表面結合光学共振プロファイルを数量化する方法および装置
表面結合光学共振プロファイルを数量化するために経験的プロファイル適合が使用される。EPFプロセスは2つの段階、すなわち、較正段階と適合段階とを有する。較正段階では、全ての領域についての完全な共振プロファイルを含むのに十分な範囲にわたって比較的細かい角度または波長間隔で較正表面結合光学共振走査が得られる。各対象領域の平滑化されサブサンプリングされた経験的プロファイルが、第1の微分曲線および診断情報と共にメイン較正モジュールによって生成される。返送される特性は近似共振位置、深さ、および幅を含む。適合段階では、個々のROI走査が経験的プロファイルに関連する共鳴移動の測定に使用される。適合モジュールは共鳴を含む実験的走査の領域を識別し、以前に記憶した経験的プロファイルを用いてその領域を適合させ、数量化を実行し、較正時のそのロケーションと比較した共鳴移動、予想絶対角度または波長、共鳴極小の時間、および追加の診断および品質情報を含む所望の値を返送する。任意選択として、較正または適合段階から得たデータをエクスポートして他のシステムで分析できる。好ましい実施形態では、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは内部パラメータをEPF較正モジュール内に設定し、較正走査からEPF較正モジュールに生データを送信し、EPF較正モジュールはそのデータをサブサンプラおよびSavitsky−Golay平滑化ルーチンに流し込み、その後データの微分をとって特徴付け、チップの経験的プロファイルを作成する。経験的プロファイルは任意選択として記憶される。次に、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは内部パラメータをEPF適合モジュール内に設定し、チップを用いて実行される実行時間走査からEPF適合モジュールに生データを送信し、EPF適合モジュールは生データを承認し、EPF較正モジュールにチップの経験的プロファイルを照会し、曲線を適合させ、必要に応じてこのプロセスを繰り返す。適合プロセスの結果が返送され、ユーザに提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ数量化方法に関し、特に、光学共鳴表面センサを用いて得られるデータ・プロファイルの数量化に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年8月1日出願の米国仮出願第60/492061号への優先権を主張する。
【0003】
光学共鳴表面センサは、プロテオミクスおよび薬剤発見を含むいくつかの化学、薬理学、および生物工学研究分野で使用されている。表面プラズモン共鳴(SPR)プロファイルなどの表面結合光学共振プロファイルの数量化によって、分子相互活動のリアルアイムの観察と分析とが可能になり、生物化学ラベリングの影響を受けないデータが提供される。その結果、光学共鳴表面センサは生体表面の特徴付けおよび結合イベントのリアルタイム・モニタリングに幅広く使用されることになった。
【0004】
現状では、最も一般に使用されている光学共振表面センサはSPRを検出する。表面プラズモンは、誘電媒体と金属膜との間の界面に平行に伝播する横断方向の電磁電荷密度波である。表面プラズモンは、電子が豊富な金属表面と荷電分子または光子との相互作用によって生成される。適当な条件下では、プラズモンは光と共振し、光を吸収する。
【0005】
より具体的には、屈折率が異なる2つの透明媒体の界面で、より高い屈折率を有する側から入射する光が一部反射し、一部屈折する。一定の入射角を超えると、光は界面を通して屈折せず、内部全反射(TIR)が観察される。入射光は全て反射するが、電磁場成分は数十〜数百ナノメートル程度の短い距離を貫通してより低い屈折率の媒体に進入し、指数関数的に減衰するエバネッセント波を生成する。媒体間の界面に金属の薄い層が形成され、入射光が単色でp偏光の場合、反射光の強度は特定の入射角で低減する。これによって、エバネッセント波と表面プラズモンとの間の共振エネルギー伝達による表面プラズモン共鳴が発生する。
【0006】
多数のSPRセンサはクレッチマンまたはオットー型構成を使用する。この構成で、プリズムを通して進む全面的に内部反射した単色光のエバネッセント波は検出する材料に接触する金属膜内に表面プラズモンを生成する。これらの構成では、光は共振角θSPRとして知られる臨界角より大きい角度でプリズムを通って金属膜入射する。次いで、反射光の強度の急激な減少が検出されるまで入射角を調整することで表面プラズモンが検出される。誘電層の誘電率または厚さが変化すると、共振角も変化する。
【0007】
別の一般のSPR構成では、光は金属膜の試料側から入射し、表面に結合して金属表面内に回折格子を形成することでプラズモン共鳴を生成する。さらに別のSPR構成では、金属膜は光ファイバまたはその他の導波路の外部に堆積し、光は導波路を通して表面から入射しまたそこから出射する。
【0008】
SPRの存在は、背面側(クレッチマンのケース)または試料側(オットーおよび格子の対のケース)の誘電体/金属界面からの反射光の強度の測定によって検出される。共鳴条件は金属膜に隣接する媒体の有効屈折率、したがって、その表面の構成に影響される。ここで有効屈折率と言う用語を使用するのは、バルク液体層に加えて極めて薄い(<<1μm)固体生体層がある場合、生体層はSPR角を変化させ、その結果、液体屈折率を変化させるからである。これは、生体膜とバルク液体屈折率の両方が信号に影響する一般のケースである。基本的に、数百ナノメートルの厚さのエバネッセント層内の全ての物質が影響する。したがって、表面構成もまた、金属膜に吸収された任意の物質によって変化し、その結果、生体分子が膜に結合すると誘電体の有効屈折率が変化する。このために、金属膜への分子の吸収または吸収された分子の配座変化を正確に検出できる。したがって、SPR撮像を用いて、吸収時に発生するローカル屈折率の変化を数量化することで化学的に変化した金属表面上の生体ポリマーの存在および/または量を検出することができる。
【0009】
単色または準単色照明の場合、SPR角は結合された材料の量に従って直接変化する。この量と観察された共振角の変化との間には直線的な関係がある。特に、共振角と、たんぱく質、糖類およびDNAなどの生化学的に関連する分子の質量濃度との間には直線的な関係が確立されている。角度変化またはそのような変化に比例するその他の単位で表されたSPR信号は、したがって、センサ・チップ表面の質量濃度の尺度である。これは、検体とリガンドとの関連付けおよび分離が観察でき、平衡定数が計算できるということを意味する。
【0010】
別のSPR構成では、固定入射角が採用され、励起光の波長が変化し、またはアレイ分光計と共に広帯域光源が採用される。この手法によって、SPRは波長の関数としての反射光強度の傾斜として示され、極小SPRの波長はチップ表面の質量濃度の関数として直線的に変化する。この構成は、上述した結合機構(プリズム、格子または導波路)のいずれとも併用できる。
【0011】
表面プラズモン共鳴装置は、実験表面(チップ)上の単一スポット、複数のスポット、または同時に大規模なスポットのアレイでの質量負荷を測定することができる。アレイ機器の場合、SPR変化が測定される個々の領域を対象領域(ROI)と呼ぶ。
【0012】
SPR装置の出力は、独立変数が角度であるか波長であるかに関わらず、通常、グラフ化された共振曲線である。SPR共振のロケーションはセンサ上の材料の有効屈折率を示す。これに限定はされないが、以下の手法を含むSPR共振曲線移動数量化のいくつかの方法がこれまでに使用されている。
(1)ベースライン下の第1のモーメント
(2)特定の反射率/信号ポイント
(3)極小周囲の多項式の適合
(4)第1の導関数の零交差
(5)特定ポイントでの反射率/信号
(6)分析関数の非線形適合
【0013】
ある文献では、絶対屈折率(RI)測定値と相対RI測定値とを区別する。この区別の根拠は全く明らかというわけではない。それは、いかなる正確な絶対測定値もRI基準との比較を含んでいなければならないからである。ただし、システムが一旦較正され、その後しばらく絶対RI測定に使用される場合、あるアルゴリズムは他のアルゴリズムよりもより適していると言える。これは、例えば、センサの汚れまたはベースライン移動に対する感度が低減するなどの事態に起因する。また、屈折率の変化のみが問題であるケースもあろう。程度はそれより下がるが、結合曲線を測定するのに必要な種類の相対RI測定値にもこの考え方があてはまる。
【0014】
SPR曲線極小の位置は絶対屈折率の最も一般的な標識である。極小周囲の多項式の適合(方法(3))および第1の導関数の零交差(方法(4))の各方法は、この位置を具体的に決定する。その他の方法は、最小を決定するためにSPR曲線の他の側面に注目する。絶対RIを測定する利点は、SPR曲線の極小に注目することと、測定がSPR曲線の垂直移動(SPR信号軸に沿った)に影響されず、測定が(SPR曲線の平滑さを低下させる)SPRセンサ表面の汚れに影響されないということである。その欠点は、測定が分析に含まれるポイントの選択に影響され、雑音による読取値の歪を引き起こすおそれがあるということである。
【0015】
分析方法のいずれを実行する前にも、SPR曲線を平滑化することができる。これによって対時間屈折率追跡の際の雑音を低減できる。1つの一般的な平滑化アルゴリズムは最小二乗平滑法であり、通常、あるポイントの平滑化値を決定するのにそのポイントの両側の1〜12ポイントを含む。平滑化では複数のデータ・ポイントを各平滑化ポイントに有効に載せることができないので、1つまたはごく少数のデータ・ポイントにのみ名目的に依存するアルゴリズムは、平滑化手順によって支援することができる。ただし、大半の場合、優れた構成の適合手順には平滑化はほとんどまたは全く恩恵をもたらさないが、害になることすらある。
【0016】
(1)ベースライン下の第1のモーメント法
第1のモーメント法は、ベースライン下のSPR曲線の第1のモーメントを計算する。すなわち、ベースラインより下のSPR曲線の部分だけが計算に含まれる。n個の等間隔のデータ・ポイントの簡単なケースでは、アルゴリズムは以下のように表される。
【0017】
【数1】
【0018】
上式で、総計はSPR信号がベースラインを超えた全てのデータ・ポイントを除外する。
【0019】
この曲線が垂直に移動しない限り、アルゴリズムは屈折率の変化を正確に追跡する。ベースラインをどこに設定するかの選択は明らかでない。しばしば、ベースラインはSPR傾斜の中点に設定される。ベースラインを下げると分析中のポイントが減少し、雑音が増加することがある。ベースラインを上げるとポイントは増えるが、その結果、計算は曲線極小よりも外れる。分析のために選択されたポイントがセンサ範囲を超えて移動し始めると、分析の精度が落ちる。また、おそらくはセンサ表面の汚れが原因でSPR曲線に異常が発生する場合がある。異常がSPR傾斜付近にない限り、センサを使用することができる。この状況に対処するため、分析からさまざまな領域を選択的に除外することができる。したがって、異常がベースラインの下にあっても、異常が計算から除外されるので正確な測定結果が得られる。
【0020】
この技法は、一部にはそれが多数のポイントと非常に簡単なアルゴリズムを含むために、ショット・ノイズまたはその他の同様のランダム追加雑音に関して極めて優れた性能を示す。有用な追加機能は、ベースラインがデータ・ポイントを直接通過することはまれであるという事実を処理するためにいずれかの翼のベースライン・カットオフ・レベルで補間計算を提供するということである。これらのカットオフ領域の平滑化も有用である。ただし、SPRの第1のモーメント技法の基本的な欠点は、SPR共振が本来非対称であることによる強度または信号ベースライン移動(SPR曲線の垂直移動)に大きく影響されるという点である。したがって、データ・ポイントの高い密度が必要である。この方法でもセンサ表面の汚れが発生しやすい。
【0021】
(2)特定の反射率/信号ポイント
特定の反射率/信号ポイント法は、SPR曲線が事前指定された値であるピクセル位置を使用する。曲線が指定の値に最も近いデータ・ポイントを近似的に突き止めるためにまずこの曲線が検証される。次いで、曲線上のどこでその値が出現するかを正確に補間して識別するために、n次多項式最小二乗適合が実行される。この検索は、曲線の左側、右側のどちら側からも実行できる。SPR曲線がx軸に沿って移動すると、識別されたポイントはこの移動に追随する。
【0022】
この方法は、SPR曲線の全体の形状の変化に影響され、直接に極小ポイントを検出しない。それでも、小さい移動を数量化するのには有用である。さらに、センサのダイナミック・レンジを拡張するために使用できる。例えば、SPR曲線の極小がピクセル#1(センサ・レンジの左側)より下の場合、センサを用いてSPR曲線の何か他のポイントを追跡することができる。
【0023】
この技法は、簡単であること以外に推奨すべき点がほとんどない。方法(1)よりも強度またはベースラインの変化にはるかに影響され、また共振形状の小さい変化にも大きく影響される。決定のたびに共振曲線データをほとんど使用せず、したがって、雑音伝達性能が低い。満足がいく性能を得るためには、データ・ポイントの間隔を狭くする必要がある。
【0024】
この技法の別のバージョンは、共鳴の両側の計算を実行し、この両者の平均を用いて共鳴を追跡する方法である。これは方法(1)に似ているが、データの比較的小さいサブセットしか使用しないため、雑音性能が低い。また、方法(1)と比較して強度の変化に影響される。
【0025】
(3)極小周囲の多項式の適合
極小周囲の多項式の適合法では、共鳴の最小の近似的な位置を見つけるためにSPR曲線の第1の走査が実行される。極小の位置を補間するために、n次多項式最小二乗適合が(極小周囲のいくつかのポイントを用いて)実行される。この方法は絶対屈折率の測定に適している。この方法はSPR曲線のy軸方向の移動に影響されない。ただし、この方法は曲線上の比較的少ない数のポイントしか使用しないため、計算に含まれるポイントの選択に影響される。このため、時折、分析結果に異常(雑音)が発生することがある。
【0026】
この方法は、強度およびベースライン移動に関してはかなり優れているが、比較的少ないデータに依存し、最適以下の雑音伝達性能を示す。共鳴の極小を実際に突き止めようとする任意の方法と同様(全体位置とは逆に)、この方法は底部付近で雑音に影響されることがある。共鳴の形状によりよく適合する高次多項式を用いて、より幅広いデータ・ポイントを含ませることができるが、雑音を個々のデータ・ポイント上に収容するために極小を動かす機会も増える。言い換えれば、高次多項式は、増加した雑音導入を移動決定に変換する自由度が過剰である。実際、データ・ポイントの間隔を狭くする必要があるが、必要な角度走査範囲はかなり制限される。
【0027】
(4)第1の導関数の零交差
第1の導関数の零交差方法は、第1の導関数がSPR曲線の極小の近くで符号を変えるという事実から引き出される。零交差アルゴリズムでは、SPR曲線の近似極小ポイントが最初に決定され、近似極小付近の2、3のポイントを用いて第1の導関数の線形最小二乗適合が実行され、零交差点が補間される。
【0028】
この結果、おそらくは曲線上の最小の正確に画定されたポイントである共振曲線の実際の極小の多少とも直接的な決定が実行される。多数のアルゴリズムを用いて導関数を評価してその零交差を見つけることができ、これらのアルゴリズムの大半は何か固有の平滑化またはマルチポイント適合を含むため、このプロセスは、例えば、方法(3)(極小周囲の多項式の適合)と数学的に等価であるといえる。例えば、Savitsky−Golay導関数を用いてこのプロセスは方法(3)と完全に等価になる。具体的な実施形態によっては、この方法は方法(3)と同様に有効であり、ほぼ同じ利点と欠点とを有する。実施方法が悪いと、雑音性能が極めて低くなる。さらに、狭いデータ・ポイント間隔が必要である。この方法は、絶対屈折率の測定に適している。
【0029】
(5)特定ポイントでの反射率
特定ポイントでの反射率/信号法は、SPR曲線の移動に追随しない。この方法は、特定の角度(または波長)位置のSPR曲線の値を観測する。必要に応じて、所望の特定ポイントの信号値を補間するためにn次多項式最小二乗適合が実行される。この技法は、部品もアレイ検波器も動かさずにシステム内で使用できるため、文献でよく使用されている。この方法はSPR移動の少な目の範囲にわたって共鳴の側壁の線形性に依存する。この方法は小さい移動に関して本質的に方法(2)(特定の反射率/信号ポイント)と等価であるが、方法(2)とは異なり、より大きい移動に対応できない。一実施形態では、特定ポイントを囲むいくつかのデータ・ポイントが適合し、それによって雑音性能が多少改善されるアレイ検波器情報が使用される。
【0030】
(6)分析関数の非線形適合
理論応答。SPRセンサの文献では、測定された角度応答曲線を理論応答と比較することが一般的であり、いくつかのケースでは、結果的に共鳴移動を測定する膜厚を測定する手段としてこれらの理論的曲線への適合が実行されてきた。
【0031】
MainzにあるWolfgang Knollの研究所の論文[M.ZizlspergerおよびWolfgang Knoll「Multispot parallel on−line monitoring of interfacial binding reactions by surface plasmon microscopy」、Progr.Colloid Polym.Sci.,109:244〜253(1998)]は、実験的SPR角応答曲線の簡素なフレスネル・マルチレイヤ理論への適合を表す図(図2および5)を示す。適合はかなり弱いが、共鳴移動を測定するには十分である。適合方法の説明はない。可能な方法は、手動の試行およびエラー・パラメータ調整、またはLevenberg−Marcquardtなどの非線形方法を含む。
【0032】
格子SPRセンサに関する論文[C.R.Lawrence、N.J.Geddes、D.N.Furlong、J.R.Sambles、「Surface Plasmon resonance studies of immunoreactions utilizing disposable diffraction gratings」、Biosensors&Bioelectronics、11:389〜400(1998)]は、結合波方法[J.Chandezon,M.T.Dupuis,G.Cornet,およびD.Maystre,「Multicoated grating: a differential formalism applicable in the entire optical region」、JOSA、72:839〜846(1982)]を用いた実験データのGSPR理論への適合を示す。適合方法の説明はないが、従来の非線形最小二乗適合法であろう。この適合は、金の光定数、格子のピッチおよび溝深さ、および溝歪係数と吸収蛋白質層の厚さと(時には)光学的特性とを含む、多数のパラメータを含むと記されている。いくつかのケースでは、これらのパラメータのいくつかは固定できる。適合は極めて良好で、歪とアーチファクトとを回避するために実験上十分な注意が払われたことを示す。
【0033】
これらの技法は、任意のパラメータ数が小さい限り、SPR移動数量化の極めて良い結果をもたらすことができる。言い換えれば、層方向の厚さを除く全てのパラメータを確立するために予備適合が使用されたとして、またその後の実行時間の適合で厚さと、2、3の振幅スケーリング・パラメータのみが任意の場合に、性能は当然良好であるはずである。
【0034】
この手法の欠点は以下の通りである。
a)特にGSPRのケースでモデル計算が極めて複雑で集中力を要する。
b)非線形適合自体の計算が集中力を要し(内部に組み込まれた必要な論理モデル評価を超えて)、また自動化動作を複雑にする不安定さを示す。
c)実際、理論的な理想による共鳴形状からの頻繁な逸脱が観察される。実際、Zizlsperger他のデータは低い適合を示す。
【0035】
明示的機能。提案されてきた別の手法は、比較的追跡可能な明示的に定義された数学関数を実行時間データに非線形適合させる方法である。入力パラメータの所与のセットの複雑な計算プロセスから生じる数字的なプロファイルである理論的応答とは異なり、そのような明示の関数は低コストで計算でき、したがって、はるかに魅力的である。多項式は高速線形最小二乗適合を可能にする特性を備えてはいるものの、ある意味、これは多項式適合方法の拡張機能である。
【0036】
観察されたプロファイル形状の範囲によく適合する融通性を有する関数形式が識別されたならば、この手法は有効である可能性がある。その欠点は以下の通りである。
a)上記の多項式適合のケースのように適合を極小付近の小さい領域に制限しない限り、そのような関数形式を識別することは困難である。当然の結果として、選択された関数形式によってモデル化できない異常なプロファイル形状が発生しないという保証をすることは困難である。
b)非線形最小二乗またはその他の非線形適合手順が必要である。
c)全範囲の観察されたプロファイルを表すのに必要と思われる余分な形状パラメータによって雑音性能が低下する。この問題は上記の手順によって回避できる。この場合、予備適合を用いて任意パラメータの大半を固定し、共鳴移動および振幅のみを適合パラメータにすることができる。
【0037】
上記の説明の大半は表面結合光共鳴(SPR)の最も一般に使用される形態に関するものであるが、他のタイプの表面結合光共鳴から得られる光共振曲線も同様に数量化できる。そのような共鳴を測定する装置および技法の例は以下を含む。すなわち、光導波路センサ(Artificial Sensing Instruments AG製のBIOS−1角度走査格子結合光導波路装置など)、格子結合器(K.Tiefenthaler(1993)「Grating couplers as label−free biochemical waveguide sensors」、Biosensors Bioelectron.、8:xxxv−xxxvii)、プラズモン導波路共鳴装置(Z.Salamon、H.A.MacleodおよびG.Tollin(1997)「Coupled Plasmon−Waveguide Resonators:A new Spectroscopic Tool of Probing Film Structure and Properties」、Biophys Journal,73:2791〜2797)、回折異常センサ(米国特許5925878号、Challener、2000、「Diffraction anomaly sensor having grating coated with protective dielectric layer」)、共鳴ミラー装置(R.Cush他(1993)「The Resonant Mirror:a Novel Optical Biosensor for Direct Sensing of Biomolecular Interactions」、Biosensors&Bioelectronics 8(7/8):347〜353)、長距離SPR(http://plazmon.ure.cas.cz/tobiska/optsen01.pdf)、およびWO 99/30135(Tracy他.,1999年6月17日公開)に記載のPerkin Elmer光共鳴分析システムである。ある程度まで、これらの装置および技法は2つのテーマ、すなわち、誘電平面導波路および金属膜SPR、またはそれらの組み合わせについての変形形態である。これらの装置および技法は全て蛍光ラベルを必要とせず、しばしばバイオセンサと呼ばれるが、生体膜の特徴付けへの適用で制限されない。
【0038】
したがって、必要なものは、計算の複雑さが少ない割に走査データ・ポイント数が最小で、共振角の正確な決定と優れた雑音性能とを示す表面結合光共振曲線を数量化する方法である。この能力によって、走査時間が延び、かつ/またはより多くのROIについて走査が可能になる。その結果、例えば、化学的に変化した金属表面上の吸着、DNA、蛋白質、酵素、および抗体などの生物分子を含む結合事象、および組織の抗原−抗体反応および抗原刺激などの免疫学的現象の観察のための光共鳴表面センサ技法の効用を高めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
したがって、本発明の目的は、表面結合光共振曲線の正確な数量化の新しい機構を提供することである。
【0040】
特に、本発明の目的は、計算の複雑さが比較的少ない表面結合光共振曲線の数量化の方法を提供することである。
【0041】
本発明の別の目的は、最小数の走査データ・ポイントを必要とする表面結合光共振曲線の数量化の方法を提供することである。
【0042】
本発明の別の目的は、ショット・ノイズにより影響されない表面結合光共振曲線の数量化の機構を提供することである。
【0043】
本発明の別の目的は、長い表面結合光共振走査時間の使用を可能にすることである。
本発明の別の目的は、走査速度が増加した表面結合光共振曲線の数量化の機構を提供することである。
【0044】
本発明の別の目的は、現在可能であるよりも迅速に試料の表面結合光共振結果を得る能力を提供することである。
【0045】
本発明の別の目的は、より大きい数のROIに対する表面結合光共振走査を可能にすることである。
【0046】
本発明の別の目的は、使用する角走査範囲の制限のために部分的な共振曲線しか利用できない時であっても有用な結果が得られるように、表面結合光共振走査のダイナミック・レンジを有効に拡張することである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
上記およびその他の目的は、表面結合光共振プロファイルを数量化するために経験的プロファイル適合(EPF)が使用される本発明によって満足される。EPFの方法および装置は、経験的機能形態を作成するために比較的細かい角度または波長間隔で観察された表面結合光共振プロファイルを使用する。好ましい実施形態では、数量化する表面結合光共振は、(a)経験的プロファイル自体、(b)Savitskey−Golayフィルタを用いて生成されたプロファイルの数字的微分、および(c)任意のベースライン移動または連続体照明をモデリングする一定の追加オフセットからなる3つのパラメータ・モデルによって適合される。適合された共振の移動はプロファイル適合係数に対する微分フィット係数の比として決定される。そのように決定された移動が所定のしきい値を超えると、元のEPFプロファイルはラグランジェ補間によって共振の近似位置まで移動し、適合が再び行われる。
【0048】
EPFピーク検出プロセスは2つの段階、すなわち、較正段階と適合段階を有する。較正段階では、全ての領域についての完全な共振プロファイルを十分に含む範囲にわたって比較的細かい角度または波長間隔で較正走査が得られる。各対象領域(ROI)の平滑化されサブサンプリングされたモデル・プロファイルが、第1の微分曲線および診断情報と共に生成される。適合段階では、個々のROI走査が較正モデルに関する共鳴移動の測定に使用される。実行時走査ははるかに粗い角度または波長間隔で実行でき、較正データと完全に異なる角度または波長範囲をカバーでき、いずれかの走査極性を有することができ、表面結合光共振プロファイル全体を含む必要はない。共鳴の一方の側についての断片的なデータからでもピーク位置の予想が可能であり、部分的な曲線しか利用可能でない時でも有用な結果が得られる。決定のたびに最低3つのデータ・ポイントが必要であるが、通常はそれより多くのポイントが使用される。共鳴の移動、予想絶対角度または波長、最小共鳴時間、ならびに追加診断および品質情報が返送される。較正または適合の実行から得たデータは任意選択としてエクスポートして他のシステムで分析できる。
【0049】
好ましい実施形態では、EPFピーク検出に含まれるプロセスの2つの段階は2つの別々のソフトウェア・モジュール、すなわち、較正モジュールおよび適合モジュールによって実施される。新しいチップが使用されるかまたは古いチップについて新たに較正をしたい時には、較正走査が実行される。較正走査時には、比較的長い角度または波長範囲にわたって静的な条件下で、比較的細かい角度または波長ステップで、表面結合光共振データが得られる。較正するROIについて1回ごとの較正走査時に得られる生走査が任意選択として平滑化されサブサンプリングされてポイント密度を増やす。好ましい実施形態では、ラグランジェまたはスプライン補間を用いてサブサンプリングが実行される。Savitsky−Golayフィルタまたは当技術分野で知られているその他の任意の適した方法を用いて、サブサンプリングされたプロファイルの微分が計算される。これに限定はされないが、近似共振位置、深さ、および幅を含むプロファイルの特性が計算される。これらの結果は後の適合手順に備えて記憶される。
【0050】
適合段階では、実験中に特定のROIについて角度または波長走査が測定される。これらの走査はおそらくはより短い角度または波長範囲で較正走査よりもはるかに低いポイント密度で入手できる。適合モジュールの役割は、これらの実験的走査を監視し、共鳴を含む領域を識別し、以前に記憶された経験的プロファイルを用いてその領域を適合させて、較正時間の角度位置と比較した共鳴の移動を含む所望の値を数量化して返送することである。共鳴位置自体が正しく定義されていないために、絶対角度位置または波長が一般に正確に測定できないのに対して、粗い値は移動を較正時に決定された公称ピーク位置に追加することで得られ、また返送される。
【0051】
EPF較正および適合システムの好ましい実施形態では、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは内部パラメータを獲得してEPF較正モジュール内に設定し、較正走査からEPF較正モジュールに生データを送信し、EPF較正モジュールはそのデータをサブサンプラおよびSavitsky−Golay平滑化ルーチンに流し込み、その後データの微分をとって特徴付け、走査中のチップのモデル較正プロファイルを作成する。モデル較正プロファイルは任意選択として記憶される。次に、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは内部パラメータを獲得してEPF適合モジュール内に設定し、チップを用いて実行される実行時間走査からEPF適合モジュールに生データを送信し、EPF適合モジュールは生データを承認し、EPF較正モジュールにチップのモデル・プロファイルを照会し、次いでさまざまな行列ルーチンを用いて曲線を適合させ、必要に応じてこのプロセスを繰り返す。適合プロセスの結果は機器制御およびデータ獲得ソフトウェアに返送され、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは結果をユーザに提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は、経験的プロファイル適合(EPF)を用いて表面結合光共振プロファイルを数量化する。EPFピーク検出プロセスは較正段階と適合段階との2つの段階を有する。較正段階では、全ての領域についての完全な共振プロファイルを十分に含む範囲にわたって比較的細かい角度または波長間隔で較正走査が得られる。各対象領域(ROI)の平滑化されサブサンプリングされたモデル・プロファイルが、第1の微分曲線およびある種の診断情報と共に生成される。適合段階では、個々のROI走査が較正モデルに関する角度または波長移動の測定に使用される。実行時走査ははるかに粗い角度間隔で実行でき、較正データと完全に異なる角度範囲をカバーでき、いずれかの走査極性を有することができる。共鳴の移動、予想絶対角度または波長、最小共鳴時間、ならびに追加診断および品質情報が返送される。
【0053】
本発明の経験的プロファイル適合のある種の構成要素のいくつかの先駆体が2つの従来の特許で開示されている。波長移動の計算および修正をより正確に行うための適合における微分の使用は、米国特許第5303165号(Ganz他、1994年)の11列、1行目から16列、40行目、および米国特許第5308982号(Ivaldi他、1994年)の3列、27行目から5列、43行目に開示されている。さらに、適合に経験的プロファイルを用いるという一般的な考え方の使用が他の文献で開示されている。例えば、「経験的プロファイル」という言葉は使用されていないが、多少似た考え方が知られている形態のモデル行列として、米国特許第5308982号の列3、行46に記載されている。
【0054】
経験的プロファイル適合は、表面プラズモン共振プロファイルの数量化での多項式適合と少なくとも同等、またはそれよりも優れていると実験で証明されている。ショット・ノイズに限定された性能は、通常、数十マイクロ度である。EPFでは、走査速度を数倍増加させるはるかに間隔が空いた角度ポイント間隔を許容できるという利点がある。これは、ある種の実験で間隔がより広い範囲の共鳴移動を収容するために長距離走査が必要な時に特にあてはまる。EPF SPRの数量化は、これに限定はされないが、走査変数としての角度または波長について、回折格子、プリズム、および導波路の実施態様などの表面プラズモン共振を生成して測定する機構の任意の実施態様と併用できる。また、導波路センサおよび共振空洞センサなどの化学的または生化学的表面センサに使用される他の共鳴の移動を数量化するのにも有利に使用できる。
【0055】
話を簡単にするために、以下の好ましい実施形態の説明は、格子結合角度走査SPR装置を用いて得られる結果を数量化する際のパラメータに限定されている。ただし、本発明のEPF数量化技法は、SPR装置を用いて得られるデータの数量化に限定されず、また角度走査技法を用いて得られるデータの数量化に限定されない。本発明のEPF数量化技法は、角度走査、波長走査、またはその組み合わせ(事前分散または相関走査などの)を使用し、表面アドレイヤの質量または結合に多少とも線形的に角度または波長が移動するSPR共鳴に似た共鳴を生成するさまざまな表面結合光エバネッセント波センサ技法のいずれかを使用して生成されたデータを数量化する際に有利に使用される。ERFを用いた数量化に適した共鳴の生成技法の例は、これに限定はされないが、背景の節で説明したさまざまな技法を含む。
【0056】
これらの技法のいくつかはSPRよりも鋭角かまたは鈍角の共鳴を生成し、共鳴位置は生体層質量密度により多くまたはより少なく影響され、かつ/または異なる共鳴伝播長を示し、アレイ構成でより高いか低いROI密度を可能にする。EPF手順はこれらの技法のいずれかを用いて生成される共鳴を数量化するのに直接に適用できる。本明細書に記載する好ましい実施形態との主な相違点は、角度ステップのサイズが共鳴の幅に(またはより使用される機会が少ない波長モードでは、波長単位の共鳴のFWHM)に合わされているという点である。さらに、これらの技法のいくつかを用いて得られる曲線は、共鳴として下降する傾斜ではなく正のピークを示すが、これは、プロファイル受け入れ基準に関する以外はEPFに影響しない。さらに、これら各種の技法は、励起ビームが角度走査される限り、ラベルとエバネッセント波を使用して蛍光を励起することがあるが、反射光強度よりも拡散蛍光が測定されるとしても、EPFを使用することができる。
【0057】
一般に、適合が実行されるウィンドウは自由に調整できるが、一般に共鳴傾斜の主要部分をカバーしてファーウィングを除外するように選択される。最良の結果を得るため、各ROIの共鳴はそのROIについて測定された経験的プロファイルを用いて適合される。ただし、同様の共鳴形状を示す他のROIの経験的プロファイルを用いても良好な結果が得られる。EPFの雑音性能は、一般に、より多くのまたは少ない直交パラメータ、すなわち、強度、共鳴移動、およびベースライン・オフセットを用いた分析プロファイル適合の雑音性能に極めて似ている。
【0058】
EPF手順は共鳴の絶対ロケーションを測定することはしない。また「共鳴中心」の定義も含まない。この手順によって、元のモデル共鳴の位置からの共鳴位置の移動または変化が正確に測定される。ただし、解釈を簡単にするために、初期モデル・プロファイルの極小の尺度を底のn個のポイントへの放物線適合の極小として検出するだけで、「絶対角度」が初期モデル・プロファイルに任意に割り当てられる。通常、n=5である。このなかば任意の割り当てによって、他の尺度の範囲にある「絶対角度」の報告が可能になる。EPF適合で使用されるデータ・ポイントは元の較正走査で使用される比較的細かい角度間隔である必要はない。一般に、共鳴のどこかに少なくとも3つのポイントが検出できる任意のデータ・ポイント間隔を使用できる。ただし、より粗い間隔を使用すると、共振角の決定の精度に影響が出ることがある。
【0059】
概要。本発明を実施するシステムのこの好ましい実施形態は、2次元CCD検波器を使用して100〜400またはそれ以上のROIを含む試料チップを撮像するアレイ・システムである。フィルタリングされたp偏光のLED(発光ダイオード)からの準単色光が照明に使用される。チップへの光ビームの入射角は光源を機械的に走査することで変化する。各入射角について、1つまたは複数のCCDフレーム露光を用いてROIアレイの全ての部材の反射光強度の測定が同時に実行される。本発明のEPFシステムの好ましい実施形態はそのようなアレイ・システムに限定されているが、単一またはいくつかのチャネル機器上でも同様に動作する。
【0060】
この実施形態では、新しいチップが稼働し始めると、またの任意の所望の時点で、全ての領域についての完全な共振プロファイルを十分に含む角度範囲にわたって比較的細かい角度間隔で較正走査が得られる。好ましい角度範囲は、バッファ、センサ表面の任意の固体膜またはアドレイヤ、センサ材料の屈折率(RI)および(適宜)格子間隔に依存する。例えば、格子結合、金の金属膜、水性試料、最大4nm FWHMの干渉フィルタによってフィルタリングされた中心波長875nm、および840nmの格子溝間隔を使用する場合、好ましい角度範囲は通常、20°±2°である。本発明の好ましい実施形態では、角度はミリ度まで制御可能で、マイクロ度まで測定可能である。これら全てのパラメータは調整可能で、その結果、公称角度は異なり、共鳴のFWHMも異なる場合があるので、異なるステップ・サイズを設ける必要がある。さらに、波長走査モードを使用する場合、ステップ・サイズは波長単位である。上記の例を直接波長走査モードに変換する場合、角度は最大20度に固定され、波長は860〜890nmの範囲で粗走査される。共鳴は最大10nm幅である。同様に、他の光共振システムでも、公称波長、角度、およびFWHMは極めて異なることがあり、さまざまなEPFパラメータのスケーリングが必要になるが、プロセス自体は同じである。
【0061】
好ましい実施形態では、較正データ・セットがメイン較正手順のepfCalに提出され、epfCalは第1の微分曲線およびある種の診断情報と共に各ROIの平滑化されサブサンプリングされたモデル・プロファイルを生成する。この較正セットはメモリ内に保存でき、任意選択として、将来の使用のためにアーカイブに入れることができる。実際の測定角度が各データ・ポイントのメイン較正手順に供給されるので角度ステップ・サイズは一様でなくてもよい。
【0062】
実行時に、実験的力学またはその他のデータが得られると、較正モデルに関する角移動の測定のために、個々のROI走査がメイン実行時間適合手順のepfFitに提出される。実行時走査ははるかに角度間隔が粗く、較正データと全く異なる角度範囲をカバーする場合がある。実行時走査はいずれかの走査極性(すなわち、上昇または下降角度)を有することができる。実際の測定されたエンコーダ角を各データ・ポイントに供給しなければならず、各データ・ポイントの測定回数も提供しなければならない。角移動、予想絶対角度、最小共鳴時間、ならびに追加診断および品質情報が返送される。
【0063】
実行時走査はSPRプロファイル全体を含む必要はない。共鳴の一方の側についての断片的なデータからでもピーク位置の予想が可能である。決定のたびに最低3つのデータ・ポイントが必要であるが、通常はそれより多くのポイントが使用される。この、SPR走査の有効な「エッジ情報」を提供する能力、したがって、部分的な曲線しか利用可能でない時でも有用なSPR結果が得られるという能力は、本発明の多数の利点の1つである。較正または適合の実行から得たデータをエクスポートして1つまたは複数の他の分析システムを用いて再分析する、または追加分析するオプションの能力によって別の利点が得られる。
【0064】
EPFピーク検出に含まれるプロセスは当然、好ましい実施形態では、2つの別々のソフトウェア・モジュールを介して実行される2つの部分に分割される。これらは較正段階と適合段階である。図1に示すように、新しいチップが110で稼働するか、または古いチップについて新しい較正が所望されると、較正走査が120で実行される。較正走査120中に、比較的長い角度範囲にわたって静的な条件下で、比較的細かい角度ステップで、SPRデータが得られる。センサ表面の試料側にどの液体を置くかの選択は、実行する測定によって変わる。次いでその液体の屈折率を収容する角度範囲が選択される。これらのパラメータの正確な値は固定している必要はなく、経験による判断で異なることができるが、好ましい実施形態で採用される公称0.05度のステップが極めて適している。これらのステップは基本ステップと呼ばれ、基本インデクス値によって割り出しされる。角度エンコーダから得られる実際の角度値が各々の強度値に伴う。システム角度の単位は、度またはその他の単位でよい。一貫して使用する限り、いかなる線形単位も適している。
【0065】
較正されるROIごとに1回行う較正走査120中に得られる生走査は任意選択として130で平滑化され、サブサンプリングされてポイント密度N(通常N=1〜10)を増加させる。好ましい実施形態では、ラグランジェまたはスプライン補間を用いてサブサンプリングが実行される。ただし、当技術分野で知られているその他の任意の方法も適している。Savitsky−Golayフィルタまたは当技術分野で知られているその他の任意の適した方法を用いて、サブサンプリングされたプロファイルの微分が計算される。好ましい実施形態では、任意選択として、これに限定はされないが、近似共振位置、深さ、および幅を含むプロファイルのある種の特性が計算され、共鳴が適切で正確であると評価される。これらの結果は後の適合手順に備えて140で記憶される。
【0066】
適合段階で、実験150中に特定のROIについて角度走査が測定される。これらの走査はおそらくはより短い角度範囲で較正走査よりもはるかに低いポイント密度で入手できる。好ましい実施形態では、実際のエンコーダ角度および各ポイントの実際の積分中点時間が適合モジュール160に提供される。適合モジュール160の役割は、実験150中に得たこれらの実験的走査を監視し、共鳴を含む領域を識別し、以前に記憶された経験的プロファイル140を用いてその領域を適合させて、較正時間の角度位置と比較した共鳴の移動を含む所望の値を170で数量化して返送することである。共鳴位置自体が正しく定義されていないために、絶対角度位置が一般に正確に測定できないのに対して、粗い値は移動を較正時に決定された公称ピーク位置に追加することで得られ、また170で返送される。
【0067】
図2は、機器制御ソフトウェアへのリンクを含むEPF較正および適合システムの好ましい実施形態のブロック図である。図2に示すように、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202を用いて、204で内部パラメータが獲得され、EPF較正モジュール210内に設定される。この実施形態では、較正走査からの生データが機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202からEPF較正モジュール210に送信され、EPF較正モジュールはそのデータをサブサンプラ220およびSavitsky−Golay平滑化ルーチン222に流し込み、その後データの微分をとって特徴付け、走査中の各ROIのモデル較正プロファイルを作成する。モデル較正プロファイルは、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202の制御下での任意選択のその後のアーカイビングおよび復元232のために任意選択として230で記憶される。
【0068】
次に、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202を用いて、250で内部パラメータが獲得され、EPF適合モジュール260内に設定される。チップを用いて実行されるROIごとの実行時間走査から生データ262が機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202からEPF適合モジュール260に送信され、EPF適合モジュール260は生データを承認し、264でEPF較正モジュール210にチップのモデル・プロファイル268を照会し、次いでさまざまな行列ルーチン270を用いて曲線を適合させ、必要に応じてこのプロセスを繰り返す。適合プロセスの結果280は機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202に返送され、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202は結果をユーザに提供する。好ましい実施形態では、EPFサポート・モジュール290がEPF較正モジュール210およびEPF適合モジュール260と対話してさまざまな試験および共通ルーチンを提供する。
【0069】
図3は本発明の較正走査のグラフ出力を示す図である。図3に示すように、ROI#nの生較正走査(事前走査)データがグラフ310上にA/Dカウント312内の信号強度対入射角θ314としてグラフ化される。各円320は実際の走査データ・ポイントを表す。ステップ・サイズとその可変性は誇張され、ステップ間の距離がわずかに不規則であるように見える。目を導くためにデータ・ポイント320を通して連続的な曲線322が描かれているが、実際の分析では何の役割も果たさない。
【0070】
図3で、グラフ330は、やはり信号A/Dカウント332対入射角θ334としてグラフ化されたROI#nの初期プロファイル曲線の平滑化およびリサンプリング結果を示す。サンプリング・ポイント340によって表されるサブサンプリングされたステップは現在では全て等距離にあり、プロファイル342の平滑化されリサンプリングされた較正プロファイル342の生成を可能にする。グラフ350は、度あたりのA/Dカウント370対入射角θ372としてグラフ化された対応する微分曲線360を示す。グラフ330ではデータ・ポイント380はサンプリング・ポイント340と同じである。
【0071】
図4は本発明の実行時走査のグラフ出力を示す図である。図4に示すように、ROI#nの実行時走査中に得られたデータ・ポイント402は、グラフ410上にA/Dカウント412対入射角θ414としてグラフ化される。データ・ポイント402が得られる角度ステップは不規則でよく、将来も不規則でよいことが多い。グラフ420は、グラフ410と同じ尺度でROI#nを適合させるための記憶された較正プロファイル430と微分432とを示す。プロファイル430も好ましくはROI#nから得られるが、所望により別のROIから得られるものでもよい。
【0072】
図4で、グラフ440は実行時走査データ・ポイント402に適合されるまでフルステップで移動されて曲線yshift450で表される較正プロファイル430を示す。微分曲線432も同様に移動されて微分曲線452と突き止められる実行時間角度ポイント460が生成される。フラット・ベースライン・モデル構成要素462も示されている。導出された経験的プロファイルがグラフ470で示されている。生データ・ポイント402が正方形で示され、ここでは細かい角度間隔(0.01度)で利用可能な移動された較正曲線yshift450からのポイント474が円として示されている。経験的プロファイルは枝刈りされた生走査ポイント480、482を含まない選択された適合ウィンドウに限定される。生データ・ポイント402は、移動されたプロファイルyshift450と、微分項452(データ・ポイント分離点でサンプリングされている)と、ベースライン・オフセット(図示せず)からなるモデルに適合される。実線y472は、同じROIまたは別のROIの実施形態では、実際の較正プロファイル430の平滑化され移動されたバージョンである結果として得られる経験的プロファイルである。グラフ470で、残りは強調のために誇張されている。
【0073】
較正段階。本発明の好ましい実施形態では、較正段階を開始するために、SPRチップについて比較的高い角度ポイント密度、通常0.05°公称ポイント間隔で、かつチップ上の全てのROIについての完全なSPR共振プロファイルを十分に含む角度範囲にわたってSPR走査が実行される。次いで得られた完全な2次元データ・セットが、各角度ポイントの実際に測定されたエンコーダ角を提供するベクトルと共に、較正ルーチンに送信される。角度ステップは正確に一様である必要はない。
【0074】
今度は、個々のROI走査は個別に実行される。各々が2次元アレイから抽出され、好ましい実施形態では、その品質が事前検査される。各々が実際に適当な深さの共振傾斜を有し、最小ピーク強度(傾斜外に)を有し、ただ1つの主要な傾斜を有しなければならない。角度は単調に増加しなければならない。使用可能と評価されたら、共鳴は厳格に標準化された角度ポイント間隔、通常0.010°でより高い角濃度までサブサンプリングされる。好ましい実施形態では、このサブサンプリングは以下の一連の工程によって実行される。
【0075】
1.Savitskey−Golayまたは他の任意の適した平滑化技法を用いて生走査が任意選択として事前平滑化される。
2.準ランダムに間隔を空けたポイントが3次スプラインまたはラグランジェなどの任意の適した補間方法を用いて補間され、所望の正規の角度格子上のサブサンプリングされたポイントが決定される。所望に応じて、この工程はなしにするか、極めて細かい較正ステップ・サイズを用いた簡単な直線補間に低減することができる。
3.走査の両エンドが任意選択として多項式適合を用いて走査のエンド・ポイントまでわずかに外挿され、走査範囲を狭めることなくさらにフィルタリングを可能にするために範囲がわずかに拡張される。
4.任意選択として、補間され拡張された走査がSavitskey−Golayまたは他の任意の適した平滑化技法を用いて再度平滑化される。各段階のSavitskey−Golayまたは他の平滑化パラメータは調整可能である。
【0076】
正規化されサブサンプリングされたプロファイルは任意選択として検証され、ある種の特性が決定される。これらの特性は制御限度に照らして検査され、各ROIプロファイルの受け入れ可能性が確立される。好ましい実施形態では、測定される特性は以下を含む。
1.共鳴の底の部分への多項式適合の分析極小を検出することで決定される公称共振角。得られる値は使用する多項式の次数とポイント選択によって変化するが、絶対値は重要ではない。この特性がなければ、実際の角度値ではなく角移動のみが報告できる。
2.最大半値の全幅(FWHM)で表された公称幅。
3.共鳴の公称表示深さ(Fractional Depth)。
4.プロファイル内の最大強度。
【0077】
値が有用であるその他の特性も測定できる。これらの結果を用いて各プロファイルの全体の品質インデクスを確立できる。通常の実施形態では、品質等級は、「優秀」、「良好」、「可」、「使用可能」、および/または「不可」などの値である。本発明では同様の任意の値も使用できる。
【0078】
各ROIのサブサンプリングされ正規化されたプロファイルは2次元アレイに挿入される。結果として得られる2次元アレイは、後の使用のために、特に公称共振角を含む関連する特性値と共に任意選択としてアーカイブに入れてもよい。プロファイル測定に使用される元の角度セットは一般にもはや必要なく、本発明の特定の実施形態でその将来の使用が識別されていない限り、廃棄することができる。
【0079】
最後に、プロファイルの各々について微分ベクトルが計算される。好ましい実施形態では、これはStavitsky−Golayの第1微分フィルタを用いて達成されるが、当技術分野で知られている他の方法も適している。特定のパラメータは調整可能であるが、3次およびポイント数9が通常使用される。微分も2次元アレイに組み合わされてメモリ内に記憶される。アーカイブされたサブサンプリング後のプロファイル・セットが取り出されるとこれらは容易に再計算されるので、通常はアーカイブされないが、必要に応じてアーカイブしてもよい。
【0080】
図5は、本発明の好ましい実施形態の較正段階の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0081】
図5に示すように、好ましい実施形態では、較正段階は初期化および自己試験手順505で開始する。プロファイリングするチップについて事前走査SPR走査が実行されて較正プロファイル・データ・セット510が獲得され、較正プロファイル・データ・セット510は事前品質検査520を受ける。所望に応じて、オプションのチップ品質検査525をこの時点で実行してもよい。品質が530で許容されない場合、プロセスは535で停止し、ユーザは問題が検出されたことを通知される。そうでない場合、較正プロファイルが540で取り出され、第1のROIについて545で処理される。プロファイリングする他のROIが550である場合、工程540および545が繰り返される。そうでない場合、較正セット統計が555で計算され、任意選択として、ユーザに表示される。次いで、較正セット・モデル・プロファイルの微分が560で計算され、較正セットはメモリ内で565で有効フラグを立てられる。較正セットは次いで任意選択としてメモリに570で記憶できる。
【0082】
初期化および自己試験505。好ましい実施形態では、EPF較正ソフトウェアの詳細な動作は制御パラメータのセットによって制御される。これらのパラメータのデフォルト値はプログラム内に含まれ、較正初期化ルーチンによって設定される。任意選択として、制御ソフトウェアは現在のパラメータ・セットを取り出し、かつ/または新しい値を設定できる。較正初期化手順はまたランダム化された合成データを使用する試験手順を用いてエンドツーエンドでEPF較正モジュールの完全な試験を開始する。試験結果は正確であるか検証される。好ましい実施形態では、初期化手順は較正初期化フラグの設定も含む。
【0083】
較正プロファイル・セットの獲得510。チップ上のすべての共鳴を十分に含む範囲にわたる入射角の関数として各々のROIについてSPR信号が測定される。角度ステップは名目上所定の値、通常、50mDegすなわち共鳴の幅(FWHM)の約5%に保たれている。SPR信号は通常、各々200〜4000のCCDピクセルを含む各ROIを定義する検波器ピクセルについて平均される。ROIの形状は、矩形、楕円形または環状などさまざまである。信号は普通、ROIに関して平均された平均A/D(アナログ−ディジタル)カウントで表されるが、これに限定はされないが、光子、光電子、ボルト、またはマイクロワットを含む一貫した単位が使用できる。検波器積分時間は実験で固定されているので、光電力(マイクロワット、光子/秒など)が使用されるか、光束の積分(光子、カウント、マイクロジュールなど)が使用されるかは問題ではない。好ましい実施形態では、ROIインデクスおよび角度インデクスを含め、完全なデータ・セットが2次元アレイ内に含まれる。別々のベクトルが角度値、好ましくは、角度エンコーダを用いて測定した角度を含む。したがって、公称の命令角度ではなく実際の測定角度を使用することが好ましい。
【0084】
通常の動作では、これらのデータは機器制御ソフトウェアによって獲得され、直ちにメインEPF較正ルーチンに渡される。ただし、実行後モードでデータ・セットの再分析のためにEPF較正ルーチンも使用できる。この場合、生較正走査が記憶され、取り出されることになる。
【0085】
事前品質検査520。データ・セットの適合性の定期検査が実行される。この工程は必須ではないが、データ・セットの問題の解決に役立つ。さまざまな手順で各ROIラベルが一意的であること、角度値が単調に増加していること、および個々の角度ステップ・サイズが仕様の範囲内にあることが検証される。これらのルーチンの1つは、さらに、最終較正プロファイル・セットに使用する正確な角度範囲と等間隔の角度値を確立する。
【0086】
チップ承認検査525。本発明の一実施形態では、SPRチップ自体を予想品質基準に照らして任意選択として試験してチップまたはその準備に障害がないことを保証できる。本発明のこのオプションの態様を図12の説明に関連して以下に詳述する。
【0087】
較正プロファイル走査の抽出540。好ましい実施形態では、ベクトル抽出ルーチンが詳細な処理のためにアレイから1つのROI走査をコピーする。
【0088】
1つの較正プロファイルの処理(コア手順)545。この手順を図6の説明に関連して以下に詳述する。
【0089】
較正セット統計値の計算555。本発明の好ましい実施形態では、最小共鳴予想SPR角(公称共振角)、共鳴の近似FWHM(FWHM)、較正プロファイル内のピーク強度(最大強度)、および上部接線からの表示深さ(表示深さ)の各特性の平均、最小、および最大値を含むある種のグローバル統計値が計算される。グローバル統計値は取り出せるが、ルーチン動作では必須ではない。
【0090】
較正セット・モデル・プロファイルの微分の計算560。好ましい実施形態では、完了したプロファイルの微分が、パラメータの微分次数と微分ポイント数がそれぞれ3と9に設定されてSavitsky−Golay法を用いて計算される。
【0091】
任意選択としての較正セットのディスクへの記憶570。完了した較正セットは後に取り出して使用するために機器制御ソフトウェアによって任意選択としてアーカイブすることができる。好ましい実施形態では、微分は完了した較正セットの部分としてアーカイブされないが、必要に応じて再計算される。あるいは、後ほど最初から較正を再計算するために生較正走査を記憶して使用することができる。
【0092】
図6は図5の工程545として示された単一のROI較正プロファイルの処理の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0093】
図6に示すように、選択されたROI較正走査の適合性と主要な品質機能が605で検査される。610で走査結果が不適になると、615でROIは「不良」として返送される。そうでない場合、生プロファイル・データについて一時平滑化が620で実行され、結果として得られる曲線が625で規定された角度間隔でサブサンプリングされる。必要に応じて、630で走査の両エンドが外挿され、規定された角度範囲が記入され最終平滑化が635で実行されて、完了した較正データ・セットのメンバが生成される。次いで、完了した較正プロファイルのさまざまな特性が640で決定され、使用の許容限度に照らして検査され、完了した較正プロファイルの品質が645で決定される。最後に、完了したプロファイルが650で2次元アレイに記憶される。
【0094】
単一のROI較正プロファイル走査の適合性検査605。好ましい実施形態では、現在の生走査について粗適合性試験の簡単なセットが実行される。この試験は、これに限定はされないが、十分な数のデータ・ポイントがあるか否かの検査、仕様の許容限度に照らした走査内のピークおよび極小信号の検査、適当な共鳴深さの予備検証のための最大許容限度に照らしたピーク信号に対する極小信号比の試験、極小信号が発生する角度ステップ(近似共振位置と考えられる)の検出、およびこの極小のいずれかの側に適当な走査範囲があるか否かの検査を含む。
【0095】
好ましい実施形態では、共鳴決定で曖昧さを引き起こす可能性がある複数の急傾斜が発生しないように追加の試験が実行される。これらの試験のいずれかが不合格になると、ROIプロファイル特性に「不可」のフラグが立ち、プロファイルが不良である理由が判定され、このROIのさらなる処理が終了する。これらの量が警告レベルになるとROIには「使用可能」のフラグが立つが処理は継続する。1回のROI走査が不合格になっても他のROI走査の合格した処理は妨げられない。
【0096】
予備平滑化620。好ましい実施形態では、実際の予備平滑化が従来のSavitskey−Golay平滑化法によって実行される。いくつかのSavitskey−Golayの実施態様とは異なり、好ましい実施形態で使用する実施態様では、走査の長さを短くはしない。これは好ましくは、パラメータが2、3の比較的穏やかな平滑化である。この平滑化動作は、プロセス全体を危うくすることなく、クリーン・データでは完全に省かれることがある。当技術分野で知られているその他の適した平滑化法も同様に使用できる。
【0097】
規定の角度間隔へのサブサンプリング625。好ましい実施形態では、走査は補間手順を用いてすでに定義された角度ステップでリサンプリングされ。ラグランジェ補間が有利に使用できるが、3次スプライン補間が適切に実行でき、この方法がこの好ましい実施形態で使用されている。当技術分野で知られている他の任意の方法も適している。サブサンプリングされたステップ間隔は公称角度ステップ・サイズ(通常、50mDeg)の規定の再分割、通常、5である。
【0098】
走査の両エンドの外挿630。いくつかのケースでは、較正セットの最終角度範囲のエンド・ポイントは実際に測定される最小および/または最大角度をわずかに超えて設定されている。そのようなケースでは、エンド・ポイントを外挿しなければならない。前のステップで決定された3次スプラインは外挿には適さないため、好ましい実施形態では、必要に応じて、走査の一方または両方のエンドで別々の多項式適合手順が使用される。n次の多項式が以前に決定された最終n+1のリサンプリングされたポイントに適合され、この多項式は不明の角度値(普通、わずか1)で評価されて外挿が実行される。この手順を使用することで、実験の角度値と正規化された角度ステップとの不可避の不一致による切捨てによって較正プロファイルの範囲が不必要に低減しないことが保証される。当技術分野で知られているその他の適した外挿技法もこの工程に有利に使用できる。
【0099】
最終平滑化635。好ましい実施形態では、平滑化手順を再度用いて、パラメータ次数とポイント数が通常3および9で、リサンプリングされたプロファイルの非切捨て最終平滑化が実行される。
【0100】
完了した較正プロファイルの特性の決定640。好ましい実施形態では、最終のリサンプリングされたプロファイルの詳細な特性は別の特性決定手順によって決定される。決定される特性は、これに限定はされないが、FWHM、公称共振角、表示深さ、および最大強度を含む。公称共振角以外の特性は、現在、システム性能の評価と較正プロファイルの品質の評価だけに使用されている。
【0101】
仕様許容限度に照らした特性の検査645。好ましい実施形態では、最大強度、公称FWHM、および公称表示深さの各特性は、仕様許容限度に照らして検査され、プロファイル品質は、「優秀」、「良好」、「可」、または「不可」などの適当な品質ラベルに従って設定される。
【0102】
完了した較正プロファイルの記憶650。好ましい実施形態では、リサンプリングされ、平滑化され、承認された完了プロファイルは永続的な内部データ構造体に記憶される。
【0103】
較正ルーチンに返送されるプロファイル特性は特別な方法で定義される。この定義は、本発明の好ましい実施形態のepfCalによって返送されるプロファイル特性の定義を示す図である図7を参照すると最もよく理解できる。菱形記号705によって示される生データではなく、サブサンプリングされたプロファイル702について計算が実行される。
【0104】
第1に、曲線702の極小710が識別され、θDIPで示される。本発明の好ましい実施形態では、この公称共振角710(SPR「極小」)はサブサンプリングされたプロファイルの底部へ多項式を適合させることによって突き止められる。次に、プロファイル702への上部接線、別名コンベックス・リッド715が決定され、屈曲ベースラインがある場合の共鳴の幅と深さの評価を支援する。幅と表示深さの計算は、コンベックス・リッド715からプロファイル702を減算した余りについて実行される。コンベックス・リッド上に示すポイント720はSPR極小710の真上にあり、表示深さを評価するために使用される。図7に示すように、プロファイル710のピーク強度725は最大サブサンプリング・ポイントである。
【0105】
コンベックス・リッド715に平行な線730が最小ポイント710を通って描かれ、別の平行線735がコンベックス・リッドと極小を通る平行線の中間に描かれている。プロファイルの最大半値740(FWHM)の全幅は中間の平行線735と共振プロファイル702の側面との交点の間の角拡散である。サブサンプリングされたポイント間の補間は行われないので、この値はサブサンプリング角度間隔に丸められる。
【0106】
SPRの表示深さはy1/y0で表される。y1745およびy0750を図に示す。さらに、サブサンプリングされたポイント間の補間は行われないので、この値はわずかに近似される。
したがって、決定される特性は以下の通りである。
a)走査におけるピーク信号725
b)公称共振角(度)710。好ましい実施形態では、これは指定された次数の多項式を指定された角度範囲にわたって共鳴の底に適合させることで決定される。基本的に意味はないが、この値は後ほど適合された走査につじつまが合う絶対傾斜角度を割り当てるために使用される。
c)共鳴の最大半値(FWHM)の近似全幅(度)740。好ましい実施形態では、近似FWHMを決定するために、手順はコンベックス・リッドに平行な共鳴極小を通過する線を有効に通過する。次いで手順は上側および下側の接続の中間に最も近い共鳴のいずれかの側のプロファイル内のポイントを検出する。これらの2つのプロファイル・ポイント間の角距離はFWHMで表される。補間は実行されない。
d)共鳴の表示深さ。好ましい実施形態では、共鳴内の極小の真上のこの線上のポイントは共鳴がない場合の信号強度IOの予想値として計算される。次いで表示深さは比(IO−IMIN)/IO(ただしIMINは共鳴極小の強度)として決定される。
【0107】
図8は、較正段階の構成および開始のためのユーザ・インタフェースの例を示す画面である。適合段階の構成および開始にも同じ画面が使用される。図8に示す画面の実施形態は例示のためにのみ提供され、本発明の概念を逸脱することなく、追加のパラメータを追加し、パラメータを削除し、または交番の画面構成を使用できることを理解されたい。
【0108】
図8に示す例示の構成画面はさまざまな角度走査パラメータを設定するために使用される。図8に示すように、例示の画面を用いてユーザは以下のパラメータを指定し、かつ/または検証することができる。
a)Prescan angle range(較正プロファイル走査である)−「事前走査開始角」805、「事前走査終了角」810
b)Prescan Angle Step Size−「事前走査角デルタ」815
c)Scan Extension Factor820:これは実行時走査範囲がこの好ましい実施形態で指定される方法である。較正実行で決定されるプロファイルの平均幅FWHMにこの係数が乗算され、実行時走査の半分の範囲が決定される。例えば、平均FWHMが0.8度で、走査拡張係数が1.5の場合、走査は1.5×0.8=1.2度だけ最高観測ROI共鳴より上から、1.2度だけ最低観測ROI共鳴より下の範囲に拡張される。走査範囲は、運転期間は固定でき、または適応でき、走査限度は、共鳴が屈折率の変化と化学的結合の影響下で移動することが観測されるにつれて自動的に増減する。
d)Step Size Fraction830:これは実行時走査角度ステップ・サイズを現在決定する係数である。好ましい実施形態では、直接指定するのでなく、平均FWHMの端数として計算される。度で指定もできるし、当技術分野で知られている他の任意の方法でも指定できる。
e)The Bi−Directional checkbox840:チェックされると、機器の上下角方向の光源走査としてデータが獲得され、そうでなければかかった時間を節約して各走査の最初に機械的に戻る。このモードを使用するには、EPFの共鳴時間機能を使用する必要がある。これは、そうしなければ、共鳴が正確に走査中でない時に連続走査での共鳴測定の時間間隔が大幅に変更されることになるからである。
f)Continuous vs.Stepwise850:システムの好ましい実施形態はステップ単位のスタート−ストップ角度走査またはノンストップ・メジャーオンザフライ・モードのいずれかまたは両方をサポートする。
g)Images per Step860:ステップ単位の走査では、可変数のCCD露光(フレーム)を各ステップで測定できる。普通、ステップあたり1つの画像が得られるが、追加の画像を追加してS/N比を改善することができる。
h)Camera Exposure Time870:各CCDフレームの露光時間が選択されて、個々のピクセルの飽和のリスクを回避しながらCCDピクセル・ウェルの容量を最大限使用する。このパラメータは完全にLED光源の強度に依存するが、通常、25〜100msである。
【0109】
上記およびその他のタイプの構成画面を拡張して、他の任意の適した較正および/または適合パラメータ設定を含むことができる。
【0110】
図9は、較正段階の出力例を示す画面である。図9に示す画面実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは交番の画面構成を使用できることを理解されたい。好ましい実施形態では、この画面は、較正プロファイル走査実行中に表示され、各ROIが分析されるたびに更新される。
【0111】
図9に示すように、較正走査を開始するボタン905が左側に示されている。画面上部には、「Flow Program」タブ911をクリックして選択する、実行方法のリスト910が示されている。このリストは実行中に発生し、SPR信号を生成する反応シーケンスに影響する液体制御工程のシーケンスを示す。実行温度(試料とSPRチップを含むチャンバの温度)がボックス912に示されている。「ROI Information」タブ913または「Result file」タブ914を選択して交番の情報表示を選択することができる。Imageタブ918をクリックするとアクティブなROI領域920のロケーションを示すSPRチップ自体の画像915が画面左側に表示される。いくつかのROI925は強調表示されている。これらの強調表示されたROIは、それについての角度走査928が右下の大きいグラフ930に表示されるROIである。Imageタブ918の代わりにROIタブ935が使用でき、この場合、ROIのロケーションはグラフ表示されるが、実際の単色のチップ画像は表示されない。一実施形態では、同様の画面を用いて、Start Runボタン950をクリックして開始する実行時間走査の結果が表示される。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、数秒かかる較正走査時に、グラフ930がリアルタイムで更新される。ROIピクセル間で平均される実際の測定強度は、図のドット記号960である。その間の線928は、これに限定はされないが、スプラインまたはベジャ曲線などの標準のグラフィック平滑化関数を用いて装飾のために補間される。図9に示すROIは特にウィングなどの形状のバリエーションと角度位置の分散を示す。これは異常ではない。これらの曲線と他のROIの残りの同様の曲線は較正処理の要である。好ましい実施形態では、各ピクセルの強度は12ビットA/Dコンバータによって0〜4096(212)の範囲のA/Dカウントに変換される。角度は正確な角度エンコーダの読取り値から得られる。
【0113】
図10は、共鳴がないことを示す「不良ROI」41がある較正段階の別の出力例を示す画面である。図10に示す画面の実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは交番の画面構成を使用できることを理解されたい。
【0114】
図10に示すように、EPF較正サマリ1010が右上に表示されている。EPF較正サマリ1010は、「ROI Information」タブ1015を選択すると表示される。ROIsタブ1020が選択され、チップがアクティブなROIを表す一連の点1030としてグラフ1025の左下に表示される。正方形1035が記されたROIが選択され、右側の表の升目に描画される。EPFプロファイル特性ウィンドウ1045と、右下の大きいグラフ1060内の共鳴曲線1050に示されるように、選択されたROI1040(ROI41)は「不良」で、共鳴を示さない。
【0115】
図11は、「良好RIO」190の詳細を示す較正段階の別の出力例を示す画面である。さらに、図11に示す画面の実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは交番の画面構成を使用できることを理解されたい。
【0116】
図11に示すように、EPF較正サマリ1110が右上に表示され、選択されたROI1901030のEPFプロファイル特性1120が左上に示されている。ROIタブ1040が選択され、チップがアクティブなROIを表す一連の点1160としてグラフ1150の左下に表示される。いくつかのROIは強調表示されている。これらの強調表示されたROIは、それのプロファイル1170が右下の大きいグラフ1180の右下に任意選択として表示されるROIである。
【0117】
チップ承認検査。EPFの機構によって、較正データ・セットの生成を行う前に、較正データからチップの品質を厳格に評価することができる。特定のタイプまたはバッチのSPRチップは、極めて小さいSPRプロファイルを有していなければならない。これらのプロファイル形状および角度位置からのいかなる逸脱も、チップが不正確に製造または加工されたか、チップに損傷がある徴候である。フル稼働の開始前に欠陥があるチップを識別することで貴重なユーザの時間と試料の材料を節約することができる。
【0118】
好ましい実施形態でこの機能を実施するために、良好な品質が知られているいくつかの完全なチップについて平均された代表的な較正プロファイルが各タイプまたは個別のバッチまたはデバイスについて生成される。これらはROIごとに生成できるが、チップ全体を表す単一のプロファイルが一般に使用される。この「黄金のプロファイル」からの予想される許容範囲の変動も確立される。この黄金のプロファイル・データと許容範囲の変形仕様が工場からSPRチップと共に出荷でき、またはその他の方法でユーザに配布でき、次いで機器制御コンピュータに記憶できる。
【0119】
図12は、図5の工程525に示すオプションのチップ承認手順の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0120】
図12に示すように、チップ承認手順は記憶された黄金の較正プロファイル1210から正しい「黄金の較正」1205をロードすることで開始される。次いで、記憶されたチップ承認パラメータ・セット1225を備えた適合モジュールが1220で開始する。単一のROI走査が較正走査データ1230から取り出され、図14に関連して以下に説明するように1240で処理され、その結果が黄金のプロファイル1250に適合するか分析される。そのROIの結果が試験1260に不合格になると、不良ROIのカウントが1265でインクリメントされ、不良ROIの数がユーザへの報告のために任意選択として記憶される、1270で追加のROIを試験しなければならない場合、別の単一のROI走査が較正走査データ1230から取り出され、全てのROIの処理が完了するまでプロセスが繰り返される。試験の最後に、検出された不良ROIの数が所定のしきい値1280を超えると、不一致がユーザに1285で表示され、かつ/またはチップが1290で拒絶される。そうでない場合、チップ承認手順は試験されたチップが許容限度内であるという表示を1295で返す。
チップ承認検査(CQC)を実施するために以下の工程が実行される。
【0121】
黄金の較正のロード。チップのタイプまたはバッチ番号に対応する記憶された黄金の較正のアーカイブがロードされ、現在の較正セットになる。較正セットは、通常、各ROIのプロファイルの大きいセットではなく、単一のプロファイルからなる。
【0122】
特殊なパラメータ・セットでepfFitを初期化。CQCに使用されるepfFitパラメータは、一般に、通常の分析演算で使用されるepfFitパラメータとは異なる。特に、さまざまなパラメータの仕様の許容限度は変化し、標準より厳格なものも、またより緩やかなものもある。特に、個々のROI走査は同じチップの同じROIについて測定される個別化されたROI較正ではなく、単一の標準プロファイルと比較されるので、許容されるrmsの余りは大きくなる。
【0123】
事前走査データからの単一のROI走査の取り出し。較正段階に使用されるのと同じ較正データ・セットがCQCに使用される。一度に1つのROIがそのセットから取り出され、特別な構成のepfFit手順に提出される。データ・ポイント間隔は較正走査のそれであり、したがって、実行時走査に通常使用される間隔よりも小さいことに留意されたい。
【0124】
1つのROI走査の処理。これは、通常の実行時データを適合させる場合のプロセスと同じであるが、以下の例外がある。
a)上記のようにepfFitパラメータは修正されている。
b)各ROIに関連する較正プロファイルは異なる。
【0125】
問題のROIについて最近測定された較正プロファイルを使用する代わりに、全てのROIについて黄金のプロファイルが使用される。好ましい実施形態では、使用するROIはepfFit内の呼出元パラメータの1つである。この場合、値は「黄金のプロファイル」または黄金のプロファイルに付けられた任意のラベルである。
【0126】
黄金のプロファイルへの適合のROI結果の分析。仕様の許容限度を修正した通常の適合プロセスによって、いくつかの品質検査がプロセス内に生成される。これらのうち、rms余りの値が最も重要で、したがって、主要な試験基準である。これは、FWHMの変化を含む、予想標準形状からのSPRプロファイルに形状のあらゆる著しい変化を検出するからである。製造および処理の一貫性が変化するにつれて、このパラメータおよびその他のパラメータの可能な変形形態も修正できる。過剰な不具合拒絶を回避するために、主要なパラメータの適当な限度は通常、現場の経験に照らして確立される。
【0127】
ただし、通常の適合では普通直接関係がない他のパラメータも検査しなければならない。これらは以下を含む。
a)SPR角度移動。実行前に測定が行われるので、SPR角度は次の2つの効果によって黄金の標準から変化するはずである。(i)使用しているバッファ・ソリューションの屈折率、(ii)ユーザによってチップに適用された表面処理またはリガンド。項目(i)は、使用するバッファの定義が与えられると明示的に可能になる。項目(ii)は一般に数量的に考慮されないが、(ii)の効果は常にSPR角度を増加させることである。したがって、(i)を考慮した後では、(指定された許容範囲を超える)いかなる負の角移動も障害の徴候である。
b)ベースライン適合係数。共鳴深さを含むプロファイル形状が黄金のプロファイルに近い場合、適合内のベースライン構成要素は極めて小さくなければならない。したがって、この適合に制限を加えることは共鳴深さが許容誤差の範囲内にあることを保証することと等価である。
c)プロファイル適合係数。この値は普通1の大きさであるが、対象機器での信号強度が低下した場合にこれに合わせて1より小さくてもよい。黄金のプロファイルはフル強度に合わせて正規化されるので、この適合係数はごくわずかな量しか1を超えることができない。
【0128】
ROIはこれらの試験で1回または複数回不合格になると、「不良」のフラグが立てられ、不適合の原因が記録される。そのような仕様外ROIの数が記録される。
【0129】
不良ROIが多すぎる場合の試験。全てのROIが分析されると、不良ROIの数が所定の限度(0でもよい)に照らして試験される。この数がこの限度を超えると、チップは拒絶され、または最低でも、ユーザに通知がなされて試料ソリューションにかかる前に実行を終了することができる。所望に応じて、ユーザに「不良」である特定のROIを通知して、障害ROIが計画された実験で特に問題であるか否かをユーザが決定することができる。
【0130】
適合段階。好ましい実施形態では、実験中に得られた共鳴を測定する時には、epfFitルーチンが呼び出される。この場合、一度に、単一のROIに対応する1つのプロファイルのみが提出される。適合で使用するROI IDと共に、3つのベクトル、すなわち、各データ・ポイントのSPR強度、エンコーダ角、およびクロック時間が提出される。
【0131】
プロファイルがサンプリングされる角度は一般に較正時に使用される角度とは異なり、また同様の間隔である必要もない。通常、測定を高速化するためにはるかにまばらな角度間隔が使用される。より幅広い角度間隔は、共鳴のFWHMあたりの最小ポイント数、通常3または4に達し、それからより粗い間隔が決定的に角の確度を低下させるまでは角度決定雑音にほとんど影響はない。データ内のショット・ノイズ(およびその他の振幅雑音)は実際に確度を低下させるが、より粗いデータ・ポイント間隔によって測定で観測される光子の数が少なくなる程度までは、有害な影響がある。
【0132】
精度と確度が低下するとはいえ、部分走査(すなわち、不完全な共鳴プロファイル)で有効な適合を得ることができる。これは測定可能な有効屈折率(RI)のダイナミック・レンジを拡張する際に有用である。
【0133】
適合プロセスは上に概説した較正プロセスよりも複雑である。基本的な工程は以下の通りである。
【0134】
1.データ・ベクトルのアレイ・インデクスが一貫しているか検査される。角度の増加、減少いずれも可能であるが走査が角度の点で単調であるように角度が検査される。
【0135】
2.ROI指定に確実に較正が存在するようにROI指定が検査される。普通、適合に使用される較正プロファイルは同じROIに属するが、これは必須ではない。何らかの理由でこのROIが較正されなかった場合、または較正が失敗した場合、別の同様のROI較正プロファイルを代わりに用いても問題がない。これは、適合結果がプロファイル形状に極度に影響されることがないことと、実験中にまず重要であることは絶対SPR角ではなく角度移動であることが理由である。
【0136】
3.角度が減少順である場合、厳密に増加する角度順である較正プロファイルとの比較でデータ・ベクトルは便宜上反転される。
【0137】
4.走査時の最下ポイントを突き止める処理と少数の近隣ポイントを低次多項式(2次)に適合させる処理の適切な組み合わせを用いてSPR極小の大まかなロケーションが決定される。明らかな極小が検出できない場合、この手順は失敗であり、場合によっては、最初の推測として最下ポイント(走査の一方のエンドの場合)が使用される。
【0138】
5.較正段階ですでに計算された正確なサブサンプリングされた較正プロファイルおよび微分が取り出される。
【0139】
6.較正プロファイルおよび微分がフル・サブサンプリング・ステップ(通常0.01°)で移動され、較正プロファイルの公称極小を上記(4)の工程で決定された粗いSPRロケーションに一致させる。これは単に、インデックス・ポインタ計算にすぎない。
【0140】
7.適合させるSPR走査と較正プロファイルとの重畳部分が識別される。一般に、重畳はいずれか単独よりも短いが、一方が他方に包含されることもある。この重畳部分のみが使用される。
【0141】
8.実際のSPR走査角度値の信号および微分値が移動された較正プロファイルから取り出される。好ましい実施形態では、これはラグランジュ補間で達成されるが、当技術分野で知られているその他の任意の方法も使用できる。較正プロファイル内の角度ポイント間隔は極めて小さいので、この方法は正確である。
【0142】
9.SPR走査の切り捨てられた部分が適合される。好ましい実施形態では、これは、モデル構成要素として以下を用いて古典的な線形最小二乗適合を使用して達成される。
a)較正プロファイル
b)較正プロファイル微分
c)定数の追加オフセット。
【0143】
10.移動した較正プロファイルの見かけ上のSPR極小の表示角移動は上記工程(9)で得られた2つの適合係数の比、すなわち、較正微分適合係数の較正プロファイル係数に対する比として決定される。後者は普通は約1であるが前者は通常極めて小さい。この表示移動は上記の工程(6)で適用される離散的移動に追加され、較正時のSPRロケーションの実際の総SPR移動の予想値を提供する。
【0144】
11.工程(10)で得られる表示移動がサブサンプリング・ステップの半分を超えた場合、表示ステップがサブサンプリング・ステップの半分以下になるまで工程(6)〜(10)が繰り返される。上記の基準が現在好ましいが、その他の終了基準を使用しても問題がない。表示移動がステップの半分に極めて近い時に前後にエンドレスにジャンプすることを防止するために特別な手段が提供される。
【0145】
12.この段階で、SPRロケーションはかなり十分に確立されている。ただし、ユーザは、任意選択として、共鳴付近のSPR走査の限られた領域を最終適合に使用してプロファイルのウィング内のアーチファクトによるエラーを低減することができる。この「スウィート・ゾーン」適合を使用する場合、SPR走査はさらに指定の低減された幅に切り詰められ、共振ロケーション上で可能な限りセンタリングされ、工程(6)〜工程(11)のプロセスが再度繰り返される。最初にスウィート・ゾーンまで切り詰めない理由は、可能な限り多くのデータを用いることで大幅に不正確な適合を生む尤度を低減することにある。較正と未知のプロファイルの正確なアラインメントがかなり正確に決定されると、大幅に切り詰められた共鳴などの病的なケースにあっても切り詰められた走査を用いた工夫が安全である。ただし、切り詰められた適合に直接スキップすることで実行速度を上げることができる。
【0146】
13.さまざまな品質検査が実行される。特に、有効な適合を実行するには重畳と任意のさらなる切り詰め後に少なくとも3つのポイントが残っていなければならない。下限値と上限値の両方に照らして適合の余りが検査される。
【0147】
14.上記で決定した角移動に加えて、この移動を以前に決定された較正公称SPR極小角に追加することで絶対共振角が予想される。
【0148】
15.検出された極小のいずれかの側の走査データ・ポイントが測定された時間の間を補間することで走査で極小が発生したクロック時間が予想される。この極小時間は得られたSPR角を力学分析で用いる特定のクロック時間により正確に割り当てる際に極めて有用である。
【0149】
16.適合係数およびこれらのパラメータと制御限度との比較に基づく品質予想などのさまざまな詳細と共に、適合の結果が呼び出し元プログラムに返送される。
【0150】
図13は、本発明の適合段階の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0151】
図13に示すように、好ましい実施形態では、適合段階は初期化および自己試験手順1310で開始する。次いでSPR動作が実行され、時間tの実行時角度走査が1320で獲得される。次いで、単一のROI走査が1330で取り出され、最初のROIについて1340で処理される。1350でプロファイリングする他のROIがある場合、工程1330および1340が繰り返される。そうでない場合、グラフィック表示が1360で更新され、1370で適合結果がメモリに記憶される。1380で別の角度走査が必要な場合、手順は工程1320に戻る。そうでない場合、適合段階は完了する。
【0152】
初期化および自己試験1310。好ましい実施形態では、EPF適合ソフトウェアの詳細な動作は制御パラメータのセットによって制御される。これらのパラメータのデフォルト値はプログラム内に含まれ、適合初期化ルーチンによって設定される。任意選択として、制御ソフトウェアは現在のパラメータ・セットを取り出し、かつ/または新しい値を設定できる。初期化ルーチンはまたさまざまな試験手順を用いてエンドツーエンドでEPF適合モジュールの完全な試験を開始する。これらの試験手順は、順次に較正モジュールからの手順によって生成されるランダム化された合成データを使用する。試験結果は正確であるか検証される。好ましい実施形態では、初期化プロセスは適合初期化フラグの設定も含む。
【0153】
動作の実行。較正セットを獲得すると、一般に動作が実行され、チップ上にさまざまなバッファおよび試料ソリューションが流れる際にいくつかの(通常100〜400またはそれ以上)ROIのSPR角応答の時間進化を追跡するために角度走査のシーケンスが実行される。結果として得られるSPR応答は後ほど分析され、結合親和性、運動率定数などの対象のイベントおよびパラメータが決定される。
【0154】
時間tでの実行時間角度走査1320。1〜2分から数時間またはそれ以上継続する(ただし関連する化学反応速度の時間尺度に応じて通常20〜200分)SPR実行時の各時間ポイントについて、角度走査が実行され、その後にEPF適合が実行されてROIの各々について共振角が決定される。適合は通常、時間的に次の時間ポイントのデータ獲得と重畳する。
【0155】
チップ上のすべての共鳴を含むのに十分な範囲にわたる入射角の関数として各々のROIについてSPR信号が測定される。この範囲は、較正ステップで使用する角度範囲と同じでも、それより大きくても、またはそれより小さくてもよい。好ましい実施形態では、実行時に全てのROI共鳴を共鳴移動として包含するために、この範囲を必要に応じ実行中に変更してもよい。角度ステップは名目上所定の値、通常、50〜200mDegすなわち共鳴の幅(FWHM)の約5〜20%に保たれている。通常、これらの角度ステップは較正手順に必要なステップ数よりはるかに多い。
【0156】
較正段階と同様、SPR信号は各々通常200〜4000のピクセルを含む各ROIを定義する検波器ピクセルについて平均される。ROIの形状は、矩形、楕円形または環状など、当技術分野で知られているさまざまな形状である。上記のように、信号は普通、A/Dカウントで表されるが、任意の一貫した単位も使用できる。好ましい実施形態では、ROIインデクスおよび角度インデクスを含め、完全な信号強度データ・セットが2次元アレイ内に含まれる。
【0157】
別々のベクトルが角度値、好ましくは、角度エンコーダを用いて測定した値を含む。公称の命令角度ではなく実際の測定角度を使用することが好ましい。較正データ・セットには必要ない別のもう1つのベクトルは、個々の角度データ・ポイント(各々が1つまたは複数のCCD検波器フレームからなる)が得られた平均実クロック時間を含む。各角度値について単一のCCD露光が使用されるが、複数のフレームを平均するか共に追加してS/N比を改善することができる。
【0158】
好ましい実施形態では、通常の動作では、これらのデータは機器制御ソフトウェアによって獲得され、各々の角度走査が終わるたびに直ちにメインEPF適合ルーチンに渡される。ただし、実行後モードでデータ・セットの再分析のためにEPFも使用できる。この場合、測定されたデータはディスクに記憶され、取り出されることになる。
【0159】
単一のROI走査の取り出し1330。好ましい実施形態のepfFitルーチンは1回に1つのROIしか処理しない(ROIのセット全体を1回の呼び出しで処理するepfCalとは異なり)ため、各ROIのデータは機器制御ソフトウェアによって分離されなければならない。各ROIについて、ROIインデクスおよび/またはラベル、ピクセルで平均した信号強度のベクトル、エンコーダ角度のベクトル、およびフレーム測定時間のベクトルが適合ルーチン呼び出しのために作成され使用される。なお、最後の2つのベクトルは各走査で全てのROIについて同じであるが、走査ごとに変化することに留意されたい。
【0160】
1つの実行時ROI走査の処理1340。このコア手順は図14の説明と関連して後に詳述する。
【0161】
グラフィック表示の更新1360。好ましい実施形態では、機器制御ソフトウェアは一般に、いくつかの、または全てのROIについてリアルタイムでSPR応答(角)対時間曲線を表示する。これによって、ユーザは化学的結合曲線の展開を観察し、問題を識別し、あるいは実行を早く終了するか延長するかを決定できる。
【0162】
適合結果のディスクへの記憶1370。品質尺度およびエラー・コードを含む適合結果は任意選択としてディスクに記憶して後ほど詳細に分析できる。好ましい実施形態では、ROI走査を実行するたびに、各時間データ・ポイントでの結果は、以下を含む結果構造体を含むベクトルからなる。すなわち、epfFit結果、ROIラベル、走査での平均ステップ間隔(単位:度)、走査反転フラグ(走査が角度の下方向で反転する必要があれば真)、較正プロファイルからこの走査への角移動Δθ、公称較正プロファイルSPR角に基づくθSPR、共鳴極小が観察された実行時間、適合で実際に使用される角度走査ポイント数、RMSの余り(δyRMS)、適合の振幅(1程度)、適合のベースライン、外挿フラグ(不完全なプロファイルのために結果が外挿された場合に真)、走査切り詰めフラグ(適合されたフル走査長に満たないことを示す(普通のケース))、結果の品質パラメータ(通常の可能な値は「優秀」、「良好」、「可」、または「不可」)、一次エラー状態(もしあれば)の説明、および遭遇する致命的でない警告状態の数。
【0163】
図14は、図13の工程1340に示す1回のROI走査の処理の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0164】
図14に示すように、最初にROIの較正プロファイルの利用可能性と取り出されたデータ・ベクトルの一貫性が1405で検査され、走査インデクス付けが1410で検査され、SPR傾斜角度が1415で粗予想されて走査範囲内にあることが確認される。1420でこれらの試験のいずれかが不合格になると、1425で処理は停止し、エラーが返される。そうでない場合、ROIの較正モデル・プロファイルが1430で取り出され、1435でSPR角が較正モデルへの適合によって決定される。1440でスウィート・ゾーン適合が要求されると、1445で走査は切り詰められ、1450で較正モデルに切り詰められた較正を適合させることでSPR角が再計算される。最後に、SPR極小の発生時間が1455で予想される。
【0165】
較正利用可能性の存否の検査1405。好ましい実施形態では、信号強度、走査角、および測定時間ベクトルが全て矛盾なくインデクス付けされていることを検証するために一貫性検査手順が使用される。次に、現在の較正セットが存在し、現在のデータのチップIDに対応し、指定されたROIの較正プロファイルが存在し有効であることが検証される。問題があれば、そのROIの適当なエラー・フラグがセットされる。
【0166】
走査インデクス付けの検査1410。好ましい実施形態では、走査の意味が反転すると(すなわち、大きい入射角から小さい入射角へ)、正しい意味を持った3つのデータ・ベクトルの作業用コピーが生成される。これは双方向走査を使用する際の交互の走査において実行され、データ獲得が迅速になる。このルーチンはまた、角度ステップが単調であり、大きさが十分に一貫していることと、角度データ・ポイントの数が十分であることと、走査によって十分な角度範囲がカバーされることと、測定時間値が時間において単調であることを検査する。
【0167】
SPR角度の粗予想1415。最初、共鳴の角度ロケーションの第1の予想が生成される。第1に、走査の極小強度ポイントが突き止められる。ある種の制御パラメータの設定に応じて、極小が走査内に、少なくとも両方のエンドから一定の指定された距離に出現することが要求される。あるいは、外挿が許され、共鳴位置が走査範囲外にあってもいい場合がある。これらの設定に従って、極小が走査のいずれかのエンドに近すぎない場合、走査は承認される。極小が走査の各エンドから少なくとも1データ・ポイントの位置にある場合、2次適合を用いて補間された角極小が予想される。そうでない場合、極小自体が粗予想として使用される。この粗予想されたSPR角を開始ポイントとして用いることで、以下の適合プロセスが容易になる。SPR角を粗予想する当技術分野で知られているその他の方法も適している。
【0168】
SPR角の正確な決定1435、1450。このコア適合手順は、図15の説明と関連して後ほど詳述する。第1に、適当な較正モデル・プロファイルおよび微分ベクトルがメモリから取り出される。次に、図15と関連して詳述する適合計算「較正モデルへの適合によるSPR角の決定」がフル走査範囲を用いて1回実行される。次いで、スウィート・ゾーン適合が要求された場合、走査範囲は第1の計算されたSPR角のいずれかの側の指定のスウィート・ゾーン範囲に切り詰められ、コア適合手順が繰り返されて最終結果が得られる。初期のフル範囲の適合は制限範囲のスウィート・ゾーン適合よりもより堅牢であり、データ内の異常または極めて不正確な初期予想によって「だまされる」ことなく適当な共振角を見つけることが容易になることから、この繰り返しが実行される。他方、スウィート・ゾーン適合は適合をさらに磨き上げて最適化するように指定できる。これは、スウィート・ゾーン適合が走査データの遠方ウィングの起こり得る形状のアーチファクトによって影響されることが少ないためである。
【0169】
スウィート・ゾーンへの切り詰め1445。好ましい実施形態では、スウィート・ゾーンへの切り詰めは2つの工程で実行される。第1に、走査が一方または他方のエンドで推定上のスウィート・ゾーンを含むのには短すぎるか否かが手順によって判定される。そうである場合、スウィート・ゾーンの角限度は可能であれば短いエンドから移動され、スウィート・ゾーンの角度幅全体が維持される。第2の工程で、別の手順が実際の切り詰めを実行する。
【0170】
極小の時間の予想1455。SPR共鳴が検出された表示データ・ポイントが分かると、好ましい実施形態では、測定時間が補間されてこのROIのSPR極小が出現した実行中の時間が決定される。ROIによっては走査の開始時付近に複数の極小を有することがあり、またエンド付近に有するROIもあるため、角度走査の開始時間または中間点を使用するだけでは十分でない。正確な時間は運動結合曲線の後ほどの分析で重要である。
【0171】
コア適合手順。図15は、図14の工程1435および1450で説明した経験的プロファイル適合を用いたSPR角の決定の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0172】
図15に示すように、同じROIの較正走査から得られる実行時SPR共振角の予想オフセットが1510で計算され、走査は1520で較正プロファイル限度1520に切り詰められる。次に、1530で、較正プロファイルは補間され、微分モデル・ベクトルが予想オフセットで計算される。補間された較正プロファイルを用いて1540で切り詰められた走査に適合が実行され、予想移動からの余りの角度移動が1550で適合係数から計算される。1560でSPR共振角の改良された予想が計算され、1570で適合余りが計算される。好ましい実施形態では、1580で角度移動の大きさが較正プロファイルのサブサンプル角度ステップ間隔の半分を下回るまでこの適合ループが繰り返される。ただし、任意の適した収束基準も有利に使用できる。共鳴移動の値が所定の収束基準に収束するまでこの処理が繰り返される。
【0173】
好ましい実施形態では、2回呼び出される手順によって、基本SPR角度決定が実行される。入口で、この手順には較正モデル・プロファイルと微分と、SPR共振角の初期予想θ’SPRが供給される。出口で、この手順は結果構造体を返送する。
【0174】
ΔθEST=θ’SPR−θCAL1510。較正走査でのそのロケーションからのSPR共鳴の予想オフセットΔθESTが計算され、モデル構成要素の適当な移動が可能になる。
【0175】
較正プロファイル限度への再切り詰め走査1520。一般に、現在の角度走査は一方または両方のエンドの較正モデルがカバーする範囲を超えて拡張することができる。したがって、走査は、現在の予想角度オフセットΔθESTを用いて決定される較正範囲内に収まる範囲に一時的に切り詰められる。なお、一時的に切り詰められたポイントは後の繰り返し処理で復元できる。
【0176】
補間された較正プロファイルの計算1530。補間された較正プロファイルの計算153は適合アルゴリズムの最も微妙な部分の1つである。現在の予想角度オフセットΔθESTに基づいてサブサンプリングされた較正モデル・プロファイルおよびその微分がサブサンプリングされた角度ステップ(通常10mDeg)の整数倍だけ移動され、適合される走査の予想位置とできるだけ近くに位置合わせされる。次いで、モデル・プロファイルおよびその微分は、ラグランジェ補間を用いて、適合する再度切り詰められた走査の実際の不規則な間隔の測定角度値に補間される。エンド・ポイントでは、2次ラグランジェ補間が使用され、切り詰められた走査の内部ポイントでは、4次ラグランジェ補間が使用される。このポイントで、リサンプリングされた較正プロファイルおよび微分モデルが適合する走査の予想移動位置で作成されている。好ましい実施形態ではラグランジェ補間が使用されているが、当技術分野で知られている多数のその他の方法も適している。
【0177】
再度切り詰められた走査の最小二乗適合の実行1540。好ましい実施形態では、切り詰められた走査は以下の3つの構成要素を用いて古典的な線形最小二乗適合を使用して達成される。
1.リサンプリングされた較正プロファイル
2.リサンプリングされた較正微分
3.定数のベースライン・オフセット
【0178】
最後の構成要素は絶対に必要というわけではないが、ベースライン・システム・ドリフトおよびその他の貢献する影響を考慮することが推奨される。追加の構成要素を含ませて、強度ドリフトおよびその他の貢献するアーチファクトを考慮することができるが、角度移動の予想値を改善するのではなく劣化させる可能性がある構成要素もある。適合モデルは以下の通りである。
【0179】
yFIT=C0yPROFILE+C1yDERIV+C2
適合係数からのδθの計算1550。較正プロファイルをリサンプリングするための予測角度から得られる余りの角移動δθは、微分構成要素の適合係数に比例する。より詳細には、
δθ=−C1/C0
ただし、C0およびC1はそれぞれ第1および第2のモデル構成要素適合係数である。
角度予想値の更新1560。SPR共振角の改良された予想値は次のように計算される。
θ’SPRNEW←θ’SPR+δθ
適合の余りの計算1570。余りはδyi=yOBSERVEDi−yFITiとして計算され、rms余り値は
δyRMS=[Σyδyi2]/DoF
として計算される。ただし、自由度数DoF=NPOINTS−NCOMPONENTS、NCOMPONENTS=3。
【0180】
|δθ|<ΔθCAL/2?1580。好ましい実施形態では、角移動δθの大きさが較正プロファイル内のサブサンプル角度ステップ間隔の半分を下回り、整数ポイント移動が真の移動にできるだけ近づく時に、適合ループの繰り返しが終了する。大半の場合、ループの1つの通過だけが必要であるが、初期予想が不正確な場合、1回または複数回の繰り返しが必要になろう。
【0181】
適合された角度値が1つのサブサンプリングされた較正プロファイル・ポイント間の中間位置に極めて近い場合に、ループ終了基準はまた発振の可能性を含む。したがって、|δθ|の値が整数オフセットが連続する繰り返しの2つの隣接する値の間で発振する際に0.5ΔθCALよりわずかに上であることが可能である。好ましい実施形態では、アルゴリズムがそのようなループに捕らわれると、数回繰り返した後で終了し、|δθ|の最小の観察値が使用される。なお、これは好ましい終了基準であるが、|δθ|<ΔθCALなどのより制約が少ない終了基準を使用しても問題はないことに留意されたい。
【0182】
結果の生成1590。θSPR=θ’SPR。角度適合手順の最終パス上の適合された角度予想の最終的な値が結果として得られる。これに対応するrms余りも報告される。各ROIの結果構造体が作成される。これは任意選択として後にディスクに記憶される。
【0183】
図16は、適合段階の出力例を示す画面である。図16に示す画面実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは別の画面構成を使用できることを理解されたい。この画面は図9〜11に示す画面に似ているが、左側のStart Runボタン1605を用いて開始された実際の実行時に表示される。
【0184】
図16に示すように、Imageタブ1615ではなくROIsタブ1610が選択される。ROIsマップ1622に示されるさまざまなROI1620にはさまざまなリガンドが配置されている。画面上部には、「ROI Information」タブ1630をクリックすると選択されるROI190用のEPFプロファイル特性およびEPF事前走査概要1625が見える。実行温度はボックス1635内に示されている。この場合、右下の大きいグラフ1640は、強度対角度ではなく実験の進行に伴う角度移動対時間を示している。さらに、ROIsマップ1622上の強調表示されたROI1650に対応するROI曲線のサブセット1645が表示されている。この図の個々のデータ・ポイントは各々、完全な角度走査に対応し、その走査からEPFは共振角位置を計算する。この場合、新しいポイントはほぼ6秒ごとに描かれ、この尺度ではポイントを分解するには間隔が狭すぎる。このために、記号は描かれず、接続線分だけが表示されている。
【0185】
実行の表示中、実行の最初にさまざまなROI図が自動的にゼロになり、初期角度の微分だけが表示される。300秒で、試料が導入され、さまざまなROI上で異なる度数まで表面への結合が開始する。t=900秒で、試料フローが終了し、バッファ・フローが再開し、結合された試料がゆっくりと表面から分離し始める。
【0186】
これらの種類の運動曲線(関連付け段階および分離段階)が後処理でさらに分析され、運動結合定数の所望の測定値が生成される。好ましい実施形態では、この分析は機器上で機器制御ソフトウェアを用いて実行されず、適合データは他の専門化したツールにエクスポートされる。完了したデータは、これらの他のツールを用いて容易に表示できる。
【0187】
別の構成。EPF形成で、測定されていたかのように、表にした理論モデル関数を使用できる。言い換えれば、較正走査をEPF内と同様に実行でき、理論応答曲線をこれらの測定した曲線に適合でき、適合した曲線をEPFモデル関数として使用できる。実際、これによって、EPFモデルを導出する際の平滑化動作を実行する別の手段が提供される。実験のプロファイルが理論によって正確にモデル化できるほど汚れがなければ、これはうまく機能する。ただし、EPF手法より大幅に優れているとは言えない。非線形適合はROIあたり1回の実行で1回だけでよいので、計算の間接費は許容できるであろう。ただし、ソフトウェアの複雑さは大幅に増加し、ほとんどまたは全く利益が得られない。さらに、適した関数が識別できるとして、明示の関数を経験的プロファイルの代役として使用でき、EPF手法で経験的プロファイルとほぼ同様に機能させられる。
【0188】
上記の好ましい実施形態の説明は角度走査光学共振システムについてであるが、前述したように、波長走査システムにも同じ手順を適用できる。その場合、「角度」および「角度ステップ」は「波長」および「波長ステップ」と読み替える。さらに、「エンコーダ角」は「較正波長値」と読み替える。また、波長ステップ・サイズの数値と単位は、「0.05度」ではなく「0.5nm」のように異なっていることが理解されよう。したがって、共鳴移動は角度移動でなく波長移動である。同様に、本発明のEPFシステムは、参照するパラメータを適当に修正して事前分散または相関走査から得られるデータに適用できる。さらに、共鳴移動を決定するための較正プロファイル微分の使用が今のところ本発明の好ましい実施形態であるが、当技術分野で知られている他の方法も適しており、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0189】
エラー報告。本発明の好ましい実施形態はエラー報告機能をさらに含む。エラー報告は、当技術分野で知られている多数の方法のいずれを用いても処理できる。エラーは較正または適合段階、あるいはその両方で報告できる。一実施形態では、それを超えるとエラーを記録するエラー深刻度レベルが指定される。任意選択として、指定されたしきい値を超える数のエラーが較正段階で検出されると、較正走査またはチップ自体が拒絶される。
【0190】
例えば、図17は、特定のROIへの不良適合の報告を示すローカル・エラー・ログの例を示す画面である。図17に示す画面の実施形態は例示のためにのみ提供され、本発明の概念を逸脱することなく、追加のパラメータを追加し、パラメータを削除し、または別の画面構成を使用できることを理解されたい。図17に示すように、この実施形態では、エラー・ログは、エラーの日付/時刻1710、エラーを発生させたアプリケーション1720、エラーの深刻度1730、ユーザ1740、エラーを発生させたモジュール1750、エラーの原因が受信した不良データであるか何か他のタイプのイベントであるかを示す標識1760、およびエラーの説明1770を報告する。
【0191】
図18は、特定のROIへの不良適合の報告を示すリモート・ネットワーキングされた監視コンピュータ上のエラー・ログの例を示す画面である。図18に示す画面の実施形態は例示のためにのみ提供され、本発明の概念を逸脱することなく、追加のパラメータを追加し、パラメータを削除し、または別の画面構成を使用できることを理解されたい。図18に示すように、エラー・ログは、エラーの時刻1810、エラーを発生させた設備1820、エラーの優先度1830、見かけのエラー発生源1840、実際のエラー発生源1850、および記録されたエラー・メッセージ1860を報告する。
【0192】
好ましい実施形態の実施。本発明は、当技術分野で知られている任意の適した方法、機構、または方法および/または機構の組み合わせで実施できるが、好ましくは、ソフトウェアで実施される。好ましい実施形態では、Visual BasicまたはC++を用いてソフトウェア・ソース・コードが実施されるが、当技術分野で知られている任意の適したプログラミング言語またはソフトウェア実施ツールも本発明の範囲内である。同様に、ソフトウェアは、任意の適したオペレーティング・システム、コンパイラ、インタプリタ、アプリケーション・プログラム、または当技術分野で知られている他のそのようなデバイスを用いて実行できる。本発明の好ましい実施形態では、出荷される実際の製品は、オブジェクト・コードとそれぞれに対応するダイナミック・リンク・ライブラリ(DLL)からなる。
【0193】
較正のための公開方法。好ましい実施形態では、多くの手順は、特に断りのない限り、不具合で真を返すブール関数である。Long型エラー・コードも一般に返される。多くの手順が任意選択である。必須の2つの手順は、較正初期化手順とメイン較正モジュールである。較正初期化手順は他のどのアクションにも先立って呼び出されなければならない。この手順は、較正モジュールを初期化し、較正パラメータのデフォルト値を設定し、較正モジュールのエンドツーエンドの自己試験を実行する。
【0194】
メイン較正手順は較正を実行してその結果を専用のメモリ内に記憶する。メイン較正手順は致命的なエラーに遭遇しない限り障害にならない。したがって、全手順が停止することなく1つまたは複数のROIが障害になることができる。問題が検出されたROIの数が返される。問題はさまざまな品質基準に基づく明白な障害から低い評価にわたる。呼び出し元プログラムは問題が検出されたROIの数>0か否かを検査し、そうである場合、調査しなければならない。
【0195】
適合のための公開方法。好ましい実施形態では、呼び出しごとに1つのROIしか適合されない。これは、ROI適合の間に、結果をインクリメンタルに描くなどの他の作業を実行できるという融通性を可能にする。さらに、グローバル基準でなくROIごとに詳細なエラーおよび問題の報告ができる。適合は較正より複雑で込み入っているが、含まれるのは1つの基本方法だけである。さらに、多くの手順は、不具合で真を返すブール関数である。EPF初期化手順とメイン適合モジュールの1つの手順だけが必須である。適合初期化手順は他のどのアクションにも先立って呼び出さなければならない。この手順は、適合モジュールを初期化し、適合パラメータのデフォルト値を設定する。メイン適合ルーチンは不具合で真を返すブール関数である。これは結果が無用であるという意味ではない。逆に、結果はその詳細を調査する必要がある。
【0196】
好ましい実施形態では、時間は実行開始から秒単位で測定される。場合によっては、人間が解釈しやすいように時間は実際には分単位で記憶される。例えば、親和性グラフは分単位のより低い時間尺度を有する。epiFitルーチンが受信する測定時間値は高精度である必要はない。それらの値は、運動分析などの動的な状況の時間軸のより正確な予想値を提供するためのものである。おそらくは精度が0.1秒の値が適当であるが、これより幾分高精度の値が有用である。これらの時間は、運動実行時に連続的に動作するあるシステム・クロックに従って普通秒単位で報告され、運動データを描画して分析するために使用される。秒単位の時刻も許容できるが、真夜中に「リセット」するため、その時刻の実行が停止することがある。
【0197】
したがって、本発明の装置および方法は、計算の複雑さが比較的低く、最小数の走査データ・ポイントを必要とし、ショット・ノイズにより影響を受けず、長い走査時間の使用を可能にし、より速い走査速度を提供し、試料の結果を迅速に提供し、より多くの数のROIの走査を可能にし、部分的な曲線しか利用可能でない時でも有用な結果を提供する表面結合光学共振曲線の数量化の新しい機構を提供する。上記のさまざまな実施形態の各々は複数の特徴を提供するために他の上記の実施形態と組み合わせることができる。さらに、本発明の装置および方法のいくつかの別々の実施形態について以上説明してきたが、本明細書に記載する内容は本発明の原理の適用を例示したものにすぎない。したがって、当業者によるその他の構成、方法、および代替形態も、添付の請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の表面結合光共振プロファイルを数量化する方法の一実施形態の工程を示す図である。
【図2】本発明の表面結合光共振プロファイルを数量化する装置の例示の実施形態のブロック図である。
【図3】本発明の較正走査のグラフ出力を示す図である。
【図4】本発明の実行時走査のグラフ出力を示す図である。
【図5】本発明の較正段階の動作流れ図である。
【図6】較正プロファイルの処理の動作流れ図である。
【図7】本発明の較正段階に返送されるプロファイル特性の定義を示す図である。
【図8】較正段階の開始のためのユーザ・インタフェースの例を示す画面である。
【図9】較正段階の出力例を示す画面である。
【図10】共鳴がないことを示す「不良ROI」41がある較正段階の別の出力例を示す画面である。
【図11】「良好RIO」190の詳細を示す較正段階の別の出力例を示す画面である。
【図12】オプションのチップ承認手順の動作流れ図である。
【図13】本発明の適合段階の動作流れ図である。
【図14】1回のROI走査の処理の動作流れ図である。
【図15】経験的プロファイル適合を用いた共振角の決定の流れ図である。
【図16】適合段階の出力例を示す画面である。
【図17】特定のROIへの不良適合の報告を示すローカル・エラー・ログの一例を示す画面である。
【図18】特定のROIへの不良適合の報告を示すリモート・ネットワーキングされた監視コンピュータ上のエラー・ログの一例を示す画面である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ数量化方法に関し、特に、光学共鳴表面センサを用いて得られるデータ・プロファイルの数量化に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年8月1日出願の米国仮出願第60/492061号への優先権を主張する。
【0003】
光学共鳴表面センサは、プロテオミクスおよび薬剤発見を含むいくつかの化学、薬理学、および生物工学研究分野で使用されている。表面プラズモン共鳴(SPR)プロファイルなどの表面結合光学共振プロファイルの数量化によって、分子相互活動のリアルアイムの観察と分析とが可能になり、生物化学ラベリングの影響を受けないデータが提供される。その結果、光学共鳴表面センサは生体表面の特徴付けおよび結合イベントのリアルタイム・モニタリングに幅広く使用されることになった。
【0004】
現状では、最も一般に使用されている光学共振表面センサはSPRを検出する。表面プラズモンは、誘電媒体と金属膜との間の界面に平行に伝播する横断方向の電磁電荷密度波である。表面プラズモンは、電子が豊富な金属表面と荷電分子または光子との相互作用によって生成される。適当な条件下では、プラズモンは光と共振し、光を吸収する。
【0005】
より具体的には、屈折率が異なる2つの透明媒体の界面で、より高い屈折率を有する側から入射する光が一部反射し、一部屈折する。一定の入射角を超えると、光は界面を通して屈折せず、内部全反射(TIR)が観察される。入射光は全て反射するが、電磁場成分は数十〜数百ナノメートル程度の短い距離を貫通してより低い屈折率の媒体に進入し、指数関数的に減衰するエバネッセント波を生成する。媒体間の界面に金属の薄い層が形成され、入射光が単色でp偏光の場合、反射光の強度は特定の入射角で低減する。これによって、エバネッセント波と表面プラズモンとの間の共振エネルギー伝達による表面プラズモン共鳴が発生する。
【0006】
多数のSPRセンサはクレッチマンまたはオットー型構成を使用する。この構成で、プリズムを通して進む全面的に内部反射した単色光のエバネッセント波は検出する材料に接触する金属膜内に表面プラズモンを生成する。これらの構成では、光は共振角θSPRとして知られる臨界角より大きい角度でプリズムを通って金属膜入射する。次いで、反射光の強度の急激な減少が検出されるまで入射角を調整することで表面プラズモンが検出される。誘電層の誘電率または厚さが変化すると、共振角も変化する。
【0007】
別の一般のSPR構成では、光は金属膜の試料側から入射し、表面に結合して金属表面内に回折格子を形成することでプラズモン共鳴を生成する。さらに別のSPR構成では、金属膜は光ファイバまたはその他の導波路の外部に堆積し、光は導波路を通して表面から入射しまたそこから出射する。
【0008】
SPRの存在は、背面側(クレッチマンのケース)または試料側(オットーおよび格子の対のケース)の誘電体/金属界面からの反射光の強度の測定によって検出される。共鳴条件は金属膜に隣接する媒体の有効屈折率、したがって、その表面の構成に影響される。ここで有効屈折率と言う用語を使用するのは、バルク液体層に加えて極めて薄い(<<1μm)固体生体層がある場合、生体層はSPR角を変化させ、その結果、液体屈折率を変化させるからである。これは、生体膜とバルク液体屈折率の両方が信号に影響する一般のケースである。基本的に、数百ナノメートルの厚さのエバネッセント層内の全ての物質が影響する。したがって、表面構成もまた、金属膜に吸収された任意の物質によって変化し、その結果、生体分子が膜に結合すると誘電体の有効屈折率が変化する。このために、金属膜への分子の吸収または吸収された分子の配座変化を正確に検出できる。したがって、SPR撮像を用いて、吸収時に発生するローカル屈折率の変化を数量化することで化学的に変化した金属表面上の生体ポリマーの存在および/または量を検出することができる。
【0009】
単色または準単色照明の場合、SPR角は結合された材料の量に従って直接変化する。この量と観察された共振角の変化との間には直線的な関係がある。特に、共振角と、たんぱく質、糖類およびDNAなどの生化学的に関連する分子の質量濃度との間には直線的な関係が確立されている。角度変化またはそのような変化に比例するその他の単位で表されたSPR信号は、したがって、センサ・チップ表面の質量濃度の尺度である。これは、検体とリガンドとの関連付けおよび分離が観察でき、平衡定数が計算できるということを意味する。
【0010】
別のSPR構成では、固定入射角が採用され、励起光の波長が変化し、またはアレイ分光計と共に広帯域光源が採用される。この手法によって、SPRは波長の関数としての反射光強度の傾斜として示され、極小SPRの波長はチップ表面の質量濃度の関数として直線的に変化する。この構成は、上述した結合機構(プリズム、格子または導波路)のいずれとも併用できる。
【0011】
表面プラズモン共鳴装置は、実験表面(チップ)上の単一スポット、複数のスポット、または同時に大規模なスポットのアレイでの質量負荷を測定することができる。アレイ機器の場合、SPR変化が測定される個々の領域を対象領域(ROI)と呼ぶ。
【0012】
SPR装置の出力は、独立変数が角度であるか波長であるかに関わらず、通常、グラフ化された共振曲線である。SPR共振のロケーションはセンサ上の材料の有効屈折率を示す。これに限定はされないが、以下の手法を含むSPR共振曲線移動数量化のいくつかの方法がこれまでに使用されている。
(1)ベースライン下の第1のモーメント
(2)特定の反射率/信号ポイント
(3)極小周囲の多項式の適合
(4)第1の導関数の零交差
(5)特定ポイントでの反射率/信号
(6)分析関数の非線形適合
【0013】
ある文献では、絶対屈折率(RI)測定値と相対RI測定値とを区別する。この区別の根拠は全く明らかというわけではない。それは、いかなる正確な絶対測定値もRI基準との比較を含んでいなければならないからである。ただし、システムが一旦較正され、その後しばらく絶対RI測定に使用される場合、あるアルゴリズムは他のアルゴリズムよりもより適していると言える。これは、例えば、センサの汚れまたはベースライン移動に対する感度が低減するなどの事態に起因する。また、屈折率の変化のみが問題であるケースもあろう。程度はそれより下がるが、結合曲線を測定するのに必要な種類の相対RI測定値にもこの考え方があてはまる。
【0014】
SPR曲線極小の位置は絶対屈折率の最も一般的な標識である。極小周囲の多項式の適合(方法(3))および第1の導関数の零交差(方法(4))の各方法は、この位置を具体的に決定する。その他の方法は、最小を決定するためにSPR曲線の他の側面に注目する。絶対RIを測定する利点は、SPR曲線の極小に注目することと、測定がSPR曲線の垂直移動(SPR信号軸に沿った)に影響されず、測定が(SPR曲線の平滑さを低下させる)SPRセンサ表面の汚れに影響されないということである。その欠点は、測定が分析に含まれるポイントの選択に影響され、雑音による読取値の歪を引き起こすおそれがあるということである。
【0015】
分析方法のいずれを実行する前にも、SPR曲線を平滑化することができる。これによって対時間屈折率追跡の際の雑音を低減できる。1つの一般的な平滑化アルゴリズムは最小二乗平滑法であり、通常、あるポイントの平滑化値を決定するのにそのポイントの両側の1〜12ポイントを含む。平滑化では複数のデータ・ポイントを各平滑化ポイントに有効に載せることができないので、1つまたはごく少数のデータ・ポイントにのみ名目的に依存するアルゴリズムは、平滑化手順によって支援することができる。ただし、大半の場合、優れた構成の適合手順には平滑化はほとんどまたは全く恩恵をもたらさないが、害になることすらある。
【0016】
(1)ベースライン下の第1のモーメント法
第1のモーメント法は、ベースライン下のSPR曲線の第1のモーメントを計算する。すなわち、ベースラインより下のSPR曲線の部分だけが計算に含まれる。n個の等間隔のデータ・ポイントの簡単なケースでは、アルゴリズムは以下のように表される。
【0017】
【数1】
【0018】
上式で、総計はSPR信号がベースラインを超えた全てのデータ・ポイントを除外する。
【0019】
この曲線が垂直に移動しない限り、アルゴリズムは屈折率の変化を正確に追跡する。ベースラインをどこに設定するかの選択は明らかでない。しばしば、ベースラインはSPR傾斜の中点に設定される。ベースラインを下げると分析中のポイントが減少し、雑音が増加することがある。ベースラインを上げるとポイントは増えるが、その結果、計算は曲線極小よりも外れる。分析のために選択されたポイントがセンサ範囲を超えて移動し始めると、分析の精度が落ちる。また、おそらくはセンサ表面の汚れが原因でSPR曲線に異常が発生する場合がある。異常がSPR傾斜付近にない限り、センサを使用することができる。この状況に対処するため、分析からさまざまな領域を選択的に除外することができる。したがって、異常がベースラインの下にあっても、異常が計算から除外されるので正確な測定結果が得られる。
【0020】
この技法は、一部にはそれが多数のポイントと非常に簡単なアルゴリズムを含むために、ショット・ノイズまたはその他の同様のランダム追加雑音に関して極めて優れた性能を示す。有用な追加機能は、ベースラインがデータ・ポイントを直接通過することはまれであるという事実を処理するためにいずれかの翼のベースライン・カットオフ・レベルで補間計算を提供するということである。これらのカットオフ領域の平滑化も有用である。ただし、SPRの第1のモーメント技法の基本的な欠点は、SPR共振が本来非対称であることによる強度または信号ベースライン移動(SPR曲線の垂直移動)に大きく影響されるという点である。したがって、データ・ポイントの高い密度が必要である。この方法でもセンサ表面の汚れが発生しやすい。
【0021】
(2)特定の反射率/信号ポイント
特定の反射率/信号ポイント法は、SPR曲線が事前指定された値であるピクセル位置を使用する。曲線が指定の値に最も近いデータ・ポイントを近似的に突き止めるためにまずこの曲線が検証される。次いで、曲線上のどこでその値が出現するかを正確に補間して識別するために、n次多項式最小二乗適合が実行される。この検索は、曲線の左側、右側のどちら側からも実行できる。SPR曲線がx軸に沿って移動すると、識別されたポイントはこの移動に追随する。
【0022】
この方法は、SPR曲線の全体の形状の変化に影響され、直接に極小ポイントを検出しない。それでも、小さい移動を数量化するのには有用である。さらに、センサのダイナミック・レンジを拡張するために使用できる。例えば、SPR曲線の極小がピクセル#1(センサ・レンジの左側)より下の場合、センサを用いてSPR曲線の何か他のポイントを追跡することができる。
【0023】
この技法は、簡単であること以外に推奨すべき点がほとんどない。方法(1)よりも強度またはベースラインの変化にはるかに影響され、また共振形状の小さい変化にも大きく影響される。決定のたびに共振曲線データをほとんど使用せず、したがって、雑音伝達性能が低い。満足がいく性能を得るためには、データ・ポイントの間隔を狭くする必要がある。
【0024】
この技法の別のバージョンは、共鳴の両側の計算を実行し、この両者の平均を用いて共鳴を追跡する方法である。これは方法(1)に似ているが、データの比較的小さいサブセットしか使用しないため、雑音性能が低い。また、方法(1)と比較して強度の変化に影響される。
【0025】
(3)極小周囲の多項式の適合
極小周囲の多項式の適合法では、共鳴の最小の近似的な位置を見つけるためにSPR曲線の第1の走査が実行される。極小の位置を補間するために、n次多項式最小二乗適合が(極小周囲のいくつかのポイントを用いて)実行される。この方法は絶対屈折率の測定に適している。この方法はSPR曲線のy軸方向の移動に影響されない。ただし、この方法は曲線上の比較的少ない数のポイントしか使用しないため、計算に含まれるポイントの選択に影響される。このため、時折、分析結果に異常(雑音)が発生することがある。
【0026】
この方法は、強度およびベースライン移動に関してはかなり優れているが、比較的少ないデータに依存し、最適以下の雑音伝達性能を示す。共鳴の極小を実際に突き止めようとする任意の方法と同様(全体位置とは逆に)、この方法は底部付近で雑音に影響されることがある。共鳴の形状によりよく適合する高次多項式を用いて、より幅広いデータ・ポイントを含ませることができるが、雑音を個々のデータ・ポイント上に収容するために極小を動かす機会も増える。言い換えれば、高次多項式は、増加した雑音導入を移動決定に変換する自由度が過剰である。実際、データ・ポイントの間隔を狭くする必要があるが、必要な角度走査範囲はかなり制限される。
【0027】
(4)第1の導関数の零交差
第1の導関数の零交差方法は、第1の導関数がSPR曲線の極小の近くで符号を変えるという事実から引き出される。零交差アルゴリズムでは、SPR曲線の近似極小ポイントが最初に決定され、近似極小付近の2、3のポイントを用いて第1の導関数の線形最小二乗適合が実行され、零交差点が補間される。
【0028】
この結果、おそらくは曲線上の最小の正確に画定されたポイントである共振曲線の実際の極小の多少とも直接的な決定が実行される。多数のアルゴリズムを用いて導関数を評価してその零交差を見つけることができ、これらのアルゴリズムの大半は何か固有の平滑化またはマルチポイント適合を含むため、このプロセスは、例えば、方法(3)(極小周囲の多項式の適合)と数学的に等価であるといえる。例えば、Savitsky−Golay導関数を用いてこのプロセスは方法(3)と完全に等価になる。具体的な実施形態によっては、この方法は方法(3)と同様に有効であり、ほぼ同じ利点と欠点とを有する。実施方法が悪いと、雑音性能が極めて低くなる。さらに、狭いデータ・ポイント間隔が必要である。この方法は、絶対屈折率の測定に適している。
【0029】
(5)特定ポイントでの反射率
特定ポイントでの反射率/信号法は、SPR曲線の移動に追随しない。この方法は、特定の角度(または波長)位置のSPR曲線の値を観測する。必要に応じて、所望の特定ポイントの信号値を補間するためにn次多項式最小二乗適合が実行される。この技法は、部品もアレイ検波器も動かさずにシステム内で使用できるため、文献でよく使用されている。この方法はSPR移動の少な目の範囲にわたって共鳴の側壁の線形性に依存する。この方法は小さい移動に関して本質的に方法(2)(特定の反射率/信号ポイント)と等価であるが、方法(2)とは異なり、より大きい移動に対応できない。一実施形態では、特定ポイントを囲むいくつかのデータ・ポイントが適合し、それによって雑音性能が多少改善されるアレイ検波器情報が使用される。
【0030】
(6)分析関数の非線形適合
理論応答。SPRセンサの文献では、測定された角度応答曲線を理論応答と比較することが一般的であり、いくつかのケースでは、結果的に共鳴移動を測定する膜厚を測定する手段としてこれらの理論的曲線への適合が実行されてきた。
【0031】
MainzにあるWolfgang Knollの研究所の論文[M.ZizlspergerおよびWolfgang Knoll「Multispot parallel on−line monitoring of interfacial binding reactions by surface plasmon microscopy」、Progr.Colloid Polym.Sci.,109:244〜253(1998)]は、実験的SPR角応答曲線の簡素なフレスネル・マルチレイヤ理論への適合を表す図(図2および5)を示す。適合はかなり弱いが、共鳴移動を測定するには十分である。適合方法の説明はない。可能な方法は、手動の試行およびエラー・パラメータ調整、またはLevenberg−Marcquardtなどの非線形方法を含む。
【0032】
格子SPRセンサに関する論文[C.R.Lawrence、N.J.Geddes、D.N.Furlong、J.R.Sambles、「Surface Plasmon resonance studies of immunoreactions utilizing disposable diffraction gratings」、Biosensors&Bioelectronics、11:389〜400(1998)]は、結合波方法[J.Chandezon,M.T.Dupuis,G.Cornet,およびD.Maystre,「Multicoated grating: a differential formalism applicable in the entire optical region」、JOSA、72:839〜846(1982)]を用いた実験データのGSPR理論への適合を示す。適合方法の説明はないが、従来の非線形最小二乗適合法であろう。この適合は、金の光定数、格子のピッチおよび溝深さ、および溝歪係数と吸収蛋白質層の厚さと(時には)光学的特性とを含む、多数のパラメータを含むと記されている。いくつかのケースでは、これらのパラメータのいくつかは固定できる。適合は極めて良好で、歪とアーチファクトとを回避するために実験上十分な注意が払われたことを示す。
【0033】
これらの技法は、任意のパラメータ数が小さい限り、SPR移動数量化の極めて良い結果をもたらすことができる。言い換えれば、層方向の厚さを除く全てのパラメータを確立するために予備適合が使用されたとして、またその後の実行時間の適合で厚さと、2、3の振幅スケーリング・パラメータのみが任意の場合に、性能は当然良好であるはずである。
【0034】
この手法の欠点は以下の通りである。
a)特にGSPRのケースでモデル計算が極めて複雑で集中力を要する。
b)非線形適合自体の計算が集中力を要し(内部に組み込まれた必要な論理モデル評価を超えて)、また自動化動作を複雑にする不安定さを示す。
c)実際、理論的な理想による共鳴形状からの頻繁な逸脱が観察される。実際、Zizlsperger他のデータは低い適合を示す。
【0035】
明示的機能。提案されてきた別の手法は、比較的追跡可能な明示的に定義された数学関数を実行時間データに非線形適合させる方法である。入力パラメータの所与のセットの複雑な計算プロセスから生じる数字的なプロファイルである理論的応答とは異なり、そのような明示の関数は低コストで計算でき、したがって、はるかに魅力的である。多項式は高速線形最小二乗適合を可能にする特性を備えてはいるものの、ある意味、これは多項式適合方法の拡張機能である。
【0036】
観察されたプロファイル形状の範囲によく適合する融通性を有する関数形式が識別されたならば、この手法は有効である可能性がある。その欠点は以下の通りである。
a)上記の多項式適合のケースのように適合を極小付近の小さい領域に制限しない限り、そのような関数形式を識別することは困難である。当然の結果として、選択された関数形式によってモデル化できない異常なプロファイル形状が発生しないという保証をすることは困難である。
b)非線形最小二乗またはその他の非線形適合手順が必要である。
c)全範囲の観察されたプロファイルを表すのに必要と思われる余分な形状パラメータによって雑音性能が低下する。この問題は上記の手順によって回避できる。この場合、予備適合を用いて任意パラメータの大半を固定し、共鳴移動および振幅のみを適合パラメータにすることができる。
【0037】
上記の説明の大半は表面結合光共鳴(SPR)の最も一般に使用される形態に関するものであるが、他のタイプの表面結合光共鳴から得られる光共振曲線も同様に数量化できる。そのような共鳴を測定する装置および技法の例は以下を含む。すなわち、光導波路センサ(Artificial Sensing Instruments AG製のBIOS−1角度走査格子結合光導波路装置など)、格子結合器(K.Tiefenthaler(1993)「Grating couplers as label−free biochemical waveguide sensors」、Biosensors Bioelectron.、8:xxxv−xxxvii)、プラズモン導波路共鳴装置(Z.Salamon、H.A.MacleodおよびG.Tollin(1997)「Coupled Plasmon−Waveguide Resonators:A new Spectroscopic Tool of Probing Film Structure and Properties」、Biophys Journal,73:2791〜2797)、回折異常センサ(米国特許5925878号、Challener、2000、「Diffraction anomaly sensor having grating coated with protective dielectric layer」)、共鳴ミラー装置(R.Cush他(1993)「The Resonant Mirror:a Novel Optical Biosensor for Direct Sensing of Biomolecular Interactions」、Biosensors&Bioelectronics 8(7/8):347〜353)、長距離SPR(http://plazmon.ure.cas.cz/tobiska/optsen01.pdf)、およびWO 99/30135(Tracy他.,1999年6月17日公開)に記載のPerkin Elmer光共鳴分析システムである。ある程度まで、これらの装置および技法は2つのテーマ、すなわち、誘電平面導波路および金属膜SPR、またはそれらの組み合わせについての変形形態である。これらの装置および技法は全て蛍光ラベルを必要とせず、しばしばバイオセンサと呼ばれるが、生体膜の特徴付けへの適用で制限されない。
【0038】
したがって、必要なものは、計算の複雑さが少ない割に走査データ・ポイント数が最小で、共振角の正確な決定と優れた雑音性能とを示す表面結合光共振曲線を数量化する方法である。この能力によって、走査時間が延び、かつ/またはより多くのROIについて走査が可能になる。その結果、例えば、化学的に変化した金属表面上の吸着、DNA、蛋白質、酵素、および抗体などの生物分子を含む結合事象、および組織の抗原−抗体反応および抗原刺激などの免疫学的現象の観察のための光共鳴表面センサ技法の効用を高めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
したがって、本発明の目的は、表面結合光共振曲線の正確な数量化の新しい機構を提供することである。
【0040】
特に、本発明の目的は、計算の複雑さが比較的少ない表面結合光共振曲線の数量化の方法を提供することである。
【0041】
本発明の別の目的は、最小数の走査データ・ポイントを必要とする表面結合光共振曲線の数量化の方法を提供することである。
【0042】
本発明の別の目的は、ショット・ノイズにより影響されない表面結合光共振曲線の数量化の機構を提供することである。
【0043】
本発明の別の目的は、長い表面結合光共振走査時間の使用を可能にすることである。
本発明の別の目的は、走査速度が増加した表面結合光共振曲線の数量化の機構を提供することである。
【0044】
本発明の別の目的は、現在可能であるよりも迅速に試料の表面結合光共振結果を得る能力を提供することである。
【0045】
本発明の別の目的は、より大きい数のROIに対する表面結合光共振走査を可能にすることである。
【0046】
本発明の別の目的は、使用する角走査範囲の制限のために部分的な共振曲線しか利用できない時であっても有用な結果が得られるように、表面結合光共振走査のダイナミック・レンジを有効に拡張することである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
上記およびその他の目的は、表面結合光共振プロファイルを数量化するために経験的プロファイル適合(EPF)が使用される本発明によって満足される。EPFの方法および装置は、経験的機能形態を作成するために比較的細かい角度または波長間隔で観察された表面結合光共振プロファイルを使用する。好ましい実施形態では、数量化する表面結合光共振は、(a)経験的プロファイル自体、(b)Savitskey−Golayフィルタを用いて生成されたプロファイルの数字的微分、および(c)任意のベースライン移動または連続体照明をモデリングする一定の追加オフセットからなる3つのパラメータ・モデルによって適合される。適合された共振の移動はプロファイル適合係数に対する微分フィット係数の比として決定される。そのように決定された移動が所定のしきい値を超えると、元のEPFプロファイルはラグランジェ補間によって共振の近似位置まで移動し、適合が再び行われる。
【0048】
EPFピーク検出プロセスは2つの段階、すなわち、較正段階と適合段階を有する。較正段階では、全ての領域についての完全な共振プロファイルを十分に含む範囲にわたって比較的細かい角度または波長間隔で較正走査が得られる。各対象領域(ROI)の平滑化されサブサンプリングされたモデル・プロファイルが、第1の微分曲線および診断情報と共に生成される。適合段階では、個々のROI走査が較正モデルに関する共鳴移動の測定に使用される。実行時走査ははるかに粗い角度または波長間隔で実行でき、較正データと完全に異なる角度または波長範囲をカバーでき、いずれかの走査極性を有することができ、表面結合光共振プロファイル全体を含む必要はない。共鳴の一方の側についての断片的なデータからでもピーク位置の予想が可能であり、部分的な曲線しか利用可能でない時でも有用な結果が得られる。決定のたびに最低3つのデータ・ポイントが必要であるが、通常はそれより多くのポイントが使用される。共鳴の移動、予想絶対角度または波長、最小共鳴時間、ならびに追加診断および品質情報が返送される。較正または適合の実行から得たデータは任意選択としてエクスポートして他のシステムで分析できる。
【0049】
好ましい実施形態では、EPFピーク検出に含まれるプロセスの2つの段階は2つの別々のソフトウェア・モジュール、すなわち、較正モジュールおよび適合モジュールによって実施される。新しいチップが使用されるかまたは古いチップについて新たに較正をしたい時には、較正走査が実行される。較正走査時には、比較的長い角度または波長範囲にわたって静的な条件下で、比較的細かい角度または波長ステップで、表面結合光共振データが得られる。較正するROIについて1回ごとの較正走査時に得られる生走査が任意選択として平滑化されサブサンプリングされてポイント密度を増やす。好ましい実施形態では、ラグランジェまたはスプライン補間を用いてサブサンプリングが実行される。Savitsky−Golayフィルタまたは当技術分野で知られているその他の任意の適した方法を用いて、サブサンプリングされたプロファイルの微分が計算される。これに限定はされないが、近似共振位置、深さ、および幅を含むプロファイルの特性が計算される。これらの結果は後の適合手順に備えて記憶される。
【0050】
適合段階では、実験中に特定のROIについて角度または波長走査が測定される。これらの走査はおそらくはより短い角度または波長範囲で較正走査よりもはるかに低いポイント密度で入手できる。適合モジュールの役割は、これらの実験的走査を監視し、共鳴を含む領域を識別し、以前に記憶された経験的プロファイルを用いてその領域を適合させて、較正時間の角度位置と比較した共鳴の移動を含む所望の値を数量化して返送することである。共鳴位置自体が正しく定義されていないために、絶対角度位置または波長が一般に正確に測定できないのに対して、粗い値は移動を較正時に決定された公称ピーク位置に追加することで得られ、また返送される。
【0051】
EPF較正および適合システムの好ましい実施形態では、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは内部パラメータを獲得してEPF較正モジュール内に設定し、較正走査からEPF較正モジュールに生データを送信し、EPF較正モジュールはそのデータをサブサンプラおよびSavitsky−Golay平滑化ルーチンに流し込み、その後データの微分をとって特徴付け、走査中のチップのモデル較正プロファイルを作成する。モデル較正プロファイルは任意選択として記憶される。次に、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは内部パラメータを獲得してEPF適合モジュール内に設定し、チップを用いて実行される実行時間走査からEPF適合モジュールに生データを送信し、EPF適合モジュールは生データを承認し、EPF較正モジュールにチップのモデル・プロファイルを照会し、次いでさまざまな行列ルーチンを用いて曲線を適合させ、必要に応じてこのプロセスを繰り返す。適合プロセスの結果は機器制御およびデータ獲得ソフトウェアに返送され、機器制御およびデータ獲得ソフトウェアは結果をユーザに提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は、経験的プロファイル適合(EPF)を用いて表面結合光共振プロファイルを数量化する。EPFピーク検出プロセスは較正段階と適合段階との2つの段階を有する。較正段階では、全ての領域についての完全な共振プロファイルを十分に含む範囲にわたって比較的細かい角度または波長間隔で較正走査が得られる。各対象領域(ROI)の平滑化されサブサンプリングされたモデル・プロファイルが、第1の微分曲線およびある種の診断情報と共に生成される。適合段階では、個々のROI走査が較正モデルに関する角度または波長移動の測定に使用される。実行時走査ははるかに粗い角度間隔で実行でき、較正データと完全に異なる角度範囲をカバーでき、いずれかの走査極性を有することができる。共鳴の移動、予想絶対角度または波長、最小共鳴時間、ならびに追加診断および品質情報が返送される。
【0053】
本発明の経験的プロファイル適合のある種の構成要素のいくつかの先駆体が2つの従来の特許で開示されている。波長移動の計算および修正をより正確に行うための適合における微分の使用は、米国特許第5303165号(Ganz他、1994年)の11列、1行目から16列、40行目、および米国特許第5308982号(Ivaldi他、1994年)の3列、27行目から5列、43行目に開示されている。さらに、適合に経験的プロファイルを用いるという一般的な考え方の使用が他の文献で開示されている。例えば、「経験的プロファイル」という言葉は使用されていないが、多少似た考え方が知られている形態のモデル行列として、米国特許第5308982号の列3、行46に記載されている。
【0054】
経験的プロファイル適合は、表面プラズモン共振プロファイルの数量化での多項式適合と少なくとも同等、またはそれよりも優れていると実験で証明されている。ショット・ノイズに限定された性能は、通常、数十マイクロ度である。EPFでは、走査速度を数倍増加させるはるかに間隔が空いた角度ポイント間隔を許容できるという利点がある。これは、ある種の実験で間隔がより広い範囲の共鳴移動を収容するために長距離走査が必要な時に特にあてはまる。EPF SPRの数量化は、これに限定はされないが、走査変数としての角度または波長について、回折格子、プリズム、および導波路の実施態様などの表面プラズモン共振を生成して測定する機構の任意の実施態様と併用できる。また、導波路センサおよび共振空洞センサなどの化学的または生化学的表面センサに使用される他の共鳴の移動を数量化するのにも有利に使用できる。
【0055】
話を簡単にするために、以下の好ましい実施形態の説明は、格子結合角度走査SPR装置を用いて得られる結果を数量化する際のパラメータに限定されている。ただし、本発明のEPF数量化技法は、SPR装置を用いて得られるデータの数量化に限定されず、また角度走査技法を用いて得られるデータの数量化に限定されない。本発明のEPF数量化技法は、角度走査、波長走査、またはその組み合わせ(事前分散または相関走査などの)を使用し、表面アドレイヤの質量または結合に多少とも線形的に角度または波長が移動するSPR共鳴に似た共鳴を生成するさまざまな表面結合光エバネッセント波センサ技法のいずれかを使用して生成されたデータを数量化する際に有利に使用される。ERFを用いた数量化に適した共鳴の生成技法の例は、これに限定はされないが、背景の節で説明したさまざまな技法を含む。
【0056】
これらの技法のいくつかはSPRよりも鋭角かまたは鈍角の共鳴を生成し、共鳴位置は生体層質量密度により多くまたはより少なく影響され、かつ/または異なる共鳴伝播長を示し、アレイ構成でより高いか低いROI密度を可能にする。EPF手順はこれらの技法のいずれかを用いて生成される共鳴を数量化するのに直接に適用できる。本明細書に記載する好ましい実施形態との主な相違点は、角度ステップのサイズが共鳴の幅に(またはより使用される機会が少ない波長モードでは、波長単位の共鳴のFWHM)に合わされているという点である。さらに、これらの技法のいくつかを用いて得られる曲線は、共鳴として下降する傾斜ではなく正のピークを示すが、これは、プロファイル受け入れ基準に関する以外はEPFに影響しない。さらに、これら各種の技法は、励起ビームが角度走査される限り、ラベルとエバネッセント波を使用して蛍光を励起することがあるが、反射光強度よりも拡散蛍光が測定されるとしても、EPFを使用することができる。
【0057】
一般に、適合が実行されるウィンドウは自由に調整できるが、一般に共鳴傾斜の主要部分をカバーしてファーウィングを除外するように選択される。最良の結果を得るため、各ROIの共鳴はそのROIについて測定された経験的プロファイルを用いて適合される。ただし、同様の共鳴形状を示す他のROIの経験的プロファイルを用いても良好な結果が得られる。EPFの雑音性能は、一般に、より多くのまたは少ない直交パラメータ、すなわち、強度、共鳴移動、およびベースライン・オフセットを用いた分析プロファイル適合の雑音性能に極めて似ている。
【0058】
EPF手順は共鳴の絶対ロケーションを測定することはしない。また「共鳴中心」の定義も含まない。この手順によって、元のモデル共鳴の位置からの共鳴位置の移動または変化が正確に測定される。ただし、解釈を簡単にするために、初期モデル・プロファイルの極小の尺度を底のn個のポイントへの放物線適合の極小として検出するだけで、「絶対角度」が初期モデル・プロファイルに任意に割り当てられる。通常、n=5である。このなかば任意の割り当てによって、他の尺度の範囲にある「絶対角度」の報告が可能になる。EPF適合で使用されるデータ・ポイントは元の較正走査で使用される比較的細かい角度間隔である必要はない。一般に、共鳴のどこかに少なくとも3つのポイントが検出できる任意のデータ・ポイント間隔を使用できる。ただし、より粗い間隔を使用すると、共振角の決定の精度に影響が出ることがある。
【0059】
概要。本発明を実施するシステムのこの好ましい実施形態は、2次元CCD検波器を使用して100〜400またはそれ以上のROIを含む試料チップを撮像するアレイ・システムである。フィルタリングされたp偏光のLED(発光ダイオード)からの準単色光が照明に使用される。チップへの光ビームの入射角は光源を機械的に走査することで変化する。各入射角について、1つまたは複数のCCDフレーム露光を用いてROIアレイの全ての部材の反射光強度の測定が同時に実行される。本発明のEPFシステムの好ましい実施形態はそのようなアレイ・システムに限定されているが、単一またはいくつかのチャネル機器上でも同様に動作する。
【0060】
この実施形態では、新しいチップが稼働し始めると、またの任意の所望の時点で、全ての領域についての完全な共振プロファイルを十分に含む角度範囲にわたって比較的細かい角度間隔で較正走査が得られる。好ましい角度範囲は、バッファ、センサ表面の任意の固体膜またはアドレイヤ、センサ材料の屈折率(RI)および(適宜)格子間隔に依存する。例えば、格子結合、金の金属膜、水性試料、最大4nm FWHMの干渉フィルタによってフィルタリングされた中心波長875nm、および840nmの格子溝間隔を使用する場合、好ましい角度範囲は通常、20°±2°である。本発明の好ましい実施形態では、角度はミリ度まで制御可能で、マイクロ度まで測定可能である。これら全てのパラメータは調整可能で、その結果、公称角度は異なり、共鳴のFWHMも異なる場合があるので、異なるステップ・サイズを設ける必要がある。さらに、波長走査モードを使用する場合、ステップ・サイズは波長単位である。上記の例を直接波長走査モードに変換する場合、角度は最大20度に固定され、波長は860〜890nmの範囲で粗走査される。共鳴は最大10nm幅である。同様に、他の光共振システムでも、公称波長、角度、およびFWHMは極めて異なることがあり、さまざまなEPFパラメータのスケーリングが必要になるが、プロセス自体は同じである。
【0061】
好ましい実施形態では、較正データ・セットがメイン較正手順のepfCalに提出され、epfCalは第1の微分曲線およびある種の診断情報と共に各ROIの平滑化されサブサンプリングされたモデル・プロファイルを生成する。この較正セットはメモリ内に保存でき、任意選択として、将来の使用のためにアーカイブに入れることができる。実際の測定角度が各データ・ポイントのメイン較正手順に供給されるので角度ステップ・サイズは一様でなくてもよい。
【0062】
実行時に、実験的力学またはその他のデータが得られると、較正モデルに関する角移動の測定のために、個々のROI走査がメイン実行時間適合手順のepfFitに提出される。実行時走査ははるかに角度間隔が粗く、較正データと全く異なる角度範囲をカバーする場合がある。実行時走査はいずれかの走査極性(すなわち、上昇または下降角度)を有することができる。実際の測定されたエンコーダ角を各データ・ポイントに供給しなければならず、各データ・ポイントの測定回数も提供しなければならない。角移動、予想絶対角度、最小共鳴時間、ならびに追加診断および品質情報が返送される。
【0063】
実行時走査はSPRプロファイル全体を含む必要はない。共鳴の一方の側についての断片的なデータからでもピーク位置の予想が可能である。決定のたびに最低3つのデータ・ポイントが必要であるが、通常はそれより多くのポイントが使用される。この、SPR走査の有効な「エッジ情報」を提供する能力、したがって、部分的な曲線しか利用可能でない時でも有用なSPR結果が得られるという能力は、本発明の多数の利点の1つである。較正または適合の実行から得たデータをエクスポートして1つまたは複数の他の分析システムを用いて再分析する、または追加分析するオプションの能力によって別の利点が得られる。
【0064】
EPFピーク検出に含まれるプロセスは当然、好ましい実施形態では、2つの別々のソフトウェア・モジュールを介して実行される2つの部分に分割される。これらは較正段階と適合段階である。図1に示すように、新しいチップが110で稼働するか、または古いチップについて新しい較正が所望されると、較正走査が120で実行される。較正走査120中に、比較的長い角度範囲にわたって静的な条件下で、比較的細かい角度ステップで、SPRデータが得られる。センサ表面の試料側にどの液体を置くかの選択は、実行する測定によって変わる。次いでその液体の屈折率を収容する角度範囲が選択される。これらのパラメータの正確な値は固定している必要はなく、経験による判断で異なることができるが、好ましい実施形態で採用される公称0.05度のステップが極めて適している。これらのステップは基本ステップと呼ばれ、基本インデクス値によって割り出しされる。角度エンコーダから得られる実際の角度値が各々の強度値に伴う。システム角度の単位は、度またはその他の単位でよい。一貫して使用する限り、いかなる線形単位も適している。
【0065】
較正されるROIごとに1回行う較正走査120中に得られる生走査は任意選択として130で平滑化され、サブサンプリングされてポイント密度N(通常N=1〜10)を増加させる。好ましい実施形態では、ラグランジェまたはスプライン補間を用いてサブサンプリングが実行される。ただし、当技術分野で知られているその他の任意の方法も適している。Savitsky−Golayフィルタまたは当技術分野で知られているその他の任意の適した方法を用いて、サブサンプリングされたプロファイルの微分が計算される。好ましい実施形態では、任意選択として、これに限定はされないが、近似共振位置、深さ、および幅を含むプロファイルのある種の特性が計算され、共鳴が適切で正確であると評価される。これらの結果は後の適合手順に備えて140で記憶される。
【0066】
適合段階で、実験150中に特定のROIについて角度走査が測定される。これらの走査はおそらくはより短い角度範囲で較正走査よりもはるかに低いポイント密度で入手できる。好ましい実施形態では、実際のエンコーダ角度および各ポイントの実際の積分中点時間が適合モジュール160に提供される。適合モジュール160の役割は、実験150中に得たこれらの実験的走査を監視し、共鳴を含む領域を識別し、以前に記憶された経験的プロファイル140を用いてその領域を適合させて、較正時間の角度位置と比較した共鳴の移動を含む所望の値を170で数量化して返送することである。共鳴位置自体が正しく定義されていないために、絶対角度位置が一般に正確に測定できないのに対して、粗い値は移動を較正時に決定された公称ピーク位置に追加することで得られ、また170で返送される。
【0067】
図2は、機器制御ソフトウェアへのリンクを含むEPF較正および適合システムの好ましい実施形態のブロック図である。図2に示すように、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202を用いて、204で内部パラメータが獲得され、EPF較正モジュール210内に設定される。この実施形態では、較正走査からの生データが機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202からEPF較正モジュール210に送信され、EPF較正モジュールはそのデータをサブサンプラ220およびSavitsky−Golay平滑化ルーチン222に流し込み、その後データの微分をとって特徴付け、走査中の各ROIのモデル較正プロファイルを作成する。モデル較正プロファイルは、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202の制御下での任意選択のその後のアーカイビングおよび復元232のために任意選択として230で記憶される。
【0068】
次に、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202を用いて、250で内部パラメータが獲得され、EPF適合モジュール260内に設定される。チップを用いて実行されるROIごとの実行時間走査から生データ262が機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202からEPF適合モジュール260に送信され、EPF適合モジュール260は生データを承認し、264でEPF較正モジュール210にチップのモデル・プロファイル268を照会し、次いでさまざまな行列ルーチン270を用いて曲線を適合させ、必要に応じてこのプロセスを繰り返す。適合プロセスの結果280は機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202に返送され、機器制御およびデータ獲得ソフトウェア202は結果をユーザに提供する。好ましい実施形態では、EPFサポート・モジュール290がEPF較正モジュール210およびEPF適合モジュール260と対話してさまざまな試験および共通ルーチンを提供する。
【0069】
図3は本発明の較正走査のグラフ出力を示す図である。図3に示すように、ROI#nの生較正走査(事前走査)データがグラフ310上にA/Dカウント312内の信号強度対入射角θ314としてグラフ化される。各円320は実際の走査データ・ポイントを表す。ステップ・サイズとその可変性は誇張され、ステップ間の距離がわずかに不規則であるように見える。目を導くためにデータ・ポイント320を通して連続的な曲線322が描かれているが、実際の分析では何の役割も果たさない。
【0070】
図3で、グラフ330は、やはり信号A/Dカウント332対入射角θ334としてグラフ化されたROI#nの初期プロファイル曲線の平滑化およびリサンプリング結果を示す。サンプリング・ポイント340によって表されるサブサンプリングされたステップは現在では全て等距離にあり、プロファイル342の平滑化されリサンプリングされた較正プロファイル342の生成を可能にする。グラフ350は、度あたりのA/Dカウント370対入射角θ372としてグラフ化された対応する微分曲線360を示す。グラフ330ではデータ・ポイント380はサンプリング・ポイント340と同じである。
【0071】
図4は本発明の実行時走査のグラフ出力を示す図である。図4に示すように、ROI#nの実行時走査中に得られたデータ・ポイント402は、グラフ410上にA/Dカウント412対入射角θ414としてグラフ化される。データ・ポイント402が得られる角度ステップは不規則でよく、将来も不規則でよいことが多い。グラフ420は、グラフ410と同じ尺度でROI#nを適合させるための記憶された較正プロファイル430と微分432とを示す。プロファイル430も好ましくはROI#nから得られるが、所望により別のROIから得られるものでもよい。
【0072】
図4で、グラフ440は実行時走査データ・ポイント402に適合されるまでフルステップで移動されて曲線yshift450で表される較正プロファイル430を示す。微分曲線432も同様に移動されて微分曲線452と突き止められる実行時間角度ポイント460が生成される。フラット・ベースライン・モデル構成要素462も示されている。導出された経験的プロファイルがグラフ470で示されている。生データ・ポイント402が正方形で示され、ここでは細かい角度間隔(0.01度)で利用可能な移動された較正曲線yshift450からのポイント474が円として示されている。経験的プロファイルは枝刈りされた生走査ポイント480、482を含まない選択された適合ウィンドウに限定される。生データ・ポイント402は、移動されたプロファイルyshift450と、微分項452(データ・ポイント分離点でサンプリングされている)と、ベースライン・オフセット(図示せず)からなるモデルに適合される。実線y472は、同じROIまたは別のROIの実施形態では、実際の較正プロファイル430の平滑化され移動されたバージョンである結果として得られる経験的プロファイルである。グラフ470で、残りは強調のために誇張されている。
【0073】
較正段階。本発明の好ましい実施形態では、較正段階を開始するために、SPRチップについて比較的高い角度ポイント密度、通常0.05°公称ポイント間隔で、かつチップ上の全てのROIについての完全なSPR共振プロファイルを十分に含む角度範囲にわたってSPR走査が実行される。次いで得られた完全な2次元データ・セットが、各角度ポイントの実際に測定されたエンコーダ角を提供するベクトルと共に、較正ルーチンに送信される。角度ステップは正確に一様である必要はない。
【0074】
今度は、個々のROI走査は個別に実行される。各々が2次元アレイから抽出され、好ましい実施形態では、その品質が事前検査される。各々が実際に適当な深さの共振傾斜を有し、最小ピーク強度(傾斜外に)を有し、ただ1つの主要な傾斜を有しなければならない。角度は単調に増加しなければならない。使用可能と評価されたら、共鳴は厳格に標準化された角度ポイント間隔、通常0.010°でより高い角濃度までサブサンプリングされる。好ましい実施形態では、このサブサンプリングは以下の一連の工程によって実行される。
【0075】
1.Savitskey−Golayまたは他の任意の適した平滑化技法を用いて生走査が任意選択として事前平滑化される。
2.準ランダムに間隔を空けたポイントが3次スプラインまたはラグランジェなどの任意の適した補間方法を用いて補間され、所望の正規の角度格子上のサブサンプリングされたポイントが決定される。所望に応じて、この工程はなしにするか、極めて細かい較正ステップ・サイズを用いた簡単な直線補間に低減することができる。
3.走査の両エンドが任意選択として多項式適合を用いて走査のエンド・ポイントまでわずかに外挿され、走査範囲を狭めることなくさらにフィルタリングを可能にするために範囲がわずかに拡張される。
4.任意選択として、補間され拡張された走査がSavitskey−Golayまたは他の任意の適した平滑化技法を用いて再度平滑化される。各段階のSavitskey−Golayまたは他の平滑化パラメータは調整可能である。
【0076】
正規化されサブサンプリングされたプロファイルは任意選択として検証され、ある種の特性が決定される。これらの特性は制御限度に照らして検査され、各ROIプロファイルの受け入れ可能性が確立される。好ましい実施形態では、測定される特性は以下を含む。
1.共鳴の底の部分への多項式適合の分析極小を検出することで決定される公称共振角。得られる値は使用する多項式の次数とポイント選択によって変化するが、絶対値は重要ではない。この特性がなければ、実際の角度値ではなく角移動のみが報告できる。
2.最大半値の全幅(FWHM)で表された公称幅。
3.共鳴の公称表示深さ(Fractional Depth)。
4.プロファイル内の最大強度。
【0077】
値が有用であるその他の特性も測定できる。これらの結果を用いて各プロファイルの全体の品質インデクスを確立できる。通常の実施形態では、品質等級は、「優秀」、「良好」、「可」、「使用可能」、および/または「不可」などの値である。本発明では同様の任意の値も使用できる。
【0078】
各ROIのサブサンプリングされ正規化されたプロファイルは2次元アレイに挿入される。結果として得られる2次元アレイは、後の使用のために、特に公称共振角を含む関連する特性値と共に任意選択としてアーカイブに入れてもよい。プロファイル測定に使用される元の角度セットは一般にもはや必要なく、本発明の特定の実施形態でその将来の使用が識別されていない限り、廃棄することができる。
【0079】
最後に、プロファイルの各々について微分ベクトルが計算される。好ましい実施形態では、これはStavitsky−Golayの第1微分フィルタを用いて達成されるが、当技術分野で知られている他の方法も適している。特定のパラメータは調整可能であるが、3次およびポイント数9が通常使用される。微分も2次元アレイに組み合わされてメモリ内に記憶される。アーカイブされたサブサンプリング後のプロファイル・セットが取り出されるとこれらは容易に再計算されるので、通常はアーカイブされないが、必要に応じてアーカイブしてもよい。
【0080】
図5は、本発明の好ましい実施形態の較正段階の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0081】
図5に示すように、好ましい実施形態では、較正段階は初期化および自己試験手順505で開始する。プロファイリングするチップについて事前走査SPR走査が実行されて較正プロファイル・データ・セット510が獲得され、較正プロファイル・データ・セット510は事前品質検査520を受ける。所望に応じて、オプションのチップ品質検査525をこの時点で実行してもよい。品質が530で許容されない場合、プロセスは535で停止し、ユーザは問題が検出されたことを通知される。そうでない場合、較正プロファイルが540で取り出され、第1のROIについて545で処理される。プロファイリングする他のROIが550である場合、工程540および545が繰り返される。そうでない場合、較正セット統計が555で計算され、任意選択として、ユーザに表示される。次いで、較正セット・モデル・プロファイルの微分が560で計算され、較正セットはメモリ内で565で有効フラグを立てられる。較正セットは次いで任意選択としてメモリに570で記憶できる。
【0082】
初期化および自己試験505。好ましい実施形態では、EPF較正ソフトウェアの詳細な動作は制御パラメータのセットによって制御される。これらのパラメータのデフォルト値はプログラム内に含まれ、較正初期化ルーチンによって設定される。任意選択として、制御ソフトウェアは現在のパラメータ・セットを取り出し、かつ/または新しい値を設定できる。較正初期化手順はまたランダム化された合成データを使用する試験手順を用いてエンドツーエンドでEPF較正モジュールの完全な試験を開始する。試験結果は正確であるか検証される。好ましい実施形態では、初期化手順は較正初期化フラグの設定も含む。
【0083】
較正プロファイル・セットの獲得510。チップ上のすべての共鳴を十分に含む範囲にわたる入射角の関数として各々のROIについてSPR信号が測定される。角度ステップは名目上所定の値、通常、50mDegすなわち共鳴の幅(FWHM)の約5%に保たれている。SPR信号は通常、各々200〜4000のCCDピクセルを含む各ROIを定義する検波器ピクセルについて平均される。ROIの形状は、矩形、楕円形または環状などさまざまである。信号は普通、ROIに関して平均された平均A/D(アナログ−ディジタル)カウントで表されるが、これに限定はされないが、光子、光電子、ボルト、またはマイクロワットを含む一貫した単位が使用できる。検波器積分時間は実験で固定されているので、光電力(マイクロワット、光子/秒など)が使用されるか、光束の積分(光子、カウント、マイクロジュールなど)が使用されるかは問題ではない。好ましい実施形態では、ROIインデクスおよび角度インデクスを含め、完全なデータ・セットが2次元アレイ内に含まれる。別々のベクトルが角度値、好ましくは、角度エンコーダを用いて測定した角度を含む。したがって、公称の命令角度ではなく実際の測定角度を使用することが好ましい。
【0084】
通常の動作では、これらのデータは機器制御ソフトウェアによって獲得され、直ちにメインEPF較正ルーチンに渡される。ただし、実行後モードでデータ・セットの再分析のためにEPF較正ルーチンも使用できる。この場合、生較正走査が記憶され、取り出されることになる。
【0085】
事前品質検査520。データ・セットの適合性の定期検査が実行される。この工程は必須ではないが、データ・セットの問題の解決に役立つ。さまざまな手順で各ROIラベルが一意的であること、角度値が単調に増加していること、および個々の角度ステップ・サイズが仕様の範囲内にあることが検証される。これらのルーチンの1つは、さらに、最終較正プロファイル・セットに使用する正確な角度範囲と等間隔の角度値を確立する。
【0086】
チップ承認検査525。本発明の一実施形態では、SPRチップ自体を予想品質基準に照らして任意選択として試験してチップまたはその準備に障害がないことを保証できる。本発明のこのオプションの態様を図12の説明に関連して以下に詳述する。
【0087】
較正プロファイル走査の抽出540。好ましい実施形態では、ベクトル抽出ルーチンが詳細な処理のためにアレイから1つのROI走査をコピーする。
【0088】
1つの較正プロファイルの処理(コア手順)545。この手順を図6の説明に関連して以下に詳述する。
【0089】
較正セット統計値の計算555。本発明の好ましい実施形態では、最小共鳴予想SPR角(公称共振角)、共鳴の近似FWHM(FWHM)、較正プロファイル内のピーク強度(最大強度)、および上部接線からの表示深さ(表示深さ)の各特性の平均、最小、および最大値を含むある種のグローバル統計値が計算される。グローバル統計値は取り出せるが、ルーチン動作では必須ではない。
【0090】
較正セット・モデル・プロファイルの微分の計算560。好ましい実施形態では、完了したプロファイルの微分が、パラメータの微分次数と微分ポイント数がそれぞれ3と9に設定されてSavitsky−Golay法を用いて計算される。
【0091】
任意選択としての較正セットのディスクへの記憶570。完了した較正セットは後に取り出して使用するために機器制御ソフトウェアによって任意選択としてアーカイブすることができる。好ましい実施形態では、微分は完了した較正セットの部分としてアーカイブされないが、必要に応じて再計算される。あるいは、後ほど最初から較正を再計算するために生較正走査を記憶して使用することができる。
【0092】
図6は図5の工程545として示された単一のROI較正プロファイルの処理の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0093】
図6に示すように、選択されたROI較正走査の適合性と主要な品質機能が605で検査される。610で走査結果が不適になると、615でROIは「不良」として返送される。そうでない場合、生プロファイル・データについて一時平滑化が620で実行され、結果として得られる曲線が625で規定された角度間隔でサブサンプリングされる。必要に応じて、630で走査の両エンドが外挿され、規定された角度範囲が記入され最終平滑化が635で実行されて、完了した較正データ・セットのメンバが生成される。次いで、完了した較正プロファイルのさまざまな特性が640で決定され、使用の許容限度に照らして検査され、完了した較正プロファイルの品質が645で決定される。最後に、完了したプロファイルが650で2次元アレイに記憶される。
【0094】
単一のROI較正プロファイル走査の適合性検査605。好ましい実施形態では、現在の生走査について粗適合性試験の簡単なセットが実行される。この試験は、これに限定はされないが、十分な数のデータ・ポイントがあるか否かの検査、仕様の許容限度に照らした走査内のピークおよび極小信号の検査、適当な共鳴深さの予備検証のための最大許容限度に照らしたピーク信号に対する極小信号比の試験、極小信号が発生する角度ステップ(近似共振位置と考えられる)の検出、およびこの極小のいずれかの側に適当な走査範囲があるか否かの検査を含む。
【0095】
好ましい実施形態では、共鳴決定で曖昧さを引き起こす可能性がある複数の急傾斜が発生しないように追加の試験が実行される。これらの試験のいずれかが不合格になると、ROIプロファイル特性に「不可」のフラグが立ち、プロファイルが不良である理由が判定され、このROIのさらなる処理が終了する。これらの量が警告レベルになるとROIには「使用可能」のフラグが立つが処理は継続する。1回のROI走査が不合格になっても他のROI走査の合格した処理は妨げられない。
【0096】
予備平滑化620。好ましい実施形態では、実際の予備平滑化が従来のSavitskey−Golay平滑化法によって実行される。いくつかのSavitskey−Golayの実施態様とは異なり、好ましい実施形態で使用する実施態様では、走査の長さを短くはしない。これは好ましくは、パラメータが2、3の比較的穏やかな平滑化である。この平滑化動作は、プロセス全体を危うくすることなく、クリーン・データでは完全に省かれることがある。当技術分野で知られているその他の適した平滑化法も同様に使用できる。
【0097】
規定の角度間隔へのサブサンプリング625。好ましい実施形態では、走査は補間手順を用いてすでに定義された角度ステップでリサンプリングされ。ラグランジェ補間が有利に使用できるが、3次スプライン補間が適切に実行でき、この方法がこの好ましい実施形態で使用されている。当技術分野で知られている他の任意の方法も適している。サブサンプリングされたステップ間隔は公称角度ステップ・サイズ(通常、50mDeg)の規定の再分割、通常、5である。
【0098】
走査の両エンドの外挿630。いくつかのケースでは、較正セットの最終角度範囲のエンド・ポイントは実際に測定される最小および/または最大角度をわずかに超えて設定されている。そのようなケースでは、エンド・ポイントを外挿しなければならない。前のステップで決定された3次スプラインは外挿には適さないため、好ましい実施形態では、必要に応じて、走査の一方または両方のエンドで別々の多項式適合手順が使用される。n次の多項式が以前に決定された最終n+1のリサンプリングされたポイントに適合され、この多項式は不明の角度値(普通、わずか1)で評価されて外挿が実行される。この手順を使用することで、実験の角度値と正規化された角度ステップとの不可避の不一致による切捨てによって較正プロファイルの範囲が不必要に低減しないことが保証される。当技術分野で知られているその他の適した外挿技法もこの工程に有利に使用できる。
【0099】
最終平滑化635。好ましい実施形態では、平滑化手順を再度用いて、パラメータ次数とポイント数が通常3および9で、リサンプリングされたプロファイルの非切捨て最終平滑化が実行される。
【0100】
完了した較正プロファイルの特性の決定640。好ましい実施形態では、最終のリサンプリングされたプロファイルの詳細な特性は別の特性決定手順によって決定される。決定される特性は、これに限定はされないが、FWHM、公称共振角、表示深さ、および最大強度を含む。公称共振角以外の特性は、現在、システム性能の評価と較正プロファイルの品質の評価だけに使用されている。
【0101】
仕様許容限度に照らした特性の検査645。好ましい実施形態では、最大強度、公称FWHM、および公称表示深さの各特性は、仕様許容限度に照らして検査され、プロファイル品質は、「優秀」、「良好」、「可」、または「不可」などの適当な品質ラベルに従って設定される。
【0102】
完了した較正プロファイルの記憶650。好ましい実施形態では、リサンプリングされ、平滑化され、承認された完了プロファイルは永続的な内部データ構造体に記憶される。
【0103】
較正ルーチンに返送されるプロファイル特性は特別な方法で定義される。この定義は、本発明の好ましい実施形態のepfCalによって返送されるプロファイル特性の定義を示す図である図7を参照すると最もよく理解できる。菱形記号705によって示される生データではなく、サブサンプリングされたプロファイル702について計算が実行される。
【0104】
第1に、曲線702の極小710が識別され、θDIPで示される。本発明の好ましい実施形態では、この公称共振角710(SPR「極小」)はサブサンプリングされたプロファイルの底部へ多項式を適合させることによって突き止められる。次に、プロファイル702への上部接線、別名コンベックス・リッド715が決定され、屈曲ベースラインがある場合の共鳴の幅と深さの評価を支援する。幅と表示深さの計算は、コンベックス・リッド715からプロファイル702を減算した余りについて実行される。コンベックス・リッド上に示すポイント720はSPR極小710の真上にあり、表示深さを評価するために使用される。図7に示すように、プロファイル710のピーク強度725は最大サブサンプリング・ポイントである。
【0105】
コンベックス・リッド715に平行な線730が最小ポイント710を通って描かれ、別の平行線735がコンベックス・リッドと極小を通る平行線の中間に描かれている。プロファイルの最大半値740(FWHM)の全幅は中間の平行線735と共振プロファイル702の側面との交点の間の角拡散である。サブサンプリングされたポイント間の補間は行われないので、この値はサブサンプリング角度間隔に丸められる。
【0106】
SPRの表示深さはy1/y0で表される。y1745およびy0750を図に示す。さらに、サブサンプリングされたポイント間の補間は行われないので、この値はわずかに近似される。
したがって、決定される特性は以下の通りである。
a)走査におけるピーク信号725
b)公称共振角(度)710。好ましい実施形態では、これは指定された次数の多項式を指定された角度範囲にわたって共鳴の底に適合させることで決定される。基本的に意味はないが、この値は後ほど適合された走査につじつまが合う絶対傾斜角度を割り当てるために使用される。
c)共鳴の最大半値(FWHM)の近似全幅(度)740。好ましい実施形態では、近似FWHMを決定するために、手順はコンベックス・リッドに平行な共鳴極小を通過する線を有効に通過する。次いで手順は上側および下側の接続の中間に最も近い共鳴のいずれかの側のプロファイル内のポイントを検出する。これらの2つのプロファイル・ポイント間の角距離はFWHMで表される。補間は実行されない。
d)共鳴の表示深さ。好ましい実施形態では、共鳴内の極小の真上のこの線上のポイントは共鳴がない場合の信号強度IOの予想値として計算される。次いで表示深さは比(IO−IMIN)/IO(ただしIMINは共鳴極小の強度)として決定される。
【0107】
図8は、較正段階の構成および開始のためのユーザ・インタフェースの例を示す画面である。適合段階の構成および開始にも同じ画面が使用される。図8に示す画面の実施形態は例示のためにのみ提供され、本発明の概念を逸脱することなく、追加のパラメータを追加し、パラメータを削除し、または交番の画面構成を使用できることを理解されたい。
【0108】
図8に示す例示の構成画面はさまざまな角度走査パラメータを設定するために使用される。図8に示すように、例示の画面を用いてユーザは以下のパラメータを指定し、かつ/または検証することができる。
a)Prescan angle range(較正プロファイル走査である)−「事前走査開始角」805、「事前走査終了角」810
b)Prescan Angle Step Size−「事前走査角デルタ」815
c)Scan Extension Factor820:これは実行時走査範囲がこの好ましい実施形態で指定される方法である。較正実行で決定されるプロファイルの平均幅FWHMにこの係数が乗算され、実行時走査の半分の範囲が決定される。例えば、平均FWHMが0.8度で、走査拡張係数が1.5の場合、走査は1.5×0.8=1.2度だけ最高観測ROI共鳴より上から、1.2度だけ最低観測ROI共鳴より下の範囲に拡張される。走査範囲は、運転期間は固定でき、または適応でき、走査限度は、共鳴が屈折率の変化と化学的結合の影響下で移動することが観測されるにつれて自動的に増減する。
d)Step Size Fraction830:これは実行時走査角度ステップ・サイズを現在決定する係数である。好ましい実施形態では、直接指定するのでなく、平均FWHMの端数として計算される。度で指定もできるし、当技術分野で知られている他の任意の方法でも指定できる。
e)The Bi−Directional checkbox840:チェックされると、機器の上下角方向の光源走査としてデータが獲得され、そうでなければかかった時間を節約して各走査の最初に機械的に戻る。このモードを使用するには、EPFの共鳴時間機能を使用する必要がある。これは、そうしなければ、共鳴が正確に走査中でない時に連続走査での共鳴測定の時間間隔が大幅に変更されることになるからである。
f)Continuous vs.Stepwise850:システムの好ましい実施形態はステップ単位のスタート−ストップ角度走査またはノンストップ・メジャーオンザフライ・モードのいずれかまたは両方をサポートする。
g)Images per Step860:ステップ単位の走査では、可変数のCCD露光(フレーム)を各ステップで測定できる。普通、ステップあたり1つの画像が得られるが、追加の画像を追加してS/N比を改善することができる。
h)Camera Exposure Time870:各CCDフレームの露光時間が選択されて、個々のピクセルの飽和のリスクを回避しながらCCDピクセル・ウェルの容量を最大限使用する。このパラメータは完全にLED光源の強度に依存するが、通常、25〜100msである。
【0109】
上記およびその他のタイプの構成画面を拡張して、他の任意の適した較正および/または適合パラメータ設定を含むことができる。
【0110】
図9は、較正段階の出力例を示す画面である。図9に示す画面実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは交番の画面構成を使用できることを理解されたい。好ましい実施形態では、この画面は、較正プロファイル走査実行中に表示され、各ROIが分析されるたびに更新される。
【0111】
図9に示すように、較正走査を開始するボタン905が左側に示されている。画面上部には、「Flow Program」タブ911をクリックして選択する、実行方法のリスト910が示されている。このリストは実行中に発生し、SPR信号を生成する反応シーケンスに影響する液体制御工程のシーケンスを示す。実行温度(試料とSPRチップを含むチャンバの温度)がボックス912に示されている。「ROI Information」タブ913または「Result file」タブ914を選択して交番の情報表示を選択することができる。Imageタブ918をクリックするとアクティブなROI領域920のロケーションを示すSPRチップ自体の画像915が画面左側に表示される。いくつかのROI925は強調表示されている。これらの強調表示されたROIは、それについての角度走査928が右下の大きいグラフ930に表示されるROIである。Imageタブ918の代わりにROIタブ935が使用でき、この場合、ROIのロケーションはグラフ表示されるが、実際の単色のチップ画像は表示されない。一実施形態では、同様の画面を用いて、Start Runボタン950をクリックして開始する実行時間走査の結果が表示される。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、数秒かかる較正走査時に、グラフ930がリアルタイムで更新される。ROIピクセル間で平均される実際の測定強度は、図のドット記号960である。その間の線928は、これに限定はされないが、スプラインまたはベジャ曲線などの標準のグラフィック平滑化関数を用いて装飾のために補間される。図9に示すROIは特にウィングなどの形状のバリエーションと角度位置の分散を示す。これは異常ではない。これらの曲線と他のROIの残りの同様の曲線は較正処理の要である。好ましい実施形態では、各ピクセルの強度は12ビットA/Dコンバータによって0〜4096(212)の範囲のA/Dカウントに変換される。角度は正確な角度エンコーダの読取り値から得られる。
【0113】
図10は、共鳴がないことを示す「不良ROI」41がある較正段階の別の出力例を示す画面である。図10に示す画面の実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは交番の画面構成を使用できることを理解されたい。
【0114】
図10に示すように、EPF較正サマリ1010が右上に表示されている。EPF較正サマリ1010は、「ROI Information」タブ1015を選択すると表示される。ROIsタブ1020が選択され、チップがアクティブなROIを表す一連の点1030としてグラフ1025の左下に表示される。正方形1035が記されたROIが選択され、右側の表の升目に描画される。EPFプロファイル特性ウィンドウ1045と、右下の大きいグラフ1060内の共鳴曲線1050に示されるように、選択されたROI1040(ROI41)は「不良」で、共鳴を示さない。
【0115】
図11は、「良好RIO」190の詳細を示す較正段階の別の出力例を示す画面である。さらに、図11に示す画面の実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは交番の画面構成を使用できることを理解されたい。
【0116】
図11に示すように、EPF較正サマリ1110が右上に表示され、選択されたROI1901030のEPFプロファイル特性1120が左上に示されている。ROIタブ1040が選択され、チップがアクティブなROIを表す一連の点1160としてグラフ1150の左下に表示される。いくつかのROIは強調表示されている。これらの強調表示されたROIは、それのプロファイル1170が右下の大きいグラフ1180の右下に任意選択として表示されるROIである。
【0117】
チップ承認検査。EPFの機構によって、較正データ・セットの生成を行う前に、較正データからチップの品質を厳格に評価することができる。特定のタイプまたはバッチのSPRチップは、極めて小さいSPRプロファイルを有していなければならない。これらのプロファイル形状および角度位置からのいかなる逸脱も、チップが不正確に製造または加工されたか、チップに損傷がある徴候である。フル稼働の開始前に欠陥があるチップを識別することで貴重なユーザの時間と試料の材料を節約することができる。
【0118】
好ましい実施形態でこの機能を実施するために、良好な品質が知られているいくつかの完全なチップについて平均された代表的な較正プロファイルが各タイプまたは個別のバッチまたはデバイスについて生成される。これらはROIごとに生成できるが、チップ全体を表す単一のプロファイルが一般に使用される。この「黄金のプロファイル」からの予想される許容範囲の変動も確立される。この黄金のプロファイル・データと許容範囲の変形仕様が工場からSPRチップと共に出荷でき、またはその他の方法でユーザに配布でき、次いで機器制御コンピュータに記憶できる。
【0119】
図12は、図5の工程525に示すオプションのチップ承認手順の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0120】
図12に示すように、チップ承認手順は記憶された黄金の較正プロファイル1210から正しい「黄金の較正」1205をロードすることで開始される。次いで、記憶されたチップ承認パラメータ・セット1225を備えた適合モジュールが1220で開始する。単一のROI走査が較正走査データ1230から取り出され、図14に関連して以下に説明するように1240で処理され、その結果が黄金のプロファイル1250に適合するか分析される。そのROIの結果が試験1260に不合格になると、不良ROIのカウントが1265でインクリメントされ、不良ROIの数がユーザへの報告のために任意選択として記憶される、1270で追加のROIを試験しなければならない場合、別の単一のROI走査が較正走査データ1230から取り出され、全てのROIの処理が完了するまでプロセスが繰り返される。試験の最後に、検出された不良ROIの数が所定のしきい値1280を超えると、不一致がユーザに1285で表示され、かつ/またはチップが1290で拒絶される。そうでない場合、チップ承認手順は試験されたチップが許容限度内であるという表示を1295で返す。
チップ承認検査(CQC)を実施するために以下の工程が実行される。
【0121】
黄金の較正のロード。チップのタイプまたはバッチ番号に対応する記憶された黄金の較正のアーカイブがロードされ、現在の較正セットになる。較正セットは、通常、各ROIのプロファイルの大きいセットではなく、単一のプロファイルからなる。
【0122】
特殊なパラメータ・セットでepfFitを初期化。CQCに使用されるepfFitパラメータは、一般に、通常の分析演算で使用されるepfFitパラメータとは異なる。特に、さまざまなパラメータの仕様の許容限度は変化し、標準より厳格なものも、またより緩やかなものもある。特に、個々のROI走査は同じチップの同じROIについて測定される個別化されたROI較正ではなく、単一の標準プロファイルと比較されるので、許容されるrmsの余りは大きくなる。
【0123】
事前走査データからの単一のROI走査の取り出し。較正段階に使用されるのと同じ較正データ・セットがCQCに使用される。一度に1つのROIがそのセットから取り出され、特別な構成のepfFit手順に提出される。データ・ポイント間隔は較正走査のそれであり、したがって、実行時走査に通常使用される間隔よりも小さいことに留意されたい。
【0124】
1つのROI走査の処理。これは、通常の実行時データを適合させる場合のプロセスと同じであるが、以下の例外がある。
a)上記のようにepfFitパラメータは修正されている。
b)各ROIに関連する較正プロファイルは異なる。
【0125】
問題のROIについて最近測定された較正プロファイルを使用する代わりに、全てのROIについて黄金のプロファイルが使用される。好ましい実施形態では、使用するROIはepfFit内の呼出元パラメータの1つである。この場合、値は「黄金のプロファイル」または黄金のプロファイルに付けられた任意のラベルである。
【0126】
黄金のプロファイルへの適合のROI結果の分析。仕様の許容限度を修正した通常の適合プロセスによって、いくつかの品質検査がプロセス内に生成される。これらのうち、rms余りの値が最も重要で、したがって、主要な試験基準である。これは、FWHMの変化を含む、予想標準形状からのSPRプロファイルに形状のあらゆる著しい変化を検出するからである。製造および処理の一貫性が変化するにつれて、このパラメータおよびその他のパラメータの可能な変形形態も修正できる。過剰な不具合拒絶を回避するために、主要なパラメータの適当な限度は通常、現場の経験に照らして確立される。
【0127】
ただし、通常の適合では普通直接関係がない他のパラメータも検査しなければならない。これらは以下を含む。
a)SPR角度移動。実行前に測定が行われるので、SPR角度は次の2つの効果によって黄金の標準から変化するはずである。(i)使用しているバッファ・ソリューションの屈折率、(ii)ユーザによってチップに適用された表面処理またはリガンド。項目(i)は、使用するバッファの定義が与えられると明示的に可能になる。項目(ii)は一般に数量的に考慮されないが、(ii)の効果は常にSPR角度を増加させることである。したがって、(i)を考慮した後では、(指定された許容範囲を超える)いかなる負の角移動も障害の徴候である。
b)ベースライン適合係数。共鳴深さを含むプロファイル形状が黄金のプロファイルに近い場合、適合内のベースライン構成要素は極めて小さくなければならない。したがって、この適合に制限を加えることは共鳴深さが許容誤差の範囲内にあることを保証することと等価である。
c)プロファイル適合係数。この値は普通1の大きさであるが、対象機器での信号強度が低下した場合にこれに合わせて1より小さくてもよい。黄金のプロファイルはフル強度に合わせて正規化されるので、この適合係数はごくわずかな量しか1を超えることができない。
【0128】
ROIはこれらの試験で1回または複数回不合格になると、「不良」のフラグが立てられ、不適合の原因が記録される。そのような仕様外ROIの数が記録される。
【0129】
不良ROIが多すぎる場合の試験。全てのROIが分析されると、不良ROIの数が所定の限度(0でもよい)に照らして試験される。この数がこの限度を超えると、チップは拒絶され、または最低でも、ユーザに通知がなされて試料ソリューションにかかる前に実行を終了することができる。所望に応じて、ユーザに「不良」である特定のROIを通知して、障害ROIが計画された実験で特に問題であるか否かをユーザが決定することができる。
【0130】
適合段階。好ましい実施形態では、実験中に得られた共鳴を測定する時には、epfFitルーチンが呼び出される。この場合、一度に、単一のROIに対応する1つのプロファイルのみが提出される。適合で使用するROI IDと共に、3つのベクトル、すなわち、各データ・ポイントのSPR強度、エンコーダ角、およびクロック時間が提出される。
【0131】
プロファイルがサンプリングされる角度は一般に較正時に使用される角度とは異なり、また同様の間隔である必要もない。通常、測定を高速化するためにはるかにまばらな角度間隔が使用される。より幅広い角度間隔は、共鳴のFWHMあたりの最小ポイント数、通常3または4に達し、それからより粗い間隔が決定的に角の確度を低下させるまでは角度決定雑音にほとんど影響はない。データ内のショット・ノイズ(およびその他の振幅雑音)は実際に確度を低下させるが、より粗いデータ・ポイント間隔によって測定で観測される光子の数が少なくなる程度までは、有害な影響がある。
【0132】
精度と確度が低下するとはいえ、部分走査(すなわち、不完全な共鳴プロファイル)で有効な適合を得ることができる。これは測定可能な有効屈折率(RI)のダイナミック・レンジを拡張する際に有用である。
【0133】
適合プロセスは上に概説した較正プロセスよりも複雑である。基本的な工程は以下の通りである。
【0134】
1.データ・ベクトルのアレイ・インデクスが一貫しているか検査される。角度の増加、減少いずれも可能であるが走査が角度の点で単調であるように角度が検査される。
【0135】
2.ROI指定に確実に較正が存在するようにROI指定が検査される。普通、適合に使用される較正プロファイルは同じROIに属するが、これは必須ではない。何らかの理由でこのROIが較正されなかった場合、または較正が失敗した場合、別の同様のROI較正プロファイルを代わりに用いても問題がない。これは、適合結果がプロファイル形状に極度に影響されることがないことと、実験中にまず重要であることは絶対SPR角ではなく角度移動であることが理由である。
【0136】
3.角度が減少順である場合、厳密に増加する角度順である較正プロファイルとの比較でデータ・ベクトルは便宜上反転される。
【0137】
4.走査時の最下ポイントを突き止める処理と少数の近隣ポイントを低次多項式(2次)に適合させる処理の適切な組み合わせを用いてSPR極小の大まかなロケーションが決定される。明らかな極小が検出できない場合、この手順は失敗であり、場合によっては、最初の推測として最下ポイント(走査の一方のエンドの場合)が使用される。
【0138】
5.較正段階ですでに計算された正確なサブサンプリングされた較正プロファイルおよび微分が取り出される。
【0139】
6.較正プロファイルおよび微分がフル・サブサンプリング・ステップ(通常0.01°)で移動され、較正プロファイルの公称極小を上記(4)の工程で決定された粗いSPRロケーションに一致させる。これは単に、インデックス・ポインタ計算にすぎない。
【0140】
7.適合させるSPR走査と較正プロファイルとの重畳部分が識別される。一般に、重畳はいずれか単独よりも短いが、一方が他方に包含されることもある。この重畳部分のみが使用される。
【0141】
8.実際のSPR走査角度値の信号および微分値が移動された較正プロファイルから取り出される。好ましい実施形態では、これはラグランジュ補間で達成されるが、当技術分野で知られているその他の任意の方法も使用できる。較正プロファイル内の角度ポイント間隔は極めて小さいので、この方法は正確である。
【0142】
9.SPR走査の切り捨てられた部分が適合される。好ましい実施形態では、これは、モデル構成要素として以下を用いて古典的な線形最小二乗適合を使用して達成される。
a)較正プロファイル
b)較正プロファイル微分
c)定数の追加オフセット。
【0143】
10.移動した較正プロファイルの見かけ上のSPR極小の表示角移動は上記工程(9)で得られた2つの適合係数の比、すなわち、較正微分適合係数の較正プロファイル係数に対する比として決定される。後者は普通は約1であるが前者は通常極めて小さい。この表示移動は上記の工程(6)で適用される離散的移動に追加され、較正時のSPRロケーションの実際の総SPR移動の予想値を提供する。
【0144】
11.工程(10)で得られる表示移動がサブサンプリング・ステップの半分を超えた場合、表示ステップがサブサンプリング・ステップの半分以下になるまで工程(6)〜(10)が繰り返される。上記の基準が現在好ましいが、その他の終了基準を使用しても問題がない。表示移動がステップの半分に極めて近い時に前後にエンドレスにジャンプすることを防止するために特別な手段が提供される。
【0145】
12.この段階で、SPRロケーションはかなり十分に確立されている。ただし、ユーザは、任意選択として、共鳴付近のSPR走査の限られた領域を最終適合に使用してプロファイルのウィング内のアーチファクトによるエラーを低減することができる。この「スウィート・ゾーン」適合を使用する場合、SPR走査はさらに指定の低減された幅に切り詰められ、共振ロケーション上で可能な限りセンタリングされ、工程(6)〜工程(11)のプロセスが再度繰り返される。最初にスウィート・ゾーンまで切り詰めない理由は、可能な限り多くのデータを用いることで大幅に不正確な適合を生む尤度を低減することにある。較正と未知のプロファイルの正確なアラインメントがかなり正確に決定されると、大幅に切り詰められた共鳴などの病的なケースにあっても切り詰められた走査を用いた工夫が安全である。ただし、切り詰められた適合に直接スキップすることで実行速度を上げることができる。
【0146】
13.さまざまな品質検査が実行される。特に、有効な適合を実行するには重畳と任意のさらなる切り詰め後に少なくとも3つのポイントが残っていなければならない。下限値と上限値の両方に照らして適合の余りが検査される。
【0147】
14.上記で決定した角移動に加えて、この移動を以前に決定された較正公称SPR極小角に追加することで絶対共振角が予想される。
【0148】
15.検出された極小のいずれかの側の走査データ・ポイントが測定された時間の間を補間することで走査で極小が発生したクロック時間が予想される。この極小時間は得られたSPR角を力学分析で用いる特定のクロック時間により正確に割り当てる際に極めて有用である。
【0149】
16.適合係数およびこれらのパラメータと制御限度との比較に基づく品質予想などのさまざまな詳細と共に、適合の結果が呼び出し元プログラムに返送される。
【0150】
図13は、本発明の適合段階の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0151】
図13に示すように、好ましい実施形態では、適合段階は初期化および自己試験手順1310で開始する。次いでSPR動作が実行され、時間tの実行時角度走査が1320で獲得される。次いで、単一のROI走査が1330で取り出され、最初のROIについて1340で処理される。1350でプロファイリングする他のROIがある場合、工程1330および1340が繰り返される。そうでない場合、グラフィック表示が1360で更新され、1370で適合結果がメモリに記憶される。1380で別の角度走査が必要な場合、手順は工程1320に戻る。そうでない場合、適合段階は完了する。
【0152】
初期化および自己試験1310。好ましい実施形態では、EPF適合ソフトウェアの詳細な動作は制御パラメータのセットによって制御される。これらのパラメータのデフォルト値はプログラム内に含まれ、適合初期化ルーチンによって設定される。任意選択として、制御ソフトウェアは現在のパラメータ・セットを取り出し、かつ/または新しい値を設定できる。初期化ルーチンはまたさまざまな試験手順を用いてエンドツーエンドでEPF適合モジュールの完全な試験を開始する。これらの試験手順は、順次に較正モジュールからの手順によって生成されるランダム化された合成データを使用する。試験結果は正確であるか検証される。好ましい実施形態では、初期化プロセスは適合初期化フラグの設定も含む。
【0153】
動作の実行。較正セットを獲得すると、一般に動作が実行され、チップ上にさまざまなバッファおよび試料ソリューションが流れる際にいくつかの(通常100〜400またはそれ以上)ROIのSPR角応答の時間進化を追跡するために角度走査のシーケンスが実行される。結果として得られるSPR応答は後ほど分析され、結合親和性、運動率定数などの対象のイベントおよびパラメータが決定される。
【0154】
時間tでの実行時間角度走査1320。1〜2分から数時間またはそれ以上継続する(ただし関連する化学反応速度の時間尺度に応じて通常20〜200分)SPR実行時の各時間ポイントについて、角度走査が実行され、その後にEPF適合が実行されてROIの各々について共振角が決定される。適合は通常、時間的に次の時間ポイントのデータ獲得と重畳する。
【0155】
チップ上のすべての共鳴を含むのに十分な範囲にわたる入射角の関数として各々のROIについてSPR信号が測定される。この範囲は、較正ステップで使用する角度範囲と同じでも、それより大きくても、またはそれより小さくてもよい。好ましい実施形態では、実行時に全てのROI共鳴を共鳴移動として包含するために、この範囲を必要に応じ実行中に変更してもよい。角度ステップは名目上所定の値、通常、50〜200mDegすなわち共鳴の幅(FWHM)の約5〜20%に保たれている。通常、これらの角度ステップは較正手順に必要なステップ数よりはるかに多い。
【0156】
較正段階と同様、SPR信号は各々通常200〜4000のピクセルを含む各ROIを定義する検波器ピクセルについて平均される。ROIの形状は、矩形、楕円形または環状など、当技術分野で知られているさまざまな形状である。上記のように、信号は普通、A/Dカウントで表されるが、任意の一貫した単位も使用できる。好ましい実施形態では、ROIインデクスおよび角度インデクスを含め、完全な信号強度データ・セットが2次元アレイ内に含まれる。
【0157】
別々のベクトルが角度値、好ましくは、角度エンコーダを用いて測定した値を含む。公称の命令角度ではなく実際の測定角度を使用することが好ましい。較正データ・セットには必要ない別のもう1つのベクトルは、個々の角度データ・ポイント(各々が1つまたは複数のCCD検波器フレームからなる)が得られた平均実クロック時間を含む。各角度値について単一のCCD露光が使用されるが、複数のフレームを平均するか共に追加してS/N比を改善することができる。
【0158】
好ましい実施形態では、通常の動作では、これらのデータは機器制御ソフトウェアによって獲得され、各々の角度走査が終わるたびに直ちにメインEPF適合ルーチンに渡される。ただし、実行後モードでデータ・セットの再分析のためにEPFも使用できる。この場合、測定されたデータはディスクに記憶され、取り出されることになる。
【0159】
単一のROI走査の取り出し1330。好ましい実施形態のepfFitルーチンは1回に1つのROIしか処理しない(ROIのセット全体を1回の呼び出しで処理するepfCalとは異なり)ため、各ROIのデータは機器制御ソフトウェアによって分離されなければならない。各ROIについて、ROIインデクスおよび/またはラベル、ピクセルで平均した信号強度のベクトル、エンコーダ角度のベクトル、およびフレーム測定時間のベクトルが適合ルーチン呼び出しのために作成され使用される。なお、最後の2つのベクトルは各走査で全てのROIについて同じであるが、走査ごとに変化することに留意されたい。
【0160】
1つの実行時ROI走査の処理1340。このコア手順は図14の説明と関連して後に詳述する。
【0161】
グラフィック表示の更新1360。好ましい実施形態では、機器制御ソフトウェアは一般に、いくつかの、または全てのROIについてリアルタイムでSPR応答(角)対時間曲線を表示する。これによって、ユーザは化学的結合曲線の展開を観察し、問題を識別し、あるいは実行を早く終了するか延長するかを決定できる。
【0162】
適合結果のディスクへの記憶1370。品質尺度およびエラー・コードを含む適合結果は任意選択としてディスクに記憶して後ほど詳細に分析できる。好ましい実施形態では、ROI走査を実行するたびに、各時間データ・ポイントでの結果は、以下を含む結果構造体を含むベクトルからなる。すなわち、epfFit結果、ROIラベル、走査での平均ステップ間隔(単位:度)、走査反転フラグ(走査が角度の下方向で反転する必要があれば真)、較正プロファイルからこの走査への角移動Δθ、公称較正プロファイルSPR角に基づくθSPR、共鳴極小が観察された実行時間、適合で実際に使用される角度走査ポイント数、RMSの余り(δyRMS)、適合の振幅(1程度)、適合のベースライン、外挿フラグ(不完全なプロファイルのために結果が外挿された場合に真)、走査切り詰めフラグ(適合されたフル走査長に満たないことを示す(普通のケース))、結果の品質パラメータ(通常の可能な値は「優秀」、「良好」、「可」、または「不可」)、一次エラー状態(もしあれば)の説明、および遭遇する致命的でない警告状態の数。
【0163】
図14は、図13の工程1340に示す1回のROI走査の処理の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0164】
図14に示すように、最初にROIの較正プロファイルの利用可能性と取り出されたデータ・ベクトルの一貫性が1405で検査され、走査インデクス付けが1410で検査され、SPR傾斜角度が1415で粗予想されて走査範囲内にあることが確認される。1420でこれらの試験のいずれかが不合格になると、1425で処理は停止し、エラーが返される。そうでない場合、ROIの較正モデル・プロファイルが1430で取り出され、1435でSPR角が較正モデルへの適合によって決定される。1440でスウィート・ゾーン適合が要求されると、1445で走査は切り詰められ、1450で較正モデルに切り詰められた較正を適合させることでSPR角が再計算される。最後に、SPR極小の発生時間が1455で予想される。
【0165】
較正利用可能性の存否の検査1405。好ましい実施形態では、信号強度、走査角、および測定時間ベクトルが全て矛盾なくインデクス付けされていることを検証するために一貫性検査手順が使用される。次に、現在の較正セットが存在し、現在のデータのチップIDに対応し、指定されたROIの較正プロファイルが存在し有効であることが検証される。問題があれば、そのROIの適当なエラー・フラグがセットされる。
【0166】
走査インデクス付けの検査1410。好ましい実施形態では、走査の意味が反転すると(すなわち、大きい入射角から小さい入射角へ)、正しい意味を持った3つのデータ・ベクトルの作業用コピーが生成される。これは双方向走査を使用する際の交互の走査において実行され、データ獲得が迅速になる。このルーチンはまた、角度ステップが単調であり、大きさが十分に一貫していることと、角度データ・ポイントの数が十分であることと、走査によって十分な角度範囲がカバーされることと、測定時間値が時間において単調であることを検査する。
【0167】
SPR角度の粗予想1415。最初、共鳴の角度ロケーションの第1の予想が生成される。第1に、走査の極小強度ポイントが突き止められる。ある種の制御パラメータの設定に応じて、極小が走査内に、少なくとも両方のエンドから一定の指定された距離に出現することが要求される。あるいは、外挿が許され、共鳴位置が走査範囲外にあってもいい場合がある。これらの設定に従って、極小が走査のいずれかのエンドに近すぎない場合、走査は承認される。極小が走査の各エンドから少なくとも1データ・ポイントの位置にある場合、2次適合を用いて補間された角極小が予想される。そうでない場合、極小自体が粗予想として使用される。この粗予想されたSPR角を開始ポイントとして用いることで、以下の適合プロセスが容易になる。SPR角を粗予想する当技術分野で知られているその他の方法も適している。
【0168】
SPR角の正確な決定1435、1450。このコア適合手順は、図15の説明と関連して後ほど詳述する。第1に、適当な較正モデル・プロファイルおよび微分ベクトルがメモリから取り出される。次に、図15と関連して詳述する適合計算「較正モデルへの適合によるSPR角の決定」がフル走査範囲を用いて1回実行される。次いで、スウィート・ゾーン適合が要求された場合、走査範囲は第1の計算されたSPR角のいずれかの側の指定のスウィート・ゾーン範囲に切り詰められ、コア適合手順が繰り返されて最終結果が得られる。初期のフル範囲の適合は制限範囲のスウィート・ゾーン適合よりもより堅牢であり、データ内の異常または極めて不正確な初期予想によって「だまされる」ことなく適当な共振角を見つけることが容易になることから、この繰り返しが実行される。他方、スウィート・ゾーン適合は適合をさらに磨き上げて最適化するように指定できる。これは、スウィート・ゾーン適合が走査データの遠方ウィングの起こり得る形状のアーチファクトによって影響されることが少ないためである。
【0169】
スウィート・ゾーンへの切り詰め1445。好ましい実施形態では、スウィート・ゾーンへの切り詰めは2つの工程で実行される。第1に、走査が一方または他方のエンドで推定上のスウィート・ゾーンを含むのには短すぎるか否かが手順によって判定される。そうである場合、スウィート・ゾーンの角限度は可能であれば短いエンドから移動され、スウィート・ゾーンの角度幅全体が維持される。第2の工程で、別の手順が実際の切り詰めを実行する。
【0170】
極小の時間の予想1455。SPR共鳴が検出された表示データ・ポイントが分かると、好ましい実施形態では、測定時間が補間されてこのROIのSPR極小が出現した実行中の時間が決定される。ROIによっては走査の開始時付近に複数の極小を有することがあり、またエンド付近に有するROIもあるため、角度走査の開始時間または中間点を使用するだけでは十分でない。正確な時間は運動結合曲線の後ほどの分析で重要である。
【0171】
コア適合手順。図15は、図14の工程1435および1450で説明した経験的プロファイル適合を用いたSPR角の決定の動作流れ図である。工程の各々は、以下の説明で詳述する。好ましい実施形態の実施については詳細な説明の節の最後で説明する。
【0172】
図15に示すように、同じROIの較正走査から得られる実行時SPR共振角の予想オフセットが1510で計算され、走査は1520で較正プロファイル限度1520に切り詰められる。次に、1530で、較正プロファイルは補間され、微分モデル・ベクトルが予想オフセットで計算される。補間された較正プロファイルを用いて1540で切り詰められた走査に適合が実行され、予想移動からの余りの角度移動が1550で適合係数から計算される。1560でSPR共振角の改良された予想が計算され、1570で適合余りが計算される。好ましい実施形態では、1580で角度移動の大きさが較正プロファイルのサブサンプル角度ステップ間隔の半分を下回るまでこの適合ループが繰り返される。ただし、任意の適した収束基準も有利に使用できる。共鳴移動の値が所定の収束基準に収束するまでこの処理が繰り返される。
【0173】
好ましい実施形態では、2回呼び出される手順によって、基本SPR角度決定が実行される。入口で、この手順には較正モデル・プロファイルと微分と、SPR共振角の初期予想θ’SPRが供給される。出口で、この手順は結果構造体を返送する。
【0174】
ΔθEST=θ’SPR−θCAL1510。較正走査でのそのロケーションからのSPR共鳴の予想オフセットΔθESTが計算され、モデル構成要素の適当な移動が可能になる。
【0175】
較正プロファイル限度への再切り詰め走査1520。一般に、現在の角度走査は一方または両方のエンドの較正モデルがカバーする範囲を超えて拡張することができる。したがって、走査は、現在の予想角度オフセットΔθESTを用いて決定される較正範囲内に収まる範囲に一時的に切り詰められる。なお、一時的に切り詰められたポイントは後の繰り返し処理で復元できる。
【0176】
補間された較正プロファイルの計算1530。補間された較正プロファイルの計算153は適合アルゴリズムの最も微妙な部分の1つである。現在の予想角度オフセットΔθESTに基づいてサブサンプリングされた較正モデル・プロファイルおよびその微分がサブサンプリングされた角度ステップ(通常10mDeg)の整数倍だけ移動され、適合される走査の予想位置とできるだけ近くに位置合わせされる。次いで、モデル・プロファイルおよびその微分は、ラグランジェ補間を用いて、適合する再度切り詰められた走査の実際の不規則な間隔の測定角度値に補間される。エンド・ポイントでは、2次ラグランジェ補間が使用され、切り詰められた走査の内部ポイントでは、4次ラグランジェ補間が使用される。このポイントで、リサンプリングされた較正プロファイルおよび微分モデルが適合する走査の予想移動位置で作成されている。好ましい実施形態ではラグランジェ補間が使用されているが、当技術分野で知られている多数のその他の方法も適している。
【0177】
再度切り詰められた走査の最小二乗適合の実行1540。好ましい実施形態では、切り詰められた走査は以下の3つの構成要素を用いて古典的な線形最小二乗適合を使用して達成される。
1.リサンプリングされた較正プロファイル
2.リサンプリングされた較正微分
3.定数のベースライン・オフセット
【0178】
最後の構成要素は絶対に必要というわけではないが、ベースライン・システム・ドリフトおよびその他の貢献する影響を考慮することが推奨される。追加の構成要素を含ませて、強度ドリフトおよびその他の貢献するアーチファクトを考慮することができるが、角度移動の予想値を改善するのではなく劣化させる可能性がある構成要素もある。適合モデルは以下の通りである。
【0179】
yFIT=C0yPROFILE+C1yDERIV+C2
適合係数からのδθの計算1550。較正プロファイルをリサンプリングするための予測角度から得られる余りの角移動δθは、微分構成要素の適合係数に比例する。より詳細には、
δθ=−C1/C0
ただし、C0およびC1はそれぞれ第1および第2のモデル構成要素適合係数である。
角度予想値の更新1560。SPR共振角の改良された予想値は次のように計算される。
θ’SPRNEW←θ’SPR+δθ
適合の余りの計算1570。余りはδyi=yOBSERVEDi−yFITiとして計算され、rms余り値は
δyRMS=[Σyδyi2]/DoF
として計算される。ただし、自由度数DoF=NPOINTS−NCOMPONENTS、NCOMPONENTS=3。
【0180】
|δθ|<ΔθCAL/2?1580。好ましい実施形態では、角移動δθの大きさが較正プロファイル内のサブサンプル角度ステップ間隔の半分を下回り、整数ポイント移動が真の移動にできるだけ近づく時に、適合ループの繰り返しが終了する。大半の場合、ループの1つの通過だけが必要であるが、初期予想が不正確な場合、1回または複数回の繰り返しが必要になろう。
【0181】
適合された角度値が1つのサブサンプリングされた較正プロファイル・ポイント間の中間位置に極めて近い場合に、ループ終了基準はまた発振の可能性を含む。したがって、|δθ|の値が整数オフセットが連続する繰り返しの2つの隣接する値の間で発振する際に0.5ΔθCALよりわずかに上であることが可能である。好ましい実施形態では、アルゴリズムがそのようなループに捕らわれると、数回繰り返した後で終了し、|δθ|の最小の観察値が使用される。なお、これは好ましい終了基準であるが、|δθ|<ΔθCALなどのより制約が少ない終了基準を使用しても問題はないことに留意されたい。
【0182】
結果の生成1590。θSPR=θ’SPR。角度適合手順の最終パス上の適合された角度予想の最終的な値が結果として得られる。これに対応するrms余りも報告される。各ROIの結果構造体が作成される。これは任意選択として後にディスクに記憶される。
【0183】
図16は、適合段階の出力例を示す画面である。図16に示す画面実施形態は、例示のためにのみ提供され、本発明から逸脱することなく、追加のパラメータまたはグラフを追加し、パラメータまたはグラフを削除し、あるいは別の画面構成を使用できることを理解されたい。この画面は図9〜11に示す画面に似ているが、左側のStart Runボタン1605を用いて開始された実際の実行時に表示される。
【0184】
図16に示すように、Imageタブ1615ではなくROIsタブ1610が選択される。ROIsマップ1622に示されるさまざまなROI1620にはさまざまなリガンドが配置されている。画面上部には、「ROI Information」タブ1630をクリックすると選択されるROI190用のEPFプロファイル特性およびEPF事前走査概要1625が見える。実行温度はボックス1635内に示されている。この場合、右下の大きいグラフ1640は、強度対角度ではなく実験の進行に伴う角度移動対時間を示している。さらに、ROIsマップ1622上の強調表示されたROI1650に対応するROI曲線のサブセット1645が表示されている。この図の個々のデータ・ポイントは各々、完全な角度走査に対応し、その走査からEPFは共振角位置を計算する。この場合、新しいポイントはほぼ6秒ごとに描かれ、この尺度ではポイントを分解するには間隔が狭すぎる。このために、記号は描かれず、接続線分だけが表示されている。
【0185】
実行の表示中、実行の最初にさまざまなROI図が自動的にゼロになり、初期角度の微分だけが表示される。300秒で、試料が導入され、さまざまなROI上で異なる度数まで表面への結合が開始する。t=900秒で、試料フローが終了し、バッファ・フローが再開し、結合された試料がゆっくりと表面から分離し始める。
【0186】
これらの種類の運動曲線(関連付け段階および分離段階)が後処理でさらに分析され、運動結合定数の所望の測定値が生成される。好ましい実施形態では、この分析は機器上で機器制御ソフトウェアを用いて実行されず、適合データは他の専門化したツールにエクスポートされる。完了したデータは、これらの他のツールを用いて容易に表示できる。
【0187】
別の構成。EPF形成で、測定されていたかのように、表にした理論モデル関数を使用できる。言い換えれば、較正走査をEPF内と同様に実行でき、理論応答曲線をこれらの測定した曲線に適合でき、適合した曲線をEPFモデル関数として使用できる。実際、これによって、EPFモデルを導出する際の平滑化動作を実行する別の手段が提供される。実験のプロファイルが理論によって正確にモデル化できるほど汚れがなければ、これはうまく機能する。ただし、EPF手法より大幅に優れているとは言えない。非線形適合はROIあたり1回の実行で1回だけでよいので、計算の間接費は許容できるであろう。ただし、ソフトウェアの複雑さは大幅に増加し、ほとんどまたは全く利益が得られない。さらに、適した関数が識別できるとして、明示の関数を経験的プロファイルの代役として使用でき、EPF手法で経験的プロファイルとほぼ同様に機能させられる。
【0188】
上記の好ましい実施形態の説明は角度走査光学共振システムについてであるが、前述したように、波長走査システムにも同じ手順を適用できる。その場合、「角度」および「角度ステップ」は「波長」および「波長ステップ」と読み替える。さらに、「エンコーダ角」は「較正波長値」と読み替える。また、波長ステップ・サイズの数値と単位は、「0.05度」ではなく「0.5nm」のように異なっていることが理解されよう。したがって、共鳴移動は角度移動でなく波長移動である。同様に、本発明のEPFシステムは、参照するパラメータを適当に修正して事前分散または相関走査から得られるデータに適用できる。さらに、共鳴移動を決定するための較正プロファイル微分の使用が今のところ本発明の好ましい実施形態であるが、当技術分野で知られている他の方法も適しており、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0189】
エラー報告。本発明の好ましい実施形態はエラー報告機能をさらに含む。エラー報告は、当技術分野で知られている多数の方法のいずれを用いても処理できる。エラーは較正または適合段階、あるいはその両方で報告できる。一実施形態では、それを超えるとエラーを記録するエラー深刻度レベルが指定される。任意選択として、指定されたしきい値を超える数のエラーが較正段階で検出されると、較正走査またはチップ自体が拒絶される。
【0190】
例えば、図17は、特定のROIへの不良適合の報告を示すローカル・エラー・ログの例を示す画面である。図17に示す画面の実施形態は例示のためにのみ提供され、本発明の概念を逸脱することなく、追加のパラメータを追加し、パラメータを削除し、または別の画面構成を使用できることを理解されたい。図17に示すように、この実施形態では、エラー・ログは、エラーの日付/時刻1710、エラーを発生させたアプリケーション1720、エラーの深刻度1730、ユーザ1740、エラーを発生させたモジュール1750、エラーの原因が受信した不良データであるか何か他のタイプのイベントであるかを示す標識1760、およびエラーの説明1770を報告する。
【0191】
図18は、特定のROIへの不良適合の報告を示すリモート・ネットワーキングされた監視コンピュータ上のエラー・ログの例を示す画面である。図18に示す画面の実施形態は例示のためにのみ提供され、本発明の概念を逸脱することなく、追加のパラメータを追加し、パラメータを削除し、または別の画面構成を使用できることを理解されたい。図18に示すように、エラー・ログは、エラーの時刻1810、エラーを発生させた設備1820、エラーの優先度1830、見かけのエラー発生源1840、実際のエラー発生源1850、および記録されたエラー・メッセージ1860を報告する。
【0192】
好ましい実施形態の実施。本発明は、当技術分野で知られている任意の適した方法、機構、または方法および/または機構の組み合わせで実施できるが、好ましくは、ソフトウェアで実施される。好ましい実施形態では、Visual BasicまたはC++を用いてソフトウェア・ソース・コードが実施されるが、当技術分野で知られている任意の適したプログラミング言語またはソフトウェア実施ツールも本発明の範囲内である。同様に、ソフトウェアは、任意の適したオペレーティング・システム、コンパイラ、インタプリタ、アプリケーション・プログラム、または当技術分野で知られている他のそのようなデバイスを用いて実行できる。本発明の好ましい実施形態では、出荷される実際の製品は、オブジェクト・コードとそれぞれに対応するダイナミック・リンク・ライブラリ(DLL)からなる。
【0193】
較正のための公開方法。好ましい実施形態では、多くの手順は、特に断りのない限り、不具合で真を返すブール関数である。Long型エラー・コードも一般に返される。多くの手順が任意選択である。必須の2つの手順は、較正初期化手順とメイン較正モジュールである。較正初期化手順は他のどのアクションにも先立って呼び出されなければならない。この手順は、較正モジュールを初期化し、較正パラメータのデフォルト値を設定し、較正モジュールのエンドツーエンドの自己試験を実行する。
【0194】
メイン較正手順は較正を実行してその結果を専用のメモリ内に記憶する。メイン較正手順は致命的なエラーに遭遇しない限り障害にならない。したがって、全手順が停止することなく1つまたは複数のROIが障害になることができる。問題が検出されたROIの数が返される。問題はさまざまな品質基準に基づく明白な障害から低い評価にわたる。呼び出し元プログラムは問題が検出されたROIの数>0か否かを検査し、そうである場合、調査しなければならない。
【0195】
適合のための公開方法。好ましい実施形態では、呼び出しごとに1つのROIしか適合されない。これは、ROI適合の間に、結果をインクリメンタルに描くなどの他の作業を実行できるという融通性を可能にする。さらに、グローバル基準でなくROIごとに詳細なエラーおよび問題の報告ができる。適合は較正より複雑で込み入っているが、含まれるのは1つの基本方法だけである。さらに、多くの手順は、不具合で真を返すブール関数である。EPF初期化手順とメイン適合モジュールの1つの手順だけが必須である。適合初期化手順は他のどのアクションにも先立って呼び出さなければならない。この手順は、適合モジュールを初期化し、適合パラメータのデフォルト値を設定する。メイン適合ルーチンは不具合で真を返すブール関数である。これは結果が無用であるという意味ではない。逆に、結果はその詳細を調査する必要がある。
【0196】
好ましい実施形態では、時間は実行開始から秒単位で測定される。場合によっては、人間が解釈しやすいように時間は実際には分単位で記憶される。例えば、親和性グラフは分単位のより低い時間尺度を有する。epiFitルーチンが受信する測定時間値は高精度である必要はない。それらの値は、運動分析などの動的な状況の時間軸のより正確な予想値を提供するためのものである。おそらくは精度が0.1秒の値が適当であるが、これより幾分高精度の値が有用である。これらの時間は、運動実行時に連続的に動作するあるシステム・クロックに従って普通秒単位で報告され、運動データを描画して分析するために使用される。秒単位の時刻も許容できるが、真夜中に「リセット」するため、その時刻の実行が停止することがある。
【0197】
したがって、本発明の装置および方法は、計算の複雑さが比較的低く、最小数の走査データ・ポイントを必要とし、ショット・ノイズにより影響を受けず、長い走査時間の使用を可能にし、より速い走査速度を提供し、試料の結果を迅速に提供し、より多くの数のROIの走査を可能にし、部分的な曲線しか利用可能でない時でも有用な結果を提供する表面結合光学共振曲線の数量化の新しい機構を提供する。上記のさまざまな実施形態の各々は複数の特徴を提供するために他の上記の実施形態と組み合わせることができる。さらに、本発明の装置および方法のいくつかの別々の実施形態について以上説明してきたが、本明細書に記載する内容は本発明の原理の適用を例示したものにすぎない。したがって、当業者によるその他の構成、方法、および代替形態も、添付の請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の表面結合光共振プロファイルを数量化する方法の一実施形態の工程を示す図である。
【図2】本発明の表面結合光共振プロファイルを数量化する装置の例示の実施形態のブロック図である。
【図3】本発明の較正走査のグラフ出力を示す図である。
【図4】本発明の実行時走査のグラフ出力を示す図である。
【図5】本発明の較正段階の動作流れ図である。
【図6】較正プロファイルの処理の動作流れ図である。
【図7】本発明の較正段階に返送されるプロファイル特性の定義を示す図である。
【図8】較正段階の開始のためのユーザ・インタフェースの例を示す画面である。
【図9】較正段階の出力例を示す画面である。
【図10】共鳴がないことを示す「不良ROI」41がある較正段階の別の出力例を示す画面である。
【図11】「良好RIO」190の詳細を示す較正段階の別の出力例を示す画面である。
【図12】オプションのチップ承認手順の動作流れ図である。
【図13】本発明の適合段階の動作流れ図である。
【図14】1回のROI走査の処理の動作流れ図である。
【図15】経験的プロファイル適合を用いた共振角の決定の流れ図である。
【図16】適合段階の出力例を示す画面である。
【図17】特定のROIへの不良適合の報告を示すローカル・エラー・ログの一例を示す画面である。
【図18】特定のROIへの不良適合の報告を示すリモート・ネットワーキングされた監視コンピュータ上のエラー・ログの一例を示す画面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面結合光学共振プロファイルを数量化する方法であって、
少なくとも1つの対象領域の較正走査から少なくとも1つの較正結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正結果から少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程と、
少なくとも1つの対象領域の実験的走査から少なくとも1つの実験的結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正結果に関連する少なくとも1つの実験的結果の少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程との組み合わせを含む方法。
【請求項2】
1つの共振パラメータが角度移動である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの共振パラメータが波長移動である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの較正プロファイルをメモリに記憶する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの共振パラメータをメモリに記憶する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの較正セット統計を計算する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの較正セット統計を表示する工程をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程が、
生較正プロファイルを生成する工程と、
前記生較正プロファイルから前記較正プロファイルの少なくとも1つの微分を決定する工程とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程が前記生較正プロファイルを平滑化する工程をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程が前記生較正プロファイルから前記較正プロファイルの少なくとも1つの特性を決定する工程をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記決定された特性が最大半値の全幅、公称共振角、表示深さ、および最大強度からなるグループから選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記平滑化された生較正プロファイルをサブサンプリングする工程をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記サブサンプリングされた平滑化生較正プロファイルの両エンドを外挿する工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記サブサンプリングされた平滑化生較正プロファイルの第2の平滑化を実行する工程をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記較正プロファイルをメモリに記憶する工程をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記較正プロファイルを生成する工程が、
前記較正プロファイルの品質を決定する工程と、
前記品質決定に従って前記較正プロファイルにマークを付ける工程とをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの較正結果について予備品質検査を実行する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記予備品質検査の結果に従ってメモリ内の少なくとも1つの較正結果に有効または無効のフラグを立てる工程をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの較正プロファイルの微分を計算する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの走査結果をユーザに表示する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの対象領域の実験的走査の少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が、
予想共鳴移動を計算する工程と、
前記予想共鳴移動および前記較正プロファイルから少なくとも1つの補間されたプロファイルを計算する工程と、
前記補間された較正プロファイルを用いて前記実験的走査を適合させる工程と、
前記適合工程から適合係数を入手する工程と、
前記適合係数から前記共鳴移動の余り共鳴移動を計算する工程と、
前記共鳴移動の改良された予想を計算する工程と、
前記共鳴移動の値が所定の収束基準に収束するまで繰り返す工程とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの対象領域の実験的走査の少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が適合余りを計算する工程を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が走査極小の時間を予想する工程をさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が最初に前記実験的走査を前記較正プロファイルの限度内に切り詰める工程をさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が、
前記補間されたプロファイルをスウィート・ゾーンに切り詰める工程と、
前記切り詰められた補間後のプロファイルを用いて前記共振パラメータを再決定する工程とを含むスウィート・ゾーンに適合される工程をさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が初期データ妥当性検査を実行する工程をさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記初期データ妥当性検査を実行する工程が、
プロファイルの利用可能性を検査する工程と、
データの一貫性を検査する工程と、
走査のインデクス付けを検査する工程とを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記適合工程が最小二乗適合を使用する請求項21に記載の方法。
【請求項29】
エラー・ログ内のエラーを報告する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記エラーを報告する工程がローカル・エラー・ログを使用する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記エラーを報告する工程がリモート・エラー報告を使用する請求項29に記載の方法。
【請求項32】
チップ承認検査を実行する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項33】
表面結合光学共振プロファイルを数量化する方法であって、
少なくとも1つの対象領域の較正走査から少なくとも1つの較正結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正結果から少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程であって、前記工程が、
生較正プロファイルを生成する工程と、
前記生較正プロファイルを平滑化する工程と、
前記平滑化された生較正プロファイルをサブサンプリングする工程と、
前記平滑化された生較正プロファイルから前記較正プロファイルの特性を決定する工程とを含む工程と、
少なくとも1つの較正プロファイルをメモリに記憶する工程と、
少なくとも1つの較正プロファイルの微分を計算する工程と、
少なくとも1つの対象領域の実験的走査から少なくとも1つの実験的結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正プロファイルに関連する少なくとも1つの実験的結果の共鳴移動を決定する工程であって、前記工程が、
予想共鳴移動を計算する工程と、
前記予想共鳴移動および前記較正プロファイルから少なくとも1つの補間されたプロファイルを計算する工程と、
前記補間された較正プロファイルを用いて前記実験的走査を適合させる工程と、
前記適合工程から適合係数を入手する工程と、
前記適合係数から前記共鳴移動の余り共鳴移動を計算する工程と、
前記共鳴移動の改良された予想を計算する工程と、
適合余りを計算する工程と、
前記共鳴移動の予想された値が所定の収束基準に収束するまで繰り返す工程と、
走査極小の時間を予想する工程とを含む工程と、
少なくとも1つの走査結果をユーザに表示する工程との組み合わせを含む方法。
【請求項34】
較正走査結果フェッチャおよび、
較正プロファイル作成モジュールを含む較正モジュールと、
実験的走査結果フェッチャ、
較正プロファイル・フェッチャおよび、
共鳴移動決定モジュールを含む適合モジュールとの組み合わせを含む表面結合光学共振プロファイルを数量化する装置。
【請求項35】
前記較正プロファイル作成モジュールが曲線スムーザをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記較正プロファイル作成モジュールがサブサンプラをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記較正プロファイル作成モジュールが曲線スムーザとサブサンプラとをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項38】
共振パラメータ・カルキュレータをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項39】
前記計算された共振パラメータが予想絶対共振ポイント、共鳴極小の時間、診断情報、および品質情報からなるグループから選択される請求項38に記載の装置。
【請求項40】
機器制御およびデータ獲得モジュールをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項41】
試験およびサポート・モジュールをさらに含む請求項40に記載の装置。
【請求項42】
表面プラズモン共振チップを承認する方法であって、
承認されるチップのタイプの黄金の較正プロファイルを入手する工程と、
試験対象チップの少なくとも1つの対象領域の較正走査から少なくとも1つの較正結果を入手する工程と、
前記少なくとも1つの較正結果を前記黄金の較正プロファイルと比較して少なくとも1つの比較結果を入手する工程と、
前記少なくとも1つの比較結果に選択基準を適用することで前記チップが使用に適しているか否かを判定する工程との組み合わせを含む方法。
【請求項43】
チップ承認結果を前記ユーザに表示する工程をさらに含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記チップが適しているか否かを判定する工程が「不良ROI」カウントをインクリメントする工程を含む請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記チップが適しているか否かを判定する工程が表示のために「不良ROI」数を記憶する工程を含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記較正を比較する工程がチップ承認パラメータ・セットで適合モジュールを初期化する工程を含む請求項42に記載の方法。
【請求項1】
表面結合光学共振プロファイルを数量化する方法であって、
少なくとも1つの対象領域の較正走査から少なくとも1つの較正結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正結果から少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程と、
少なくとも1つの対象領域の実験的走査から少なくとも1つの実験的結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正結果に関連する少なくとも1つの実験的結果の少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程との組み合わせを含む方法。
【請求項2】
1つの共振パラメータが角度移動である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの共振パラメータが波長移動である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの較正プロファイルをメモリに記憶する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの共振パラメータをメモリに記憶する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの較正セット統計を計算する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの較正セット統計を表示する工程をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程が、
生較正プロファイルを生成する工程と、
前記生較正プロファイルから前記較正プロファイルの少なくとも1つの微分を決定する工程とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程が前記生較正プロファイルを平滑化する工程をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程が前記生較正プロファイルから前記較正プロファイルの少なくとも1つの特性を決定する工程をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記決定された特性が最大半値の全幅、公称共振角、表示深さ、および最大強度からなるグループから選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記平滑化された生較正プロファイルをサブサンプリングする工程をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記サブサンプリングされた平滑化生較正プロファイルの両エンドを外挿する工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記サブサンプリングされた平滑化生較正プロファイルの第2の平滑化を実行する工程をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記較正プロファイルを生成する工程が前記較正プロファイルをメモリに記憶する工程をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記較正プロファイルを生成する工程が、
前記較正プロファイルの品質を決定する工程と、
前記品質決定に従って前記較正プロファイルにマークを付ける工程とをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの較正結果について予備品質検査を実行する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記予備品質検査の結果に従ってメモリ内の少なくとも1つの較正結果に有効または無効のフラグを立てる工程をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの較正プロファイルの微分を計算する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの走査結果をユーザに表示する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの対象領域の実験的走査の少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が、
予想共鳴移動を計算する工程と、
前記予想共鳴移動および前記較正プロファイルから少なくとも1つの補間されたプロファイルを計算する工程と、
前記補間された較正プロファイルを用いて前記実験的走査を適合させる工程と、
前記適合工程から適合係数を入手する工程と、
前記適合係数から前記共鳴移動の余り共鳴移動を計算する工程と、
前記共鳴移動の改良された予想を計算する工程と、
前記共鳴移動の値が所定の収束基準に収束するまで繰り返す工程とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの対象領域の実験的走査の少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が適合余りを計算する工程を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が走査極小の時間を予想する工程をさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が最初に前記実験的走査を前記較正プロファイルの限度内に切り詰める工程をさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が、
前記補間されたプロファイルをスウィート・ゾーンに切り詰める工程と、
前記切り詰められた補間後のプロファイルを用いて前記共振パラメータを再決定する工程とを含むスウィート・ゾーンに適合される工程をさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの共振パラメータを決定する工程が初期データ妥当性検査を実行する工程をさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記初期データ妥当性検査を実行する工程が、
プロファイルの利用可能性を検査する工程と、
データの一貫性を検査する工程と、
走査のインデクス付けを検査する工程とを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記適合工程が最小二乗適合を使用する請求項21に記載の方法。
【請求項29】
エラー・ログ内のエラーを報告する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記エラーを報告する工程がローカル・エラー・ログを使用する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記エラーを報告する工程がリモート・エラー報告を使用する請求項29に記載の方法。
【請求項32】
チップ承認検査を実行する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項33】
表面結合光学共振プロファイルを数量化する方法であって、
少なくとも1つの対象領域の較正走査から少なくとも1つの較正結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正結果から少なくとも1つの走査された対象領域の較正プロファイルを生成する工程であって、前記工程が、
生較正プロファイルを生成する工程と、
前記生較正プロファイルを平滑化する工程と、
前記平滑化された生較正プロファイルをサブサンプリングする工程と、
前記平滑化された生較正プロファイルから前記較正プロファイルの特性を決定する工程とを含む工程と、
少なくとも1つの較正プロファイルをメモリに記憶する工程と、
少なくとも1つの較正プロファイルの微分を計算する工程と、
少なくとも1つの対象領域の実験的走査から少なくとも1つの実験的結果を入手する工程と、
少なくとも1つの較正プロファイルに関連する少なくとも1つの実験的結果の共鳴移動を決定する工程であって、前記工程が、
予想共鳴移動を計算する工程と、
前記予想共鳴移動および前記較正プロファイルから少なくとも1つの補間されたプロファイルを計算する工程と、
前記補間された較正プロファイルを用いて前記実験的走査を適合させる工程と、
前記適合工程から適合係数を入手する工程と、
前記適合係数から前記共鳴移動の余り共鳴移動を計算する工程と、
前記共鳴移動の改良された予想を計算する工程と、
適合余りを計算する工程と、
前記共鳴移動の予想された値が所定の収束基準に収束するまで繰り返す工程と、
走査極小の時間を予想する工程とを含む工程と、
少なくとも1つの走査結果をユーザに表示する工程との組み合わせを含む方法。
【請求項34】
較正走査結果フェッチャおよび、
較正プロファイル作成モジュールを含む較正モジュールと、
実験的走査結果フェッチャ、
較正プロファイル・フェッチャおよび、
共鳴移動決定モジュールを含む適合モジュールとの組み合わせを含む表面結合光学共振プロファイルを数量化する装置。
【請求項35】
前記較正プロファイル作成モジュールが曲線スムーザをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記較正プロファイル作成モジュールがサブサンプラをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記較正プロファイル作成モジュールが曲線スムーザとサブサンプラとをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項38】
共振パラメータ・カルキュレータをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項39】
前記計算された共振パラメータが予想絶対共振ポイント、共鳴極小の時間、診断情報、および品質情報からなるグループから選択される請求項38に記載の装置。
【請求項40】
機器制御およびデータ獲得モジュールをさらに含む請求項34に記載の装置。
【請求項41】
試験およびサポート・モジュールをさらに含む請求項40に記載の装置。
【請求項42】
表面プラズモン共振チップを承認する方法であって、
承認されるチップのタイプの黄金の較正プロファイルを入手する工程と、
試験対象チップの少なくとも1つの対象領域の較正走査から少なくとも1つの較正結果を入手する工程と、
前記少なくとも1つの較正結果を前記黄金の較正プロファイルと比較して少なくとも1つの比較結果を入手する工程と、
前記少なくとも1つの比較結果に選択基準を適用することで前記チップが使用に適しているか否かを判定する工程との組み合わせを含む方法。
【請求項43】
チップ承認結果を前記ユーザに表示する工程をさらに含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記チップが適しているか否かを判定する工程が「不良ROI」カウントをインクリメントする工程を含む請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記チップが適しているか否かを判定する工程が表示のために「不良ROI」数を記憶する工程を含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記較正を比較する工程がチップ承認パラメータ・セットで適合モジュールを初期化する工程を含む請求項42に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図12】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−501392(P2007−501392A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522645(P2006−522645)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024788
【国際公開番号】WO2005/029031
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506036482)ビアコア エービー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024788
【国際公開番号】WO2005/029031
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506036482)ビアコア エービー (2)
【Fターム(参考)】
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