説明

被覆ガラス板をオーブン中で加熱する方法

有機物質系被覆を持つガラス板をオーブン内で加熱するための方法であって、(i)前記ガラス板がローラーコンベヤにより輸送され、(ii)ガラス板の面が、前記ガラス板の上及び下に配置された輻射線により加熱するための手段により時間Tの間、加熱され、かつ(iii)所定の瞬間に及び所定の時間の間、前記面が、前記ガラス板の上及び下に熱ガスを注入することにより強制熱対流効果に供される方法において、熱ガスが少なくともtとtの間、ガラス板の上に注入されること、ここでtは、有機物質の燃焼から来る炎が現われるときの瞬間であり、tは、前記炎が消えるときの瞬間であること、及びガラス板の上に注入された熱ガスが少なくとも一種の燃焼物質を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にガラス板の続いての強化のために、ガラス板をオーブン中で加熱する方法に関する。より詳細には、本発明は、有機物質系ペイントの一つのような装飾被覆を持つガラス板を加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペイントされるタイプの装飾被覆を持つガラス板は種々の用途を持つ。例えば、それらは仕切り、テーブル、棚、または壁紙(屋内または屋外)として使用されることができる。これらの用途は、安全上の理由のため、強化ガラス板をますます必要としている。というのもかかる強化ガラスは高い耐衝撃性を持つからである。ガラスを強化する既知の方法の一つは、「熱強化」(非常に迅速な冷却)であり、それはまずガラス板が560°〜750℃のオーダの温度にオーブン内で加熱されることを必要とする。
【0003】
ガラス板をそれらの続いての強化のために加熱するための広く知られたオーブンは、一般的にセラミック被覆されたローラーコンベヤを含み、その上部及び下部に前記コンベヤ上で輸送されるガラス板を輻射により加熱するために電気抵抗器が配置されている。装置全体は断熱室内に設けられる。抵抗器の加熱時に、コンベヤのローラーは熱を貯蔵し、ローラーが接触するガラスに対して伝導により熱を迅速に伝達する。従って、下方及び上方抵抗器の等しい加熱力により、ガラス板の下面は単位時間当たり上面より大きな量の熱を受ける。これは、コンベヤの面に対してかかるガラス板の凹状沈下を起こすことを生じ、それは、おそらくその平坦性の劣化、並びにローラーの表面の減少した部分上へのガラス板の重量の集中による表面欠陥に導く。ガラス板の不均一加熱はまた、ガラスの光学的歪を起こす場合があり、それらが一旦強化されて分断されるときにそれらの分断の均一性に影響する。この状況は、オーブン中で加熱されるガラス板が抵抗器により輻射された熱の有意な部分を反射する性質を持つ低輻射能(低e)層で被覆されるときにさらに強調される。これらの層は、金属、酸化物及び/または窒化物に基づく無機のタイプのものである。周知の例はZnSnOx/Ag/ZnSnOxの層積層である。低e層で被覆された表面は、一般的にコンベヤのローラーと接触しないものであり、従ってこれらは機械的接触によりこれらのガラス板の被覆にいかなる損傷も起こさない。従って、上方抵抗器により輻射された熱の実質的な部分はガラス板の上面を加熱しない。
【0004】
従来技術において、オーブン中で運ばれるガラス板の温度分布を釣り合わすことによりガラス板の沈下の現象を改善することが提案された。この目的のために、特にUS特許4390359の教示に従って、オーブン中で運ばれるガラス板の上面の上に熱ガスを注入するための手段を加熱オーブン内に設けることが可能である。強制対流による熱の移動はガスジェットとガラス板の上面との間で起こる。この場合、ガラスの温度が十分に増加したときに加熱サイクル時のガスの注入を中断することが必要である。そうでなければガラス板の凸状曲がりが起こりうる。ガラス板の上面への強制対流による熱の供給を制限することが必要であるときの正確な瞬間の制御は敏感であり、従って上面の上に熱ガスを注入するための手段に加えて、コンベヤの下にガラス板に対して垂直に(EP058529A1)または斜めに(EP1377529B1)熱ガスを注入するための手段を配置することが提案された(二重対流オーブン)。かかる手段は、ガラス板の上面及び下面に付与される合計熱出力が釣り合わされることを可能にし、従って曲がりの現象を排除し、ガラス板の平坦性を回復する。
【0005】
実際には、コンベヤの下の熱ガスの注入は、ガラス板のオーブン中への入場から作動されず、前記ガラス板の下面は、まずコンベヤの下に配置された抵抗器により輻射された熱により加熱されるのみであり、一方、上面は、コンベヤの下に設けられかつ前記面の方に向いた熱ガスジェットによる強制対流により輻射された熱により加熱される。ガラス板の各面に供給された熱の熱バランスがその下面で不適切となり、従ってガラス板がコンベヤの上で凸状に曲がるとき、ガラス板の下面の方に向けられた熱ガスの注入が起動される。
【0006】
これは図1により概略的に示され、それは、オーブン中で加熱された非被覆ガラス板(a)及び低e層で被覆されたガラス板(b)の上に(上部圧)及び下に(下部圧)に注入された熱ガスの圧力に関する図に相当し、ガラス板の上の熱ガスの注入はガラス板のオーブン中への入場から作動され、全加熱時間Tの大部分の間、維持され、一方、ガラス板の下の熱ガスの注入は、ガラス板の各面へ供給された熱の熱バランスが下面で不適切となり、従ってガラスが曲がるときのみに作動される。この状況は、加熱周期の終わりに向けて、例えば全加熱時間Tの80%前後で最もしばしば起こる。また、最も頻繁にガラス板の上の熱ガスの注入は、ガラス板の下の熱ガスの注入が作動されるときに停止される。さらに、上で述べた理由のため、ガラス板の上の熱ガスの圧力は、低e層により被覆されたガラス板(増強された曲がりの現象)の場合に非被覆ガラス板に対して著しく高くなければならない。
【0007】
従来技術の解決策は、オーブン中で加熱されたガラス板の平坦性を改善する観点から、これが非被覆ガラス板(層なし)または特別な低e性質を持つ無機層により被覆されたガラス板にかかわらず、全て開発された。これらの二つの場合に、ガラス並びに可能な層は、オーブン中の熱処理のためにいかなる有意な化学変性も受けない。
【0008】
例えば出願WO2007/104752A1に記載されたように有機物質のエナメル系ペイントの一つのような装飾被覆を持つガラス板の続いての強化のための特別な熱処理の場合には、有機物質の存在の結果として望ましくない現象が起こる。実際、オーブン中で700℃に達することが多い温度では、この有機物質は激しい熱劣化、特に迅速かつ激しい燃焼(オーブン中の空気の存在のため)を受ける。かかる燃焼は、多量の熱を供給し、かつ燃焼炎を発生することが多い。従って、ガラス板を覆う装飾被覆が有機物質のささいでない量(約10質量%以上)を含むとき、加熱オーブン内の有機物質の燃焼ガスへの変換は、ガラス板の表面上で起こりかつ時には数10センチメートルのレベルの有意な高さに達することができる炎を伴う。これらの炎は深刻な欠点を与え、それゆえ望ましくない:
− それらは強化後の完成製品の品質の低下を起こす。実際、一旦強化されたら、被覆は、激し過ぎる燃焼の結果としてガラス板の表面に渡って均一に分布してない不十分な表面均一性を示し、従って非常に劣った美的外観を与える(しみ、黒い付着物、むらのある色‐‐‐);
− それらは、運ばれるガラス板に対するオーブンの幾つかの要素(熱電対、電気抵抗器、ガス注入器‐‐‐)の接近のために加熱オーブンを損傷し、これはそれらの寸法のためにますます顕著となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に、本発明の目的は、技術課題、すなわち有機物質系被覆を持つガラス板のオーブン中での、特にそれらの続いての強化のための加熱時に炎を伴うことが非常に多い、迅速かつ激しい燃焼を解決することにより、これらの前述の欠点を改善することである。
【0010】
より正確には、本発明の目的は、その実施態様の少なくとも一つにおいて、視覚的に均一でかつ希望の美的外観を持つ最終強化製品が得られることを可能にする、オーブン中で有機物質系被覆を持つガラス板を加熱するための方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、加熱ツールが保護されることを可能にする、有機物質系被覆を持つガラス板をオーブン中で加熱するための方法を提供することである。
【0012】
最後に、本発明の最後の目的は、従来技術の欠点に対して簡単かつ経済的である解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特別な実施態様によれば、本発明は、有機物質系被覆を持つガラス板をオーブン内で加熱するための方法であって(i)前記ガラス板はローラーコンベヤにより輸送され、(ii)ガラス板の面は、前記ガラス板の上及び下に配置された輻射線により加熱するための手段により時間Tの間、加熱され、かつ(iii)所定の瞬間に及び所定の時間の間、前記面は、前記ガラス板の上及び下に熱ガスを注入することにより強制熱対流効果に供される方法に関する。
【0014】
本発明の方法によれば、ガラス板の上の熱ガスの注入は少なくとも被覆の前記有機物質の燃焼時に作動される。特に、熱ガスは、少なくともtとtの間でガラス板の上に注入され、ここでtは、有機物質の燃焼から来る炎が現われるときの瞬間であり、tは、前記炎が消えるときの瞬間である。燃焼は、燃料と燃焼物質との間の酸化還元反応であると理解される。本発明の場合に有機物質である燃料は、オーブンの周囲空気内に存在する酸素のような酸化性燃焼物質のために酸化する。燃焼は、(i)熱、及び(ii)燃焼生成物、最も多くはCO,CO及びHOのようなガス状生成物を発生する。燃焼生成物がもはや酸化されることができないとき、すなわちそれらがもはや燃焼物質と反応することができないとき、燃焼は完了したと考えられる。
【0015】
従って、本発明は、非被覆ガラスまたは無機タイプの被覆で被覆されたガラスを熱処理するために従来技術で知られた制御とは異なる特別な制御により有意な量で存在する有機物質の燃焼を管理することによって有機物質系被覆を持つガラス板が熱処理されることを可能にするので、完全に新規なかつ発明的な方策に基づいている。特に、少なくとも被覆の有機物質の燃焼時に、特に少なくともtとtの間にガラス板の上への熱ガスの注入は、ガラスの全表面に渡って均一な、従って改善された燃焼を作る機能を持つ。さらに、ガス束は、一方では(i)炎が吹き飛ばされ、それらが排除されるまでそれらの寸法がかなり減少されることを可能にする。
【0016】
さらに本発明の方法によれば、ガラス板の上に注入される熱ガスは少なくとも一種の燃焼物質を含み、それはそのときオーブンの周囲空気内に存在する空気の酸素を補う。従って、燃焼工程は、燃焼物質の追加の供給のために改善され、それはさらに、最終強化製品のための均一な美的外観の結果を促進する。燃焼物質は、燃焼反応時に還元され、従って燃料の酸化を可能にする化合物であると理解される。
【0017】
他方で、本発明によれば、ガラス板の上への熱ガスの注入はまた、燃焼工程の期間外でも、特に炎が存在する時間外でも(従って時間範囲t−tの外側でも)作動されることができる。この特別な場合では、ガラス板の上への熱ガスの注入は、ガラス板の平坦性を維持または回復する追加の典型的な機能を持つだろう。
【0018】
本発明の第一の有利な実施態様または変形によれば、ガラス板の上に注入される熱ガスの最小圧力は5mbarである。この最小圧力は、燃焼物質の良好な追加の供給を可能にし、燃焼工程、特にその均一性が顕著に改善されることを可能にする。
【0019】
本発明の別の有利な実施態様または変形によれば、ガラスの上に注入される熱ガスの最大圧力は15barである。この最大値の結果として、短時間内の熱の過剰供給のために発生しうるガラス板への熱衝撃は防止されることができる。
【0020】
被覆内の有機物質の存在により発生した燃焼は、燃焼反応の発熱性のため、ガラス板の上面の追加の加熱を起こす。従って、本発明によればかつ既知の態様では、前記ガラス板の下へのその下面の方に向けられた熱ガスの注入は、ガラス板の面のそれぞれの間に熱バランスが復元されることを可能にし、従ってガラス板の曲がり及びそれによってもたらされる最終製品に対する望ましくない結果が限定されまたは防止されることを可能にする。本発明によれば、ガラス板の下への熱ガスの注入は、ガラス板がコンベヤの上で凸状に曲がるときに作動される。従って、ガラス板の下への熱ガスの注入の利点は、従来技術のものと同じであり、すなわちガラス板の平坦性を維持することであり、従ってより詳細に説明されないだろう。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、例として与えられる好適な実施態様の以下の説明及び非限定的例及び添付図面を読めば、より明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、従来技術による、合計時間Tの間、オーブン内で加熱された非被覆ガラス板(a)、及び低e層により被覆されたガラス板(b)の上(上方圧)及び下(下方圧)に注入された熱ガスの圧力に関する概略図である。
【0023】
【図2】図2は、本発明の三つの実施態様による、合計時間Tの間、オーブン内で加熱されかつ有機物質系被覆を持つガラス板の上(上方圧)に注入された熱ガスの圧力に関する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による有機物質系被覆は、例えばペイントタイプの装飾被覆である。「ペイントタイプの被覆」は、特に一つまたはそれより多くの層のペイント、ラッカー、ワニスまたはエナメルであると理解される。これらの被覆は、典型的には結合剤(ポリマー)、硬化剤(オリゴマー)、可塑剤、及び他の添加物のような種々の有機成分の有意な量(約10質量%から90質量%まで)を含むことが多い。
【0025】
本発明によれば、ガラス板は、ローラーコンベヤによりオーブンを通して輸送され、そこではローラーは好ましくは実質的に水平である。
【0026】
本発明によって輻射により加熱するための手段の例は、典型的には電気抵抗器またはその均等手段である。
【0027】
熱ガスは、ガラス板の上または下のいずれかにコンベヤの上または下に配置されかつそれら自身少なくとも一つの圧縮器に連結された供給傾斜路のような熱ガス供給手段に連結された注入器によりオーブンの室中にガラス板の方向に注入されることができる。
【0028】
コンベヤの下に配置された注入器への熱ガスの供給のための手段はコンベヤの上に配置された注入器への熱ガスの供給のための手段とは別個に、例えばこれらを開閉するための弁により制御されることが好ましい。
【0029】
ジェットの形の熱ガスの注入はUS特許4390359に記載されたようにガラス板に対して垂直に、または代替的にEP特許1377529B1に記載されたようにガラス板の方向に斜めに行なうことができる。
【0030】
オーブン中に注入された熱ガスは、注入器のための供給手段のその流入時の周囲温度から、これらの手段を通しての注入器までのその通過時に、再加熱されることができ、そこでは前記手段は、オーブン内に配置された電気抵抗器によりそれら自身加熱される。これに代えて、ガスは、注入器のための供給手段中に供給される前にオーブンの外側で予熱されることができる。熱ガスは、400℃より高い温度でガラス板の上に注入されることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、ガラス板上に注入された熱ガスは、少なくとも一種の燃焼物質を含む。燃焼物質は酸素であることが好ましい。ガラス板の上に注入された熱ガスが空気であることは、それが経済的であるために特に好ましい。
【0032】
ガラス板の上に注入された熱ガスは、ガラス板の下に注入された熱ガスに対して同一の組成であることができる。これに代えて、これらの二つのガスは異なる組成のものであることができる。
【0033】
さらに、ガラス板の上に注入された熱ガスの温度は、ガラス板の下に注入された熱ガスの組成と同一であるかまたは異なることができる。
【0034】
本発明によれば、熱ガスは、少なくともtとtの間でガラス板の上に注入され、ここでtは有機物質の燃焼から来る炎が現われる瞬間であり、tは前記炎が消える瞬間である。
【0035】
空気中の熱重量分析を用いる有機物質系被覆を持つガラス板の測定は、その燃焼がガラス及び被覆が約250℃の温度に達したときに一般的に始まることを示す。従って、前記燃焼からもたらせる炎は、ガラス及び被覆が少なくともこの温度に達するとすぐに現われる。炎は、温度が「自己発火点」に達したときに一般的に現われ、それはガスまたは蒸気が口火またはスパークの不在でも自発的に発火を開始する温度である。有機物質の燃焼から来る炎が現われる瞬間に相当する時間tは、もちろんオーブン室内の温度、ガラスの厚さ等の関数として変動しうる。
【0036】
本発明の特に好適な実施態様によれば、ガラス板の上に注入された熱ガスの圧力は、時間t及びtを含むtとtの間で最大値を通過する。最大圧力値はt,t,t及びt、または温度範囲t−t内で生じることができる。
【0037】
かかる特徴は、有機物質の燃焼でのさらなる改善を可能にし、また炎のより効果的な吹き方を可能にする。例として、図2は、本発明のこの実施態様による、ガラス板の上に注入された熱ガスの三つの圧力分布図1,2及び3(上方圧)を概略的かつ相対的な態様で示す。
【0038】
図2の分布図1に示された本発明の実施態様によれば、ガラス板の上に注入された熱ガスの圧力はtで増加され、tとtの間で実質的に同じ値に維持され、次いでtでt前の初期圧力値と同一または同一でない値に減少される。この実施態様によれば、初期圧力値はゼロでないことができる。この場合、ガラス板の上の熱ガスはまた、ガラス板の平坦性を維持または回復するためにtとtの間の時間の外側で注入される。
【0039】
本発明の追加の実施態様によれば、図2の分布図2に示されたように、熱ガスの圧力はtとtの間にピーク分布図を持ち、さらにtとtの外側の上方圧は本質的にゼロに等しい。
【0040】
本発明の別の実施態様によれば、図2の分布図3に示されたように、ガラス板の上に注入された熱ガスの圧力はtとtの間で増加し、tを越えると平らになる。ガラス板の上に注入された熱ガスの圧力はtとtの間で少なくとも5%増加することが好ましい。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、ガラス板上に注入された熱ガスの最小圧力は5mbarである。最小圧力は好ましくは10mbarである。
【0042】
本発明の別の実施態様によれば、ガラス板の上に注入された熱ガスの最大圧力は15barである。最大圧力は好ましくは10barである。
【0043】
ガスの圧力は熱ガス供給手段または注入器の端部で測定されることが好ましい。
【0044】
本発明の好適な実施態様によれば、炎の出現に相当する時間tは全加熱時間Tの1〜20%で変動する。もし時間tが全加熱時間Tの5〜15%で変動するなら、より好ましい。
【0045】
既知の方法では、ガラス板の下の熱ガスの注入は、ガラス板の各面に供給された熱の熱バランスがその下方面で不適切となるとき及び/またはガラス板がコンベヤ上で凸状に曲がるときに起動される。本発明の好適な実施態様によれば、コンベヤの下への熱ガスの注入の起動は、コンベヤ上のガラス板の曲がりを検出するためのシステムにより制御されることができる。
【0046】
他の有利な詳細及び特徴は、本発明の例示的な実施態様の説明並びに従来技術による比較実施例から以下に明らかとなるであろう。
【実施例】
【0047】
比較実施例1(本発明によらない)
有機物質系ペイントのような被覆を持つ透明ガラス板が、無機タイプの低e層で被覆されたガラス板のために典型的に使用される加熱周期に供され、それに対してガラス板の上及び下への熱ガスの注入が前記ガラス板の平坦性を維持または回復するために制御される。
【0048】
本例によるガラス板は、4mmの厚さ及び100cm×200cmの寸法を持つ。それはエナメル被覆で覆われている。この被覆はポリアクリル樹脂系白色エナメルに相当する。このエナメルは、約25重量%の有機物質と約75重量%のガラスフリット(充填材)を含む。この被覆は、一旦ガラス板上に付着されかつ乾燥されたら、50ミクロンの厚さを持つ。
【0049】
このガラス板は、ガラス板を続いての強化工程の前に熱処理に供するためにEP特許1377529B1に記載されたもののような典型的な二重対流加熱オーブン内に運ばれる。前記オーブンは、水平ローラーを持つコンベヤを含み、オーブン内で670℃のオーダの温度を確立するためにコンベヤの上及び下に配置された電気抵抗器を取り付けられている。オーブンはまた、運ばれたガラス板に向けて熱空気を供給する注入器のための傾斜路を備えている。これらの傾斜路は、互いにかつガラス板に平行にかつオーブン内のガラス板の移動方向に直角に配置されている。これらの傾斜路の数はコンベヤの上に9個、下に5個である。各上方傾斜路は隣接傾斜路から550mmの距離だけ分離され、各下方傾斜路はコンベヤの8番目のローラー毎に下に配置されている。各傾斜路は0.7mmの出口部を持つ45個の等距離注入器を取り付けられており、この部分はガラス板から150mmの距離で分離されている。上方注入器は、それらの対称軸がガラス板の上方面の面に対して直角であるように配置され、下方注入器は、それらの対称軸がオーブン中のガラス板の移動方向に対して斜めであるようにかつそれがこのガラス板の下方面の面を二つの連続ローラーの軸を分離する距離の4分の3で横切るように配置される。供給傾斜路は50mmの内径を持つ管から形成され、それら自身それぞれ傾斜路の周りに巻かれた長さ12mm及び直径15mmの管状コイルにより空気を供給されている。従って、傾斜路内の空気の温度は670℃に維持され、そこでは下方及び上方傾斜路の空気供給圧は別個に調節されることができる。
【0050】
ガラス板の入場から注入器の上方供給傾斜路は6barの空気圧に供され、下方傾斜路はそれら自身空気を供給されていない。
【0051】
オーブン内に10秒間存在した後、有意な寸法(数十センチメートル)の激しい燃焼炎が現われる(t)。それらはガラス板の表面で起こる。
【0052】
オーブン内に14秒間存在した後、ガラス板はコンベヤ上で凸状に曲がる。注入器に熱ガスを供給するための下方傾斜路は次いでガラス板の平坦性を回復するために1barの圧力で空気を供給される。加熱周期は、ガラス板のオーブン中への入場後180秒で終わる(合計時間T)。
【0053】
かかる加熱周期の終わりに得られた製品は、完全に不均一な外観を持つ焼結エナメルを含む被覆を持つ。それらは、極めて迅速でかつ極めて激しい燃焼からもたらされる魅力のない黒いしみと、ガラス板の全表面に渡る不均一性を持つ。従って、従来技術から既知の工程及び注入器の起動のために必要なタイミングは、有機物質系被覆を持つガラス板の場合には適当ではない。かかる工程は熱による有機物質の燃焼を効果的に可能にするが、これは均一ではなく、主として炎の存在の結果として上述の欠点を起こす。
【0054】
さらに、このタイプの多数のガラス板のコンベヤ上での連続通過による強化オーブンのこれらの炎への繰り返しの露出は、前記オーブンへの迅速かつ不可逆的な損傷を確実に起こすだろうし、これは全く容認できない。
【0055】
実施例2(本発明による)
比較実施例1と同一の特徴を持つ別の透明ガラス板が比較実施例1に記載されたものと同じオーブン内に運ばれる。
【0056】
ガラス板が加熱オーブンに入るとすぐに、供給傾斜路のいずれも空気を供給されない。
【0057】
オーブン内に10秒間(t)存在した後、有意な寸法(数十センチメートル)の激しい燃焼炎が現われる。注入器の上方供給傾斜路はこの正確な瞬間から8barの空気圧に供され、下方傾斜路はそれら自身まだ空気を供給されていない。
【0058】
11秒(t)後、炎は完全に消え、注入器の上方傾斜路の供給は次いで切られる。
【0059】
ガラス板の平坦性の制御は、次いで下方及び上方供給傾斜路の圧力を別個に使用することにより典型的な態様で行なわれる。
【0060】
加熱周期は、ガラス板のオーブン中への入場後180秒で終わる(合計時間T)。
【0061】
かかる加熱周期の終わりに得られた製品は、均一な白色でかつ希望の魅力のある外観を持つ焼結されたエナメルの被覆を持つ。
【0062】
従って、注入器(特に上方注入器)の起動のための特別なタイミングを必要とする本発明の方法が、有機物質系被覆を持つガラス板を効率的に強化することを可能にし、均一かつ魅力のある外観を持つ強化製品が得られることを可能にする。
【0063】
さらに、本発明による炎の出現または少なくともそれらの寸法の制御は、加熱ツールが摩耗から保護されることを有利に可能にする。
【0064】
最後に、本発明は、追加の投資(新しい加熱オーブンの開発及び/または購入)を必要としないような簡単かつ経済的である技術的解決策を提供するが、幾つかの他の技術的課題(ガラス板の沈下の問題)のために開発された存在する二重対流オーブンの使用に対する新規かつ発明的な改造を提案する。
【0065】
本発明はもちろん上記の例示的な実施態様に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質系被覆を持つガラス板をオーブン内で加熱するための方法であって、(i)前記ガラス板がローラーコンベヤにより輸送され、(ii)ガラス板の面が、前記ガラス板の上及び下に配置された輻射線により加熱するための手段により時間Tの間、加熱され、かつ(iii)所定の瞬間に及び所定の時間の間、前記面が、前記ガラス板の上及び下に熱ガスを注入することにより強制熱対流効果に供される方法において、熱ガスが少なくともtとtの間、ガラス板の上に注入されること、ここでtは、有機物質の燃焼から来る炎が現われるときの瞬間であり、tは、前記炎が消えるときの瞬間であること、及びガラス板の上に注入された熱ガスが少なくとも一種の燃焼物質を含むことを特徴とするオーブン内で加熱する方法。
【請求項2】
ガラス板の上に注入された熱ガスの圧力がtとtの間で最大値を通過することを特徴とする請求項1に記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項3】
ガラス板の上に注入された熱ガスの圧力がtとtの間で少なくとも5%増加することを特徴とする請求項2に記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項4】
ガラス板の上に注入された熱ガスが400℃より高い温度を持つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項5】
ガラス板の上に注入された熱ガスが空気であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項6】
ガラス板の上に注入された熱ガスの最小圧力が5mbarであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項7】
ガラス板の上に注入された熱ガスの最小圧力が10mbarであることを特徴とする請求項6に記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項8】
ガラス板の上に注入された熱ガスの最大圧力が15barであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項9】
ガラス板の上に注入された熱ガスの最大圧力が10barであることを特徴とする請求項8に記載のオーブン内で加熱する方法。
【請求項10】
ガラス板の下への熱ガスの注入が、ガラス板がコンベヤ上で凸状に曲がるときに起動されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のオーブン内で加熱する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518792(P2013−518792A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551592(P2012−551592)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051362
【国際公開番号】WO2011/095471
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(510191919)エージーシー グラス ユーロップ (27)
【Fターム(参考)】