説明

被加工物の上面検出機能を有するワイヤカット放電加工機

【課題】上,下ワイヤガイドと被加工物を相対移動させてワイヤ電極と被加工物を接触させて被加工物の上下の面の位置を正確に検出する機能を備えたワイヤカット放電加工機を提供する。
【解決手段】ワイヤ電極と被加工物を接触させて、接触したときの上,下ワイヤガイドの位置を検出し記憶し(SA01)、接触後一定距離をとり(SA02)、上ワイヤガイドと被加工物を相対移動させ、ワイヤ電極と被加工物を接触させ、接触したときの上ワイヤガイドの位置を検出し記憶し(SA03)、位置Aへ戻り(SA04)、下ワイヤガイドと被加工物を相対移動させ、ワイヤ電極を被加工物に接触させ、接触したときの下ワイヤガイドの位置を検出し記憶し(SA05)、下位置Aへ戻り(SA06)、ワイヤ電極と被加工物が接触した位置の座標値を算出し、算出した座標値から被加工物の板厚を算出し、処理を終了する(SA07)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する際に被加工物の上下面の検出機能を有するワイヤカット放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤカット放電加工機では、ワイヤ電極と被加工物との極間に電圧を印加して放電を起すと同時に、ワイヤ電極と被加工物の相対位置を変化させ、被加工物を所望の形状に加工する。
【0003】
一般的に被加工物の加工結果については、寸法精度、垂直度、あるいは角度の精度が要求される。所望の加工結果を得るためには、ワイヤ電極と被加工物の相対位置を正確に求めておく必要がある。相対位置を正確に求めるためには、ワイヤ電極と被加工物の相対的な垂直位置の関係が基準となる。その相対的な垂直位置の関係を確保するという問題を解決するために、工作物取り付け台に取り付けた接触子を有する調整治具にワイヤ電極を接触させて、ワイヤ電極の垂直位置を調整する技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示される技術では、ワイヤ電極の垂直位置を調整した後、加工条件を設定する必要がある。加工条件は、ワイヤ電極の種類や線径、また被加工物の材質及び板厚により異なるのが一般的であり、ある被加工物を加工するのに適した加工条件を数値制御装置へ記憶させる。
【0005】
加工条件を数値制御装置に記憶させるのに併せて、放電個所へ加工液を案内するためのノズルと被加工物の隙間間隔を設定する必要がある。従来、前記ノズルの先端と被加工物の隙間調整を手動で行っていた。
【0006】
手動でノズル先端と被加工物の隙間の大きさを設定する作業は、指定の微小隙間になるようにZ軸(垂直軸)をワイヤ電極の走行方向へ少しずつ下げて、作業者がシックネスゲージなどの器具を用いて隙間を確認しながら徐々に調整を行うという煩雑な作業である。
【0007】
ワイヤカット放電加工機では被加工物の厚さにより加工条件が異なるため、通常、作業者は被加工物の厚さを認識している。そのため、被加工物を被加工物置き台に直接取り付けている場合では、その厚さに合うように自動でノズル高さを調整することが可能であるように考えることができる。
【0008】
特許文献2には、ノズル先端に接触子を設け、接触子と被加工物との接触を検知した状態から所定距離だけ離隔することにより、ノズルと被加工物との距離を所定の距離に保持する技術が開示されている。また、特許文献3には、ワイヤ電極の先端を被加工物に直接に接触させて被加工物の上面位置を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−71636号公報
【特許文献2】特開平7−299660号公報
【特許文献3】特開2005−111608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ワイヤカット放電加工機においては、放電により被加工物を加工すると同時に、放電で発生した被加工物の微細な粒子が加工液中に分散する。この微細な粒子がワイヤ電極の周辺に漂っていると、ワイヤ電極と微粒子間に放電が発生してしまい、形状の加工に必要なワイヤ電極と被加工物の放電が減少し、加工速度が低下するという問題が発生する。
【0011】
被加工物の微細な粒子による加工速度の低下を防止するために、ワイヤカット放電加工機において、加工経路中のワイヤ電極付近の微粒子を排除し、被加工物に効率良く放電する必要がある。
【0012】
一般的に、ワイヤ電極の直径は数百μm程度で非常に細く、放電により形成される加工溝の幅もワイヤ電極の直径より少し大きい程度の細さである。この細い加工溝から微粒子を効率良く排除するためには、噴射する水の水圧を高くする必要があることから、ノズル先端と被加工物の隙間を小さくする必要がある。
【0013】
通常、ワイヤカット放電加工機を用いて被加工物の加工を行う作業者が被加工物の厚さを認識しているとしても、一般的に用いられる被加工物の厚さは、100μm〜200μm程度の寸法誤差を含んでいる。一方、ノズル先端と被加工物の間隙調整についても、加工する条件によっては間隙を100μm〜200μmに調整するよう要求する場合がある。そのため、被加工物の厚さという情報のみでノズル隙間を自動で調整することは現実的ではない。
【0014】
特許文献2に開示される技術では、ノズル先端と被加工物の接触を検出するため、センサーやノズルを上下に駆動するための駆動装置及び接触と離隔を制御する制御装置が必要となり、ワイヤカット放電加工機が複雑化すると共にコストが高くなる問題がある。
【0015】
また、特許文献3に開示される技術では、ワイヤ電極を溶断するかカッターのような刃物で切断する必要がある。溶断した場合はワイヤ電極の先端の径は他の部分の径よりも細く鋭利なものとなり、この先端を被加工物の上面に接触させたときにはワイヤ電極の先端部が容易に変形してしまう。このため、正確に被加工物の上面の位置を特許文献3に開示される技術を用いて正確に検出することは困難である。また、ワイヤ電極を刃物を用いて切断する場合には刃物によってワイヤ電極の先端部が曲がってしまう。加えて、溶断する場合ではワイヤ電極を熱することによりワイヤ電極の真直性が向上するが、刃物で切断する場合では真直性の向上が無い。結果として、溶断した場合と同様に被加工物の上面の位置を正確に検出できないという問題がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、上,下ワイヤガイドと被加工物を相対移動させてワイヤ電極と被加工物を接触させて被加工物の上または下の面または両方の面の位置を正確に検出する機能を備えたワイヤカット放電加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の請求項1に係る発明は、被加工物置き台に載置された被加工物と上,下ノズルに内包された上下ワイヤガイドに張架されたワイヤ電極とを相対移動させる機構を有するワイヤ放電加工機において、前記ワイヤ電極と前記被加工物との接触を検出する接触検出部と、前記ワイヤ電極が水平面に対して垂直となるように前記上,下ワイヤガイドを位置決めした後に、前記上,下ワイヤガイドに張架されたワイヤ電極と被加工物を相対移動させて前記ワイヤ電極と前記被加工物との接触を検出した第1の位置において上,下ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止し、次に上,下ワイヤガイドと前記被加工物を相対移動させて前記被加工物の端面から所定距離だけ離れた第2の位置において上,下ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止し、次に下ワイヤガイドを相対移動させない状態で上ワイヤガイドと被加工物を相対移動させて前記ワイヤ電極と被加工物との接触を検知した第3の位置で上ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止させる移動制御部と、前記第1の位置、第2の位置、第3の位置で停止した時の上,下ワイヤガイドの位置を記憶する記憶部と、前記上ワイヤガイドと被加工物の相対位置が第2の位置から第3の位置へ変化した際の上ワイヤガイドの水平方向の相対距離と上,下ワイヤガイドの垂直方向の距離から第3の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度を算出するワイヤ電極傾斜角度算出部と、前記第3の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度と、第3の位置における下ワイヤガイドと前記被加工物の端面との水平方向の距離に基づいて下ワイヤガイドから被加工物上面までの距離を算出する被加工物上面位置算出部と、を有することを特徴とする被加工物の上面検出機能を有するワイヤカット放電加工機である。
【0018】
請求項2に係る発明は、前記移動制御部は、前記上,下ワイヤガイドを第2の位置に位置決めした後、上ワイヤガイドを相対移動させない状態で下ワイヤガイドを被加工物を相対移動させて前記ワイヤ電極と被加工物の接触を検知した第4の位置で下ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止し、前記記憶部は前記第4の位置における下ワイヤガイドの位置を記憶し、前記ワイヤ電極傾斜角度算出部は、前記下ワイヤガイドと被加工物の相対位置が第2の位置から第4の位置へ変化した際の水平方向の相対距離と前記上,下ワイヤガイドの垂直方向の距離から第4の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度を算出し、前記第4の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度と第4の位置における下ワイヤガイドと前記被加工物の端面からの水平方向の距離から下ワイヤガイドから被加工物の下面までの高さを求める被加工物下面位置算出部と、前記下ワイヤガイドから被加工物の上面の高さ及び前記下ワイヤガイドから被加工物の下面の高さから被加工物の板厚を算出する板厚算出部と、を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の被加工物の上面検出機能を有するワイヤカット放電加工機である。
【0019】
請求項3に係る発明は、前記上ノズルと前記被加工物の上面との距離が予め設定された距離となるように上ノズルを位置決めする上ノズル位置決め部と、を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の被加工物の上面検出機能を有するワイヤカット放電加工機である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、上,下ワイヤガイドと被加工物を相対移動させてワイヤ電極と被加工物を接触させて被加工物の上または下の面または両方の面の位置を正確に検出する機能を備えたワイヤカット放電加工機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ワイヤ放電加工機の概略構成図である。
【図2】ワイヤ電極の位置を検出する機能を有するワイヤカット放電加工機のワイヤ電極と被加工物の概略構成図及び被加工物の概略図である。
【図3】ワイヤ電極と被加工物の位置関係、および、上下のノズルがワイヤガイドを内包していることを説明する図である。
【図4】被加工物の上下面の位置を検出する前に、予めワイヤ電極を支持する上下のワイヤガイドを垂直位置に調整しておくことを説明する図である。
【図5】ワイヤ電極を被加工物に接触させることで端面の位置を検出することを説明する図である。
【図6】端面の位置を検出した後、ワイヤ電極をワーク端面の位置から所定距離だけ後退させることを説明する図である。
【図7】上ワイヤガイドを被加工物に接触するまで被加工物方向へ移動させることを説明する図である。
【図8】下ワイヤガイドを被加工物に接触するまで被加工物方向へ移動させることを説明する図である。
【図9】被加工物を被加工物固定用ジグを用いて固定した場合を説明する図である。
【図10】上ワイヤガイドを被加工物に接触するまで被加工物方向へ移動させることを説明する図である。
【図11】下ワイヤガイドを被加工物に接触するまで被加工物方向へ移動させることを説明する図である。
【図12】被加工物が被加工物置き台に対して傾いて取り付けられた場合を説明する図である。
【図13】ある傾きをもったワイヤ電極が傾斜した被加工物に接触している場合を説明する図である。
【図14】図13と異なるある傾きをもったワイヤ電極が傾斜して被加工物に接触している場合を説明する図である。
【図15】図13,図14のワイヤ電極の状態を説明する図である。
【図16】ある傾きをもったワイヤ電極が傾斜した被加工物に接触している場合を説明する図である。
【図17】傾斜している被加工物の傾き、板厚及び上面の式を説明する図である。
【図18】一度加工物の端にワイヤ電極を接触させた後に、距離d1だけ後退させることを説明する図である。
【図19】ある傾きをもったワイヤ電極が傾斜した被加工物に接触している場合を説明する図である。
【図20】図19と異なるある傾きをもったワイヤ電極が傾斜した被加工物に接触している場合を説明する図である。
【図21】図19,図20のワイヤ電極の状態を説明する図である。
【図22】図19,図20の状態の被加工物にワイヤ電極を接触させている状態を説明する図である。
【図23】傾斜している被加工物の傾き、板厚及び上面の式を説明する図である。
【図24】本発明に係る被加工物の上下面の位置および板厚を算出するアリゴリズムのフロチャートである。
【図25】被加工物の端面が傾斜している場合を説明する図である。
【図26】被加工物の加工済み個所から加工開始する場合を説明する図である。
【図27−1】被加工物の上下面検出のフロチャートを説明する図である(その1)。
【図27−2】被加工物の上下面検出のフロチャートを説明する図である(その2)。
【図28】本発明のワイヤカット放電加工機の実施形態の要部ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明に係るワイヤ電極5の位置を検出する機能を有するワイヤ放電加工機の概略構成図である。数値制御装置2は接触状態検出装置3及び被加工物置き台(図示せず)に搭載された被加工物6を数値制御装置2からの指令によってワイヤ電極5に対して移動させるサーボ駆動装置1を備えている。サーボ駆動装置1からの指令によってサーボモータ7a,7bは被加工物6が載置された被加工物置き台をワイヤ電極5に対して相対的に移動させる。接触状態検出装置3は接触状態検出子4a,4bを用いてワイヤ電極5と被加工物6とが接触したことを検出する装置である。なお、サーボ駆動装置1、数値制御装置、および接触状態検出装置3について図28を用いて後述する。
【0023】
被加工物置き台9上に載置された被加工物6と上下ノズル8a,8bに張架されたワイヤ電極5とは図2(a)に示される位置関係にある。上下ノズル8a,8bがワイヤ電極5を直接支持しているわけではなく、図3に示すように、上下ノズル8a,8bに内包されるワイヤガイド10a,10bがワイヤ電極5を支持している。なお、図2(b)に示されるように被加工物6の側面である端面を6a,上平面を6b,下平面を6cで表す。
【0024】
以下、接触状態検出装置を備えたワイヤカット放電加工機を用いて被加工物の上平面と下平面を検出する方法を説明する。
図4は被加工物の上下面の位置を検出する前に、予めワイヤ電極5を支持する上下のワイヤガイド10a,10bを垂直位置に調整しておくことを説明する図である。被加工物置き台9には被加工物6が載置されている。被加工物6の上下平面6b,6cを検出する前に、ワイヤ電極5が垂直に張架されるように予めワイヤ電極5を支持する上下のワイヤガイド10a、10bを調整する。被加工物6の端面6aとワイヤ電極5とは平行となる。ここで、下ワイヤガイド10bの位置を基準として高さ方向をZ軸と定義する。また、ワイヤカット放電加工機での平面上の軸をXY軸とする。図4は正面から見た図であるから、横方向の動きについてはXあるいはY方向の動きになる。つまり、X−Z平面、Y−Z平面が存在することになるが、本明細書では、これ以降X−Z平面を代表して記述する。
【0025】
ワイヤカット放電加工機のZ軸方向の動きについて、実際に上ワイヤガイド10aを下方向に駆動できるのは、Z1の高さまでである。また、Z軸の上方向の駆動限界の高さをZ0と定義する。下ワイヤガイド10bの支持部(図示せず)については可動する部分はなく、また、Z0は常に一定の値とする。
【0026】
なお、ワイヤ電極5と被加工物6と相対的な位置および姿勢は、被加工物6を載置する被加工物置き台9をX,Y軸方向に動かし、上ワイヤガイド10aをU軸、V軸方向に動かす組み合わせにより、変更できる。
【0027】
まず、ワイヤ電極5を被加工物6に接触させることで被加工物6の端面6aを検出する。図5はワイヤ電極を被加工物6に接触させることで端面6aの位置を検出することを説明する図である。図5に示されるように、上ワイヤガイド10aと下ワイヤガイド10bを、垂直を保ったまま被加工物6に接近させる。そして、ワイヤ電極5が被加工物6に接触したときの上,下ワイヤガイド10a,10bの位置を検出し数値制御装置2に備わった記憶部に記憶する。なお、ワイヤ電極5と被加工物6との接触は、ワイヤカット放電加工機の機械構成によって、ワイヤ電極5を被加工物6に近づけるようにしてもよいし、被加工物6をワイヤ電極5に近づけることもできる。
【0028】
次に、ワイヤ電極5を、図6のように端面6aの位置を検出した後に、端面6aの位置(符号100)から一定距離d1だけ後退した位置(符号110)に移動する。ワイヤカット放電加工機の機械構成に応じて、被加工物6の位置を駆動装置によって移動させてもよいし、上,下ワイヤガイド10a,10の位置を移動させてもよい。
【0029】
その後、図7に示されるように、上ワイヤガイド10aを被加工物6に接触するまで被加工物6の方向へ移動させ、被加工物6と接触したら上ワイヤガイド10aの移動を停止する(符号120)。符号100の破線とワイヤ電極5とのなす角度Aは数1式より求められる。
【0030】
【数1】

【0031】
下ワイヤガイド10bと被加工物6の距離d1と角度Aから、Z2が数2式により求められる。Z2は下ワイヤガイド10bからの被加工物6の端面6aの上側の縁部の位置、換言すれば、被加工物6の上平面6bの縁部のZ軸方向の距離を表す。したがって、座標(1)を求めることができる。何となれば、距離a1、距離b1、距離d1は既知であるので、d1/Z2=b1/a1の関係が成り立つからである。なお、図8の座標(2)の値も同様にして算出することができる。
【0032】
【数2】

【0033】
図7に示される符号100、符号110、符号120の位置の値は、本願の請求項1における第1の位置、第2の位置、第3の位置に対応する値であって、ワイヤカット放電加工機を制御する数値制御装置2内の記憶領域に記憶される。同様に、後述する、図8,10,11,12,13,14,16,18,19に記載される符号130,符号140,符号150,符号200,符号210,符号220,符号230,符号240,符号250,符号300,符号310,符号320,符号330,符号340の位置の値も同様に数値制御装置2内の記憶領域に記憶される。
【0034】
次に、被加工物6の下平面6cの位置を検出する方法を説明する。
まず、上ワイヤガイド10aを初期位置である被加工物6の端面6aの位置(符号100)から一定距離d1離れた位置(符号110)まで後退させる。この移動によって図6に示された状態になる。
【0035】
そして、図8に示されるように下ワイヤガイド10bをワイヤ電極5が被加工物6に接触するまで被加工物6の方向へ移動させ、接触したときの下ワイヤガイド10bの位置(符号130)を検出する。
【0036】
符号130の破線とワイヤ電極5とのなす角度Bについては数3式により求められる。
【0037】
【数3】

【0038】
また、d2はd2=b2−d1で求められるので、下ワイヤガイド10bから被加工物6の下平面6cまでの距離Z3は数4式により求められる。
【0039】
【数4】

【0040】
これにより、被加工物6の厚さt0が数5式により求められる。
【0041】
【数5】

【0042】
上述した例では、被加工物6を被加工物置き台9に直接固定した場合について説明した。次に、被加工物固定用ジグ90を用いて被加工物6を被加工物置き台9に固定した場合を考える。
図9は被加工物6を被加工物置き台9上に被加工物固定用ジグ90を用いて固定した場合を説明する図である。なお、ワイヤ電極5と被加工物6の端面6aとの位置関係は図4の説明と同様である。
図10は上ワイヤガイド10aを被加工物6に接触するまで被加工物方向へ移動させることを説明する図である。上,下ワイヤガイド10a,10bが被加工物6の端面6aから距離d1離れた位置にある状態から、上ワイヤガイド10aを被加工物6に接触するまで移動させる(符号140)。符号110の破線とワイヤ電極5とのなす角度Cは数6式により求められる。
【0043】
【数6】

【0044】
距離d1と角度CからZ4の値が数7式より求められる。Z4は図示されるように、下ワイヤガイド10bの位置から被加工物6の上平面6bの位置までのZ軸方向の距離を表す。
【0045】
【数7】

【0046】
次に、上ワイヤガイド10aのみを動かし初期位置(符号110)に戻す。戻したときのワイヤ電極5と被加工物6の端面6aとの位置関係は図6と同様である。
【0047】
図11は下ワイヤガイド10bを被加工物6に接触するまで被加工物方向へ移動させることを説明する図である。符号150はワイヤ電極5が被加工物6に接触したときの位置を表す。符号150の破線とワイヤ電極5とのなす角度Dは数8式より求められる。
【0048】
【数8】

【0049】
距離d3(=(b4−d1))と角度DからZ5が数9式より求められる。
【0050】
【数9】

【0051】
5は被加工物6の下平面6cのZ軸座標と考えることができる。これにより、被加工物6の厚さt1が数10式より求められる。
【0052】
【数10】

【0053】
4(図10参照)により被加工物6の上面6bの高さが分るので、その高さにノズル8aの先端を人手によらず自動調整で合わせることが可能となる。また、被加工物6の厚さ、即ち板厚を求めることができることから、求められた板厚から加工条件を自動的に決定できる。また、加工条件が既に設定されているときには、既に設定されている被加工物6の板厚が正しいかどうか判定し、間違っている場合には求められた被加工物6の板厚に対応した加工条件に設定しなおすことができる。
【0054】
被加工物6はその下平面6cを被加工物置き台9の載置面に対して平行に載置されるのが理想的であるが、何らかの要因で水平に取り付けられていないことがある。
図12は被加工物6が被加工物置き台9に対して傾いて取り付けられた場合を説明する図である。図12や後述する図18に示される状態で被加工物6が被加工物置き台9に対して水平に取り付けられていない場合、上述した方法により算出した被加工物6の板厚は誤差を含んだものとなる。誤差を含んだ被加工物6の板厚を基準として上下ノズル8a,8bの高さ調整を行うと、上下ノズル8a,8bが被加工物6に衝突し上下ノズル8a,8bが破損したり、あるいは、上下ノズル8a,8bを被加工物6の表面に十分に接近させない状態で放電加工を実行してしまい、「発明が解決しようとする課題」で述べたように、問題である。
【0055】
ここでは、被加工物6が被加工物置き台9の載置面に対して水平に取り付けられていない場合についての上下ノズル8a,8bの自動での調整方法について説明する。
図12に示されるように被加工物6が被加工物置き台9に対して傾いて取り付けられている場合について説明する。図12に示される被加工物6が傾いて被加工物置き台9に取り付けられている状態を以降,「傾き状態1」と称する。傾き状態1は、ワイヤ電極5に対して被加工物6の端面6aの上側が離れる方向に傾いている状態である。
【0056】
図13はワイヤ電極5がある傾きをもって傾斜して被加工物6に接触している場合を説明する図である。
まず、図5と同様にワイヤ電極5を被加工物6に接触させて端面6aの位置(符号200)を検出し、その後、図6と同様に、距離d1だけ上下ワイヤガイド10a,10bを被加工物6の端面6aから後退させる(符号210)。
【0057】
続いて、図13に示されるように図上ワイヤガイド10aを被加工物6方向に移動させて、被加工物6とワイヤ電極5とを接触させる(符号220)。符号200の破線とワイヤ電極5とのなす角度Eについては、数11式より求められる。
【0058】
【数11】

【0059】
距離d1と角度EからZ7が求められる。したがって、座標(3)の値を求めることができる。
【0060】
【数12】

【0061】
図13からも分るように、このZ7は、被加工物6の正しい上面6bのZ軸方向の位置ではなく、被加工物6の上平面6bを誤検出した値である。
【0062】
図13の状態に続いて図14に示されるように、上下ワイヤガイド10a,10bを、距離d1よりも小さい距離d5の位置(符号230)まで移動させる。次に、上ワイヤガイド10aをワイヤ電極5を被加工物6に接触する位置(符号240)まで移動させる。
角度Fは、符号200の破線とワイヤ電極5とのなす角度である。角度Fについては、数13式より求められる。図14はワイヤ電極が図13と異なるある傾きをもって傾斜して被加工物6に接触している場合を説明する図である。なお、d1≠d5であればよいので、d5はd1より小さいということに限定されない。
【0063】
【数13】

【0064】
距離d5(=(b6−d5))と角度Fから、Z8が数14式より求められる。したがって、座標(4)の値を求めることができる。
【0065】
【数14】

【0066】
8についても誤検出した値であるが、上述のとおり上,下ワイヤガイド10a,10bを動かして測定した場合、Z7>Z8という関係が成り立つ。これにより、被加工物6が被加工物置き台9に対して図12に示されるように傾いていることが分かる(傾き状態1)。本明細書においては、被加工物6が図12のように傾いている前提で話しを進めてきたが、実際の加工に際しては傾いているかどうかの判断は容易ではない。仮に、Z7=Z8の場合には、被加工物6の端面6aが垂直な場合か後述する図18のように傾いている場合である。なお、被加工物6の端面6aは上平面6b,下平面6cに対して垂直としている。
【0067】
ここで、仮に被加工物6が被加工物置き台9に対して水平に取り付けられた場合の垂直方向の線と下ワイヤガイド10bの水平方向の線を結んだ点をP1とする。このP1を原点として、図13及び図14に示されるワイヤ電極5の状態を表したものが図15である。直線L1が図13のワイヤ電極5の状態を表す。直線L2が図14のワイヤ電極5の状態を表す。ここで、Z7及びZ8はそれぞれのグラフのZ軸上の切片となる。
【0068】
直線L1は数15式で表すことができる。
【0069】
【数15】

【0070】
直線L2は数16式で表すことができる。
【0071】
【数16】

【0072】
直線L1と直線L2の交点をP2(座標(8))とし、交点P2のX座標,Z座標をそれぞれX20、Z20とする。
【0073】
次に、被加工物6の下平面6cの位置を求める方法を図16を用いて説明する。まず、上,下ワイヤガイド10a,10bを初期位置(符号210)に戻す。なお、初期位置としては、破線200の位置から距離d1に限定されない。次に、図16に示されるように、下ワイヤガイド10bを移動させてワイヤ電極5を被加工物6に接触させる(符号250)。破線250とワイヤ電極5とのなす角度Gは数17式により求められる。
【0074】
【数17】

【0075】
このときの距離d7(=(b7−d1))と角度Gを用いてZ9が数18式により求められる。したがって、座標(9)の値を求めることができる。
【0076】
【数18】

【0077】
なお、段落「0055」において、“被加工物6が被加工物置き台9の載置面に対して水平に取付けられていない場合”と予め限定しているが、実際の加工において、微小な傾きを事前に判定することは難しい。
そこで、図14及び図15で行った測定と同様に、図16で行った測定からd1の距離をd5に変更して同様の測定を行う。そこで求められる被加工物6の下面の高さをZ9’とする。図12のように被加工物6が傾いている場合では、Z9=Z9’となる。
ここで、Z7≠Z8及びZ9=Z9’という関係から被加工物6が「傾き状態1」であることが判断できる。
上述の結果を踏まえて、図17に示されるように、Z軸上のZ9とP2の距離が被加工物6の板厚t2として算出される。併せて、被加工物6が垂直方向から角度θ1だけ傾いていることも分かる。θ1は数19式により求められる。
【0078】
【数19】

【0079】
次に、被加工物6の傾きが傾き状態2の場合について説明する。
【0080】
図18は一度,ワイヤ電極5を被加工物6に接触させた後に、距離d1だけ後退させることを説明する図である。図18に示される被加工物6が傾いて被加工物置き台9に取り付けられている状態を以降,「傾き状態2」と称する。傾き状態2は、ワイヤ電極5に対して被加工物6の端面6aの下側が離れる方向に傾いている状態である。
【0081】
図18のように一度,ワイヤ電極5を被加工物6に接触させ接触した位置(符号300)を検出した後に、距離d1だけ後退させる(符号310)。続いて、図19のように下ワイヤガイド10bをワイヤ電極5が被加工物6に接触するまで移動させる(符号320)。破線310とワイヤ電極5とのなす角度H(図19参照)は数20式により求められる。距離d8=距離b8−距離d1である。
【0082】
【数20】

【0083】
ここで、角度Hと距離d8からZ10が求められる。したがって、座標(5)の値を求めることができる。
【0084】
【数21】

【0085】
続いて、図20のように上下ワイヤガイド10a,10bと被加工物6の関係を距離d1よりも近い距離d5まで移動させた後に下ワイヤガイド10bを移動させ、ワイヤ電極5と被加工物6を接触させる(符号340)。符号330の破線とワイヤ電極5とのなす角度Iについては、数22式により求められる。距離d9=距離b9−距離d5である。なお、d1≠d5であればよいので、d5はd1より小さいということに限定されない。
【0086】
【数22】

【0087】
ここで、角度Iと距離d9からZ11が数23式により求められる。したがって、座標(6)の値を求めることができる。
【0088】
【数23】

【0089】
これらZ10及びZ11についてもZ7,Z8と同様、被加工物6の板厚t3を誤検出した結果である。
【0090】
ここで、仮に被加工物6が被加工物置き台9の載置面に対して水平に取り付けられていた場合の垂直方向の直線と下ワイヤガイド10bの水平方向の直線を結んだ点をP3とする。この交点P3を原点として、図19及び図20のワイヤ電極5の状態を表したものが図21である。直線L3が図19のワイヤ電極5の状態を表す。直線L4が図20のワイヤ電極5の状態を表す。ここで、Z10及びZ11はそれぞれのグラフのZ軸上の切片となる。
直線L3は数24式のように表すことができる。
【0091】
【数24】

【0092】
直線L4は数25式のように表すことができる。
【0093】
【数25】

【0094】
この直線L1,直線L2の交点をP4(座標(7))とし、交点P4のX座標,Z座標をそれぞれX21,Z21とする。
【0095】
まず、上,下ワイヤガイド10a,10bを初期位置(符号300)に戻す。
続いて、図22に示されるように、上ワイヤガイド10aをワイヤ電極5が被加工物6に接触するまで移動させる(符号350)。符号350の破線とワイヤ電極5とのなす角度Jについては、数26式により求められる。
【0096】
【数26】

【0097】
このときの距離d10と角度Jを用いて数27式によりZ12が求められる。従って、座標(3)(=座標(4))が求められる。ここで、図22において座標(3)(=座標(4))となるのは、図13と図14に示されるように、被加工物6の上平面側の端部を測定するに対応する。
【0098】
【数27】

【0099】
ここで、図23に示されるように、Z軸上のZ12とP4(座標(7))の距離が、被加工物6の板厚t3となる。併せて、被加工物6が垂直方向から角度θ2だけ傾いていることも分かる。θ2は数28式により求められる。
【0100】
【数28】

【0101】
以上のように被加工物6の傾きを求めることができれば、この傾きに応じて被加工物6の上面とワイヤ電極5とが垂直になるように上下ワイヤガイド10a,10bを移動させることができる。
また、傾斜している被加工物6の上面6aは数29式により表すことができる。
【0102】
【数29】

【0103】
ここで、被加工物6が−X方向にどれだけの長さがあるか不明であるが、図23のように測定地点のX座標を0として、ワイヤカット放電加工機の駆動限界を代入して計算することにより、仮に被加工物6が駆動限界まであった場合の高さを推定することができる。
【0104】
上記のとおり求めた傾斜している被加工物6の上面の高い位置に合わせて、上ノズル8aのノズル先端位置を位置決めすることにより、被加工物6と上ノズル8aの先端との接触を回避することができる。また、図17のように傾いて取り付けられた被加工物6の上面についても、図23の場合と同様にして、数30式により求められる。
【0105】
【数30】

【0106】
この数30式についても図23と同様に、測定地点のX座標を0として、ワイヤカット放電加工機の駆動限界を代入して計算することにより、仮に被加工物が駆動限界まであった場合の高さを推定することができ、被加工物6と上ノズル8aの先端との接触を回避することができる。
【0107】
図24は本発明に係る被加工物6の上下面6b,6cの位置および板厚を算出するアリゴリズムのフロチャートである。なお、ワイヤ電極5はワイヤカット放電加工機が備えている垂直調整機能を用い、被加工物置き台9の被加工物6を載置する平面に対して垂直に合わされているものとする。前記垂直調整機能は周知の技術事項である(特許文献1参照)。
以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSA01]上,下ワイヤガイドを移動させ、ワイヤ電極を被加工物へ接触させて、接触したときの上,下ワイヤガイドの位置を検出し記憶する。
●[ステップSA02]接触後、一定距離(d1)後退した位置Aへ上,下ワイヤガイドを移動する。
●[ステップSA03]上ワイヤガイドのみ動かし、ワイヤ電極を被加工物へ接触させ、接触したときの上ワイヤガイドの位置を検出し記憶する。
●[ステップSA04]上ワイヤガイドのみを動かし、位置Aへ戻る。
●[ステップSA05]下ワイヤガイドのみを動かし、ワイヤ電極を被加工物に接触させ、接触したときの下ワイヤガイドの位置を検出し記憶する。
●[ステップSA06]下ワイヤガイドのみを動かし、位置Aへ戻る。
●[ステップSA07]ワイヤ電極が被加工物に接触した位置の座標値を算出し、算出した座標値から被加工物の板厚を算出し、処理を終了する。
【0108】
上記フロチャートを補足して説明すると、ステップSA07は、本願の請求項1または2に記載の「ワイヤ電極傾斜角度算出部、被加工物上面位置算出部、被加工物下面位置算出部、板厚算出部」に対応する。このステップでは、数1式〜数24式により、ワイヤ電極の傾斜角度、被加工物上面位置、被加工物下面位置、被加工物の板厚を求める計算を行う。
【0109】
上述の説明では、被加工物6の端面が垂直であるとして説明した。実際の被加工物6は端面もいくらかの誤差を有しており、完全に垂直ではない。一般的に、ワイヤカット放電加工機を用いて加工する被加工物6の厚さは、5mm程度の薄いものから300mmあるいはそれ以上の厚さまで存在する。
【0110】
ここで、図25のように厚さt4の被加工物6が上下面でd11だけ誤差を有しているとする。この場合、被加工物の斜面の長さは数31により求められる。
【0111】
【数31】

【0112】
これまで述べた方法では、この斜面の長さを被加工物の板厚と誤認識してしまう。ここで、t4=10mm、d11=0.3mmとして計算すると、斜面の長さは約10.0005mmとなる。誤差は5μmとなる。加工条件の設定及びノズル隙間の調整を行う上で、この5μmの誤差は無視できる大きさで問題にならない。
【0113】
また、別の例として、t4=50mm、d11=0.3mmの場合を計算すると、斜面の長さは約50.001mmとなる。誤差は1μmとなり、これについても問題にならない。
【0114】
また、本発明の方法は、図26に示すように、被加工物6の端面からの加工のみではなく、被加工物6の加工済み箇所からの加工開始についても適用できる。この場合では、上下面間の厚みの誤差は被加工物の端面より小さいので、この場合についても無視できる程度の誤差になる。
【0115】
よって、図12及び図18のように被加工物6が傾いている場合についての本発明の方法においては、実際の被加工物の端面の傾き誤差の寄与分は無視できる程度である。
【0116】
図27は被加工物の上下面検出のフロチャートを説明する図である。なお、ワイヤ電極5はワイヤカット放電加工機が備えている垂直調整機能を用い、被加工物置き台9の被加工物6を載置する平面に対して垂直に合わされているものとする。前記垂直調整機能は周知の技術事項である。
【0117】
以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSB01]上,下ワイヤガイドを移動させ、ワイヤ電極を被加工物へ接触させ、ワイヤ電極が被加工物へ接触したワイヤガイドの位置を検出し記憶する。
●[ステップSB02]接触後、一定距離(d1)後退した位置Aへ移動する。
●[ステップSB03]上ワイヤガイドのみを動かし、ワイヤ電極を被加工物と接触させ、ワイヤ電極が接触したときの上ワイヤガイドの位置を検出し記憶し、ワイヤ電極が接触した被加工物の座標(3)の値を計算する。
●[ステップSB04]下ワイヤガイドを被加工物の端面からの距離d5の位置Bへ移動する。
●[ステップSB05]上ワイヤガイドのみを動かし、ワイヤ電極を被加工物に接触させ、ワイヤ電極が被加工物へ接触したワイヤガイドの位置を検出し記憶し、ワイヤ電極が接触した被加工物の座標(4)の値を計算する。
●[ステップSB06]座標(3)の値と座標(4)の値とは同じか否か判断し、両者が同じ値の場合にはステップSB07へ移行し、同じ値ではない場合にはステップSB15へ移行する。
●[ステップSB07]上,下ワイヤガイドを位置Aへ移動する。
●[ステップSB08]下ワイヤガイドのみを動かし、ワイヤ電極を被加工物と接触させ、ワイヤ電極が接触したときの下ワイヤガイドの位置を検出し記憶し、ワイヤ電極が接触した被加工物の座標(5)の値を計算する。
●[ステップSB09]上ワイヤガイドを被加工物の端面から距離d5の位置Bへ移動する。
●[ステップSB10]下ワイヤガイドのみ動かし、ワイヤ電極を被加工物に接触へさせ、ワイヤ電極が接触したときの下ワイヤガイドの位置を検出し記憶し、ワイヤ電極が接触した被加工物の座標(6)の値を計算する。
●[ステップSB11]座標(5)の値と座標(6)の値とは同じか否か判断し、両者が同じ値の場合にはステップSB12へ移行し、同じ値でない場合にはステップSB13へ移行する。
●[ステップSB12]座標(3)=座標(4)及び座標(5)=座標(6)から、被加工物が水平に取り付けられていると判断し、板厚を計算する(被加工物の傾きはなし)。
●[ステップSB13]座標(5)及び座標(6)の位置におけるワイヤ電極の位置を式として表し、その交点の座標(7)の値を求める。
●[ステップSB14]被加工物の板厚および傾き角度を計算する。
●[ステップSB15]座標(3)及び座標(4)の位置におけるワイヤ電極の位置を式として表し、その交点の座標(8)の値を計算する。
●[ステップSB16]上,下ワイヤガイドを位置Aへ移動する。
●[ステップSB17]下ワイヤガイドのみ動かし、ワイヤ電極を被加工物へ接触させ、そのときの座標(9)の値を計算する。
●[ステップSB18]被加工物の板厚および傾き角度を計算し、処理を終了する。
【0118】
図28は、本発明のワイヤカット放電加工機の実施形態の要部ブロック図である。プロセッサ(CPU)11は、数値制御装置2を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス20を介してROM12に格納されたシステムプログラムを読み出し、このシステムプログラムに従って、数値制御装置2を全体的に制御する。RAM13は一時的な計算データ、表示データなどが格納される。SRAM14は数値制御装置2の電源がオフせれても記憶状態が保存される不揮発性メモリとして構成されている。
【0119】
インタフェース15は外部機器用のインタフェースであり、ハードディスクなどの外部機器が接続される。外部機器からは加工プログラムが読み込まれ、また、数値制御装置2内で編集された加工プログラムを外部機器に出力することができる。
【0120】
PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)16は、数値制御装置2に内蔵されたシーケンスプログラムでワイヤカット放電加工機を制御する。すなわち、加工プログラムで指令された機能に従って、これらシーケンスプログラムでワイヤカット放電加工機側で必要な信号に変換し、I/Oユニット17からワイヤカット放電加工機側に出力する。特に、本発明に関連して、I/Oユニット17には、ワイヤ電極5と被加工物6との接触を検知する接触状態検知装置3が接続されている。
【0121】
各軸の現在位置、アラーム、パラメータ、画像データ等の画像信号は表示装置・MDIユニット70の表示装置に送られ、表示装置に表示される。インタフェース18は表示装置/MDIユニット70のキーボードからのデータを受けてCPU11に渡す。インタフェース19は放電加工電源71に接続され、放電加工電源71からの速度指令を受ける。放電加工電源71はワイヤ電極5と被加工物6との放電状態を監視し、前進・後退を含む速度指令をCPU11に通知する。
【0122】
軸制御回路30〜33はCPU11からの各軸の移動指令を受けて、各軸の指令をサーボアンプ40〜43に出力する。サーボアンプ40〜43はこの指令を受けて各軸のサーボモータ60〜63を駆動する。X,Y,および,U,V各軸のサーボモータ60〜63には現在速度検出用の速度検出装置(図示せず)が内蔵されており、該速度検出装置からのフィードバック信号が軸制御回路30〜33にフィードバックされる。
【0123】
軸制御回路30〜33に内蔵されたサーボ制御CPUの各々は、これらのフィードバック信号と前述の移動指令とに基づいて位置ループ、速度ループ、電流ループの各処理を行い、最終的な駆動制御のためのトルク指令を各軸毎に求めて各軸のサーボモータ60〜63の位置,速度を制御する。
【0124】
X,Y軸のサーボモータ60,61は、被加工物6を載置する被加工物置き台9を2次元平面内で移動させ、U軸,V軸のサーボモータは上ワイヤガイド10aを移動させる。
【符号の説明】
【0125】
1 サーボ駆動装置
2 数値制御装置
3 接触状態検出装置
4a,4b 接触状態検出子
5 ワイヤ電極
6 被加工物
7a,7b サーボモータ
8a 上ノズル
8b 下ノズル
9 被加工物置き台
10a 上ワイヤガイド
10b 下ワイヤガイド

90 被加工物固定用ジグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物置き台に載置された被加工物と上,下ノズルに内包された上下ワイヤガイドに張架されたワイヤ電極とを相対移動させる機構を有するワイヤ放電加工機において、
前記ワイヤ電極と前記被加工物との接触を検出する接触検出部と、
前記ワイヤ電極が水平面に対して垂直となるように前記上,下ワイヤガイドを位置決めした後に、前記上,下ワイヤガイドに張架されたワイヤ電極と被加工物を相対移動させて前記ワイヤ電極と前記被加工物との接触を検出した第1の位置において上,下ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止し、次に上,下ワイヤガイドと前記被加工物を相対移動させて前記被加工物の端面から所定距離だけ離れた第2の位置において上,下ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止し、次に下ワイヤガイドを相対移動させない状態で上ワイヤガイドと被加工物を相対移動させて前記ワイヤ電極と被加工物との接触を検知した第3の位置で上ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止させる移動制御部と、
前記第1の位置、第2の位置、第3の位置で停止した時の上,下ワイヤガイドの位置を記憶する記憶部と、
前記上ワイヤガイドと被加工物の相対位置が第2の位置から第3の位置へ変化した際の上ワイヤガイドの水平方向の相対距離と上,下ワイヤガイドの垂直方向の距離から第3の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度を算出するワイヤ電極傾斜角度算出部と、
前記第3の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度と、第3の位置における下ワイヤガイドと前記被加工物の端面との水平方向の距離に基づいて下ワイヤガイドから被加工物上面までの距離を算出する被加工物上面位置算出部と、
を有することを特徴とする被加工物の上面検出機能を有するワイヤカット放電加工機。
【請求項2】
前記移動制御部は、前記上,下ワイヤガイドを第2の位置に位置決めした後、上ワイヤガイドを相対移動させない状態で下ワイヤガイドを被加工物を相対移動させて前記ワイヤ電極と被加工物の接触を検知した第4の位置で下ワイヤガイドと被加工物の相対移動を停止し、
前記記憶部は前記第4の位置における下ワイヤガイドの位置を記憶し、
前記ワイヤ電極傾斜角度算出部は、前記下ワイヤガイドと被加工物の相対位置が第2の位置から第4の位置へ変化した際の水平方向の相対距離と前記上,下ワイヤガイドの垂直方向の距離から第4の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度を算出し、
前記第4の位置におけるワイヤ電極の傾斜角度と第4の位置における下ワイヤガイドと前記被加工物の端面からの水平方向の距離から下ワイヤガイドから被加工物の下面までの高さを求める被加工物下面位置算出部と、
前記下ワイヤガイドから被加工物の上面の高さ及び前記下ワイヤガイドから被加工物の下面の高さから被加工物の板厚を算出する板厚算出部と、
を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載の被加工物の上面検出機能を有するワイヤカット放電加工機。
【請求項3】
前記上ノズルと前記被加工物の上面との距離が予め設定された距離となるように上ノズルを位置決めする上ノズル位置決め部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の上面検出機能を有するワイヤカット放電加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27−1】
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【図27−2】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−179705(P2012−179705A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46047(P2011−46047)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【特許番号】特許第4938137号(P4938137)
【特許公報発行日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】