説明

被覆(coating)を使用した生分解性移植片の分解制御

本発明は、生体内での分解が制御可能な、少なくとも大部分が生分解性の血管内移植片に関する。これを達成するために、移植片は、端面が開口しており、少なくとも1つの生分解性材料からなる筒状の本体を有し、前記本体が生体内で部位依存型の第1の分解特性D(x)を有し、それに加えて、前記本体を完全に又は部分的に覆い生分解性材料からなる被覆を含み、前記被覆が生体内で部位依存型の第2の分解特性D(x)を有する。本発明によれば、1つの部位(x)での部位依存型の累積的な分解特性D(x)は前記部位(x)での各分解特性D(x)及びD(x)の合計から構成され、部位依存型の累積的な分解特性D(x)は、移植片の所与の部位(x)での分解が予め規定可能な時間内にわたって予め規定可能な速度で起こるように第2の分解特性D(x)を変化させることによって予め規定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内での分解が制御可能な、少なくとも大部分が生分解性の血管内移植片に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療技術において血管疾患の有望な治療法の1つとして、血管内支持システムの移植が確立されてきた。したがって、例えば冠動脈の心疾患を有する安定性の狭心症におけるインターベンション治療(intervention treatment)では、ステントの挿入によって再狭窄の発生率が大幅に抑えられ、したがって長期的な結果の改善がみられた。ステント移植を行う主な理由は主要な管腔を高度に増大させることである。ステントを使用することによって、主に治療の成功に必要な最適な血管断面を得ることができるが、この種の異物が永久的に存在すると微生物学的な過程のカスケードを生じ、ステント全体に亘って徐々に増大する。したがって、この問題を解決するための1つの方法は、生分解性材料でステントを製造することである。
【0003】
この種の生分解性移植片(biodegraduble implants)を導入するために、医療技術者は多種多様な材料を利用することが可能である。数多くのポリマー(これは、より高い生体適合性を得るために、多くの場合天然由来であるか又は少なくとも天然化合物に基づく)に加えて、より最近では、その機械的特性が移植片にとってより適性が高いことから金属材料が好まれている。これに関して、マグネシウム、鉄、及びタングステンを含む材料が特に注目されている。生分解性移植片を実際に移植する際に達成するべき目的の1つは、生体内での移植片の分解特性である。即ち、治療目的に必要な期間にわたって移植片の機能が確実に維持されなければならない。それに加えて、フラグメントが非制御的な方法で放出されて予期しない合併症の開始点となることがないように、可能な限り均一な分解が移植片全体に生じるようにすべきである。既知の生分解性ステントは、局所に合った分解特性を示てない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、関連技術から前進して、分解が部位の関数として最適化された生分解性移植片を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は請求項1に記載された特徴を有する血管内移植片によって達成される。ステント全体の分解特性を所望の方法で局所的に最適化することができる理由は次の通りである。
−移植片は、前面が開口しており、少なくとも1つの生分解性材料から形成された筒状の本体を有し、この本体が生体内で部位依存型の第1の分解特性D(x)を有する。
−移植片は、少なくとも1つの生分解性材料で形成された、本体を完全に又は場合によっては部分的にのみ覆う被覆を有し、この被覆が生体内で部位依存型の第2の分解特性D(x)を有する。
−部位依存型の累積的な分解特性D(x)が、部位(x)での特定の分解特性D(x)及びD(x)の合計によって当該部位(x)で生じ、部位依存型の累積的な分解特性D(x)を、第2の分解特性D(x)の変化によって、移植片の当該部位(x)の分解が、予め定めた分解曲線を有する予め定めた時間間隔で起こるように予め規定する。
【0006】
したがって本発明は、部位での分解特性によって予め定めた時間間隔で予め定めた分解曲線で移植片の分解が起こるように、適切な被覆によって、又は極端な例では被覆を省いて、移植片本体の分解を調整することができるという概念を含む。
【0007】
「生分解」は、移植片の少なくとも大部分が徐々に溶解されることになる、生体での代謝によって起こる加水分解、酵素、及び他の分解過程を含むと理解される。生物腐食(biocorrosion)という用語がしばしば同義語として使用される。生物再吸収(bioresorption)という用語は、分解産物のその後の再吸収をさらに含む。
【0008】
本体に適切な材料は、例えばポリマー又は金属性質のものとすることができる。本体はまた、複数の材料から作製することもできる。これらの材料の共通の特徴は生分解性である。適切なポリマー化合物の例は主に、セルロース、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、ポリサッカリド(PSAC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−L−乳酸(PLLA)、ポリグリコール(PGA)、ポリ−D、L−乳酸−コグリコリド(PDLLA/PGA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリアルキルカーボネート、ポリオルソエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリマロン酸(PML)、ポリアンヒドリド、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸及びそれらのコポリマー、並びにヒアルロン酸を含む群からのポリマーである。被覆系の所望の特性に応じて、ポリマーを純粋な形態で、誘導体の形態で、混合物の形態で、又はコポリマーとして提供することができる。
【0009】
金属の生分解性材料は、マグネシウム、鉄、又はタングステンの合金をもとにしている。生分解性マグネシウム合金は特に極めて好ましい分解挙動を示し、十分に処理することができ、毒性をまったく又はほんのわずかしか示さず、むしろ治癒過程を積極的に促進するようである。
【0010】
ステントの本体は、一般に特定の様式で据え付けられる複数の支持要素から組み立てられる。その適用に応じて(例えば膨張のためであるか、又は周辺組織の閉塞によるものであるかによって)支持要素に様々な機械的な力が負荷される。特に生分解性材料を使用すると、これにより応力のかかる又は少なくとも一時的に高い機械的ひずみを受ける支持要素の領域が、より低い応力がかかる領域よりも速く分解することになる。本発明は特に、この現象を低減することを可能とする。
【0011】
被覆もまた、上述の生分解性材料から作製することができる。もちろん、例えば異なる部位に、又は移植片の特定の部位での多層系として複数の異なる材料を移植片に使用することもできる。
【0012】
本発明で定義される「部位依存型の分解特性」は、経時的な曲線(分解曲線)及びこの分解が起こる時間間隔(the time interval)を意味すると理解される。簡略化のために、移植の実施時間自体を時間間隔の第1の基準点として使用する。もちろん、他の時間点を使用することもできる。本発明で定義される時間間隔の終点は、生分解性移植片の質量の少なくとも80重量パーセントが分解された時間、又は移植片の機械的一体性がもはや存在しない、すなわち移植片がその支持機能をもはや発揮しなくなった時間であると理解される。分解曲線は、時間間隔内における特定の時間に分解が起こる速度を示す。したがって、例えば本発明による適切な変更(modifications)によって、移植片の分解を適切な被覆によって移植後最初の2週間で大きく遅らせ、被覆の分解後本体のより迅速な分解によって継続的に分解を進行させるのみとすることができる。したがって、分解プロセスを適切に進めることができるようにするためには、移植片の特定の部位での本体の分解特性を知り、それに加えて、第2の分解特性を有する被覆を塗布することによって、この部位での移植片の全体的な分解挙動に影響をおよぼす必要がある。本体及び被覆の分解挙動は、試験管内実験を助けとして事前に推定することができる。
【0013】
被覆の分解特性は、好ましくは、
−形状的構造を変化させる
−材料を材料変更する、及び/又は
−被覆の層の厚さを適合させる
ことによって達成される。
【0014】
被覆の層の厚さを適合させることによって、移植片の部位依存型の分解特性に影響をおよぼすことができる。特定の部位での分解を時間的に及びその範囲に関して制御することもまた本発明の意図するところである。したがって、医学的な見地から、移植片の支持機能を、特定の期間にわたって、及び可能であれば部位の関数として維持することが必要である。層の厚さを大きくすることによって、特定部位の移植片の分解を遅延させることができる。
【0015】
本発明で定義される「形態的構造(Morphological structures)」は、被覆を形成する化合物、特にポリマーのコンフォメーション及び凝集(aggregation)であると理解される。これは、分子配列構造(molecular order structure)のタイプ、多孔性(porosity)、表面組成、及び被覆のもとになる生分解性材料の分解挙動に影響する担体の他の固有の特性を含む。分子配列構造は、非結晶、(部分)結晶、又は中間状態のポリマー相を含み、使用される特定の生成方法、被覆方法、及び環境状態の関数として影響を受ける及び/又は生成される。製造及び被覆方法の目的とする変形によって、被覆の多孔性及び表面組成に影響をおよぼすことができる。一般に、被覆の多孔性が増加すると分解はより速く起こる。非結晶構造は、(部分)結晶構造と類似の効果を示す。
【0016】
本発明で定義される「材料変更(Material modification)」は、生分解性材料、特にポリマーを誘導化すること、及び分解特性に影響を与えるために充填材及び添加剤を追加することの両方を含むと理解される。例えば、誘導化はこれらの材料における架橋又は置換反応機能などの方法を含む。即ち、例えば架橋度を増加することによって、ヒアルロン酸などのポリマー材料がよりゆっくりと分解することはよく知られている。これらの方法は、分解特性の生体内挙動について評可可能とするために、まず確立された試験管内アッセイで定量的に検査しなければならない。
【0017】
移植片の部位依存型の分解特性は好ましくは、適用において予想される病理生理学的及び/又は流体力学的なコンディションの関数として予め規定される。病理生理学的な側面によれば、ステントは一般に本質的に病変部を圧迫するように血管内に配設される、すなわち隣接する組織はステントの端部と中心部では異なる組成を有しており、そのため、治癒過程を最適化するには移植片の支持機能は異なる期間にわたって維持される必要がある、という事実が考慮される。さらに、移植片に対して作用する組織抵抗は病理生理学的な変化のせいで同一ではなく、より抵抗の強い部位で生じる機械的応力によって分解が加速される。
【0018】
また流体力学的な側面によれば、特にステントの端部領域と中央部では流動条件が異なることが考慮される。したがって、ステントの端部ではより流れが強いので、移植片の分解が加速されることがある。流体力学的パラメータは、ステント設計を予め規定することによって特に大きく変化させることができ、個々のケースにおいて決定する必要がある。2つの当該パラメータを考慮することによって、所望の治療に最適な分解をステントの全寸法にわたって確実に行うことができる。
【0019】
本発明を、例示的な実施形態に基づいて及び関連する図面において、以下でより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、端部12.1、12.2で開口する筒状の本体14を有するステント10の非常に概略的な斜視図である。長手方向軸Lの周りに径方向に延びる本体14の周壁16は、特定の様式で据え付けられた複数の支持要素から組み立てられている、軸方向に互いに隣り合って位置するセグメント(segments)を含む。個々のセグメントは連結部(connection webs)を介して互いに連結されており、組み立てられると本体14になる。本発明を図示する目的では必要でなく、さらに被覆を特定の形状要因及び各ステント設計で付与される他のパラメータに個別に適合させる必要があるので、図1では特定のステント設計を図示することは意図的に省かれている。多種多様に実施される移植におけるステント設計は、関連分野では様々な形で知られており、ここでは詳述しない。現在のすべてのステント10は、周りを囲む周壁16を含む、何らかの方法で設計された筒状の主フレーム14を有することにのみ留意されたい。したがって、以下では、周壁16の外套面(outer mantle surface)18は、複数存在する支持要素によって形成される可能性のある、これらの支持要素の外周面(outer peripheral surface)と同じに扱われている。
【0021】
例えば、ステント10は、生分解性マグネシウム合金特にWE43から成形することができる。体内でのステント10の膨張の際における非拡張状態から拡張状態に移行する結果として、個別の支持要素は特に結合点で様々な機械的ひずみを受ける。このことにより、例えばマイクロクラッキングのせいで金属構造が変化することがある。一般に、特に高い機械的応力が発生する点では特に速い分解が起こる。さらに、与えられたステント設計に応じて個々の支持要素の寸法は様々となる。主フレームにおいて、より大きい外周を有する支持要素が対応する線条細工構造のものよりもよりゆっくりと分解されることは明らかである。したがって、移植片の分解挙動を満足なものとするための目標は、様々な分解特性によるある種の破片を防ぐことである。本体の部位依存型の分解特性は、D(x)として後段に簡単に記載されている。
【0022】
図1のステント10は、周壁16の外套面18の複数のセクション20.1、20.2、22.1、22.2、24が分解特性D(x)において大きく異なる生分解性材料で成形されている被覆26を、非常に概略的に図示するものである。被覆26に適切な材料の例として、ヒアルロン酸をもとにしたポリマーがここでは特定されている。ヒアルロン酸は、好ましい分解挙動を示すだけでなく、処理を特に簡単に行うこともでき、それに加えて好ましい生理学的効果もある。分解特性D(x)は、例えば、グルタルアルデヒドによる反応によって特定の架橋度に予め規定しておくことで影響を与えることができる。架橋度がより高いほど、ヒアルロン酸の分解はより遅くなる。
【0023】
ステントに被覆を適用するために、回転霧化法、浸漬法、及び噴霧法など、数多くの方法が開発されてきた。被覆は、支持構造を形成するステントの壁及び/又は個々のストラットを少なくとも部分的に覆う。
【0024】
分解特性D(x)は、個々のセクション20.1、20.1、20.2、22.1、22.2、24で異なる。したがって、詳細は後述するが、ステント10の端部12.1、12.2のセクション20.1及び20.2は、加速された分解特性D2(x)を示し、一方対照的に、より中央側に位置するセクション22.1、22.2、24はよりゆっくりと分解する。したがって、このことにより、本体の分解特性D(x)が同じであればステント10の端部ではより速い分解が起こることになる。ステント10が適正に適用されるとき、治療しようとする病変部は22.1、22.2、及び24に関連して中心部に位置させられるので、これは望ましいことである(adrisable)。かくして、分解特性D(x)及びD(x)を合わせると移植片の累積的な部位依存型の分解特性となる。
【0025】
図2a、2b、3a、3b、4、及び5は、ステント10の長手方向の軸Lに沿った断面を非常に概略化した形態で示し、各例において、本例を生じる周壁16を通る2つの断面のうち1つを示す。まず、被覆を実施する際の基本原理について説明する。
【0026】
特定の部位(x)における被覆の分解特性D(x)は本質的に次のような因子の関数である:
−被覆の層厚
−被覆の形態的構造
−被覆の材料変更。
被覆の層厚が増加すると分解時間が長くなる。生体内でのその後の行動を予測する理論的及び実際のモデリングシステムが明らかにされた。
【0027】
最後に、局所的分解特性D(x)は形態的構造及び被覆の材料変更の関数である。したがって、具体的には被覆の多孔性を変化させることができ、多孔性が増加すると分解が加速する。材料変更については、例えば、酵素分解を遅延させる添加剤を担体と混合することができる。ポリサッカリドをベースにした被覆では架橋度を上げることによっても分解を遅延させることができる。
【0028】
要約すると、本体の分解特性D(x)が既知である場合、被覆26の分解特性D(x)を適切に予め規定することによって、累積的な分解特性D(x)を予め規定可能であることに留意されたい。
【0029】
ステントの被覆の個々のセクションはまた、適用において期待される病理生理学的及び流体力学的条件の関数に適合させることができる。
【0030】
病理生理学的条件とは、本明細書ではステントを行う血管領域での疾患によって変化した組織構造であると理解される。一般にステントは病変部、すなわち冠動脈の適用では一般的にはステントのほぼ中央領域に繊維性のアテローム斑がくるように配設される。換言すると、隣接する組織構造がステントの長手方向で異なり、そのためある状況下は局所的に異なる治療も指示される。
【0031】
流体力学的条件は、ステントの実施後にステントの個々の長手方向断面を生じる流動条件であると理解される。ステントの端部ではステントの中央領域よりも、その周囲でより強い流れが生じることは、経験から明らかである。このことから、端部領域では担体の分解が増加することになる。
【0032】
分解が速すぎると治癒プロセスを支持できないことがある。分解が特定の部位(x)で起こる目標の時間間隔を予め規定することによって、そのような不適当な現象を避けることができる。
【0033】
特に、酵素分解又は加水分解プロセスに基づいて生体内で分解することのできる合成(synthetic nature)又は天然由来のすべてのポリマーマトリックスを、本発明によって、被覆の生分解性材料として使用することができる。特に、セルロース、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、ポリサッカリド(PSAC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−L−乳酸(PLLA)、ポリグリコール(PGA)、ポリ−D、L−乳酸−コグリコリド(PDLLA/PGA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリアルキルカーボネート、ポリオルソエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリマロン酸(PML)、ポリアンヒドリド、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸及びそのコポリマー、並びにヒアルロン酸を含む群からのポリマーをこの目的のために使用することができる。被覆系の所望の特性に応じて、ポリマーを純粋な形態で、誘導体の形態で、混合物の形態で、又はコポリマーとして使用することができる。
【0034】
所望であれば、特に経皮的冠動脈形成術の結果を治療するために使用される薬理学的に活性な物質を、被覆に混合することができる。
【0035】
図2aは、被覆26を外套面(outlet mantle surface)18に適用した周壁16の、非常に概略化し簡略化した断面図を示す。被覆26は2つの端部セクション28.1及び28.2、並びに中央部セクション30を含む。本発明のこの例では、均一な層厚で適用された生分解性材料により被覆26全体が形成されている。
【0036】
セクション28.1、28.2、30は、端部セクション28.1、28.2が中央部セクション30よりもよりゆっくりと分解する点において異なる。このような態様は、本発明の例示的な例において、ステント端部での流体力学的に関連する分解プロセスの加速を補償するために使用される。すなわち、図2aに概略的に図示されたステントは、ステントの全長にわたって可能な限り同様な分解挙動を示す。
【0037】
図2bは被覆26の第2の変形例を開示する。セクション28.1、28.2は図2aの断面に対応する。対照的に、セクション30は層厚が大幅に減少している。このことにより、セクション30はセクション28.1及び28.2よりもずっと速く分解する。移植片のこのような分解行為は、この部分で合併症となり得る開始点を可能な限り早く取り除くために、病変部での人口構造物の分解を可能な限り迅速に生じるようにする場合には、好ましいことがある。
【0038】
図3aは、異なる分解挙動を示す2つの異なる材料がステント10のセクション28.1、28.2、30に適用された、被覆システム26を示す。これは図3bに示されたシステムの変形においても同様である。
【0039】
図3aに示された実施形態によれば、セクション28.1、28.2は、セクション30に使用される材料に比べて遅延した分解挙動を示す材料で被覆されている。従って部位依存型の分解特性D(x)はそれによって影響される。すなわち、一般的に端部で遅くなる。そのような実施形態は通常、端部での支持構造がより長い時間にわたって維持されるべきである場合、及びそうしなければ流体力学的条件によって分解が加速されると予測される場合に望ましい。
【0040】
図3bはセクション28.1及び28.2において径方向に多層構造とした被覆26を示す。第1のセクション部32では遅延分解挙動を示す材料を適用し、一方もう1つのセクション部34はより迅速に分解可能な材料が径方向外側に配置されている。
【0041】
図2a、2b及び3a、3b、4、及び5の上述の例は、非常に概略化した本発明の例示的な実施形態を示したに過ぎない。これらは互いに多様に組み合わせることができる。したがって、例えば個々の断面に複数の材料を含む複合的な被覆を設計することが考えられる。主な目的は、本例では移植片の局所的な分解を常に最適化することである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】前面が開口しており、筒状の本体を有し、その外周壁が被覆システムで覆われているステントの図である。
【図2a】第1の変形による被覆を示すために、ステントの長手方向軸に沿った概略的な断面を示す図である。
【図2b】第1の変形による被覆を示すために、ステントの長手方向軸に沿った概略的な断面を示す図である。
【図3a】第2の変形による被覆を示すために、ステントの長手方向軸に沿った概略的な断面を示す図である。
【図3b】第2の変形による被覆を示すために、ステントの長手方向軸に沿った概略的な断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面が開口しており、少なくとも1つの生分解性材料からなり、本体が生体内で部位依存型の第1の分解特性D(x)を有する筒状の前記本体と、
前記本体を完全に又は場合によっては部分的にのみ覆い、少なくとも1つの生分解性材料から構成され、被覆が生体内で部位依存型の第2の分解特性D(x)を有する被覆とを含み、
ある部位(x)での部位依存型の累積的な分解特性D(x)が、前記部位(x)に存在する特定的な存在である分解特性D(x)及びD(x)の合計から生じ、前記部位依存型の累積的な分解特性D(x)が、移植片の前記部位(x)での分解が予め規定可能な分解曲線を有する予め規定可能な時間間隔で起こるように第2の分解特性D(x)を変化させることによって予め規定される、血管内移植片。
【請求項2】
前記被覆の前記分解特性D(x)が、
−形態的構造を変化させる
−材料を材料変更する、及び/又は
−被覆の層厚を適合させる
ことによって提供されることを特徴とする、請求項1に記載の移植片。
【請求項3】
前記被覆の前記分解特性D(x)が適用において予測される病理生理学的条件の関数として予め規定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移植片。
【請求項4】
前記被覆の前記分解特性D(x)が適用において予測される流体力学的条件の関数として予め規定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移植片。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2007−518473(P2007−518473A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545930(P2006−545930)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010077
【国際公開番号】WO2005/065576
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506218000)バイオトロニック ブイアイ パテント エージー (4)
【Fターム(参考)】