説明

被試験デバイスの高周波分析

より高い周波数で被試験デバイス(「DUT」)を分析する。位相シフターは、DUTに連結される伝送線上の定在波の位相を変化させる。定在波の大きさが、位相シフトのそれぞれにおいてサンプリングされ、DUTの1つ以上の特性が、サンプリングした大きさおよび位相シフトの関数として決定される。さらなる態様は、導波路の中に形成される複数の副共振スロットを有し、かつ信号に適用される位相シフトを制御するようにスロットを装荷するための能動素子を有する、導波路を備える、関連位相シフターを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被試験デバイスの高周波分析に関する。
【0002】
政府権益の陳述.
米国政府は、この発明における支払済ライセンスを有し、かつ限定的な状況において、米国空軍によって与えられた契約第FA8103−07−C−0193号の条件によって規定されるような妥当な条件で、特許所有者に対して、他者にライセンスを供与するように要求する権利を有する。
【背景技術】
【0003】
透過および反射ミリ波およびマイクロ波信号の測定は、被試験デバイスの特性を決定するために利用することができる。このような特性は、通常はベクトルネットワーク分析器によって測定され、複素(すなわち、大きさおよび位相)反射係数および透過係数を含む。被試験デバイスとしては、例えば、高周波回路構成要素、材料の特性決定または非破壊試験および評価を実施する装置、撮像システム、高周波送受信機、および測距システムなどが挙げられる。現在、高周波数の透過および/または反射信号の測定値を得るには、高価なベクトルネットワーク分析器が必要であり、このベクトルネットワーク分析器は、測定する周波数を隔離または決定するために、位相固定入力源およびヘテロダイン検出プロセスを採用している。現在のベクトルネットワーク分析器は、極端に高価であることに加えて、ハンドヘルド式、カスタマイズ型、および/または特殊用途の測定モジュールが必要とされる用途では、大きすぎると考えられる。
【0004】
被試験デバイス(「DUT」)から反射され、被試験デバイスを透過した高周波信号(すなわち、当該信号の大きさおよび位相)の正確なベクトル測定は、DUTの電気的性能を決定するのに役立つ。例えとして、図1は、これらの信号を、厚板100に向かう波として示し、厚板が、入射波102を反射および/または透過させる。図1は、厚板に入射する入射波102、反射波104、および透過波106を概略的に示す。DUTは、反射波および/または透過波の測定に基づいて、その電気インピーダンス、または供給信号に対して引き起こす信号歪の量等のDUTの特性を決定するための公知の方法を使用してその特性を決定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2A〜2Dは、高周波信号の位相および大きさを測定するための、従来技術において公知の測定デバイスのうち、それらの動作を示す。図2Aに示されるように、総称して198で示されるベクトルネットワーク分析器(VNA)は、刺激源214(例えば、内臓型位相固定発振器)をDUT202に動作可能に接続する。刺激源214は、DUT202に入射信号204を供給する。従来の試験設定では、複数の指向性結合装置210は、反射信号206および透過信号208から入射信号204を分離する。次に、受信機/検出器200は、複数の指向性結合装置210を介して、信号204、206、208を収集する。VNA198等の典型的なベクトルネットワーク分析器では、検出器/受信機200は、スーパーヘテロダイン受信機等の同調受信機を備え、高周波入力信号を、ダウンコンバージョンとして当該技術分野で公知のプロセスを通して、より低い周波数に変換することを可能にする。VNA198は、他の信号と混合するように、ダウンコンバージョンプロセスで、基準信号(例えば、入射信号204、すなわち第2の高周波源位相固定から主刺激源214に供給される信号)を使用する。このようにして信号204、206をダウンミックスするために、VNA198は、信号分離を維持し、かつ信号が相互作用して組み合わせ信号または定在波を形成することを防止しなければならない。
【0006】
高周波信号の位相および大きさを測定するための他の例示的な従来技術の手法を、図2B〜2Dに示す。図に示すように、これらの付加的な方法は、ヘテロダイン/同調受信機を利用しない。図2Bは、定在波の複素反射係数を測定するスロット線方法を示す。この方法は、伝送線222上で測定値を収集するように、単一の検出器プローブ220を利用する。しかしながら、プローブ220は、複素反射係数を正確に測定するために必要な複数の測定値を得るように、伝送線222の長さに沿って物理的に移動させる必要がある。DUT(図示せず)と検出器220との間の距離224は、複素係数計算の因子であるので、位置の各変化は、対応する伝送線の測定と同時に、正確に測定および記録しなければならない。この繰り返しの再配置および距離測定は、自動化の負担となり、図2Bに示されるスロット線法の実装が高コストかつ複雑となる。
【0007】
以下、図2Cを参照すると、サンプル線法は、明白に所望の測定値を得るように、伝送線242の長さに沿って、少なくとも3つの固定検出器プローブ240を必要とする。この従来技術の方法は、単一の検出器プローブ(図2B参照)の再配置を回避するが、プローブの相互作用および異なるプローブにより測定誤差が生じ、これが測定精度にかなりの影響を及ぼす。
【0008】
入射および反射信号を測定するための、当該技術分野で公知の別の方法は、図2Dに示される、いわゆる摂動2ポート(「PTP」)法である。PTP法は、DUT262の前、スカラーネットワーク分析器264との間に挿入される、2ポート摂動(PTP)ネットワーク260の組み合わせ(すなわち、指向性カプラによって実現される高品質の反射率計)の使用に基づく。それぞれが異なる電気的特性を示す、複数のPTPネットワーク266が必要とされる。各PTPネットワークは、スカラーネットワーク分析器264の入力時に現れる、求められているDUT反射係数を変更/変成する。これらの複数のPTPネットワークが、複数ステップの較正ルーチンとともに使用される場合、求められている反射係数は、スカラーネットワーク分析器の入力時に見られる反射係数の大きさを測定した後に、決定することができる(大きさおよび位相の両方)。図2Aに関して前述した従来技術のVNAと同様に、PTP方法は、信号分離を必要とする。図2Dで実施されるPTP法では、(スカラーネットワーク分析器の実装内の)指向性カプラは、この構成においても、入射信号と反射信号との間の分離を維持することが必要とされる。さらに、PTP法は、使用されるPTPネットワークのうちのいくつかが、そのPTPネットワークにする損失を有することを必要とする。信号分離、および損失を有するPTPネットワークがなければ、PTP法は機能しない。
【0009】
図2Aの従来のVNA198は、入射、反射、および透過信号の信号分離を維持し、また、収集した信号を選択的に隔離および分析するように、1つ以上の特殊な同調ヘテロダイン受信機を採用するが、これら全てがデバイスのサイズ、コスト、および複雑さを増大させる。前述した他の従来技術のデバイスは、ヘテロダイン手順を使用せずに測定を実施するが、その設計に固有の制限のため、測定の不正確さが、これらのデバイスの有用な動作をかなり損なう。前述のように、本発明の発明者らには、同調受信機のコストおよび複雑さのない、指向性結合装置が不要となるか、または測定プロセスにかなりの不正確さを生じさせることのない、被試験デバイスの透過および反射信号を測定する方法およびシステムを発見する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様によれば、被試験デバイスに連結される伝送線上の定在波の位相を発生させて操作することにより、デバイスに関連する透過および反射波信号の、例えば位相および大きさ等の特性の測定が可能となる。
【0011】
簡潔には、本発明の態様を実施する、被試験デバイスを分析するための方法は、被試験デバイスに連結される伝送線上に定在波を発生させることと、位相シフターによって定在波の位相を変化させることと、複数の位相シフトのそれぞれでの定在波の大きさをサンプリングすることとを含む。本方法はさらに、サンプリングした定在波の大きさおよび複数の位相シフトの関数として、被試験デバイスを表す少なくとも1つの特性を決定することを含む。
【0012】
本発明の別の態様は、被試験デバイスを分析するためのシステムを目的とする。システムは、信号源を被試験デバイスに連結するための伝送線を含む。次に、信号源は、被試験デバイスに入射する信号を提供する。被試験デバイスに入射する信号、および被試験デバイスから反射される信号は、伝送線上の定在波を形成する。システムはまた、定在波の位相を変化させるための位相シフターと、複数の位相シフト値のそれぞれでの定在波の大きさをサンプリングするための、伝送線に連結される検出器プローブとを含む。被試験デバイスを表す少なくとも1つの特性は、サンプリングした伝送線上の定在波の大きさ、および複数の位相シフト値の関数として決定される。
【0013】
別の態様では、超高周波より高い周波数での信号の位相および大きさを決定するためのベクトルネットワーク分析器は、位相シフトを伝送線上の定在波に適用するための位相制御信号を受信してこれに応答する、位相シフターを含む。伝送線は、被試験デバイスの一部に連結され、伝送線に連結される伝送線プローブが、複数の位相シフト値のそれぞれでの伝送線上の定在波の大きさをサンプリングする。プローブは、サンプリングした定在波の大きさに対応する検出器信号を発生させるように構成され、プロセッサは、伝送線プローブから検出器信号を受信してこれに応答し、サンプリングした伝送線上の定在波の大きさの関数として、デバイスを表す少なくとも1つの特性を決定する。加えて、プロセッサは、位相シフター制御信号を発生させるために構成される。
【0014】
伝送線透過線上の信号に位相シフトを適用するための、伝送線に連結される位相シフターは、本発明のさらなる態様を実施する。位相シフターは、その中に複数のスロットが形成されている導波路を含む。スロットは、それぞれが信号の波長に関して副共振である寸法を有し、これは、超高周波よりも高い周波数にあり、信号に適用される位相シフトを制御するようにスロットに装荷するための、それらに対応する能動素子を有する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、伝送線、検出器、および位相シフターの組み合わせを適切に使用することにより、高価なヘテロダイン/同調受信機検出手法が不要となる。
【0016】
他の特徴は、一部明白であり、一部を以下に指摘する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】高周波信号の透過および反射を示す図である。
【図2A】入射、反射、および透過高周波信号を測定するように、複数のポート接続部を伴う、従来技術のネットワーク分析器の図である。
【図2B】入射、反射、および透過高周波信号を測定するように、複数のポート接続部を伴う、従来技術のネットワーク分析器の図である。
【図2C】入射、反射、および透過高周波信号を測定するように、複数のポート接続部を伴う、従来技術のネットワーク分析器の図である。
【図2D】入射、反射、および透過高周波信号を測定するように、複数のポート接続部を伴う、従来技術のネットワーク分析器の図である。
【図3】本発明の一実施形態による、ベクトルネットワーク分析器を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、制御位相シフターを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に従って収集される例示的な測定値を、従来技術のベクトルネットワーク分析器によって収集される測定値と比較して示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に従って収集される例示的な測定値を、従来技術のベクトルネットワーク分析器によって収集される測定値と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面全体を通して、対応する参照符号は、対応する部品を示す。
【0019】
以下、図3を参照すると、本発明の態様を実施するネットワーク分析器(VNA)298が、ブロック図の形態で示される。有利なことに、VNA298は、被試験デバイス(DUT)318の性能特性を分析するために、マイクロ波およびミリ波周波数信号を含む、超高周波数よりも高い周波数での信号の測定値を得ることが可能である。DUT318は、例えば、レーダーアンテナ等であってもよい。
【0020】
一実施形態では、VNA298は、DUT318の入力ポート299に連結される、伝送線300を備える。この実施形態では、図3に示されるように、伝送線300は、その長さに沿ってDUT318との間で信号を伝送するように構成される。伝送線300は、導波路、同軸線、またはマイクロストリップ線であってもよいが、これらに限定されない。適切なソース信号310が伝送線300に供給されると、定在波が、入射信号312と、逆方向に伝播するDUT318の入力ポート299からの反射信号314との重ね合わせの関数として、伝送線300の長さに沿って形成される。
【0021】
図3の実施形態をさらに参照すると、VNA298は、制御位相シフター304と連結される伝送線300を備え、その実施形態を以下に説明する。図3に示される例示的実施形態は、波源302が、超高周波よりも高い信号を発生させることが可能であることを示す。波源302は、伝送線300に連結される(図3のノード310参照)。例示の実施形態では、この要素の組み合わせは、信号源302からの伝送線の入力に適用される信号、およびDUT318のポート299から反射される信号のコヒーレント加算のため、伝送線300の長さに沿った定在波の発生を可能にする。本発明の態様によれば、制御位相シフター304は、得られる定在波の位相特性の変化を可能にする。
【0022】
本発明の位相シフター304の実施形態を図4に示す。この実施形態では、位相シフター304は、長方形の導波路400の壁として使用されるプリント回路基板(「PCB」)406の中に形成される、複数の副共振スロット402を利用する。本発明の態様によれば、能動素子404を伴うスロット402を装荷することで、伝送線300の長さに沿って発生させた定在波に位相シフトが適用されることを可能にする。スロット402は、長さ(L)416および幅(W)418を有するように構成され、よって、スロット402は、測定される信号の波長に関して副共振である。換言すれば、スロットは、効率的に放射しない。加えて、スロットは、導波路全長(L)408および幅(a)(要素414参照)にわたって、同列スロットの中心間距離(S)410およびスロット−導波路縁部距離(s)412を有するように構成される。
【0023】
図4では、スロット402は、長方形の導波路400の広壁を形成するプリント回路基板(PCB)406の中に切り抜かれる。代替の実施形態では、スロット402は、狭壁上にある。スロット402は、導波路400の壁の縦または横方向に形成される。図4は、横方向に構成したスロット402を示す。スロット402は、導波路400の壁を伝わる電流との十分な相互作用を提供するような様々な構成で配置または構成することができる。例えば、スロット402が中心線420上に、またはその近くに配置され、かつ図4に示されるスロット配置から90度回転させた場合、スロット402は、導波路400の中の電流の流れに対して直角になる。スロット402は、十分な位相シフトを達成するように、様々な構成で形成することができる。しかしながら、スロット402は、定在波形状の乱れが最小限となり、導波路400の壁上の電流の流れに最適に影響を及ぼすように配置されるべきである。加えて、スロット402は、スロット402が導波路400への信号反射および/またはそこからの信号放射を引き起こさないように、副共振寸法L416およびW418を有するべきである。例示の実施形態では、スロット402には、PINダイオード404等の能動素子が装荷され、それによって、適用される位相シフトの電子制御を可能にする。
【0024】
図4の実施例では、9つのPINダイオードを装荷したスロット402を示し、制御直流(dc)バイアスを使用した各PINダイオード404のオンおよびオフは、10の特徴的な位相シフトが伝送線300上の信号に適用されることを可能にする。図4の位相シフターは一例であり、限定するものではなく、他のスロット構成および能動素子が存在し、それらは本発明の範囲内であることを理解されたい。
【0025】
位相シフターは、以下に説明する数学モデルで使用する位相シフターの散乱パラメータを直接的に測定するように、例えば高精度のベクトルネットワーク分析器を使用して、較正することができる。別様には、位相シフターは、試験ポート299に接続される合計6つの公知の負荷を使用して、較正されてもよい。これらの6つの負荷の測定値を使用して、6の一組の非線形方程式を解くことによって、位相シフターの散乱パラメータを決定することができる。
【0026】
ここでも、図3に示される実施形態を参照すると、複数の異なる位相シフトで作成される伝送線300上の定在波をサンプリングするように、少なくとも1つの伝送線プローブ306が、伝送線300に連結される。プローブ306はさらに、サンプリングした定在波信号の大きさに対応する、検出器信号320を発生させるように構成される。一実施形態では、プローブ306は、ダイオード等の能動素子である。ダイオードは、サンプリングした定在波の大きさに比例する、dc信号を生成する。有利なことに、定在波に適用される位相シフトを変化させることで、従来技術のデバイスで必要とされるような、プローブの配置を変化させることなく、または複数のプローブを必要とせずに、複数のサンプリングを行うことが可能となる。有利なことに、定在波に対するプローブの移動を不要にし、複数のプローブを不要にすることで、得られる誤差がサンプリングした測定値に導入されることを防止する。その結果、発生させた被試験デバイスを表す情報がより正確となる一方で、VNAのコストおよび複雑さが最小限に抑えられる。代替の実施形態では、複数のプローブ306は、複数の異なる位相シフトで伝送線300上に作成される定在波をサンプリングするように、伝送線300に連結され、広帯域の周波数にわたる、より高いサンプリング精度を可能にする。
【0027】
図3は、検出器信号320を受信して、それに応答するように構成される、プロセッサ308も示す。プロセッサ308は、検出器信号320に応答して、源制御信号324を発生させ、該信号は、310で伝送線300に注入される入射信号を制御するための信号源302に通信される。加えて、プロセッサ308は、発生させた伝送線300上の定在波に、位相シフター304によって適用される位相シフトの量を制御するための、位相シフター制御信号326も発生させる。例えば、位相シフト制御信号326は、スロット402を装荷および脱装荷するために、PINダイオード404をオンオフする。プロセッサ308は、任意選択で、スイッチをオンオフするためのスイッチ制御信号334を発生させる。また、プロセッサ308は、サンプリングした伝送線300上の定在波の大きさ、および各サンプリングでの適用された位相シフトの関数として、定在波およびDUT318を表す情報も発生させる。
【0028】
別の実施形態では、プロセッサ308は、表す情報を、限定するものではないが、表示デバイス、またはメモリ記憶装置、ハードドライブ記憶装置、もしくは印刷デバイス等や、他の好適な出力デバイスに出力する。本発明の他の実施形態では、信号源302および/または位相シフター304は、情報をプロセッサ308にも通信するように構成される。
【0029】
図3をさらに参照すると、プロセッサ308は、位相シフトを設定するための制御信号326を位相シフター304に提供し、信号源302の動作パラメータ(例えば、周波数および大きさのレベル)を設定するための制御信号324を提供し、スイッチをオンオフするためのスイッチ制御信号334を提供し、各適用された位相シフトにおいて得られた検出器信号320を処理する。一実施形態では、記憶したコンピュータ命令に応答して動作するプロセッサ308は、自動的に位相をシフトし、および/またはリアルタイムで、周波数をスキャンして、表す情報を決定する。本発明の他の実施形態では、プロセッサは、限定するものではないが、キーパッドまたはキーボード入力、ダイアル設定、またはスイッチ等の手動の操作者制御に応答して動作する。
【0030】
代替の実施形態では、VNA298はまた、DUT318の第2のポート330に連結される、切換型指向性隔離素子332を含む。この実施形態では、切換型方向性隔離素子332は、図3に示されるようにスイッチおよび隔離器を備える。適切な源信号310が伝送線300に供給されると、定在波が、入射信号312および入力ポート299からの反射信号314、ならびにポート330からポート299へDUT318を通過するスルー試験信号338の重ね合わせの関数として、伝送線300の長さに沿って形成される。前述のように、入射信号312および反射信号314は、逆方向に伝播する。同様に、入射信号312およびスルー試験信号338は、逆方向に伝播する。スイッチ制御334に応答して方向性隔離素子332がオフにされた時に、1つのポート(すなわち、反射)の測定が行われうる。一方で、方向性隔離素子332がオンにされた時に、2つのポート(透過および反射)の測定が行われうる。この要素の組み合わせは、信号源302からの伝送線の入力に適用される信号310、およびDUT318のポート299から反射される信号314、ならびに方向性隔離素子332がオンにされた時に、DUTを透過する信号338のコヒーレント加算のため、伝送線300の長さに沿った定在波の発生を可能にする。隔離素子がオンにされると、透過信号316が、絶縁器340によって観察される。信号源302および位相シフター304と同様に、方向性隔離素子332も、情報をプロセッサ308に通信するように構成されてもよい。
【0031】
図5および6は、本発明の一実施形態の例示的な結果を、従来技術のVNA(例えば、VNA198)の結果と比較して示す。
【0032】
以下の数学モデルは、DUT318の特性を、印加した位相シフトの関数として決定するために使用することができ、検出器は、VNA298が反射信号だけを測定するように構成された(すなわち、スイッチ322がオフにされた)時に、プローブ306を介してサンプリングする。
【0033】
【数1】

【0034】
【数2】

【0035】
ij,p、i=1、2、j=1、2:位相シフトΦの関数としての位相シフター散乱パラメータ(直接の独立したVNA測定を通して、または6つの公知の負荷の測定を使用して、6つの非線形方程式を解くことで決定される)
【0036】
(Φ):検出器でサンプリングされる電圧
C:検出器応答
β:伝播因子
L:伝送線上の検出器と位相シフターとの間の距離
11:(DUTの)入力ポートの電圧反射係数
M:位相シフト設定の合計数。
【0037】
非線形方程式系Mを(例えば、ニュートン−ガウス方法を使用して)解いて、S11を見つけることができる。通常は、高周波数において全電流または全電圧を測定することが困難であるので、パラメータSが本発明によって使用される。
【0038】
本発明の実施形態を用いた自動プロトタイプVNAシステムに関して、その動作を確認するために、複数の実験を行った。開発したプロトタイプVNAの性能を、市販のHP8510Cベクトルネットワーク分析器(VNA)に対して検証した。図5および6に示される実験結果を参照すると、プロトタイプVNA(電圧制御位相シフターを使用)およびHP8510Cの両方を、10GHzでの種々のDUTの反射係数を測定するために使用した。利用したDUTは、種々の反射特性の広範囲のデバイスを代表するものであった。利用したDUTの反射係数の大きさは、−2dBから−30dBの範囲であり、その位相は、0度から360度の範囲であった。これらの範囲を伴うDUTは、有利に可能な反射測定値の全範囲にわたる(図5の半径1の円によって表される)。
【0039】
プロトタイプVNAは、dc制御電圧に応答して3つの位相シフト設定(M=3)を提供することが可能である、(図4に例示される実施形態とは異なる種類の)電子位相シフターで構成した。位相シフターは、独立に較正した。図5は、同じDUTについて、プロトタイプVNAおよびHP8510C VNAを使用して得られた、実験的なベクトル反射の測定値を(極形式で)比較する。図5の例示的な結果に示されるように、両方のデバイスは比較可能な結果を生成した。図6は、プロトタイプVNAおよび市販のHP8510C VNAの両者を使用した、実験的に測定した可変的なDUTの反射係数の大きさを示す。本発明の特定の態様を実施するプロトタイプVNAの応答の線形性を観察すること、およびこれらの実験結果が、はるかに高価なHP8510C VNAにいかに十分に匹敵するのかが重要である。
【0040】
図5および6に示されるように、プロトタイプVNAの例示的な実験測定値は、HP8510C VNAの測定値と密接に一致する。これらの例示的な実験結果で、開発したVNAの動作およびベクトル反射係数の正確な測定のためのアプローチは、市販の高価かつ複雑なHP8510C VNAに比較可能であることが確認される。また、検出手法の所望の線形性も強調する。
【0041】
別の好ましい実施形態では、制御位相シフター304は、離散位相シフトを伝送線300上の信号に提供することが可能な市販の位相シフターである。市販の位相シフターは、測定する波領域のための正確な離間位相シフトを提供できる、一方で、信号の擾乱がわずかにでなければならない。
【0042】
さらに別の好ましい実施態様では、制御位相シフター304は、図4の態様を実施する位相シフターであり、そのような位相シフターは、より高い周波数での測定を可能にする。
【0043】
別の好ましい実施形態では、信号310は、プロセッサから、供給される信号の特性を制御するための制御信号を受信するように構成される信号源によって、外部に供給されてもよい。別の実施形態では、信号源は、独立した源制御のために構成される。
【0044】
動作中に、本発明の態様を実施する方法は、被試験デバイス318に連結される伝送線300上に定在波を発生させることと、位相シフター304によって定在波の位相を変化させることと、複数の位相シフトのそれぞれでの定在波の大きさをサンプリングすることとを含む。さらに、本方法は、被試験デバイス318を表す少なくとも1つの特性を、サンプリングした定在波の大きさおよび複数の位相シフトの関数として決定する。このような特性には、反射信号314または透過信号316の位相および大きさ、反射信号314の位相および大きさの関数として計算されるDUT318の誘電特性、およびDUT318の構造的特性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
動作中に、本発明の態様を実施するシステムは、被試験デバイス318を分析する。このシステムは、信号源302を被試験デバイス318に連結するための伝送線300を有し、信号源302は、被試験デバイスに入射する信号310を提供し、被試験デバイス318に入射する信号312および被試験デバイス318から反射される信号314は、伝送線300上に定在波を形成する伝送線。システムはさらに、定在波の位相を変化させるための位相シフター304と、複数の位相シフト値のそれぞれでの定在波の大きさをサンプリングするための、伝送線300に連結される検出器プローブ306とを備える。したがって、被試験デバイス318を表す少なくとも1つの特性が、サンプリングした伝送線300上の定在波の大きさ、および複数の位相シフト値の関数として決定される。
【0046】
動作中に、本発明の態様を実施するベクトルネットワーク分析器298は、被試験デバイス318について、超高周波数よりも高い周波数での信号の位相および大きさを決定する。ベクトルネットワーク分析器298は、伝送線300上の定在波に位相シフトを適用するための位相制御信号326を受信してこれに応答する、位相シフター304を備え、該伝送線300は、DUT318のポート299に連結される、位相シフター304と、複数の位相シフト値のそれぞれでの伝送線300上の定在波の大きさをサンプリングするための、伝送線300に連結される、伝送線プローブ306を備え、伝送線プローブ306は、サンプリングした定在波の大きさに対応する検出器信号320を発生させるように構成される伝送線。この場合、ベクトルネットワーク分析器298はさらに、伝送線DUT318を表す少なくとも1つの特性を、サンプリングした伝送線300上の定在波の大きさの関数として決定するための、伝送線プローブ306からの検出器信号320を受信してこれに応答する、プロセッサ308を備え、プロセッサ308は、さらに、位相シフター制御信号を発生させるように構成される。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、伝送線上の信号に位相シフトを適用するための、伝送線と連結される位相シフターを備え、前記信号は、超高周波より高い周波数にあり、位相シフターは、その中に複数のスロットを有する導波路を備え、スロットは、それぞれが伝送線上の信号の波長に関して副共振である寸法を有し、スロットは、それぞれが、信号に適用される位相シフトを制御するようにスロットを装荷するための、それらに対応する能動素子を有する。
【0048】
特定の実施形態が論じられるが、これは、説明の便宜上行われるに過ぎないことを理解されたい。当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、他の構成要素および構成を使用できることを理解するであろう。
【0049】
特に明記しない限り、本明細書に例示および説明される本発明の実施形態の動作の実行または動作の順序は、重要ではない。すなわち、特に明記しない限り、動作は任意の順序で実施されてもよく、本発明の実施形態は、本明細書に開示される動作への追加の動作、またはそれよりも少ない動作を含んでもよい。例えば、特定の動作を、別の動作の前に、これと同時に、またはその後に実行または実施することは、本発明の態様の範囲内であることが意図される。本発明の実施形態は、コンピュータで実行可能な命令で実装されてもよい。コンピュータで実行可能な命令は、1つ以上のコンピュータで実行可能な構成要素またはモジュールに組織されてもよい。本発明の態様は、任意の数および機構のこのような構成要素またはモジュールで実装されてもよい。例えば、本発明の態様は、図に例示され、本明細書に説明される、特定のコンピュータで実行可能な命令または特定の構成要素もしくはモジュールに限定されない。本発明の他の実施形態は、例示され、本明細書に説明されるよりも多いまたは少ない機能を有する、異なるコンピュータで実行可能な命令または構成要素を含んでもよい。
【0050】
本発明の態様またはその実施形態の要素を導入する時に、冠詞「a」、「an」、「the」、および「前記」は、1つ以上の要素があることを意味することが意図される。「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列記された要素以外の付加的な要素が存在してもよいことを意味する。
【0051】
本発明の態様を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の態様の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明白であろう。前述の構築物、製品、および方法には、本発明の態様の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができるので、前述の説明に含有される、および添付図面に示される全ての事項は、例示的なものであり、限定的な意味のものではないと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスを分析する方法であって、
前記被試験デバイスに連結される伝送線上に定在波を発生させることと、
位相シフターによって前記定在波の位相を変化させることと、
複数の位相シフトのそれぞれでの前記定在波の大きさをサンプリングすることと、
前記被試験デバイスを表わす少なくとも1つの特性を、前記サンプリングした前記定在波の大きさおよび前記複数の位相シフトの関数として決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
超高周波よりも高い信号源が、信号を供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定在波は、前記被試験デバイスに入射する信号と、前記被試験デバイスから反射される信号とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記定在波はさらに、前記被試験デバイスを透過する信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記定在波の前記大きさをサンプリングすることは、前記複数の位相シフトのそれぞれでの前記定在波の電圧を測定することを含み、前記被試験デバイスを表す少なくとも1つの特性を決定することは、前記被試験デバイスの反射係数を前記複数の位相シフトのそれぞれでの前記測定した電圧の関数として、測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記位相シフターは、前記伝送線に連結されて、1つ以上の副共振スロットを備え、前記スロットはそれぞれ、その中に配置された能動素子を有し、前記位相を変化させることは、前記伝送線上の信号の位相を変化させるために、前記能動素子が配置された前記スロットを装荷するように、前記能動素子を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スロットは、導波路の壁の中に形成されている副共振寸法を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
被試験デバイスを分析するためのシステムであって、
信号源を前記被試験デバイスに連結するための伝送線であって、前記信号源は、前記被試験デバイスに入射する信号を提供し、前記被試験デバイスに入射する前記信号および前記被試験デバイスから反射される信号は、前記伝送線上の定在波を形成する、伝送線と、
前記定在波の位相を変化させるための位相シフターと、
複数の位相シフト値のそれぞれでの前記定在波の大きさをサンプリングするための、前記伝送線に連結される検出器プローブであって、前記被試験デバイスを表す少なくとも1つの特性が、前記サンプリングした前記伝送線上の前記定在波の大きさ、および前記複数の位相シフト値の関数として決定される、検出器プローブと、
を備える、システム。
【請求項9】
前記信号源は、前記被試験デバイスに入射する前記信号を、超高周波数よりも高い周波数で発生させる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記定在波は、前記被試験デバイスに入射する前記信号と、前記被試験デバイスから反射される前記信号と、前記被試験デバイスを透過する信号とを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記被試験デバイスを表す前記少なくとも1つの特性を決定するために構成される、プロセッサをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出器プローブは、前記複数の位相シフト値のそれぞれでの前記定在波の電圧を測定し、前記プロセッサによって決定される前記少なくとも1つの特性は、複数の位相シフト値のそれぞれでの前記測定した電圧の関数として、前記被試験デバイスの反射係数を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記位相シフターは、前記伝送線に連結され、1つ以上の副共振スロットを備え、前記スロットはそれぞれ、その中に配置された能動素子を有し、前記位相シフターは、前記定在波の位相を変化させるために、前記能動素子が配置された前記スロットを装荷するように、前記能動要素を制御する、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記位相シフターは、その中に形成される前記スロットを有する、導波路を備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記信号源は、前記被試験デバイスに入射する前記信号を、超高周波数よりも高い周波数で提供する、請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
複数の位相シフトのそれぞれでの前記定在波の大きさをサンプリングするための、前記伝送線に連結される、別の検出器プローブさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項17】
被試験デバイス(DUT)について、超高周波数よりも高い周波数での位相および信号の大きさを決定するための、ベクトルネットワーク分析器であって、
位相シフトを伝送線上の定在波に適用するための位相制御信号を受信してこれに応答する、位相シフターであって、前記伝送線は、前記DUTの一部に連結される、位相シフターと、
複数の位相シフト値のそれぞれでの前記伝送線上の前記定在波の大きさをサンプリングするための、前記伝送線に連結される、伝送線プローブであって、前記プローブは、前記サンプリングした前記定在波の大きさに対応する、検出信号を発生させるように構成される、伝送線プローブと、
伝送線前記DUTを表す少なくとも1つの特性を、前記サンプリングした前記伝送線上の前記定在波の大きさの関数として決定するための、前記伝送線プローブから前記検出器信号を受信してこれに応答する、プロセッサであって、さらに前記位相シフター制御信号を発生させるために構成される、プロセッサと、
を備える、ベクトルネットワーク分析器。
【請求項18】
前記伝送線は、導波路、同軸線、およびマイクロストリップ線のうちの1つ以上を備える、請求項17に記載のベクトルネットワーク分析器。
【請求項19】
前記伝送線プローブは、前記定在波の大きさに比例する信号を生成するための、少なくとも1つの能動素子を備える、請求項17に記載のベクトルネットワーク分析器。
【請求項20】
前記伝送線プローブの前記能動素子は、ダイオードを備える、請求項19に記載のベクトルネットワーク分析器。
【請求項21】
前記DUTに入射する信号を提供するための信号源をさらに備え、前記伝送線上の前記DUTに入射する前記信号および前記DUTから反射される信号は、前記伝送線上に前記定在波を形成し、前記信号源は、その出力を変化させるための源制御信号に応答する、請求項17に記載のベクトルネットワーク分析器。
【請求項22】
前記伝送線上の前記定在波は、前記DUTに入射する前記信号と、前記DUTから反射される前記信号と、前記DUTに入射した前記信号と逆方向に前記DUTを透過する信号とを含む、請求項21に記載のベクトルネットワーク分析器。
【請求項23】
前記DUTに入射する前記信号と逆方向に前記DUTを透過する前記信号が、前記DUTを通過することを可能にするための、一方向性隔離素子をさらに備える、請求項22に記載のベクトルネットワーク分析器。
【請求項24】
前記方向性隔離素子は、スイッチと、信号隔離器とを備える、請求項23に記載のベクトルネットワーク分析器。
【請求項25】
位相シフトを前記伝送線上の信号に適用するための、伝送線と連結される位相シフターであって、前記信号は、超高周波よりも高い周波数にあり、前記位相シフターは、その中に複数のスロットを有する導波路を備え、前記スロットは、それぞれが前記伝送線上の前記信号の波長に関して副共振である寸法を有し、前記スロットは、それぞれが、前記信号に適用される前記位相シフトを制御するように前記スロットを装荷するための、それらに対応する能動素子を有する、位相シフター。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−515347(P2012−515347A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546299(P2011−546299)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/020735
【国際公開番号】WO2010/083152
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(501305844)ザ・キュレーターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ (12)
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
【Fターム(参考)】