合により二酸化ケイ素を用いて艶消しする。前記塗料を60μmスリット付ドクターブレードを用いて高光沢の黒色に着色されたガラスプレート(Format 180 x 80 x 60 mm, Art.Nr. P 2071035, 製造者, Berliner Glas KG, Herbert Kubatz GmbH & Co.)に施与する(施与速度25mm/s、Erichsen社のCoatmaster 509 MCを用いて)。引き続き、塗料試料を循環空気乾燥炉中で80℃で1時間乾燥させる。
【0125】
そのように準備したガラスプレートに関するシアーズ数Myの測定をDIN55979に従って行う。
【0126】
値Myはクリヤーコートの色の深み及び透明度を示す。前記の値が高いほど、塗料は透明である。同時に、色の深みが増す。比較可能な60゜−反射率計値がもたらされるように塗料が艶消しされていなければならないことを顧慮しなければならない。その場合にのみシアーズ数Myのための値を比較することができる。
【0127】
ソフトフィール効果の測定
ソフトフィール効果とは、専ら主観的に接触により評価することのできる触覚等級である。手及び指先で試験すべき塗料表面の上方をなでかつ触れることにより、触覚特性の個人的な感覚を評価する。そのために、1〜5の評点を以下のように与える:
1=プラスチック状の硬質表面(ソフトフィール効果なし)
2=塗料状の平滑な表面
3=絹状の特徴への表面の、感じとれる変化(わずかなソフトフィール効果)
4=ゴム状、皮革状の表面(顕著なソフトフィール効果)
5=ビロード状の表面(極めて顕著なソフトフィール効果)
流出時間の測定
完全に規格化されたフローカップ(三脚を備えたDIN53211によるDINカップ4mm)からの液体媒体の所定の体積が流動するのに必要な時間を流出時間と称する。
【0128】
塗料の温度及びDINカップ4mmの温度は、流出時間の測定の前及び流出時間の測定の際に23℃±0.5℃でなければならない。
【0129】
DINカップ4mmを、その上縁が水平となるように合わせて三脚に固定する。フローノズルを指で閉鎖し、気泡及び汚染物質を除去した塗料を、液体がカップ縁部の内辺を通過して流動するようにDINカップ4mm中に満たす。充填の際、気泡が試料中に達してはならない。その場合、ガラスプレート又はカードを用いて縁部を越えた塗料を取り去る。
【0130】
フローノズルの下方の開口部の解放と同時に流出時間の測定を開始し;フローノズルの下方の液体の筋が初めて途切れたらすぐに測定を終了する。流出時間を1秒の精度で定める。
【実施例】
【0131】
実施例
以下の実施例は本発明を詳細に説明するものであり、その範囲を制限するためのものではない。
【0132】
下記の応用技術的試験のために、以下の二酸化ケイ素を使用する:
先行技術の二酸化ケイ素:
二酸化ケイ素1:Acematt OK 412 (Degussa AG社, 2002年12月付技術データシート)と質量比3:1で混合されたPergopak M 3 (Albemarle社, 2002年12月付技術データシート)(以下を参照のこと:Bayer AG, Broschuere Waessrige Soft-feel-Lackierungen fuer Kunststoffe mit Bayhydrol(R)/Bayhydur(R)/Desmodur(R), LS 5800, S. 10, 2003年6月)。
【0133】
本発明による表面変性された二酸化ケイ素
二酸化ケイ素2:
二酸化ケイ素2を製造するために以下のものを使用する:
以下の物理化学的特性を有する親水性熱分解法シリカ(Aerosil 300):
BETによる比表面積[m/g] :290.0
pH値 :4.2
突固め密度[g/l] :35
乾燥減量[%] :0.8
DBP(水不含)[g/100g]:305.0
C−含有率[%] :0
被覆剤(Coatungsmittel)(TEGO Foamex 845, TEGO GmbH社, 2004年1月付技術データシート)ポリシロキサン−エマルションは以下の物理化学的特性を有する:
【0134】
【表2】

【0135】
被覆剤は、水210gで希釈された水性ポリシロキサン−エマルション656.4gから成る。被覆剤のpH値をNHOHの添加によりpH11.3に調節する。熱分解法シリカ2kgに被覆剤0.865kgを室温で2成分ノズルを用いて噴霧する。混合容器としてスキ刃混合機を使用する。そのように湿潤させた材料の乾燥減量は24.4%である。
【0136】
ガスジェットミルで、湿潤させた材料を粉砕し(流量7kg/h)、引き続き120℃で13時間乾燥させる。
【0137】
二酸化ケイ素3:
以下の物理化学的特性を有する親水性熱分解法シリカ(Aerosil 300)を使用する:
BETによる比表面積[m/g] :290.0
pH値 :4.2
突固め密度[g/l] :35
乾燥減量[%] :0.8
DBP数[g/100g] :305.0
C−含有率[%] :0
エポキシ官能基を有するシリコーンエラストマーである、以下の薬剤を表面変性のために使用する(Dow Corning DY 33 Additive, 2003年2月25日付製品データシート):
外観 :白色、水性液体
平均粒径 :2〜4μm
粘度 :40〜200mPas
固体含有率 :50
懸濁液型 :アニオン性
固体の硬度(ショアA硬さ):70
表面変性のための薬剤を、NHOHの添加によりpH値をpH10.5に調節した50%の水性懸濁液として使用する。熱分解法シリカ2kgに表面変性剤0.909kgを室温で2成分ノズルを用いて噴霧する。混合容器としてスキ刃混合機を使用する。そのように湿潤させた材料の乾燥減量は15.9%である。
【0138】
ガスジェットミルで、湿潤させた材料を粉砕し(流量7kg/h)、引き続き120℃で13時間乾燥させる。
【0139】
二酸化ケイ素2及び3は第1表に記載された以下の物理化学的パラメータを有する:
【0140】
【表3】

【0141】
適用例1:1成分ソフトフィール塗料
塗料を調製1に相応して製造する:5l特殊鋼容器(直径185mm)中に項目1の原材料を装入する。溶解機(溶解機ディスクの直径80mm)を用いた1000回転/分での撹拌下に、項目2及び6の原材料を添加する。引き続き、1500回転/分で更に10分間分散させる。
【0142】
そのように製造した塗料100gに二酸化ケイ素を添加する。透明度の比較は光沢が同一である場合にのみ可能であるため、全ての試料が0〜3の同等の60゜−反射率計値を有するように二酸化ケイ素の初期秤量を選択する(初期秤量に関しては第2表を参照のこと)。添加の後、溶解機(溶解機ディスクの直径45mm)を用いて2000回転/分で10分間分散させる。
【0143】
その後、脱塩水を更に導入することにより、流出時間が21秒となるように塗料の噴霧粘度を調節する。フラッシュオフ後、Bayblend T 65 (Bayer AG社, 2004年2月25日付技術データシート)から成るプラスチックプレートへの塗料の噴霧施与(1.5交叉=垂直方向へのプレートへの噴霧3回及び引き続くプレートの90゜回転)を行う。
【0144】
シアーズ数Mとしての透明度、光沢及びソフトフィール効果を測定する。
【0145】
【表4】

【0146】
結果を第2表にまとめる。
【0147】
【表5】

【0148】
適用例2:2成分塗料
塗料を調製2に従って製造する。項目1及び2の原材料を5l特殊鋼容器(直径185mm)中に装入し、溶解機(溶解機ディスクの直径80mm)を用いて2000回転/分で5分間分散させる。その後、成分3を添加し、再度2000回転/分で5分間分散させる。最後に成分4及び5を添加し、再度2000回転/分で5分間分散させる。
【0149】
そのように製造した塗料100gに二酸化ケイ素を添加する。透明度の比較は光沢が同一である場合にのみ可能であるため、全ての試料が0〜3の同等の60゜−反射率計値を有するように二酸化ケイ素の初期秤量を選択する(初期秤量に関しては第3表を参照のこと)。添加の後、溶解機(溶解機ディスクの直径45mm)を用いて2000回転/分で10分間分散させる。引き続き、硬化剤であるDesmodur N 3390(Bayer AG社, 2001年1月1日付技術データシート)を添加し、1000回転/分で1分間溶解機を用いて分散させる。その後、更にブチルアセテート98%/Shellsol A(質量比2.5:1)を導入することにより、流出時間が21秒となるように塗料の噴霧粘度を調節する。フラッシュオフ後、Bayblend T 65 (Bayer AG社, 2004年2月25日付技術データシート)から成るプラスチックプレートへの塗料の噴霧施与(1.5交叉)を行う。
【0150】
シアーズ数Mとしての透明度、光沢及びソフトフィール効果を測定する。
【0151】
【表6】

【0152】
結果を第3表にまとめる。
【0153】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物において、60゜反射率計値が3未満の場合、少なくとも140のシアーズ数Mを有することを特徴とする、塗料配合物。
【請求項2】
クリヤーコートである、請求項1記載の塗料配合物。
【請求項3】
顔料着色された塗料である、請求項1記載の塗料配合物。
【請求項4】
艶消し塗料配合物である、請求項1から3までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項5】
熱可塑性エラストマーで被覆された少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項6】
ポリオルガノシロキサン及び/又は変性されたポリオルガノシロキサンで被覆された少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項7】
少なくとも1種の表面変性された沈降シリカを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項8】
熱分解法シリカをベースとして製造された少なくとも1種の表面変性されたシリカを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項9】
少なくとも1種の表面変性された熱分解法シリカを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項10】
少なくとも1種の表面変性されたシリカゲルを、単独か、又は表面変性された別の二酸化ケイ素と混合して含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項11】
0.5〜30%の炭素含分を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項12】
100〜600g/100gのDBP(水不含)を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項13】
0.5〜50μmの平均粒径d50を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項14】
8未満のpH値を有する少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項15】
少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素0.5〜15質量%を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項16】
以下:
− ポリマー成分の固体、又は、2種以上の物理的又は化学的架橋性ポリマー成分から成る混合物の固体 5〜99.5質量%及び/又は
− 溶剤として作用する低分子成分又はそのような低分子成分の混合物 0〜80質量%
を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項17】
(メタ)アクリル酸のポリマー及びコポリマー、及び、(メタ)アクリル酸と他のオレフィン性不飽和化合物との、付加的な官能基を有してよいエステルの、ポリマー及びコポリマー;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシ樹脂、並びに、重縮合により製造された脂肪酸変性アルキド樹脂から成る群から選択された少なくとも1種のバインダーを含有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の塗料配合物。
【請求項18】
プラスチック及び天然皮革並びに人工皮革を被覆するための、請求項1から17までのいずれか1項記載の塗料配合物の使用。

【公開番号】特開2006−2151(P2006−2151A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173250(P2005−173250)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】