説明

袋手段を有する流体ディスペンサカートリッジ

【課題】予め決められた体積の流体を分配するためのホスト装置内への設置に適した、新規な流体ディスペンサカートリッジを提供する。
【解決手段】ホスト流体ディスペンサ装置に設置可能な、または設置される、一回使用の流体ディスペンサカートリッジ10が説明される。この一回使用の流体ディスペンサカートリッジは、流体貯蔵槽20と、充填管アセンブリ30に出入りする気体の動きを調整することによって、カートリッジ内の圧力を制御するための袋手段40を有する充填管アセンブリ30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には流体分配に関し、特に、ホスト流体ディスペンサ装置内に設置される、または設置可能な一回使用の流体ディスペンサカートリッジであって、流体貯蔵槽と充填管アセンブリとカートリッジ内部の内部圧力に影響を与えるための手段とを有するカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
壜を充填するための非常に多くのタイプの流体ディスペンサ装置が存在する。広く使われている流体ディスペンサ装置の一つのタイプは、容積式充填機である。容積式充填機は典型的には、分配される流体に接触してこれを押し出す可動部分を含む。例えば一つのタイプの容積式充填機は、ピストン・シリンダ構成を使用する。このタイプの容積式充填機では、ピストンの後方向への動きが入口を介してシリンダ内に流体を引き込み、またピストンの前方向への動きが出口を介して流体を押し出す。もう一つのタイプの容積式充填機は、流体を動かすために回転ポンプを使用する。
【0003】
容積式ポンプは、二つの理由から米国で広範囲の用途を獲得してきた。第一に、容積式ポンプは、比較的高速で動作可能であって、毎分600本ほどの壜を充填できる。更に容積式ポンプは、最大約±0.5%と高精度である。
【0004】
容積式充填機の幅広い用途にもかかわらず、これらは幾つかの欠点を持っている。容積式充填機の一つの欠点は、流体が可動部分と接触することである。可動部分が磨耗するにつれて、粒子状物質が流体に入って粒子汚染を引き起こす。もし十分に激しければ、粒子汚染は製品を使用不能にする可能性がある。容積式充填機のもう一つの欠点は、流体に接触している可動部分を洗浄して滅菌消毒する際の困難さに関係する。容積式ポンプでは、ピストン、シリンダといったパッド間の臨界許容値は、その場での効果的な洗浄を妨げる。したがって利用者は、洗浄と滅菌消毒のために装置を分解しなくてはならない。このプロセスは、単に時間の浪費であるばかりでなく、再組み立て時にパッドが作業者に取り扱われるときに、パッドの生物学的汚染という結果を招く可能性がある。
【0005】
もう一つのタイプの流体ディスペンサ装置は、時間/圧力式充填機である。一般的に言えば、時間/圧力式充填機は、比較的一定の圧力下に維持される流体貯蔵槽を含む。流体は、圧縮可能なラインを通して貯蔵槽から分配される。流体の流れは、放出ラインを締め付けて押し潰すピンチ型バルブによって止められる。予め決められた体積の流体は、予め決められた時間だけ放出ラインを開いて、次にそのラインを閉じることによって分配される。もし流体貯蔵槽内の圧力が一定に維持されれば、サイクルが繰り返されるごとに同量の流体が分配されるはずである。しかしながら、時間/圧力式充填機は、実際には理論ほど良好には働かない。
【0006】
もう一つのタイプの流体ディスペンサ装置は、体積測定式流体ディスペンサ装置を開示している米国特許第5,090,594号明細書に示されている。この体積測定式ディスペンサ装置は、計量カップまたは充填管内の、引き続いて容器に分配される流体の予め決められた体積を測定する。体積測定式充填機は、容積式充填機より遅いが極めて高精度であり、微生物・粒子汚染の問題を回避している。しかしながら体積測定式充填機は、時間/圧力式充填機と同様に比較的一定の圧力に依存している。この理由から、フィルタ内の圧力低下が不正確な充填という結果を招く可能性があるので、体積測定式充填機内で浄化フィルタを使用することは実用的でない。
【0007】
もう一つのタイプの流体ディスペンサ装置は、1996年1月2日にKeyesらに発行された米国特許第5,480,063号明細書に記載されている。Keyesらは、分配される流体と接触する可動部を持たない装置を記載している。この流体ディスペンサ装置は、分配される流体を含有する流体チャンバと、この流体チャンバに連通的に接続された充填管とを含む。充填管は、流体貯蔵槽とともに回路を形成する。動作に際して流体は、チャンバから充填管に転送される。充填管内の流体レベルが予め決められた高さに達すると、充填は終了し、流体は充填管から容器内に分配される。1997年10月28日にKeyesらに発行された米国特許第5,680,960号明細書も参照されたい。
【特許文献1】米国特許第5,090,594号明細書
【特許文献2】米国特許第5,480,063号明細書
【特許文献3】米国特許第5,680,960号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許に具現された手法にもかかわらず、流体ディスペンサ装置、特に一回使用の使い捨ての流体取扱いコンポーネントを実現する装置に関する改良および/または代替構成に対する継続した必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の必要性に応じて本発明は、予め決められた体積の流体を分配するためのホスト装置内への設置に適した、新規な流体ディスペンサカートリッジを提供する。流体ディスペンサカートリッジ(特に一回使用形式における製造に良く適した)は、主要な実施形態では、流体貯蔵槽と、充填管アセンブリに出入りする気体の動きを調整するための袋手段を有する充填管アセンブリとを備える。流体貯蔵槽は、流体貯蔵槽に流体を導入するために適した流体入口と、この流体を放出するために適した流体出口とを備えている。充填管アセンブリは、上記流体貯蔵槽からの流体が上記充填管アセンブリ内に流入できるように、流体出口において流体貯蔵槽に接続される。袋手段は、貯蔵槽との接続とは反対側の充填管アセンブリの端部に配置される。充填管アセンブリ内の流体は、この目的のためにそこに設けられた放出口を介して、そこから分配される。
【0010】
ホスト流体ディスペンサ装置内に設置される、または設置可能な一回使用の流体ディスペンサカートリッジを提供することは、本発明の主要な目的である。
【0011】
ホスト流体ディスペンサ装置内に設置される、または設置可能な一回使用の流体ディスペンサカートリッジであって、一体構成で流体貯蔵槽と、充填管アセンブリに出入りする気体の動きを調整するための袋手段を有する充填管アセンブリとを備える流体ディスペンサカートリッジを提供することは、本発明のもう一つの目的である。
【0012】
柔軟な流体貯蔵槽と上記袋手段を備えた充填管アセンブリとを有する、および/または実現する流体ディスペンサ装置であって、上記柔軟な流体貯蔵槽に圧力を加えるための加圧手段を有する流体ディスペンサ装置を提供することは、本発明のもう一つの目的である。
【0013】
比較的粘性の流体を分配するための、流体ディスペンサ装置に設置可能な一回使用の流体ディスペンサカートリッジを提供することは、本発明のもう一つの目的である。
【0014】
実質的に剛性の流体貯蔵槽と、充填管アセンブリと、上記充填管アセンブリ内の圧力平衡を維持するための手段とを備える、流体ディスペンサ装置に設置可能な一回使用の流体ディスペンサカートリッジを提供することは、本発明のもう一つの目的である。
【0015】
本発明の性質がより良く理解されるときに、更に直ちに現れてくる目に見えるこれらおよび他の目的によって、本発明は今後更に十分に説明され請求される部品の新規な組合せとアセンブリとに存する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、流体を分配するための、特に生物薬剤または薬剤の製造プロセスのために使用される、あるいはその製造プロセスから結果的に生じる粘性流体を分配するための、新規な手段を提供する。これらの手段は、好ましくは、ホスト流体ディスペンサ装置内に設置される流体ディスペンサカートリッジ10(すなわち固定カートリッジ)または設置可能な流体ディスペンサカートリッジ10(すなわち一回使用の使い捨てカートリッジ)として具体化される。図1に示すように、流体ディスペンサカートリッジ10は、貯蔵槽20と充填管アセンブリ30とを使用する。流体は、充填管アセンブリ30から極めて即座に容器90内に分配され、その流体の内容は各分配の後に貯蔵槽20から、制御された分配量を中に流し込むことによって補充される。
【0017】
一回使用の流体ディスペンサカートリッジ10は、特に、例えば正確で反復可能な流体分配を生み出す充填管アセンブリ30内に適切な圧力を与えるように、充填管アセンブリ30に出入りする気体の動きを調整するための袋手段40のそこでの使用によって、特徴付けられる。袋手段40は、好ましくは、充填管アセンブリ30内の増減する流体レベルに応じて受動的に膨張・収縮するように構成される。このような袋手段40によって、流体ディスペンサカートリッジは、中でも特に、貯蔵槽20への戻り経路を必要とせずに「閉」システムとして設計され得る。このような構成は、貯蔵槽の加圧が望まれるディスペンサ装置10に良く適している。
【0018】
流体ディスペンサ装置は、本発明による流体ディスペンサカートリッジ10を取り付けられたときに、例えば測定された体積(または個々の分配量)の流体を、容器(または複数の容器)内に正確に首尾一貫して分配するために良く適している。流体ディスペンサカートリッジは、密閉容器もしくは衛生容器として容易に構成できるので、流体ディスペンサ装置は薬剤の用途に特になじみやすい。この、そして他の用途で装置は、その精度に関して(すなわち本装置は、容積式ポンプシステムに比較して正確さを持っている)、運転の容易さに関して(例えば本装置は機械的較正を必要としない)、クリーンルームでの使用への適合性に関して(すなわち本装置は粒子を発散する可動部分をほとんど使用せずに設計できる)、そして低い保守費に関して(一回使用の使い捨てカートリッジの使用と比較して)利点を提供できる。
【0019】
ホスト流体ディスペンサ装置は、典型的には、流体が一回使用の使い捨て流体ディスペンサカートリッジ10内に注入されてそこから分配されることを可能にする、全ての「固定された」機械的および電子的手段(例えば配管、回路、配線、エネルギー源、ポンプ、支持構造体、マニホルド、バルブ、補給品、その他の補助流体貯蔵槽、論理チップ、およびサブコンポーネントなど)を本質的に備えるであろう。
【0020】
ホスト流体ディスペンサ装置は、その全体構成とサブコンポーネントの集合体とにおいてかなり変化し得るが、使い捨てカートリッジを「動作させる」という基本機能においては、装置全体を通じて同じに留まる。典型的には、ホスト流体ディスペンサ装置をまとめて形成する機械的電子的手段は、剛性の外側ハウジングまたはキャビネット内に概ね一定の配置で含まれるであろう。ホスト流体ディスペンサ装置の更なる詳細と例は、それぞれ1996年1月2日と1997年10月8日にDenis E.Keyesらに発行された米国特許第5,480,063号明細書と第5,680,960号明細書とに見ることができる。
【0021】
流体ディスペンサカートリッジ10は、好ましくは、「一回使用」の品目として作られる。これに関してカートリッジは、流体分配動作の完了時にこのコンポーネントが処分され得る(時には、ある環境的に規制される物質を分配した後に法律によって必要とされるように)か、リサイクルされ得る(例えば非規制物質を分配した後に)という意味で「一回使用」である。
【0022】
本発明の「消費可能な」流体ディスペンサカートリッジ10は、幾つかの実施形態を持っている。しかしながらある幾つかのコンポーネントは、全ての実施形態に存在する。特にその全ての実施形態における流体ディスペンサカートリッジ10は、(a)流体貯蔵槽に流体を導入するために適した流体入口22と、上記流体貯蔵槽から流体を放出するために適した流体出口24とを有する、流体貯蔵槽20と、(b)流体貯蔵槽からの流体が、上記充填管アセンブリから流体を分配するための放出口を有する上記充填管アセンブリ内に流入できるように、流体貯蔵槽の流体出口に接続された充填管アセンブリ30と、(c)充填管内アセンブリ30に出入りする気体の動きを調整するための前述の袋手段40と、を有するであろう。
【0023】
図2で流体ディスペンサカートリッジは、流体供給ライン227によって流体源FSに接続された注入口22(すなわち流体入口)を有する流体貯蔵槽20を含む。滅菌消毒または浄化フィルタ223は、典型的には、流体供給ラインに配置される。流体供給ライン227は、例えばソレノイドまたは他の機能的に同等の装置または機構によって駆動可能な供給バルブ225を含む。
【0024】
流体貯蔵槽20は、充填管アセンブリ30の下端に接続された流出口24(すなわち流体出口)を含む。充填管アセンブリ30の最も遠い他端には、軽量のバッグ状またはサック状の袋40がしっかり取り付けられている。したがって、図2に示すように、充填管アセンブリ30と流体貯蔵槽20は、貯蔵槽ポート24に近い単一の接続経路がなければ別々のコンポーネントを形成しており、それらの間の流体搬送は充填バルブ34によって規制される。
【0025】
流体ディスペンサカートリッジ10がホスト流体ディスペンサ装置内に設置されると、ホスト装置内の充填バルブ34(例えばピンチバルブ)は、流体貯蔵槽20から充填管アセンブリ30への流体の流れを制御するように充填管アセンブリに機能的に取り付けられる。ある幾つかの実施形態では充填バルブ34は、プログラム可能なコントローラ(ホスト内にも見出される)に接続されたソレノイドによって制御される。他の良く知られたバルブ制御装置または機構またはシステムも使用可能である。
【0026】
流出ライン38(すなわち放出口)は、充填管アセンブリ30から容器90内に流体を分配するための充填管アセンブリ30に設けられる。流体ディスペンサカートリッジ10がホスト流体ディスペンサ装置内に設置されると、ホスト内の流出バルブ36(例えばピンチバルブ)は、充填管アセンブリ30から容器90への流体の流れを制御するように充填管アセンブリに機能的に取り付けられる。ある幾つかの実施形態では流出バルブ36は、プログラム可能なコントローラに接続されたソレノイドによって制御される。再び、他の良く知られたバルブ制御装置または機構またはシステムも使用可能である。
【0027】
図2では放出口38は、充填管アセンブリ30を先導する導管によって与えられるが、他の構造も考えられる。例えば放出口は単に、充填管アセンブリの下流端の制御可能な開口部であっても良い。薬剤の用途では閉じられるか否かには無関係に、充填管アセンブリの放出端は好ましくは、例えば無菌の流体分配を可能にする気密封入された注射針を備えている。
【0028】
流体ディスペンサカートリッジがホスト流体ディスペンサ装置に設置されると、前記ホストによって備えられた光学的流体レベルセンサ52、54は、充填管アセンブリの測定管32に沿って動作可能に取り付けられる。充填バルブ34が「開いて」放出バルブ36が「閉じる」と、流体は流体貯蔵槽から流れ出て、最後に測定管32に流入する。光学的流体レベルセンサは、このような「充填」の進行を監視し、それによってその制御のための手段を与えるために使用される。以下更に詳細に説明されるように、光学的流体レベルセンサ52、54は、所望であれば、導電性キャパシタンスセンサで置き換えることができる。電子的、電気光学的、電気化学的、音波的センサといった他の流体レベルセンサも使用可能である。
【0029】
一つの実施の形態では、プログラム可能なコントローラ(図示せず)、または他の電子的論理装置またはシステムは、流体レベルセンサ52、54と動作可能に接続される。充填管アセンブリ30内の流体レベルが一定の予め決められた上限または下限(センサによって検出されるような)に達すると、プログラム可能なコントローラ(または上記他のシステム)は、バルブ34、36に「開く」または「閉じる」ように信号を送り、望まれることに依存して、更に流体を充填管アセンブリ30に送り込むか、そこから流体を放出する。所望であれば、幾つかの上限、下限、および中間の限界を決めるために、多数の光学的センサが使用できる。
【0030】
その幾つかの機能のうちで流体貯蔵槽20は、流体を貯蔵するために使用される。システムにおけるその相対的なサイズ、場所、配置は、他のシステムコンポーネントの影響と結び付けて、システムを運転するために必要な適当な程度のいわゆる「ヘッド圧力」を与えるように選択される。これは一般に、統合された充填管アセンブリの高さと比較したその高さの関数である。
【0031】
流体貯蔵槽20は、柔軟であるか剛性であるか、あるいはその二つの組み合わせであり得る。もし柔軟であれば、貯蔵槽20の流体処理特性は、それに加えられる圧力に影響されるであろう。このような圧力は、環境的であるかあるいは機械的に誘発され得る。もし剛性であれば、内側と外側の貯蔵槽圧力を平衡させるために、気体ゲート制御手段(以下に論じられる)が望ましい可能性がある。
【0032】
流体貯蔵槽の製造のために有用な材料の例は、ポリエチレン・テレフタレート、高密度ポリエチレン、塩化ビニール、ポリプロピレン、およびポリスチレンを含む。金属(例えばアルミニウム)およびガラス(例えばガラス繊維複合材料)といったポリマー材料以外の材料も考えることができる。したがってポリマー材料に関しては、製造プロセスの例は、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、ブロー成形、および押出し成形を含む。これらのプロセスは、流体貯蔵槽を製造するため、または後の組立てのためのその部品を製造するために使用できる。
【0033】
剛性の貯蔵槽に関しては、高い剛性を与える熱硬化性ポリマーが、高い温度条件での使用を意図した装置のために使用できる。このような高い温度は、例えばより良好な流れを可能にする温度で分配が行われる、軟膏などといった粘性物質を処理するときに発生し得る。
【0034】
製造コストを削減するために、流体貯蔵槽は好ましくは実質的に一体構造である。特に流体貯蔵槽は、最小の組立て部品とサブコンポーネントを有し、一般に単層構造からなる。
【0035】
本発明の装置によって流体分配を行う際に、適当な内部圧力条件の維持は重要である。流体が流体貯蔵槽から充填管アセンブリに、また装置から容器内に移動するにつれて、貯蔵槽と充填管アセンブリの内側の気体圧力は、もし制御されなければ変動し、例えば分配される製品が正確な投与量の薬剤製品であることになっているときには、許容できない不正確な分配体積に導く可能性がある。もし充填管アセンブリ内の「均等化された」内部圧力条件が所望の結果であれば、このような均等化は袋手段40の設置によって促進でき、また「柔軟」であれ「剛性」であれ、貯蔵槽における均等化圧力条件は気体ゲート制御手段42の設置によって促進できる。ある幾つかの粘性流体を分配するときには「正の」圧力が望ましい。装置全体を通しての、すなわち最初に貯蔵槽、後で充填管アセンブリ/袋アセンブリにおける、「正の」加圧の維持は、制御可能な「開」および「閉」状態を有する気体ゲート制御手段の使用を必要とする可能性がある。
【0036】
ゲート制御手段42の構造、場所、構成は、もし実現されれば、意図された用途と貯蔵槽構造、それらの内部寸法、充填管アセンブリ内のヘッドの数といった要因に依存して変化を受ける。しかしながら二つの主要な実施形態は、通気フィルタアセンブリと圧力駆動バルブである。これら二つの機構のうちで、その潜在的に低い実現コストを考慮した通気フィルタは特に好ましい。
【0037】
通気フィルタアセンブリに関して、代表的実施形態は、その上に入口と出口を形成し、それらの間の通路と上記通路を横断面的に分割する膜またはフィルタとを有する剛性の流体貯蔵槽に成形される、または設置される構造体を備える。
【0038】
通気フィルタアセンブリに使用される膜またはフィルタのタイプには特に制限は存在しない。例えば、奥行きフィルタ、表面フィルタ、膜、ポット中空繊維膜などが使用できる。しかしながら、装置の有望な用途を考慮すると、疎水性のフィルタまたは膜は、このような疎水性が装置からの水性流体の流出を防止し、なお気体が自由に通過することを可能にするので、好ましい。フィルタまたは膜の多孔性は、無菌条件を維持し、例えば外部環境からの空気中の粒子などによる流体の汚染を防止するように選択すべきである。疎水性と親水性の両方の機能を有する膜も使用可能である。このような多機能通気フィルタの詳細は、2001年12月3日にJ.Cappiaらによって出願された国際公開第02/043,841号パンフレットに記載されている。
【0039】
通気フィルタの構造は、過度に複雑である必要はない。使い捨て可能性(一回使用と比較)のために、低い製造コストの可能な構造(大掛かりな組立てを必要としない、または部品点数の少ない、あるいは市販の日用品材料を利用する)は、ある幾つかの利点を与える。僅かなコストで実現できる通気フィルタの一つのタイプは、実質的に通気性のフッ素ポリマー膜(例えばデラウエア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)のゴア社(Gore.Inc)から市販されている「ゴアテックス」ブランドの膜)、または実質的に通気性のポリエチレン繊維シート(例えばデラウエア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)のE.I.du Pont de Nemours社から市販されている「Tyvek」ブランドの材料)を備える貯蔵槽内で、個別の専用ゾーンを提供することになるであろう。一実施形態では、貯蔵槽の最も高い意図された流体充填レベルより上の領域において、貯蔵槽に開口部が設けられ(例えば切削、型抜き、あるいは事前形成によって)、続いて多孔性シートのポリマーを有する上記開口部が閉じられる。この実施形態では、多孔性パッチは接着剤その他の接合合成品によって、あるいは音波溶接、焼結、溶融、テープ接着、またはコーキングによって適所に固定され得る。
【0040】
圧力駆動バルブに関して望ましい実施形態は、装置内の圧力変動に応じて自動的に動作するバルブであろう。これは電子的または機械的いずれでも起こり得るであろう。機械的手段に関しては、ある一定の圧力より低い所で一つの位置を、圧力がその圧力よりも高く上昇したときにはもう一つの位置を有するバルブが構成できる。より高い精度と感度が必要とされる場合には、電子的バルブシステムがセンサとともに実現され得る。このような電子バルブシステムは、ホスト装置の電子コントローラによって制御できる。更に電子バルブはコスト高になりそうである(したがって容易には処分できない)から、貯蔵槽は単に、ホスト流体ディスペンサ装置の固定されたハードウエアに恒久的備品として設置される電子バルブシステムへの接続手段(すなわち管)を設けるようにされ得る。
【0041】
内部に流体ディスペンサカートリッジ10を設置している流体ディスペンサ装置の動作は、典型的には最初にホスト装置の流体供給源FSに保持されている分配のための流体を、流体貯蔵槽に充填することから始まる。充填は、例えば供給バルブ225を「開放する」ことによって、流体貯蔵槽への流体入口を「開放する」もしくはアクセス可能にすることによって、遂行される。この時点で流体貯蔵槽20の流体出力端24に近い充填バルブ34は、「閉じられる」。貯蔵槽20を充填した後に、流体を貯蔵槽内に導入する手段も「閉じられる」。
【0042】
次の工程は、充填管アセンブリ30(特に観測管32)に、貯蔵槽20から流体を充填することを含む。これは、流出バルブ36を「閉じた」状態を保持しながら充填バルブ34を開くことによって遂行される。流体が流体貯蔵槽から充填管アセンブリに徐々に流入すると、そこにおける流体のレベルは流体レベルセンサによって監視され、そのデータは電子制御システムによって処理される。いったん所望の体積を示すある一定の流体レベルに達すると、充填バルブ34は「閉じられる」。
【0043】
次の工程は、充填管アセンブリ30から小型薬壜90またはその他の容器に流体を分配することを含む。これは、放出管38に設けられた流出バルブ36を「開き」、充填管アセンブリ30の流体内容を実質的に空にすることによって遂行される。充填管アセンブリ30の内部寸法と流体の性質とその粘性は前もって知られているので、充填管アセンブリ30から流れ出る流体の量は十分な精度で予め決定できる。
【0044】
本発明は全ての流体が充填管アセンブリから流れ出ることを必要としないことは認められるであろう。ある幾つかの充填管アセンブリ構成は、特定的にある体積の流体を保持するように設計され得る。しかしながらこれは前もって分かるので、制御機構に要因として入力でき、したがって分配精度を低下させることはない。
【0045】
本発明に対する限定ではないが、薬剤流体の分配に関して、流体貯蔵槽の典型的な全内部体積は約1.5リットルから約10リットルの範囲内にある傾向がある。このような容積では、供給入口と流体出口との寸法は次の通りである。すなわち供給入口の直径は約0.25インチから約0.75インチ(約0.635cmから約1.90cm)の範囲にあり、流体出口の直径は約0.125インチから約0.75インチ(約0.3175cmから約1.90cm)の範囲にある。より大きな容積に関しては(特に粘性流体に関連するとき)これらの寸法は実質的に、より大きくなるであろう。
【0046】
充填管アセンブリに関して、観察管32のための一つの構成は、観測管の下部から観測管の上部への方向で垂直中心線から外に向かって先細りになるテーパ付き内壁を有する構成である。垂直中心軸と傾斜壁との間の角度は、約1度から10度であり、好ましくは約2度から4度である。
【0047】
テーパ付き観測管は、ある幾つかの用途に関して、一定の内径を有する観測管を超えて多くの利点を与える。観測管は貯蔵槽からの流体で満たされるので、観測管32内の流体レベルは更なる介入がなければ、貯蔵槽内の流体レベルより高く上昇することはできない。したがってそれらの観測管の一方の端部で内径が等しいと仮定すると、テーパ付き観測管は内径が一定の管よりも大きな体積の流体を満たすことができる。更に所定の長さに亘って直径が変化する観測管では、流体は一定直径の管内の同じ流体と比較して短い垂直距離を移動する。変化する直径の管内の流体は、所定の体積に関して、より短い距離と速度を移動するので、より小さい圧力低下という結果をもたらし、分配に対するより大きな制御が行われる。
【0048】
上述のように、流体ディスペンサカートリッジは使用後に廃棄されることが多いので、この消費可能なコンポーネントの材料が妥当な値以下であることを保証することによって、利点が得られる。比較的高価なサブコンポーネント(バルブと、複雑および/または精巧な電子部品など)は、カートリッジの部品ではなく、むしろホスト流体ディスペンサ装置の備品になり得る。前述の流出バルブと充填バルブに関して、これらはアセンブリハードウエア内に取り付けられるピンチ型の変形版になり得るが、必ずしもそうではない。流体ディスペンサカートリッジが設置されると、その充填管アセンブリの特定の領域は、これらの機能が実現できるようにこのバルブと一体化される(例えば摘み入れられる)であろう。ピンチバルブは、この観点から、これらが如何なる管の切断もバルブ要素の接続も(技術的熟練の何らかの措置を必要とする作業を)必要としないことにおいて有利であることがわかる。むしろ管の特定の領域は、ピンチバルブが管の内腔を押し潰して閉鎖するために十分にその領域を締め付けることを可能にするように十分に「挟み付け可能」であればよい。この仕方でこれらのバルブは必ずしも、使い捨て要素の一部である必要はない。
【0049】
充填管アセンブリ内の流体レベルを決定するために、一対の光学的センサが充填管アセンブリに沿って配置される。両センサは、流体チャンバ内の流体のレベルより下方に配置すべきである。上方レベルセンサは、充填管内の流体の上方レベルを画定する。下方レベルセンサは、流体の下方レベルを画定する。上方および下方レベルセンサ間の分配される流体の体積、充填管の直径、およびいわゆる「ヘッド圧力」。両センサは、プログラム可能なコントローラ、その他の電子的論理装置に接続される。
【0050】
これらのレベルセンサに加えて、またはこれらの代わりにメニスカスセンサが含まれることもある。もしメニスカスセンサが使用されれば、それは充填管の管延長部に配置される。メニスカスセンサは、充填管内のメニスカスの高さを測定するレーザ型センサである。メニスカスセンサの出力は、例えば充填体積の精度を改善するためにこの情報を使用する、プログラム可能なコントローラに送信され得る。
【0051】
上記に示すように、充填管アセンブリ内の流体レベルは、光学的流体レベルセンサ52、54の代わりに、キャパシタンスセンサを使用して監視することもできる。このようなセンサは好ましくは、充填管アセンブリ上で使用されるが、場合によっては実質的に剛性の貯蔵槽にも設置される。
【0052】
導電性端子は、単独では流体ディスペンサ装置を動作可能にするには十分でない。導電性端子は、エネルギー源と電子制御機構の両者に、配線、もしくはリンクまたは接続される必要があり、これら両者は単一のサブコンポーネントとして一体化できる。エネルギー源は本質的に、両端子間に電流を流すが、電子制御機構は、例えばポテンショメータまたは同様の電子センサのそこへの組込みによって、上記電流のキャパシタンスを測定し、それに基づいて、充填バルブおよび/または放出バルブを選択的に開く、および/または閉じる。
【0053】
キャパシタンス検出を可能にする電子回路はまた、経済に目を向けて構成されるべきである。このようにして例えば、消費可能な流体ディスペンサカートリッジは、ホスト装置の使い捨てでないハードウエアアセンブリの一部である、アセンブリの制御機構への適切な専用ソケットにプラグインされる、および/または接続される、端子と、場合によってはいくつかのリードとワイヤとを含む。
【0054】
電子端子は好ましくは、充填管アセンブリの側壁に恒久的に取り付け可能な二つの細長い金属細片、典型的には銅片を備える。典型的な構成では、これらの細片は、管の外側に互いに相対して取り付けられ、充填管アセンブリの「観察領域」の全動作長さを縦断している。キャパシタンス検出は、これら二つの金属細片の間の空間にパルス電流を通すことによって遂行される。これらの細片を分離する材料のキャパシタンスが測定される。空で空気の詰まった管のキャパシタンスと液体が充填されたキャパシタンスとの間には、大きな差異が存在する。したがって液体体積は、管内を上下に動くので、絶えず監視され得る。ある幾つかの事例では、温度はキャパシタンスに影響を及ぼすので、温度も知られなくてはならない。
【0055】
充填管アセンブリの外側表面への銅細片の配置に対する代替手段が存在する。例えば、銅細片は下記のように取り付けることができる。すなわち一方は管の外側に(恐らくはその底部に向かって)取り付けられ、他方は壁に接触せずに吊り下げられた充填管アセンブリの内側に配置される。このバージョンは、管の側壁に強く「粘着する」傾向がある高い粘性の流体のために特に適している。内部に取り付けられた端子と充填管アセンブリ内に充填された流体との間の、望ましくない化学的相互作用を防止するために、内部に取り付けられる端子は好ましくは化学的に非反応性のポリマー材料で被覆されるか、もしくは他の何らかの適当な障壁で保護または隔離される。
【0056】
ホスト流体ディスペンサ装置の動作時には、充填管アセンブリ内のキャパシタンスは連続的に測定されるので、ある一定の最小と最大の体積を決定するよりはむしろ、管内の流体体積が絶えず決定されるであろう。キャパスタンスセンサは液体を連続的に測定するので、単なる比例制御よりもむしろ、システムのいわゆる「比例積分導関数」(PID)制御が使用され、これによって分配精度と反復精度とを向上させることができる。
【0057】
上記に基づいて、本発明が、分配される流体に接触するコンポーネントの全てが事前に洗浄され滅菌消毒され得る流体ディスペンサ装置を可能にすることは明らかである。これらのコンポーネントは、容易にまた迅速に交換でき、それによっていわゆる保守「ダウン時間」をなくすことができる。本発明はまた、従来技術の装置に関連した誤りなしに浄化フィルタでも使用可能である。
【0058】
幾つかの実施形態がここに開示されているが、ここに述べられた教示の利益を受ける当業者は、これらに対して多くの修正を行うことができる。例えば、図に示され、更に以下に論じられた本発明の実施形態は全て、一つの貯蔵槽につき一つの充填管アセンブリを示している。しかしながら実際には、一つの貯蔵槽につき、各々がそれぞれ袋機構を備えた数個の充填管アセンブリを使用することは更に有利である。このような追加の充填管アセンブリの基本的な構成と機能は本質的に、前述のものと同じであろう。これらおよび他の変形は、付属の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内にあるものと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による流体ディスペンサカートリッジ10の模式図である。
【図2】本発明の特定の実施形態による一回使用の流体ディスペンサカートリッジ10を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
10 流体ディスペンサカートリッジ
20 貯蔵槽
22 流体入口
24 流体出口
30 充填管アセンブリ
34 充填バルブ
36 流出バルブ
38 流出ライン
40 袋手段
90 容器
223 浄化フィルタ
225 供給バルブ
227 流体供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた体積の流体を分配する装置に設置するのに適した流体ディスペンサカートリッジであって、
流体貯蔵槽に流体を導入するのに適した流体入口と、流体貯蔵槽から流体を放出するのに適した流体出口とを有する、流体貯蔵槽と、
前記装置内の前記カートリッジの使用時に前記流体貯蔵槽からの流体が、充填管アセンブリから流体を分配する放出口を有する前記充填管アセンブリ内に流入できるように、前記流体出口において前記流体貯蔵槽に接続された充填管アセンブリと、
前記装置内の前記カートリッジの使用時に前記充填管アセンブリ内の圧力に影響を与えるように、前記充填管アセンブリに出入りする気体の動きを調整する袋手段であって、前記流体貯蔵槽との前記接続とは反対側の前記充填管アセンブリの端部に配置された袋手段と、を備える、流体ディスペンサカートリッジ。
【請求項2】
前記袋手段は実質的に気体不浸透性の材料からなる、請求項1に記載の流体ディスペンサカートリッジ。
【請求項3】
前記流体貯蔵槽は剛性である、請求項1に記載の流体ディスペンサカートリッジ。
【請求項4】
前記貯蔵槽の内外の圧力を均等にするように前記剛性の流体貯蔵槽に配置された気体ゲート制御手段を更に備える、請求項3に記載の流体ディスペンサカートリッジ。
【請求項5】
その内部に設置された流体ディスペンサカートリッジから予め決められた体積の流体を分配する流体ディスペンサ装置であって、
(a)流体ディスペンサカートリッジは、
(i)柔軟な流体貯蔵槽に流体を導入するのに適した流体入口と、前記柔軟な流体貯蔵槽から流体を放出するのに適した流体出口とを有する、柔軟な流体貯蔵槽と、
(ii)前記柔軟な流体貯蔵槽からの流体が、充填管アセンブリから流体を分配する放出口を有する前記充填管アセンブリ内に流入できるように、前記流体出口において前記柔軟な流体貯蔵槽に接続された充填管アセンブリと、
(iii)前記装置内の前記カートリッジの使用時に前記充填管アセンブリの内外の圧力を実質的に等しくするように、前記充填管アセンブリに出入りする気体の動きを調整する袋手段であって、前記柔軟な流体貯蔵槽との前記接続とは反対側の前記充填管アセンブリの端部に配置された袋手段と、を備え、
(b)前記流体ディスペンサ装置は、前記流体ディスペンサカートリッジの前記柔軟な流体貯蔵槽に圧力を働かせる加圧手段を有する、流体ディスペンサ装置。
【請求項6】
前記袋手段は実質的に気体不浸透性の材料からなる、請求項5に記載の流体ディスペンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−8249(P2006−8249A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−138077(P2005−138077)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】