説明

被水センサおよび結露センサ

【課題】新規な構成にて水の付着を高感度に検出することができるセンサを提供する。
【解決手段】基板(シリコン基板1、絶縁膜2)の上において、電極材10,11を保護膜12により被覆して構成した一対の電極20,21が、当該電極20,21が大気に晒される状態で配置され、被水による水の付着に伴う一対の電極20,21間の容量の変化を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被水センサおよび結露センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿度センサにおいて、特許文献1,2,3などに開示されるように感湿材料として高分子材料が使用されている。
【特許文献1】特開2002−5867号公報
【特許文献2】特開2002−174609号公報
【特許文献3】特開平4−50757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
感湿材料として高分子材料を使用するとセンサの直線性がよいなどの優れた特性を持ち合わせているが、被水センサや結露センサとして既存の湿度センサを用いた場合には、最終的にはセンサ部(電極)と一体化する必要がある。つまり、感湿材料をセンシング部(電極上)に形成する必要があり、製造工程が複雑になる。
【0004】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、新規な構成にて水の付着を高感度に検出することができるセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、被水センサとして、基板の上に、電極材を保護膜により被覆して構成した一対の電極を、当該電極が大気に晒される状態で配置し、被水による水の付着に伴う一対の電極間の容量の変化を検出してなる構成としたことを要旨としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、電極材を保護膜により被覆して構成した一対の電極が大気に晒されており、被水により水が付着すると、一対の電極間の容量が感湿材を用いた場合に比べ大きく変化し(図5参照)、この容量変化が検出される。このようにして、感湿材を用いることなく被水による水の付着を高感度に検出することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、結露センサとして、基板の上に、電極材を保護膜により被覆して構成した一対の電極を、当該電極が大気に晒される状態で配置し、結露による水の付着に伴う一対の電極間の容量の変化を検出してなる構成としたことを要旨としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、電極材を保護膜により被覆して構成した一対の電極が大気に晒されており、結露により水が付着すると、一対の電極間の容量が感湿材を用いた場合に比べ大きく変化し(図5参照)、この容量変化が検出される。このようにして、感湿材を用いることなく結露による水の付着を高感度に検出することができる。
【0009】
請求項3に記載のように、請求項1に記載の被水センサにおいて、保護膜はシリコン窒化膜よりなる構成にすることができる。同様に、請求項4に記載のように、請求項2に記載の結露センサにおいて、保護膜はシリコン窒化膜よりなる構成にすることができる。
【0010】
請求項5に記載のように、請求項1または3に記載の被水センサにおいて、電極材は耐腐食性材料よりなる構成にすることができる。同様に、請求項6に記載のように、請求項2または4に記載の結露センサにおいて、電極材は耐腐食性材料よりなる構成にすることができる。
【0011】
請求項7,9,11に記載のように請求項5に記載の被水センサにおいて耐腐食性材料として、ルテニウム系材料、白金、金を用いるとよい。同様に、請求項8,10,12に記載のように、請求項6に記載の結露センサにおいて耐腐食性材料として、ルテニウム系材料、白金、金を用いるとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1,2には、本実施形態におけるセンサの構造を示す。図1にはセンサの平面を示し、図1のA−A線での縦断面を図2に示す。本センサは被水や結露を検出するセンサであり、具体的には、図3,4に示すように被水した場合において水Wが付着したことを検出することができるようになっている。
【0013】
図1,2において、シリコン基板1の上面には絶縁膜2が形成され、これを本実施形態では基板として用いている。これに代わり、セラミック基板を用いてもよい。図2の絶縁膜2はシリコン酸化膜(SiO)であり、半導体用の絶縁膜である。
【0014】
シリコン基板1の上に絶縁膜2を介して一対の電極材10,11が一定の距離をおいて離間して形成されている。電極材10,11は金属膜よりなり、櫛歯状を有している。この櫛歯状の電極材10,11が同一平面において噛み合って対向して配置され、櫛歯状とすることにより対向面積を大きくでき小型化に優れた電極形状となっている。電極材10,11の材料として、アルミ(Al)や銅(Cu)やチタン(Ti)や銀(Ag)等を用いている。
【0015】
電極材(金属膜)10,11は保護膜12にて被覆され、耐腐食処理が施されている。保護膜12はシリコン窒化膜(Si)であり、半導体用の保護膜である。そして、電極材10を保護膜12により被覆することにより耐腐食性を有する電極20が構成されるとともに、電極材11を保護膜12により被覆することにより耐腐食性を有する電極21が構成されている。
【0016】
このようにして、基板(1,2)の上に、耐腐食性を有する一対の電極20,21が大気に晒される状態で配置されている。
また、電極材10,11には幅広なパッド部13,14が形成され、このパッド部13,14は保護膜12から露出している。パッド部13,14にはボンディングワイヤーを通して回路部(図示略)が電気的に接続され、当該回路部において電極20,21間の容量の変化が検出される。具体的には、回路部の構成として、その一例を挙げるならば、スイッチトキャパシタ回路(例えば、特開2003−28824号公報の図3)を用いたり、容量変化を発振周波数の変化として取り出す回路構成(例えば、特開昭62−17649号公報の第4図)を用いればよい。
【0017】
そして、図3,4に示すように被水時(や結露時)において水Wの付着に伴う電極20,21間の容量変化から被水(や結露)を検出することができる。つまり、被水による水の付着に伴う一対の電極20,21間の容量の変化を検出したり、結露による水の付着に伴う一対の電極20,21間の容量の変化を検出することができる。
【0018】
図5には、センサ特性を示す。図5において横軸には湿度0〜100[%RH]および被水時、結露時をとっている。図5において縦軸には電極間の容量、詳しくは、0%RH時で規格化した容量[pF]をとっている。
【0019】
この図5においてサンプルとして二種類のサンプルを用いている。第1のサンプルは、図1,2のセンサ構成を有するものであり、「高分子膜なし」構造と称する。第2のサンプルは、比較例としてのセンサ構造を有するものであり、図6,7に示す「高分子膜あり」構成となっている。
【0020】
図6,7の比較例のセンサ構造について説明しておく。図6,7は、従来の湿度センサに対応するものであり、保護膜12上に高分子感湿膜40が形成されている。つまり、金属膜により形成した櫛歯電極材10,11上に、保護膜12を介して吸湿性の高い高分子感湿膜40が配置されている。図8,9には被水により水Wが付着した状態を示す。
【0021】
これに対し、本実施形態(図1,2)では保護膜12上に何も形成しておらず、電極材10,11を保護する保護膜12は大気に晒されている。
このようにして、図5においては、図6,7に示すように高分子感湿膜40を形成する場合(=高分子膜あり)と、本実施形態(図1,2)のように、感湿膜を形成しない場合(=高分子膜なし)の湿度に対するセンサ特性を表している。
【0022】
なお、図5のデータをとるにあたり用いた電極サイズとして通常のものより櫛歯電極の面積を約50倍にしたものを使用している。
図5において、0%RHから100%RHまでの湿度領域では、高分子膜を形成しない櫛歯電極は容量値の変化が小さく、また、リニアリティもないため湿度センサとして使用することは困難である。
【0023】
一方、高分子膜を形成した櫛歯電極は、相対湿度に対してリニアな容量変化が得られている。しかしながら、櫛歯電極が被水した場合や結露した場合においては、高分子膜を形成しない方が、容量変化が非常に大きい。
【0024】
図6,7に示す櫛歯電極型の湿度センサは、容量変化が約40fF(フェムトファラッド)と非常に小さいため、スイッチトキャパシタ方式の検出回路を使用していた。図5で説明するならば、「高分子膜あり」構造においては0〜100%RHの範囲で約2pF変化しており、通常の電極サイズに換算すると40fF(=2/50×1000)となる。これに対し図1,2の本実施形態では、被水や結露状態を測定するには非常に感度が高いので、スイッチトキャパシタ方式以外の回路構成として検出回路を簡素化することが可能となる。これを図5で説明するならば、「高分子膜なし」構造においては被水時や結露時には約27pFの容量変化が得られ、これを通常の電極サイズに換算すると約0.5pF(≒27/50)となる。よって、「高分子膜あり」構造に比べ、1桁違うオーダーの容量変化が得られることとなり、スイッチトキャパシタ方式以外の回路構成として検出回路を簡素化することが可能となる。
【0025】
図1,2での電極材(金属膜)10,11として耐腐食性材料(耐腐食性金属)を使用してもよい。具体的には、電極材10,11の材料(耐腐食性材料)として、クロムやRu,RuO等のルテニウム系材料や白金(Pt)、金(Au)等の貴金属を挙げることができる。
【0026】
本実施形態のセンサの使用方法としては、例えば、LSIの一部に集積し、携帯電話にあるような水没シールの代わりに用いることも可能である。即ち、水没シールでは被水しなくても時間と共に徐々に変色するが本実施形態の被水センサはそのようなことがなく被水時のみに被水を瞬時に検出できる。
【0027】
なお、図3,4では被水した状況を示したが、結露時には基板(1,2)の上において、即ち、電極20,21上において多数の小さな水滴が付着することになる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0028】
(イ)被水センサとして、基板(シリコン基板1、絶縁膜2)の上に、電極材10,11を保護膜12により被覆して構成した一対の電極20,21を、当該電極20,21が大気に晒される状態で配置し、被水による水の付着に伴う一対の電極20,21間の容量の変化を検出してなる構成とした。結露センサとして、基板(シリコン基板1、絶縁膜2)の上に、電極材10,11を保護膜12により被覆して構成した一対の電極20,21を、当該電極20,21が大気に晒される状態で配置し、結露による水の付着に伴う一対の電極20,21間の容量の変化を検出してなる構成とした。これにより、電極材10,11を保護膜12により被覆して構成した一対の電極20,21(耐腐食性を有する一対の電極20,21)が大気に晒されており、被水や結露により水が付着すると、一対の電極20,21間の容量が感湿材を用いた場合に比べ大きく変化し(図5参照)、この容量変化が検出される。このようにして、感湿材を用いることなく被水や結露による水の付着を高感度に検出することができる。また、容量が感湿材を用いた場合に比べ大きく変化するので、検出回路の簡素化を図ることが可能となる。さらに、特殊な高分子材料や無機材料からなる感湿膜を用いることなく被水状態・結露状態が分かる被水・結露センサを提供することができ(感湿膜レス構造とすることができ)、これにより従来の構造の湿度センサを用いた場合においてはセンシング部に感湿材料を形成することは余分な製造工程が増えてコスト高になっていたが、本実施形態においては、感湿材料を形成する必要がなく製造容易となる。
【0029】
(ロ)保護膜12はシリコン窒化膜であると、半導体製造技術を用いて容易に形成することができる。詳しくは、シリコン基板1の上にシリコン酸化膜等の絶縁膜2、アルミ膜等の電極材10,11、シリコン窒化膜よりなる保護膜12を順に積層する半導体プロセスを用いて容易に耐腐食処理を施すことが可能となる。
【0030】
(ハ)電極材10,11は耐腐食性材料よりなると、電極の耐腐食性向上を図ることができる。特に、耐腐食性材料としてルテニウム系材料(Ru、RuO)、白金、金を用いると、より耐腐食性に優れたものとなる。
【0031】
なお、電極は平面で対向していればよく、図1,2等においては電極として櫛歯電極を用いたが、これに限ることなく電極の形状は円形等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態におけるセンサの平面図。
【図2】図1のA−A線での縦断面図。
【図3】実施形態のセンサにおける被水時の水の付着状況を示す平面図。
【図4】図3のA−A線での縦断面図。
【図5】センサ特性図。
【図6】比較例におけるセンサの平面図。
【図7】図6のA−A線での縦断面図。
【図8】比較例のセンサにおける被水時の水の付着状況を示す平面図。
【図9】図8のA−A線での縦断面図。
【符号の説明】
【0033】
1…シリコン基板、2…絶縁膜、10…電極材、11…電極材、12…保護膜、20…電極、21…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1,2)の上に、電極材(10,11)を保護膜(12)により被覆して構成した一対の電極(20,21)を、当該電極(20,21)が大気に晒される状態で配置し、被水による水の付着に伴う前記一対の電極(20,21)間の容量の変化を検出してなることを特徴とする被水センサ。
【請求項2】
基板(1,2)の上に、電極材(10,11)を保護膜(12)により被覆して構成した一対の電極(20,21)を、当該電極(20,21)が大気に晒される状態で配置し、結露による水の付着に伴う前記一対の電極(20,21)間の容量の変化を検出してなることを特徴とする結露センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の被水センサにおいて、
前記保護膜(12)はシリコン窒化膜よりなることを特徴とする被水センサ。
【請求項4】
請求項2に記載の結露センサにおいて、
前記保護膜(12)はシリコン窒化膜よりなることを特徴とする結露センサ。
【請求項5】
請求項1または3に記載の被水センサにおいて、
前記電極材(10,11)は耐腐食性材料よりなることを特徴とする被水センサ。
【請求項6】
請求項2または4に記載の結露センサにおいて、
前記電極材(10,11)は耐腐食性材料よりなることを特徴とする結露センサ。
【請求項7】
請求項5に記載の被水センサにおいて、
前記耐腐食性材料として、ルテニウム系材料を用いたことを特徴とする被水センサ。
【請求項8】
請求項6に記載の結露センサにおいて、
前記耐腐食性材料として、ルテニウム系材料を用いたことを特徴とする結露センサ。
【請求項9】
請求項5に記載の被水センサにおいて、
前記耐腐食性材料として、白金を用いたことを特徴とする被水センサ。
【請求項10】
請求項6に記載の結露センサにおいて、
前記耐腐食性材料として、白金を用いたことを特徴とする結露センサ。
【請求項11】
請求項5に記載の被水センサにおいて、
前記耐腐食性材料として、金を用いたことを特徴とする被水センサ。
【請求項12】
請求項6に記載の結露センサにおいて、
前記耐腐食性材料として、金を用いたことを特徴とする結露センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−2802(P2009−2802A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164153(P2007−164153)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】