説明

表面被覆二酸化チタン顔料とその利用

【課題】高温での揮発分が少なく、しかも、表面活性を抑制して、耐候性と耐光性を改善した表面被覆二酸化チタン顔料を提供する。
【解決の手段】本発明による表面被覆二酸化チタン顔料は、シリカとアルミナにて合わせて2〜15重量%の表面被覆がなされた、105℃から300℃まで加熱したときの揮発分が0.30重量%以下であるものである。このような表面被覆二酸化チタン顔料は、例えば、熱可塑性樹脂組成物において着色剤として好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂や塗料における着色剤として好適に用いることができる表面被覆二酸化チタン顔料とその利用に関する。詳しくは、本発明は、耐候性と耐光性にすぐれ、しかも、高温に加熱したときの揮発分が少ないので、合成樹脂への高温での練り込みや成形加工時に揮発分の発生による種々の望ましくない問題を引き起こさないほか、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂に配合した場合、その加水分解による樹脂の固有粘度の低下を引き起こさない表面被覆二酸化チタン顔料とその利用、特に、熱可塑性樹脂組成物としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタン顔料は、例えば、合成樹脂と共に混練して、これに練り込み、白色に着色し、又は隠蔽性を有するフィルムやシートその他成形品の製造に広く用いられており、また、塗料における白色着色剤として広く用いられている。
【0003】
ここで、例えば、ポリオレフィン樹脂への二酸化チタンの練り込み温度は、概ね、200℃以下であるが、近年、生産性の向上を図るために、混合、練り込み、成形等の加工温度を300℃前後に高くする傾向がある。また、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックスにおいては、元来、300℃前後か、又はそれ以上の温度で加工されており、従って、このような高い温度での加工中に、二酸化チタン顔料中の揮発分、特に、水分によって、樹脂が加水分解され、固有粘度が低下する不具合も生じる。更に、一般に、樹脂製品の仕上げ形状等の精度に対する要求も厳しさを増しており、そのために樹脂に配合する二酸化チタン顔料についても、非常に厳しい物性が要求されるに至っている。
【0004】
具体的には、樹脂に容易に分散させることができ、隠蔽力が高く、耐候性と耐光性にすぐれ、しかも、樹脂への練り込みや樹脂の成形加工に際して、揮発分の少ない二酸化チタン顔料が求められている。
【0005】
従来、二酸化チタン顔料の分散性、隠蔽性、耐候性及び耐光性を向上させるために、アルミナやシリカによる表面被覆が有効であることは、古くから知られているが(例えば、非特許文献1参照)、しかし、このような表面被覆二酸化チタン顔料においては、その表面被覆を形成する処理剤の含む結晶水が上記樹脂への練り込みや樹脂の成形加工に際して揮発分として処理剤から離脱して気泡が生じ、レーシングやシルバーストリークを生じ、また、樹脂によっては、加水分解を進行させて、その固有粘度を低下させる等の問題を生じる。それ故に、特に、高温での練り込みや成形加工に際して、二酸化チタン顔料からの揮発分を減少させるために、二酸化チタンの結晶中にアルミニウム元素や亜鉛元素を加えて、耐候性と耐光性をある程度保持しつつ、用いる表面処理剤の量を低減させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
従来、二酸化チタン顔料を配合した樹脂成形品の耐候性と耐光性は、二酸化チタン顔料の表面活性に起因することが知られている。従って、上記表面被覆が少ないときは、二酸化チタン顔料の表面活性の低下効果が乏しく、耐候性と耐光性を殆ど改善するに至らず、反対に、表面被覆を多くして、耐候性と耐光性を向上させようとすれば、高温時の揮発分が多くなり、前述したような問題が生じるのを避けることができない。
【0007】
このように、従来、高温に加熱したときの揮発分が少なく、しかも、表面活性の低い二酸化チタン顔料は知られておらず、従って、高温時の揮発分の少ない二酸化チタン顔料と表面活性を抑制した二酸化チタン顔料を場合に応じて選択して用いているのが現状である。
【特許文献1】国際公開WO97/24289号公報
【非特許文献1】清野 学著「酸化チタン−物性と応用技術」第30、31頁(1991年3月30日第1版第2刷技報堂出版(株)発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の二酸化チタン顔料における上述した問題を解決するためになされたものであって、高温での揮発分が少なく、しかも、表面活性を抑制して、耐候性と耐光性を改善した表面被覆二酸化チタン顔料とその利用、特に、これを配合してなる合成樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、シリカとアルミナにて合わせて2〜15重量%の表面被覆がなされた、105℃から300℃まで加熱したときの揮発分が0.30重量%以下であることを特徴とする表面被覆二酸化チタン顔料が提供される。
【0010】
更に、本発明によれば、熱可塑性樹脂樹脂100重量部に対して、請求項1又は2に記載の二酸化チタン顔料0.05〜400重量部含有する熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による表面被覆二酸化チタン顔料は、シリカとアルミナの両方によって表面被覆がなされたものであり、105℃から300℃まで加熱したときの揮発分が0.30重量%以下である。従って、このような表面被覆二酸化チタン顔料は、高温での樹脂への練り込みや樹脂の成形加工に際して、揮発分が少なく、従って、樹脂成形品において、気泡発生等による欠陥を生じない。更に、このような二酸化チタン顔料は、その表面被覆によって表面活性が効果的に抑制され、その結果として、樹脂成形品に着色剤として配合した場合、耐候性と耐光性とにすぐれた樹脂成形品を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による表面被覆二酸化チタン顔料は、シリカとアルミナにて合わせて2〜15重量%の表面被覆がなされた、105℃から300℃まで加熱したときの揮発分が0.30重量%以下であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明において、表面被覆すべき二酸化チタン顔料は、その製造方法において何ら限定されず、硫酸法によって得られた二酸化チタン顔料でもよく、塩素法によって得られた二酸化チタン顔料でもよい。結晶型も特に限定されず、ルチル型二酸化チタン顔料でもよく、アナターゼ型二酸化チタン顔料でもよいが、耐候性及び耐光性の点からは、ルチル型が好ましい。また、表面被覆すべき二酸化チタン顔料の粒度も、特に限定されず、用途に応じて適宜に選択される。一般的に、塗料、インキ、樹脂成形品、紙等に用いられる二酸化チタン顔料は、平均粒径が0.01〜1.0μmの範囲にあることが好ましく、特に、0.1〜0.5μmの範囲にあることが好ましい。
【0014】
本発明による表面被覆二酸化チタン顔料は、原料である二酸化チタン顔料を水に分散させて水性スラリーとし、この水性スラリーに以下の表面処理剤を加え、二酸化チタン顔料に表面被覆を形成し、乾燥した後、焼成、粉砕することによって得ることができる。表面処理剤は、シリカ源として、ケイ酸ナトリウムや四塩化ケイ素等が用いられ、また、アルミナ源としては、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等が用いられる。
【0015】
このような本発明による表面被覆二酸化チタン顔料の製造において、上記表面処理剤は、表面被覆すべき二酸化チタンに対して、それぞれシリカ及びアルミナ換算にて合わせて2重量%以上である。用いる表面処理剤の量が表面被覆すべき二酸化チタンに対してそれぞれシリカ及びアルミナ換算にて合わせて2重量%よりも少ないときは、二酸化チタン顔料の表面被覆が不十分であって、表面活性を抑制する効果に乏しく、十分な耐光性を得ることができない。他方、用いる表面処理剤の量が表面被覆すべき二酸化チタンに対してそれぞれシリカ及びアルミナ換算にて合わせて15重量%よりも多いときは、得られる表面被覆二酸化チタン顔料が樹脂への分散性において劣るようになる。
【0016】
また、本発明によれば、二酸化チタン顔料に形成する表面被覆のアルミナ/シリカ重量比は、0.5〜1.1の範囲にあることが好ましい。アルミナの比率が余りに高いときは、焼成時に硬くなり、分散性が低下する。他方、アルミナの比率が余りに少ないときは、得られる表面被覆二酸化チタン顔料は、表面活性はよく抑制されているが、樹脂に対する濡れ性が低下するので、十分な分散性を得ることができない。
【0017】
本発明による表面被覆二酸化チタン顔料は、例えば、次のようにして得ることができる。即ち、二酸化チタン顔料を含む水スラリーに上記表面処理剤を加えた後、酸又はアルカリにてpHを6〜7程度に調整して、二酸化チタン顔料に表面被覆を形成した後、水性スラリーをフィルタープレス、ドラムフィルター等で濾過し、洗浄して、残存する塩類を洗い流した後、バンドドライヤー、噴霧乾燥機等で乾燥して、乾燥物を得る。
【0018】
次いで、この乾燥物を電気炉又は回転型焼成炉等の適宜の手段を用いて、400〜1000℃の範囲、好ましくは、500〜900℃の範囲の温度で焼成する。この焼成温度が400℃よりも低いときは、用いた表面処理剤からの脱水が不十分であるので、得られる表面被覆二酸化チタン顔料は、依然として、高温での揮発分を多く有する。しかし、焼成温度が1000℃よりも高いときは、二酸化チタン粒子が相互に焼結するので、分散性のよい表面被覆顔料を得ることができない。
【0019】
このようにして得られた焼成物は、そのまま流体エネルギーミルを用いて粉砕してもよいし、水性スラリーとしてビーズミルで粉砕を行い、濾過、水洗、乾燥の各工程を経た後、流体エネルギーミルで粉砕してもよい。
【0020】
本発明によれば、得られる表面被覆二酸化チタン顔料が樹脂に対する濡れ性や分散性にすぐれるように、二酸化チタン顔料に表面被覆を施すに際して、最初にシリカからなる被覆を形成し、この後、アルミナからなる被覆を形成することが好ましい。
【0021】
本発明によれば、上記焼成物を粉砕するに際して、必要に応じて、適当な有機処理剤を用いてもよい。そのような有機処理剤として、例えば、多価アルコール、アルカノールアミン、シリコーンオイル、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を挙げることができる。
【0022】
このようにして得られる表面被覆二酸化チタン顔料は、表面活性が低く、105℃から300℃まで加熱したときの揮発分が0.30重量%以下であり、従来の二酸化チタン顔料に比べて、表面活性が一層抑制されており、かくして、耐候性と耐光性が格段に向上している。
【0023】
本発明によれば、原料二酸化チタンを表面処理剤で処理した後、乾燥し、上記範囲の焼成温度で焼成することによって、表面処理剤の結晶水を予め、脱離させ、かくして、高温での樹脂への練り込みや成形加工時の揮発分の発生を減少させることができる。また、同時に、表面処理剤から結晶水を予め、脱離させることによって、表面被覆をより緻密にし、一層、不活性化して、耐候性と耐光性を改善することができる。
【0024】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、前述した表面被覆二酸化チタン顔料0.05〜400重量部を含有するものであり、好ましくは、0.1〜100重量部含有するものである。
【0025】
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂等を挙げることができる。
【0026】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、その製造方法において何ら制約を受けるものではないが、一例を挙げれば、例えば、熱可塑性樹脂に前述した表面被覆二酸化チタン顔料と共に、必要に応じて、金属石ケンからなる安定剤、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、充填剤等の添加剤とを適宜の手段にて混合し、用いる熱可塑性樹脂に応じて、適宜の温度で溶融混練することによって得ることができる。混合するための手段としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等を用いることができ、また、溶融混練手段としては、単軸押出機や二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール等を用いることができる。
【0027】
本発明によるこのような熱可塑性樹脂組成物は、例えば、シートやフィルムに成形する場合に、前述したような欠陥を生じず、また、樹脂成形品に着色剤として配合すれば、耐候性と耐光性にすぐれた樹脂成形品を与える。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0029】
実施例1
硫酸法酸化チタンの製造工程から得られる硫酸チタニルを加水分解してメタチタン酸を得、これを焼成して、ルチル型二酸化チタンを得た。この二酸化チタンを水に分散させて水スラリーとした。攪拌しながら、この水スラリーに二酸化チタンに対して1.2重量%のシリカからなる表面被覆がなされるようにケイ酸ナトリウムを加え、硫酸を加えて、pHを7.0に調整した。更に、上記水スラリーに二酸化チタンに対して0.8重量%のアルミナからなる表面被覆がなされるようにアルミン酸ナトリウムを加え、硫酸を加えて、pHを7.0に調整した。
【0030】
次いで、このスラリーを真空濾過して、濾過ケーキを得、この濾過ケーキを水で洗浄し、水溶性の塩類を除去した後、濾過ケーキを130℃で乾燥した。この後、電気炉を用いて、800℃で焼成した。
【0031】
得られた焼成物を水に分散させ、再度、水性スラリーとし、ビーズミルを用いて粉砕した。このスラリーを真空濾過して、濾過ケーキを得、この濾過ケーキを水で洗浄し、残存する水溶性塩類を除去した後、濾過ケーキを130℃で乾燥し、次いで、流体エネルギーミルを用いて粉砕して、シリカ1.2重量%とアルミナ0.8重量%とからなる表面被覆を有する二酸化チタン顔料を得た。二酸化チタン粒子の表面被覆量は(株)リガク製蛍光X線分析装置システム3270を用いて、検量線により定量分析した。
【0032】
実施例2
二酸化チタンに対して4.4重量%のシリカと2.6重量%のアルミナとの合わせて7.0重量%の表面被覆を施した以外は、実施例1と同様にして、二酸化チタン顔料を得た。
【0033】
実施例3
二酸化チタンに対して7.5重量%のシリカと4.5重量%のアルミナとの合わせて12.0重量%の表面被覆を施した以外は、実施例1と同様にして、二酸化チタン顔料を得た。
【0034】
実施例4
実施例2において、焼成温度を400℃とした以外は、同様にして、シリカとアルミナとを合わせて、7.0重量%の表面被覆を有する二酸化チタン顔料を得た。
【0035】
実施例5
実施例2において、焼成温度を600℃とした以外は、同様にして、シリカとアルミナとを合わせて、7.0重量%の表面被覆を有する二酸化チタン顔料を得た。
【0036】
実施例6
実施例2において、焼成温度を1000℃とした以外は、同様にして、シリカとアルミナとを合わせて、7.0重量%の表面被覆を有する二酸化チタン顔料を得た。
【0037】
実施例7
実施例1において、焼成物をそのまま、流体エネルギーミルで粉砕して、シリカ1.2重量%とアルミナ0.8重量%との合わせて2.0重量%の表面被覆を有する二酸化チタン顔料を得た。
【0038】
比較例1
二酸化チタンに対して0.7重量%のシリカと0.3重量%のアルミナとの合わせて1.0重量%の表面被覆を施した以外は、実施例1と同様にして、二酸化チタン顔料を得た。
【0039】
比較例2
実施例1において、二酸化チタンに対して5.0重量%のアルミナからなる表面被覆を施した以外は、同様にして、二酸化チタン顔料を得た。
【0040】
比較例3
実施例1と同じルチル型二酸化チタンを含む水スラリーを攪拌しながら、この水スラリーに二酸化チタンに対して1.2重量%のシリカからなる表面被覆がなされるようにケイ酸ナトリウムを加え、硫酸を加えて、pHを7.0に調整した。更に、上記水スラリーに二酸化チタンに対して0.8重量%のアルミナからなる表面被覆がなされるようにアルミン酸ナトリウムを加え、硫酸を加えて、pHを7.0に調整した。
【0041】
次いで、このスラリーを真空濾過して、濾過ケーキを得、この濾過ケーキを水で洗浄し、水溶性の塩類を除去し、濾過ケーキを130℃で乾燥した。この乾燥物を130℃で乾燥した後、流体エネルギーミルを用いて粉砕して、シリカとアルミナを合わせて2.0重量%の表面被覆を有する二酸化チタン顔料を得た。
【0042】
比較例4
比較例2において、二酸化チタンに対してシリカ4.4重量%とアルミナ2.6重量%との合わせて7.0重量%の表面被覆を施した以外は、同様にして、二酸化チタン顔料を得た。
【0043】
比較例5
実施例1で得たルチル型二酸化チタン顔料に表面被覆を施すことなく、そのままを顔料とした。

上記実施例及び比較例において得られた二酸化チタン顔料について、高温時の揮発分を測定した。また、その二酸化チタン顔料を用いて樹脂シートを調製して、その耐候性と耐光性を評価した。揮発分は以下の方法によって測定し、また、耐候性と耐光性はそれぞれ以下の方法によって評価した。結果を表1に示す。
【0044】
(揮発分)
二酸化チタン顔料を環状電気炉を用いて105℃の温度で2時間加熱し、脱水した後、その重量W0 を測定し、次いで、この二酸化チタンを300℃の温度で同様に環状電気炉を用いて1時間加熱した後、その重量Wを測定した。揮発分は ((W0−W)/W0)×100(%)で定義される。
【0045】
(耐候性)
二酸化チタン顔料1gと酸化防止剤BHT(大内振興化学(株)製ノクラック200)0.1gをポリプロピレン樹脂(出光石油化学(株)製PP)100gに加え、二本ロールを用いて、150℃で混練した後、0.5mm厚のシートに成形した。このシートについてサンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製) を用いて促進暴露試験を行い、初期のb値と暴露時間800時間後のb値との差Δbを測色計(日本電色工業(株)製SE2000)にて測定した。結果を表1 に示す。Δbの値が大きいほど、シートの変色の度合いが大きいこと、即ち、耐候性に劣ることを示す。
【0046】
(耐光性)
二酸化チタン顔料1gと酸化防止剤BHT(大内振興化学(株)製ノクラック200)0.1gをポリエチレン樹脂(三井化学(株)製ミラソン402)100gに加え、二本ロールを用いて、95℃で混練した後、0.5mm厚のシートに成形した。このシートに温度40℃のアンモニア雰囲気下に48時間蛍光灯照射を行って、照射部と未照射部のb値の差Δbを測色計(日本電色工業(株)製SE2000)にて測定した。結果を表1 に示す。Δbの値が大きいほど、シートの変色の度合いが大きいこと、即ち、耐光性に劣ることを示す。
【0047】
(フィルムの表面性状)
二酸化チタン顔料30重量%とポリエチレン樹脂(三井化学(株)製ミラソン402)70重量%とをラボプラストミル単軸押出機(東洋精機(株)製、軸長20mm)を用いて加熱混練し、Tダイフィルム成形機(東洋精機(株)製) を用いて、成形温度300℃にて厚み30μmのTダイフィルムを得た。得られたフィルムにレーシングや発泡等があるかどうか、その表面性状を目視観察した。レーシングや発泡等が殆どないときを◎、レーシングや発泡等が若干しかないときを○、レーシングや発泡等があるときを△、レーシングや発泡等顕著であるときを×とした。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、二酸化チタン顔料の表面被覆が少ないときは、加熱時の揮発分は少ないが、表面活性の低減が十分ではないので、例えば、得られる樹脂シートは耐候性、耐光性共にに劣っている(比較例1)。しかし、二酸化チタン顔料の表面被覆量が多くても、表面被覆がアルミナのみからなる場合は、同様に、得られる樹脂シートは耐候性、耐光性共にに劣っている(比較例2)。
【0050】
また、樹脂シートの耐候性と耐光性は、二酸化チタン顔料の表面被覆を増やして、表面活性を低減すれば、改善することができるが、しかし、この場合において、二酸化チタン顔料に被覆を施した後、焼成しないときは、二酸化チタン顔料の加熱時の揮発分が多く、例えば、高温度でフィルムを製造した場合、得られるフィルムにはレーシングや発泡等が著しい(比較例4)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカとアルミナにて合わせて2〜15重量%の表面被覆がなされた、105℃から300℃まで加熱したときの揮発分が0.30重量%以下であることを特徴とする表面被覆二酸化チタン顔料。
【請求項2】
アルミナ/シリカ重量比が0.5〜1.1の範囲である請求項1に記載の表面被覆二酸化チタン顔料。
【請求項3】
熱可塑性樹脂樹脂100重量部に対して、請求項1又は2に記載の二酸化チタン顔料0.05〜400重量部含有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。


【公開番号】特開2006−182896(P2006−182896A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377229(P2004−377229)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】