説明

被り厚の測定装置

【課題】 コンクリート打設前に、作業者の手が届かない深部や狭隘部、さらには目視測定できない箇所であっても、被り厚を容易に測定する。
【解決手段】 型枠50の内面と鉄筋40との間隙内に挿入して移動させることにより、被り厚が所定値以上であるか否かを測定する測定部材20と、測定部材20に連結された支柱30とを備える。測定部材20は、最大幅部分が所定の被り厚に設定されている。支柱30を操作して型枠50の内面と鉄筋40との間隔内で最大幅部分を移動させ、該最大幅部分が通過可能であれば、被り厚が所定値以上であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設前に被り厚を測定するための測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の耐久性を確保するためには、被り厚を適切に管理することが重要である。従来、一般的な施工現場では、型枠建て込み後に金属製巻き尺等の物差しを用いて被り厚を測定している。このような物差しを用いて被り厚を測定する方法では、手が届かない箇所や視認できない箇所の測定を行うことができないか、測定できたとしても不正確になりがちであった。さらに、測定には手間が掛かるため、必要最小限の箇所についてのみ測定を行うことが多かった。
【0003】
そこで、コンクリート構造物における被り厚を測定するための技術が種々開発されている。
例えば、コンクリート打設後にコンクリート構造物の被り厚を測定するための装置が開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された装置は、鉄筋の表面に、非接触式で電子情報の読み書きが可能なRFIDタグを取り付けた後に、コンクリートの打設を行う。そして、RFIDタグに対して電波を発信し、RFIDタグから発信される電波を受信することによりコンクリート内を伝わる電波の強度を検出して被り厚を測定するようになっている。
【0004】
また、コンクリート打設前に被り厚を測定するための技術として、鉄筋工事におけるコンクリート天端表面と鉄筋最外端部の被り厚を測定するための装置が開示されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載された技術は、目盛り表示された巻き尺を収納した測定箱と、巻き尺の先端部に取り付けられた測定器とを備えており、測定器の端部にはそれぞれ目盛りが表記されるとともに、型枠測定器が取り付けられた構造となっている。
【0005】
この装置を用いて被り厚を測定するには、予め、各部材で規定されている最小限度の被り厚となるように、型枠に対して墨打ちを行う。そして、測定箱に表示された目盛りを墨打ちされた点に合わせ、巻き尺の先端部に取り付けられた測定器を、反対側の型枠まで巻き尺を延ばしながら移動させる。さらに、測定箱と同様に、測定器に表示された目盛りを墨打ちされた点に合わせて被り厚を測定することができるとされている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−294288号公報
【特許文献2】特開2002−228401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンクリート構造物が完成した後に被り厚が不足していることが判明すると、補修や作り替えなどを行わなければならず、多大な費用を要するだけではなく、コンクリート構造物の供用開始時期に大きな影響を与えてしまう。
【0008】
特許文献1に記載された技術は、コンクリート打設後にコンクリート構造物の被り厚を測定するものであるため、事前のチェックを行うことができず、上述した課題を解決することはできない。
この点、特許文献2に記載された技術は、コンクリート打設前に被り厚を測定するものであるが、装置構成が複雑であるばかりでなく、測定方法も複雑であり、コンクリート構造物における被り厚を容易かつ正確に測定することができるとは言い難かった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、構造が単純でありながら、コンクリート打設前に、作業者の手が届かない深部や狭隘部、さらには目視測定できない箇所であっても、被り厚を容易に測定することが可能な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の被り厚の測定装置は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。
本発明の被り厚の測定装置は、型枠内面と鉄筋との間隙内に挿入して型枠内面と鉄筋との間を移動させることにより、被り厚が所定値以上であるか否かを測定する測定部材と、測定部材に連結された支柱と、を備えている。
【0011】
測定部材は、最大幅部分が所定の被り厚に設定されており、支柱を操作して型枠内面と鉄筋との間隔内で最大幅部分を移動させ、該最大幅部分が通過可能であれば、被り厚が所定値以上であると判断することを特徴とするものである。
【0012】
また、測定部材は、所定の被り厚に設定された最大幅部分と、所定の被り厚よりも小さく設定された部分とを有するように形成されており、支柱を操作して測定部材を軸回りに回転させることにより、型枠内面と鉄筋との間を通過させる際の幅を変化させるように構成することが可能である。
【0013】
このような構成からなる被り厚の測定装置は、特に水平方向の被り厚を測定する際に好適に用いられるものである。この被り厚の測定装置を使用するには、支柱を持って、型枠の上方から型枠内面と鉄筋との間隔内に測定部材を挿入する。そして、支柱を押し下げることにより、測定部材の最大幅部分を、型枠内面と鉄筋との間隔内で移動させる。この際、最大幅部分が型枠内面と鉄筋との間隔内を通過可能であれば、被り厚が適切であると判断する。一方、最大幅部分が型枠内面と鉄筋との間隔内を通過できなければ、被り厚が不適切であると判断する。
【0014】
最大幅部分が型枠内面と鉄筋との間隔内を通過できない場合には、支柱を軸回りに回転させることにより、測定部材を回転させ、被り厚よりも小さく設定された部分が型枠内面と鉄筋との間隔内に位置するようにして、さらに支柱を押し下げる。これにより、さらに下方の被り厚を測定することができる。なお、型枠内面と鉄筋との間隔内から測定部材を引き抜く際には、被り厚よりも小さく設定された部分を型枠内面と鉄筋とに対向させることにより、型枠内面と鉄筋との間隔内から測定部材を一気に引き抜くことができる。
【0015】
また、支柱を長さ方向の途中で屈曲させることにより、測定部材を支柱に対してオフセットして取り付ける構成とすることが可能である。
【0016】
このような構成からなる被り厚の測定装置は、特に鉛直方向の被り厚を測定する際に好適に用いられるものである。この被り厚の測定装置を使用するには、支柱を持って、型枠内面と鉄筋との間隔内に測定部材を挿入する。そして、支柱を水平方向に移動させることにより、測定部材の最大幅部分を、型枠内面と鉄筋との間隔内で移動させる。この際、最大幅部分が型枠内面と鉄筋との間隔内を通過可能であれば、被り厚が適切であると判断する。一方、最大幅部分が型枠内面と鉄筋との間隔内を通過できなければ、被り厚が不適切であると判断する。
【0017】
また、測定部材は、最大幅を調整する調整機構を有することが好ましい。
このような構成からなる被り厚の測定装置は、調整機構を用いて最大幅を調整することにより、施工現場の状況に合致した被り厚を測定することができる。
【0018】
また、測定部材は、最大幅が大きくなる方向へ付勢力を与える付勢手段と、最大幅データを測定するとともに測定値を電気信号に変換して出力する最大幅検出器と、を備えるように構成することが可能である。
このような構成からなる被り厚の測定装置は、付勢手段の付勢力により、最大幅の部分が型枠内面と鉄筋とに追随する。そして、最大幅検出器により最大幅データを測定し、電気信号に変換して出力するので、この電気信号を取り込むことにより、最大幅データを逐次取得することができる。
【0019】
また、測定部材は、支柱に対して回動可能かつ着脱可能な円盤状部材からなり、それぞれ直径が異なる複数の円盤状部材を用意して、所定の被り厚に応じて交換するように構成することが可能である。
このような構成からなる被り厚の測定装置は、円盤状部材を交換することにより、施工現場の状況に合致した被り厚を測定することができる。
【0020】
なお、本発明の被り厚の測定装置を説明するにあたり、水平方向及び鉛直方向という文言を使用するが、水平方向とは完全な水平方向だけではなく若干の傾きを有している方向も含むものとし、鉛直方向とは完全な鉛直方向だけではなく若干の傾きを有している方向も含むものとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の被り厚の測定装置は、最大幅が所定の被り厚に設定された測定部材を、型枠内面と鉄筋との間隙内に挿入して型枠内面と鉄筋との間を移動させることにより、被り厚が所定値以上であるか否かを測定することができる。
【0022】
この被り厚の測定装置は、構造が単純であり、操作も容易である。また、コンクリート打設前に、作業者の手が届かない深部や狭隘部、さらには目視測定できない箇所であっても、被り厚を容易に測定することができる。
【0023】
したがって、コンクリート打設前における被り厚の管理が適切なものとなり、コンクリート構造物の耐久性を確保することが可能となる。さらに、副次的な効果として、補修や作り替えなどの作業が不要となり、建築コストを低減することができるとともに、作業の遅れがなくなり、予定通りの工期でコンクリート構造物を建設して供用を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る被り厚の測定装置の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1〜図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置を説明する。
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置を示すもので、図1は斜視図、図2は測定部材の横断面図、図3は使用状態の説明図である。また、図4及び図5は、本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置を好適に適用する鉄筋の構成を示すもので、図4は鉄筋の説明図、図5は図4におけるA矢視図である。
【0025】
本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置10は、型枠内面に対向する鉄筋が図4及び図5に示すような形状となっている箇所において水平方向の被り厚を測定する際に、好適に用いられるものである。
【0026】
第1の実施形態に係る被り厚の測定装置10は、図1に示すように、測定部材20と、この測定部材20に連結された支柱30とを備えている。以下、支柱30の軸方向を測定部材20の移動方向と称し、測定部材20において、支柱30を取り付ける面を上面と称し、これと対向する面を下面と称し、型枠50の内面又は鉄筋40に接する面を左右側面と称し、支柱30の軸方向に沿って左右側面に隣接する面を前後側面と称して説明を行う。
【0027】
支柱30は、測定部材20を支持するための部材である。支柱30の長さは、測定部位に合わせて適宜変更することができる。ここで、支柱30を複数のパーツに分割したり、テレスコピックタイプとしたりすることにより、測定装置10をコンパクトなものとすることができる。このように、支柱30を分割式とした場合には、測定装置10を使用する際に、適宜本数のパーツを繋ぎ合わせることにより、所望の長さの支柱30とすることができる。また、支柱30をテレスコピックタイプとした場合には、測定装置10を使用する際に、適宜本数の支柱30を引き出すことにより、所望の長さの支柱30とすることができる。さらに、支柱30を測定部材20に対して着脱可能としてもよい。
【0028】
測定部材20は、型枠50の内面と鉄筋40のとの間隙内に挿入して型枠50の内面と鉄筋40との間を移動させることにより、被り厚が所定値以上であるか否かを測定するための部材である。この測定部材20は、一側が開放面となった箱状の外側部21と、外側部21内に挿入する箱状の内側部22とを備えている。
【0029】
外側部21は、開放面と対向する面が、測定部材20の移動方向に沿い外方へ向かって凸状に湾曲した湾曲面21aとなっている。また、前後両側面には、測定部材20の移動方向に直交する方向に延びた長孔21bがそれぞれ設けられている。
内側部22は、外側部21内へ挿入する側と対向する面が、測定部材20の移動方向に沿い外方へ向かって凸状に湾曲した湾曲面22aとなっている。
【0030】
また、図2に示すように、外側部21の長孔21bと内側部22とに一連にボルト23を挿通することにより、外側部21と内側部22が一体となるとともに、内側部22が外側部21に対して長孔21bの範囲内で移動可能となっている。そして、測定部材20の移動方向と直交する方向の最大幅Wが所定の被り厚となるように設定した後に、ボルト23の両端に取り付けたナット24を締め付けることにより、最大幅Wを調整することができる。
測定部材20は、前後両側面間の距離Dが、所定の被り厚よりも小さくなるように設定されている。
【0031】
次に、図3を参照して、第1の実施形態に係る被り厚の測定装置10を用いて被り厚を測定する方法を説明する。
第1の実施形態に係る被り厚の測定装置10を用いて被り厚を測定するには、支柱30を持って、型枠50と鉄筋40との間隔内に測定部材20を挿入する。そして、支柱30を押し下げることにより、測定部材20の最大幅Wの部分を、型枠50の内面と鉄筋40との間隔内で移動させる。この際、最大幅Wの部分が型枠50の内面と鉄筋40との間隔内を通過可能であれば、被り厚が適切であると判断する。一方、最大幅Wの部分が型枠50の内面と鉄筋40との間隔内を通過できなければ、被り厚が規定値よりも小さいと判断する。
【0032】
また、最大幅Wの部分が型枠50の内面と鉄筋40との間隔内を通過できない場合には、支柱30を軸回りに約90度回転させて、測定部材20の前後側面を型枠50の内面及び鉄筋40に対向させることにより、測定部材20を下方に押し下げることができる。そして、再び支柱30を軸回りに約90度回転させて、測定部材20の最大幅Wの部分が型枠50の内面及び鉄筋40に対向するようにして、被り厚を測定する。
【0033】
また、型枠50の内面と鉄筋40との間隔内から測定部材20を引き抜く際には、支柱30を軸回り約90度に回転させて、測定部材20の前後側面を型枠50の内面及び鉄筋40に対向させることにより、型枠50の内面と鉄筋40との間隔内から測定部材20を一気に引き抜くことができる。
【0034】
また、測定部材20の左右両側面が、測定部材20の移動方向に沿い外方へ向かって凸状に湾曲した湾曲面21a、22aとなっているため、測定作業を行う際に、測定部材20が型枠50の内面や鉄筋40に引っ掛かることがない。
【0035】
なお、測定部材20における左右側面間の最大幅W、前後側面間の幅D、長孔21bの長さ、支柱30の長さ等は、被り厚を測定する箇所の状況に応じて適宜変更して設定することができる。
【0036】
<第2の実施形態>
図6〜図10を参照して、本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置を説明する。図6〜図8は、本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置を示すもので、図6は斜視図、図7は測定部材の縦断面図、図8は使用状態の説明図である。また、図9及び図10は、本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置を好適に適用する鉄筋の構成を示すもので、図9は鉄筋の説明図、図10は図9におけるB矢視図である。
【0037】
本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置210は、型枠内面に対向する鉄筋が図9及び図10に示すような形状となっている箇所において鉛直方向の被り厚を測定する際に、好適に用いられるものである。
【0038】
第2の実施形態に係る被り厚の測定装置210は、図6に示すように、測定部材220と、この測定部材220に連結された支柱230とを備えている。以下、支柱230を取り付ける面及びこれと対向する面を左右側面と称し、型枠50の内面又は鉄筋40に接する面を上下側面と称し、支柱230の軸方向に沿って左右側面に隣接する面を前後側面と称して説明を行う。
【0039】
支柱230は、測定部材220への取付部付近で屈曲しており、測定部材220を支柱230に対してオフセットして取り付けるようになっている。なお、支柱230を分割式やテレスコピックタイプとしてもよいし、測定部材220に対して支柱230を着脱可能としてもよいことは、上述した第1の実施形態と同様である。
【0040】
測定部材220は、図6〜図8に示すように、上述した第1の実施形態の測定部材20を上下方向に90度回転させるとともに、前後両側面の下側にそれぞれ車輪25を取り付け、さらに支柱230に対して補助車輪26を取り付けた構造となっている。第2の実施形態の測定部材220は、車輪25及び補助車輪26の有無を除いて上述した第1の実施形態の測定部材20とほぼ同様の構成であるため、同様の機能を有する部分に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
補助車輪26は、図6及び図8に示すように、測定中に測定部材220が傾くことを防止するための部材であり、車輪25及び補助車輪26を型枠50の内面に接触させた状態で、測定部材220が型枠50の内面に対して略鉛直となるように直径等が設定されている。
【0041】
次に、図8を参照して、第2の実施形態に係る被り厚の測定装置210を用いて被り厚を測定する方法を説明する。
第2の実施形態に係る被り厚の測定装置210を用いて被り厚を測定するには、支柱230を持って、型枠50と鉄筋40との間隔内に測定部材220を挿入する。そして、支柱230を操作して測定部材220の最大幅Wの部分を、型枠50の内面と鉄筋40との間隔内で移動させる。この際、最大幅Wの部分が型枠50の内面と鉄筋40との間隔内を通過可能であれば、被り厚が適切であると判断する。一方、最大幅Wの部分が型枠50の内面と鉄筋40との間隔内を通過できなければ、被り厚が規定値よりも小さいと判断する。
【0042】
そして、当該箇所の測定が終了すると、支柱230を持って、型枠50と鉄筋40との間隔内から測定部材220を引き抜き、次の測定箇所で上述したのと同様の動作を行うことにより、順次、被り厚を測定する。
【0043】
なお、測定部材220における上下側面間の最大幅W、前後側面間の幅D、長孔21bの長さ、支柱230の長さ、オフセット位置、車輪25及び補助車輪26の大きさ等は、被り厚を測定する箇所の状況に応じて適宜変更して設定することができる。
【0044】
<第3の実施形態>
図11を参照して、本発明の第3の実施形態に係る被り厚の測定装置を説明する。図11は、本発明の第3の実施形態に係る被り厚の測定装置に用いる測定部材の横断面図である。
【0045】
本発明の第3の実施形態に係る被り厚の測定装置は、上述した第1の実施形態又は第2の実施形態に係る被り厚の測定装置10、210に用いる測定部材20、220に対して、最大幅Wが大きくなる方向へ付勢力を与える付勢手段60と、最大幅データを測定するとともに測定値を電気信号に変換して出力する最大幅検出器70とを付加したものである。
【0046】
支柱及び測定部材の外部構造は、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る被り厚の測定装置10、210と同様であるため、詳細な説明を省略し、付勢手段60と最大幅検出器70についてのみ説明する。
【0047】
第3の実施形態に係る被り厚の測定装置に用いる測定部材320は、図11に示すように、外側部21と内側部22との間に付勢手段60を設けた構成となっている。すなわち、第3の実施形態の測定部材320は、その内部に、最大幅Wが大きくなる方向へ付勢力を与える付勢手段60を備えている。この付勢手段60は、外側部21の内面から内側部22へ向かって突出するように設けられた挿入部61と、この挿入部61と対向するように、内側部22に設けられた受入部62とからなる。
【0048】
挿入部61は、先端に向かって幅が小さくなるように傾斜面61aが形成されている。受入部62は、挿入部61に向かって突出した一対の可動片62aからなり、各可動片62aは弾性及び可撓性を有している。そして、一対の可動片62aの間隔内に挿入部61を先端から挿入すると、挿入部61の傾斜面61aが一対の可動片62aの内面に当接する。この状態で、測定部材320の最大幅Wが小さくなる方向へ力を加えると、挿入部61の傾斜面61aが一対の可動片62aを押し広げるように作用する。一方、測定部材320へ加えていた力を解除すると、一対の可動片62aが弾性により元へ戻ろうとして挿入部61を押し戻し、測定部材320の最大幅Wが大きくなる方向へ付勢力が働く。
【0049】
受入部62を構成する可動片62aには、可動片62aの撓みを測定するためのストレインゲージが取り付けられており、このストレインゲージが最大幅検出器70として機能する。図示しないが、ストレインゲージには電線の一端が接続されており、電線の他端には測定器が取り付けられている。
【0050】
上述したように、測定部材320の最大幅Wの変化に伴い可動片62aの撓み量が変化するため、この撓み量の変化をストレインゲージにより電気信号として取り出して測定器で読み取ることにより、最大幅データを測定することができる。
【0051】
なお、付勢手段60の取付位置は、図11に示される態様に限定されるものではなく、挿入部61を内側部22に取り付けるとともに、受入部62を外側部21に取り付ける等、適宜変更して実施することができる。また、付勢手段60としてバネ等を用いてもよい。
【0052】
また、最大幅検出器70は、ストレインゲージに限定されるものではなく、物体の変位量を電気信号に変換して変位測定を行うことができる装置であれば、カンチレバー式、摺動抵抗式、リボン式、インダクタンス式等の周知の変位変換器を用いることができる。
【0053】
<第4の実施形態>
図12及び図13を参照して、本発明の第4の実施形態に係る被り厚の測定装置を説明する。図12及び図13は本発明の第4の実施形態に係る被り厚の測定装置を示すもので、図12は斜視図、図13は支柱の先端部及び測定部材の側面図である。
【0054】
本発明の第4の実施形態に係る被り厚の測定装置410は、図12に示すように、円盤状の測定部材420と、この測定部材420に連結された支柱430とを備えている。第4の実施形態に係る被り厚の測定装置410は、第1の実施形態に係る被り厚の測定装置10と同様に水平方向の被り厚を測定する際に好適に用いられるものである。
【0055】
支柱430には、図12及び図13に示すように、その先端部付近から側方に向かって回動軸80が突出して設けられており、回動軸80の先端部は回動軸80に対して略直角に屈曲可能な取付部90となっている。また、取付部90は、回動軸80に対して略直角に屈曲した状態で、固定可能となっている。具体的には、例えば、取付部90を回動軸80に対して略直角に屈曲させる方向に付勢するバネ等の付勢部材を設けることにより、取付部90を回動軸80に対して略直角に屈曲した状態で固定することができる。
【0056】
支柱430の長さは、測定部位に合わせて適宜変更することができる。なお、支柱430を分割式やテレスコピックタイプとしてもよいし、測定部材420に対して支柱430を着脱可能としてもよいことは、上述した第1の実施形態と同様である。
【0057】
測定部材420は、図12及び図13に示すように、円盤状のコロからなり、中心部に回動軸挿通孔81が設けられている。測定部材420の直径は、所定の被り厚に応じて設定されており、厚さは直径よりも十分小さくなるように設定されている。また、図13に示すように、測定部材420は、その直径が所定の被り厚に対応するように、複数種類用意されている。
【0058】
支柱430に対して測定部材420を取り付けるには、支柱430の回動軸80と取付部90が一直線となるようにして、測定部材420の回動軸挿通孔81内に取付部90及び回動軸80を挿通する。そして、取付部90を回動軸80に対して略直角に屈曲させることにより、支柱430の先端部に測定部材420を回動可能に固定する。一方、支柱430から測定部材420を取り外すには、支柱430の回動軸80と取付部90が一直線となるようにして、測定部材420の回動軸挿通孔81から取付部90及び回動軸80を引き抜けばよい。
【0059】
なお、回動軸80に測定部材420を取り付ける機構は、上述したものに限られず、例えば、回動軸80の先端部に軸方向に直交する貫通孔を設け、測定部材420の回動軸挿通孔81内に回動軸80を挿通した後に、貫通孔に抜け止めピンを挿通して、回動軸80に測定部材420を回動可能に固定してもよい。このような構成とした場合には、貫通孔に挿通した抜け止めピンを引き抜いて、測定部材420の回動軸挿通孔81から回動軸80を引き抜くことにより、支柱430から測定部材420を取り外すことができる。
【0060】
第4の実施形態に係る被り厚の測定装置410を用いて被り厚を測定するには、支柱430を持って、型枠と鉄筋との間隔内に測定部材420を挿入する。そして、支柱430を押し下げることにより、測定部材420の直径部分(最大幅部分)を、型枠の内面と鉄筋との間隔内で移動させる。この際、直径部分(最大幅部分)が型枠の内面と鉄筋との間隔内を通過可能であれば、被り厚が適切であると判断する。一方、直径部分(最大幅部分)が型枠の内面と鉄筋との間隔内を通過できなければ、被り厚が規定値よりも小さいと判断する。
【0061】
また、直径部分(最大幅部分)が型枠の内面と鉄筋との間隔内を通過できない場合には、支柱430を軸回りに約90度回転させて、測定部材420の厚み方向を型枠の内面及び鉄筋に対向させることにより、測定部材420を下方に押し下げることができる。そして、再び支柱430を軸回りに約90度回転させて、測定部材420の直径方向(最大幅部分)が型枠の内面及び鉄筋に対向するようにして、被り厚を測定する。
【0062】
また、型枠の内面と鉄筋との間隔内から測定部材420を引き抜く際には、支柱430を軸回りに約90度回転させて、測定部材420の厚み方向を型枠の内面及び鉄筋に対向させることにより、型枠の内面と鉄筋との間隔内から測定部材420を一気に引き抜くことができる。
また、測定部材420が円盤状となっているため、測定作業を行う際に、型枠の内面や鉄筋に測定部材420が引っ掛かることがない。
【0063】
なお、測定部材420の直径及び厚み、支柱430の長さ等は、被り厚を測定する箇所の状況に応じて適宜変更して設定することができる。
【0064】
<第5実施形態>
図14を参照して、本発明の第5の実施形態に係る被り厚の測定装置を説明する。図14は本発明の第5の実施形態に係る被り厚の測定装置の斜視図である。
【0065】
本発明の第5の実施形態に係る被り厚の測定装置510は、図14に示すように、円盤状の測定部材520と、この測定部材520に連結された支柱530とを備えている。第5の実施形態に係る被り厚の測定装置510は、第2の実施形態に係る被り厚の測定装置210と同様に、鉛直方向の被り厚を測定する際に好適に用いられるものである。
【0066】
支柱530には、図14に示すように、長さ方向の途中で屈曲しており、測定部材520を支柱530に対してオフセットして取り付けるようになっている。また、詳細には図示しないが、上述した第4の実施形態と同様に、支柱530の先端部付近から側方に向かって回動軸80が突出して設けられている。回動軸80の先端部は、回動軸80に対して略直角に屈曲しており、測定部材520を回動軸80に回動可能に取り付けるための取付部90となっている。回動軸80及び取付部90の構造は、上述した第4の実施形態と同様である。
【0067】
支柱530の長さは、測定部位に合わせて適宜変更することができる。なお、支柱530を分割式やテレスコピックタイプとしてもよいし、測定部材520に対して支柱530を着脱可能としてもよいことは、上述した第1の実施形態と同様である。
【0068】
測定部材520は、詳細には図示しないが、上述した第4の実施形態と同様に、円盤状のコロからなり、中心部に回動軸挿通孔(図示せず)が設けられている。測定部材520の直径は、所定の被り厚に応じて設定されており、厚さは直径よりも十分小さくなるように設定されている。また、測定部材520は、その直径が所定の被り厚に対応するように、複数種類用意されている。
支柱530に測定部材520を取り付ける手順及び支柱530から測定部材520を取り外す手順は、上述した第4の実施形態と同様である。
【0069】
第5の実施形態に係る被り厚の測定装置510を用いて被り厚を測定するには、支柱530を持って、型枠と鉄筋との間隔内に測定部材520を挿入する。そして、支柱530を操作して測定部材520の直径部分(最大幅部分)を、型枠の内面と鉄筋との間隙内で移動させる。この際、直径部分(最大幅部分)が型枠の内面と鉄筋との間隔内を通過可能であれば、被り厚が適切であると判断する。一方、直径部分(最大幅部分)が型枠の内面と鉄筋との間隔内を通過できなければ、被り厚が規定値よりも小さいと判断する。
【0070】
そして、当該箇所の測定が終了すると、支柱530を持って、型枠と鉄筋との間隔内から測定部材520を引き抜き、次の測定箇所で上述したのと同様の動作を行うことにより、順次、被り厚を測定する。
【0071】
なお、測定部材520の直径及び厚み、支柱530の長さ及び屈曲形状等は、被り厚を測定する箇所の状況に応じて適宜変更して設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置の斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置を構成する測定部材の横断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置の使用状態の説明図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る被り厚の測定装置を好適に適用する鉄筋の構成を示す説明図。
【図5】図4におけるA矢視図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置の斜視図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置を構成する測定部材の縦断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置の使用状態の説明図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る被り厚の測定装置を好適に適用する鉄筋の構成を示す説明図。
【図10】図9におけるB矢視図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る被り厚の測定装置を構成する測定部材の横断面図。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る被り厚の測定装置の斜視図。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る被り厚の測定装置を構成する支柱の先端部及び測定部材の側面図。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る被り厚の測定装置の斜視図。
【符号の説明】
【0073】
10、210、410、510 測定装置
20、220、320、420、520 測定部材
21 外側部
21a 湾曲面
21b 長孔
22 内側部
22a 湾曲面
23 ボルト
24 ナット
25 車輪
26 補助車輪
30、230、430、530 支柱
40 鉄筋
50 型枠
60 付勢手段
61 挿入部
61a 傾斜面
62 受入部
62a 可動片
70 最大幅検出器
80 回動軸
81 回動軸挿通孔
90 取付部
W 最大幅
D Wよりも小さく設定された部分の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設前に被り厚を測定するための装置であって、
型枠内面と鉄筋との間隙内に挿入して型枠内面と鉄筋との間を移動させることにより、被り厚が所定値以上であるか否かを測定する測定部材と、
前記測定部材に連結された支柱と、を備え、
前記測定部材は、最大幅部分が所定の被り厚に設定されており、前記支柱を操作して前記型枠内面と鉄筋との間隔内で最大幅部分を移動させ、該最大幅部分が通過可能であれば、被り厚が所定値以上であると判断することを特徴とする被り厚の測定装置。
【請求項2】
前記測定部材は、所定の被り厚に設定された最大幅部分と、所定の被り厚よりも小さく設定された部分とを有するように形成されており、前記支柱を操作して前記測定部材を軸回りに回転させることにより、前記型枠内面と鉄筋との間を通過させる際の幅を変化させることを特徴とする請求項1に記載の被り厚の測定装置。
【請求項3】
前記支柱を長さ方向の途中で屈曲させることにより、前記測定部材を前記支柱に対してオフセットして取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の被り厚の測定装置。
【請求項4】
前記測定部材は、最大幅を調整する調整機構を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被り厚の測定装置。
【請求項5】
前記測定部材は、最大幅が大きくなる方向へ付勢力を与える付勢手段と、最大幅データを測定するとともに測定値を電気信号に変換して出力する最大幅検出器と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被り厚の測定装置。
【請求項6】
前記測定部材は、前記支柱に対して回動可能かつ着脱可能な円盤状部材からなり、それぞれ直径が異なる複数の円盤状部材を用意して、所定の被り厚に応じて交換することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被り厚の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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