説明

被搬送物及び防振機構

【課題】例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP等の被搬送物において、耐久性を有する構成により、搬送手段から把持手段及びフランジを介して本体部に伝わる振動を安定して抑制する。
【解決手段】搬送車(1)により搬送されると共に該搬送車に設けられた把持手段(2a)により把持される被搬送物(100)は、本体部(11)と、把持手段により把持されるフランジ(12)と、フランジ及び本体部の間に配置され、搬送車から把持手段及びフランジを介して本体部に伝わる振動を吸収する吸振手段(13)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物、及び該被搬送物を搬送する際に生じる振動を防止する防振機構の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の被搬送物の防振機構として、FOUPを構成するFOUP本体とその内部に配置される棚部とが、別体に構成されており、これらFOUP本体と棚部との間に、弾性体を介在させることにより、搬送の際に生じる振動を吸収する機構がある(特許文献1参照)。このようなFOUPが搬送される際には、典型的には、ビークル等の搬送車に設けられたグリッパにより、FOUP本体の上面に一体に設けられたフランジが把持されることで、搬送車の下方にFOUPが吊り下がった状態となる。
【0003】
また、フランジとFOUP本体との間に弾性体を介在させることで、搬送時の振動を吸収する防振機構もある。具体的には、例えば弾性体において、一端がボルト等の固定手段によりグリッパの下面に、他端が同様の固定手段によりFOUP本体の上面に取り付けられている。フランジ及びFOUP本体は、このような弾性体を介して、上下方向に連結されている。FOUPが搬送される際には、FOUP本体の荷重で、弾性体が下方へ引っ張られた状態となる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−123673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1記載の防振機構によれば、弾性体により、FOUP本体から棚部へ伝わる振動の少なくとも一部が吸収されることで、棚部に収納されている、例えばウェハ等の基板の振動が抑制される。しかしながら、弾性体が変形することで、FOUP本体と棚部との位置ずれが発生してしまう恐れがある。
【0006】
一般的に、搬送車により搬送されているFOUPは、基板に各種処理を施すための、例えば処理ステーションに設置されたロードポート等の載置台に載置される。すると、FOUPと処理ステーションとは、相互の開口部が合うように連結され、処理ステーション内に設置される、例えばハンドリング用ロボットにより、棚部に収納されている基板が順次処理ステーション内に取り入れられる。通常、ハンドリング用ロボット(以下、単に「ロボット」と言う)は、載置台の上面から基板の高さを基準として、上下方向で位置決めされる。このため、FOUP本体と棚部とに位置ずれが生じてしまうと、基板とロボットとに位置ずれが生じることになり、ロボットによる正確なハンドリングを阻害してしまう。このような一連の位置ずれは、搬送時に、搬送車からグリッパ及びフランジを介してFOUP本体に伝わる振動に起因する。
【0007】
また、フランジ及びFOUP本体が弾性体により連結される上述の防振機構によれば、ゴムやゲル等からなる弾性体では、その引っ張りの強度が低いために、所定期間以上継続して使用されると、弾性体が破断等で損傷する恐れがあり、FOUP本体の落下を招きかねない。
【0008】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、耐久性を有する構成により、搬送車からグリッパ等の把持部及びフランジを介して、FOUP本体等の被搬送物本体に伝わる振動を抑制することを可能ならしめる被搬送物、及び該被搬送物の防振機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の被搬送物は上記課題を解決するために、搬送車により搬送されると共に該搬送車に設けられた把持手段により把持される被搬送物であって、本体部と、前記把持手段により把持されるフランジと、前記フランジ及び前記本体部の間に配置され、前記搬送車から前記把持手段及び前記フランジを介して前記本体部に伝わる振動を吸収する吸振手段とを備え、前記吸振手段は、弾性材料から形成されており、圧縮された状態で、前記フランジ及び前記本体部の間に一又は複数配置される。
【0010】
本発明の被搬送物によれば、例えばFOUP等である当該被搬送物は、搬送車により搬送される。搬送車は、例えばビークル等であって、半導体素子製造用の施設内に敷設された軌道上を走行すると共に、該軌道に沿って配設される製造装置やストッカ等に対して被搬送物の搬送を行う。このような搬送車は、例えばその内部に昇降可能なホイストを備えており、このホイストには、被搬送物を把持するためのグリッパ等の把持手段が設けられる。
【0011】
本発明の被搬送物は、本体部と、フランジと、吸振手段とを備える。本体部は、例えばその内部に複数の棚を備えており、各棚に、半導体素子製造用の各種基板を収納可能である。具体的に、本体部は、例えば各種基板を収納可能な収納部と、フランジにより保持される被保持部との2つの部位からなっており、例えばこの被保持部の一部が鍔部となっている。また、フランジは、例えば搬送車の把持手段により把持される被把持部と、本体部の被保持部を保持する保持部との2つの部位からなっている。被把持部は、当該被搬送物が搬送される際に、把持手段により把持される。保持部は、例えば両端部が内側に屈曲され、側方から視て左右対称の形状とする。当該被搬送物の組み立て段階で、この両端部が被保持部(本体部)の鍔部の下方に配置されることで、フランジ及び本体部が接続される。この接続により、搬送時にフランジが把持手段により把持される状態(以下、「把持状態」と謂う)では、本体部の荷重により、保持部が鍔部を下面側から支持する状態、言い換えれば、フランジに本体部が吊り下がった状態となる。
【0012】
ここで特に、搬送車の走行に伴って生じる振動は、搬送車から、該搬送車に設けられるグリッパ、及び該グリッパに把持されるフランジを介して、本体部に伝わる。しかるに、本発明によれば、このような振動を防止又は抑制するために、フランジ及び本体部の間に、吸振手段が配置される。
【0013】
吸振手段は、当該被搬送物の組み立て段階で、フランジの保持部、及び本体部の被保持部(鍔部)の間に配置される。この配置により、フランジ及び本体部の間で圧縮される吸振手段が、搬送車の走行に伴う振動に応じて、本来の形状を変形させることで、搬送車からの振動の少なくとも一部を吸収する。具体的には、吸振手段は、圧縮された弾性材料の弾力によって、極めて効率よく、フランジから本体部へ伝わろうとする振動を吸収できる。また、弾性材料の着座も極めて安定すると共に、弾性材料の寿命を長くすることも容易にして可能となる。特に、弾性材料の破断を容易にして回避できる。
【0014】
吸振手段は、例えば適度の弾性を有するゴムや樹脂、ゲル等からなる。この吸振手段は、その形体として、例えば本体部の鍔部の下面に沿うように、例えば1つの輪体であったり、複数の直方体であってもよい。吸振手段として、例えば4個の直方体が配置される場合、振動が4箇所に分散されるので、1つの輪体が配置されるのと比較して、本体部への振動を抑制することができる。
【0015】
特に、背景技術と比べると、本発明によれば、本体部に伝わる振動が抑制されるので、各種機構、各種機械的部品などが備えられる本体部における故障発生等を著しく低減できる。これと共に、本体部が振動により搬送車の内壁などに衝突するような不都合も効果的に回避可能となる。逆に言えば、本体部及びその内部に対して、要求される機械耐性は著しく低くて済み、これらとして簡易な構造の採用も可能となり、実践上大変有利となる。
【0016】
以上のように、フランジ及び本体部の間で圧縮される吸振手段を配置することで、これらフランジ及び本体部の間の振動を吸振手段により吸収して、搬送車からグリッパ(把持部)及びフランジを介して本体部に伝わる振動を抑制することができる。更に、搬送時に、吸振手段が圧縮される構成により、吸振手段が引っ張られる構成と比較して、吸振手段の耐久性を確保すると共に、振動を安定して抑制することができる。
【0017】
本発明の被搬送物の一態様では、前記本体部は、その上面に鍔部を有し、前記フランジは、前記吸振手段を介して、前記鍔部を下面側から支持する。
【0018】
ここで、本発明に類似する背景技術に、吸振手段である連結部と、フランジと、本体部とを備え、連結部を介してフランジと本体部とを連結している被搬送物がある。該連結部が、例えばゴムやゲル等からなる弾性体からなる場合に、その引っ張りの強度が低いために、所定期間以上継続して連結部が使用されると、連結部に破断等の損壊が生じて、FOUP本体が把持部から離脱してしまう恐れがある。本発明によれば、フランジが吸振手段を介して本体部の鍔部を下面側から支持する構造とされるので、本体部が離脱する可能性は殆ど無い。
【0019】
この態様によれば、把持状態では、フランジに本体部が吊り下がった状態になり、本体部の荷重により吸振手段が圧縮される。この圧縮される吸振手段は、搬送車からの振動に応じて本来の形状を変形させることで、本体部に伝わる振動を抑制することができる。
【0020】
この態様では、前記フランジの下面側に螺子込まれており、頭部及び螺子切り部を有するT型のボルトを更に備え、前記鍔部には、前記螺子切り部を挿通可能な孔部が設けられており、前記ボルトは、前記鍔部の下面側から前記孔部に挿通された前記螺子切り部の先端部が前記フランジの下面側に螺子込まれて固定されることにより、前記フランジ及び前記本体部を相互に接続し、前記吸振手段は、前記頭部及び前記本体部の間に配置されてもよい。
【0021】
このように構成すれば、ボルトを介して、フランジ及び本体部が接続される。具体的に、フランジは、例えば上述の被把持部であって、特にこの被把持部には、ボルトの螺子切り部と螺合するナットが埋め込まれている。本体部は、例えば上述の収納部と、上述の被保持部との2つの部位からなっており、特に被保持部の鍔部には、螺子切り部を挿通可能な孔部が形成されている。ボルトについて、頭部は、その直径が孔部の内径よりも大きく形成されており、鍔部の下面に当接する。また、螺子切り部は、鍔部の下面側から孔部に挿通され、挿通されたその先端部がフランジ(被把持部)のナットに螺合される。この螺合により、フランジの下面及び被保持部の上面の間に所定間隔を保ちつつ、フランジに本体部が固定される。
【0022】
当該被搬送物の組み立て段階で、フランジ及び本体部を接続するには、被保持部(本体部)の上面の所定の接続位置に被把持部(フランジ)が配置され、更に本体部の下面且つ孔部の周囲に吸振手段が配置される。続いて、配置された吸振手段側から孔部にボルトの螺子切り部が挿通され、挿通されたその先端部が被把持部のナットに螺合される。この螺合により、フランジ及び本体部が接続される。この場合、把持状態で、本体部がフランジに吊り下がった状態になると共に、被把持部(フランジ)に固定されるボルトの頭部、及び本体部の間で吸振手段が圧縮される。
【0023】
このように、吸振手段は、ボルトの頭部、及び本体部の間に配置される。この配置により、搬送車から把持部及びフランジを介して本体部に伝わる振動を吸振手段により抑制することができる。
【0024】
本発明の被搬送物の他の態様では、前記本体部の上面側に螺子込まれており、頭部及び螺子切り部を有するT型のボルトを更に備え、前記フランジには、前記螺子切り部を挿通可能な孔部が設けられており、前記ボルトは、前記フランジの上面側から前記孔部に挿通された前記螺子切り部の先端部が前記本体部に螺子込まれて固定されることにより、前記フランジ及び前記本体部を相互に接続し、前記吸振手段は、前記フランジ及び前記頭部の間に配置される。
【0025】
この態様によれば、ボルトを介して、フランジ及び本体部が接続される。具体的に、本体部は、例えば上述の収納部と、該収納部の上面に一体に設けられ、ボルトの螺子切り部と螺合するナットが埋め込まれた固定部との2つの部位からなっている。固定部は、例えば側方から視て左右対称な2つの部位から構成してもいいし、1つの部位のみで構成してもよい。フランジは、例えば上述の被把持部であって、特に被把持部には、螺子切り部を挿通可能な孔部が形成されている。ボルトについて、頭部は、その直径が孔部の内径よりも大きく形成されており、フランジ(被把持部)の上面に当接する。また、螺子切り部は、フランジの上面側から孔部に挿通され、挿通されたその先端部が固定部(本体部)のナットに螺合される。この螺合により、フランジの下面及び固定部の上面の間に所定間隔を保ちつつ、フランジに本体部が固定される。
【0026】
当該被搬送物の組み立て段階で、フランジ及び本体部を接続するには、固定部(本体部)の上面の所定の接続位置に被把持部(フランジ)が配置され、更に配置された被把持部の孔部の周囲に吸振手段が配置される。続いて、配置された吸振手段側から孔部にボルトの螺子切り部が挿通され、挿通されたその先端部が固定部のナットに螺合される。この螺合により、フランジ及び本体部が接続される。この場合、把持状態で、本体部がフランジに吊り下がった状態になると共に、フランジ、及び固定部(本体部)に固定されるボルトの頭部の間で吸振手段が圧縮される。
【0027】
このように、吸振手段は、フランジ、及びボルトの頭部の間に配置される。この配置により、搬送車から把持部及びフランジを介して本体部に伝わる振動を吸振手段により抑制することができる。
【0028】
上述のボルトを備える態様では、前記孔部は、複数設けられ、前記ボルトは、前記複数の孔部に対応して複数備えられ、前記吸振手段は、前記複数のボルトに対応して複数配置されてもよい。
【0029】
このように構成すれば、吸振手段は、例えば適度の弾性を有するゴムや樹脂、ゲル等からなる。この吸振手段は、その形体として、ボルトの頭部に沿うように、例えば1つの輪体であることが望ましい。例えば1つのボルトに対応する吸振手段が1つの輪体とする場合に、フランジ(例えば被把持部)又は本体部(例えば被保持部)に孔部が複数設けられる場合に、複数の孔部に対応してボルトが複数使用されると共に、複数のボルトに対応して吸振手段が複数配置される。即ち、フランジ又は本体部の孔部、ボルト、及び吸振手段の数は、同一になる。このように、吸振手段である輪体が複数配置される場合、振動が複数箇所に分散されるので、輪体が1つ配置されるのと比較して、本体部への振動を抑制することができる。
【0030】
本発明の被搬送物の防振機構は上記課題を解決するために、搬送車により搬送されると共に該搬送車に設けられた把持手段により把持される被搬送物の防振機構であって、前記被搬送物の本体部と前記被搬送物における前記把持手段により把持されるフランジとの間に配置され、前記搬送車から前記把持手段及び前記フランジを介して前記本体部に伝わる振動を吸収する吸振手段を備え、前記吸振手段は、弾性材料から形成されており、圧縮された状態で、前記本体部及び前記フランジの間に一又は複数配置される。
【0031】
本発明の被搬送物の防振機構によれば、上述した本発明に係る被搬送物の場合と同様に、フランジ及び本体部の間で圧縮される吸振手段を配置することで、これらフランジ及び本体部の間の振動を吸振手段により吸収して、搬送車からグリッパ(把持部)及びフランジを介して本体部に伝わる振動を抑制することができる。更に、搬送時に、吸振手段が圧縮される構成により、吸振手段が引っ張られる構成と比較して、吸振手段の耐久性を確保すると共に、振動を安定して抑制することができる。
【0032】
尚、本発明に係る防振機構においても、上述した本発明に係る被搬送物における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0033】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0035】
<第1実施形態>
【0036】
先ず、第1実施形態に係る被搬送物の構成について図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る被搬送物を概略的に示す正面図であり、図2は、第1実施形態に係る被搬送物を上面側から視た上面図である。
【0037】
図1において、第1実施形態に係る被搬送物100は、例えばOHT或いはビークルである搬送車1により、レールに沿って搬送される。この搬送の際、被搬送物100は、搬送車1の底側に設けられたグリッパ2により把持される。グリッパ2は、本発明に係る「把持手段」の一例として、被搬送物100を把持する把持状態、及び被搬送物100を解放する解放状態に変位可能な把持部2aを備える。即ち、把持部2aの両端部は、内側に屈曲可能に構成されており、把持状態において、それら先端が対向している。図1に示すように、把持部2aは、把持状態で両端部が後述のフランジ12を下面側から支持することで、被搬送物100を把持する。
【0038】
被搬送物100は、本体部11と、フランジ12と、吸振部材13とを備えており、本発明では特に、搬送車1からグリッパ2及びフランジ12を介して本体部11に伝わる振動を吸振部材13が抑制するように構成されている。
【0039】
本体部11は、収納部11aと、被保持部11bとを有する。収納部11aは、内部に複数の棚部(図示せず)を備えており、各棚部に、半導体素子製造用の各種基板を収納可能である。被保持部11bは、収納部11aの上面に固着されており、被保持部11bの一部は、鍔部になっている。
【0040】
フランジ12は、被把持部12aと、保持部12bとを有する。被把持部12aは、把持部2aに下面側から支持されることで、グリッパ2に把持される。保持部12bは、被把持部12aの下面に固着されている。保持部12bの両端部は、内側に屈曲されており、それら先端が対向している。これら両端部は、被保持部11bの鍔部の下方に位置する。このため、把持部2aが被把持部12aを把持する状態(把持状態)で、保持部12bは、被保持部11bの鍔部を支持すると共に、本体部11全体を保持する。
【0041】
吸振部材13は、本発明に係る「吸振手段」の一例として、ゴムから形成されており、図2に示すように、4つの直方体から構成される。吸振部材13は、フランジ12及び本体部11の間、詳しくは、保持部12b及び被保持部11bの鍔部の間に配置されている。各吸振部材13は、これら保持部12b及び被保持部11bの間で変形自在に圧縮されることで、本体部11に伝わる振動を吸収する。尚、吸振部材13は、ゴムの他に、樹脂やゲル等から形成されてもよい。
【0042】
再び図1において、第1実施形態の被搬送物100が搬送車1により搬送される状態について説明する。被搬送物100が搬送される際には、把持状態とされる把持部2aにより、被把持部12aが把持される。この時、被搬送物100において、保持部12bにより被保持部11bが吸振部材13を介して支持されると共に、吸振部材13が本体部11全体の荷重で圧縮される。この圧縮された吸振部材13が、振動に応じて変形されることで、本体部11に伝わる振動が抑制される。
【0043】
このように、第1実施形態によれば、フランジ12及び本体部11の間で圧縮される吸振部材13を配置するので、搬送車1からグリッパ2及びフランジ12を介して本体部11に伝わる振動を抑制すると共に、吸振部材13の耐久性を確保することができる。
【0044】
尚、第1実施形態の被搬送物100では、吸振部材13が4つの直方体から構成されるが、被保持部11bの鍔部に沿った1つの輪体としてもよい。
【0045】
<第2実施形態>
【0046】
次に、第2実施形態に係る被搬送物の構成について図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、第2実施形態に係る被搬送物を概略的に示す正面図であり、図4は、第2実施形態に係る被搬送物を上面側から視た上面図である。以下、第1実施形態の被搬送物100と略同一に構成される部位について、被搬送物100の場合と同名又は同一の符号を付すと共に、その説明を省略し、本実施形態の特徴的内容について特に記載する。
【0047】
第2実施形態に係る被搬送物200は、第1実施形態の被搬送物100と比較して、吸振手段の形体、並びに被保持部(本体部)及び保持部(フランジ)の形体が異なる。また、本体部及びフランジの接続にボルトが使用される。
【0048】
図3において、被搬送物200は、本体部21と、フランジ22と、吸振部材23と、ボルト24とを備える。
【0049】
本体部21は、収納部21aと、被保持部21bとを有する。被保持部21bの一部は鍔部になっており、図4に示すように、特に鍔部には、4つの孔部21cが開けられている。これら4つの孔部21cの内径は、後述のボルト24の螺子切り部24bを挿通可能な大きさに形成されている。
【0050】
フランジ22は、グリッパ2により把持される被把持部22aである。被把持部22aの下面には、ナット22cが埋め込まれている。このナット22cにボルト24の螺子切り部24bの先端部が螺合されることで、フランジ22及び本体部21が接続される。
【0051】
ボルト24は、頭部24aと、螺子切り部24bとを有するT型ボルトである。頭部24aの直径は、孔部21cの内径よりも大きく形成されている。螺子切り部24bは、被保持部21bの下面側から孔部21cに挿通されており、挿通された先端部が、被把持部22aのナット22cに螺合されている。この螺合により、被把持部22bの下面、及び本体部21の被保持部21bの上面の間に所定間隔を保ちつつ、フランジ22に本体部21全体が保持される。図4に示すように、ボルト24は、4つの孔部21cに対応して4つ使用される。
【0052】
吸振部材23は、ボルト24の頭部24a、及び本体部21の被保持部21bの間に配置されている。各吸振部材23は、これら頭部24a及び被保持部21bの間で変形自在に圧縮されることで、本体部21に伝わる振動を吸収する。
【0053】
再び図3において、第2実施形態の被搬送物200が搬送される状態について説明する。被搬送物200が搬送される際には、把持状態とされる把持部2aにより、被把持部22aが把持される。この時、被搬送物200において、被把持部22aに固定されたボルト24により、被保持部21bが吸振部材23を介して支持されると共に、吸振部材23が、ボルト24の頭部24a及び被保持部21bの間で、本体部21全体の荷重により圧縮される。この圧縮された吸振部材23が、振動に応じて変形されることで、本体部21に伝わる振動が抑制される。
【0054】
このように、第2実施形態によれば、フランジ22に固定されたボルト24の頭部24a、及び本体部21の間で圧縮される吸振部材23を配置するので、搬送車1からグリッパ2及びフランジ22を介して本体部21に伝わる振動を抑制すると共に、吸振部材23の耐久性を確保することができる。
【0055】
尚、第2実施形態の被搬送物200では、吸振部材23が4つの輪体から構成されるが、各輪体を複数の直方体から構成してもよい。
【0056】
<第3実施形態>
【0057】
次に、第3実施形態に係る被搬送物の構成について図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、第3実施形態に係る被搬送物を概略的に示す正面図であり、図6は、第3実施形態に係る被搬送物を上面側から視た上面図である。以下、第2実施形態の被搬送物200と略同一に構成される部位について、被搬送物100及び200の場合と同名又は同一の符号を付すと共に、その説明を省略し、本実施形態の特徴的内容について特に記載する。
【0058】
第3実施形態に係る被搬送物300は、第2実施形態の被搬送物200と比較して、被保持部(本体部)及び保持部(フランジ)の形体、並びに本体部及びフランジを接続するボルトの配置が異なる。
【0059】
図5において、被搬送物300は、本体部31と、フランジ32と、吸振部材33と、ボルト34とを備える。
【0060】
本体部31は、収納部31aと、固定部31bとを有する。固定部31bは、収納部31aの上面に固着されている。固定部31bの上面には、ナット31cが埋め込まれており、このナット31cに後述のボルト34の螺子切り部34bの端部が螺合されることで、フランジ32及び本体部31が接続される。
【0061】
ボルト34は、頭部34aと、螺子切り部34bとを有するT型ボルトである。頭部34aの直径は、後述のフランジ32の孔部32cの内径よりも大きく形成されている。螺子切り部34bは、フランジ32の被把持部32aの上面側から孔部32cに挿通されており、挿通された先端部が、固定部31bのナット31cに螺合されている。この螺合により、被把持部32aの下面、及び固定部31bの上面の間に所定間隔を保ちつつ、フランジ部32に本体部31全体が保持される。図6に示すように、ボルト34は、フランジ32の4つの孔部32cに対応して4つ使用される。
【0062】
フランジ32は、グリッパ2により把持される被把持部32aであって、特に被保持部32aには、4つの孔部32cが開けられている。これら4つの孔部32cの内径は、螺子切り部34bを挿通可能な大きさに形成されている。
【0063】
吸振部材33は、フランジ32の被把持部32a、及びボルト34の頭部34aの間に配置されている。各吸振部材33は、これら被把持部32a及び頭部24aの間で変形自在に圧縮されることで、本体部31に伝わる振動を吸収する。
【0064】
再び図5において、第3実施形態の被搬送物が搬送される状態について説明する。被搬送物300が搬送される際には、把持状態とされる把持部2aにより、被把持部32aが把持される。この時、被搬送物300において、被把持部32aに挿通されると共に固定部31bに固定されたボルト34により、本体部31全体が吸振部材23を介して吊り下げられると共に、吸振部材33が、被把持部32a及びボルト34の頭部34aの間で、本体部31全体の荷重により圧縮される。この圧縮された吸振部材33が、振動に応じて変形されることで、本体部31に伝わる振動が抑制される。
【0065】
このように、第3実施形態によれば、フランジ32、及び本体部31に固定されたボルト34の頭部34aの間で圧縮される吸振部材33を配置するので、搬送車1からグリッパ2及びフランジ32を介して本体部31に伝わる振動を抑制すると共に、吸振部材33の耐久性を確保することができる。
【0066】
尚、第3実施形態の被搬送物300では、固定部31bが2つの部位から構成されるが、1つの部位で構成されてもよい。例えば、図7に示すように、第3実施形態の変形形態である被搬送物400の本体部41は、収納部41aと、固定部41bと、ボルト43とを有する。固定部41bは、2つの部位に別離されずに、1つの部位になっており、この1つの部位に複数のナット41cが埋め込まれている。このように、固定部を1つの部位にすることで、振動の大きさや方向に応じて、振動をより抑制することができる。
【0067】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う被搬送物の防振機構もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1実施形態に係る被搬送物を示す概略的正面図である。
【図2】第1実施形態に係る被搬送物を上面側から視た上面図である。
【図3】第2実施形態に係る被搬送物を示す概略的正面図である。
【図4】第2実施形態に係る被搬送物を上面側から視た上面図である。
【図5】第3実施形態に係る被搬送物を示す概略的正面図である。
【図6】第3実施形態に係る被搬送物を上面側から視た上面図である。
【図7】第3実施形態の変形形態に係る被搬送物を示す概略的正面図である。
【符号の説明】
【0069】
1…搬送車、2…グリッパ、11…本体部、12…フランジ、13…吸振部材、100…被搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車により搬送されると共に該搬送車に設けられた把持手段により把持される被搬送物であって、
本体部と、
前記把持手段により把持されるフランジと、
前記フランジ及び前記本体部の間に配置され、前記搬送車から前記把持手段及び前記フランジを介して前記本体部に伝わる振動を吸収する吸振手段と
を備え、
前記吸振手段は、弾性材料から形成されており、圧縮された状態で、前記フランジ及び前記本体部の間に一又は複数配置されることを特徴とする被搬送物。
【請求項2】
前記本体部は、その上面に鍔部を有し、
前記フランジは、前記吸振手段を介して、前記鍔部を下面側から支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の被搬送物。
【請求項3】
前記フランジの下面側に螺子込まれており、頭部及び螺子切り部を有するT型のボルトを更に備え、
前記鍔部には、前記螺子切り部を挿通可能な孔部が設けられており、
前記ボルトは、前記鍔部の下面側から前記孔部に挿通された前記螺子切り部の先端部が前記フランジの下面側に螺子込まれて固定されることにより、前記フランジ及び前記本体部を相互に接続し、
前記吸振手段は、前記頭部及び前記本体部の間に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の被搬送物。
【請求項4】
前記本体部の上面側に螺子込まれており、頭部及び螺子切り部を有するT型のボルトを更に備え、
前記フランジには、前記螺子切り部を挿通可能な孔部が設けられており、
前記ボルトは、前記フランジの上面側から前記孔部に挿通された前記螺子切り部の先端部が前記本体部に螺子込まれて固定されることにより、前記フランジ及び前記本体部を相互に接続し、
前記吸振手段は、前記フランジ及び前記頭部の間に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の被搬送物。
【請求項5】
前記孔部は、複数設けられ、
前記ボルトは、前記複数の孔部に対応して複数備えられ、
前記吸振手段は、前記複数のボルトに対応して複数配置される
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の被搬送物。
【請求項6】
搬送車により搬送されると共に該搬送車に設けられた把持手段により把持される被搬送物の防振機構であって、
前記被搬送物の本体部と前記被搬送物における前記把持手段により把持されるフランジとの間に配置され、前記搬送車から前記把持手段及び前記フランジを介して前記本体部に伝わる振動を吸収する吸振手段を備え、
前記吸振手段は、弾性材料から形成されており、圧縮された状態で、前記本体部及び前記フランジの間に一又は複数配置される
ことを特徴とする被搬送物の防振機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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