説明

袋口のシール方法及びその装置

【課題】袋口内面に付着する水滴の効率的な除去。
【解決手段】下部のシールバー13に包袋30の袋口32を添えて載置し、上域から別箇の、図示を省略したシールバーでもって袋口32を加圧溶着する場合、前記別箇のシールバーの両端に設けた挟圧阻止体42を、図示するシールバー13の両端に押し当て、袋口32に対する挟圧を阻止する。結果として袋口32内に通気間隙が形成され、ヒータ14の熱によって袋口に付着する水は蒸発が可能になる。一定時間経過後、挟圧阻止体42を排除することで、図示を省略したシールバーと、下部のシールバー13とで袋口32を挟圧し且つ密封することで、袋口における水のシール面での残留排除が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被包装物を収容した包袋袋口内面に付着する水膜を除去して、同袋口をシールする方法及び同方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商品を包装する多くの企業においては、生産性を高めるために高能率な自動包装装置を用いるが、零細企業または家内企業等においては、たとえば特定地域の食産物、または自家製の食品等を手作業で袋詰し販売する商が各地にまだ多く残っている。こうした手作業による袋詰め作業では、食品が含む水分の袋口への付着率は、自動包装装置によって行う包装に比較して高率であり、被包装物に含まれる水分が付着した袋口を、何らの手段を施すことなく一対のシールバーで挟圧して溶着すると、袋口内面に水が膜状に残存したままシールが行われ、商品の美観性及び保存性が損なわれる。下記の特許文献1では、かかる問題を解決するために、上下幅のある一対のシールバーにより袋口を挟圧かつ加熱し、その挟圧・加熱でもって袋口内の水を熱膨張させて取り除き、次工程においてシールバーによりシールを行うとの説明がなされている。しかし水の一部は力強く熱膨張して外部に漏出するが、膨張エネルギーを失しシールバーの間に閉じ込められた残りの水は、シール作用により袋口内面に霧状に分散して密封されるという問題がある。
【0003】
そこで下記の特許文献2は上記の問題を意識して、予め細幅の一対のシールバーで袋口を挟圧して線シールし、細幅の線シールにより水分の閉じ込め量を削減したあと、上下幅のあるシールバーにより袋口を密封するという技術を開示している。しかし線シールであっても、この線シールに沿って包材間にV字形の溝が形成されるので、この溝に沿って水が集中して溜まることになり、結果としてかかる技術でも、前記のV字溝に溜まった水がシール部分に気泡として残存するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−12522号公報
【特許文献2】特開2001−301717号公報
【発明の開示】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するのために、被包装物を収容した包袋の開口縁を、上下幅のある一対のシールバーの間に手差しにより導き入れて溶着する際、袋口内面に付着する水滴を予め除去してシールする方法であって、該方法は、加熱したシールバーでもって設定時間の間、前記袋口の間に幅狭い通気間隙を残す程度に同袋口を狭窄して袋口を加熱し、そのあと同じシールバーを用いて袋口を挟圧して溶着するシール方法を用いる。
【0006】
包袋の袋口両側から上下幅のあるシールバーを接近させ、袋口の間に通気間隙を残す程度に同袋口を狭窄して加熱する工程は、袋口を封じることなく幅狭い通気間隙を形成する。このため前記の通気間隙において空気は抵抗なく自由に流通する。従って、この通気間隙の壁面に水が付着していても、水は両側のヒートバーの熱を受けて同通気間隙を通して自由に蒸発することができる。仮に作業する者が、加熱の最中に包袋を外から押して包袋内の空気を動かすと、この動く空気は、通気間隙において蒸発しょうとする飽和空気を積極的に外部に排出することになり、より蒸発が促進される。
一方、この方法を真空包装装置に適用した場合、包袋内外の差圧でもって包袋内から空気が包袋外部に引き出されるとき、この引き出される空気は、通気間隙において蒸発しょうとする飽和空気を積極的に外部に排出させる。
これらの蒸発の促進効果は、シールバーによる袋口挟圧を阻止して袋口の間に通気間隙を残したことによって起こり得るものである。
【0007】
また袋口へのシールバーの接近により袋口で熱を受ける水分は、加熱によって膨張かつ気化して通気間隙を上部に向けて蒸発するが、特に包袋内部に向けて下降する蒸気は、包袋内部のより重量のある空気の抵抗を受けて反転し、通気間隙を上昇するとき、通気間隙の壁面での飽和ガスの気化を促進することになりるが、この作用も、袋口の間に通気間隙を残したことにより起こり得るものである。
【0008】
なお以上の作用、効果は、被包装物及び被包装物が含んでいる液が比較的低温な場合であって、仮に被包装物が高温で、それに含まれている液から蒸気が盛んに発生する場合は、下記のような効果が生ずる。すなわち、例えば煮炊きしたあとの時間経過の少ない食料品を包袋に充填すると、食料品の煮炊きした比較的高温の汁から発生する蒸気は、袋口の通気間隙による流動抵抗によって包袋を膨張させ、通気間隙から袋外に流出する。この場合の流出圧は、通気間隙での空気流通効果を打ち消す勢いがあり、積極的に発生蒸気を袋外に排出して、シールバーの加熱によって気化が進む通気間隙の飽和ガスの排除を促進する効果を発揮する。なお袋口はヒートバーの熱を受けているので、通気間隙を通過する蒸気がその通過間隙の面で露結することはない。
【実施例1】
【0009】
図2に側面を示す装置は、機台フレーム11に対して傾斜状に固定した基盤19の前面上部に、ヒータ14を埋設した横長な下部のシールバー13を固定し、機台フレーム上に立設したタワーフレーム15に、ピン16を介して枢支するベルクランク17は、ヒータ18を埋設した上部のシールバー12を固定している。また機台フレーム背後のブラケット20に軸23を介して支持したレバー21は、ロッド22を介して前記のベルクランク17と連結し、前記軸23に固定した歯車25は、正逆転型の第1モータ26が支持するピニオン27と連結する。第1モータ26は、ピニオン27の回転動力を歯車25、ロッド22を介して、ピン16を軸にベルクランク17を揺動させるので、上部のシールバー12は下部のシールバー13に接近・離反する。
【0010】
図1は、既に説明した下部のシールバー13の前面からの観察図であり、被包装物31を収容した包袋30の開口縁32を手差しでもって前記シールバー13上に導き入れる。この場合、開口縁32をシールバー上面2箇所のストッパー28に触れさせて位置決めをする。なおシールバーは境界線34から下側に断熱材35が備わり、作業者の火力による危険性予防を図っている。
【0011】
図3は上下両シールバーの右半分を示した部分図であり、上部のシールバー12の両側それぞれには流体シリンダーにより形成した直動型の第2モータ41が配置され、そのピストンロッド42でもって、上下両シールバー12、13による包袋開口縁の挟圧を阻止する阻止体を形成している。つまり圧搾空気をピストン43に作用させてピストンロッドが形成する挟圧阻止体42を、下部シールバー13の両端面44に向けて矢印45のごとく押し出すことにより、両シールバー12,13間に、望ましくは0.1mm〜3.0mmの間隙を形成して袋口の挟圧を阻止する。
【0012】
図2における上部シールバー12に設置したシリンダー46は、内部に張りばね47を介して押さえピン48を備え、上部シールバー12が、第1モータ26の動力でもって下部シールバー13の上に接近する過程で、前記押さえピン48は、図1における仮想線48の部分で包袋30を断熱材35の上面に押し付け、包袋の遊び動きを制限するようになっている。
【0013】
図1において、手差しにより包袋30を下部シールバー13上に添えるのと同期して、作業者は図5における足踏み式の作動開閉器50を操作する。同時にタイマー51が発進して積算が開始され、また同時に、第1モータ26及び第2モータ41が回転を始める。このため、図2において通常、離反状態にある上部シールバー12は下部シールバー13に向けて接近しょうとするが、その直前、図3における挟圧阻止体42は下方向に突き出して両シールバー12,13を、0.1mm〜3.0mmの間隔で接触を阻止する。この結果、図5のごとく包袋30の袋口の間に空気排除のための通気間隙52を形成するまで両シールバー12、13は接近し、予め設定した時間だけヒータ14、18は、シールバー12、13を介して袋口を加熱し、通気間隙に52内に残存する水に熱を加えて蒸発を促し続ける。
【0014】
作業者は、場合によっては外部から包袋30に矢印53のような力を作用させ、包袋内部ヘッドスペース54の空気を、通気間隙52を介して押し、通気間隙における飽和空気の排除を行なって蒸発促進をすることができる。
【0015】
図4におけるタイマー51は、積算開始から予め設定した時間後、ステップS1及びステップS2の信号を発信して第1モータ26と第2モータ41とに作動信号を送る。この結果、図3における直動モータのピストン43に対する空気圧が取り除かれ、図2における第1モータ26の動力は、上部のシールバー12を下部のシールバー13に押し付けて包袋30の袋口を挟圧することになる。この結果、図5における両シールバー12、13の接近で袋口は溶着する。
【0016】
図5のシールバー12、13により袋口内面が受ける初期温度では、通気間隙52の面が溶融するまでには至らないが、通気間隙52における水蒸気の蒸発進行の時間経過によって溶融が進み、袋口に対して両シールバー12、13が挟圧力を発揮するときは、時間的に充分溶融が進行して袋口を溶着するに至るようにすることが望まれる。
【実施例2】
【0017】
図6は、両シールバー12、13による袋口の挟圧阻止を計る要素の異なる実施例であり、下側のシールバー13内に、一部に欠削面66を持つ軸65を回転可能に配置する。通常、両シールバー12、13が接近するとき、軸65の抵抗で両シールバー間には袋口に通気間隙を形成する隙間67が生ずるが、シールバーの端に設置した小型モータで前記軸を回転して欠削面66を上部シールバー12に対向させることにより、前記隙間67はなくなつてシールバーにより袋口を挟圧してシールすることになるのである。
【実施例3】
【0018】
図4に示す説明では、シールバーを接近・離反する第1モータ26と、両シールバーによる袋口の挟圧を阻止させる第2モータ41とを備えたが、図7は、前記の両モータの働きを1基のサーボモータ60が果たす実施例である。通称サーボシリンダーまたはロボットシリンダーとか呼ばれる以下の構成は、サーボモータ60によりシリンダー61内でボールねじが回転し、同ボールねじに係合するロッド62先端の上部シールバー12が移動する。サーボモータ60でもってボールねじの回転角を調整動作させることにより、ロッド62の軸方向への運動量をコントロールでき、上部シールバー12の、下部シールバー13に対する接近量をコントロールして、両シールバー12、13に隙間を形成する袋口の狭窄と、両シールバーを圧着させ袋口を挟圧する力のコントロールができるのである。なお該図における構成要素に使用した符号が、他の図に使用した符号と一致するものは、他の図に示した構成要素と同じまたは類似する。
【実施例4】
【0019】
本発明はまた、バッチ式の真空包装装置、または包袋の搬送機能をもつ真空包装装置にも適用が可能であり、いずれも包袋はシールバーに手差し供給である。図8は、ベルトコンベヤ70でもって包袋30を運搬しながら、各包袋の袋口に付着する水気を排除してシールする真空包装装置を示している。油あげ、おでん、大豆入り昆布等、煮炊きした食品は真空包装の必要があり、図面はその1例を示している。
【0020】
ベルトコンベヤ70が等間隔に備えるシールバー71を枕とし、前記シールバー71に袋口を手差しで当てがうように包袋をベルトコンベヤ70に搭載すると、ベルトコンベヤ70の動力により包袋は1ピッチづつ断続移動してチャンバー72の下域に送り込まれる。チャンバー72は加圧機器73に連結したシールバー74を備え、チャンバー72が下降して包袋30を覆うタイミングと同期してタイマーが作動し、以後はこのタイマーによって作業が進行する。ホース75を介してチャンバー72内の空気排除が行なわれ、遅れて加圧機器73によりシールバー74がシールバー71上に下降して、包袋30の袋口をシール密封する。
【0021】
ただ、図9に示すごとく上部のシールバー74は、その両端それぞれに図3に示すような直動型のモータ41を設け、該モータのピストンロッドに当たる挟圧阻止体42が下部のシールバー71の上面に向け対向している。前記タイマーによる積算時間に達すると、モータ41に繋がる片側のチューブ76から同モータ41内に圧搾空気が送り込まれ、挟圧阻止体42は突き出す。加圧機器73のダイヤフラム80の上室に送り込まれる空気圧でシールバー74が下降しても、下部のシールバー71と上部のシールバー74との間には間隙が生じ、図5のごとく包袋袋口に通気間隙52を形成する。なおこの場合、ダイヤフラム80が受ける圧力によるシールバー74の下降力よりも、圧搾空気による挟圧阻止体42の下降力の方が大きいことは勿論であるが、場合によってはモータ41を、電磁ソレノイドが代用することもあり得る。したがって、請求項3において挟圧阻止体を作動させる「モータ」なる表現には、本願の場合は、流体シリンダーのごとき直動型、及び下記の電動回転式、さらに電磁ソレノイドを含むものとする。なお電動回転式のモータとは図6の挟圧阻止体65の動力源を指している。
【0022】
図10における下降線90は、チャンバー内の空気圧が、大気圧0Mpaから真空圧―0.1 Mpaに向けて降下する状態を示し、水気の多い食品を包装する場合、圧力変化による差圧でもって食品が包袋から飛び出すのを防止するために、例えばXの領域で真空吸引をカットする場合は、上部のシールバー74の、下部シールバー71に向けての下降を該図のポイント91で行い、Yに相当する時間だけ、図9におけるシールバー74内のヒータ78の熱でもって、包袋30の袋口に付着する水を蒸発させる。そしてその後、タイマーによる設定時間に達すると、チューブ77から直動型モータ41内に空気圧が作用して挟圧阻止体42の阻止力が排除される。この結果ダイヤフラム80の上面に作用する空気圧は、シールバー74を下部のシールバー71に押し付けて包袋30の袋口を挟圧して溶着することになるのである。
【0023】
前記の、水を蒸発させる熱及び袋口のシール熱は、上部のシールバー74に設置したヒータ78によって行うように説明した。ベルトコンベヤ70と一体に移動する下部のシールバー71にヒータ79を設置した場合は、ベルトと一体に回転するロータリ式の端子を介して通電は可能である。ただこのような装置は比較的大掛かりで不経済であり、バッチ型を含むこの種の真空包装装置では、1回の真空吸引時間がが10秒前後、時にはそれ以上の時間を必要とするから、図9のごとくシール台71の周りにチンバー72を覆い被せたとき、上部シールバータ78への通電気を、さらに下部シールバー79にも伝えて加熱することで、省電力で水の蒸発と、袋口の溶着とを行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】シールバーへの袋口の手差し供給の状態図
【図2】装置全体の側面図
【図3】シールバーの部分的説明図
【図4】装置のブロック線図
【図5】シールバーによる袋口狭窄の説明図
【図6】挟圧阻止体の異なる実施例の説明図
【図7】袋口の挟圧阻止及び挟圧の、異なる実施例図
【図8】包装装置全体の異なる実施例図
【図9】前図におけるIX−IX線断面の拡大図
【図10】真空作用の説明図
【符号の説明】
【0025】
12‥‥上部のシールバー
13‥‥下部のシールバー
26‥‥第1モータ
30‥‥包袋
41‥‥第2モータ
42、65‥‥挟圧阻止体
50‥‥開閉器
51‥‥タイマー
52‥‥通気間隙
71‥‥上部のシールバー
72‥‥チャンバー
73‥‥下部のシールバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を収容した包袋の袋口を、上下幅のある一対のシールバーの間に手差しにより導き入れて溶着する際、袋口内面に付着する水滴を予め除去してシールする方法であって、
予め設定した時間経過の間、加熱したシールバーでもって、前記袋口の間に幅狭い通気間隙が残る程度に同袋口を狭窄して加熱し、この加熱作用によって袋口内の水を前記の通気間隙を通して蒸発させ、そのあと、前記袋口を前記シールバーで挟圧して溶着するシール方法。
【請求項2】
加熱式の一対のシールバーと、タイマーを作動させる作動開閉器と、前記作動開閉器により駆動するモータとを備え、
被包装物を収容した包袋の開口縁を上下幅のある一対のシールバーの間に手差しにより導き入れるのとほぼ同期して、前記作動開閉器の操作でもってタイマーの積算を開始すると共に、モータでもって包袋開口縁に通気間隙が形成され域まで両シールバーを接近させ、この接近するシールバーの加熱でもって通気間隙に付着する水を蒸発させ、その後、前記タイマーの積算信号でもって袋口の挟圧阻止を解除してシールバーにより袋口を挟圧して溶着するシール装置。
【請求項3】
加熱式の一対のシールバーを内部に備えるチャンバーと、前記チャンバーの閉鎖と同期して積算を開始するタイマーと、前記一対のシールバー両端に配置した挟圧阻止体とを備え、
被包装物を収容した包袋をチャンバー内に密封するのとほぼ同期して、タイマーにより、チャンバー内に作用する真空の作用時間を積算すると共に、一側のシールバー両端の挟圧阻止体をモータの動力により他側のシールバーに向けて押し出して袋口の挟圧を阻止し、かかる挟圧阻止によって袋口に形成される通気間隙に付着する水を、前記シールバーの熱で蒸発させ、前記タイマーの積算信号でもってその後、袋口の挟圧阻止を解除してシールバーにより袋口を挟圧して溶着するシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−262961(P2009−262961A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114693(P2008−114693)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000142850)株式会社古川製作所 (76)
【Fターム(参考)】