説明

被覆油粒子水分散液及びその製造方法

【課題】50℃程度のより過酷な条件下でも、油分を安定に内包できる被覆油粒子を含む水分散液を得る。
【解決手段】油分を水分中に分散して油粒子分散液を調製し、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子凝集体を水に分散させた後、前記微粒子凝集体を平均粒径1μm以下の微粒子に粉砕し、さらにこの分散液のpHを6.0〜8.0の範囲に調整することにより、無機微粒子水分散液を調製し、前記油粒子分散液と前記無機微粒子水分散液とを混合することにより、油粒子の表面に水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる平均粒径が5μm以下の被覆油粒子が水に分散されてなるpHが6.0〜8.0の被覆油粒子水分散液を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆油粒子水分散液及びその製造方法に関し、詳しくは、油粒子の表面に無機微粒子が付着されてなる、油分を安定に内包した被覆油粒子を水に分散させてなる被覆油粒子水分散液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、薬効成分、化粧成分、殺菌成分、殺虫成分、香料成分等には油分が含まれているものが多数存在する。しかしながら、上記成分中に含まれる油分は、光、酸素、熱、圧力等から影響を受けやすく、経時安定性が良くないものが多い。また、油分の中には、苦味や独特な異臭を有するものが多数存在する。上記油分の経時安定性の不良や苦味や独特な異臭を有することは、目的とする用途における効果を保存中に低減させたり、商品価値を落としたりするという問題があった。
【0003】
これに対して、従来、油分を被覆することが提案されており、特許文献1には、界面活性剤の存在下、水性溶液中に油溶性物質およびカルシウム成分を分散させ、得られた混合液を乾燥させることによって油溶性物質含有粉末を得る技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−263948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の方法においては、油溶性物質をホモミキサーを用いて乳化しているが、このレベルの剪断力では油溶性物質の微粒化は数10μmレベルに留まり、更に、ホモミキサーではローターとステーターの間のクリアランスが広く、カルシウム粒子を1μmよりも小さく粉砕する力は無い。したがって、油溶性物質を含有した粒子の粒径は、必然的に数10μm以上と大きいものになってしまう。さらに、本技術では、加えて、粉末化させているので、粉体としての取り扱いやすさとしての粉立ちが起こらない点から考えても、数10μm以上になってしまう。このような大きな粒子では、生体内等の微小部分(例えば、皮膚、毛穴、歯周ポケット、歯牙の小窩裂溝など)への浸透性や隙間に入り込むことによる滞留性を発揮できない欠点がある。
【0006】
この特許文献1に開示の技術では、界面活性剤のありなしにかかわらず、油分をカルシウム成分で被覆できること、かつ乾燥工程を必要とせず油分を被覆できるとしているが、乾燥工程なしでは油分がカルシウム成分で被覆されない。しかも、前述のように、カルシウム成分の粒径が大きいため、油分が漏れやすい欠点がある。
【0007】
これに対して、本発明者らは、本願発明に先立って、油粒子を水難溶性無機カルシウム塩の粒子で被覆した被覆油粒子及びその製造方法を提案している(特願2005−187210号および特願2005−325312号)。
【0008】
これらの先の出願では、油粒子の表面に平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子を付着させて平均粒径が5μm以下の被覆油粒子を得る方法を提案した。
【0009】
前記本発明者らの先の出願によれば、固着剤等を用いることなく、油粒子を水難溶性無機カルシウム塩の微粒子により被覆した平均粒径5μm以下の微細な被覆油粒子を形成することができる。しかしながら、被覆油粒子を実際の応用現場で使用しようとする場合、被覆油粒子はより過酷な条件下で使用されることも視野に入れなければならない。より過酷な条件下でも被覆油粒子は高い安定性を有することが望ましい。過酷な条件下とは、例えば、室温以上の高い温度下で使用される場合が想定される。油粒子としてフェノール性化合物を含む油分を用いる場合、50℃程度のより過酷な条件下でも油分が溶出してしまうことがないことが、より一層の性能向上につながる。かかるより一層の性能向上については、本発明者らの先の出願では、検討に至っていない。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解消しようとするものであり、室温より高い温度、例えば、50℃程度のより過酷な温度条件下でも、油分を安定に内包できる、被覆油粒子を含有してなる水分散液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、被覆油粒子を分散させておく水分散液のpHを6〜8に調整することにより、以下のような作用および効果を確認するに至った。
(1) 無機カルシウム塩微粒子同士の凝集性が増し、固着剤なしにでも油分を安定に被覆できる。
(2) 無機カルシウム塩微粒子による被覆厚が薄くても、安定な被膜が形成できる。
(3) フェノール性化合物を含む油分を含む油粒子を安定に内包できる。
(4) 得られた水分散液中の被覆油粒子は50℃程度のより過酷な条件下での安定性も良好である。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0012】
すなわち、本発明の被覆油粒子水分散液は、油粒子の表面に水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる被覆油粒子が水に分散されてなる被覆油粒子水分散液であって、前記水難溶性無機カルシウム塩微粒子の平均粒径が1μm以下、前記被覆油粒子の平均粒径が5μm以下であり、かつ、pHが6.0〜8.0であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる被覆油粒子水分散液の製造方法は、油分を水分中に分散して油粒子分散液を得る乳化工程と、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子凝集体を水に分散させた後、前記微粒子凝集体を平均粒径1μm以下の微粒子に粉砕し、さらにこの分散液のpHを6.0〜8.0の範囲に調整することにより、無機微粒子水分散液を得る無機微粒子水分散液調製工程と、前記油粒子分散液と前記無機微粒子水分散液とを混合することにより、油粒子の表面に水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる被覆油粒子が水に分散されてなるpHが6.0〜8.0の被覆油粒子水分散液を得る被覆油粒子水分散液調製工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) フェノール性化合物を含む油分を、被覆油粒子から溶出することなく安定に内包し、50℃程度のより過酷な条件下での経時安定性も良好である。
(2) 油分を安定に内包し、油分が光、酸素、熱、圧力等から受ける影響を弱めることができる。
(3) 油分(薬効成分等)を大量に内包することができる。
(4) 水難溶性カルシウム含有無機微粒子で被覆しているため壊れにくく、被覆厚が薄くても安定である。
(5) 油分の味、匂い等をマスクすることができる。
(6) 油粒子表面に凝集して被膜を形成しているため、膜には微細孔が存在し、内包する油分の徐放が可能である。
(7) 水難溶性無機カルシウム塩の微粒子を用いているため、生体に用いた場合でも、安全性が高い。
(8) 油分の量と水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の量を適宜調整することにより、本発明の被覆油粒子の被覆厚を制御することが可能である。
(9) 油粒子の粒径を制御することにより、被覆油粒子の平均粒径を例えば5μm以下に制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明における油粒子は、1種または2種以上の油分からなる。この油分は、上記水難溶性無機カルシウム塩や後述する界面活性剤と反応しない油分であれば、特に限定されない。
【0016】
このような油分としては、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、スチレンなどの炭化水素類、また、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、またパルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどのエステル類、また、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール類、また、サラダ油、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油、大豆油、菜種油、アマニ油、コーン油、パーム油、鯨ロウ、コレステロール、シリコーン油、ミネラルオイル、ラード、ミツロウ、綿実油、ラノリン、ワセリンなどの天然及び合成の油、油脂、ロウ類、また、ポリスチレン、ポリエチレンなどの高分子ポリマー、また、メントール、リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ムスコン、レモン香料などの香料、スクワラン、セラミド、コラーゲン、パンテノール、パントテン酸などの化粧成分、薬効・有効成分、その他農薬、殺虫成分、抗菌、抗カビ成分等が挙げられる。
【0017】
また、これらの油分に溶解しない成分、もしくは油分そのものではなく、その他の成分であって、油分に溶解する成分でも不溶性の成分でも、上記水難溶性無機カルシウム塩や後述する界面活性剤と反応しない油分であれば、上記油分中に溶解もしくは分散させることによって包含させることができる。このようにして用いることができるものとしては、例えば、アミノ酸や、タンパク質、酵素、DNA、糖類などの高分子物質が挙げられる。
【0018】
前記フェノール性化合物は、分子内にフェノール構造を持つ化合物である。例えば、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、フェノール、フェノキシエタノール、ヒノキチオール、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチルアルデヒド、チロシン、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、チオフェノールなどが挙げられる。これらを単独で油分として使用しても、また上記の油分にこれを溶解させて用いてもよい。上述のn−ヘキサン、n−オクタンなどを例に挙げた油分である。
【0019】
本発明に用いる水難溶性無機カルシウム塩としては、本発明に用いる油分と反応しない水難溶性無機カルシウム塩であれば、特に限定されない。例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、珪酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ化アパタイトなどを挙げることができる。
【0020】
水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の平均粒子径は1μm以下の粒子であるため、高い表面活性を付与できているので、油粒子の粒径を適宜に制御することにより、最終的に得られる本発明における被覆油粒子の粒径を容易に制御することが可能である。
【0021】
本発明の被覆油粒子水分散液は、pHが6.0〜8.0の範囲に設定される。pHが6.0未満であると、水難溶性無機カルシウム塩が溶解し、被覆油粒子から油分が漏れ出るおそれがある。一方、pHが8.0を超えると、油分中のフェノール性化合物が被覆油粒子から溶出するおそれがある。水分散液のpHを6.0〜8.0の範囲に制御することにより、フェノール性化合物を含む油分でも、より安定に内包できる。しかも、50℃程度のより過酷な条件下でも、油分を安定に内包できる。
【0022】
本発明において、後述の被覆油粒子水分散液の製造工程においてpHが6.0〜8.0の範囲から外れた場合は、pHを6.0〜8.0の範囲にpH調整することを必要とする。この時、酸およびアルカリを用いてpHが6.0〜8.0の範囲になるように調整する。
【0023】
pH調整用の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、乳酸、クエン酸などを用いることができる。これらのうちで、硫酸、リン酸、クエン酸が好ましい。
【0024】
pH調整用のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
【0025】
本発明の被覆油粒子水分散液中の被覆油粒子は、油粒子の表面に平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されることにより前記油粒子が被覆されてなるもので、その平均粒径が5μm以下の寸法に制御される。ここで、図1は、油粒子が水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆された被覆油粒子の概念図である。図1に示すように、油粒子2aは、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子1aで被覆され、被覆油粒子3となっている。
【0026】
図2は、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が、油粒子に付着する機構を図示したものである。図2に示すように、粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子1aは、表面エネルギーが大きいため、油粒子表面に吸引されて付着し、固着剤を用いることなく安定に油粒子2aを被覆する。さらに、被覆厚が薄くても安定な被膜を形成することができる。そのため、水難溶性無機カルシウム塩に対する油分の重量比を大きくすることができる。また、この被膜には、細孔が存在するため、被覆された油分の徐放性に優れる。さらに、油分を放出したい場合は、水難溶性無機カルシウム塩からなる被覆層を酸かアルカリにより溶解させることにより溶出させることが可能である。例えば、炭酸カルシウムの場合、酸を作用させれば、被覆層が溶解するので、油分の放出が自在となる。
【0027】
本発明の被覆油粒子の平均粒径は5μm以下である。この粒径は、油粒子自体の粒径制御と、水難溶性無機カルシウム塩微粒子の被覆厚を調整することにより、制御することができる。
【0028】
平均被覆厚は、本発明の被覆油粒子を構成する水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の被覆厚の平均値を表す。上記表面に付着している微粒子状の水難溶性無機カルシウム塩と上記油粒子との重量比を適宜調整することにより制御することが可能である。
【0029】
次に、本発明の被覆油粒子水分散液の製造方法について図を用いて説明する。
(i)油分を水分中に分散して油粒子分散液を得る乳化工程
上記油分からなる油粒子は、上記油分がいかなる方法によって油粒子となっていてもよい。油粒子とする方法の具体的な一例としては、乳化処理が挙げられる。乳化により油粒子を形成する場合、油粒子の粒径は、ホモジナイザー、粉砕装置、乳化装置等を用い、攪拌時間、攪拌速度、温度等を調整することによって調整することができる。
【0030】
まず、被覆される油分2を水4に混合して乳化装置等で攪拌し、油粒子2aを水分中に分散して油粒子分散液、すなわち乳化物(O/W乳化物)5を得る(乳化工程)。この時、固体状である油性物質を油分に含む場合、その融点よりも高い温度にて上記乳化物(O/W乳化物)5を調製する(乳化工程)のが好ましい。乳化装置の例としては、ホモジナイザー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、ホモミックラインミル、マイルダー、クレアミックスなどの高速剪断乳化機、マイクロフルイダイザー、ゴーリン、アルティマイザー、ナノマイザーなどの高圧乳化機、超音波分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波乳化機などが挙げられる。一般に界面活性剤がない場合は、油分2と水4のみでは乳化物(O/W乳化物)5を得ることは困難であるが、上記の乳化装置等を用いることにより、装置内で乳化物(O/W乳化物)5を得ることが可能となる。この場合、油粒子2aを、水難溶性無機カルシウム塩をpH調整した微粒子でより被覆させやすくするため、油分2と水4にさらに界面活性剤を添加して混合、撹拌し、乳化物(O/W乳化物)5とすることが望ましい。
【0031】
(ii)無機微粒子水分散液を調製する工程
水難溶性無機カルシウム塩を平均粒径1μm以下に微粒化するのは、平均粒径1μm以下に微粒化できれば、いかなる装置を用いて調製しても構わないが、例えば、慣用の微粒化装置を用いて粉砕することにより調製することができる。このような微粒化装置を具体的に挙げると、ビーズミルやボールミル、各種メディアレスミル、超音波分散機などを用いることができる。本発明に用いることができる微粒化装置としては、例えば、ウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)、スターミル(アシザワ・ファインテック(株))、フィルミックス(プライミクス(株)製)、ディスコプレックス(ホソカワアルピネ社製)、ACM−Aパルベライザ(ホソカワミクロン(株)製)、ナノカット((株)マツボー製)、CLEAR SS−5、クレアミックス(エムテクニック(株)製)、超音波分散機UH−600SR((株)エスエムテー製)、超音波ホモジナイザー(Dr.Hielscher社製)等が挙げられる。
【0032】
このようにして得られた、平均粒径1μm以下に微粒化した水難溶性無機カルシウム塩微粒子の水分散液のpHを6.0〜8.0の範囲に調整するのは、この水分散液に酸またはアルカリを添加することにより行う。この時、上記無機微粒子水分散液を調製した装置に酸またはアルカリを添加し、同じ装置でpH調整を行うことが好ましい。同じ装置で混合することにより、水難溶性無機カルシウム塩の微粒化、さらにpH調整を同時に行うことができ、工程の簡略化が可能となる。
【0033】
水難溶性無機カルシウム塩の微粒子凝集体1を水4に分散させた後、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子凝集体1を上記粉砕装置により粉砕して平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子1aとし、無機微粒子水分散液6を得る(無機微粒子水分散液調製工程)。しかし、これに限定されず、水難溶性無機カルシウム塩を平均粒径1μm以下に調製し、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子1aとした後、水4に分散させることにより調製してもよい。
【0034】
次いで、無機微粒子水分散液6のpHを6.0〜8.0に調整する。上記水難溶性無機カルシウム塩の微粒化工程の後、微粒化装置にそのまま酸またはアルカリを、pHが6.0〜8.0の範囲に入るまで添加する。
【0035】
(iii)被覆油粒子を分散した被覆油粒子水分散液調製工程
この工程では、前記油粒子分散液と前記無機微粒子水分散液とを混合することにより、前記油粒子を前記水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した被覆油粒子を水分散液中に得る。
【0036】
上記乳化工程で得られた乳化物(O/W乳化物)5と上記無機微粒子水分散液をpH調整した無機微粒子水分散液6とを混合することにより、上記乳化物中の油粒子2aを水難溶性無機カルシウム塩の微粒子1aで被覆して水分散液中に被覆油粒子3を得る(混合被覆工程)。この混合は、上記乳化物5と無機微粒子水分散液をpH調整した無機微粒子水分散液6とを均一撹拌できる混合装置を用いることにより行なうことができる。
【0037】
本発明に用いることができる混合装置としては、上述した乳化装置、微粒化装置に加えて、パドルミキサー、プロペラミキサーなどの撹拌装置が挙げられ、スターラーチップによる撹拌でも行うことができる。また、無機微粒子水分散液をpH調整した分散液を調製する装置と同じ装置を用い、無機微粒子水分散液をpH調整した分散液に乳化物5を添加してもよい。この時、無機微粒子水分散液のpH調整分散液を調製した装置に乳化物5を添加し、同じ装置で混合を行うことが好ましい。同じ装置で混合することにより、油粒子2aと水難溶性無機カルシウム塩の微粒子1aの微粒化、さらに乳化物5と無機微粒子水分散液6の混合を同時に行うことができ、工程の簡略化が可能となる。
【0038】
なお、上記乳化物5と無機微粒子水分散液6のpH調整分散液とを混合することにより被覆油粒子の水分散液7が得られ、この中に多数の前記被覆油粒子3が分散していることになる。この場合、被覆油粒子3の水分散液7が本発明の被覆油粒子水分散液である。
【0039】
前記被覆油粒子が適正に調製されていることを確認するには、得られた被覆油粒子をガラス板で挟みこみ圧力をかけるという簡易な方法が可能である。この方法によると、粒子がつぶれて油分が浮き出してくるので、被覆層によって油粒子が内包されていることを確認することができる。
【0040】
さらに正確には、本発明の被覆油粒子をスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察することによっても確認することができる。
【0041】
その他、水難溶性無機カルシウム塩として、酸やアルカリで溶解する水難溶性無機カルシウム塩を用いた場合には、その水難溶性無機カルシウム塩を酸やアルカリで溶解させれば、油分が浮き出てくるので、それを観察することによっても確認することができる。
【0042】
本発明の被覆油粒子水分散液の特徴は、そのpHが6.0〜8.0の範囲内に調整されていることにある。このpH値は、前述のようにして得られた被覆油粒子水分散液を、pHメーター(例えば、横河電機(株)製、PH82型)にて測定するという簡易な方法にて求めることができる。
【0043】
前記乳化工程にて調製する油粒子の平均粒径は、好ましくは10nm〜5μmであり、更に好ましくは50nm〜1μmである。油粒子の平均粒径が10nm未満であると、被覆油粒子とした場合の油分内包量が実用の範囲を逸脱した量に低下するので好ましくない。また、逆に油粒子の平均粒径が5μmを超えると、被覆油粒子の安定性が低下するので好ましくない。
【0044】
本発明において油粒子の被覆層を形成する水難溶性無機カルシウム塩微粒子の平均粒径は、油分に界面活性剤が含まれる場合では、好ましくは1nm〜1μmであり、更に好ましくは5nm〜500nmであり、特に好ましくは10nm〜200nmである。また、油分に界面活性剤が含まれない場合では、水難溶性無機カルシウム塩微粒子の平均粒径は、好ましくは1nm〜100nmであり、更に好ましくは5nm〜80nmであり、特に好ましくは10nm〜50nmである。水難溶性無機カルシウム塩微粒子の平均粒径が、前記下限値未満となると、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が溶解する量が多くなるので、好ましくない。逆に前記上限値を超えると、油粒子の被覆効率が低下し、被覆油粒子の安定性が低下するので、好ましくない。
【0045】
本発明の被覆油粒子水分散液のpHは好ましくは6.0〜8.0であり、更に好ましくは6.5〜7.5である。被覆油粒子水分散液のpHが6.0未満であると、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が溶解しやすく、被覆油粒子の安定性が低下する。逆に、水難溶性無機カルシウム塩微粒子のpHが8.0を超えると、油分中のフェノール性化合物が被覆油粒子から溶出しやすく、被覆油粒子の安定性が低下する。
【0046】
本発明の被覆油粒子水分散液中の被覆油粒子の平均粒径は、好ましくは10nm〜5μmであり、更に好ましくは50nm〜1μmである。被覆油粒子の平均粒径が10nm未満であると、被覆油粒子の被覆厚が小さすぎるため内包油分が漏れやすい。逆に被覆油粒子の平均粒径が5μmを超えると、被覆油粒子が外圧で壊れやすくなり、さらには生体内等の微小部分への浸透性や、その投与部分における滞留性が低下する。
【0047】
前記被覆油粒子の平均被覆厚(水難溶性無機カルシウム塩微粒子による被覆層の厚み)は、内包油分を保持できる厚さであれば特に限定されないが、好ましくは10nm〜2μmであり、更に好ましくは20nm〜1μmであり、特に好ましくは50nm〜500nmである。この平均被覆厚が10nm未満になると、被覆油粒子が壊れやすくなり、2μmを超えると、必然的に油分内包量が低下する。
【0048】
本発明の被覆油粒子水分散液中の被覆油粒子における水難溶性無機カルシウム塩の微粒子と油分との重量比は、好ましくは10/10〜100/10であり、更に好ましくは30/10〜90/10であり、特に好ましくは50/10〜80/10である。この重量比が10/10未満であると、被覆厚が小さくなり、被覆油粒子が壊れやすくなる。逆に、この重量比が100/10を超えると、得られる被覆油粒子の中には上記油粒子を内包しないものも存在する場合が生じ、被覆の均一性に欠けるおそれがあり、さらに、非被覆油粒子同士が凝集して粗大な粒子が形成されてしまうというおそれもある。
【0049】
本発明の被覆油粒子水分散液における油分と水分との重量比は、好ましくは1/1000〜7/10であり、更に好ましくは1/200〜1/2であり、特に好ましくは1/100〜3/10である。この重量比が1/1000未満となると、水難溶性無機カルシウム塩微粒子をpH調整した分散液と混合した際、被覆油粒子が形成される速度が遅くなり、水難溶性無機カルシウム塩微粒子が単独で凝集し、油分を被覆する被覆油粒子の存在率が下がってしまう。逆に、この重量比が7/10を超えると、製造過程において粘度が著しく上昇し、後述する水難溶性無機カルシウム塩微粒子をpH調整した分散液と混合した際に無機微粒子による均一被覆が困難になったり、凝集固化が起こったりする。
【0050】
上記水難溶性無機カルシウム塩微粒子の水分散液中の水難溶性無機カルシウム塩微粒子の質量%は、好ましくは0.1〜50質量%であり、更に好ましくは0.5〜30質量%であり、特に好ましくは1〜10質量%である。この水難溶性無機カルシウム塩微粒子の水分散液全量に対する質量%が0.1質量%未満となると、水難溶性無機カルシウム塩微粒子の濃度が小さいため、油粒子の被覆効率が低下する。逆に、この水難溶性無機カルシウム塩微粒子の水分散液全量に対する質量%が50質量%を超えると、無機微粒子水分散液の粘度が上昇し、凝集固化が起こるおそれがあり、さらには製造効率の低下につながる。
【0051】
本発明の被覆油粒子水分散液においては、油分を分散させるために界面活性剤を含むことができる。すなわち、本発明の被覆油粒子水分散液中の被覆油粒子の油分は、好ましくは界面活性剤を含有する。この場合、界面活性剤は、好ましくは油粒子の表面に存在する。そして、使用する界面活性剤としては、好ましくはアニオン性界面活性剤もしくはカルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤である。
【0052】
前述のように油分に界面活性剤を含ませることで、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の油粒子表面への吸着性、付着力が増し、界面活性剤を含有しない場合と比較して、さらに多くの油分を安定に内包した被覆油粒子を得ることができる。
【0053】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸塩やアルカンのスルホン酸塩を使用することができる。この高級アルコール硫酸塩としては、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸カリウム、パルミチル硫酸ナトリウム、パルミチル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸カリウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸カリウムなど。アルカンのスルホン酸塩として、ドデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸カリウム、テトラデカンスルホン酸ナトリウム、テトラデカンスルホン酸カリウム、ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデカンスルホン酸カリウム、オクタデカンスルホン酸ナトリウム、オクタデカンスルホン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0054】
上記カルシウム粒子分散能の高いノニオン界面活性剤としては、特願2005−325312に記載されるカルシウム粒子分散性の高いノニオン性界面活性剤を使用することができる。具体的には、ショ糖ステアリン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルS−1570、S−1670)、ショ糖パルミチン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルP−1570、P−1670)、ショ糖ミリスチン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルM−1695)、ショ糖オレイン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルO−1570)、ショ糖ラウリン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルL−1695)、モノミリスチン酸デカグリセリル(例えば、日光ケミカルズ製Decaglyn 1−M)、モノステアリン酸デカグリセリル(例えば、日光ケミカルズ製Decaglyn 1−S)、モノイソステアリン酸デカグリセリル(例えば、日光ケミカルズ製Decaglyn 1−IS)、ポリオキシエチレン(15)ラウリルエーテル(例えば、日本エマルジョン製EMALEX715)などを挙げることができる。
【0055】
その他の界面活性剤として、高分子化合物であっても、上記水難溶性無機カルシウム塩や上記油分と反応しない化合物であれば用いることが可能である。
【0056】
前記界面活性剤の油分に対する質量%は、好ましくは100質量%以下であり、更に好ましくは1〜70質量%であり、特に好ましくは5〜50質量%である。この界面活性剤の油分に対する添加量の下限値は、添加効果が得られない範囲を除外する値であるが、油粒子自体の物性によって若干の差が生じる。この界面活性剤の油分に対する質量%が100質量%を超えると、界面活性剤が一部ミセルを形成し、このミセルの周りを水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が被覆する可能性が高くなり、油分を内包する被覆油粒子の存在率が下がってしまう。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。以下に説明する実施例は、本発明を好適に説明する例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。
【0058】
(実施例1)
200mLビーカー内で、純水67.2gに、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(純正化学(株)製)1.4gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるトリクロサン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.4gを大豆油(商品名:大豆油YM/日清オイリオグループ(株)製)1.0gに溶解させた混合物を添加し、ホモジナイザー(TKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて撹拌(10000rpm,5分)して、O/W乳化物を調製した。
【0059】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.9g添加し、pHを7.0に調整した。
【0060】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.5であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表1に示す。
【0061】
(実施例2)
200mLビーカー内で、純水67.2gに、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(純正化学(株)製)1.4gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるトリクロサン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)1.4gを分散させ、65℃に加温した後、撹拌子(2cm長)で300rpmで30分撹拌し、O/W乳化物を調製した。
【0062】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて60〜65℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.9g添加し、pHを6.9に調整した。
【0063】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンを炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.9であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表1に示す。
【0064】
(実施例3)
200mLビーカー内で、純水48gに、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(純正化学(株)製)1gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるトリクロサン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)1gを分散させ、65℃に加温した後、撹拌子(2cm長)で300rpmで30分撹拌し、O/W乳化物を調製した。
【0065】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて60〜65℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.9g添加し、pHを6.9に調整した。
【0066】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンを炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.6であった。この被覆油粒子の物性を表1に示す。
【0067】
(実施例4)
200mLビーカー内で、純水67.2gに、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(純正化学(株)製)1.4gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるイソプロピルメチルフェノール(IPMP)(大阪化成(株)製)0.4gを大豆油(商品名:大豆油YM/日清オイリオグループ(株)製)1.0gに溶解させた混合物を添加してホモジナイザー(TKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて撹拌(10000rpm、5分)し、O/W乳化物を調製した。
【0068】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.9g添加し、pHを6.8に調整した。
【0069】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、IPMPと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.4であった。この被覆油粒子の物性を表1に示す。
【0070】
(実施例5)
200mLビーカー内で、純水67.2gに、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(純正化学(株)製)1.4gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるチモール(東京化成工業(株)製)0.4gを大豆油(商品名:大豆油YM/日清オイリオグループ(株)製)1.0gに溶解させた混合物を添加してホモジナイザー(TKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて撹拌(10000rpm,5分)し、O/W乳化物を調製した。
【0071】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.9g添加し、pHを7.0に調整した。
【0072】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、チモールと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.5であった。この被覆油粒子の物性を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
200mLビーカー内で、純水67.2gに、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(純正化学(株)製)1.4gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるチモール(東京化成工業(株)製)1.4gを分散させ、65℃に加温した後、撹拌子(2cm長)で300rpmで30分撹拌し、O/W乳化物を調製した。
【0074】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて60〜65℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.9g添加し、pHを6.9に調整した。
【0075】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、チモールを炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.5であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表1に示す。
【0076】
(実施例7)
実施例1におけるpH調整工程を次のようにした。すなわち、粉砕10分時点で原液タンク内に2N硫酸(純正化学(株)製)を1.9g添加し、pHを7.0に調整し、粉砕25分時点で同様に原液タンク内に2N硫酸(純正化学(株)製)を0.9g添加し、pHを6.9に調整した。その他は実施例1と同様の操作を行い、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.3であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0077】
(実施例8)
実施例1におけるpH調整工程を次のようにした。すなわち、粉砕10分時点で原液タンク内にリン酸(純正化学(株)製)を1.6g添加し、pHを7.0に調整し、粉砕25分時点で同様に原液タンク内にリン酸(純正化学(株)製)を0.8g添加し、pHを7.0に調整した。その他は実施例1と同様の操作を行い、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.3であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0078】
(実施例9)
実施例1におけるpH調整工程を次のようにした。すなわち、粉砕10分時点で原液タンク内にクエン酸一水和物(関東化学(株)製)の40質量%水溶液を3.1g添加し、pHを7.0に調整し、粉砕25分時点で同様に原液タンク内にクエン酸一水和物(関東化学(株)製)の40質量%水溶液を1.4g添加し、pHを7.1に調整した。その他は実施例1と同様の操作を行い、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.4であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0079】
(実施例10)
200mLビーカー内で、純水67.2gに、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤としてリョートーシュガーエステルS−1670(三菱化学フーズ製)1.4gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるトリクロサン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.4gを大豆油(商品名:大豆油YM/日清オイリオグループ(株)製)1.0gに溶解させた混合物を添加してホモジナイザー(TKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて撹拌(10000rpm,5分)し、O/W乳化物を調製した。
【0080】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.9g添加し、pHを7.0に調整した。
【0081】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは7.3であった。この被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0082】
(比較例1)
200mLビーカー内で、純水54gに、アニオン性界面活性剤としてオレイン酸ナトリウム(純正化学(株)製)0.4gを溶解させ、ここに油分としてフェノール性化合物であるトリクロサン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.8gを大豆油(商品名:大豆油YM/日清オイリオグループ(株)製)2.0gに溶解させた混合物を添加してホモジナイザー(TKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて撹拌(10000rpm,5分)し、O/W乳化物を調製した。
【0083】
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)14gを純水686gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。
【0084】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、上記O/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは9.9であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0085】
(比較例2)
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて60〜65℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。
【0086】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、実施例2に示すO/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンを炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは9.8であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0087】
(比較例3)
炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕10分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を2.0g添加し、pHを7.0に調整した。さらに、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を12.5g添加し、pHを5.0に調整した。
【0088】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、実施例1に示すO/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは5.7であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0089】
(比較例4)
炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)7gを純水343gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕を行なった(ミル回転数4350rpm)。この間、粉砕25分時点で、原液タンク内に2N塩酸(関東化学(株)製)を0.73g添加し、pHを8.6に調整した。
【0090】
得られた炭酸カルシウム微粒子分散液が存在するミル原料タンク内に、実施例1に示すO/W乳化物を混合して更にビーズミル内で30分間粉砕し、トリクロサンと大豆油の混合物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子の水分散液を得た。この水分散液のpHは8.3であった。この水分散液中の被覆油粒子の物性を表2に示す。
【0091】
以上の操作で得られた被覆油粒子の水分散液の各物性の評価は以下に示す方法で行なった。
【0092】
(評価方法)
(a)無機粒子平均粒径
水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の平均粒径は、上記水難溶性無機カルシウム塩の粉砕条件に対し、水難溶性無機カルシウム塩とともに分散剤としてクエン酸三ナトリウム(純正化学(株)製)を水難溶性無機カルシウム塩の重量に対して3倍量添加して粉砕を行い、得られた水難溶性無機カルシウム塩微粒子の水分散液を、動的光散乱式マイクロトラックUPA−150(日機装(株)製)で測定し、無機粒子平均粒径を求めた。
【0093】
(b)平均被覆厚
被覆油粒子の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子による平均被覆厚は、被覆油粒子水分散液に2%四酸化オスミウム水溶液を添加した後、水分をエタノール、プロピレンオキサイド・エポキシ樹脂で順に置換し、ウルトラミクロトームを用いてスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)観察し、10個の被覆油粒子それぞれの被覆層を8ヶ所測定し、算術平均により算出した。
【0094】
(c)被覆油粒子平均粒径
被覆油粒子平均粒径は、上記(b)と同様に被覆油粒子(乳化物)を透過型電子顕微鏡(TEM)観察し、10個の被覆油粒子それぞれの粒径を測定し、算術平均により算出した。
【0095】
(d)被覆油粒子の形成状況
被覆油粒子の形成状況は、得られたサンプルを透過型電子顕微鏡で観察すること、または分散液に油分が浮上分離していないことを観察することにより評価した。
【0096】
(e)乳化粒子の安定性
得られたサンプルを過酷な条件である50℃で1ヶ月間静置し、油分の分離状況を観察することにより乳化粒子の安定性を評価した。表中の評価「○」、「△」、「×」の意味は以下のとおりである。
○:1ヶ月後でも油分の分離は起こらない。
△:1週間後では油分の分離は起こらないが、1ヶ月後には油分の分離が見られた。
×:1週間以内に油分の分離が生じた。
【0097】
(f)油分溶出率(比較例2の定量)
1H−NMRを用いて定量した。得られた被覆油粒子の水分散液約80g(秤量する)を遠心分離装置05PR−22((株)日立製作所製)を用いて3000rpmで10分間遠心分離し、デカンテーションにより沈降物と上清に分けた。沈降物は一晩凍結乾燥し、白色粉末を得た(秤量する)。遠心分離を行うのに使用した被覆油粒子の水分散液の量から、上記白色粉末の量を差し引いた量を上清の量とした。
【0098】
この粉末約20mg(秤量する)と内部標準1,1,2,2−テトラクロロエタン約4mg(秤量する)とをNMRチューブに入れ、重メタノール約0.4mLを溶媒として添加した。更に35質量%塩化重水素酸を3滴添加し、炭酸カルシウム膜を完全に溶解させて油分を抽出した。6.5ppmのピークが1,1,2,2−テトラクロロエタンであり、この積分値を2とし、トリクロサンの7.5ppmのピーク面積を求めた。この値から粉末中のトリクロサンの含有量を算出した。IPMP、チモール、大豆油の量は、上記NMR測定において、溶媒を重クロロホルムとして測定した。6.0ppmのピークが1,1,2,2−テトラクロロエタンであり、同様にIPMP(2.3ppm)、チモール(2.3ppm)、大豆油(4.1〜4.3ppm)のピーク面積を求め、粉末中の含有量を求めた(比較例2では、粉末18.1mgと内標4.3mgで、トリクロサン面積は0.1972→粉末に対して8.1質量%)。
【0099】
一方、上記上清約250mg(秤量する)と内部標準1,1,2,2−テトラクロロエタン約4mg(秤量する)とをNMRチューブに入れ、重メタノール約0.4mLを溶媒として添加した。更に35質量%塩化重水素酸を3滴添加した。6.5ppmのピークが1,1,2,2−テトラクロロエタンであり、この積分値を2とし、トリクロサンの7.5ppmのピーク面積を求めた。この値から上清中のトリクロサンの含有量を算出した。IPMP、チモール、大豆油の量は、上記NMR測定において、溶媒を重クロロホルムとして測定した。6.0ppmのピークが1,1,2,2−テトラクロロエタンであり、同様にIPMP(2.3ppm)、チモール(2.3ppm)、大豆油(4.1〜4.3ppm)のピーク面積を求め、上清中の含有量を算出した(比較例2では、上清256.9mgと内標4.6mgで、トリクロサン面積は0.0417→上清に対して0.129質量%)。比較例1、比較例4についても同様の方法で測定した。
【0100】
以上から、粉末、上清それぞれの重量と、粉末、上清それぞれに含まれる油分の濃度が算出されたので、これらから粉末、上清それぞれに含まれる油分の量、また比率を計算し、上清に含まれている油分の比率を油分溶出率とした。
【0101】
(g)油分溶出防止性
上記(f)油分溶出率から、油分溶出防止性を評価した。表中の評価「○」、「△」、「×」の意味は以下のとおりである。
○:油分に含まれる全ての成分の油分溶出率が0%であり、油分は安定に被覆油粒子内に保持されている。
△:油分に含まれるいずれかの成分の油分溶出率が0〜20%であり、油分に含まれるいずれかの成分が一部被覆油粒子内から水中へ溶出している。
×:油分に含まれるいずれかの成分の油分溶出率が20%を超えており、油分に含まれるいずれかの成分が一部被覆油粒子内から水中へ溶出している。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
表1および表2の結果から、実施例1〜10については、フェノール性化合物を含む油分を含む油粒子を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した安定な被覆油粒子が得られ、かつ油分に含まれる全ての成分の油分溶出率が0%であり、油分は50℃というより過酷な条件下でも安定に被覆油粒子内に保持されていることが確認された。
【0105】
一方、表2の結果から、比較例1、2については、pH調整を行わず、得られた被覆油粒子の水分散液のpHが9.8〜9.9と、本発明に示す6.0〜8.0の範囲よりも高いため、フェノール性化合物であるトリクロサンのみが溶出していることが分かった(大豆油は漏れなし)。
【0106】
また、比較例3については、pH調整を行っているが、塩酸の添加量が多く、本発明に示す6.0〜8.0の範囲よりも低いため、炭酸カルシウムの水への溶解量が多くなり、本発明の水分散液中の被覆油粒子を形成する炭酸カルシウムの微粒子の量が少なくなり、被覆油粒子の安定性が低下し、油分の分離が生じてしまうことが分かった。
【0107】
また、比較例4については、pH調整を行っているが、塩酸の添加量が少なく、得られた被覆油粒子の水分散液のpHが8.3と、本発明に示す6.0〜8.0の範囲よりも高いため、フェノール性化合物であるトリクロサンのみが溶出していることが分かった。
【0108】
以上から、本発明の被覆油粒子水分散液中の被覆油粒子は、1または2以上の成分からなるフェノール性化合物を含む油分を平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した平均粒径5μm以下で、pHが6.0〜8.0の範囲にある安定な被覆油粒子であることが分かった。
【0109】
以上のように、本発明にかかる被覆油粒子水分散液中の被覆油粒子は、油分として薬効成分、化粧成分、殺菌成分、食用油、香料、色素、その他農薬、殺虫成分、抗菌、抗カビ成分等を安定に水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した被覆油粒子であるため、医薬品、食品、化粧品、歯磨きや洗口剤などの口腔用製品などへの用途に用いるのに好適である。
【0110】
また、本発明の水分散液中の被覆油粒子は、特定条件下における被覆粒子の溶解等により、内包油分を放出する機能を持つ素材、または徐放性製剤として、パーソナルケア製品やドラッグデリバリーシステムにおける薬物キャリアへの応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】油粒子を水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した被覆油粒子の模式図である。
【図2】本発明の被覆油粒子水分散液の製造工程における各成分の状態を模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0112】
1 水難溶性無機カルシウム塩の微粒子凝集体
1a 水難溶性無機カルシウム塩の微粒子
2 油分
2a 油粒子
3 被覆油粒子
4 水
5 乳化物
6 無機微粒子水分散液
7 被覆油粒子水分散液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油粒子の表面に水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる被覆油粒子が水に分散されてなる被覆油粒子水分散液であって、
前記水難溶性無機カルシウム塩微粒子の平均粒径が1μm以下、前記被覆油粒子の平均粒径が5μm以下であり、かつ、pHが6.0〜8.0であることを特徴とする被覆油粒子水分散液。
【請求項2】
前記油粒子がフェノール性化合物またはフェノール性化合物を含有する油分を含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆油粒子水分散液。
【請求項3】
油分を水分中に分散して油粒子分散液を得る乳化工程と、
水難溶性無機カルシウム塩の微粒子凝集体を水に分散させた後、前記微粒子凝集体を平均粒径1μm以下の微粒子に粉砕し、さらにこの分散液のpHを6.0〜8.0の範囲に調整することにより、無機微粒子水分散液を得る無機微粒子水分散液調製工程と、
前記油粒子分散液と前記無機微粒子水分散液とを混合することにより、油粒子の表面に水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる被覆油粒子が水に分散されてなるpHが6.0〜8.0の被覆油粒子水分散液を得る被覆油粒子水分散液調製工程と、
を含むことを特徴とする被覆油粒子水分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−152252(P2007−152252A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352457(P2005−352457)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】