説明

被覆医学装置

【課題】移植片の寿命を延長するのに有効な程度まで、磨耗片の離脱を最小限に抑制し、又は微小亀裂が生成し、及び/又はその大きさが増大するのを防ぐことができる表面を有する医学装置の提供。
【解決手段】医学装置は、表面を有する構造部材を備え、その表面の少なくとも一部は、少なくとも約25μmの厚みのナノ組織材料によって被覆され、このナノ組織材料は、セラミック、セラミック複合材料、セラミック/金属複合材料、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでおり、ナノ組織セラミック複合材料は、セラミック複合材料の全体積に基づいて、少なくとも51体積%の硬質相セラミック材料と、結合剤相とを含み、結合剤相は、SiO2など、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでいる。この移植片は、改良された耐磨耗性と耐剥離性によって、寿命が延長され、関節式継手又は柔軟性ヒンジ継手を部分的又は完全に置換するのに有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年1月7日に出願された米国仮特許出願第60/642,449号の利得を主張し、この仮特許出願は、その全体を参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0002】
[連邦政府の資金提供を受けた研究に関する記載]
米国政府は、米国科学財団助成第DMI−0319325号に従って、本発明に一部の権利を有する。
【0003】
[発明の分野]
本開示は、一般的に、被膜に関し、さらに詳細には、医学装置の表面に堆積される被膜に関する。
【背景技術】
【0004】
医学装置を外科的に移植することによって、病変、損傷、又は欠落した骨格の解剖学的な要素、例えば、関節式骨継手や関連する骨構造を構造的に補うことができる。一部の装置は、数十年継続して使用できるが、殆どの装置は、10年〜15年以内に機能しなくなる。これは、一部の高齢患者にとっては受入れられるが、若い患者やより元気な高齢患者が置換外科手術をますます受けていることから明らかなように、さらに長い寿命が必要とされる。
【0005】
医学装置の寿命は、その負荷支持表面が受ける磨耗と裂傷の量に大きく依存している。これらの面間の相互作用による局部的な応力は、小さい粒状の破片を生成し、これらの破片が、移植片を包囲する滑液を遮断し、かつ汚染するものである。これに応じて、人体の免疫系は、これらの粒子を分解するために、酵素を分泌することになる。しかし、これらの酵素は、多くの場合、隣接する骨細胞を破壊し、又は骨溶解を生じさせ、その結果、移植片の機械的な緩み及び破損をもたらすことになる。さらに、負荷支持表面の隆起は、対向する負荷支持表面を引っかくことがあり、これによって、微小亀裂の生成、最終的に、移植片の壊滅的な破損をもたらす。従って、移植片の負荷支持表面の磨耗率を最小限に抑制することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、当該技術分野において、意図した目的に対する適性とは別に、改良された表面を有する移植装置が、必要とされている。これらの装置が、移植片の寿命を延長するのに有効な程度まで、磨耗片の離脱を最小限に抑制し、又は微小亀裂が生成し、及び/又はその大きさが増大するのを防ぐことができれば、特に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様による医学装置は、表面を有する構造部材を備え、該表面の少なくとも一部は、少なくとも約25ミクロンメートルの厚みのナノ組織材料によって被覆され、該ナノ組織材料は、セラミック、セラミック複合材料、セラミック/金属複合材料、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを備え、前記ナノ組織セラミック材料は、硬質相金属酸化物、金属炭化物、ダイヤモンド、金属窒化物、金属硼化物、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せであり、前記ナノ組織セラミック複合材料は、前記セラミック複合材料の全体積に基づいて、少なくとも51体積%の硬質相セラミック材料と、結合剤相とを含み、前記結合剤相は、SiO2、CeO2、Y2O3、TiO2、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでおり、前記ナノ組織セラミック/金属複合材料は、WC/Co、TiC/Ni、TiC/Fe、Ni(Cr)/Cr3C2、WC/CoCr、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでいる。
【0008】
前述の特徴及び他の特徴は、以下の図面と詳細な説明によって、裏付けられることになる。
【0009】
以下、図面を参照して、例示的実施形態について、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】人工股関節移植片を示す図である。
【図2】人工膝関節移植片を示す図である。
【図3】大腿骨頭の負荷支持表面に堆積されたクロミア被膜の厚みを示す走査電子顕微鏡写真である。
【図4】大腿骨頭の負荷支持表面に堆積されたクロミア被膜の表面の微細組織を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図5】大腿骨頭の負荷支持表面に堆積されたクロミア被膜の粒子径を示す透過電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
寿命が延長される医学装置、及びそれらの装置を作製する方法とそれらの装置を用いる方法について、説明する。これらの医学装置として、一般的に、外科的に移植され得る装置が挙げられる。このような移植片は、一般的に、低摩擦かつ耐磨耗性のナノ組織材料の厚膜によって少なくとも部分的に被覆された表面を有する構造部材を備えている。ナノ組織材料は、大きな粒子径を有する材料と比較して、優れた性質、例えば、改良された耐剥離性と耐摩耗性とを有することができる。耐剥離性の改良は、ナノ組織材料の増大した硬度と超微細粒子径に起因している。超微細粒子径は、破損と材料剥離の機構を改善するもの、と考えられる。
【0012】
ここで用いられる用語「第1」、「第2」などは、どのような順番又は重要度をも示すものではなく、むしろ、1つの要素を他の要素から識別するのに用いられ、用語「その(the)要素」及び「ある(a又はan)要素」は、該要素の数量の制限を示すものではなく、むしろ、少なくとも1つの該要素が存在することを示している。さらに、ここに開示される全ての範囲は、上下限点を含み、また、独立して組合せ可能である。
【0013】
医学装置は、関節式継手又は柔軟性継手の一部(すなわち、部分的な置換)を備えていてもよい。代替的に、医学装置は、関節式継手又は柔軟性継手の完全な一体物(すなわち、完全な置換)であってもよい。関節式継手の例として、膝、腰、肘、足首、脊椎、肩、手首などの関節と部分的又は完全に置換されるのに用いられる関節式継手が挙げられる。柔軟性ヒンジ継手の例として、手指、足指などの関節と部分的又は完全に置換されるのに用いられるシラスティク(Silastic)(登録商標)関節又はMP関節が挙げられる。
【0014】
医学装置が関節の完全な置換体に用いられる実施形態において、医学装置は、一般的に、表面(以下、「第1表面」と呼ぶ)を有する構造部材(以下、「第1構造部材」と呼ぶ)と、第2表面を有する第2構造部材とを備え、これらの表面の片方又は両方の少なくとも一部が、低摩擦かつ耐磨耗性のナノ組織材料の厚膜によって被覆されている。医学装置の具体的な形式によるが、第1及び第2表面は、旋回自在に係合可能であるとよい。
【0015】
説明の便宜上、図1及び図2は、それぞれ、例示的な人工股関節移植片と人工膝関節移植片とを示している。人工股関節移植片10は、第1構造部材として、大腿骨頭14を備え、第2構造部材として、寛骨臼ソケット12を備えている。寛骨臼ソケット12は、第2表面として、凹状開口16を有している。この例では、被膜18は、第1表面にのみ配置されている。同様に、膝関節移植片20は、第1構造部材として、大腿顆22を備え、第2構造部材として、頸骨皿24を備えている。この実施形態では、両方の構造部材の表面に、ナノ組織の厚い被膜26と28が配置されている。例示的実施形態において、股関節移植片10及び膝関節移植片20の場合におけるように、第1及び第2表面は、負荷支持表面である。
【0016】
第1及び/又は第2構造部材を形成するのに用いられ得る材料として、合金、セラミック、ポリマー、及び軟骨が挙げられる。比較的腐食性の環境であることに加え、多くの金属腐食生成物のわずかの濃度に対しても人体の耐性が低いことを考慮し、ここでの検討から、多くの金属を除外する。必要な機械的強度と生体適合性とを有する金属の候補の内、316Lのようなステンレス鋼合金、クロム−コバルト−モリブデン合金、Ti6Al4Vのようなチタン合金、ジルコニウム合金、およびこれらの少なくとも1つを含む組合せが、構造部材として用いられるのに適していることが分かっている。セラミックの具体例として、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、クロミア(Cr2O3)などが挙げられる。ポリマーの具体例として、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高架橋ポリエチレン(XLPE)などが挙げられる。繊維及び/又は粒子強化ポリマーが用いられてもよい。
【0017】
医学装置が2つの構造部材を備える場合、第1及び第2構造部材が同一種類の材料から形成されることは重要ではない。しかし、厚膜を堆積する場合、ナノ組織材料が合金構造材料に被覆されることが望ましい。従って、例示的実施形態において、第1構造部材は、ナノ組織材料が表面に被覆され得るような合金構造部材である。また、図2に示されるように、表面の両方をナノ組織材料の厚膜によって被覆することも可能である。
【0018】
一実施形態において、表面の片方又は両方の少なくとも一部に被覆されるナノ組織材料は、セラミック材料である。適切なセラミック組成物として、Al2O3、Cr2O3、ZrO2などのような硬質相金属酸化物;Cr3C2、WC、TiC、ZrC、B4Cなどのような金属炭化物;ダイヤモンド;立方晶BN、TiN、ZrN、HfN、Si3N4、AlNなどのような金属窒化物;TiB2、ZrB2、LaB、LaB6、W2B2などのような金属硼化物;及び、これらの組成物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。硬質相金属酸化物、炭化物、窒化物、及び硼化物の磨耗特性は、ヒドロキシアパタイトや他の燐酸塩基材料のような生体機能模倣材料よりも優れ、従って、好ましい。他の実施形態において、ナノ組織材料は、セラミック複合組成物である。このセラミック複合組成物は、その複合材料の全体積を基準にして、少なくとも51体積パーセント(vol%)の前述の適切なセラミック組成物と、比較的軟質で低融点の組成物からなる結合相を含んでいる。セラミック複材料用の適切なセラミック粘結相として、SiO2、CeO2、Y2O3、TiO2、及びこれらのセラミック結合相組成物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。他の実施形態において、ナノ組織材料は、セラミック/金属複合材料(サーメット)である。適切なサーメットとして、WC/Co、TiC/Ni、TiC/Fe、Ni(Cr)/Cr3C2、WC/CoCr、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。このサーメットは、TiC、VC、TaC、及びHfCのような粒子成長抑止剤、又はCr、Ni、B、及びBNのような他の添加物をさらに含んでもよい。さらに他の実施形態において、ナノ組織材料は、前述のセラミック、セラミック複合材料、又はサーメットの少なくとも1つを含む組合せである。
【0019】
ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約1nm(ナノメートル)から約1000nmの範囲内にある。一実施形態において、ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約500nm以下である。他の実施形態において、ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約400nm以下である。他の実施形態において、ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約250nm以下である。さらに他の実施形態において、ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約200nm以下である。さらに他の実施形態において、ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約100nm以下である。さらに他の実施形態において、ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約10nm以上である。さらに他の実施形態において、ナノ組織材料の平均最長粒子径は、約25nm以上である。
【0020】
ナノ組織材料の厚膜は、どのような既知の堆積方法、例えば、溶射、化学蒸着、物理蒸着、スパッタリング、イオンメッキ、陰極アーク蒸着、原子層エピタキシー、分子ビームエピタキシー、粉体焼結、電気泳動、電気メッキ、射出成形などによって、表面に被覆されてもよい。例示的実施形態において、例えば、粉体供給材料を用いる溶射及び溶液前駆体プラズマ溶射を含む溶射技術が用いられる。溶射技術は、溶融又は半溶融状態にある材料の堆積によって、被膜が基板上に成膜される被覆プロセスを含んでいる。溶射は、爆発ガン、プラズマガン、又は高速酸素燃料(HVOF)ガンによって、なされるとよい。セラミックとセラミック複合材料の被膜の場合、プラズマ溶射がより好ましく、サーメット含有膜の堆積には、HVOFがより好ましい。
【0021】
HVOF溶射プロセスでは、噴霧乾燥プロセスによって溶射可能な供給材料を再構成するための出発材料として、ナノメートルサイズの粒子が、用いられるのが望ましい。基板は、任意選択的に、サンドブラストによって脱脂及び粗面化を行なうことによって、前処理されるとよい。ここで用いられる「基板」という用語は、ナノ組織材料の厚膜によって被覆される移植片の構造部材の表面を指している。高速炎は、燃料(例えば、プロピレン)と酸素との混合物の燃焼によって、生成される。エンタルピーと温度は、異なる燃料、異なる燃料/酸素比、及び/又は異なる全燃料/酸素流量を用いることによって、調整可能である。炎の性質は、酸素に対する燃料の比率によって、調整されるとよい。このようにして、酸素過剰、中性、又は燃料過剰な炎が生成され得ることになる。供給材料は、例えば、同軸粉体口を介して、制御された送給率で炎内に送給され、溶融され、次いで、目標とする基板に衝突し、堆積物/膜を形成する。膜厚は、被覆の回数によって、制御されるとよい。得られた膜は、任意選択的に、焼鈍工程によって、熱処理される。
【0022】
プラズマ溶射プロセスでは、ナノメートルサイズの粒子が、噴霧乾燥プロセスを介して噴霧可能な供給材料を再構成するための出発材料として、用いられるとよい。基板は、任意選択的に、サンドブラストによって脱脂及び粗面化を行なうことによって、前処理されるとよい。プラズマアークは、ガスをイオン化する熱源であり、これによって、被膜材料を溶融させ、それを加工品に飛散させる。適切なガスとして、アルゴン、窒素、水素などが挙げられる。変更可能なプラズマ設定値として、電流、電圧、作動ガス、及び流量が挙げられる。他のプロセスパラメータとして、ノズル高さ、粉体送給率、及びガンの移動が挙げられる。当業者であれば、必要以上の実験を行なわなくても、最適な条件がパラメータの各々に対して見出されるだろう。膜厚は、被覆の回数に基づいて、制御されるとよい。得られた膜は、任意選択的に、焼鈍工程によって、熱処理される。
【0023】
HVOF及びプラズマ溶射を含む溶射技術のための供給材料の前処理として、個々のナノ粒子と絶縁材料を含むミクロンメートルサイズの凝集体を生成するとよい。これらの凝集体は、好ましくは、凝集されたナノ粒子を含む実質的に球形のミクロンメートルサイズの顆粒である。個々のナノ粒子は、微細なサイズと低質量を有しているので、直接的に溶射するのは、容易ではない。ミクロンメートルサイズの顆粒を形成するようにナノ粒子を凝集することによって、適切な供給材料を生成することができる。供給材料の生成は、(例えば、超音波によって)、ナノ粒子を液体媒体内に分散する段階と、結合剤を加えて溶液を生成する段階と、溶液を噴霧乾燥し、凝集粒子を得る段階と、凝集粒子を加熱し、有機結合剤を除去し、粉体の緻密化を促進する段階とを含むとよい。
【0024】
有機基液体媒体の場合、結合剤として、適切な有機溶媒に溶解された約5重量%〜約15重量%、好ましくは、約10重量%のパラフィンが挙げられる。適切な有機溶媒として、例えば、ヘキサン、ペンタン、トルエンなど、及びこれらの溶媒の1つ以上を含む組合せが挙げられる。水溶液媒体の場合、結合剤として、脱イオン水内に形成される、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、他の水溶性ポリマー、又はこれらのポリマーの1つ以上を含む組合せのエマルションが挙げられる。結合剤は、全溶液の約0.5重量%〜約5重量%、好ましくは、全水溶液の約1重量%〜約10重量%含まれるとよい。一実施形態において、結合剤はCMCである。
【0025】
溶液前駆体プラズマ溶射プロセスによって、数百μm、さらに数mm厚みに及ぶ厚膜を作製することができる。このような厚膜を堆積するために、溶液前駆体がプラズマトーチ内に送給されるとよい。
【0026】
この前駆体プラズマ溶射プロセスは、本出願人に譲渡された米国特許第6,447,848号に、さらに詳細に記載されている。この特許は、その全体を参照することによって、ここに含まれるものとする。前駆体溶液から厚膜を形成する溶射プロセスには、具体的には、3つの段階、すなわち、(1)前駆体溶液を準備する段階と、(2)溶液送達システムを用いて、前駆体溶液を送達する段階と、(3)前駆体溶液を発熱反応によって固体材料に変換させる段階とが含まれる。溶液送達システムは、溶液を容器から液体噴射ノズルに送るのに用いられ、この噴射ノズルが、炎の芯を貫通するのに十分な大きさと速度を有する液滴を生成するものである。液体の流量と噴射は、制御可能である。溶液の送達は、典型的には、溶液をチャンバー内に噴霧するか、目標とする基板上に噴霧するか、又は基板に向かう炎内に噴霧する段階を含んでいる。基板は、任意選択的に、加熱されてもよい。得られた膜は、任意選択的に、焼鈍手順によって、熱処理されるとよい。
【0027】
前駆体溶液は、溶媒又は溶媒の組合せに溶解された少なくとも一種の前駆体塩から生成されている。例示的な塩として、制限はされないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属など、及びこれらの金属の1つ以上を含む組合せを含むカルボン酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物、アルコキシド塩、ブトオキシド塩など、及びこれらの塩の1つ以上を含む組合せが挙げられる。前駆体は、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)など、及びこれらのシランの1つ以上を含む組合せのような無機シランの形態であってもよい。上記の塩が溶解され得る例示的な溶媒として、制限はされないが、水、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、及びこれらの溶媒の1つ以上を含む組合せが挙げられる。これらの試薬は、最終的な化合物の所望の化学量論組成に従って計量され、液体媒体に添加、及び混合される。前駆体溶液は、固体成分を溶解し、その溶液を均質化するために、加熱及び攪拌されるとよい。
【0028】
適切な前駆体の水溶液反応物を用いて被覆を行うと、好都合である。ナノ組織材料の粉末を作製するのに適した装置として、pH計器、温度制御装置、加熱板、及び/又は噴霧乾燥機が装備された反応容器が挙げられる。ナノ組織複合材料の合成に適したプロセス工程は、前駆体の前処理、予備複合材料の作製、ナノ組織複合材料の生成、及び表面不動態化を含んでいる。
【0029】
溶液前駆体プラズマ溶射の一実施形態において、プラズマ溶射は、特定のナノ組織を有する厚膜を生成する方法によって、行なわれるとよい。ナノ組織材料は、高密度、例えば、理論密度の約95%よりも大きい密度を有しているとよい。
【0030】
前述した微細組織を生成するのに用いられる溶液プラズマ溶射方法は、前駆体溶液の液滴を溶射炎内に噴射する段階であって、前駆体溶液の液滴の第1部分を溶射炎の熱区域内に噴射し、前駆体溶液の液滴の第2部分を溶射炎の冷区域内に噴射する段階と、第1部分の液滴を微細化し、小サイズの液滴を生成し、これらの小サイズの液滴を加熱し、熱区域内に加熱された粒子を生成する段階と、これらの加熱された粒子を熱区域において少なくとも部分的に溶融する段階と、少なくとも部分的に溶融された加熱粒子を基板に堆積する段階と、前駆体溶液の液滴の第2部分の少なくとも一部を微細化し、小液滴を生成し、これらの小液滴から非液体材料を生成する段階と、この非液体材料を基板に堆積する段階とを含んでいる。基板は、任意選択的に、予熱され、及び/又は堆積中に、所望の温度に保持されるとよい。当業者にとっては容易に理解されるように、「第1部分と第2部分」という用語は、連続する順番を示さず、単に、2つの部分を識別するために用いられている。
【0031】
ナノ組織材料の厚膜を特定の構造部材に被覆する前に、表面層は、任意選択的に、酸化されてもよい。特に、構造部材が金属であるとき、この酸化された層は、金属構造部材が腐食され、かつ金属イオンを血流内に放出するのを防ぐための腐食バリアとして機能することができる。この酸化処理として、予熱、陽極酸化、硝酸浴内における不動態化などが挙げられる。
【0032】
さらに、ナノ組織材料の厚膜を構造部材に被覆した後で、移植装置の特徴を特定し、及び/又は実装する前に、任意選択的に、厚膜にさらに他の処理、例えば、摩擦係数及び/又は表面粗さを調整するための薄削り、研削、及び/又は研摩のような処理、及びプラズマ処理、殺菌などの処理を行なうことができる。厚膜に付加的な機能又は所望の特性をもたらすために、付加的な層が追加されてもよい。しかし、具体的な一実施形態において、被覆された構造部材は、そのままで、すなわち、研削又はさらに他の処理を行なわずに、用いられる。さらに他の具体的な実施形態において、堆積されたままの厚膜は、必要に応じて、薄削り又は研磨されるが、さらに他の処理、例えば、被膜と基板との間の結合を高めるための水和処理、さらなる被覆、圧密などの処理は行なわれない。このような実施形態では、付加的な処理工程をなくすことによって、医学装置をさらに経済的に作製することができる。
【0033】
堆積される厚膜の厚みは、一般的に、約25μm以上である。一実施形態において、厚い被膜の平均厚みは、約50μm以上である。他の実施形態において、厚膜の平均厚みは、約100μm以上である。さらに他の実施形態において、厚膜は、約3mm以下である。より厚い被膜(特に、約50μ以上、さらに好ましくは、約100μm以上の被膜)は、支持部材の材料が擦過傷及び磨耗の影響を受けるのを良好に保護し、及び/又は表面間の相互作用間の粒子(特に微粒子の破片)の離脱を少なくするので、有利であるということが明らかである。これによって、著しく寿命が延長される移植片が得られることになる。例えば、約50μm以上の平均厚みを有する被膜は、約25μmよりも大きい平均厚みを有する被膜よりも寿命が長いことが、予期される。さらに、約100μm以上の平均厚みを有する被膜は、約50μmよりも大きい平均厚みを有する被膜よりも寿命が長いことが、予期される。従って、開業医は、臨床的な設定において、約25μm以上の厚みを有する被膜を備える医学装置よりも、約50μm以上の厚みを有する被膜を備える医学装置を、優先的に用いるだろう。
【0034】
ナノ組織材料の被膜は、一般的に、理論密度の約80%以上の密度を有している。一実施形態において、被膜の密度は、理論密度の約85%以上である。他の実施形態において、被膜の密度は、理論密度の約85%以上である。他の実施形態において、被膜の密度は、理論密度の約90%以上である。さらに他の実施形態において、被膜の密度は、理論密度の約95%以上である。ナノ組織材料内において、そこに存在する細孔は、一般的に、約50μm以下の平均最長寸法を有している。一実施形態において、ナノ組織材料内の細孔の平均最長寸法は、約10μm以下である。他の実施形態において、ナノ組織材料内の細孔の平均最長寸法は、約1μm以下である。
【0035】
ナノ組織材料の被膜は、一般的に、約350kg/mm2以上の断面硬度(すなわち、ビッカース硬度)を有している。一実施形態において、被膜の硬度は、約500kg/mm2以上である。他の実施形態において、被膜の硬度は、約750kg/mm2以上である。さらに他の実施形態において、被膜の硬度は、約1000kg/mm2以上である。被膜の硬度は、約8,000kg/mm2にまで増大させることができる。
【0036】
前述したような医学装置は、当業者に知られているような一般的な目的に従って、用いることができる。例えば、人工移植片は、患者(動物又は人)内に、外科的に移植されるものである。
【0037】
この開示を、以下の非制限的な実施例によって、さらに説明する。
【0038】
これらの実施例において、いくつかの技術を用いて、生成物の解明を行なった。各生成物の相は、粉末X線回折(XRD)によって、識別した。表面及び断面の微細組織は、JEOL(日本電子)製電子顕微鏡(モデルJSM−840A)を用いる走査電子顕微検査(SEM)によって、評価した。平坦部の被膜の平均表面粗さは、0.01μmの精度を有するミツトヨ製表面粗さ試験機(SJ−201P)によって、評価した。被膜の結晶組織と粒子径は、透過電子顕微鏡検査(TEM)によって、観察した。被膜の断面硬度は、ビッカース硬さ試験器(モデルM−400−G2)を用いて、300g、1kg、及び2kgの荷重下で測定した。被膜の靭性は、圧痕によって生じた亀裂長さから、KIC=0.016(E/H)1/2(P/C3/2)の式(但し、E:ヤング率、H:断面硬度、P:負荷、及びC:亀裂距離の半分)に基づいて、パルムクビスト(Palmqvist) 技法によって、決定した。
【0039】
被膜の摩擦係数は、「ピン−オン−ディスク装置による磨耗試験のための標準試験方法」という表題のASTM規格G99−95Aに基づいて、磨耗データから評価した。ピン−オン−ディスク機には、0.001mVの精度を有するデジタルマルチメータが装備されている。このデジタル信号をコンピュータに入力し、データを記録した。ゼロ点移動と他のシステム誤差は、V摩擦=V回転−V基準の公式に基づいて、推測した。この公式で、V摩擦は、摩擦力によってロードセルに生じる電圧であり、V回転は、ディスクを時計方向に回転させて、(ピン(試料)にディスクと接触させるための荷重を垂直に加え)、システムを作動させたときのロードセルの全電圧値であり、V基準は、ディスクを停止させ、重量を取り外したときのロードセルの電圧値である。V基準は、摩擦力のないシステムの基準であり、システム誤差を反映する。用いたピン及びディスク、それぞれ、平坦面を有し、かつ3.81mm及び31.75mmの直径を有するセラミックが被覆された304ステンレス鋼合金材である。潤滑剤として、脱イオンされた水に33体積%(vol%)の牛の血清(MPバイオメディカルズ社)が含まれた溶液を用いた。試験は、室温において、潤滑剤中で40ニュートン(N)の負荷を加え、ディスクを240rpmで回転させて、行なった。
【0040】
セラミック被膜の滑り磨耗率は、「ピン−オン−ディスク装置による磨耗試験のための標準試験方法」という表題のASTM規格G99−95Aに基づいて、求められたものである。「直線状往復磨耗運動を行なう全関節プロセスに用いられるポリマー材料のためのピン−オン−ディスク磨耗試験」という表題のASTM規格F732−98と比較して、低接触圧の3.51MPaは、後者の3.55MPaと同様であり、走行速度の111.6mm/sは、後者の50.8mm/sの2倍である。ピンは、3.81mmの直径を有する平坦な表面を有し、ディスクの回転速度は240rpm、軌道半径は0.35インチ(8.89mm)、及び垂直力は40Nである。また、温度は室温とし、及び潤滑剤は33vol%の牛血清とした。12〜16MPaの範囲の高圧下での磨耗評価のために、リング−オン−ディスク試験は、「高純度アルミナに基づく外科用セラミック材料用の移植片」という表題のISO6474に基づいて、行なわれた。磨耗率は、ピン−オン−ディスク試験における被膜の重量損失と被膜密度によって、計算されたものである。リング−オン−ディスク試験における磨耗体積は、表面形状測定装置を用いて磨耗の軌道深さと幅を測定することによって、計算されたものである。極超電子秤を用いて、重量損失を10μg以内の精度で決定した。解析は、「シミュレータ装置で人工股関節設計の磨耗の量を評価するためのガイド」という表題のASTM規格F1714−97を用いて、行なわれた。試料への蒸気の凝縮の誤差をなくすために、試料は室温において真空乾燥され、乾燥窒素によって密封されたものである。少なくとも4つの計量データは、データごとに記録されたものである。計量手順は、乾燥窒素環境内で行なわれた。試験室は、相対湿度35%の除湿器と組合わされた空調装置を用いて、その環境が制御された。
【0041】
引張結合強さは、「フレーム溶射された被膜の密着又は結合強さのための試験方法」という表題のASTM規格C633−79(1999年に再承認)に基づいて、測定されたものである。せん断結合強さは、「燐酸カルシウム被膜と金属被膜のせん断試験」という表題のASTM規格F1044−99に基づいて、測定されたものである。機器は、カリフォルニア州のユナイテッド・キャリブレーション(United Calibration)社によって製造される標準的な引張強度試験機(モデルDH−10)である。各試験片の被覆されていない側は、各結合強さ試験の前に、30#のアルミナ粒を用いて、サンドブラストされたものである。これらの試験に用いた接着剤は、12,000psiの最大引張強度を有する接着剤膜(FM1000)である。平均的な結合強さを得るために、6つの試料を試験した。金属片と試験片は、被覆方向と直交する方向に加えられる負荷を保持する特別のホルダーに固定されている。一定の負荷が、較正した高温バネを用いて、被膜とその被膜を試験するのに用いる対向する装置との間に、加えられた。得られた応力は、0.138メガパスカル(MPa)、すなわち、約20psiであった。結合強さ試験は、一定のクロスヘッド速度(試験速度)である0.12cm/minで、行なわれた。破断負荷と破断表面は記録された。
【実施例1】
【0042】
「厚いクロミアが被覆されたTi6Al4V大腿骨頭」
クロミア供給材料の組成物は、5重量%のSiO2と3重量%のTiO2を含み、残部がCr2O3である。原料である粉末材料の平均粒子径は、Cr2O3とSiO2が約50nmで、TiO2が約30nmである。最初に、1:2の粉末と水の比率で供給材料の組成物を含むスラリーを準備した。この供給材料の組成物を、入口温度が446°Fで、出口温度が105℃で、回転速度が25,000rpmの16フィート(480センチ)長さの工業用噴霧乾燥機を用いて、噴霧乾燥した。噴霧乾燥した供給材料の組成物を、空気中で1000℃未満の温度で加熱することによって、部分的に焼結し、これに続いて、水素中において約1000℃〜1800℃の温度で加熱し、ナノ粒子を溶射に適したミクロンメートルサイズの粒子に凝集させた。約20〜50nmの個々の粒子含む供給材料を、約5〜100μmの溶射可能な凝集体に凝集させた。
【0043】
上記の供給材料を、GM−ファナック(Fanuc)社製の6軸ロボットと、2軸試料台と、制御コンソールとが装備されたプラズマ溶射システム(メテコ(Metco)9MB)を用いて、プラズマ溶射した。Ti6Al4V合金基板(大腿骨頭)に生じ得る熱損傷と被膜の微小亀裂を避けるために、特別の空冷ジェットシステムを用いて、溶射処理中に基板温度を低下させた。金属基板部を、30粒度のアルミナ粒を用いて、サンドブラストした。サンドブラストの後、基板の金属表面の予備酸化を、プラズマ炎による加熱、陽極酸化、又は硝酸への浸漬によって、行なった。サンドブラストされた基板の表面粗さを、ミツトヨ製表面形状測定装置(SJ201P)を用いて、監視した。プラズマ溶射の最適化されたパラメータは、プラズマガス:H2/Ar、ガス圧:75psi、ガスの流量:50scfh(標準状態で換算した立方フィート/時)、渦流ガスの流量:10scfh、アーク電流:600amp、アーク電圧:70ボルト、ノズル形式:310、溶射率:5ポンド/時、溶射距離:2.5インチ、噴流:PSA(圧力振動吸着)空気ジェット、空気圧:35psi、交差部分の長さ:3.5インチ、粉体口:形式II、周速:450sfpm(フィート/分)、キャリアガスの流量:30scfh、及び被膜の厚さ:200μmである。被膜厚みは、膜厚計測器(チェック−ライン(Check−Line)(登録商標)2000)によって、0.1μmの誤差内で測定した。
【0044】
セラミック被覆された大腿骨頭を、コンピュータ数値制御(CNC)研削/研磨機を用いて、研削及び研摩した。研削には、ビューラ(Buehler)社製ラッピング油又は同様の冷媒を用いた。研削工程は、1)400粒度のダイヤモンド砥石を用いて、研削する工程、2)15分間、250sfpm(1.27m/s)で、6μmダイヤモンド複合材料を用いて、ラッピングする工程、3)10分間、250sfpm(1.27m/s)で、1μmダイヤモンド複合材料を用いて、ラッピングする工程、及び4)5分間、400sfpm(2.03m/s)で、0.5μmダイヤモンド複合材料を用いて、ラッピングする工程を含む。研削の後、FDA(米国食品医薬品局)規格に基づく約0.01〜0.02μmの平均表面粗さ(Ra)を得るために、精密研磨工程を行なった。
【0045】
被膜の厚みと微細組織を、走査電子顕微鏡検査と透過電子顕微鏡検査によって、観察した。図3は、最終仕上げ工程の後、被膜厚みが約100μmであることを示している。被膜の上面は、図4に示されるように、潤滑剤溜め用の5体積%の微細孔を有している。厚いCr2O3被膜の粒子径は、図5に示されるように、約50nmである。被膜の他の組成物(TiO2とSiO2)は、粒子境界に位置する非晶質であり、TEM(透過電子顕微鏡)の明視野顕微鏡写真では観察するのが困難である。しかし、この非晶質相は、選択された領域の電子回折と暗視野対比解析によって、識別された。PXRD(粉末X線回折)では、菱面体晶Cr2O3相のみが観察された。
【0046】
被膜は、95%よりも大きい密度と、約40MPaよりも大きい引張結合強さと、100MPaのせん断結合強さとを示した。被膜は、その被膜を意図的に金属基板の表面まで研削した後でも剥離が生じない程度に、基板と結合していた。Cr2O3被膜は、1250kg/mm2の硬度と、13.3MPa/m1/2の破断靭性とを有していた。被膜面の粗さがRa=0.03〜0.05μmである安定範囲内で磨耗が進んでいるとき、摩擦係数は、f=0.025であった。従って、ナノ組織Cr2O3は、整形外科移植片に用いられる良好な候補である。
【実施例2】
【0047】
[比較例]
実施例1によって準備したクロミアによって被覆されたTi6Al4Vの大腿骨頭を、市販のUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)とCo−Cr−Mo合金の組からなる膝関節及びポリマーとセラミック被覆された金属の組からなる膝関節と、比較した。表1に示されるように、これらの市販の製品を上回る著しい改良が得られた。
【0048】
【表1】

【0049】
体積磨耗率から変換された線磨耗率で比較すると、Cr2O3被膜とCr2O3被膜の組は、0.67μm/年の線磨耗率を有し、これは、UHMWPEとCoCrMoの組からなる膝関節の170μm/年及び最新のUHMWPEとZrO2の組からなる膝関節の130μmよりも約200倍低い。この磨耗率は、最も良好な市販のバルクAl2O3とAl2O3の組(バイオロックス(Biolox)(登録商標)フォルテ)及びバルクZrO2とZrO2の組(ジオロックス(Ziolox)(登録商標)フォルテ)の間である。なお、UHMWPEとCoCrMoの組のリング−オン−ディスクの比較データは、ISO6474に基づく方法がセラミックとセラミックの組の磨耗に対してのみ規定されているので、採取していない。
【0050】
以上、この開示を、例示的実施形態を参照して、説明したが、当業者であれば、この開示の範囲内から逸脱することなく、種々の変更がなされてもよく、この開示における要素が等価物と置き換えられてもよいことが、理解されるだろう。加えて、この開示の本質的な範囲から逸脱することなく、この開示の示唆に対して特別の配置又は特別の材料を適合させる多くの修正形態がなされてもよい。従って、この開示は、それを実施するための最良の形態として開示された具体的な実施形態に制限されず、添付の請求項の範囲内に含まれる全ての実施形態を包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0051】
10 人工股関節移植片
12 寛骨臼ソケット
14 大腿骨頭
16 凹状開口
18 被膜
20 膝関節移植片
22 大腿顆
24 頸骨
26 被膜
28 被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する構造部材を備える医学装置において、前記表面の少なくとも一部は、少なくとも約25ミクロンメートルの厚みのナノ組織材料によって被覆され、前記ナノ組織材料は、セラミック、セラミック複合材料、セラミック/金属複合材料、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを備え、前記ナノ組織セラミック材料は、硬質相金属酸化物、金属炭化物、ダイヤモンド、金属窒化物、金属硼化物、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せであり、前記ナノ組織セラミック複合材料は、前記セラミック複合材料の全体積に基づいて、少なくとも51体積%の硬質相セラミック材料と、結合剤相とを含み、前記結合剤相は、SiO2、CeO2、Y2O3、TiO2、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでおり、前記ナノ組織セラミック/金属複合材料は、WC/Co、TiC/Ni、TiC/Fe、Ni(Cr)/Cr3C2、WC/CoCr、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでいることを特徴とする医学装置。
【請求項2】
前記ナノ組織材料は、約500ナノメートル以下の平均最長粒子径を有しており、前記ナノ組織材料の厚みは、約3ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1に記載の医学装置。
【請求項3】
第1表面を有する第1構造部材と第2表面を有する第2構造部材を備える医学装置において、前記第1及び第2表面の片方又は両方の少なくとも一部は、少なくとも約25ミクロンメートルの厚みのナノ組織材料によって被覆されていることを特徴とする医学装置。
【請求項4】
関節式継手又は柔軟性ヒンジ継手であることを特徴とする請求項3に記載の医学装置。
【請求項5】
前記関節式継手は、膝、腰、肘、足首、脊椎、肩、又は手首の関節の部分的置換又は完全置換に用いられていることを特徴とする請求項4に記載の医学装置。
【請求項6】
前記柔軟性ヒンジ継手は、シラスティク関節又はMP関節の部分的置換又は完全置換に用いられていることを特徴とする請求項4に記載の医学装置。
【請求項7】
前記第1及び第2構造部材の片方又は両方は、合金、セラミック、ポリマー、又は軟骨から形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の医学装置。
【請求項8】
前記合金は、ステンレス鋼合金、チタン合金、ジルコニウム合金、コバルト−クロム−モリブデン合金、又はこれらの合金の少なくとも1つを含む組合せであることを特徴とする請求項7に記載の医学装置。
【請求項9】
前記セラミックは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、クロミア、又はこれらのセラミックの少なくとも1つを含む組合せであることを特徴とする請求項7に記載の医学装置。
【請求項10】
前記ポリマーは、ポリエチレンであることを特徴とする請求項7に記載の医学装置。
【請求項11】
前記ポリマーは、繊維、微粒子、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せによって補強されていることを特徴とする請求項7または10に記載の医学装置。
【請求項12】
前記第1及び第2表面は、旋回自在に係合可能であることを特徴とする請求項3に記載の医学装置。
【請求項13】
前記ナノ組織材料は、セラミック、セラミック複合材料、セラミック/金属複合材料、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せであることを特徴とする請求項3または7に記載の医学装置。
【請求項14】
前記セラミックは、硬質相金属酸化物、金属炭化物、ダイヤモンド、金属窒化物、金属硼化物、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せであり、前記ナノ組織セラミック複合材料は、前記セラミック複合材料の全体積に基づいて、少なくとも51体積%の硬質相セラミック材料と、結合剤相とを含み、前記結合剤相は、SiO2、CeO2、Y2O3、TiO2、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでおり、前記ナノ組織セラミック/金属複合材料は、WC/Co、TiC/Ni、TiC/Fe、Ni(Cr)/Cr3C2、WC/CoCr、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含んでいることを特徴とする請求項13に記載の医学装置。
【請求項15】
前記ナノ組織材料は、約500ナノメートル以下の平均最長粒子径を有しており、前記ナノ組織材料の厚みは、約3ミリメートル以下であることを特徴とする請求項3、13または14のいずれかに記載の医学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−101806(P2011−101806A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293638(P2010−293638)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2006−2910(P2006−2910)の分割
【原出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(506010688)インフラマット・コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】