説明

被検溶液に含まれる抗原の濃度を測定する方法

【課題】小型かつ被検物質の濃度を高精度に検出することができる生体成分濃度計測装置を提供する。
【解決手段】被検物質と特異的に結合する物質が修飾された複数の第1金属ナノロッド109aが、長軸を同一方向にそろえ固定化されている第1の基板105aと、ブロッキング物質が就職された複数の第2金属ナノロッド109bが、長軸を前記第1の基板105aの前記第1金属ナノロッド109aの長軸と垂直な方向にそろえ、固定化されている基板105bが存在する生体成分濃度測定用セルを用い、第1の基板105aと第2の基板105bの光学特性を測定する光学測定装置とを備え、その光学特性から高精度に生体成分濃度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属に光を照射することで発生する表面プラズモン共鳴を利用して、被検溶液に含まれる抗原の濃度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断、遺伝子解析などは、迅速、高効率、かつ簡便に行うことが求められる。そこで、近年、微量な生体成分を高感度に検出する技術が重要になっている。
【0003】
例えば、血液、汗、尿などの被検溶液に含まれる、タンパク質、ホルモン、低分子化合物などの生体成分を検出する方法では、表面プラズモン共鳴が利用されている。表面プラズモン共鳴は、金属中の自由電子と、電磁波(光)とが相互作用することによって起こる。表面プラズモン共鳴を用いた検出法は、蛍光検出法および電気化学法とは異なり、生体成分に標識することを必要とせず、簡便である。
【0004】
表面プラズモン共鳴としては、伝搬型表面プラズモン共鳴および局在型表面プラズモン共鳴が挙げられる。
伝搬型表面プラズモン共鳴を用いたセンサは、例えば、三角プリズムを有する。三角プリズムの面の1つには、金属薄膜が形成されている。プリズムの別の面から、金属薄膜を有する面に光が照射される。金属薄膜に特定の角度から光が入射すると、伝搬型表面プラズモン共鳴が発生する。この特定の角度を、共鳴角度という。共鳴角度は、金属薄膜の近傍(約100nm)に存在する物質の屈折率(誘電率)に依存する。そのため、伝搬型表面プラズモン共鳴センサは、周辺物質の物性変化を高感度に検出することができる。
【0005】
伝搬型表面プラズモン共鳴をバイオセンサで利用する場合、金属薄膜の表面に抗体が固定化される。金属薄膜表面に、生体成分(抗原)を含む被検溶液を接触させることにより、抗原と抗体とが反応し、結合する。これにより、金属薄膜の近傍における屈折率が変化するため、共鳴角度が変化する。被検溶液に含まれる抗原の濃度と、共鳴角度との相関関係を予め求めておけば、共鳴角度の変化から抗原の濃度を算出することができる。
【0006】
特許文献1は、局在型表面プラズモン共鳴を利用した方法を開示している。特許文献1によれば、貴金属により被覆された誘電体微粒子(以下、「微粒子」という)は、基板の表面の複数の領域に形成されている。1つの領域(以下、「信号領域」という)に形成された微粒子には、生体分子と結合する抗体が固定化されている。信号領域は生体分子の濃度を反映した共鳴波長を示す。他の領域(以下、「参照領域」という)に形成された微粒子には、生体分子との結合が起こらないように処理が施されている。光の照射により、各領域の局在型表面プラズモン共鳴が観測される。信号領域では、生体分子の結合が反射スペクトルを変化させる。一方、参照領域では、生体分子が結合しないために、反射スペクトルは変化しない。信号領域における反射スペクトルと参照領域の反射スペクトルとの間の差に基づき、生体分子の結合による反射スペクトルの変化量が求められる。当該反射スペクトルの変化量に基づいて、生体分子の濃度が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3528800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
信号領域および参照領域を表面に有する従来の局在型表面プラズモンセンサにより、高感度に被検物質の濃度が検出される。しかし、2つの検出領域、すなわち、信号領域および参照領域に光を照射させるために、光源または基板の少なくとも一方を移動させることが必要とされる。測定精度の維持または向上のためには、光源、検出領域、および光検出器の位置が高精度に制御されなければならない。従って、光源または基板の移動は、測定精度の低下をもたらし得る。
【0009】
本発明の目的は、被検溶液に含まれる抗原の濃度を測定する方法であって、光源および基板の両方を移動させず、測定精度を向上させた方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
生体成分の濃度を測定する装置を用いて被検溶液に含まれる第1抗原の濃度を測定する方法であって、以下の工程(a)〜(h)を具備する、方法:
前記装置を準備する工程(a)、
ここで、前記装置は、
第1領域、第2領域、および前記被検溶液を保持する空間を内部に具備するセル、
光源、
前記光源から出射された光を偏光する偏光板、ならびに
前記第1領域、前記第2領域および前記被検溶液保持空間と交差する光軸に沿って前記セルを透過した光を受け取る受光器を備え、
前記第1領域には、表面に第1抗体を有する複数の第1金属ナノロッドが固定化されており、
前記第2領域には、表面にブロッキング物質を有する複数の第2金属ナノロッドが固定化されており、
前記複数の第1金属ナノロッドの長軸が同一方向に配向しており、
前記複数の第2金属ナノロッドの長軸が同一方向に配向しており、
前記第1金属ナノロッドの長軸方向が、前記第2金属ナノロッドの長軸方向に直交しており、
前記偏光板および前記セルの少なくとも一方が、前記光軸を回転軸として回転可能であり、
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給し、前記第1抗原を前記第1抗体に結合させるが、前記第1抗原を前記ブロッキング物質には結合させない工程(b)、
前記複数の第1金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、得られた第1の光を前記受光器で受け取る工程(c)、
前記第1の光に基づいて、前記第1抗原が前記抗体に結合したことによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長の共鳴波長シフト量Δλaを算出する工程(d)、
前記偏光板および前記セルの少なくとも一方を回転させ、前記偏光板を透過した偏光を複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行に設定する工程(e)、
前記複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、得られた第2の光を前記受光器で受け取る工程(f)、
前記第2の光に基づいて、前記被検溶液保持空間に前記被検溶液が供給されることによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長の共鳴波長シフト量Δλbを算出する工程(g)、
以下の等式によって表される差および検量線に基づいて、前記第1抗原の濃度を算出する工程(h)、
前記差=前記Δλa−前記Δλb。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、被検溶液に含まれる抗原の濃度を測定する方法を提供する。当該方法は、光源および基板の両方を移動することを必要とせず、測定精度の向上を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1における生体成分濃度測定装置の構成を示す図
【図2】実施の形態1におけるセル105の断面を示す図
【図3】実施の形態1におけるセル105の一部の斜視図
【図4】Auナノロッドの吸収スペクトルを示す図
【図5】(A)ランダムに配向したAuナノロッドが形成された基板105hの構成図 (B)ランダムに配向したAuナノロッドが形成された基板105hの吸収スペクトルを示すグラフ
【図6】(A)Auナノロッドの長軸が同一方向に配向し形成された基板105aの構成図 (B)Auナノロッドの短軸方向の偏光の光を照射したときの基板105aの吸収スペクトルを示すグラフ (C)Auナノロッドの長軸方向の偏光の光を照射したときの基板105aの吸収スペクトルを示すグラフ
【図7】本発明の実施の形態2における生体成分濃度測定装置の構成を示す図
【図8】本発明の実施の形態2におけるセル205の断面を示す図
【図9】本発明の実施の形態2におけるセル205の一部の斜視図
【図10】本発明の実施の形態3における生体成分濃度測定装置の構成を示す図
【図11】本発明の実施の形態3における生体成分濃度測定用セル405の構成を示す図
【図12】本発明の実施の形態4における生体成分濃度測定装置の構成を示す図
【図13】本発明の実施の形態4におけるセル505の断面を示す図
【図14】本発明の実施の形態4におけるセル505の一部の斜視図
【図15】本発明の実施の形態5における生体成分濃度測定装置の構成を示す図
【図16】本発明の実施の形態5におけるセル605の断面を示す図
【図17】本発明の実施の形態5におけるセル605の一部の斜視図
【図18】(A)Auナノロッドの長軸が同一方向に配向し形成された第1の基板105aの構成図 (B)被検溶液供給前のAuナノロッドの長軸に平行な偏光の光を照射したときの第1の基板105aの吸収スペクトルを示すグラフ (C)被検溶液供給後のAuナノロッドの長軸に平行な偏光の光を照射したときの第1の基板105aの吸収スペクトルを示すグラフ
【図19】(A)Auナノロッドの長軸が同一方向に配向し形成された第2の基板105bの構成図 (B)被検溶液供給前のAuナノロッドの長軸に平行な偏光の光を照射したときの第2の基板105bの吸収スペクトルを示すグラフ (C)被検溶液供給後のAuナノロッドの長軸に平行な偏光の光を照射したときの第2の基板105bの吸収スペクトルを示すグラフ
【図20】(A)セル105の分解図 (B)セル105にy方向の偏光光を照射したときの第1の基板105aの吸収スペクトルを示すグラフ (C)y方向の偏光光を照射したときの第2の基板105bの吸収スペクトルを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1が、図1〜図3を参照しながら説明される。
【0015】
(装置100の説明)
図1は、実施の形態1による生体成分の濃度を計測するための装置100の構成を示す。装置100は、セル105および光学測定装置200を具備する。
【0016】
光学測定装置200は、光源101、レンズ102、偏光板103、レンズ104、スリット106、グレーティング素子107、受光器108、およびマイクロコンピュータ110を具備する。
【0017】
光源101は、局在型表面プラズモン共鳴波長を含む光を放射する。ハロゲン光源が好ましい。
【0018】
レンズ102(第1レンズ102)は、ハロゲン光源101から放射された光を整形する。
【0019】
偏光板103は、ハロゲン光源101から放射され、レンズ102により整形された光を偏光する。
【0020】
レンズ104(第2レンズ104)は、セル105を透過した光を整形する。
【0021】
スリット106は、グレーティング分光を行う際に光を略点光源状に整形する。
【0022】
グレーティング素子107は、スリット106を透過した光を波長に応じて分散させながら反射する。
【0023】
受光器108は、複数の受光領域を有し、分散した光を検出する。
【0024】
マイクロコンピュータ110(すなわち、演算部)は、受光器108によって受光された光の強度を算出する。マイクロコンピュータ110は、算出された強度から局在型表面プラズモン共鳴波長を算出する。マイクロコンピュータ110は、算出された局在型表面プラズモン共鳴波長に基づき被検物質の濃度を算出する。
【0025】
セル105は、被検溶液を保持する。セル105は、第1の基板105aおよび第2の基板105bを具備する。第1の基板105aは、同一方向に配向した長軸を有する複数の第1金属ナノロッドを具備する。各金属ナノロッドは、およそ2nm〜100nmの短軸およびおよそ50〜500nmの長軸を有する。第2の基板105bは、第1の基板105aと同様に複数の第2金属ナノロッドを具備する。
【0026】
第1の基板105aおよび第2の基板105bは、それぞれ第1領域および第2領域に相当する。金属ナノロッドは、基板の全面または一部に形成され得る。
【0027】
受光器108の例は、CCD(電荷結合素子)、CMOS、および1次元フォトディテクターアレイである。受光器108は、複数の受光領域を具備することが好ましい。
【0028】
偏光板103の例は、有機分子から形成された偏光フィルムである。
【0029】
偏光板103および前記セル105の少なくとも一方が、光軸を回転軸として回転する。言うまでもないが、当該光軸は第1の基板105aの法線方向に平行である。
【0030】
光学測定装置200は、メモリ111を備えていることが好ましい。メモリ111は、受光器108の各受光領域に対応する波長のデータ、および局在型表面プラズモン共鳴波長の共鳴波長シフト量と生体成分濃度との間の相関関係(すなわち、検量線)に関するデータを保持している。
【0031】
図2は、第1の実施の形態におけるセル105を示す。
【0032】
セル105は、第1の基板105a、第2の基板105b、第1のスペーサ105c、第2のスペーサ105d、およびカバーガラス105eを具備する。第1の基板105aは、複数の第1金属ナノロッド109aを具備する。第2の基板105bは、複数の第2金属ナノロッド109bを具備する。
【0033】
図2に示されるように、第1の被検溶液保持空間105fは、第1の基板105a、第1のスペーサ105c、およびカバーガラス105eによって囲まれている。同様に、第2の被検溶液保持空間105gは、第1の基板105a、第2のスペーサ105d、および第2の基板105bによって囲まれている。第1の被検溶液保持空間105fおよび第2の被検溶液保持空間105gは、被検溶液の供給口および排出口(図示せず)を具備する。
【0034】
第1の基板105a、第2の基板105b、およびカバーガラス105eの材料は、光源101からの光が透過する限り、特に限定されない。SiO2が好ましい。
【0035】
図3は、第1の基板105aおよび第2の基板105bを示す。
【0036】
第1の基板105aは、同一方向に配向した長軸を有する複数の第1金属ナノロッド109aを具備する。複数の第1金属ナノロッド109aを一括して「第1金属ナノロッド群」と呼ぶことがある。
【0037】
第2の基板105bは、同一方向に配向した長軸を有する複数の第2金属ナノロッド109bを具備する。複数の第2金属ナノロッド109bを一括して「第2金属ナノロッド群」と呼ぶことがある。複数の第1金属ナノロッド109aの長軸は、複数の第2金属ナノロッド109bの長軸に直交する。
【0038】
複数の第1金属ナノロッド109aに第1の抗体112aが修飾され、計測領域が形成される。一方、複数の第2金属ナノロッド109bにブロッキング物質112cが修飾され、参照領域が形成される。ブロッキング物質112cには、抗原、タンパク質、およびペプチドのいずれもが結合しない。当該抗原は、被検溶液に含有される被検物質を包含する。当該タンパク質は、アルブミンおよびグロブリンを包含する。
【0039】
ブロッキング物質112cの例は、卵白アルブミン、ウシ血清アルブミン、カゼイン、スキムミルク、リン脂質極性基を側鎖に有するMPC(2-メタクリロイルオキシエチル
ホスホリルコリン)ポリマー、MPCポリマー含有重合体、およびMPCポリマー含有共重合体である。
【0040】
複数の第1金属ナノロッド109aおよび第2金属ナノロッド109bがそれぞれ形成された第1の基板105aの面および第2の基板105bの面は、同一方向を向いている。
【0041】
(基板の製法)
第1の基板105aおよび第2の基板105bを作製する方法は、特に限定されない。例えば、X線リソグラフィーまたは電子線リソグラフィーにより微細構造が描画される。次いで金属がスパッタリングされ、基板105を作製し得る。
【0042】
Si基板に、X線リソグラフィーまたは電子線リソグラフィーにより金型が作製される。ナノインプリンティング技術により、樹脂上にナノロッドが作製される。金属がスパッタリングされて金属ナノロッドが作製され、基板105を作製し得る。
【0043】
化学反応を用いる合成法、光反応を用いる合成法により合成された金属ナノロッドが用いられ、基板105を作製し得る。
【0044】
金属ナノロッドを含有する組成物に一定方向の剪断応力を加え、複数の金属ナノロッドの長軸を同一方向に配向させ得る。具体的には、分散剤、溶媒、樹脂、および金属ナノロッド含有する組成物が基板に塗布される。マイクログラビアコーターにより、基材の進行方向とは反対方向に一定の剪断応力が印加されながら、当該組成物が塗布され得る。これに代えて、当該組成物を塗布している間または塗布した後に、一定方向の電気的又は磁気的な力が基板に印加され、当該長軸を同一方向に配向させ得る。
【0045】
金属ナノロッド109の材料は、銀、金、銅、アルミニウム、または白金である。複数の材料が用いられ得る。金属ナノロッドは、二つの局在型表面プラズモン共鳴バンドを示す。一方の局在型表面プラズモン共鳴バンドは、短軸方向に由来する。Auナノロッドが用いられる場合、当該一方の局在型表面プラズモン共鳴バンドは520nm付近の波長において現れる。他方の局在型表面プラズモン共鳴バンドは、長軸に由来する。Auナノロッドが用いられる場合、当該他方の局在型表面プラズモン共鳴バンドは、600〜1500nmの波長において現れる。
【0046】
(吸収スペクトルの説明)
図4は、10nmの平均短軸長および37nmの平均長軸長37nmを有するAuナノロッドの吸収スペクトルを示す。510nmの波長の付近のピークは、短軸由来の局在型表面プラズモン共鳴バンドである。780nmの波長の付近のピークは、長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴バンドである。局在型表面プラズモン共鳴バンドにおける吸収ピーク波長は、局在型表面プラズモン共鳴波長と呼ばれる。
【0047】
実施の形態1においては、長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長が700〜1000nmであることが好ましい。
【0048】
同一方向に配向した長軸を有する複数の第1金属ナノロッド109a、第2金属ナノロッド109bを具備する基板は、強い偏光特性を有する。図5(A)は、ランダムに配向した金属ナノロッド109cを具備する基板105hを示す。図5(B)は、その吸収スペクトルを示す。基板105hは、どのような偏光の入射光に対しても、図5(B)に示されるように、短軸および長軸の両方に由来する局在型表面プラズモン共鳴バンドにおける吸収ピークを有する。
【0049】
図6(A)は、同一方向yに配向した長軸を有する第1金属ナノロッド109aを具備する基板105aを示す。図6(B)は、当該長軸に直交する方向(すなわち、図6(A)におけるx方向)に沿った偏光を照射することによって生じる吸収スペクトルを示す。図6(C)は長軸に平行な方向(図6(A)におけるy方向)に沿った偏光を照射することによって生じる吸収スペクトルを示す。
【0050】
図6(B)および図6(C)から理解されるように、基板105aは、x方向に沿った偏光に対しては、短軸由来の局在型表面プラズモン共鳴バンドによる吸収スペクトルのみを示す。y方向に沿った偏光に対しては、基板105aは、長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴バンドによる吸収スペクトルのみを示す。
【0051】
第1金属ナノロッド109aの長軸または第2金属ナノロッド109bの長軸のどちらかに平行に偏光光が設定されることにより、第1の基板105aまたは第2の基板105bのどちらか一方に特有な吸収スペクトルを得ることができる。偏光板103またはセル105のどちらかが光軸を回転軸として回転され、偏光を第1金属ナノロッド109aの長軸または第2金属ナノロッド109bの長軸のどちらかと平行にする。偏光板103およびセル105の両方が回転され得る。
【0052】
複数の第1金属ナノロッドの長軸は、複数の第2金属ナノロッドの長軸に直交する必要がある。その理由について、図20を用いて、以下に説明する。
【0053】
図20(A)には、セル105の分解図を示す。セル105の第1の基板105aには、長軸が同一方向に配向した第1金属ナノロッド109aが形成されている。第1金属ナノロッド109aの長軸に平行な軸をy方向、短軸に平行な軸をx方向とする。セル105の第2の基板105bには、長軸が同一方向に配向した第2金属ナノロッド109bが形成されている。図20(A)に示すように、第2金属ナノロッド109bの長軸は、y方向に対して45度の角度で傾いて形成されている。すなわち、セル105においては、複数の第1金属ナノロッド109aの長軸は、複数の第2金属ナノロッド109bの長軸は直交していない。
【0054】
セル105において、第1の基板105a上の第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収のみを得るためには、第1金属ナノロッド109aの長軸に平行な偏光光、つまり、y方向の偏光光を入射する必要がある。セル105にy方向の偏光光を照射したときの第1の基板105aの吸収スペクトルを図20(B)に示す。図20(B)より、第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収ピークのみ観測できる。
【0055】
セル105に照射されたy方向の偏光光は第1の基板105aを透過した後、第2の基板105bに照射される。図20(C)に、y方向の偏光光を照射したときの第2の基板105bの吸収スペクトルを示す。図20(C)より、2つの吸収ピークが表れることがわかる。長波長側の吸収ピークは、第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収ピークであり、短波長側の吸収ピークは、第2金属ナノロッド109bの短軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収ピークである。2つの吸収ピークが表れる理由は、y方向の偏光光が、第2金属ナノロッド109bの長軸と短軸に平行な2つの偏光成分から成っているからである。よって、第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収のみを得るために照射されたy方向の偏光光では、第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収も得てしまうため、第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収のみを得ることができない。したがって、第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収のみを得るためにy方向の偏光光を照射した場合には、第2金属ナノロッド109bによる長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴による吸収が発生しないようにする必要がある。そのためには、y方向の偏光光に対して、第2金属ナノロッド109bの長軸を垂直にする必要がある。
【0056】
(抗原の濃度を測定する方法)
実施の形態1による装置100を用いて、被検溶液に含まれる抗原の濃度を測定する方法が、図面を参照しながら、以下、説明される。
【0057】
(前測定)
まず、装置100が準備される。そして、セル105が光学測定装置200に挿入される。前測定においては、当該セル105は、被検溶液を保持していない。すなわち、一般的には、セル105は真空であるか、または空気が満たされている。
【0058】
光源101の電源が入れられる。光源101から放射された光は、レンズ102により整形され、そして偏光板103を通過する。
【0059】
偏光板103を通過した偏光光は、第1金属ナノロッド109aの長軸に平行な偏光成分のみを有する。偏光光がセル105を通過すると、第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長における光の消衰が極大となる。複数の第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長においては、光は消衰しない。セル105を透過した偏光光は、レンズ104により集光され、スリット106を透過し、グレーティング素子107により分散され、そして受光器108に到達する。当該偏光光は、請求の範囲における「第3の光」に対応する。
【0060】
マイクロコンピュータ110は、受光器108の各受光領域において検出された光強度に基づいて、光の消衰が極大となる波長を決定する。当該波長は、被検溶液を供給する前の波長λa0として、メモリ111に格納される。
【0061】
波長λa0が決定された後、マイクロコンピュータ110は、偏光板103を90°回転させる。このことは、偏光板103を通過した偏光光が、第2金属ナノロッド109bの長軸に平行な偏光成分のみを有することをもたらす。
【0062】
当該偏光光がセル105を通過すると、第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長における光の消衰が極大となる。当該偏光光は、請求の範囲における「第4の光」に対応する。第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長においては、光は消衰しない。上記と同様に、被検溶液を供給する前の波長λb0として、メモリ111に格納される。
【0063】
波長λa0:第1金属ナノロッド109aの長軸に平行な偏光成分のみを有する偏光光が被検溶液を供給する前のセル105を通過したことによって生じた光の消衰が極大化される波長。
【0064】
波長λb0:第2金属ナノロッド109bの長軸に平行な偏光成分のみを有する偏光光が被検溶液を供給する前のセル105を通過したことによって生じた光の消衰が極大化される波長。
【0065】
本実施の形態では、被検溶液を供給する前に、セル105および装置100により波長λa0および波長λb0が決定された。これに代えて、予め決定された波長λa0および波長λb0がメモリ111に格納されてもよい。
【0066】
(工程(a)および工程(b))
装置100が準備される。セル105に被検溶液が満たされる。被検溶液に含有される抗原が、第1金属ナノロッド109a上の抗体112aと特異的に結合する。一方、当該抗原は、ブロッキング物質112cには結合しない。
【0067】
(工程(c))
抗体112aに抗原が充分に結合した後、光源101の電源を入れる。波長λa0の測定と同様に、第1金属ナノロッド109aの長軸に平行な偏光成分のみを有する偏光光がセル105に透過され、第1の光を得る。受光器108は、当該第1の光を受光する。
【0068】
(工程(d))
マイクロコンピュータ110は、受光器108における光強度に基づいて、光の消衰が極大となる波長を決定する。当該波長は、被検溶液を供給した後の波長λa1として、メモリ111に格納される。そして、マイクロコンピュータ110は、抗原の抗体への結合による共鳴波長シフト量Δλaを、以下の等式から算出する:
Δλa=λa1−λa0。
【0069】
(工程(e))
その後、マイクロコンピュータ110は、偏光板103を90°回転させる。このことは、偏光板103を通過した偏光光が、第2金属ナノロッド109bの長軸に平行な偏光成分のみを有することをもたらす。
【0070】
(工程(f))
波長λb0の測定と同様に、第2金属ナノロッド109bの長軸に平行な偏光成分のみを有する偏光光がセル105に透過され、第2の光を得る。受光器108は、当該第2の光を受光する。
【0071】
(工程(g))
マイクロコンピュータ110は、受光器108における光強度に基づいて、光の消衰が極大となる波長を決定する。当該波長は、被検溶液を供給した後の波長λb1として、メモリ111に格納される。そして、マイクロコンピュータ110は、被検溶液が複数の第2金属ナノロッド109bに接触することにより生じる共鳴波長シフト量Δλbを、以下の等式から算出する:
Δλb=λb1−λb0。
【0072】
(工程(h))
マイクロコンピュータ110は、ΔλaとΔλbとの差を算出し、抗原の抗体112aへの結合による正確な共鳴波長シフト量Δλを算出する。
【0073】
その後、マイクロコンピュータ110は、正確な共鳴波長シフト量Δλと抗原の濃度との間の相関関係(以下、「検量線」という)を参照しながら、抗原の濃度を算出する。言うまでもないが、マイクロコンピュータ110はメモリ111に当該検量線を予め保持している。
【0074】
算出された抗原の濃度は、例えば、スピーカー(図示せず)またはディスプレイによりユーザに通知される。
【0075】
上記検量線は、例えば、以下の手順によって取得され得る。
【0076】
様々な抗原濃度を持つ被検溶液を作製する。この被検溶液の溶媒は純水であり、溶質は抗原である。被検溶液を供給する前のセル105の局在型表面プラズモン共鳴波長λa0とλb0を測定する。その後、既知のある抗原濃度を持った被検溶液をセル105に供給し、波長λa1とλb1を測定する。その後、以下の3つの等式からある抗原濃度に対する共鳴波長シフト量Δλを算出する。
Δλa=λa1−λa0
Δλb=λb1−λb0
Δλ=Δλa−Δλb
様々な抗原濃度の被検溶液に対し、Δλを求め、縦軸を共鳴波長シフト量Δλ、横軸を抗原濃度としてプロットすることにより、検量線を得ることができる。
【0077】
(本発明の課題および効果の詳細)
長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長は、金属ナノロッドの周辺の屈折率に対して非常に敏感である。
【0078】
10nmの平均短軸長および37nmの平均長軸長を有するAuナノロッドが用いられた場合、1.0×100の屈折率の変化は、長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長を、およそ220nm、長波長側へシフトすることをもたらす。
【0079】
Auナノロッド上に修飾された抗体に抗原が吸着し、Auナノロッドの周辺の屈折率の変化のため、局在型表面プラズモン共鳴波長がシフトする。
【0080】
当該抗原が当該抗体と結合する前の局在型表面プラズモン共鳴波長と、当該抗原が当該抗体と結合した後の局在型表面プラズモン共鳴波長との差、すなわち共鳴波長シフト量が測定される。当該共鳴波長シフト量に基づいて、抗原の抗体への結合による屈折率変化量が算出される。このようにして、抗原の濃度が算出される。
【0081】
しかし、金属ナノロッドの周辺の屈折率は、抗原の抗体への結合だけでなく、金属ナノロッドの周辺の媒質が真空または空気から被検溶液に置換されることによっても変化する。
【0082】
すなわち、共鳴波長シフト量Δλaは、抗原が抗体に結合することによる局在型表面プラズモン共鳴波長のシフト量(以下、「シフト量A1」という。これはΔλに等しい)、および周辺の媒質が空気から被検溶液に置換されることによって生じた共鳴波長シフト量(以下、「シフト量A2」という)を含む。
【0083】
被検溶液は、アルブミンおよびグロブリンを含有し得る。各個体は、異なるアルブミン濃度を有する。各個体は、異なるグロブリン濃度を有する。シフト量Δλaは、アルブミンの濃度およびグロブリンの濃度を、シフト量A2として含む。そのため、抗原の濃度をシフト量Δλaのみから正確に求めることは困難である。
【0084】
この理由について、図18〜23を用いて詳細に説明する。
【0085】
図18(A)は、第1の抗体112aにより修飾された第1金属ナノロッド109aを有する第1の基板105aを示す。
【0086】
図18(B)は、被検溶液が供給される前の第1の基板105aに、第1金属ナノロッド109aの長軸に平行な光が照射されることによって発生した吸収スペクトルを示す。λa0は、得られた局在型表面プラズモン共鳴波長である。
【0087】
図18(C)は、被検溶液が供給され、第1の抗体112aに抗原が十分に結合した後の吸収スペクトルを示す。λa1は、図18(C)における実線のスペクトルにおける局在型表面プラズモン共鳴波長である。図18(C)中の点線は、図18(B)の吸収スペクトルである。
【0088】
抗体112aへの抗原の結合による共鳴波長シフト量Δλaは以下の式で表される:
Δλa=λa1−λa0。
【0089】
Δλaは、シフト量A1だけでなく、シフト量A2をも含む。
【0090】
抗原の濃度が0Mである場合、Δλaは、周辺の媒質が空気から被検溶液に置換されることによって生じた屈折率変化による共鳴波長シフト(シフト量A2)のみを表す。
【0091】
被検溶液の屈折率は、抗原以外の物質(例えば、アルブミンおよびグロブリン)の濃度に依存して変化する。アルブミンおよびグロブリンの濃度は、各個体に依存して変化し得る。従って、抗原の濃度が0Mであっても、Δλaは各個体に依存して変化し得る。そのため、Δλaのみから抗原の濃度は正確に算出され得ない。特に、抗原の濃度が10-10M以下である場合、この傾向が顕著に見られる。なぜなら、アルブミンおよびグロブリンの血中濃度は10-3程度であるからである。
【0092】
被検物質が、血液、尿、唾液、汗のような体液に含有される疾患マーカーまたはホルモンである場合、本発明は特に有効である。この理由が以下に記述される。
【0093】
体液に含有される抗原の濃度は極めて低い。具体的には、当該濃度は10-15〜10-8Mである。一方、血液に含有されるアルブミンまたはグロブリンの濃度はおよそ10-3Mである。各個体は、アルブミンまたはグロブリンの異なる濃度を有する。当該最大濃度は、最低濃度のおよそ2倍である。例えば、アルブミンの最大濃度と最低濃度との間の差は、およそ2000mg/dlである。
【0094】
当該濃度差が、個体間での血液の屈折率の違いをもたらす。1mg/dlのたんぱく質の濃度の変化は、およそ1.9×10-6の屈折率の変化をもたらす。従って、各個体間でのアルブミンによる屈折率の最大差は、およそ3.8×10-3である。
【0095】
Auナノロッドが用いられる場合、1.0×100(=1)の屈折率の変化は、およそ250nmの共鳴波長のシフトをもたらす。従って、3.8×10-3の屈折率の変化は、およそ0.95nmの共鳴波長のシフトをもたらす。一方、およそ10-12Mの濃度を有する抗原を抗体に結合させることによって生じる共鳴波長のシフト量はおよそ10-2nmである。従って、抗原を抗体に結合させることによって生じる共鳴波長のシフト量は、各個体に依存するアルブミン濃度の差によって生じるシフト量よりもずっと小さい。さらに、血液中では、糖分、塩分等が屈折率に影響を及ぼす。
【0096】
よって、共鳴波長のシフト量が、個体に依存して生じるシフト量なのか、抗原を抗体に結合させることによって生じるシフト量なのかを区別することができないため、抗原濃度を正確に求めることができない。
【0097】
本発明では、図19(A)に示されるように、第2の基板105bが、ブロッキング物質112cにより修飾された複数の第2金属ナノロッド109bを参照領域として具備している。
【0098】
図19(B)は、被検溶液が供給される前の第2の基板105bに、第2金属ナノロッド109bの長軸に平行な光が照射されることによって生じた吸収スペクトルを示す。λb0は、得られた局在型表面プラズモン共鳴波長である。
【0099】
図19(C)は、被検溶液が供給された後の吸収スペクトルを示す。λb1は、図19(C)における実線のスペクトルにおける局在型表面プラズモン共鳴波長である。図19(C)中の点線は、図19(B)の吸収スペクトルである。
【0100】
共鳴波長シフト量Δλbは、複数の第2金属ナノロッド109bの周辺の媒質が真空または空気から被検溶液に置換されたことによって生じた共鳴波長シフト量A2に等しく、以下の式により表される:
Δλb=λb1−λb0。
【0101】
ΔλaとΔλbの差を求めることにより、共鳴波長シフト量A1(=Δλ)が算出される。
【0102】
(その他)
本実施の形態においては、光源として、ハロゲン光源101を用いたが、局在型表面プラズモン共鳴波長を含む光を放射する光源であれば、特に限定することなく利用することができる。本実施の形態では、無偏光のハロゲン光源101を用いたが、特定の偏光を持つ光源を用いることもできる。特定の偏光を持つ光源としては、レーザー光源などが挙げられる。特定の偏光を持つ光源を用いた場合、偏光制御手段としては、波長板を用いることができる。
【0103】
モーターなどを用い、特定の偏光を持つ光源自体を回転させることにより偏光方向を回転させる手段も、偏光制御手段として用いることができる。
【0104】
この時、被検溶液が満たされているかどうかを判定するためのセンサを備えていることが好ましい。例えば、カバーガラス105eと第1の基板105aに電極を設け、さらに、第1の基板105aと第2の基板105bに別の電極を設けておき、セル105を光学測定装置200に挿入した後、電極に弱い電圧がかかるようにしておく。被検溶液が例えば血液である場合、血液には電解質が含まれることから、被検溶液が満たされると電極間に電流が流れ、被検溶液が第1の被検溶液保持空間105f、第2の被検溶液保持空間105gに満たされているかどうかが判定できる。さらに前記センサの出力を利用してハロゲン光源101の電源を自動的にONにすることが、測定を自動化できるため好ましい。
【0105】
(実施の形態2)
本発明の別の実施の形態について、図7〜図9を用いて説明する。
【0106】
図7〜図9において、図1〜図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0107】
図7は、本発明の実施の形態2に係る生体成分濃度測定装置の構成を示す図である。図7において、実施の形態1と異なる構成は、セル205が、生体成分濃度測定用セルとして第1の基板105aの第1金属ナノロッド109aが形成されている面と第2の基板105bの第2金属ナノロッド109bが形成されている面が対面するように構成されている点である。その他の構成は同じであるので、説明を省略する。
【0108】
図8は、本発明の実施の形態2におけるセル205の断面図である。セル205は、第1金属ナノロッド109a、第2金属ナノロッド109bが設けられている第1の基板105a、第2の基板105b、スペーサ205cから構成されている。また、第1の基板105a、スペーサ205c、第2の基板105bで形成される被検溶液保持空間205fと、被検溶液の供給口、排出口(図示せず)から構成されている。
【0109】
図9は、セル205の第1の基板105a、第2の基板105bの金属ナノロッドが形成された部分の斜視図である。第1の基板105aには、長軸が同一方向に配向した金属ナノロッド109aが形成されている。第2の基板105bには、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aと長軸が垂直に配向した第2金属ナノロッド109bが形成されている。第1金属ナノロッド109aには抗体112aが修飾されている。第2金属ナノロッド109bにはブロッキング物質112cが修飾されている。
【0110】
第1金属ナノロッド109a、第2金属ナノロッド109bが形成された面が対面するようにセル205が形成されている。このような構成にすることにより、被検溶液保持空間205fを1つのみ設ければよいので、被検溶液を供給することが容易になる。
【0111】
被検溶液が満たされているかどうかを判定するためのセンサは、簡便な構成を有する。例えば、第1の基板105aと第2の基板105bに電極を設けておき、セル205を光学測定装置200に挿入した後、電極に弱い電圧がかかるようにしておく。被検溶液が例えば血液である場合、血液には電解質が含まれることから、被検溶液が満たされると電極間に電流が流れ、被検溶液が被検物質保持空間205fに満たされているかどうかが判定できる。さらに前記センサの出力を利用してハロゲン光源101の電源を自動的にONにすることが、測定を自動化できるため好ましい。
【0112】
本実施の形態における生体成分濃度計測装置の動作については、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。本実施の形態によれば、被検溶液の供給が容易かつ、セルの作製が簡単な生体成分濃度測定用セルを提供することができる。
【0113】
(実施の形態3)
本発明の別の実施の形態について、図10〜図11を用いて説明する。
【0114】
本実施の形態において、実施の形態1と異なる構成は、生体成分濃度測定用セル405が第2の基板105bの底面に歯車313を備え、光学測定装置400が、生体成分濃度測定用セル405の歯車313と連結する歯車113、歯車113と連結するシャフト114、シャフト114と連結し歯車113を回転させるモーター115とを備えている点である。その他の構成は同じであるので、説明は省略する。
【0115】
図11は、本発明の実施の形態3における生体成分濃度測定用セル405の構成を示す図である。図11(A)は、生体成分濃度測定用セル405の断面を示す図であり、図11(B)は生体成分濃度測定用セル405の分解斜視図である。
【0116】
第2の基板105bの底面に歯車313が備えられている。歯車313は、第1の基板105a、第2の基板105bを通過してきた光を遮ることがないように、貫通孔306を備えている。
【0117】
本実施の形態における歯車113、シャフト114、モーター115、歯車313は本発明におけるセル回転手段に相当する。本実施の形態では、ハロゲン光源101の偏光を選択するために偏光板103を用いているが、特定の偏光を持つ光源を用いることもできる。特定の偏光を持つ光源としては、レーザー光源などが挙げられる。特定の偏光を持つ光源を用いた場合、偏光板103を用いなくてもよい。
【0118】
次に、本実施の形態における生体成分濃度計測装置の動作について、図面を参照しながら説明する。まず、セル405を光学測定装置400に挿入する。光学測定装置400にセル405が挿入されるとハロゲン光源101の電源が入れられる。ハロゲン光源101から放射された光は、レンズ102により整形され、偏光板103を通過する。
【0119】
マイクロコンピュータ110は、偏光板103を通過した光の偏光方向と、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸方向が平行になるように、モーター115により歯車113を回転させ、セル405を回転させる。
【0120】
偏光板103を通過した光の偏光方向と、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸方向が平行であることを検知する手段としては、あらかじめ、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸方向が分かるように、セル405に凹部(図示せず)を設け、フォトセンサにより検出する方法を用いてもよい。
【0121】
偏光板103を通過した光は、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸に平行になるように回転させたセル405を通過する。その際、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長において光の消衰が極大となる。第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長においては、光は消衰しない。セル105を透過した光は、レンズ104により集光され、スリット106を透過し、グレーティング素子107により分散され、受光器108における各受光領域に到達する。
【0122】
マイクロコンピュータ110は、受光器108の各受光領域が検出した光強度に基づいて光の消衰が極大となる波長を決定し、被検溶液供給前の第1の波長λa0としてメモリ111に格納する。
【0123】
被検溶液供給前の第1の波長λa0を決定した後、マイクロコンピュータ110は、偏光板103を通過した光の偏光方向と第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸方向が平行になるようにモーター115により歯車113を回転させ、セル405を回転させる。
【0124】
偏光板103を通過した光は、第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸に平行になるように回転させたセル405を通過する。その際、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長では、光は消衰しない。一方、同時に第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長において光の消衰が極大となる。
【0125】
セル105を透過した光はレンズ104により集光され、スリット106を透過し、グレーティング素子107により分散され、受光器108における各受光領域に到達する。マイクロコンピュータ110は、受光器108の各受光領域が検出した光強度に基づいて光の消衰が極大となる波長を決定し、被検溶液供給前の第2の波長λb0としてメモリ111に格納し、ハロゲン光源101の電源を切る。λa0とλb0の計測が完了し、被検溶液を供給可能な状態であることは、例えば、スピーカー(図示せず)を通じて音声での通知や、ディスプレイ等(図示せず)に表示させることにより、ユーザに通知される。その後、被検物質が含まれる被検溶液を供給する。
【0126】
セル105に被検溶液が満たされると、被検溶液中の被検物質である抗原が、第1金属ナノロッド109a上の抗体112aと特異的に結合する。
【0127】
一定時間が経過し、抗体112aと抗原が結合した後、ハロゲン光源101の電源を入れる。ハロゲン光源101から放射された光は、レンズ102により整形され、偏光板103を通過する。
【0128】
マイクロコンピュータ110は、偏光板103を通過した光の偏光方向と、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸方向が平行になるように、モーター115により歯車113を回転させ、セル405を回転させる。
【0129】
偏光板103を通過した光は、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸に平行になるように回転させたセル405を通過する。その際、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長において光の消衰が極大となる。第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長においては、光は消衰しない。
【0130】
セル105を透過した光は、レンズ104により集光され、スリット106を透過し、グレーティング素子107により分散され、受光器108における各受光領域に到達する。
【0131】
マイクロコンピュータ110は、受光器108の各受光領域が検出した光強度に基づいて光の消衰が極大となる波長を決定し、被検溶液が供給された後の第1の波長λa1としてメモリ111に格納する。
【0132】
この時、被検溶液が満たされているかどうかを判定するためのセンサを備えていることが好ましい。例えば、カバーガラス105eと第1の基板105aに電極を設け、さらに、第1の基板105aと第2の基板105bに別の電極を設けておき、セル405を光学測定装置400に挿入した後、電極に弱い電圧がかかるようにしておく。被検溶液が例えば血液である場合、血液には電解質が含まれることから、被検溶液が満たされると電極間に電流が流れ、被検溶液が第1の被検溶液保持空間105f、第2の被検溶液保持空間105gに満たされているかどうかが判定できる。さらに前記センサの出力を利用してハロゲン光源101の電源を自動的にONにすることが、測定を自動化できるため好ましい。
【0133】
被検溶液が供給された後の第1の波長λa1を決定した後、マイクロコンピュータ110は、偏光板103を通過した光の偏光方向と第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸方向が平行になるようにモーター115により歯車113を回転させ、セル405を回転させる。
【0134】
偏光板103を通過した光は、第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸に平行になるように回転させたセル405を通過する。その際、第1の基板105aに形成された第1金属ナノロッド109aの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長では、光は消衰しない。一方、同時に第2の基板105bに形成された第2金属ナノロッド109bの長軸由来の局在型表面プラズモン共鳴波長において光の消衰が極大となる。
【0135】
セル105を透過した光はレンズ104により集光され、スリット106を透過し、グレーティング素子107により分散され、受光器108における各受光領域に到達する。マイクロコンピュータ110は、受光器108の各受光領域が検出した光強度に基づいて光の消衰が極大となる波長を決定し、被検溶液が供給された後の第2の波長λb1としてメモリ111に格納する。
【0136】
次に、マイクロコンピュータ110は、λa1とλa0の差を算出し、第1の基板における共鳴波長シフト量Δλaを算出する。
【0137】
同様に、マイクロコンピュータ110は、λb1とλb0の差を算出し、第2の基板における共鳴波長シフト量Δλbを算出する。
【0138】
さらに、マイクロコンピュータ110は、ΔλaとΔλbの差を算出し、被検物質である抗原が抗体112aに結合することによる共鳴波長シフト量Δλを算出する。
【0139】
その後、マイクロコンピュータ110は、メモリ111にあらかじめ格納されている共鳴波長シフト量Δλと被検物質濃度の相関関係を参照し、被検物質の濃度を算出する。算出された被検物質の濃度は、例えば、スピーカー(図示せず)を通じて音声での通知や、ディスプレイ等(図示せず)に表示させることにより、ユーザに通知される。
【0140】
本実施の形態では、実施の形態1の生体成分濃度計測装置にセル回転手段を設けたが、実施の形態2の生体成分濃度計測装置に同様にセル回転手段を設けてもよい。本実施の形態では、修飾されている物質を抗体としたが、他の物質を抗体とすることも可能である。本実施の形態において、光源として、ハロゲン光源101を用いたが、局在型表面プラズモン共鳴波長を含む光を放射する光源であれば、特に限定することなく利用することができる。
【0141】
本実施の形態によれば、単にセルを回転させるだけで、光源、検出領域、光検出器の位置関係を変化させたり、測定領域を移動したりする必要がない。光照射のための複数の光軸を設けたり、照射領域を大きくしたりする必要もないので装置構成が簡便となり、かつ、高精度に生体成分濃度を測定することができる。
【0142】
(実施の形態4)
本発明の別の実施の形態について、図12〜図14を用いて説明する。
【0143】
図12において、実施の形態1と異なる構成は、生体成分濃度測定用セルであるセル505が平面基板505aの第1金属ナノロッド109aが形成されている面の裏面に第2金属ナノロッド109bが構成されている点である。セル505以外の構成は同じであるので、説明を省略する。
【0144】
図13は、本実施の形態4におけるセル505の断面図である。セル505は第1金属ナノロッド109a、第2金属ナノロッド109bが設けられている平面基板505a、第1のカバーガラス505b、第2のカバーガラス505e、第1のスペーサ505c、第2のスペーサ505d、被検溶液の供給口(図示せず)、排出口(図示せず)から構成されている。また、第1のカバーガラス505b、平面基板505a、第1のスペーサ505cから構成される第1の被検溶液保持空間505fと第2のカバーガラス505e、平面基板505a、第2のスペーサ505dから構成される第2の被検溶液保持空間505gを備える。
【0145】
図14は、セル505の平面基板505aの金属ナノロッドが形成された部分の斜視図である。平面基板505aの一方の面には、長軸が同一方向に配向した第1金属ナノロッド109aが形成されており、平面基板505aの他方の面には、第1金属ナノロッド109aの長軸方向と垂直な方向に長軸が配向した第2金属ナノロッド109b(一部のみ図示)が形成されている。第1金属ナノロッド109aには、第1の抗体112a、第2金属ナノロッド109bには、ブロッキング物質112cが修飾されている。
【0146】
このような構成にすることにより、金属ナノロッドが形成された基板を張り合わせる必要がないので、張り合わせにより、第1金属ナノロッド109aと第2金属ナノロッド109bの長軸の方向は、垂直方向から変わらない。よって、測定精度向上につながる。本実施の形態における生体成分濃度計測装置の動作については、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。また、実施の形態3のように計測領域と参照領域を設けてもよい。
【0147】
本実施の形態によれば、セルの作製精度が高く、計測精度が高い生体成分濃度測定用セルを提供できる。
【0148】
(実施の形態5)
本発明の別の実施の形態について、図15〜図17を用いて説明する。
【0149】
図15において、実施の形態1と異なる構成は、生体成分濃度測定用セルであるセル605が、第1の基板605aの第1金属ナノロッド109aが形成されている面と、第2の基板605bの第2金属ナノロッド109bが形成されている面が逆方向を向いて構成されている点である。セル605以外の構成は同じであるので、説明を省略する。
【0150】
図16は、本実施の形態5におけるセル605の断面図である。セル605は第1金属ナノロッド109aが設けられている第1の基板605a、第2金属ナノロッド109bが設けられている第2の基板605b、第1のカバーガラス605e、第2のカバーガラス605h、第1のスペーサ605c、第2のスペーサ605d、第3のスペーサ605i、被検溶液の供給口(図示せず)、排出口(図示せず)から構成されている。また、第1のカバーガラス605e、第1の基板605a、第1のスペーサ605cから構成される第1の被検溶液保持空間605fと第2のカバーガラス605h、第2の基板605b、第3のスペーサ605iから構成される第2の被検溶液保持空間605gを備える。
【0151】
図17は、セル605の第1の基板605aの金属ナノロッドが形成された部分と第2の基板605bの金属ナノロッドが形成された部分の斜視図である。第1の基板605aには、長軸が同一方向に配向した第1金属ナノロッド109aが形成されており、第2の基板605bには、第1金属ナノロッド109aの長軸と垂直な方向に長軸が配向した第2金属ナノロッド109bが形成されている。第1の基板605aの第1金属ナノロッド109aが形成された面と第2の基板605bの第2金属ナノロッド109bが形成された面は、互いに逆方向を向いている。第1金属ナノロッド109aには、第1の抗体112aが修飾されており、第2金属ナノロッド109bには、ブロッキング物質112cが修飾されている。
【0152】
本実施の形態における生体成分濃度計測装置の動作については、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。本実施の形態によれば、計測精度が高い生体成分濃度測定用セルを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明にかかる生体成分濃度測定装置は、小型でかつ高精度に生体成分濃度を測定することができるので、被検物質の濃度が低く、複数の被検物質濃度を測定する際に有用である。
【符号の説明】
【0154】
100、300 生体成分濃度計測装置
101 ハロゲン光源
102 レンズ
103 偏光板
104 レンズ
105、205、305、405、505、605 セル
105a、605a 第1の基板
105b、605b 第2の基板
105c、505c、605c 第1のスペーサ
105d、505d、605d 第2のスペーサ
105e カバーガラス
105f、505f、605f 第1の被検溶液保持空間
105g、505g、605g 第2の被検溶液保持空間
105h 基板
106 スリット
107 グレーティング素子
108 複数の受光領域を持つ光検出器
109a、109b、109c 金属ナノロッド
110 マイクロコンピュータ
111 メモリ
112a 第1の抗体
112b 第2の抗体
112c ブロッキング物質
113 歯車
114 シャフト
115 モーター
200、400 光学計測装置
205c スペーサ
205f 被検溶液保持空間
306 貫通孔
313 歯車
505a 平面基板
505b、605e 第1のカバーガラス
505e、605h 第2のカバーガラス
605i 第3のスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体成分の濃度を測定する装置を用いて被検溶液に含まれる第1抗原の濃度を測定する方法であって、以下の工程(a)〜(h)を具備する、方法:
前記装置を準備する工程(a)、
ここで、前記装置は、
第1領域、第2領域、および前記被検溶液を保持する空間を内部に具備するセル、
光源、
前記光源から出射された光を偏光する偏光板、ならびに
前記第1領域、前記第2領域および前記被検溶液保持空間と交差する光軸に沿って前記セルを透過した光を受け取る受光器を備え、
前記第1領域には、表面に第1抗体を有する複数の第1金属ナノロッドが固定化されており、
前記第2領域には、表面にブロッキング物質を有する複数の第2金属ナノロッドが固定化されており、
前記複数の第1金属ナノロッドの長軸が同一方向に配向しており、
前記複数の第2金属ナノロッドの長軸が同一方向に配向しており、
前記第1金属ナノロッドの長軸方向が、前記第2金属ナノロッドの長軸方向に直交しており、
前記偏光板および前記セルの少なくとも一方が、前記光軸を回転軸として回転可能であり、
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給し、前記第1抗原を前記第1抗体に結合させるが、前記第1抗原を前記ブロッキング物質には結合させない工程(b)、
前記複数の第1金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、得られた第1の光を前記受光器で受け取る工程(c)、
前記第1の光に基づいて、前記第1抗原が前記抗体に結合したことによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長の共鳴波長シフト量Δλaを算出する工程(d)、
前記偏光板および前記セルの少なくとも一方を回転させ、前記偏光板を透過した偏光を複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行に設定する工程(e)、
前記複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、得られた第2の光を前記受光器で受け取る工程(f)、
前記第2の光に基づいて、前記被検溶液保持空間に前記被検溶液が供給されることによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長の共鳴波長シフト量Δλbを算出する工程(g)、
以下の等式によって表される差および検量線に基づいて、前記第1抗原の濃度を算出する工程(h)、
前記差=前記Δλa−前記Δλb。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに以下の工程(i)および(j)を具備する、方法:
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前に、前記複数の第1金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、第3の光を得る工程(i)、および
前記第3の光に基づいて、前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前の前記複数の第1金属ナノロッドによる局在型表面プラズモン共鳴波長λa0を算出する工程(j)、
ここで、工程(d)において、前記第1抗原が前記抗体に結合したことによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長λa1を求め、そして前記Δλaを以下の等式により求める
前記Δλa=前記λa1−前記λa0。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、さらに以下の工程(k)および(l)を具備する、方法:
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前に、前記複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、第4の光を得る工程(k)、および
前記第4の光に基づいて、前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前の前記第2金属ナノロッドによる局在型表面プラズモン共鳴波長λb0を算出する工程(l)、
工程(g)において、前記被検溶液保持空間に前記被検溶液が供給されることによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長λb1を求め、そして前記Δλbを以下の等式により求める
前記Δλb=前記λb1−前記λb0。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、さらに以下の工程(k)および(l)を具備する、方法:
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前に、前記複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、第4の光を得る工程(k)、および
前記第4の光に基づいて、前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前の前記第2金属ナノロッドによる局在型表面プラズモン共鳴波長λb0を算出する工程(l)、
工程(g)において、前記被検溶液保持空間に前記被検溶液が供給されることによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長λb1を求め、そして前記Δλbを以下の等式により求める
前記Δλb=前記λb1−前記λb0 。
【請求項5】
前記セルが、第1基板および第2基板を具備し、
前記第1基板が、一方の面に前記第1領域を有し、
前記第2基板が、一方の面に前記第2領域を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1領域と、前記第2領域とが、同一方向を向いている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1領域の周囲に、第1スペーサが配され、
前記第1スペーサを介して前記第1基板と対向するカバーが配され、
前記第1領域、前記第1スペーサおよび前記カバーが、第1空間を形成しており、
前記第2領域の周囲に、第2スペーサが配され、
前記第1基板の他方の面、前記第2領域および前記第2スペーサが、第2空間を形成しており、
前記第1空間および前記第2空間が、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1領域が、前記第2領域に対向している、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1領域の周囲または前記第2領域の周囲に、スペーサが配され、
前記第1領域、前記第2領域および前記スペーサが、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1領域の周囲に、第1スペーサが配され、
前記第1スペーサを介して前記第1基板と対向する第1カバーが配され、
前記第1領域、前記第1スペーサおよび前記第1カバーが、第1空間を形成しており、
前記第2領域の周囲に、第2スペーサが配され、
前記第2スペーサを介して前記第2基板と対向する第2カバーが配され、
前記第2領域、前記第2スペーサおよび前記第2カバーが、第2空間を形成しており、
前記第1空間および前記第2空間が、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記セルが、第1基板を具備し、
前記第1基板が、一方の面に前記第1領域を有し、他方の面に前記第2領域を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1領域の周囲に、第1スペーサが配され、
前記第1スペーサを介して前記第1基板と対向する第1カバーが配され、
前記第2領域の周囲に、第2スペーサが配され、
前記第2スペーサを介して前記第1基板と対向する第2カバーが配され、
前記第1領域、前記第1スペーサおよび前記第1カバーが、第1空間を形成しており、
前記第2領域、前記第2スペーサおよび前記第2カバーが、第2空間を形成しており、
前記第1空間および前記第2空間が、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生体成分の濃度を測定する装置を用いて被検溶液に含まれる第1抗原の濃度を測定する方法であって、以下の工程(a)〜(h)を具備する、方法:
前記装置を準備する工程(a)、
ここで、前記装置は、
第1領域、第2領域、および前記被検溶液を保持する空間を内部に具備するセル、
偏光した光を前記セルに放射する光源、ならびに
前記第1領域、前記第2領域および前記被検溶液保持空間と交差する光軸に沿って前記セルを透過した光を受け取る受光器を備え、
前記第1領域には、表面に第1抗体を有する複数の第1金属ナノロッドが固定化されており、
前記第2領域には、表面にブロッキング物質を有する複数の第2金属ナノロッドが固定化されており、
前記複数の第1金属ナノロッドの長軸が同一方向に配向しており、
前記複数の第2金属ナノロッドの長軸が同一方向に配向しており、
前記第1金属ナノロッドの長軸方向が、前記第2金属ナノロッドの長軸方向に直交しており、
前記光源および前記セルの少なくとも一方が、前記光軸を回転軸として回転可能であり、
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給し、前記第1抗原を前記第1抗体に結合させるが、前記第1抗原を前記ブロッキング物質には結合させない工程(b)、
前記複数の第1金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、得られた第1の光を前記受光器で受け取る工程(c)、
前記第1の光に基づいて、前記第1抗原が前記抗体に結合したことによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長の共鳴波長シフト量Δλaを算出する工程(d)、
前記光源および前記セルの少なくとも一方を回転させ、前記偏光を複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行に設定する工程(e)、
前記複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、得られた第2の光を前記受光器で受け取る工程(f)、
前記第2の光に基づいて、前記被検溶液保持空間に前記被検溶液が供給されることによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長の共鳴波長シフト量Δλbを算出する工程(g)、
以下の等式によって表される差および検量線に基づいて、前記第1抗原の濃度を算出する工程(h)、
前記差=前記Δλa−前記Δλb。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、さらに以下の工程(i)および(j)を具備する、方法:
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前に、前記複数の第1金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、第3の光を得る工程(i)、および
前記第3の光に基づいて、前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前の前記複数の第1金属ナノロッドによる局在型表面プラズモン共鳴波長λa0を算出する工程(j)、
ここで、工程(d)において、前記第1抗原が前記抗体に結合したことによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長λa1を求め、そして前記Δλaを以下の等式により求める
前記Δλa=前記λa1−前記λa0。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、さらに以下の工程(k)および(l)を具備する、方法:
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前に、前記複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、第4の光を得る工程(k)、および
前記第4の光に基づいて、前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前の前記第2金属ナノロッドによる局在型表面プラズモン共鳴波長λb0を算出する工程(l)、
工程(g)において、前記被検溶液保持空間に前記被検溶液が供給されることによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長λb1を求め、そして前記Δλbを以下の等式により求める
前記Δλb=前記λb1−前記λb0。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、さらに以下の工程(k)および(l)を具備する、方法:
前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前に、前記複数の第2金属ナノロッドの長軸方向と平行な偏光を、前記光軸に沿って前記セルに透過させ、第4の光を得る工程(k)、および
前記第4の光に基づいて、前記被検溶液を前記被検溶液保持空間に供給する前の前記第2金属ナノロッドによる局在型表面プラズモン共鳴波長λb0を算出する工程(l)、
工程(g)において、前記被検溶液保持空間に前記被検溶液が供給されることによって生じた局在型表面プラズモン共鳴波長λb1を求め、そして前記Δλbを以下の等式により求める
前記Δλb=前記λb1−前記λb0。
【請求項17】
前記セルが、第1基板および第2基板を具備し、
前記第1基板が、一方の面に前記第1領域を有し、
前記第2基板が、一方の面に前記第2領域を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第1領域と、前記第2領域とが、同一方向を向いている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1領域の周囲に、第1スペーサが配され、
前記第1スペーサを介して前記第1基板と対向するカバーが配され、
前記第1領域、前記第1スペーサおよび前記カバーが、第1空間を形成しており、
前記第2領域の周囲に、第2スペーサが配され、
前記第1基板の他方の面、前記第2領域および前記第2スペーサが、第2空間を形成しており、
前記第1空間および前記第2空間が、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1領域が、前記第2領域に対向している、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1領域の周囲または前記第2領域の周囲に、スペーサが配され、
前記第1領域、前記第2領域および前記スペーサが、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1領域の周囲に、第1スペーサが配され、
前記第1スペーサを介して前記第1基板と対向する第1カバーが配され、
前記第1領域、前記第1スペーサおよび前記第1カバーが、第1空間を形成しており、
前記第2領域の周囲に、第2スペーサが配され、
前記第2スペーサを介して前記第2基板と対向する第2カバーが配され、
前記第2領域、前記第2スペーサおよび前記第2カバーが、第2空間を形成しており、
前記第1空間および前記第2空間が、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記セルが、第1基板を具備し、
前記第1基板が、一方の面に前記第1領域を有し、他方の面に前記第2領域を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記第1領域の周囲に、第1スペーサが配され、
前記第1スペーサを介して前記第1基板と対向する第1カバーが配され、
前記第2領域の周囲に、第2スペーサが配され、
前記第2スペーサを介して前記第1基板と対向する第2カバーが配され、
前記第1領域、前記第1スペーサおよび前記第1カバーが、第1空間を形成しており、
前記第2領域、前記第2スペーサおよび前記第2カバーが、第2空間を形成しており、
前記第1空間および前記第2空間が、前記被検溶液保持空間を形成している、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−501917(P2013−501917A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506830(P2012−506830)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【特許番号】特許第5097871号(P5097871)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【国際出願番号】PCT/JP2011/005128
【国際公開番号】WO2012/035753
【国際公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】