説明

被検物質の発がん性予測方法

【課題】被検物質の発がん性を予測する方法を提供する。
【解決手段】Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)及びAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を試験動物に投与し、所定時間経過後に試験動物からmRNAを採取してその発現パターンをそれぞれ予め準備しておき、被検物質の発がん性を予測するに際しては、被検物質にAmes試験を行い、該被検物質がAmes試験陽性又は陰性の何れに属するかを決定する第1工程、被検物質を投与した試験動物からmRNAを採取してその発現パターンを得る第2工程、被検物質が第1工程でAmes試験陽性に属する場合はAmes試験陽性の発がん物質のmRNAの発現パターンと、Ames試験陰性に属する場合はAmes試験陰性の発がん物質のmRNAの発現パターンと、第2工程で得られたmRNAの発現パターンとの一致度を算出し、被検物質の発がん性を予測する第3工程を行う被検物質の発がん性予測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物質の投与により試験動物に発現するmRNAの発現パターンを、発がん性が既知の化学物質の投与により発現するmRNAの発現パターンと比較することにより、被検物質の発がん性を予測する発がん性予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質の有害性(ハザード)評価においては、発がん性など長期毒性を評価するには多額の費用と長期の試験期間を要する動物実験の実施が必要とされる。また、動物実験の結果をヒトへ外挿する際は、種差や作用機序などを考慮しなければならないなど様々な課題がある。
【0003】
近年ではゲノム情報に関する技術の著しい発展により、遺伝子レベルで化学物質の有害性評価が行われるようになっている。例えば、特許文献1には、化学物質を曝露した組織や細胞の遺伝子の発現の差異を検出することにより化学物質の毒性作用を予測する方法が記載されている。
【0004】
化学物質の発がん性の評価においても発がんメカニズムに関与している遺伝子の存在が予想されることからこれらの遺伝子の発現の差異を検出することにより遺伝子レベルでの評価が可能であると考えられる。しかしながら、現段階では、化学物質が引き起こす遺伝子レベルでの発がんメカニズムはほとんど解明されておらず、遺伝子の発現の差異から化学物質の発がん性予測を行うことは非常に困難である。
【0005】
最近では、遺伝子の発現プロファイルデータを網羅的に収集し解析する手法としてDNAマイクロアレイが開発され、様々な分野で使用されるようになっている。DNAマイクロアレイ(DNAチップ)はスライドガラス等の基板上に固定化した数百から数万種類の微量のDNAに、核酸分子同士の相補性を利用してmRNAから作成したcDNA或いはcRNAを結合させ、mRNAの発現量に関する情報を得る技術である。
【0006】
既知の遺伝子を搭載したDNAマイクロアレイが既に商品化され一般に使用できる環境にあるが、市販のアレイは化学物質の毒性評価を目的に設計・製作されたものではない。また、通常の毒性試験規模で使用するにはデータの解析を含めたシステム全体を構築するコストが多大であることから、毒性試験分野で広く活用されていないのが現状である。
【0007】
発がん性物質は遺伝毒性あるいは突然変異誘起性を有していると考えられおり、従来、化学物質のがん原性の第一次スクリーニング試験には復帰変異試験であるAmes試験が広く使用されている。
【特許文献1】特開2003−304888号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、化学物質の発がん性を評価する動物実験では、試験動物に癌が出現するまで、あるいは試験動物が死亡するまで化学物質の連続投与を行うが、癌は長い潜伏期間を経て出現するため長期にわたる動物実験が必要となる。
【0009】
しかしながら、癌が出現する前段階においても、発がん物質の刺激により遺伝子レベルでは何らかの変化が生じていることが予想される。
【0010】
本発明の目的は、がん発生の初期段階に発がんメカニズムに関与している可能性が高い遺伝子群について発現の差異を検出してデータ解析することにより、長期にわたる動物実験を行うことなく被検物質の発がん性を予測する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは発がん物質の投与により発現量が変動するmRNAに着目し、その変動から被検物質の発がん性を予測することを試みた。当初は、これらmRNAの変動パターンが全ての発がん物質で類似性を持つものと考えていた。しかし、実際には異なる挙動を示し、1つの類似性を共有することはなかった。
【0012】
本発明者らは、化学物質の復帰変異試験として広く採用されているAmes試験において陰性を示す発がん物質が存在することに着目し、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)とAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)との間で発がんに到るメカニズムが異なることに想到した。そこで、被検物質を試験動物に投与したときのmRNAの発現パターンを、被検物質のAmes属性に応じてAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)の発現パターン又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)の発現パターンと比較することにより、動物実験の初期段階においても被検物質の発がん性が高い精度で予測できることを見出し本発明を完成するに到った。
【0013】
即ち、上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
【0014】
〔1〕 Ames試験陽性の少なくとも1の発がん物質(C+M+)及びAmes試験陰性の少なくとも1の発がん物質(C+M-)を試験動物に投与し、所定時間経過後に試験動物からmRNAを採取してその発現パターンをそれぞれ予め準備しておき、発がん性未知の被検物質の発がん性を予測するに際しては、
(1)発がん性を予測する被検物質にAmes試験を行い、該被検物質がAmes試験陽性又は陰性の何れに属するかを決定する第1工程、
(2)発がん性を予測する被検物質を試験動物に投与して所定期間経過後、試験動物からmRNAを採取してその発現パターンを得る第2工程、
(3)被検物質が前記第1工程でAmes試験陽性に属する場合は、予め準備したAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)のmRNAの発現パターンと前記第2工程で得られたmRNAの発現パターンとの一致度を算出し、被検物質が前記第1工程でAmes試験陰性に属する場合は、予め準備したAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)のmRNAの発現パターンと前記第2工程で得られたmRNAの発現パターンとの一致度を算出し、算出した一致度から被検物質の発がん性を予測する第3工程、
を行うことを特徴とする被検物質の発がん性予測方法。
【0015】
〔2〕 Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を複数試験動物に投与し、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)について得られた複数のmRNAの発現パターンをその類似性により2以上のグループに分類し、グループ毎にmRNAの発現パターンを準備する〔1〕に記載の被検物質の発がん性予測方法。
【0016】
〔3〕 mRNAの発現パターンが、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)を投与した試験動物とAmes試験陽性の非発がん物質(C-M+)を投与した試験動物の間又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を投与した試験動物とAmes試験陰性の非発がん物質(C-M-)を投与した試験動物の間で発現量の差が有意なmRNAを逆転写したcDNA又はcRNAを搭載したDNAマイクロアレイに、前記第2工程で試験動物から採取したmRNAから調製した蛍光標識cDNA又はcRNAをハイブリダイゼーションさせて得られるDNAマイクロアレイの蛍光パターンを使用するものである〔1〕に記載の発がん性予測方法。
【0017】
〔4〕 DNAマイクロアレイが、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)を投与した試験動物とAmes試験陽性の非発がん物質(C-M+)を投与した試験動物の間及びAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を投与した試験動物とAmes試験陰性の非発がん物質(C-M-)を投与した試験動物の間で発現量の差が有意なmRNAから逆転写反応により合成したcDNA配列の全部又は一部をPCRにより増幅又は化学合成したDNAを搭載したものである〔3〕に記載の被検物質の発がん性予測方法。
【0018】
〔5〕 DNAマイクロアレイが、配列番号1〜1435又は配列番号1436〜2357に記載する塩基配列から選定された3つ以上を搭載したものである〔3〕又は〔4〕に記載の被検物質の発がん性予測方法。
【0019】
〔6〕前記第2工程において、被検物質を1〜90日間試験動物に連続投与した後、試験動物からmRNAを採取する〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の被検物質の発がん性予測方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、被検物質のAmes試験における属性によりAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質のmRNAの発現パターンと、被検物質のmRNAの発現パターンと比較を行うので、従来予測が難しかったmRNAの発現量からの被検物質の発がん性予測が可能となる。
【0021】
本発明においては、mRNAの発現量から被検物質の発がん性を予測するので、試験動物に癌が出現するまで化合物の連続投与を行うような長期にわたる動物実験を必要とせず、1〜90日程度の動物実験で容易に化学物質の発がん性を予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
被検物質の発がん性を予測するに際しては、予め以下の手順に従ってAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)とAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)の発現パターンを準備する。
【0023】
まず最初に、Ames試験陽性の少なくとも1の発がん物質(C+M+)及びAmes試験陰性少なくとも1の発がん物質(C+M-)を各々試験動物に投与して所定時間経過後に試験動物の組織からmRNAを採取する。
【0024】
Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を投与後、試験動物の組織を採取するまでの期間としては、1〜90日程度とするが、より迅速に試験する観点から1〜28日程度とすることが好ましい。
【0025】
発がん物質の試験動物への投与は、1日1〜数回(好ましくは1日1回)、1〜90日程度の所定期間反復して連続投与する。
【0026】
発がん物質の投与方法は特に制限されず、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与等の汎用的な方法を使用できる。
【0027】
試験動物には、ラット、マウス、イヌ、サル、モルモット、ウサギ等が使用できる。また、mRNAの発現量を測定するために採取する試験動物の組織としては、肝臓、腸、肺、腎臓、胃、脾臓、脳、血液等が使用できる。
【0028】
試験動物に投与するAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)、Ames試験陰性の発がん物質(C+M-)は少なくとも1以上とするが、予測の精度を高めるため2物質以上とすることが好ましく、3物質以上とすることがより好ましい。使用する発がん物質の数は多いほど被検物質の発がん性予測の精度が高くなるので投与する物質の数に上限はないが、いずれの発がん物質も30物質程度を投与すれば充分な精度で被検物質の発がん性が予測できる。
【0029】
試験動物に投与する発がん物質は、Ames試験の属性が既知の公知の発がん物質を使用することが可能である。
【0030】
Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)としては、例えば、2,4-ジアミノトルエン、キノリン、ジエチルニトロサミン、2-ニトロプロパン、N-ニトロソモルホリン、サフロール、N-ニトロソジメチラミン、N-ニトロソピペリジン、2-アミノ-3,8-ジメチルイミダゾ[4,5-f]キノキサリン、2-アミノ-1-メチル-6-フェニルイミダゾ[4,5-b]-ピリジン、ベンツ(a)アントラセン、7,12-ジメチルベンズアントラセン、3-メチルコラントレン、4-ニトロキノリン-1-オキサイド、N-エチル-N-ニトロソ尿素、タンニン酸、ベンゾ(a)ピレン、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、4-ジメチルアミノアゾベンゼン等を挙げることができる。
【0031】
Ames試験陰性の発がん物質(C+M-)としては、クロフィブレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、四塩化炭素、フェノバルビタール、アルドリン、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、エチニルエストラジオール、ヘキサクロロベンゼン、α-ヘキサクロロシクロヘキサン、トリクロロエチレン、ブチル化ヒドロキシアニソール、リモネン、トリクロロ酢酸、ウレタン、ペンタクロルエタン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、アセタミド、ジエチルスチルベストロール、フェニトインナトリウム塩、D,L-エチオニン等を挙げることができる。
【0032】
試験動物の組織から公知の方法によりmRNAを抽出、精製した後、mRNAの発現量を測定し、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)、Ames試験陰性の発がん物質(C+M-)について、それぞれmRNAの発現パターンを得る。発現パターンは、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)を投与した試験動物とAmes試験陽性の非発がん物質(C-M+)を投与した試験動物の間、又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を投与した試験動物とAmes試験陰性の非発がん物質(C-M-)を投与した試験動物の間で、発現量が有意に増加又は減少するmRNAの種類とその発現量により構成されるデータの集まりである。
【0033】
mRNAの発現パターンには、少なくとも1以上のmRNAを選択して使用するが、使用するmRNAの数は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上である。
【0034】
試験動物にラットを使用する場合、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)とAmes試験陽性の非発がん物質(C-M+)との間、又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)とAmes試験陰性の非発がん物質(C-M-)との間で、mRNAの発現量が変動する傾向がある遺伝子の塩基配列の一部を1〜1435又は1436〜2357に示す。
【0035】
mRNAの発現量の測定にDNAマイクロアレイを使用する場合には、多くのmRNAの発現量に関する情報を同時に取得できる。そのため、アレイの蛍光をスキャナで取り込んで取得した画像は、必要に応じてスポットの選択、画像処理等を行った後、そのまま発現パターンとして使用することができる。
【0036】
DNAマイクロアレイには、試験動物から採取したmRNAを逆転写したcDNA又はDNAが固定してあるDNAマイクロアレイを使用する。mRNAの発現量の測定及び発現パターンの取得には、試験動物から採取したmRNAから蛍光標識cDNA又はcRNAを調製し、これらをアレイ上のcDNA又はDNAと結合させることにより行う。なお、マイクロアレイに代えてマイクロプレートを用いることも可能である。
【0037】
DNAマイクロアレイに搭載するcDNA又はDNAとしては、試験動物の組織から抽出したmRNAから逆転写反応により合成したcDNAの配列の全部又は一部をPCR等により増幅したDNAのほかに、cDNAの配列の一部を化学合成して得たDNAも使用できる。
【0038】
DNAマイクロアレイには、試験動物の種類に応じて選択した市販のアレイを使用することが可能である。例えば、試験動物にラットを使用する場合には、市販のアレイとして、Gene Chip(商品名、アフィメトリクス社製)、Rat Oligo MicroArray Kit(商品名、アジレント社製)等が例示できる。
【0039】
本発明においては、DNAマイクロアレイを用いる方法等により各mRNAの発現量を一度に測定してmRNAの発現パターンを取得してもよいし、各mRNAの発現量を別々に測定することによりmRNAの発現パターンを取得してもよい。mRNAの発現量の測定方法には、例えばノーザンブロッティング、定量的RT-PCR、RNaseプロテクションアッセイ等の公知の方法を制限することなく使用できる。
【0040】
次に、発がん性未知の被検物質の発がん性を予測する際の手順について説明する。被検物質の発がん性を予測するに際しては、まず最初に被検物質にAmes試験を行い、該被検物質がAmes試験陽性又は陰性の何れに属するかを決定する。
【0041】
Ames試験の方法自体は公知であり、OECDの試験法ガイドラインNo.471等の試験法が定められている。Ames試験は、医薬品の製造(輸入)承認申請に必要な遺伝毒性試験等として実施されている。
【0042】
被検物質は上述したAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)と同様の方法を用いて試験動物へ投与し、所定期間経過後に試験動物からmRNAの採取を行う。Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)に特徴的な変動を示すmRNAについてその発現量を測定し、被検物質についてmRNAの発現パターンを得る。
【0043】
その後、被検物質がAmes試験陽性に属する場合は、予め準備してあるAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)のmRNAの発現パターンと、被検物質がAmes試験陰性に属する場合は、Ames試験陰性の発がん物質(C+M-)のmRNAの発現パターンと、被検物質のmRNAの発現パターンとの一致度を統計学的手法により算出し、算出した一致度から被検物質の発がん性を予測する。被検物質のmRNAの発現パターンが、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)のmRNAの発現パターン又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)のmRNAの発現パターンと一致度が高い場合には被検物質は発がん性有りと判定し、いずれの発現パターンとも一致度が低い場合には発がん性無しと判定する。
【0044】
発現パターンの一致度を評価する方法としては、例えば被検物質と発がん物質とを一緒にクラスタ分析や決定木による解析を行って得られた樹形図の階層から評価する方法、mRNAの発現量の相関を算出する方法等を挙げることができるが、サポートベクターマシーン(Support Vector Machine :SVM)等の公知の分類方法を用いて予測式を作成する方法が最も簡便である。
【0045】
なお、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)、又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)のmRNAの発現パターンを準備する際に、これらの発がん物質を複数使用してmRNAの発現パターンを取得する場合には、各発がん物質について得られたmRNAの発現パターンをその類似性により複数のグループに分類し、各グループ毎に発現パターンを準備してもよい。
【0046】
Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)のmRNAの発現量から、mRNAの発現パターンをグループ化する方法につき以下説明する。
【0047】
まず、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)について発がん物質の投与により有意に発現量が増加又は減少(変動)したmRNAを選択する。mRNAの発現量が有意に変動したかどうかの判断は、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)についてはAmes試験陽性の非発がん物質(C-M+)との間、Ames試験陰性の発がん物質(C+M-)についてはAmes試験陰性の非発がん物質(C-M-)との間でmRNAの発現量を比較することにより行う。
【0048】
Ames試験陽性の非発がん物質(C-M+)としては、例えば2,6-ジアミノトルエン、8-ヒドロキシキノリン、2-クロロエタノール、2-(クロロメチル)ピリジン塩酸塩、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-クロロ-p-フェニレンジアミン硫酸塩、p-フェニレンジアミン二塩酸塩、2,5-トルエンジアミン硫酸塩、4-(クロロアセチル)アセトアニリド、3-クロロ-p-トルイジン、グルタルアルデヒド、4-ニトロアントラニル酸、1−ニトロナフタレン等を挙げることができる。
【0049】
Ames試験陰性の非発がん物質(C-M-)としては、D-マンニトール、L-アスコルビン酸、1-ニトロプロパン、リンダン、アスピリン、フタルアミド、カプロラクタム、安息香酸ナトリウム、インドメタシン等を挙げることができる。
【0050】
発現パターンの分類に使用するmRNAは、発現量が発がん物質と非発がん物質の間で有意に変動したmRNAの中から選択した少なくとも3以上とするが、4〜200程度とすることがより好ましく、5〜50程度とすることが特に好ましい。
【0051】
選択したmRNAについて、発がん物質間で、クラスタ解析、決定木等の解析を行い、発現パターンを分類する。
【実施例】
【0052】
製造例1(cDNAマイクロアレイの作製)
(1)完全長cDNA クローン及びライブラリーの作製(理化学研究所法)
発がん剤投与成獣(6週齢)ラット由来の肝臓、腎臓、脾臓及び大腸組織から、株式会社ダナフォームが作製したラット完全長cDNAライブラリーを利用して完全長cDNAクローンを得た。なお当該ラット完全長cDNAライブラリーの作製手順の概略は以下の通りであった。
【0053】
F344 ラット成獣(6 週齢)に作用機構が異なる4種の既知発がん物質(Diethylnitrosoamine:投与量100mg/kg/day:投与期間3 時間, 1 日, 3 日、2-amino-3,8-dimethyl-imadazo[4,5-f]quinoxaline:投与量20mg/kg/day:投与期間 3 時間, 1 日, 4 日、Clofibrate:投与量100mg/kg/day:投与期間1 日, 2 日, 4 日、Phenobarbital:投与量80mg/kg/day:投与期間1 日, 2 日, 4 日)を投与し、肝臓、腎臓、脾臓及び大腸を採取した。採取した組織からAGPC 法によりtotal RNA を抽出し、MACS mRNA Isolation Kit (Miltenyi Biotec 社製)を用いてmRNA を精製した。その後、Anchored oligo(dT)をプライマーとしてトレハロース存在下で耐熱化した逆転写酵素により逆転写反応を行った。このAnchored oligo(dT)プライマーには、6 塩基のタグ配列を用いてライブラリー及びcDNA の起源に関する情報を付した。次にキャップトラッパー法を用いて完全長cDNA を選択し、第2 鎖合成、制限酵素切断を行った後、方向を定めてクローニングし、完全長cDNA ライブラリーを作製した。この完全長cDNAライブラリーは、化合物未処理ラット臓器由来のcDNA ライブラリーをドライバーとすることでサブトラクション処理を行い、特異性を高めた。
【0054】
(2)cDNAマイクロアレイに搭載する遺伝子の選択
発がん物質投与成獣由来完全長cDNA ライブラリー中のクローンの3'端の塩基配列からクローン間の相同性を調べた。発がん物質投与成獣由来遺伝子の合計数は15,762 で、このうちの肝臓由来の遺伝子数は4,139 であった。また、UniGene ID を元にした非重複塩基配列数は6,954 であった。
【0055】
未処理ラット臓器由来クローンと、発がん物質処理ラット臓器由来クローンを搭載する遺伝子の選定対象の遺伝子プールとして、以下の基準から8,862 クローンを選定した。
【0056】
a) 発がん物質の投与によりコントロール動物と比較して2倍以上あるいは1/2 以下に発現量が変動した遺伝子。
【0057】
b) 発がん物質処理ラット臓器由来クローン。
【0058】
c) 文献等で発がん性に関連していることが報告されている遺伝子。これらの遺伝子の中にはがん遺伝子やがん抑制遺伝子、転写因子、増殖因子などが含まれる。なお、文献等で発がん性に関連していることが報告されている遺伝子で、上記の遺伝子プールに入っていないが発がん性評価には重要と考えられる24 種の遺伝子については、個別にクローンを購入あるいは単離した。
【0059】
d) 市販の毒性評価用マイクロアレイに共通に搭載されている遺伝子。市販アレイとしては、Clontech Rat Toxicology1.2 array、TAKARA Rat Toxicology CHIP ver1.0、NIEHS Rat Chip、MWG Rat Liver、Mergen Rat R01 を調査した。
【0060】
e) ポジティブコントロールとして3 遺伝子(ベータ-アクチン、GAPDH、ユビキチン)及びネガティブコントロールとしてのラムダファージ遺伝子。
【0061】
a)に含まれる遺伝子は2,890 クローン、b)に含まれるのは5,759 クローン、c)に含まれる遺伝子は44 クローン、d)に含まれる遺伝子は185 クローンであった。そして、上記の基準で選定した遺伝子について、PCRにより増幅した遺伝子をマイクロアレイに搭載した。
【0062】
(3)cDNAマイクロアレイの作製
選定した遺伝子の塩基配列からお互いに非相補的な部分配列を設計し、(2) で選択した8,862 クローンをテンプレートとして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により遺伝子断片を増幅した。増幅遺伝子の長さは、一部の遺伝子を除いて約300bpに設計した。cDNAマイクロアレイに搭載する遺伝子断片をPCR法で増幅するためのプライマーはタカラバイオ株式会社の設計アルゴリズムを用いて設計した。フォワードプライマー、リバースプライマーを各35pmol、Ex-Taq ポリメラーゼ2.5 unit 及び酵素に添付されたバッファーを用いて、反応液量を100μL としてPCR 反応を行った。反応は、95℃ 30 秒間の後、95℃ 45 秒間、54℃ 30 秒間、72℃ 60 秒間を1 サイクルとしてこれを37 サイクル行い、さらに72℃ 3 分間行った。反応終了後、反応液の一部をアガロース電気泳動に供することで、PCR 産物を確認した。
【0063】
PCR 反応後、産物が増幅されたものは8,261クローンであった。さらに産物を詳しく検討した結果、PCR 産物が単一の遺伝子断片でないものやスメアーなものを除き、最終的な解析対象としては8,051 クローンとした。なお2003/01/06 版のUniGeneデータベースでアノテーションし直した結果、非重複なUniGene ID 数としては6,353であった。
【0064】
得られたPCR 産物はQIAGEN 社製 QIAquick PCR Purification Kit で精製したのち、ガラス基板上にスポットし、cDNAマイクロアレイを得た。1グラス当たり2 アレイをスポットした。
【0065】
実施例1
(1)total RNAの取得
表1〜4に示す化学物質をそれぞれ媒体に溶解し、溶液を調製した。化学物質とその物質番号、発がん性、使用した媒体、試験動物に投与した用量を表1〜4に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
日本チャールス・リバー社から入手した5週令の雄性ラット(F344、SPF系統)を4匹/群に分け、各群のラットに調製した溶液又は媒体を強制経口投与した。投与は1日1回、1、3、7、14、28日間行った。投与開始から2、4、8、15、又は29日目に各個体の肝臓を採取した。肝臓から断片を切り出し、total RNA 保存安定用試薬であるRNAlater(登録商標) RNA Stabilization Reagent に浸漬させた。これを室温で24 時間放置後、RNAlater RNA Stabilization Reagent に浸漬させたまま-20℃で保存した。
【0071】
ラット組織からtotal RNAを抽出し、QIAGEN 社BioRobot 3000 を用いてQIAGEN 社RNeasy Midi Kit により精製した。精製法は製造会社の使用法に準じて行ったが、概略は以下のとおりである。
【0072】
切り出した組織サンプル50-100mg と破砕用ビーズ(直径5 mm、ジルコニア製)を2 mL エッペンドルフチューブに入れた。RLT バッファーを添加した後、Mixer Mill (QIAGEN 社製)により25 Hz 4 分間で2 回組織破砕を行った。5,000×g 5分間遠心し、未破砕物を沈殿させた。上清に70%エタノールを添加、混合した後、RNeasy Midi column へ添加した。3,000-5,000×g 5 分間遠心した後、RW1 バッファーを添加した。3,000-5,000×g 5 分間遠心した後、DNase I 溶液(QIAGEN 社製) を添加し室温で15 分間放置しさらにRW1 バッファーを添加した。3,000-5,000×g 5 分間遠心した後、RPE バッファーを添加した。3,000-5,000×g 2 分間遠心した後、再度RPE バッファーを添加した。3,000-5,000×g 2 分間遠心した後、3,000-5,000×g でさらに5 分間遠心しカラムを乾燥させた。RNase-free 水を添加し5 分間放置した後、3,000-5,000×g 2 分間遠心することでRNA 溶液を溶出させた。濃度及び回収率を向上させるために溶出したRNA 溶液を再度カラムに添加し5 分間放置した後、3,000-5,000×g 2 分間遠心することで最終的な精製RNA 溶液を得た。
【0073】
精製total RNA の純度を示す260 nm/280 nm 比は光学的測定装置を用いて測定した。さらに精製total RNA はAgilent 社BioAnalyser2100 を用いてその泳動パターンを検査した。泳動にはRNA6000nano チップ(Agilent 社製) を用い、操作法は製造会社の使用法に準じて行った。精製total RNA の濃度測定は光学的測定装置を用いた方法で行った。
【0074】
光学的測定装置として、分光光度計による場合は光路長1cm の場合1{吸光度(260 nm)-吸光度(320 nm)} = 40 μg RNA/mL として計算した。
【0075】
(2)蛍光標識cDNA の作製
精製total RNA 20 または10 μg を用いて、CyScript 逆転写酵素を用いて蛍光ラベル化cDNA を作製した。
【0076】
total RNA またはmRNA(自家精製、クロンテック社製または北山ラベス株式会社製)を用い、以下の反応条件で蛍光ラベル化を行った。最終反応液量は50μL で行った。
【0077】
反応溶液の終濃度はtotal RNA 10-20μg、Anchored Oligo(dT) (Amersham Bioscience 社製) 0.075μg、dCTP Nucleotide Mix 1μL、1×CyScript buffer (Amersham Bioscience 社製)、10 mM DTT、Cy3-dCTP またはCy5-dCTP (Amersham Bioscience 社製) 1 nmol である。
【0078】
RNA とAnchored Oligo(dT)の混合液を70℃ 5 分静置した後、氷上に1 分静置した。その他の成分を添加した後CyScript 逆転写酵素(Amersham Bioscience 社製)を100 unit添加し42℃ 90 分遮光静置した。1 N NaOH 12.5μL を添加し、65℃ 10 分遮光静置し、RNA を加水分解した。1 N HCl 15μL を添加し中和した後QIAGEN 社製MinElute PCR Purification Kit を用いて蛍光ラベル体を精製した。未反応の蛍光標識核酸を除去するためにPE バッファーによる洗浄は2 回行った。
【0079】
投与群(高用量、低用量)をCy3 で標識し、コントロール群をCy5 で標識した。コントロール群の4 匹から作製したCy5 標識cDNA は精製が終了した時点で等量づつ混合し、ハイブリダイゼーション溶液作製には混合液から分注した。
【0080】
(3)cDNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーション及び検出
最終的なハイブリダイゼーション溶液12μL 当たりにCy3 ラベル体4.2 μL、Cy5ラベル体4.2 μL、20×SSC 3 μL、10%SDS 0.6μL になるように混合した後、95℃ 2分遮光静置した。室温3 分遮光静置した後、BSA ブロッキング処理済みのcDNAマイクロアレイに12μL/アレイでスポットした。速やかに24 mm × 32 mm カバーグラス(松浪硝子製)でカバーした後、ハイブリカセット(Telechem 社製、日立ソフトウェア社製等)にセットし55℃で一晩遮光静置した。その後ハイブリカセットからcDNAマイクロアレイを取り出し,2×SSC/0.1%SDS 溶液に浸漬してカバーグラスを取り除いた。室温で2×SSC/0.1%SDS溶液に20 分遮光浸漬し、さらに0.2×SSC/0.1%SDS 溶液に20 分遮光浸漬した。42℃の0.2×SSC/0.1%SDS 溶液に2 回20 分遮光浸漬した後、0.2×SSC/0.1%SDS 溶液、0.05×SSC溶液で洗浄した。遠心器を用いて乾燥させた後、Agilent 社製MicroArray Scanner を用いて検出した。検出感度を示すPMT 値は100%を用いた。スキャン画像から各スポットの蛍光値の数値化はAxon Instruments 社製GenePix Pro ver.4.0.1.17 を用いて行った。
【0081】
cDNAマイクロアレイのBSA ブロッキングは0.1 または0.22μm のフィルターで膜ろ過した1%BSA ブロッキング溶液(1%BSA、4×SSC、2%SDS)中で42℃ 45 分遮光静置することで行った。2 回水中で振とう洗浄し遠心器を用いて乾燥させた後、ハイブリダイゼーションに用いた。
【0082】
(4)解析に有効な遺伝子の選定
cDNAマイクロアレイに搭載した各遺伝子の発現量データに対して、以下に示すデータクレンジングを行い、解析に使用する遺伝子の選定を行った。
【0083】
a) cDNAマイクロアレイの数値化発現データには、それぞれのアレイ上のスポット(遺伝子)の有効性を表すフラグ(flag)がついており、フラグが"0"(有効)を示すスポットを選定した。選定後の解析可能なスポット数が、3000未満のアレイについてはデータを用いないこととした。
【0084】
b) 陰性対照遺伝子のlambda DNAの発現量に標準偏差の2倍を加えた値以下の発現量を示す遺伝子は、ノイズデータと判断して除外した。
【0085】
c) 4個体から抽出した2個体間の相関計数を計算し、総当りで6通りの組み合わせのうち相関係数が0.5以下を2回以上示す場合は、相関の悪いデータとみなし解析対象から除外した。
【0086】
d) 実験毎にばらつきの少ない遺伝子を選定するため、サンプル投与群のシグナル値(n=4)と媒体対照群(コントロール)のシグナル値(n=4)間でウエルチt検定(Welch's t-test)を行い、p≦0.05である遺伝子を選定した(帰無仮説:サンプル投与群(n=4)のシグナル値と媒体対照群(n=4)の遺伝子発現量(シグナル値)には差がない)。
【0087】
e) 統計的に有意といえるn=4の平均発現比を示す遺伝子を選定するため、検出力を基準にしきい値を算出した。結果、LogRatio(化合物投与群の発現量と媒体対照群の発現量の比をLog変換した値)が0を基準に0.8以上離れていれば、有意な発現比であることが確認できた為、LogRatio=|0.8|をしきい値とし、LogRatioが0.8以上-0.8以下変動している遺伝子を選定した。
【0088】
上記a)〜e)に従ってデータクレンジングを行ったのち、以降の解析で得られる発がん物質グループで変動していることが確認された遺伝子を選定した結果、1435であった。これらの遺伝子の塩基配列を配列番号1〜1435に示す。
【0089】
更に、配列番号1〜1435に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する遺伝子のユニジーン(UniGene)番号と、それぞれの塩基配列に付与したクローンIDとを表5〜26に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
【表10】

【0096】
【表11】

【0097】
【表12】

【0098】
【表13】

【0099】
【表14】

【0100】
【表15】

【0101】
【表16】

【0102】
【表17】

【0103】
【表18】

【0104】
【表19】

【0105】
【表20】

【0106】
【表21】

【0107】
【表22】

【0108】
【表23】

【0109】
【表24】

【0110】
【表25】

【0111】
【表26】

【0112】
(5)発がん物質の分類
発がん物質39物質(表1〜4に示した発がん物質からジ(2-エチルヘキシル)フタレートとフェノバルビタールを除外)及び非発がん物質20物質(表1〜4に示した非発がん物質)の投与期間28日間の投与群について、各物質のAmes試験結果をもとに化合物の分類を行った。その結果、Ames陽性発がん物質は19物質、Ames陽性非発がん物質は14物質であった。また、Ames陰性発がん物質は20物質、そしてAmes陰性非発がん物質は6物質であった。
【0113】
(6)予測式作成手順と検証方法
まず、Ames陽性発がん物質群とAmes陽性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットを統計量の一つであるウェルチt値(Welch's t-value)とフィルタリングの手法をもちいて表5〜26に示す遺伝子群より選定し、それぞれの手法で選定した遺伝子セットを併せたものを次の予測式作成へと用いた。ウエルチt値については、発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値が、非発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値より大きい遺伝子を選定した。フィルタリングの手法とは、ウェルチt値では選定しにくい一部の発がん物質の予測に有効な遺伝子セットを探索する為の方法である。具体的には、発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以上であった物質がX個以上で、非発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以下であった物質がY個以上を示す遺伝子をXとYを変化させて選定し、ウェルチt値で選定した遺伝子セットを合わせて予測式を作成し、最も予測率のよい遺伝子セットを探索した。また、Ames陰性発がん物質群とAmes陰性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットについても同様にウェルチt値とフィルタリングの手法で選定を行った。
【0114】
Support Vector Machine(SVM)という教師付き分類方法に基づいて作成されたフリーソフトSVMlight(URL http://svmlight.joachims.org/ から入手)を用い、以下の手順でAmes陽性物質の発がん性予測式を作成した。
【0115】
a) 発がん物質グループと、非発がん物質グループに属する各物質数が等しくない場合、物質数の少ないグループの物質数と同じ数だけ、物質数の多い方の物質グループからランダムサンプリングを行い、両グループの物質数を等しくした。
【0116】
b) 物質数を等しくした両物質グループと、前もって選定した発がん、非発がん物質群間で発現量差が有意である遺伝子セットを用いてSVMlightで学習させ、予測式を作成した。
【0117】
c) 予測式の有効性を検証する為に、予測式を作成する為に用いた両物質グループ(トレーニングセット)の発がん性予測と、検証手法の一つである物質のリーブ ワン アウト(Leave one out)によるクロスバリデーションを行なった。
【0118】
d) 予測式作成に用いていない残りの物質データ(テストセット)の予測を行なった。
【0119】
e) 最も高い予測率を示す遺伝子セットが得られるまで選定条件を調整し、a)〜e)までの手順を繰り返し行った。
【0120】
(7)各Ames分類毎の予測式の予測結果
Ames陽性物質の発がん性予測式は、(6)a)〜e)の手順に従い遺伝子を選定し、クローンIDが11648、14929、17343、22524、23126、26054、29775、31823、33592、33615、33649、35603、35953、36476、38445、38980、39147、40318、40694、41351、41608、41764、41875、42265、42759、42763、45500、45533、46291、46451、46526の発現量データを用いて作成した。そして、構築した予測式を用いて、トレーニングセットとテストセットの予測を行なった結果を表27に示す。
【0121】
【表27】

【0122】
結果、トレーニングセットは、ほぼ予測できた。Ames陽性物質の発がん性予測式は、L00クロスバリデーションにより81.8%の確率で、未知のAmes陽性の発がん性を予測できることが確認できた。また、テストセットのAmes陽性発がん物質は100%予測できた。
【0123】
さらに同様の手順で、Ames陰性物質の発がん性予測式は、クローンIDが02620、05151、11648、15551、15562、15777、17912、18209、18327、18636、18810、20938、22117、22953、24206、24614、27762、29598、30778、32657、32667、32851、33469、33615、35953、36351、37092、37685、37936、38674、38764、38846、38980、39701、39766、40078、40337、40673、40981、41275、41433、42065、42510、43282、43512、44281、45238、45463、45718の遺伝子の発現量データを用いて作成した。その予測式を用いて各々のトレーニングセット、テストセットを予測した結果を表28に示す。
【0124】
【表28】

【0125】
Ames陰性物質の発がん性予測結果についても、Ames陽性物質の結果と同じくトレーニングセットとテストセットの非発がん物質は比較的高い予測率を示した。L00クロスバリデーションの結果、76.9%予測できることが確認できた。
【0126】
(8)予測フローの構築
(7)で作成したAmes陽性物質グループと、Ames陰性物質グループの予測式を組み合わせ、発がん物質を予測する予測フローを構築した(図1)。予測式作成に用いた59物質のデータを、予測フローに適用した結果、Ames陽性物質の発がん性予測式では発がん物質が18物質予測できたが、非発がん物質4物質を発がん物質と誤って予測した。一方、Ames陰性物質の発がん性予測式では発がん物質が18物質予測できた。両予測式の結果を集約させた結果、36物質の発がん物質を予測することができた。
【0127】
実施例2
実施例1(1)〜(5)で得られたデータを使用してAmes陽性発がん物質、Ames陽性非発がん物質の発現パターンを更に下記の手順に従ってグループに分類し、化学物質の発がん性の予測を行った。
【0128】
(1)発がん物質の分類
発がん物質39物質(表1〜4に示した発がん物質からジ(2-エチルヘキシル)フタレートとフェノバルビタールを除外)及び非発がん物質20物質(表1〜4に示した非発がん物質)について、遺伝子の発現パターンが近い物質ごとに発がん物質を分類して予測式を作成するために、次のような処理を行った。
【0129】
まず、Ames陽性発がん物質群とAmes陽性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットを、ウエルチt値により選定した。選定した遺伝子セットの発現パターンの分類をGene Maths(Applied Maths, Sint-Martens-Latem, Belgium)のクラスタ解析機能を用いて行い、樹形図の形状からクラスタを決定した。ウエルチt値の選定条件を変化させ、3パターンの遺伝子セットにより物質のクラスタ構成について確認を行い、遺伝子セットを変化させても安定して同じクラスタを形成する2つの発がん物質のグループ1、2を選定した。その遺伝子セットの選定条件(ウエルチt値の値)と、選定した遺伝子のクローンIDを表29に示す。更に、それぞれのウエルチt値で選定した遺伝子セットを用いてクラスタ解析した樹形図を図2〜4に示す。図2〜4中、●はAmes陽性発がん物質、○はAmes陽性非発がん物質を表す。
【0130】
【表29】

【0131】
次に、Ames陰性発がん物質とAmes陰性非発がん物質を用いて発現パターンの近い物質グループを同じ方法で選定した。遺伝子セットの選定条件(ウエルチt値の値)と、選定した遺伝子のクローンIDを表30に示す。更に、それぞれのウエルチt値で選定した遺伝子セットを用いてクラスタ解析した樹形図を図5〜7に示す。図5〜7中、●はAmes陰性発がん物質、○はAmes陰性非発がん物質を表す。
【0132】
【表30】

【0133】
各発がん物質グループに分類された化学物質は以下の通りである。
(Ames陽性発がん物質グループ1)
TS011,013,014,025,041,042,046,047,048,049,063,065
(Ames陽性発がん物質グループ2)
TS004,006,045,052,077
(Ames陰性発がん物質グループ1)
TS001,003,019,021,022,023,024,051,055,056,066,067,068,070,078
(2)予測式作成手順と検証方法
予測に有効な遺伝子は、Ames陽性発がん物質グループ1、2に対してはAmes陽性非発がん物質グループ、そしてAmes陰性発がん物質グループ1に対してはAmes陰性非発がん物質グループを組み合わせ、各々の発がん物質グループと非発がん物質グループの間で、発現量差が有意である遺伝子セットを統計量の一つであるウエルチt値とフィルタリングの手法によって、表5〜26に示す遺伝子群から選定した。そして、それぞれの手法で選定した遺伝子セットを併せたものを次の予測式作成へと用いた。ウエルチt値については、発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値が、非発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値より大きい遺伝子を選定した。また、フィルタリングの手法により発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以上であった物質がX個以上で、非発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以下であった物質がY個以上を示す遺伝子をXとYを変化させて選定し、ウェルチt値で選定した遺伝子セットを合わせて予測式を作成し、最も予測率のよい遺伝子セットを探索した。Ames陰性発がん物質群とAmes陰性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットについても同様にウェルチt値とフィルタリングの手法で選定を行った。
【0134】
フリーソフトSVMlightを用い、実施例1(6)のa)〜e)と同じ手順でAmes陽性物質の発がん性予測式を作成した。
【0135】
(3)各Ames分類毎の予測式の予測結果
Ames陽性物質グループ1の発がん性予測式は、(2)の手順に従い遺伝子を選定し、クローンIDが01371、05376、17343、34871、40104、41764、46526の発現量データを用いて作成した。構築した予測式を用いて、トレーニングセットとテストセットの予測を行なった結果を表31に示す。
【0136】
【表31】

【0137】
結果、トレーニングセットは、ほぼ予測できた。Ames陽性物質グループ1の発がん性予測式は、L00クロスバリデーションにより92.3%の確率で、未知のAmes陽性の発がん性グループ1を予測できることが確認できた。また、テストセットのAmes陽性発がん物質は28.6%予測できた。
【0138】
同様にAmes陽性物質グループ2の発がん性予測式は、クローンIDが09104、20106、29121、30146、31305、31578、31831、32851、36121、38445、39766、40668、40694、40805、41875、42265、45500、45533、46291の発現量データを用いて作成した。構築した予測式を用いて、トレーニングセットとテストセットの予測を行なった結果を表32に示す。
【0139】
【表32】

【0140】
結果、トレーニングセットは、ほぼ予測できた。Ames陽性物質グループ2の発がん性予測式は、L00クロスバリデーションにより73.7%の確率で、未知のAmes陽性グループ2の発がん性を予測できることが確認できた。また、テストセットのAmes陽性発がん物質は57.1%予測できた。
【0141】
さらに同様の手順で、Ames陰性物質グループ1の発がん性予測式は、クローンIDが17917、18636、20938、33469、35953、36351、37685、38764、38846、39766、40337、41253、42510、45238、46254、46675の遺伝子の発現量データを用いて作成した。その予測式を用いて各々のトレーニングセット、テストセットを予測した結果を表33に示す。
【0142】
【表33】

【0143】
Ames陰性物質グループ1の予測結果についても、Ames陽性物質の結果と同じくトレーニングセットとテストセットの非発がん物質は比較的高い予測率を示した。L00クロスバリデーションの結果、95.2%予測できることが確認できた。
【0144】
(4)予測フローの構築
(3)で作成したAmes陽性物質グループと、Ames陰性物質グループの予測式を組み合わせ、発がん物質を予測する予測フローを構築した(図8)。予測式作成に用いた59物質のデータを、予測フローに適用した結果、Ames陽性物質の発がん性予測式では発がん物質が19物質予測できたが、非発がん物質6物質を発がん物質と誤って予測した。一方、Ames陰性物質の発がん性予測式では発がん物質が18物質予測できたが、非発がん物質1物質を発がん物質と誤って予測した。両予測式の結果を集約させた結果、37物質の発がん物質を予測することができた。
【0145】
製造例2(オリゴマイクロアレイの作製)
(1)オリゴマイクロアレイに搭載する遺伝子の選択
オリゴマイクロアレイに搭載する遺伝子は、以下の基準から6,785遺伝子を選定した。
【0146】
a) 製造例1で得たcDNAマイクロアレイを用いた試験において、発がん物質の内2物質以上の投与によりコントロール動物と比較して2倍以上あるいは1/2 以下に発現量が変動した遺伝子。
【0147】
b) Affymetrix社製 GeneChip U34A アレイを用いた試験において、発がん物質の内2物質以上の投与によりコントロール動物と比較して2倍以上あるいは1/2 以下に発現量が変動した遺伝子。
【0148】
c) 文献等で発がん性に関連していることが報告されている遺伝子。これらの遺伝子の中にはがん遺伝子やがん抑制遺伝子、転写因子、増殖因子などが含まれる。
【0149】
d) ポジティブコントロールとして3 遺伝子(ベータ-アクチン、GAPDH、ユビキチン)及び製造例1で得たcDNAマイクロアレイを用いた試験において発現が変動しなかった遺伝子。ただしベータ-アクチン及びGAPDHについては3'末端、中央部、5'末端部分についてそれぞれプローブを作成した。
【0150】
e) ネガティブコントロールとしてラムダファージ遺伝子、バクテリオファージ遺伝子(cre)及びバクテリア由来の8遺伝子(bioB、bioC、bioD、jojG、lys、pheA、thrB、trpF)。
【0151】
a)に含まれる遺伝子は4,461遺伝子、b)に含まれるのは4,386遺伝子、c)に含まれる遺伝子は1,714遺伝子、d)に含まれる遺伝子は76遺伝子であった。ただし、それぞれのグループに重複して含まる遺伝子が存在するため、単純合計は6,785遺伝子とはならない。
【0152】
(2)オリゴマイクロアレイの作製
選定した遺伝子の塩基配列からタカラバイオ株式会社の設計アルゴリズムを用いてお互いに非相補的な60塩基長の部分配列を設計した。(1) で選択した6,785遺伝子の内有効な配列を設計できなかった遺伝子を除く6,722遺伝子について6,726の60塩基長の部分配列を設計し、オリゴを合成した。60塩基オリゴの合成はオリゴの5'末端に基盤との共有結合に用いるアミノ基を加えてタカラバイオ株式会社に委託した。得られた60塩基オリゴを3次元表面構造のガラス基板(Amersham Bioscience社製)上にスポットし、オリゴマイクロアレイを得た。1ガラス当たり1アレイをスポットし、ハイブリダイゼーション操作の簡略化のために表面にチャンバーシールを貼り付けた。
【0153】
実施例3
(1)total RNAの取得
表1〜4に示す化学物質から1-ニトロプロパンを除く62物質と、表34に示す化学物質11物質とをそれぞれ媒体に溶解し、溶液を調製した。
【0154】
【表34】

【0155】
日本チャールス・リバー社から入手した5週令の雄性ラット(F344、SPF系統)を4匹/群に分け、各群のラットに調製した溶液又は媒体を強制経口投与した。投与は1日1回、1、3、7、14、28日間行った。投与開始から2、4、8、15、又は29日目に各個体の肝臓を採取した。肝臓から断片を切り出し、実施例1(1)と同様にしてtotal RNA の抽出、精製を行った。
【0156】
(2)蛍光標識cRNA の作製
(1)で得た精製total RNA 5μgを用いて、SuperScript Indirect RNA Amplification System(Invitrogen社製)を用いて蛍光cRNAを作製した。投与群では各検体毎に、コントロール群は等重量を混合した後に、以下の反応条件で蛍光ラベル化を行った。
【0157】
total RNA 5μgとT7-Oligo(dT) primer 1μLの混合液 10μLを70℃ 10分静置した後、氷上に2分静置した。5X First-Strand buffer 4μL、0.1 M DTT 2μL、10 mM dNTP Mix 1μL、RNaseOUT (40 U/μL) 1μL、SuperScript III逆転写酵素 (200 U/μL) 2μLを添加し、46℃ 2時間遮光静置した。70℃ 10分静置した後、氷上に2分静置した。DEPC処理水 91μL、5X Second-Strand Buffer 30μL、10 mM dNTP Mix 3μL、E. coli DNA Polymerase I (10 units/μL) 4μL、E. coli DNA Ligase (10 units/μL) 1μL、E. coli RNase H (2 units/μL) 1μLを添加し、16℃ 2時間遮光静置した。作成された2本鎖cDNAにcDNA Loading Buffer 500μL を添加した後、cDNA Purification Moduleを用いて精製した。20μLのDEPC処理水で溶出した精製cDNA溶液の内 14μLにDEPC処理水 7.75μL、100 mM ATP 1.5μL、100 mM CTP 1.5μL、100 mM GTP 1.5μL、100 mM UTP 0.75μL、50 mM aa-UTP 2μL、10X T7 Reaction Buffer 4μL、T7 Enzyme Mix 7μLを添加し、37℃ 3時間静置した。さらにDNase I (1 unit/μL) 2μLを添加し、37℃ 30分間静置した。得られた溶液にDEPC処理水 58μL、Buffer RLT (QIAGEN社) 350μLを添加した後、RNeasy MinElute Cleanup Kit (QIAGEN社)を用いてcRNAを精製した。20μLのDEPC処理水で溶出した精製cRNA溶液の内 6μLにCoupling Buffer 10μL及びDMSO 4μLに溶解したCy3 reactive dye for one labelling reactionまたはCy5 reactive dye for one labelling reaction (Amersham Bioscience社製)を添加し、室温で30分間遮光で静置した。投与群をCy3 で標識し、コントロール群をCy5 で標識した。4M Hydroxyamine 4.5μLを添加し、室温で15分間遮光で静置することで反応を停止した。得られた溶液にDEPC処理水 75.5μL、Buffer RLT (QIAGEN社) 350μLを添加した後、RNeasy MinElute Cleanup Kit (QIAGEN社)を用いて標識cRNAを精製した。14μLのDEPC処理水で溶出することで精製標識cRNAを得た。
【0158】
(3)オリゴマイクロアレイへのハイブリダイゼーション及び検出
分光光度計を用いて得られた精製標識cRNAの濃度を決定した後、Cy3標識cRNA 0.75μg、Cy5標識cRNA 0.75μg及び5X Fragmentation Buffer 8μLを混合しDEPC処理水で総量40μLにした。94℃ 15分間遮光で静置した後、氷上に2分静置した。得られた溶液から30μLを分取し、DEPC処理水 46.5μL、20XSSC 37.5μL、10% SDS 7.5μL及び50Xデンハルト溶液 12μを添加した後、95℃ 2分間遮光で静置した。氷上に2分静置した後、Salmon Sperm DNA (Invitrogen社) 1.5μL及びホルムアミド 15μLを添加し、60℃ 3分間遮光で静置することで最終的なハイブリダイゼーション溶液を得た。オリゴマイクロアレイに120-140μLのハイブリダイゼーション溶液を注入した後に、注入口をシールし、60℃で一晩遮光静置した。その後オリゴマイクロアレイの表面シールを剥離し、素早く5×SSC/0.1%SDS 溶液に浸漬した。30℃の5×SSC/0.1%SDS溶液に10分遮光浸漬し、さらに30℃の0.5×SSC溶液に2回2分遮光浸漬した。0.5×SSC/0.01%Tween20溶液で洗浄した後、遠心器を用いて乾燥させた。Agilent Technologies社製Microarray Scanner を用いて検出し、検出感度を示すPMT 値は70-100%を用いた。スキャン画像から各スポットの蛍光値の数値化はAxon Instruments 社製GenePix Pro ver.4.0.1.17 を用いて行った。
【0159】
(4)解析に有効な遺伝子の選定
b)の陰性対照遺伝子にjojG、bioD、creを使用した以外は、実施例1(4)のa)〜e)と同様にしてオリゴマイクロアレイに搭載した各遺伝子の発現量データに対してデータクレンジングを行い、解析に使用する遺伝子の選定を行った。さらに、以降の解析で得られる発がん物質グループで変動していることが確認された遺伝子を選定した結果、解析に有効な遺伝子数は922であった。これらの遺伝子の塩基配列を配列番号1436〜2357に示す。
【0160】
更に、配列番号1436〜2357に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する遺伝子のユニジーン(UniGene)番号と、それぞれの塩基配列に付与したクローンIDとを表35〜48に示す。
【0161】
【表35】

【0162】
【表36】

【0163】
【表37】

【0164】
【表38】

【0165】
【表39】

【0166】
【表40】

【0167】
【表41】

【0168】
【表42】

【0169】
【表43】

【0170】
【表44】

【0171】
【表45】

【0172】
【表46】

【0173】
【表47】

【0174】
【表48】

【0175】
(5)発がん物質の分類
発がん物質47物質(表1〜4及び34に示した発がん物質から四塩化炭素とグルタルアルデヒドを除外)及び非発がん物質24物質(表1〜4及び34に示した非発がん物質)の投与期間28日間の投与群について、各物質のAmes試験結果をもとに化合物の分類を行った。その結果、Ames陽性発がん物質は23物質、Ames陽性非発がん物質は13物質であった。また、Ames陰性発がん物質は24物質、そしてAmes陰性非発がん物質は11物質であった。
【0176】
(6)予測式作成手順と検証方法
予測に有効な遺伝子は、Ames陽性発がん物質群とAmes陽性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットを統計量の一つであるウェルチt値とフィルタリングの手法によって、表35〜48に示す遺伝子群から選定した。そして、それぞれの手法で選定した遺伝子セットを併せたものを次の予測式作成へと用いた。ウエルチt値については、発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値が、非発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値より大きい遺伝子を選定した。フィルタリングの手法とは、ウェルチt値では選定しにくい一部の発がん物質の予測に有効な遺伝子セットを探索する為の方法である。具体的には、発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以上であった物質がX個以上で、非発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以下であった物質がY個以上を示す遺伝子をXとYを変化させて選定し、ウェルチt値で選定した遺伝子セットを合わせて予測式を作成し、最も予測率のよい遺伝子セットを探索した。また、Ames陰性発がん物質群とAmes陰性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットについても同様にウェルチt値とフィルタリングの手法により選定した。
【0177】
フリーソフトSVMlightを用い、実施例1(6)のa)〜e)と同じ手順でAmes陽性物質の発がん性予測式を作成した。
【0178】
(7)各Ames分類毎の予測式の予測結果
Ames陽性物質の発がん性予測式は、(6)の手順に従い遺伝子を選定し、クローンIDが0136、0297、0336、0518、0523、0580、0688、0719、0987、1091、1496、1512、1643、1662、1671、1754、1912、1940、2286、2372、2471、2654、2667、2754、2786、2788、2879、3211、3460、3469、3629、3942、4047、4096、4173、4476、4673、4688、4784、4830、4846、4975、5171、5231、5299、5500、5574、5600、5643、5670、5706、5791、6182、6196、6570、6670の発現量データを用いて作成した。そして、構築した予測式を用いて、トレーニングセットとテストセットの予測を行なった結果を表49に示す。
【0179】
【表49】

【0180】
結果、トレーニングセットは、ほぼ予測できた。Ames陽性物質の発がん性予測式は、L00クロスバリデーションにより75%の確率で、未知のAmes陽性の発がん性を予測できることが確認できた。また、テストセットのAmes陽性発がん物質は70%予測できた。
【0181】
同様の手順で、Ames陰性物質の発がん性予測式は、クローンIDが0007、0187、0725、0745、0762、1294、1764、1845、2873、3201、3286、3305、3903、4273、4275、4293、4697、4770、4846、5224、5515、6109、6182、6343の遺伝子の発現量データを用いて作成した。その予測式を用いて各々のトレーニングセット、テストセットを予測した結果を表50に示す。
【0182】
【表50】

【0183】
Ames陰性物質の発がん性予測結果についても、Ames陽性物質の結果と同じくトレーニングセットとテストセットの非発がん物質は比較的高い予測率を示した。L00クロスバリデーションの結果、82.9%予測できることが確認できた。
【0184】
(8)予測フローの構築
(7)で作成したAmes陽性物質グループと、Ames陰性物質グループの予測式を組み合わせ、発がん物質を予測する予測フローを構築した(図9)。予測式作成に用いた71物質のデータを、予測フローに適用した結果、Ames陽性物質の発がん性予測式では発がん物質が20物質予測できたが、非発がん物質1物質を発がん物質と誤って予測した。一方、Ames陰性物質の発がん性予測式では発がん物質が22物質予測できたが、非発がん物質1物質を発がん物質と誤って予測した。両予測式の結果を集約させた結果、42物質の発がん物質を予測することができた。
【0185】
実施例4
実施例3(1)〜(5)で得られたデータを使用してAmes陽性発がん物質、Ames陽性非発がん物質の発現パターンを更に下記の手順に従ってグループに分類し、化学物質の発がん性の予測を行った。
【0186】
(1)発がん物質の分類
発がん物質47物質(表1〜4及び34に示した発がん物質から四塩化炭素とグルタルアルデヒドを除外)及び非発がん物質24物質(表1〜4及び34に示した非発がん物質)について、遺伝子の発現パターンが近い物質ごとに発がん物質を分類して予測式を作成するために、次のような処理を行った。
【0187】
まず、Ames陽性発がん物質群とAmes陽性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットを、ウエルチt値により選定した。選定した遺伝子セットの発現パターンの分類をGene Maths(Applied Maths, Sint-Martens-Latem, Belgium)のクラスタ解析機能を用いて行い、樹形図の形状からクラスタを決定した。ウエルチt値の選定条件を変化させ、数パターンの遺伝子セットにより物質のクラスタ構成について確認を行い、遺伝子セットを変化させても安定して同じクラスタを形成する発がん物質のグループ1を選定した。その遺伝子セットの選定条件(ウエルチt値の値)と、選定した遺伝子のクローンIDを表51に示す。更に、それぞれのウエルチt値で選定した遺伝子セットを用いてクラスタ解析した樹形図を図10〜12に示す。図10〜12中、●はAmes陽性発がん物質、○はAmes陽性非発がん物質を表す。
【0188】
【表51】

【0189】
Ames陽性発がん物質グループ1を除いた残りのAmes陽性発がん物質と、全非発がん物質を用いて、残りの発がん物質中に存在する発現パターンの近い物質グループを同じ方法で選定した。即ち、残りのAmes陽性発がん物質投与群と、全非発がん物質投与群の間で特徴的に変動している遺伝子をウエルチt値で選定した後、その遺伝子セットを用いてクラスタ解析を行った。ウエルチt値の選定条件を変化させ、数パターンの遺伝子セットにより物質のクラスタ構成の確認を行い、常に安定してクラスタを形成する発がん物質グループ2、3を選定した。遺伝子セットの選定条件(ウエルチt値の値)と、選定した遺伝子のクローンIDを表52に示す。更に、それぞれのウエルチt値で選定した遺伝子セットを用いてクラスタ解析した樹形図を図13〜15に示す。図13〜15中、●は発がん物質、○は非発がん物質を表す。
【0190】
【表52】

【0191】
次に、Ames陰性発がん物質とAmes陰性非発がん物質を用いて発現パターンの近い物質グループを同じ方法で選定した。遺伝子セットの選定条件(ウエルチt値の値)と、選定した遺伝子のクローンIDを表53に示す。更に、それぞれのウエルチt値で選定した遺伝子セットを用いてクラスタ解析した樹形図を図16〜18に示す。図16〜18中、●はAmes陰性発がん物質、○はAmes陰性非発がん物質を表す。
【0192】
【表53】

【0193】
各発がん物質グループに分類された化学物質は以下の通りである。
(Ames陽性発がん物質グループ1)
TS004,006,011,013,014,042,043,076
(Ames陽性発がん物質グループ2)
TS041,047,048,049,065
(Ames陽性発がん物質グループ3)
TS028,044,050,053,077
(Ames陰性発がん物質グループ1)
TS008,018,020,021,023,024,055,056,070
(Ames陰性発がん物質グループ2)
TS027,029,030,054,067
(2)予測式作成手順と検証方法
予測に有効な遺伝子は、Ames陽性発がん物質群とAmes陽性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットを統計量の一つであるウェルチt値とフィルタリングの手法によって、表35〜48に示す遺伝子群から選定した。そして、それぞれの手法で選定した遺伝子セットを併せたものを次の予測式作成へと用いた。ウエルチt値については、発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値が、非発がん物質グループのLogRatioの平均値の絶対値より大きい遺伝子を選定した。フィルタリングの手法により、発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以上であった物質がX個以上で、非発がん物質群でLogRatioの絶対値が0.8以下であった物質がY個以上を示す遺伝子をXとYを変化させて選定し、ウェルチt値で選定した遺伝子セットを合わせて予測式を作成し、最も予測率のよい遺伝子セットを探索した。また、Ames陰性発がん物質群とAmes陰性非発がん物質群の間で発現量差が有意である遺伝子セットについても同様にウェルチt値とフィルタリングの手法により選定した。
【0194】
フリーソフトSVMlightを用い、実施例1(6)a)〜e)と同じ手順でAmes陽性物質の発がん性予測式を作成した。
【0195】
(3)各Ames分類毎の予測式の予測結果
Ames陽性物質グループ1の発がん性予測式は、(2)の手順に従い遺伝子を選定し、クローンIDが0065、0688、1974、2286、2654、3460、4673、4771、5231、5569の発現量データを用いて作成した。そして、構築した予測式を用いて、トレーニングセットとテストセットの予測を行なった結果を表54に示す。
【0196】
【表54】

【0197】
結果、トレーニングセットは、ほぼ予測できた。Ames陽性物質グループ1の発がん性予測式は、L00クロスバリデーションにより95.2%の確率で、未知のAmes陽性の発がん性グループ1を予測できることが確認できた。また、テストセットのAmes陽性非発がん物質は100%予測できた。しかし、残りのAmes陽性発がん物質は13.3%しか予測できなかった。この結果から、Ames陽性物質グループ1の予測式は、グループ1の変動パターンに特化した予測式であり、グループ2、3は、変動パターンが異なる為に予測できなかったと考えられる。
【0198】
同様にAmes陽性物質グループ2の発がん性予測式は、クローンIDが0477、0543、1875、1962、2007、2435、4578、5726、5731、6196、6275の発現量データを用いて作成した。構築した予測式を用いて、トレーニングセットとテストセットの予測を行なった結果を表55に示す。
【0199】
【表55】

【0200】
結果、トレーニングセットは、ほぼ予測できた。Ames陽性物質グループ2の発がん性予測式は、L00クロスバリデーションにより94.4%の確率で、未知のAmes陽性グループ2の発がん性を予測できることが確認できた。また、テストセットのAmes陽性非発がん物質は100%予測できた。しかし、グループ1の時と同様に、残りのAmes陽性発がん物質は16.7%しか予測できなかった。
【0201】
Ames陽性物質グループ3の発がん性予測式は、クローンIDが2171、2877、4047、6701の発現量データを用いて作成した。構築した予測式を用いて、トレーニングセットとテストセットの予測を行なった結果を表56に示す。
【0202】
【表56】

【0203】
結果、トレーニングセットは、ほぼ予測できた。Ames陽性物質グループ3の発がん性予測式は、L00クロスバリデーションにより100%の確率で、未知のAmes陽性グループ3の発がん性を予測できることが確認できた。また、テストセットのAmes陽性非発がん物質は100%予測できた。しかし、グループ1、2の時と同様に、残りのAmes陽性発がん物質は38.9%しか予測できなかった。
【0204】
Ames陰性物質グループ1の発がん性予測式についても、クローンIDが0187、0725、0745、1431、3201、4275の遺伝子の発現量データを用いて作成した。その予測式を用いて各々のトレーニングセット、テストセットを予測した結果を表57に示す。
【0205】
【表57】

【0206】
Ames陰性物質グループ1の予測結果は、これまでの結果と同じくトレーニングセットとテストセットの非発がん物質は高い予測率を示した。L00クロスバリデーションの結果、95%予測できることが確認できた。
【0207】
Ames陰性物質グループ2の発がん性予測式についても、クローンIDが1882、2281、4846、5515、5650の遺伝子の発現量データを用いて作成した。その予測式を用いて各々のトレーニングセット、テストセットを予測した結果を表58に示す。
【0208】
【表58】

【0209】
Ames陰性物質グループ2の発がん性予測結果についても、これまでの結果と同じくトレーニングセットとテストセットの非発がん物質は高い予測率を示した。L00クロスバリデーションの結果、100%予測できることが確認できた。
【0210】
(4)予測フローの構築
(3)で作成したAmes陽性物質グループと、Ames陰性物質グループの予測式を組み合わせ、発がん物質を予測する予測フローを構築した(図19)。予測式作成に用いた71物質のデータを、予測フローに適用した結果、Ames陽性物質の発がん性予測式では発がん物質が20物質予測できたが、非発がん物質1物質を発がん物質と誤って予測した。一方、Ames陰性物質の発がん性予測式では発がん物質が21物質予測でき、非発がん物質は全て正しく予測できた。両予測式の結果を集約させた結果、41物質の発がん物質を予測することができた。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】実施例1において構築した発がん性予測方法を示すフロー図である。
【図2】実施例2においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図3】実施例2においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図4】実施例2においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図5】実施例2においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図6】実施例2においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図7】実施例2においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図8】実施例2において構築した発がん性予測方法を示すフロー図である。
【図9】実施例3において構築した発がん性予測方法を示すフロー図である。
【図10】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図11】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図12】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図13】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図14】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図15】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図16】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図17】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図18】実施例4においてクラスタ解析により化学物質を分類した樹形図である。
【図19】実施例4において構築した発がん性予測方法を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ames試験陽性の少なくとも1の発がん物質(C+M+)及びAmes試験陰性の少なくとも1の発がん物質(C+M-)を試験動物に投与し、所定時間経過後に試験動物からmRNAを採取してその発現パターンをそれぞれ予め準備しておき、発がん性未知の被検物質の発がん性を予測するに際しては、
(1)発がん性を予測する被検物質にAmes試験を行い、該被検物質がAmes試験陽性又は陰性の何れに属するかを決定する第1工程、
(2)発がん性を予測する被検物質を試験動物に投与して所定期間経過後、試験動物からmRNAを採取してその発現パターンを得る第2工程、
(3)被検物質が前記第1工程でAmes試験陽性に属する場合は、予め準備したAmes試験陽性の発がん物質(C+M+)のmRNAの発現パターンと前記第2工程で得られたmRNAの発現パターンとの一致度を算出し、被検物質が前記第1工程でAmes試験陰性に属する場合は、予め準備したAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)のmRNAの発現パターンと前記第2工程で得られたmRNAの発現パターンとの一致度を算出し、算出した一致度から被検物質の発がん性を予測する第3工程、
を行うことを特徴とする被検物質の発がん性予測方法。
【請求項2】
Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を複数試験動物に投与し、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)について得られた複数のmRNAの発現パターンをその類似性により2以上のグループに分類し、グループ毎にmRNAの発現パターンを準備する請求項1に記載の被検物質の発がん性予測方法。
【請求項3】
mRNAの発現パターンが、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)を投与した試験動物とAmes試験陽性の非発がん物質(C-M+)を投与した試験動物の間又はAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を投与した試験動物とAmes試験陰性の非発がん物質(C-M-)を投与した試験動物の間で発現量の差が有意なmRNAを逆転写したcDNA又はcRNAを搭載したDNAマイクロアレイに、前記第2工程で試験動物から採取したmRNAから調製した蛍光標識cDNA又はcRNAをハイブリダイゼーションさせて得られるDNAマイクロアレイの蛍光パターンを使用するものである請求項1に記載の発がん性予測方法。
【請求項4】
DNAマイクロアレイが、Ames試験陽性の発がん物質(C+M+)を投与した試験動物とAmes試験陽性の非発がん物質(C-M+)を投与した試験動物の間及びAmes試験陰性の発がん物質(C+M-)を投与した試験動物とAmes試験陰性の非発がん物質(C-M-)を投与した試験動物の間で発現量の差が有意なmRNAから逆転写反応により合成したcDNA配列の全部又は一部をPCRにより増幅又は化学合成したDNAを搭載したものである請求項3に記載の被検物質の発がん性予測方法。
【請求項5】
DNAマイクロアレイが、配列番号1〜1435又は配列番号1436〜2357に記載する塩基配列から選定された3つ以上を搭載したものである請求項3又は4に記載の被検物質の発がん性予測方法。
【請求項6】
前記第2工程において、被検物質を1〜90日間試験動物に連続投与した後、試験動物からmRNAを採取する請求項1乃至5のいずれかに記載の被検物質の発がん性予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−252277(P2007−252277A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81537(P2006−81537)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年11月 日本環境変異原学会発行の「第34回大会プログラム・要旨集」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高精度・簡易有害性(ハザード)評価システム開発/化学物質暴露による遺伝子発現情報取得および長期毒性予測システムの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000173566)財団法人化学物質評価研究機構 (14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(501054746)株式会社三菱化学安全科学研究所 (3)
【Fターム(参考)】