説明

被写体存在証明サービスシステム

【課題】 被写体(撮像・計測データ)存在の認証機関による証明(第三者による公的な証明)を行うとともに、撮像・計測データの改変を防止するデータ基本構造・機構の提供による電子商取引のデータの保全を行うことを目的とする。
【解決手段】 この発明は、計測対象である被写体の存在を証明するシステムであって、入力情報の時刻認証を可能とする時刻情報を提供する認証手段と、上記被写体の複数の計測ポイントの位置情報を計測する位置計測部、この位置情報計測時の自身の基準位置と基準時刻を外部装置から取得する基準情報取得部、上記基準位置と基準時刻とを入力情報として上記認証手段より得られた時刻情報に基づき上記基準位置と基準時刻とを暗号化する暗号化部を有する計測手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位技術、暗号化技術、認証技術、通信技術を複合的に組み合わせて用いることにより、対象物の存在(対象物の外部・内部の構造を含めた存在)を、第3者に対し認証・証明するサービスを提供するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2001−297062号公報に記載されている従来の技術(サービス)では、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)と気象衛星画像(雲の形)から位置と時刻を証明する(以下、COCO−DATESサービスという)。これは、撮像時に受信したGPS衛星からの各測位情報を認証センターに送信し、気象衛星画像と分離できないように結合して位置・時刻を証明するものである。ただし、その証明方法は符号化されたタイムスタンプ(符号化情報)を、画像に同時に印字(添付)するものであり、対象物の存在の証明にはなっていない。また、データそのものの改変防止の機構は基本的に考慮されていない。
【0003】
従来の技術では、図5のように、「現在時刻」と「その時刻にしか得られない気象画像と測位情報の組合せ情報(符号化情報)(測位情報がなく気象画像のみの場合もある)」をペア印字することで位置と時刻を証明する。
【0004】
【特許文献1】特開2001−297062号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記記載の従来の技術では、対象物(実際には対象物画像)の位置・時刻を証明することはできるが、撮像・計測対象の存在そのものを証明するビジネスサービスではないという問題があった。また、今後必要となることが予想される撮像・計測データの改変を防止するデータ構造・機構が存在しないという問題があった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたものであり、被写体(撮像・計測データ)存在の認証機関による証明(第三者による公的な証明)を行うとともに、撮像・計測データの改変を防止するデータ基本構造・機構の提供による電子商取引のデータの保全を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明である被写体存在証明サービスシステムは、計測対象である被写体の存在を証明するシステムであって、入力情報の時刻認証を可能とする時刻情報を提供する認証手段と、上記被写体の複数の計測ポイントの位置情報を計測する位置計測部、この位置情報計測時の自身の基準位置と基準時刻を外部装置から取得する基準情報取得部、上記基準位置と基準時刻とを入力情報として上記認証手段より得られた時刻情報に基づき上記基準位置と基準時刻とを暗号化する暗号化部を有する計測手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の被写体存在証明サービスシステムによれば、被写体の存在の認証機関による証明を行うことができ、また、撮像・計測データの改変を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、図1に示すようなシステム構成を有する。測距/測角技術として、例えばUWB(Ultra Wide Band)技術を用いる。この技術を用いたUWB端末は、「物体の形状(計測範囲/精度:数cm〜数十m以上)」、「高精度位置情報」を計測することができ、また物体の画像もリンクして保持することができる。このUWB端末を用いて計測した情報を、認証サービス機関(例えば、「COCO−DATES」システムのような位置と時刻の証明をするシステム)に送り、より詳細な(公的)物的証拠サービス提供を得ることができる。
【0010】
認証の際の通信方式では、UWB端末の通信機能(既存の携帯電話/PHSなど公衆通信網を転用してもかまわない)を用いて高速にネットワークにアクセスすることができる。認証対象の元のデータは、UWB端末の通信機能で高速に認証機関に転送される。また、UWB端末のアンテナユニットの交換、出力周波数の変更、センサ類の変更(光学・赤外線・ミリ波などを用途により変更)により、計測する物体の大きさと精度の変更が可能となる。
【0011】
実施例1.
図1は、被写体の計測データを第3者証明する仕組みを表す本発明のシステム構成図である。図において、11はUWB端末、12は被写体であり、例えば人・物・風景などが計測対象となる。13は認証機関、14は時刻情報を提供する時刻装置であり、例えばGPS衛星又は電波時計が該当する。15はサービス利用者(報告者)である。このサービスの利用ケースとしては、計測・報告するデータに詐称が無いことの証明を必要とするサービスがある。具体的には、(a)工事請負会社/検査会社等が、工事施工結果の報告・検査成績報告を行う際、データ信頼性の証明を必要とするケース。(b)電子商取引で取引相手(人物)の所在・証明を確認するケース(人物認証)等があげられる。16は第3者利用者(監査者)であり、報告者15が報告する内容を監査するものである。主に公官庁、及び一般消費者等である。UWB端末11及び認証機関13は、以下に記載するような機能を保有する。
【0012】
UWB端末11は、主機能として「レーダ機能」、「高精度位置計測機能」、「通信機能」、「暗号機能」を保有する。以下に各機能の説明を行う。
【0013】
「レーダ機能」:ここではUWB技術のレーダ機能を適用する。UWB技術はパルスレーダに係るものであるが、通常のレーダと異なり使用周波数帯が7.5GHz以上の高周波帯であり、且つ、1n以下の非常に短いパルス波を用いる。このような高周波数を用いれば、測定対象の距離・方角を精細に測定することができる。また、発信周波数を変更すれば、壁内探査スキャナとして用いることもできる。レーダ機能としては、上記UWB技術の他にも使用目的に応じ、測距がおこなえるものであれば、他のセンサに変更しても問題ない。例として、光学系(カメラのオートフォーカス)、赤外線、ミリ波による計測などがあげられる。
【0014】
「高精度位置計測」:複数測定点(ビーコン局)との測距(TDOA:Time Difference of Arrival))と測角(AOA:Angle of arrival)から自己の位置を求めるものである。ここで、周波数を適当に選定すれば携帯電話の基地局(信号)などもビーコン局として利用可能である、GPSよりも、より高精度の位置決めが可能となる。本発明では、この機能とともに必要に応じてGPSによるポインティングも選択可能である。
【0015】
「通信機能」:現在商用システムでは、UWB技術のうち、高速無線通信(WPAM:Wireless Personal Area Network)機能が一般的に使用されている。本発明では、この他に、一般公衆通話網を利用する携帯電話/PHSシステムなどを適用しても構わない。
【0016】
「暗号機能」:取得した被写体の撮像・計測データを、暗号キーをもとに暗号化するものである。暗号ロジックは一般的に公開されているものを選択すればよい。
【0017】
認証機関13では、送付されたデータの位置・時刻を証明する。またその証明に対する問い合わせ番号(認証データ)を提供する。この認証の手順としては、従来の認証サービス機関(例えば、「COCO−DATES」システムのような位置と時刻を証明するシステム)による。
【0018】
図2は、暗号化の対象である被写体の各種撮像・計測データの関係を示すものである。図において、17は被写体をカメラ等で撮影し得られた画像データであり、写真・可視画像のデータである。データのコーディング方式としてはJPEG方式のほか任意のものを選択可能である。18はUWB端末等の計測装置で計測された被写体各部の位置を示す3次元計測データ、19はUWB端末等の計測装置の位置(つまり、この装置を利用するサービス利用者の位置)を示す位置データ、110は計測時刻を示す時刻データである。これらのデータは相互にリンク付けされ、改変を防止するために暗号化される。
【0019】
図3は、被写体の撮像・計測データの一具体例を示すものである。位置データ19、時刻データ110はGPSシステムにより得られる計測基準点(GP:Ground Point)における位置と時間のデータである。このデータは認証機関13により第3者証明されたものである。また、この認証は測位情報とその時刻の気象画像を組み合わせてハッシュ関数(ドキュメントや数字などの文字列の羅列から一定長のデータに要約するための関数・手順をいう)で符号化して行う。
【0020】
DP(Datum Point)は被写体基準点を示す。DPにおける位置データは、上記GPでの位置データに計測装置による測距、測角により得られたデータを加算して得られる。3次元データ18は、被写体の複数箇所において、上記DPにおける位置データを基準に距離・角度をベクトル的に加算し得られる。画像データ17はR(赤)G(緑)B(青)の3種類のデータに分離され保存される。
【0021】
図4は、被写体の撮像・計測データの他の具体例を示すものである。図3においては、DPにおける位置データを求め、このDPを基準に被写体各部の3次元データを求めていたが、図4ではGPを基準に直接に被写体各部の3次元データを求めるものである。また、3次元データは画像データをメッシュ化し、そのメッシュのもっとも近い代表点をデータとして採用している。
【0022】
本実施例では、画像データに3次元データ(認証機関に認証された位置情報からのベクトル値)をリンク付けし、画像データの一部のみを加工修正した場合は、画像にリンク付けられたベクトル値が異常となり画像が加工された事が判明する。また、位置情報を全て再計算し算出し整合性を取ったとしても、基準となる位置情報は、報告者及び被写体とは異なる認証機関により認証されたものであり、認証機関の保持する認証データと一致しなくなる。これにより、第三者によるデータ改変を防止する。
【0023】
本発明を適用した、証明サービスの概要としては、以下の様になる。
(1)報告者は、被写体の3次元情報を取得する。位置検出機能により被写体の詳細位置情報を取得する。
(2)時刻装置から取得した時刻(電波時計又はGPSの時刻)を付与する。
(3)通信機能を用いて、認証機関にデータを送信する。認証データを取得しデータに付与する。(問い合わせ番号)
(4)上記(1)から(3)までのデータを、パッケージングし改竄されないように認証データをKeyに暗号化データとする。パッケージングの方法例としては、画像データに、(1)−(3)のデータを含有させる(データを織り込む)技術を適用するなどする。
(5)報告者は監査者(公官庁など)に対して、暗号化されたデータと問い合わせ番号のみ送付する。
(6)監査者は、受け取ったデータを複号化する為に認証機関に対して問い合わせ番号を送付、暗号キー(認証データ)を取得する。
(7)監査者は、取得した暗号キー(認証データ)にて暗号データを復号し、存在証明された被写体データを取得する。
【0024】
以上の形態の様に、認証機関から取得した暗号キーを元にデータを暗号化、暗号化データと問い合わせ番号を元に解読キーの別提供データに3次元計測データ・位置・時刻を付与し、データ構造の詳細・複雑化を行うシステム構築することにより上述のように記述した、発明の目的・効果を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施例による基本システム図である。
【図2】この発明の実施例による被写体の撮像・計測データの関係図である。
【図3】この発明の実施例による被写体の撮像・計測データの具体例の説明図である。
【図4】この発明の実施例による被写体の撮像・計測データの他の具体例の説明図である。
【図5】従来の技術のシステム図である。
【符号の説明】
【0026】
11 UWB端末、 12 被写体、 13 認証機関、 14 時刻装置、 15 報告者、 16 監査者、 17 画像データ、 18 3次元計測データ、 19 位置データ、 110 時刻データ、 21 位置時間証明コード、 22 GPS衛星 23 ハッシュ関数。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象である被写体の存在を証明するシステムであって、入力情報の時刻認証を可能とする時刻情報を提供する認証手段と、上記被写体の複数の計測ポイントの位置情報を計測する位置計測部、この位置情報計測時の自身の基準位置と基準時刻を外部装置から取得する基準情報取得部、上記基準位置と基準時刻とを入力情報として上記認証手段より得られた時刻情報に基づき上記基準位置と基準時刻とを暗号化する暗号化部を有する計測手段とを備えたことを特徴とする被写体存在証明サービスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−53531(P2007−53531A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236562(P2005−236562)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】