説明

被加工物の加工基準位置測定装置および加工・測定システム

【課題】工作機械で加工するための被加工物の加工基準位置を工作機械外部において精度よく測定でき、この被加工物の測定、および工作機械による加工を含めた被加工物の一連の加工・測定の作業性に優れる。
【解決手段】工作機械で被加工物を加工するときに、該被加工物を加工位置に固定して工作機械へ供給するパレットチェンジャーに付設されて、工作機械における被加工物の加工基準位置を加工前に測定する外段取りによる加工基準位置測定装置1であって、該加工基準位置測定装置1は、パレットチェンジャーに搭載されているパレットに連結固定できる支持部9と、この支持部9上に設けられる可動部2とを備え、可動部2は、加工前の被加工物の表面に接触して該被加工物の加工基準位置を測定する測定子3を有し、該測定子3は、被加工物が加工される工作機械軸に対応して直行3軸のX、Y、Z軸上を移動するとともに上記工作機械に対応した座標数値で測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で加工するための被加工物の加工基準位置を工作機械外部において測定するための被加工物の加工基準位置測定装置およびこの測定装置を用いた加工・測定システムに関し、特に加工前の測定に用いられる外段取りによる被加工物の加工基準位置測定装置および加工・測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の被加工物を収容できるパレットチェンジャーなどを併設した工作機械で加工を行なう場合、パレットチェンジャーで被加工物を工作機械まで移動させ、工作機械の内部に加工前の被加工物を固定した後、被加工物の測定を行なって加工基準位置を決定し、加工を行なっていた。
しかしながら、上記の方法では、パレットチェンジャーに複数個の被加工物を搭載していても、1台の工作機械において1回の加工毎に被加工物の測定を行なわなければならず、作業効率が悪いという問題があった。
特に多品種少量生産または個別生産の場合、パレットチェンジャーに搭載できる被加工物が複数個あっても、被加工物毎に加工基準位置を測定しなければならなかった。
また、加工途中で再度加工基準位置の確認を行なう場合、切削により加熱された被加工物が冷めるまで作業を中断しなければならず、パレットチェンジャーに待機させた他の被加工物の加工まで遅延させるという問題があった。
【0003】
従来、工作機械の近隣または周辺に配設され、加工後の被加工物の寸法や形状を測定する装置あるいはこの装置が付設された工作機械が開示されている(特許文献1〜3)。
また、ワーク位置決め装置のワーク支持手段とワーク検査装置のワーク支持手段とを共通にすることで、加工後すぐに検査ができるワークの検査装置が知られている(特許文献4)。
しかしながら、加工前の被加工物には加工で取り除かれる取代があり、被加工物毎にこの取代分が異なるため、取代を考慮した測定が必要であり手間が掛かっていた。また、工作機械外部で測定を行なうと、実際に工作機械で加工する固定状態にずれを生じたり、座標軸や座標数値が測定装置と工作機械の間で異なるなどして、工作機械内部で行なう測定と同一の精度で測定を行なうことが困難であった。
【特許文献1】特開平11−325869号公報
【特許文献2】特開2002−18667号公報
【特許文献3】特開2002−39743号公報
【特許文献4】特開平09−123039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、工作機械で加工するための被加工物の加工基準位置を工作機械外部において精度よく測定でき、この被加工物の測定、および工作機械による加工を含めた被加工物の一連の加工・測定の作業性に優れる被加工物の加工基準位置測定装置およびこの測定装置を用いた加工・測定システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の加工基準位置測定装置は、工作機械で被加工物を加工するときに、該被加工物を加工位置に固定して工作機械へ供給するパレットチェンジャーに付設されて、工作機械における被加工物の加工基準位置を加工前に測定する外段取りによる加工基準位置測定装置であって、該加工基準位置測定装置は、上記パレットチェンジャーに搭載されているパレットに連結固定できる支持部と、この支持部上に設けられる可動部とを備え、上記可動部は、加工前の被加工物の表面に接触して該被加工物の加工基準位置を測定する測定子を有し、該測定子は、被加工物が加工される工作機械軸に対応して直行3軸のX、Y、Z軸上を移動するとともに上記工作機械に対応した座標数値で測定することを特徴とする。
【0006】
上記加工基準位置測定装置を構成する支持部は、上記パレットの被加工物固定面に対して水平方向に移動可能なフローティング機構を有し、工作機械に固定するときの基準面となるパレットの基準面に加工基準位置測定装置の基準面を衝合させて固定することを特徴とする。
また、上記加工基準位置測定装置を構成する測定子は、上記X、Y、Z各軸での移動が微小移動時には減速ユニットにより、長距離移動時には直動ユニットによりそれぞれなされ、該両機構の切り替え手段をX、Y、Z各軸に有し、被加工物への接触の衝撃を少なくすることができることを特徴とする。
上記パレットチェンジャーは複数のパレットを搭載することができ、本発明の被加工物の加工基準位置測定装置は、工作機械で被加工物を加工する工程と並行して、他の被加工物の加工基準位置を測定できることを特徴とする。
【0007】
本発明の被加工物の加工・測定システムは、工作機械で被加工物を加工する加工手段と、該被加工物を加工位置に固定して工作機械へ供給するパレットチェンジャーと、該パレットチェンジャーに付設されて、工作機械における上記被加工物の加工基準位置を加工前に測定する外段取りによる測定手段と、被加工物の加工前に外段取りにより測定した加工基準位置の情報を加工用プログラムに変換演算して上記加工手段に提供する制御手段とを備えてなる被加工物の加工・測定システムであって、測定手段が上記加工基準位置測定装置を用いるものであり、上記加工手段により複数の被加工物の内のひとつを加工するのと同時に、パレットチェンジャーで加工待機中の他の被加工物の加工基準位置を上記測定手段により測定することができることを特徴とする。
本発明の測定装置で測定する加工基準位置とは、加工前の被加工物において、加工で取り除かれる取代も含めた被加工物表面上の任意の位置である。加工用プログラム毎に被加工物表面上の任意位置を測定して得た位置情報に基づき、制御手段において実際の加工により得られる被加工物の寸法や形状データを、加工用プログラムに変換演算して加工機械に送り、被加工物の加工を行なう。
また、上記測定手段は、被加工物の加工途中または加工完了後における加工基準位置の確認測定ならびに加工部位および指示された部位の寸法測定に用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加工基準位置測定装置は、パレットチェンジャーに搭載されているパレットに連結固定できる支持部と、この支持部上に設けられる可動部とを備え、上記可動部が加工前の被加工物の表面に接触して該被加工物の加工基準位置を測定する測定子を有し、該測定子は被加工物が加工される工作機械軸に対応して直行3軸のX、Y、Z軸上を移動するとともに上記工作機械に対応した座標数値で測定するので、被加工物の測定を工作機械の外部で行なうことができ、工作機械に被加工物を固定してから加工基準位置を設定する必要がないため、加工作業の時間短縮が可能となる。
【0009】
また、加工基準位置測定装置を構成する支持部が上記パレットの被加工物固定面に対して水平方向に移動可能なフローティング機構を有し、工作機械に固定するときの基準面となるパレットの基準面に加工基準位置測定装置の基準面を衝合させて固定するので、測定子が被加工物が加工される工作機械軸に対応して直行3軸のX、Y、Z軸上を移動するとともに上記工作機械に対応した座標数値で測定でき、被加工物の測定を工作機械内部で行なう測定と同一の精度で行なうことができる。
【0010】
また、測定子は、X、Y、Z各軸での移動が微小移動時には減速ユニットにより、長距離移動時には直動ユニットによりそれぞれなされ、該両機構の切り替え手段をX、Y、Z各軸に有し、被加工物への接触の衝撃を少なくすることができるので、意図しない動作による測定子の破損を防ぎ、測定装置の長寿命化が図れる。また、切り替え手段により、精度よく測定が行なえるとともに、作業効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の被加工物の加工・測定システムは、本発明の加工基準位置測定装置を用いることで、複数の被加工物の内のひとつを加工するのと同時に、パレットチェンジャーで加工待機中の他の被加工物の加工基準位置を上記測定手段により測定することができるので、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の被加工物の加工基準位置測定装置(以下、「測定装置」ともいう)の一例について、図に基づき説明する。図1は、本発明の測定装置の実施形態の一例を示す斜視図であり、特に本発明の測定装置に、パレットチェンジャーに搭載されている被加工物が固定されたパレットを連結固定した場合を表す。また、図2は本発明の測定装置の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の加工基準位置測定装置1は、工作機械で被加工物13を加工するときに、この被加工物13をパレット11上の加工位置に固定して工作機械に供給するパレットチェンジャーに付設されて、工作機械における被加工物の加工基準位置を加工前に測定する外段取りで用いられるための装置である。
測定装置1における測定は、(1)パレットチェンジャーに搭載されたパレット11を連結固定し、(2)このパレット11に固定された被加工物13に、測定装置1に備えられた、X軸、Y軸、およびZ軸方向に移動可能であり接触を検出するタッチセンサなどの測定子3を接近させ、(3)さらにこの測定子3の先端部を被加工物13の表面に接触させて検出した接触位置に基づき、被加工物13の加工基準位置を測定する。
【0013】
本発明の測定装置1は、図2に示すように、パレットチェンジャーに搭載されているパレット11に連結固定できる支持部9と、この支持部9上に設けられる可動部2とを備える。可動部2および支持部9は、載置台10上に固定される。
【0014】
上記可動部2は、加工前の被加工物の表面に接触して、被加工物の加工基準位置を測定するタッチセンサなどの測定子3を有する。また、この測定子3は、被加工物が加工される工作機械軸に対応した直行3軸のX、Y、Z軸上を移動するとともに上記工作機械に対応した座標数値で、被加工物の加工基準位置を測定する。
測定子3がX、Y、Z軸方向に移動する機構について説明する。図2に示すように、測定子3は、Z軸方向(図2中、矢印z)に移動できるZ軸部6の、測定装置1をパレットが置かれる側の先端に備えられ、Z軸部6はY軸部5にY軸方向(図2中、矢印y)の移動を可能にして支持され、Y軸部5はX軸部4にX軸方向(図2中、矢印x)の移動を可能にして支持される。このように各軸部がX、Y、Z軸方向に相互に関連して相対的に移動することにより、測定子3はX、Y、Z軸方向に自在に移動可能となる。
【0015】
上記測定子3のX、Y、Z各軸方向への移動は、X軸方向にはX軸部4のアシストハンドル4aを回すことで、ガイドレール4bに沿って移動でき、同様に、Y軸方向にはY軸部5のアシストハンドル5aを、Z軸方向にはZ軸部6のアシストハンドル6aを回すことで、それぞれガイドレール5b、6bに沿って移動できる。特にY軸部5では、Y軸正方向(鉛直上方向)に対して移動させる際に重力による負荷がかかるため、エアー圧力を利用した重量バランスなどを併用することができる。
【0016】
上記測定子3のX、Y、Z各軸方向への長距離移動は、アシストハンドル4a、5a、6aを持ってスライドさせる直動ユニットにて行なうが、アシストハンドル4a、5a、6aを減速ユニットに切り替えて各軸の移動を微小移動にすることができる。測定子3を直動ユニットによりある程度まで被加工物に接近させ、減速ユニットに切り替えて、測定子3の先端部を微小移動により被加工物表面へ接触させる。この減速ユニットによる微小移動により、被加工物への接触の衝撃を少なくすることができる。また、測定後は直動ユニットに切り替え、速やかに測定子3を被加工物から退避させることができる。直動ユニットとしてはリニアガイドなどを利用することができ、減速ユニットとしては、減速比1/10程度の移動量とする減速ユニットなどを利用できる。直動ユニットと減速ユニットとの切り替えは、アシストハンドル4a、5a、6aに付随したピンの出し入れにより行なうことができる。
【0017】
図2に示すように、支持部9は、上記可動部2を載せて固定し、ガイドレール9eに沿って測定装置1を被加工物が固定されたパレットが置かれる側へ水平移動させることができる。また、パレットを固定する機構であるクランプ7およびトグルクランプ8を、パレットが置かれる側の側面に有する。
【0018】
本発明の測定装置が、被加工物が固定されたパレットを連結固定する機構を図に基づいて説明する。図3(a)はパレットの連結固定に係る測定装置のフローティング機構を説明する斜視図であり、図3(b)は図3(a)のE−E線断面図である。図4および図5は測定装置1とパレット11とを連結固定する機構を示す斜視図である。なお、説明を容易にするため、図3〜図5では可動部2部分の図示を一部省略し、図4および図5ではパレット11部分を破線で示す。
まず、図6に示すように、パレットチェンジャーに収容されているパレットのひとつを測定装置1側に移動して隣接させる。さらに図3(a)に示すように、測定装置1を支持部9のガイドレール9eに沿って図中R方向へスライドさせることにより測定装置1をパレットが置かれる側(図示せず、ただし図3(a)の右下側)へ移動させてパレット11に近づける。
【0019】
図3〜図5に示すように、本発明の測定装置1がパレット11を連結固定する機構としては、
(1)測定装置1の支持部9を水平方向にフローティングさせながら、
(2)(1)の機構とともに、上記支持部9の側面に備えられたクランプ7の鉤部7dをパレット11のクランプ爪12に係合させて連結固定し、
(3)(2)の機構で連結固定したパレット11の面に対して両側面から、トグルクランプ8等により挟み込んで固定することの3段階により行なう。
【0020】
上記(1)〜(3)をさらに説明する。X軸部4等を含む可動部2を載置した支持部9の支持板9cが、ガイドレール9e上をスライドする基板9dに対してフローティングする。具体的には、図3(a)および(b)に示すように、基板9dに複数の軸受9bが取り付けられ、この軸受9bによりその上に置かれる支持板9cが、支持板9cおよび基板9dを貫通する軸9aを軸として、基板9dの表面に対して水平方向(図3(a)中、S方向であるX−Z方向)に動くことができる。この結果、可動部2を載置するとともに、その側面に後述するクランプ7を備えてパレット11を連結固定する支持板9cは、基板9dに対して水平方向にフローティングする。
【0021】
上記支持部9をフローティングさせながら、クランプ7によりパレット11を連結固定する。
図4(a)に示すように、支持部9の支持板9cの側面に備えられた側面部材9fには、パレット11を連結固定するためのクランプ7が備えられている。クランプ7は、端部にハンドル7aを有する軸7cが、側面部材9fに固定された支持部材7bに支持されながら、ハンドル7aを回すことにより自在に回動する。
軸7cには鉤部7dが固定されており、鉤部7dは軸7cの少なくとも二箇所において、連結固定されるパレット11の側面に設けられたクランプ爪12に相対する位置に固定されている(図2参照)。またこの鉤部7dは、パレット11の側面に設けられたクランプ爪12の爪部12aに係合できる形状である。
上記ハンドル7aを水平状態から垂直状態へ回すことにより、軸7cとともに鉤部7dが軸7cを中心に回動してパレット11側へ傾斜し、クランプ爪12の爪部12aへ下側から入り込む。再度ハンドル7aをもとの水平状態に戻すことで、鉤部7dが元の姿勢に戻ってクランプ爪12の爪部12aと係合する。
さらに、パレット11の側面に設けられたクランプ爪12は、爪部12aを有する部分とともに、工作機械のX、Y、Z各軸との直角・平行の精度基準面である、パレット11の側面と平行な面である平坦面12bを備えている。また、クランプ7の支持部材7bのパレット11側には、基準当金7eが備えられている。基準当金7eの面は、そのパレット11側の面が平坦であり、測定装置1のX、Y、Z各軸との直角・平行の精度基準面である。上記クランプ爪12の係合とともに、この基準当金7eを平坦面12bに衝合させ、ハンドル7aを完全にもとの水平状態に戻してロックし、クランプ7とクランプ爪12の固定が完了する。
【0022】
支持部9がフローティングして、パレット11の被加工物固定面に対して水平方向に移動しながら、工作機械に固定するときの基準面となるパレット11の基準面に測定装置1の基準面を衝合させて連結固定する。これにより、測定装置1の測定子3が移動するX、Y、Z各軸方向を、パレット11上と同一方向にすることができ、すなわち、被加工物が加工される工作機械の工具座標軸と同一のX、Y、Z軸方向とすることができる。
【0023】
次いで、図5に示すように、クランプ7により連結固定されたパレット11を、さらにトグルクランプ8によりパレット11の上記連結固定面に対して両側面から挟んで固定する。
パレット11は、その向きを変えても使用できるように、パレット11の四方の側面にクランプ爪12を備えている(図1参照)。
図5(a)に示すように、測定装置1のクランプ7と同じ側に備えられたトグルクランプ8は、ハンドル8aによりクランプを有効または解除できる部材と、支持部9の側面部材9fに固定された部材とからなる。上記のパレット11をクランプ7で固定した面の両側面のクランプ爪12の平坦面12bに、一方の側から固定部材の基準ブロック8bを当て、また他方の側からハンドル8aを動作してクランプ8を平坦面12bに当てて、パレット11の両側面から挟んで固定する。反対にクランプ8を解除するには、図5(b)に示すように、ハンドル8aを上げて、トグルクランプ8を平坦面12bから離す。トグルクランプ8による固定は、基準ブロック8bを基準にパレット11のX軸方向(測定装置1のX軸方向と平行である軸方向)を固定するものである。なお、トグルクランプ8による固定は、上記クランプ7によるパレット11の連結固定を補助的に固定するものであり、連結固定されたパレット11のX軸方向をさらに固定できる方法であれば採用できる。
【0024】
以上のような固定機構により、被加工物13を固定したパレット11は測定装置1に連結固定される。この状態で、可動部2の測定子3の先端部をパレット11上に固定された被加工物13の表面に接触させ、そのX、Y、Z軸方向の位置情報を検出する。X、Y、Z軸方向の位置情報は工作機械内の位置情報と同一となるため、この被加工物13の加工基準位置とすることができる。
【0025】
本発明の被加工物の加工・測定システムの一例について図に基づき説明する。図6は、本発明の被加工物の加工・測定システムの実施形態の一例を示す平面図である。
図6に示すように、本発明の加工・測定システムは、工作機械15で被加工物13を加工する加工手段と、被加工物13をパレット11の加工位置に固定して工作機械15に供給するパレットチェンジャー14と、このパレットチェンジャー14に付設されて、工作機械15における被加工物13の加工基準位置を加工前に測定する外段取りによる本発明の測定装置1である測定手段と、加工基準位置の情報を加工手段のNC機器に提供するパソコン等の制御装置16である制御手段とを備えてなるものである。
【0026】
図6は、最大6個の被加工物13を一度に収容できるパレットチェンジャー14を上記供給手段に適用した例を示す。
図6に示すように、パレットチェンジャー14に収容されているパレット11のひとつを測定装置1が付設された測定部14aへ移動させる。次いで、上述のように測定装置1と、被加工物13が工作機械で加工される際の加工位置に固定されたパレット11とを連結固定し、被加工物13の加工基準位置を測定する。なお、パレット11に固定された被加工物13の加工基準位置を測定しながら、位置精度を確認することで、被加工物13をパレット11に固定しなおすこともできる。すなわち、被加工物13の一面が既に加工されている半製品などの加工基準部位または面を基準にして、その部位または面を測定しながら被加工物13をパレット11に固定しなおすことができる。
測定された被加工物13の加工基準位置の情報は、経路Cを経てパソコン等の制御装置16に送られ、加工用プログラムデータに変換演算され、さらにこの加工用プログラムデータは経路Dを経て工作機械15へ送られる。
一方、測定された被加工物13は、パレット11に固定された状態を保持して、経路Aを経て再度パレットチェンジャー14へ収容され、経路Bを経て工作機械15へ供給され固定される。このとき、パレット11を測定装置1と連結固定された側の面を工具側となるようにして固定される。この状態で、経路Cおよび経路Dにより送られた測定装置1で測定された加工基準位置の情報に基づき、加工を行なう。
【0027】
パレットチェンジャー14には、同一または異なる形状、あるいは同一または異なる加工条件に従う複数の被加工物13、13’、13”を同時に収容できる。
本発明の被加工物の加工・測定システムは、上記複数の被加工物のうちのひとつの被加工物13’を工作機械15で加工するのと同時に、パレットチェンジャー14で加工待機中の他の被加工物13の加工基準位置を測定装置1により測定することができる。また、パレットチェンジャー14に収容された複数の被加工物のすべてを、先に測定装置1により加工基準位置の測定を行なっておき、その後測定済みである被加工物を順次工作機械15に供給し、連続して加工を行なうこともできる。どちらも、測定した情報を制御装置16でストック・制御しながら、加工計画に従って順次加工を行なう。
【0028】
本発明の被加工物の加工・測定システムでは、被加工物13を工作機械15により加工する前に測定装置1により加工基準位置を測定できるだけでなく、加工の途中、または加工が完了した後に、加工基準位置を確認するための測定や、被加工物の加工部位および指示された部位の寸法測定ができる。加工の途中または加工が完了した後に測定する場合においても、上述の加工前の測定と同様の方法で被加工物の測定を行なう。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の被加工物の測定装置は、工作機械で加工するための被加工物の加工基準位置を工作機械外部において精度よく測定でき、またこの測定装置を用いた加工・測定システムは、被加工物の測定、および工作機械による加工を含めた被加工物の一連の加工・測定の作業性に優れるため、多品種少量生産用横型NC加工機、専用加工機、パレットチェンジャー付加工機などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の測定装置の実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の測定装置の一例を示す斜視図である。
【図3】フローティング機構を説明する斜視図である。
【図4】測定装置とパレットを連結固定する機構を示す斜視図である。
【図5】測定装置とパレットを連結固定する機構を示す斜視図である。
【図6】本発明の被加工物の加工・測定システムの実施形態の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 加工基準位置測定装置
2 可動部
3 測定子
4 X軸部
5 Y軸部
6 Z軸部
7 クランプ
8 トグルクランプ
9 支持部
10 載置台
11 パレット
12 クランプ爪
13 被加工物
14 パレットチェンジャー
15 工作機械
16 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械で被加工物を加工するときに、該被加工物を加工位置に固定して前記工作機械へ供給するパレットチェンジャーに付設されて、前記工作機械における前記被加工物の加工基準位置を加工前に測定する外段取りによる加工基準位置測定装置であって、
該加工基準位置測定装置は、前記パレットチェンジャーに搭載されているパレットに連結固定できる支持部と、この支持部上に設けられる可動部とを備え、
前記可動部は、加工前の被加工物の表面に接触して該被加工物の加工基準位置を測定する測定子を有し、該測定子は、被加工物が加工される工作機械軸に対応した直行3軸のX、Y、Z軸上を移動するとともに前記工作機械に対応して座標数値で測定することを特徴とする被加工物の加工基準位置測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の被加工物の加工基準位置測定装置において、
前記支持部は、前記パレットの被加工物固定面に対して水平方向に移動可能なフローティング機構を有し、前記工作機械に固定するときの基準面となるパレットの基準面に加工基準位置測定装置の基準面を衝合させて連結固定することを特徴とする被加工物の加工基準位置測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の被加工物の加工基準位置測定装置において、
前記測定子は、前記X、Y、Z各軸での移動が微小移動時には減速ユニットにより、長距離移動時には直動ユニットによりそれぞれなされ、該両機構の切り替え手段をX、Y、Z各軸に有し、被加工物への接触の衝撃を少なくすることができることを特徴とする被加工物の加工基準位置測定装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3記載の被加工物の加工基準位置測定装置において、
前記パレットチェンジャーは複数のパレットを搭載することができ、前記工作機械で被加工物を加工する工程と並行して、他の被加工物の加工基準位置を測定できることを特徴とする被加工物の加工基準位置測定装置。
【請求項5】
工作機械で被加工物を加工する加工手段と、
該被加工物を加工位置に固定して前記工作機械へ供給するパレットチェンジャーと、
該パレットチェンジャーに付設されて、前記工作機械における前記被加工物の加工基準位置を加工前に測定する外段取りによる測定手段と、
被加工物の加工前に外段取りにより測定した加工基準位置の情報を加工用プログラムに変換演算して前記加工手段に提供する制御手段とを備えてなる被加工物の加工・測定システムであって、
前記測定手段は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の加工基準位置測定装置を用いるものであり、
前記加工手段により複数の被加工物の内のひとつを加工するのと同時に、前記パレットチェンジャーで加工待機中の他の被加工物の加工基準位置を前記測定手段により測定することができることを特徴とする被加工物の加工・測定システム。
【請求項6】
前記測定手段は、被加工物の加工途中または加工完了後における加工基準位置の確認測定ならびに加工部位および指示された部位の寸法測定に用いることを特徴とする請求項5記載の被加工物の加工・測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−128196(P2009−128196A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303794(P2007−303794)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【出願人】(592144135)扶桑工機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】