被測定部材を検査するヘッド機構、検査装置、検査システム及び検査結果フィードバックシステム
【課題】2つの円筒体がろう付けにて接合された部分の不具合を確実且つ効率よく検査する。
【解決手段】ヘッド機構5は、円筒体7の接合部分70に接して超音波を出射する探触子60を具えたヘッド6と、先端部がヘッド6に取り付けられたガイドピン51と、ガイドピン51の基端部が遊嵌する支持体50と、ガイドピン51及びヘッド6を接合部分70に付勢するバネ53を設けている。ヘッド6は支持体50に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、接合部分70の表面形状に追随して接する。また、ヘッド機構5に繋がって接合部分70の検査状態を表示するディスプレイ40を有する制御手段4を具え、制御手段4は、ヘッド機構5の回転角度に対応した接合部分70の検査状態を、ディスプレイ40に視覚的に表示する。
【解決手段】ヘッド機構5は、円筒体7の接合部分70に接して超音波を出射する探触子60を具えたヘッド6と、先端部がヘッド6に取り付けられたガイドピン51と、ガイドピン51の基端部が遊嵌する支持体50と、ガイドピン51及びヘッド6を接合部分70に付勢するバネ53を設けている。ヘッド6は支持体50に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、接合部分70の表面形状に追随して接する。また、ヘッド機構5に繋がって接合部分70の検査状態を表示するディスプレイ40を有する制御手段4を具え、制御手段4は、ヘッド機構5の回転角度に対応した接合部分70の検査状態を、ディスプレイ40に視覚的に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定部材に超音波を当てて、被測定部材内部の不具合を検査するヘッド機構、検査装置、検査システム及び検査結果フィードバックシステムに関する。具体的には、エアコンや冷蔵庫等用の冷媒配管である2つの中空円筒体がろう付けにて接合された部分に、超音波を当てて、ろう付け部分の不具合を検査するヘッド機構及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管である中空の円筒体を回転させつつ、円筒体の内面又は外面を検査する装置として、図14に示すものがある(特許文献1参照)。これは円筒体(7)の内面を検査する装置であって、円筒体(7)は外周面に接するローラ(77)によって、円筒体(7)の軸Lを中心として回転される。円筒体(7)の外側に位置する台車(9)からは、円筒体(7)の内面に延びる棹体(90)が延び、該棹体(90)の先端部にリンク機構(91)が配備される。該リンク機構(91)は円筒体(7)の内面に接するセンサヘッド(92)を具える。ローラ(77)が回転し、台車(9)が円筒体(7)の軸Lに沿って移動すると、センサヘッド(92)は円筒体(7)の内面を周方向及び軸方向に検査することができる。センサヘッド(92)は円筒体(7)の内面に接して、円筒体(7)内面の凹み等を確認している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−233783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人は、円筒体(7)を周方向及び軸方向に検査する装置に於いて、一直線状に繋がった2つの円筒体(7)(7a)がろう付けにて接合された部分の不具合を検査することを着想した。具体的には、図15(a)、(b)に示すように、一方の円筒体(7)の端部に径が拡大した膨らみ部(71)を形成し、該膨らみ部(71)内に他方の円筒体(7a)の端部を嵌め、膨らみ部(71)と円筒体(7a)との半径方向の隙間をろうである溶融部材(72)にて接合したものである。即ち、膨らみ部(71)が接合部分(70)を形成する。
図15(b)に示すように、2つの円筒体(7)(7a)を接合する溶融部材(72)の内部に巣と呼ばれる空隙(73)があれば、接合強度が低下するから、これを円筒体(7)の周囲及び軸方向について検査する必要がある。図14にて用いた検査装置では、ろう付け部分の内部の確認はできない。
かかる検査方法として、ガスリーク検査が実施されてきたが、検査時のリークの有無を確認するだけで、ろう付け状態を精度良く評価することはできなかった。また、ろう付け部分を破壊して検査すると、配管は製品であるため、全数を破壊検査することはできない。非破壊検査として、X線検査技術があるが、装置が高価であり、安全管理が難しい。
出願人はかかる空隙(73)の検査方法として、超音波を用いることを着想した。具体的には、図15(a)に示すように、溶融部材(72)に空隙(73)が無ければ、センサである探触子(60)から発せられた超音波は、膨らみ部(71)、溶融部材(72)、内側の円筒体(7a)の壁を通り、内側の円筒体(7)内側の空気層に当たって反射される。即ち、探触子(60)から発せられた超音波が出射してから、反射されて入射するまでの時間はt1と長い。これに対して、図15(b)に示すように、溶融部材(72)に空隙(73)があれば、超音波は溶融部材(72)内の空隙(73)に反射されるから、探触子(60)から発せられた超音波が出射してから、反射されて入射するまでの時間はt2と短い。これにより、溶融部材(72)内の空隙(73)の有無が判る。尚、探触子(60)は実際は、外側の円筒体(7)の壁に接するが、図15(a)、(b)では説明の便宜上、探触子(60)を外側の円筒体(7)の壁から離して図示している。図14にて用いた検査装置のセンサヘッド(92)に超音波探触子を用いることも考えられるが、接合部分(70)の表面の凹凸に追随して検査することは困難である。
本発明の目的は、2つの円筒体がろう付けにて接合された部分の不具合を確実且つ効率よく検査することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイドピン(51)と、ガイドピン(51)の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイドピン(51)及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接する。
また、ヘッド機構(5)に繋がって被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、制御手段(4)は、ヘッド機構(5)の回転角度に対応した被測定物の検査状態を、ディスプレイ(40)に視覚的に表示する。
更に、検査結果フィードバックシステムは、検査治具(1)と、検査治具(1)に繋がって、被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、
制御手段(4)は、検査治具(1)を用いる検査対象及び検査結果を示すグラフィカルデータをディスプレイ(40)に表示するグラフィカルデータ表示機能を有し、制御手段(4)に繋がって被測定物の検査状態がフィードバックされる端末(8)が配備されている。
【発明の効果】
【0006】
1.ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接するから、接合部分(70)の表面に凹凸があっても、安定して自動的に検査を続けることができる。
2.ろう材である溶融部材(72)の接合状態を、ディスプレイ(40)上に視覚的に断面表示するから、ろう付け不良に対して、製造工程の現場で即座に修正することができる。
3.本発明の検査結果フィードバックシステムを用いると、試作品を検査し、設計試作段階で製品全体の接合部分(70)について評価を行い、設計部門に早期にフィードバックすることができる。これにより、より検査結果を有効に活用することができ、その結果、量産時の製品全体の接合部分の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第1実施例)
以下、本発明の一実施例を図を用いて詳述する。
図1は、冷媒配管である中空の2つの円筒体(7)(7a)の接合部分(70)を検査するシステムの概略図であり、主としてエアコンや冷蔵庫等の配管の設計試作段階にて用いられる。円筒体(7)(7a)の接合部分に取り付けられる検査治具(1)は、超音波探傷器(15)に繋がり、該超音波探傷器(15)はパーソナルコンピュータのような、ディスプレイ(40)を具えた制御手段(4)に繋がる。該制御手段(4)にはスキャナ(45)が接続され、該スキャナ(45)は情報シート(46)上に記載された情報を読みとる。この情報は、例えばバーコードであって、検査せんとする円筒体(7)(7a)が用いられるエアコンや冷蔵庫等の機種番号であり、使用者がスキャナ(45)で情報を読みとると、該機種番号等がディスプレイ(40)に表示される。制御手段(4)にはまた、使用者が検査箇所を番号等で入力することができる。
図2は、ディスプレイ(40)の表示状態を示す正面図である。ディスプレイ(40)には円筒体(7)の断面を模した環状図形(41)が表示され、該環状図形(41)は測定開始点を0とした回転角度に対応した検査結果を色分けて表示する。具体的には、ろう付け部分が正確に接合されている箇所は、青色で、ろう付け部分が正確に接合されていない、即ち空隙(73)が存在すると推定される箇所は赤色で表示される。尚、この青色、赤色は例示であって、この色に限定されない。
【0008】
図3は、円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に取り付けられる検査治具(1)の分解斜視図である。検査治具(1)は、固定側治具(2)と、固定側治具(2)に螺合する回転側治具(3)と、固定側治具(2)を受けて支持するブラケット(10)を有し、後記するように、回転側治具(3)が接合部分(70)の周囲を回りながら昇降し、探触子(60)が接合部分(70)を検査し、その情報を制御手段(4)に送る。
ブラケット(10)は2つの半体(11)(11)をヒンジ(13)にて接続して構成され、各半体(11)の内側に形成された凹部(12)が下側の円筒体(7a)の周面に嵌まる。各半体(11)の先端部には留め具(図示せず)が配備される。2つの半体(11)(11)が合わさった状態で、留め具にて固定すると、ブラケット(10)は下側の円筒体(7a)の周面に固定される。
固定側治具(2)は、一側部が開口(22)して、円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に横側から嵌められる円筒状の部材である。固定側治具(2)は、円筒体(7a)の周面に固定されたブラケット(10)の上に載って回転しない。固定側治具(2)の内周面には雄ネジ(23)が形成されている。固定側治具(2)上には、歯車(21)付きのモータ(20)が設けられており、該モータ(20)は制御手段(4)によって駆動される。
回転側治具(3)は、一部に円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に横側から嵌められる切欠き(30)を開設した円筒状の部材であり、外周面に雄ネジ(23)に螺合する雌ネジ(31)が形成されている。尚、固定側治具(2)の内周面に雌ネジ(31)を、回転側治具(3)の外周面に雄ネジ(23)を形成してもよい。固定側治具(2)上には前記の歯車(21)と噛合する円弧状の歯面(32)が設けられ、また、円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に接するヘッド機構(5)が配備されている。
【0009】
図4は、図3をA−A線を含む断面にて破断して矢視した断面図である。回転側治具(3)は円筒体(7)の中心軸Lを中心として回転可能であり、固定側治具(2)及びブラケット(10)は回転しない。
固定側治具(2)上のモータ(20)に通電すると、歯車(21)が回転し、歯面(32)が歯車(21)に螺合した回転側治具(3)が中心軸Lを中心として回転しながら、昇降する。ヘッド機構(5)が接合部分(70)の周面に接しながら、接合部分(70)の回りを回転しつつ昇降する。
図5は、ヘッド機構(5)の詳細構成を示す断面図である。ヘッド機構(5)は、回転側治具(3)上に設けられた支持体(50)と、支持体(50)から円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に向けて延び、支持体(50)に遊嵌したガイドピン(51)(51)と、ガイドピン(51)(51)の先端部に取り付けられて、探触子(60)を具えたヘッド(6)を具える。探触子(60)は超音波探傷器(15)に接続されて、超音波を出射し且つ反射された超音波を受信するものであり、ヘッド(6)の先端面に配備されて、接合部分(70)の周面に接する。前記の如く、超音波を発してから戻ってくるまでの時間を、超音波探傷器(15)にて解析して、接合部分(70)の空隙(73)の有無を判断する。
ガイドピン(51)(51)の支持体(50)側端部には抜け止め用の鍔(52)が設けられ、ヘッド(6)はガイドピン(51)に嵌まったバネ(53)によって接合部分(70)に対して出没可能に付勢される。
図6は、支持体(50)を図5のB方向から見た図である。支持体(50)には上下に延びた長孔(54)(54)が開設され、ガイドピン(51)は長孔(54)に上下に余裕を持って嵌まる。これにより、ガイドピン(51)及びヘッド(6)は支持体(50)に対して、揺動可能となる。
【0010】
図7は、ヘッド機構(5)による検査状態を示す図である。外側の円筒体(7)の膨らみ部(71)の外周面は必ずしも平坦ではなく、図7に示すように、凸部(74)を形成していることがある。本例に係わるヘッド機構(5)に於いては、下降中のヘッド(6)が凸部(74)に接すると、ヘッド(6)は凸部(74)に接してバネ(53)に抗して引っ込み、且つ上向きに揺動して、凸部(74)に接しながら通過する。円筒体(7)の外周面に凹部があるときでも、ヘッド(6)は凹部に接しながら通過する。
即ち、ヘッド(6)は円筒体(7)(7a)の接合部分(70)の表面形状に応じて、柔軟に追随して動くことができ、探触子(60)による検査をスムーズに行うことができる。
【0011】
図8は、本例の検査装置の検査手順を示すフローチャートである。使用者は、制御手段(4)に通電して、検査を開始する。先ず、スキャナ(45)で情報シート(46)上に記載された情報を読みとり、機種等を入力する。また、検査箇所を番号等で入力して、検査条件を設定する(S1)。
使用者が制御手段(4)に手入力してトリガーをかける。回転開始前のヘッド(6)の回転位置は、図2の環状図形(41)の測定開始点0に対応している。モータ(20)に通電されて、回転側治具(3)が回転する(S2)。ヘッド(6)は接合部分(70)の表面に接しながら、接合部分(70)の回りを回転し且つ昇降する。モータ(20)の回転角度、具体的にはFGパルスからモータの回転数が判るから、制御手段(4)はヘッド(6)が検査開始からどれだけ回転したかが判る。
探触子(60)は超音波を接合部分(70)に向けて発し、戻ってくるまでの時間を、超音波探傷器(15)にて解析する(S3)。制御手段(4)は、ヘッド(6)の回転位置及び検査結果を、一旦内部メモリ(図示せず)に格納する。モータ(20)の回転数からヘッド(6)が接合部分(70)の回りを360度回転したことを検出すると(S4)、格納され続けた信号を解析して(S5)、検査結果を図2の環状図形(41)上に示す。検査結果が良好、即ち、接合部分(70)内に空隙(73)が無いと判断された回転領域は青色で示し、検査結果が不良、即ち、接合部分(70)内に空隙(73)があると判断された箇所は赤色で表示される(S6)。これにより、検査が自動的に行われると共に、検査結果が自動的にディスプレイ(40)に表示され、使用者は検査結果を見て判定する(S7)。
【0012】
本例にあっては、溶融部材(72)の接合状況、即ち、ろう材の流れ込み状態を超音波で検査するから、接合部分を破壊することなく、評価することができ、且つ破壊検査の手間を省くことができる。また、ろう材の流れ込み状態を色分けで断面表示するから、ろう付け不良に対して、製造工程の現場で即座に修正することができる。
また、回転側治具(3)は接合部分(70)の回りを回転することができる大きさであれば足り、治具の小型化、省力化を実現することができる。更に、前記の如く、本例のヘッド機構(5)は、接合部分(70)の表面形状に応じて、柔軟に追随して動くことができる。これにより、接合部分(70)の表面に凹凸があっても、安定して自動的に検査を続けることができる。
【0013】
(第2実施例)
本例の検査装置は前記の如く、主として、エアコンや冷蔵庫等の配管の設計試作段階にて用いられるが、例えば、業務用エアコンの室外機内部には、ろう付けすべき接合部分(70)が多数存在する。そのため、設計試作段階に於いて、予め量産時のろう付け品質を考慮して設計しておくことが、ろう付け品質向上に不可欠であった。
出願人はかかる検査装置を用いて、設計試作段階に於ける検査結果を、配管の設計部門に早期にフィードバックすることができる検査結果フィードバックシステムを着想した。
図9は、この検査結果フィードバックシステムの概略を示すブロック図である。該検査結果フィードバックシステムは、前記の如く、検査治具(1)、超音波探傷器(15)、制御手段(4)を具える。
制御手段(4)は、検査治具(1)を用いる検査対象及び検査結果を示すグラフィカルデータを表示するグラフィカルデータ表示機能を有する。
また、制御手段(4)とオンラインで繋がる設計側端末(8)が配備され、制御手段(4)は設計側端末(8)との間で、ディスプレイ(40)上のデータをやりとりすることができる。
【0014】
先ず、設計試作品を検査する使用者は、制御手段(4)に通電して検査開始を入力し、スキャナ(45)にて情報シート(46)上に記載された情報を読みとる。制御手段(4)は検査対象を、ディスプレイ(40)に表示する。ディスプレイ(40)上には、図10に示すように、検査すべき円筒体(7)(7a)の接合部分(70)が実物写真又は3Dデータで表示される。図10では、先ず左側の接合部分(70)の断面を検査し、次に右側の接合部分(70)の断面を検査する旨が表示される。両接合部分(70)(70)の間隔をSとする。
【0015】
設計試作品を検査する使用者は、固定側治具(2)と回転側治具(3)を検査対象である左側の円筒体(7)に取り付ける。前記の如く、モータ(20)を回転させて、探触子(60)が超音波を発射してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、接合部分(70)の全周に亘って、検査する。制御手段(4)の検査結果表示機能により、検査結果が図11の如く、一方の環状図形(41)上に表示される。その後、固定側治具(2)と回転側治具(3)を右側の円筒体(7)に取り付け、同様に検査を行う。2つの環状図形(41)(41)が表示される。即ち、グラフィカルデータ表示機能によって、接合部分(70)の検査結果が実物写真又は3Dデータに対応してディスプレイ(40)上に表示される。
図11では、2つの環状図形(41)(41)の矢印Cで示す箇所が赤色で表示され、その他の箇所は青色である。即ち、矢印Cで示す箇所が検査結果が不良であり、接合部分(70)に空隙(73)があると判断された。換言すれば、両接合部分(70)(70)の間隔が狭い箇所に於いて、ろう付けが不良と判断された。一般に、接合部分(70)(70)の間隔が狭いとろう付け作業が行い難いから、間隔Sを広げる必要がある。
【0016】
この環状図形(41)上に示された検査結果を、設計側端末(8)にオンラインで送信し、フィードバックする。尚、オンラインでなく、検査結果を印刷して、直接設計部門にフィードバックしてもよい。設計部門では、図12に示すように、円筒体(7)(7a)の間隔をSからS1に広げる設計変更を行うとともに、この旨を設計試作品を検査する使用者に伝える。
設計変更された、即ち間隔がS1に広げられた接合部分(70)(70)を有する円筒体(7)(7a)が設計試作されると、設計試作品を検査する使用者は、上記と同様に、グラフィカルデータ表示機能に基づいて、再度の検査を行う。図13に示すように、間隔がS1に広げられた円筒体(7)(7a)では、間隔Sのときには不良と判定された矢印Cで示す箇所は青色で表示され、ろう付けが支障無く行われたことが実証された。
【0017】
設計試作段階に於いて、このシステムを用いて、早期に検査を行い、検査結果を早期に設計に反映させることができる。その結果、量産品のろう付けに関する品質が向上する。
従来にあっては、検査結果は不良判定のみに使用され、また数値データとして保存されるのみで、検査結果を有効に利用していなかった。本例の検査結果フィードバックシステムにあっては、検査結果は設計側端末(8)にフィードバックされる。これにより、不良発生位置の傾向分析を行い、早期に設計変更を行う等、検査結果をより有効に活用することができ、その結果、製品全体の品質を向上させることができる。
【0018】
本例にあっては、回転側治具(3)をモータ(20)にて回転させるとしたが、手で回転させても良い。この場合は、回転側治具(3)又は固定側治具(2)に位置センサ(図示せず)を取り付け、回転側治具(3)の回転位置を検出して、制御手段(4)に送る。
また、ヘッド(6)はバネ(53)により接合部分(70)に向けて付勢されるとしたが、バネ(53)に代えて、ヘッド(6)を付勢する弾性体であってもよい。
更には検査治具(1)は配管の設計試作段階にて用いられるとしたが、例えば市場に販売されたエアコンや冷蔵庫等の配管を検査するため、サービスマンが使用してもよい。
【0019】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】2つの円筒体の接合部分を検査するシステムの概略図である。
【図2】ディスプレイの表示状態を示す正面図である。
【図3】検査治具の分解斜視図である。
【図4】図3をA−A線を含む断面にて破断して矢視した断面図である。
【図5】ヘッド機構の詳細構成を示す断面図である。
【図6】支持体を図5のB方向から見た図である。
【図7】ヘッド機構による検査状態を示す図である。
【図8】検査装置の検査手順を示すフローチャートである。
【図9】検査結果フィードバックシステムの概略を示すブロック図である。
【図10】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図11】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図12】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図13】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図14】従来の検査装置の側面図である。
【図15】(a)は空隙のない溶融部材に超音波を照射したときの断面図、(b)は空隙が存在する溶融部材に超音波を照射したときの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
(1) 検査治具
(2) 固定側治具
(3) 回転側治具
(4) 制御手段
(5) ヘッド機構
(6) ヘッド
(40) ディスプレイ
(50) 支持体
(51) ガイドピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定部材に超音波を当てて、被測定部材内部の不具合を検査するヘッド機構、検査装置、検査システム及び検査結果フィードバックシステムに関する。具体的には、エアコンや冷蔵庫等用の冷媒配管である2つの中空円筒体がろう付けにて接合された部分に、超音波を当てて、ろう付け部分の不具合を検査するヘッド機構及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管である中空の円筒体を回転させつつ、円筒体の内面又は外面を検査する装置として、図14に示すものがある(特許文献1参照)。これは円筒体(7)の内面を検査する装置であって、円筒体(7)は外周面に接するローラ(77)によって、円筒体(7)の軸Lを中心として回転される。円筒体(7)の外側に位置する台車(9)からは、円筒体(7)の内面に延びる棹体(90)が延び、該棹体(90)の先端部にリンク機構(91)が配備される。該リンク機構(91)は円筒体(7)の内面に接するセンサヘッド(92)を具える。ローラ(77)が回転し、台車(9)が円筒体(7)の軸Lに沿って移動すると、センサヘッド(92)は円筒体(7)の内面を周方向及び軸方向に検査することができる。センサヘッド(92)は円筒体(7)の内面に接して、円筒体(7)内面の凹み等を確認している。
【0003】
【特許文献1】特開平8−233783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人は、円筒体(7)を周方向及び軸方向に検査する装置に於いて、一直線状に繋がった2つの円筒体(7)(7a)がろう付けにて接合された部分の不具合を検査することを着想した。具体的には、図15(a)、(b)に示すように、一方の円筒体(7)の端部に径が拡大した膨らみ部(71)を形成し、該膨らみ部(71)内に他方の円筒体(7a)の端部を嵌め、膨らみ部(71)と円筒体(7a)との半径方向の隙間をろうである溶融部材(72)にて接合したものである。即ち、膨らみ部(71)が接合部分(70)を形成する。
図15(b)に示すように、2つの円筒体(7)(7a)を接合する溶融部材(72)の内部に巣と呼ばれる空隙(73)があれば、接合強度が低下するから、これを円筒体(7)の周囲及び軸方向について検査する必要がある。図14にて用いた検査装置では、ろう付け部分の内部の確認はできない。
かかる検査方法として、ガスリーク検査が実施されてきたが、検査時のリークの有無を確認するだけで、ろう付け状態を精度良く評価することはできなかった。また、ろう付け部分を破壊して検査すると、配管は製品であるため、全数を破壊検査することはできない。非破壊検査として、X線検査技術があるが、装置が高価であり、安全管理が難しい。
出願人はかかる空隙(73)の検査方法として、超音波を用いることを着想した。具体的には、図15(a)に示すように、溶融部材(72)に空隙(73)が無ければ、センサである探触子(60)から発せられた超音波は、膨らみ部(71)、溶融部材(72)、内側の円筒体(7a)の壁を通り、内側の円筒体(7)内側の空気層に当たって反射される。即ち、探触子(60)から発せられた超音波が出射してから、反射されて入射するまでの時間はt1と長い。これに対して、図15(b)に示すように、溶融部材(72)に空隙(73)があれば、超音波は溶融部材(72)内の空隙(73)に反射されるから、探触子(60)から発せられた超音波が出射してから、反射されて入射するまでの時間はt2と短い。これにより、溶融部材(72)内の空隙(73)の有無が判る。尚、探触子(60)は実際は、外側の円筒体(7)の壁に接するが、図15(a)、(b)では説明の便宜上、探触子(60)を外側の円筒体(7)の壁から離して図示している。図14にて用いた検査装置のセンサヘッド(92)に超音波探触子を用いることも考えられるが、接合部分(70)の表面の凹凸に追随して検査することは困難である。
本発明の目的は、2つの円筒体がろう付けにて接合された部分の不具合を確実且つ効率よく検査することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイドピン(51)と、ガイドピン(51)の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイドピン(51)及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接する。
また、ヘッド機構(5)に繋がって被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、制御手段(4)は、ヘッド機構(5)の回転角度に対応した被測定物の検査状態を、ディスプレイ(40)に視覚的に表示する。
更に、検査結果フィードバックシステムは、検査治具(1)と、検査治具(1)に繋がって、被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、
制御手段(4)は、検査治具(1)を用いる検査対象及び検査結果を示すグラフィカルデータをディスプレイ(40)に表示するグラフィカルデータ表示機能を有し、制御手段(4)に繋がって被測定物の検査状態がフィードバックされる端末(8)が配備されている。
【発明の効果】
【0006】
1.ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接するから、接合部分(70)の表面に凹凸があっても、安定して自動的に検査を続けることができる。
2.ろう材である溶融部材(72)の接合状態を、ディスプレイ(40)上に視覚的に断面表示するから、ろう付け不良に対して、製造工程の現場で即座に修正することができる。
3.本発明の検査結果フィードバックシステムを用いると、試作品を検査し、設計試作段階で製品全体の接合部分(70)について評価を行い、設計部門に早期にフィードバックすることができる。これにより、より検査結果を有効に活用することができ、その結果、量産時の製品全体の接合部分の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第1実施例)
以下、本発明の一実施例を図を用いて詳述する。
図1は、冷媒配管である中空の2つの円筒体(7)(7a)の接合部分(70)を検査するシステムの概略図であり、主としてエアコンや冷蔵庫等の配管の設計試作段階にて用いられる。円筒体(7)(7a)の接合部分に取り付けられる検査治具(1)は、超音波探傷器(15)に繋がり、該超音波探傷器(15)はパーソナルコンピュータのような、ディスプレイ(40)を具えた制御手段(4)に繋がる。該制御手段(4)にはスキャナ(45)が接続され、該スキャナ(45)は情報シート(46)上に記載された情報を読みとる。この情報は、例えばバーコードであって、検査せんとする円筒体(7)(7a)が用いられるエアコンや冷蔵庫等の機種番号であり、使用者がスキャナ(45)で情報を読みとると、該機種番号等がディスプレイ(40)に表示される。制御手段(4)にはまた、使用者が検査箇所を番号等で入力することができる。
図2は、ディスプレイ(40)の表示状態を示す正面図である。ディスプレイ(40)には円筒体(7)の断面を模した環状図形(41)が表示され、該環状図形(41)は測定開始点を0とした回転角度に対応した検査結果を色分けて表示する。具体的には、ろう付け部分が正確に接合されている箇所は、青色で、ろう付け部分が正確に接合されていない、即ち空隙(73)が存在すると推定される箇所は赤色で表示される。尚、この青色、赤色は例示であって、この色に限定されない。
【0008】
図3は、円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に取り付けられる検査治具(1)の分解斜視図である。検査治具(1)は、固定側治具(2)と、固定側治具(2)に螺合する回転側治具(3)と、固定側治具(2)を受けて支持するブラケット(10)を有し、後記するように、回転側治具(3)が接合部分(70)の周囲を回りながら昇降し、探触子(60)が接合部分(70)を検査し、その情報を制御手段(4)に送る。
ブラケット(10)は2つの半体(11)(11)をヒンジ(13)にて接続して構成され、各半体(11)の内側に形成された凹部(12)が下側の円筒体(7a)の周面に嵌まる。各半体(11)の先端部には留め具(図示せず)が配備される。2つの半体(11)(11)が合わさった状態で、留め具にて固定すると、ブラケット(10)は下側の円筒体(7a)の周面に固定される。
固定側治具(2)は、一側部が開口(22)して、円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に横側から嵌められる円筒状の部材である。固定側治具(2)は、円筒体(7a)の周面に固定されたブラケット(10)の上に載って回転しない。固定側治具(2)の内周面には雄ネジ(23)が形成されている。固定側治具(2)上には、歯車(21)付きのモータ(20)が設けられており、該モータ(20)は制御手段(4)によって駆動される。
回転側治具(3)は、一部に円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に横側から嵌められる切欠き(30)を開設した円筒状の部材であり、外周面に雄ネジ(23)に螺合する雌ネジ(31)が形成されている。尚、固定側治具(2)の内周面に雌ネジ(31)を、回転側治具(3)の外周面に雄ネジ(23)を形成してもよい。固定側治具(2)上には前記の歯車(21)と噛合する円弧状の歯面(32)が設けられ、また、円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に接するヘッド機構(5)が配備されている。
【0009】
図4は、図3をA−A線を含む断面にて破断して矢視した断面図である。回転側治具(3)は円筒体(7)の中心軸Lを中心として回転可能であり、固定側治具(2)及びブラケット(10)は回転しない。
固定側治具(2)上のモータ(20)に通電すると、歯車(21)が回転し、歯面(32)が歯車(21)に螺合した回転側治具(3)が中心軸Lを中心として回転しながら、昇降する。ヘッド機構(5)が接合部分(70)の周面に接しながら、接合部分(70)の回りを回転しつつ昇降する。
図5は、ヘッド機構(5)の詳細構成を示す断面図である。ヘッド機構(5)は、回転側治具(3)上に設けられた支持体(50)と、支持体(50)から円筒体(7)(7a)の接合部分(70)に向けて延び、支持体(50)に遊嵌したガイドピン(51)(51)と、ガイドピン(51)(51)の先端部に取り付けられて、探触子(60)を具えたヘッド(6)を具える。探触子(60)は超音波探傷器(15)に接続されて、超音波を出射し且つ反射された超音波を受信するものであり、ヘッド(6)の先端面に配備されて、接合部分(70)の周面に接する。前記の如く、超音波を発してから戻ってくるまでの時間を、超音波探傷器(15)にて解析して、接合部分(70)の空隙(73)の有無を判断する。
ガイドピン(51)(51)の支持体(50)側端部には抜け止め用の鍔(52)が設けられ、ヘッド(6)はガイドピン(51)に嵌まったバネ(53)によって接合部分(70)に対して出没可能に付勢される。
図6は、支持体(50)を図5のB方向から見た図である。支持体(50)には上下に延びた長孔(54)(54)が開設され、ガイドピン(51)は長孔(54)に上下に余裕を持って嵌まる。これにより、ガイドピン(51)及びヘッド(6)は支持体(50)に対して、揺動可能となる。
【0010】
図7は、ヘッド機構(5)による検査状態を示す図である。外側の円筒体(7)の膨らみ部(71)の外周面は必ずしも平坦ではなく、図7に示すように、凸部(74)を形成していることがある。本例に係わるヘッド機構(5)に於いては、下降中のヘッド(6)が凸部(74)に接すると、ヘッド(6)は凸部(74)に接してバネ(53)に抗して引っ込み、且つ上向きに揺動して、凸部(74)に接しながら通過する。円筒体(7)の外周面に凹部があるときでも、ヘッド(6)は凹部に接しながら通過する。
即ち、ヘッド(6)は円筒体(7)(7a)の接合部分(70)の表面形状に応じて、柔軟に追随して動くことができ、探触子(60)による検査をスムーズに行うことができる。
【0011】
図8は、本例の検査装置の検査手順を示すフローチャートである。使用者は、制御手段(4)に通電して、検査を開始する。先ず、スキャナ(45)で情報シート(46)上に記載された情報を読みとり、機種等を入力する。また、検査箇所を番号等で入力して、検査条件を設定する(S1)。
使用者が制御手段(4)に手入力してトリガーをかける。回転開始前のヘッド(6)の回転位置は、図2の環状図形(41)の測定開始点0に対応している。モータ(20)に通電されて、回転側治具(3)が回転する(S2)。ヘッド(6)は接合部分(70)の表面に接しながら、接合部分(70)の回りを回転し且つ昇降する。モータ(20)の回転角度、具体的にはFGパルスからモータの回転数が判るから、制御手段(4)はヘッド(6)が検査開始からどれだけ回転したかが判る。
探触子(60)は超音波を接合部分(70)に向けて発し、戻ってくるまでの時間を、超音波探傷器(15)にて解析する(S3)。制御手段(4)は、ヘッド(6)の回転位置及び検査結果を、一旦内部メモリ(図示せず)に格納する。モータ(20)の回転数からヘッド(6)が接合部分(70)の回りを360度回転したことを検出すると(S4)、格納され続けた信号を解析して(S5)、検査結果を図2の環状図形(41)上に示す。検査結果が良好、即ち、接合部分(70)内に空隙(73)が無いと判断された回転領域は青色で示し、検査結果が不良、即ち、接合部分(70)内に空隙(73)があると判断された箇所は赤色で表示される(S6)。これにより、検査が自動的に行われると共に、検査結果が自動的にディスプレイ(40)に表示され、使用者は検査結果を見て判定する(S7)。
【0012】
本例にあっては、溶融部材(72)の接合状況、即ち、ろう材の流れ込み状態を超音波で検査するから、接合部分を破壊することなく、評価することができ、且つ破壊検査の手間を省くことができる。また、ろう材の流れ込み状態を色分けで断面表示するから、ろう付け不良に対して、製造工程の現場で即座に修正することができる。
また、回転側治具(3)は接合部分(70)の回りを回転することができる大きさであれば足り、治具の小型化、省力化を実現することができる。更に、前記の如く、本例のヘッド機構(5)は、接合部分(70)の表面形状に応じて、柔軟に追随して動くことができる。これにより、接合部分(70)の表面に凹凸があっても、安定して自動的に検査を続けることができる。
【0013】
(第2実施例)
本例の検査装置は前記の如く、主として、エアコンや冷蔵庫等の配管の設計試作段階にて用いられるが、例えば、業務用エアコンの室外機内部には、ろう付けすべき接合部分(70)が多数存在する。そのため、設計試作段階に於いて、予め量産時のろう付け品質を考慮して設計しておくことが、ろう付け品質向上に不可欠であった。
出願人はかかる検査装置を用いて、設計試作段階に於ける検査結果を、配管の設計部門に早期にフィードバックすることができる検査結果フィードバックシステムを着想した。
図9は、この検査結果フィードバックシステムの概略を示すブロック図である。該検査結果フィードバックシステムは、前記の如く、検査治具(1)、超音波探傷器(15)、制御手段(4)を具える。
制御手段(4)は、検査治具(1)を用いる検査対象及び検査結果を示すグラフィカルデータを表示するグラフィカルデータ表示機能を有する。
また、制御手段(4)とオンラインで繋がる設計側端末(8)が配備され、制御手段(4)は設計側端末(8)との間で、ディスプレイ(40)上のデータをやりとりすることができる。
【0014】
先ず、設計試作品を検査する使用者は、制御手段(4)に通電して検査開始を入力し、スキャナ(45)にて情報シート(46)上に記載された情報を読みとる。制御手段(4)は検査対象を、ディスプレイ(40)に表示する。ディスプレイ(40)上には、図10に示すように、検査すべき円筒体(7)(7a)の接合部分(70)が実物写真又は3Dデータで表示される。図10では、先ず左側の接合部分(70)の断面を検査し、次に右側の接合部分(70)の断面を検査する旨が表示される。両接合部分(70)(70)の間隔をSとする。
【0015】
設計試作品を検査する使用者は、固定側治具(2)と回転側治具(3)を検査対象である左側の円筒体(7)に取り付ける。前記の如く、モータ(20)を回転させて、探触子(60)が超音波を発射してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、接合部分(70)の全周に亘って、検査する。制御手段(4)の検査結果表示機能により、検査結果が図11の如く、一方の環状図形(41)上に表示される。その後、固定側治具(2)と回転側治具(3)を右側の円筒体(7)に取り付け、同様に検査を行う。2つの環状図形(41)(41)が表示される。即ち、グラフィカルデータ表示機能によって、接合部分(70)の検査結果が実物写真又は3Dデータに対応してディスプレイ(40)上に表示される。
図11では、2つの環状図形(41)(41)の矢印Cで示す箇所が赤色で表示され、その他の箇所は青色である。即ち、矢印Cで示す箇所が検査結果が不良であり、接合部分(70)に空隙(73)があると判断された。換言すれば、両接合部分(70)(70)の間隔が狭い箇所に於いて、ろう付けが不良と判断された。一般に、接合部分(70)(70)の間隔が狭いとろう付け作業が行い難いから、間隔Sを広げる必要がある。
【0016】
この環状図形(41)上に示された検査結果を、設計側端末(8)にオンラインで送信し、フィードバックする。尚、オンラインでなく、検査結果を印刷して、直接設計部門にフィードバックしてもよい。設計部門では、図12に示すように、円筒体(7)(7a)の間隔をSからS1に広げる設計変更を行うとともに、この旨を設計試作品を検査する使用者に伝える。
設計変更された、即ち間隔がS1に広げられた接合部分(70)(70)を有する円筒体(7)(7a)が設計試作されると、設計試作品を検査する使用者は、上記と同様に、グラフィカルデータ表示機能に基づいて、再度の検査を行う。図13に示すように、間隔がS1に広げられた円筒体(7)(7a)では、間隔Sのときには不良と判定された矢印Cで示す箇所は青色で表示され、ろう付けが支障無く行われたことが実証された。
【0017】
設計試作段階に於いて、このシステムを用いて、早期に検査を行い、検査結果を早期に設計に反映させることができる。その結果、量産品のろう付けに関する品質が向上する。
従来にあっては、検査結果は不良判定のみに使用され、また数値データとして保存されるのみで、検査結果を有効に利用していなかった。本例の検査結果フィードバックシステムにあっては、検査結果は設計側端末(8)にフィードバックされる。これにより、不良発生位置の傾向分析を行い、早期に設計変更を行う等、検査結果をより有効に活用することができ、その結果、製品全体の品質を向上させることができる。
【0018】
本例にあっては、回転側治具(3)をモータ(20)にて回転させるとしたが、手で回転させても良い。この場合は、回転側治具(3)又は固定側治具(2)に位置センサ(図示せず)を取り付け、回転側治具(3)の回転位置を検出して、制御手段(4)に送る。
また、ヘッド(6)はバネ(53)により接合部分(70)に向けて付勢されるとしたが、バネ(53)に代えて、ヘッド(6)を付勢する弾性体であってもよい。
更には検査治具(1)は配管の設計試作段階にて用いられるとしたが、例えば市場に販売されたエアコンや冷蔵庫等の配管を検査するため、サービスマンが使用してもよい。
【0019】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】2つの円筒体の接合部分を検査するシステムの概略図である。
【図2】ディスプレイの表示状態を示す正面図である。
【図3】検査治具の分解斜視図である。
【図4】図3をA−A線を含む断面にて破断して矢視した断面図である。
【図5】ヘッド機構の詳細構成を示す断面図である。
【図6】支持体を図5のB方向から見た図である。
【図7】ヘッド機構による検査状態を示す図である。
【図8】検査装置の検査手順を示すフローチャートである。
【図9】検査結果フィードバックシステムの概略を示すブロック図である。
【図10】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図11】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図12】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図13】グラフィカルデータ表示機能に基づいて、ディスプレイに表示された図である。
【図14】従来の検査装置の側面図である。
【図15】(a)は空隙のない溶融部材に超音波を照射したときの断面図、(b)は空隙が存在する溶融部材に超音波を照射したときの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
(1) 検査治具
(2) 固定側治具
(3) 回転側治具
(4) 制御手段
(5) ヘッド機構
(6) ヘッド
(40) ディスプレイ
(50) 支持体
(51) ガイドピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接することを特徴とするヘッド機構。
【請求項2】
被測定物に固定して取り付けられる固定側治具(2)と、固定側治具(2)に対して、回転可能且つ昇降可能に取り付けられ、被測定物の回りを回転する回転側治具(3)と、回転側治具(3)上に取り付けられたヘッド機構(5)を具え、
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
回転側治具(3)は固定側治具(2)に螺合して、被測定物の回りを回転し、且つ被測定物に対して昇降する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
被測定物に固定して取り付けられる固定側治具(2)と、固定側治具(2)に対して、回転可能且つ昇降可能に取り付けられ、被測定物の回りを回転する回転側治具(3)と、回転側治具(3)上に取り付けられたヘッド機構(5)と、ヘッド機構(5)に繋がって被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接し、
制御手段(4)は、ヘッド機構(5)の回転角度に対応した被測定物の検査状態を、ディスプレイ(40)に視覚的に表示することを特徴とする検査システム。
【請求項5】
ディスプレイ(40)には、被測定物の断面形状に対応した図形が表示され、該図形上にて、検査上良好とされた領域と、不良とされた領域とは色分けされて表示される、請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
検査治具(1)と、検査治具(1)に繋がって、被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、
制御手段(4)は、検査治具(1)を用いる検査対象及び検査結果を示すグラフィカルデータをディスプレイ(40)に表示するグラフィカルデータ表示機能を有し、
制御手段(4)に繋がって被測定物の検査状態がフィードバックされる端末(8)が配備されていることを特徴とする検査結果フィードバックシステム。
【請求項7】
検査治具(1)は、被測定物に固定して取り付けられる固定側治具(2)と、固定側治具(2)に対して、回転可能且つ昇降可能に取り付けられ、被測定物の回りを回転する回転側治具(3)と、回転側治具(3)上に取り付けられたヘッド機構(5)を具え、
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接する、請求項6に記載の検査結果フィードバックシステム。
【請求項1】
被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接することを特徴とするヘッド機構。
【請求項2】
被測定物に固定して取り付けられる固定側治具(2)と、固定側治具(2)に対して、回転可能且つ昇降可能に取り付けられ、被測定物の回りを回転する回転側治具(3)と、回転側治具(3)上に取り付けられたヘッド機構(5)を具え、
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
回転側治具(3)は固定側治具(2)に螺合して、被測定物の回りを回転し、且つ被測定物に対して昇降する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
被測定物に固定して取り付けられる固定側治具(2)と、固定側治具(2)に対して、回転可能且つ昇降可能に取り付けられ、被測定物の回りを回転する回転側治具(3)と、回転側治具(3)上に取り付けられたヘッド機構(5)と、ヘッド機構(5)に繋がって被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接し、
制御手段(4)は、ヘッド機構(5)の回転角度に対応した被測定物の検査状態を、ディスプレイ(40)に視覚的に表示することを特徴とする検査システム。
【請求項5】
ディスプレイ(40)には、被測定物の断面形状に対応した図形が表示され、該図形上にて、検査上良好とされた領域と、不良とされた領域とは色分けされて表示される、請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
検査治具(1)と、検査治具(1)に繋がって、被測定物の検査状態を表示するディスプレイ(40)を有する制御手段(4)を具え、
制御手段(4)は、検査治具(1)を用いる検査対象及び検査結果を示すグラフィカルデータをディスプレイ(40)に表示するグラフィカルデータ表示機能を有し、
制御手段(4)に繋がって被測定物の検査状態がフィードバックされる端末(8)が配備されていることを特徴とする検査結果フィードバックシステム。
【請求項7】
検査治具(1)は、被測定物に固定して取り付けられる固定側治具(2)と、固定側治具(2)に対して、回転可能且つ昇降可能に取り付けられ、被測定物の回りを回転する回転側治具(3)と、回転側治具(3)上に取り付けられたヘッド機構(5)を具え、
ヘッド機構(5)は、被測定物に接して超音波を出射する探触子(60)を具えたヘッド(6)と、先端部がヘッド(6)に取り付けられたガイド部材と、ガイド部材の基端部が遊嵌する支持体(50)と、ガイド部材及びヘッド(6)を被測定物に付勢するバネ手段を設け、
ヘッド(6)は支持体(50)に対して出没可能且つ揺動可能に設けられて、被測定物の表面形状に追随して接する、請求項6に記載の検査結果フィードバックシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−241280(P2008−241280A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78247(P2007−78247)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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