説明

被試験体の架橋密度の測定方法、被試験体の架橋密度の条件設定方法、ラミネート加工製品のラミネート処理方法、被試験体の架橋密度の測定装置、被試験体の架橋密度の調整装置

【課題】ラミネート処理における架橋密度の測定を格段に容易にしかも精度良く行うことができ、架橋密度の解析を迅速に行う方法、装置を提供する。
【解決手段】透明基板、及び裏面材で架橋密度測定用シートを挟み込んで積層させた被試験体1Aを用意し、被試験体1Aをラミネート加工手段100に配設してラミネート処理を施し、被試験体1Aをラミネート加工手段100から取り出して、透明基板及び裏面材を架橋密度測定用シートから剥離させて架橋密度測定用シートを取り出し、架橋密度測定用シートの一の基準地点と少なくとも一の比較地点を選定しそれらの架橋密度を測定する。架橋密度測定用シートはラミネート処理によって架橋反応を呈し、架橋反応によって透明基板、及び裏面材のいずれとも接着が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート加工製品を製造するための技術、及び製造に必要な測定技術及び調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源として太陽電池が注目されており、また、太陽電池等の製品を、いわゆる「ラミネート加工」によるラミネート加工製品として製造する技術が広く知られている。一般に太陽電池は、ガラスやフッ素樹脂等からなる透明基板と、PET樹脂等によって形成される裏面材との間に、シリコンセル等の半導体基板と、エチレン−酢ビ共重合樹脂(EVA)等の充填材とを挟み込んで積層させたラミネート加工製品をラミネート装置の熱板上に載置し、ラミネート装置内で真空中において加熱処理しながらダイヤフラムにて挟圧するラミネート処理(以下単に「ラミネート処理」と称する。本明細書において同じ。)を施して成形した太陽電池モジュールという態様で供給される。ここで、上述の加熱処理及び加圧処理において、充填材はいわゆる架橋反応を起こし共有結合を形成し、半導体基板を封止する機能を果たしている(例えば、特許文献1参照)。この架橋反応が十分に行なわれると、透明基体と充填材が接着されて膨張収縮しても両者が剥離することなく、太陽電池の使用環境における温度差に対して追従することができる。そして従来は、ラミネート装置におけるラミネート処理の架橋条件の監視を行い、必要に応じて架橋条件の変更等を行う技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−201777号公報
【特許文献2】特開2009−165898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般に、ラミネート装置においてラミネート処理の際、ラミネート加工製品は場所毎の温度差が生ずる。具体的には、透明基板の熱膨張に伴う反りによって、透明基板の周辺部や四隅は熱の伝導状態が悪くなることが多い。その結果、形成されたラミネート加工製品も、周辺部や四隅は架橋密度が低くなり、中央部が高くなるような場所による架橋密度のバラツキが発生し易いという問題がある。
【0005】
一方、充填材は架橋密度が上昇するに従って弾性によりシール性が向上するが、逆に高すぎると脆くなる特性があるため、一般に充填材はその目的に応じた最適な架橋密度が存在する。そして、特許文献1及び2に記載の発明においては、このような、ラミネート加工製品の場所毎の熱の伝導状態と架橋密度の最適化とに即した調整を行うための構成が存在しないため、品質の高い製品を製造するための作業者の負担が過大になり易いという問題がある。
【0006】
また、特許文献1及び2に記載の発明においては、充填材が架橋反応を起こした際、EVA等の充填材と透明基板とが共有結合するため、特許文献1及び2に記載の発明において架橋密度の測定を行う場合、接着した透明基板と充填材とを分離するためにラミネート加工製品を破壊する必要があり、破壊作業と架橋密度の測定及び確認とに要する作業者の作業が過大になり、生産ラインの起ち上げが遅くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、ラミネート加工製品のラミネート処理における架橋密度の測定を格段に容易にしかも精度良く行うことができ、かつ、架橋密度の解析を迅速に行うことができて、高品質のラミネート加工製品の生産ラインの起ち上げを迅速に行うことができる被試験体の架橋密度の測定方法、被試験体の架橋密度の条件設定方法、ラミネート加工製品のラミネート処理方法、被試験体の架橋密度の測定装置、被試験体の架橋密度の調整装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を達成するために、第1発明の前記被試験体の架橋密度の測定方法は、第一の基板、及び前記第一の基板に対向して配設される第二の基板によって板状の架橋密度測定用シートを挟み込んでそれらを積層させた被試験体を用意する工程と、前記被試験体をラミネート加工手段に配設し、前記被試験体に対し、前記ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理を施す工程と、前記ラミネート処理が完了した前記被試験体を前記ラミネート加工手段から取り出して、前記第一の基板及び前記第二の基板を前記架橋密度測定用シートから剥離させて前記架橋密度測定用シートを取り出す工程と、前記取り出された前記架橋密度測定用シートにおいて一の基準地点と少なくとも一の比較地点とを選定して前記基準地点と前記比較地点との架橋密度を測定する工程とを備え、前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じない構成を有していることを特徴とする。
【0009】
第1発明によれば、被試験体の複数の箇所について架橋密度の測定を行い、それら複数の箇所同士の相対的な架橋密度の比較対照を容易に行うことができる。また、ラミネート処理を用いて製造される現実のラミネート加工製品の充填材と同様の架橋反応を得ると共に、架橋反応を起こさせた架橋密度測定用シートを第一の基板及び第二の基板を破壊することなく容易に剥がして取り出すことができる。これにより、ラミネート加工製品のラミネート処理における架橋密度の測定を格段に容易にしかも精度良く行うことができ、かつ、架橋密度の解析を迅速に行うことができて、高品質のラミネート加工製品の生産ラインの起ち上げを迅速に行うことができる。
【0010】
第2発明の前記被試験体の架橋密度の測定方法は、第1発明において、前記基準地点の架橋密度に対する前記比較地点の架橋密度の割合が所定の許容範囲内か否かを判定する工程を備えたことを特徴とする。第2発明によれば、ラミネート加工製品の場所による架橋密度のバラツキを容易に低減させ、ラミネート加工製品全体を最適な架橋密度になるように条件設定を容易に調整できる。これにより、ラミネート加工製品は、弾性により高いシール性を得られると共に脆くなることのない、適正な架橋密度を容易に得ることができる。そして、高品質のラミネート加工製品を製造できる。
【0011】
第3発明の前記被試験体の架橋密度の測定方法は、第1発明または第2発明において、前記基準地点は、前記架橋密度測定用シートの略中央部であることを特徴とする。第3発明によれば、比較的良好な架橋密度が得られる場所を基準に架橋密度の調整を行い、ラミネート加工製品全体の架橋密度が良好になるような調整を容易に行うことができる。
【0012】
第4発明の前記被試験体の架橋密度の測定方法は、第2発明又は第3発明において、前記所定の許容範囲とは、特定の割合以上であることを特徴とする。第4発明によれば、所定の許容範囲とは、特定の割合以上であることにより、ラミネート加工製品全体の架橋密度が良好になるような調整を一層容易に行うことができる。
【0013】
第5発明の前記被試験体の架橋密度の測定方法は、第1発明からは第4発明のいずれかにおいて、前記ラミネート加工手段は太陽電池モジュール製造用のラミネート装置であることを特徴とする。第5発明によれば、ラミネート加工手段は太陽電池モジュール製造用のラミネート装置であることにより、高品質の太陽電池モジュールを製造できる。
【0014】
第6発明の前記被試験体の架橋密度の条件設定方法は、第2発明からは第5発明のいずれかの被試験体の架橋密度の測定方法によって得られた前記基準地点の架橋密度に対する前記比較地点の架橋密度の前記割合を取得し、前記割合が所定の許容範囲内でない場合には、前記被試験体に対する、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理の所定の条件を調整することで、前記割合が前記所定の許容範囲内になるように調整する工程を備えたことを特徴とする。第6発明によれば、被試験体の基準地点の架橋密度と比較地点の架橋密度との差異を両者の割合によって算出し、この割合が所定の許容範囲内となるように調整することで、被試験体全体の架橋密度を基準地点の架橋密度に近づけるような調整を容易に行うことが可能になる。そして、ラミネート加工製品の場所による架橋密度のバラツキを容易に低減させ、ラミネート加工製品全体を最適な架橋密度になるように条件設定を容易に調整できる。これにより、ラミネート加工製品は、弾性により高いシール性を得られると共に脆くなることのない、適正な架橋密度を容易に得ることができる。そして、高品質のラミネート加工製品を製造できる。
【0015】
第7発明の被試験体の架橋密度の条件設定方法は、第6発明において、前記所定の条件は、前記ラミネート加工手段における前記ラミネート処理の温度、圧力、処理時間のうちの少なくとも何れか一つであることを特徴とする。第7発明によれば、加熱処理及び加圧処理で変動させることの出来る要因を変化させることで、被試験体全体の架橋密度を基準地点の架橋密度に近づけるような調整を容易に行うことが可能になる。
【0016】
第8発明のラミネート加工製品のラミネート処理方法は、第一の基板、及び前記第一の基板に対向して配設される第二の基板によって、充填材を含むラミネート加工製品の内容物を封止して積層させたラミネート加工製品に対し、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理を施す、ラミネート加工製品のラミネート処理方法であって、第1発明から第5発明の何れかの被試験体の架橋密度の測定方法による測定工程と、第6発明または第7発明の被試験体の架橋密度の条件設定方法による条件設定工程と、前記条件設定工程によって調整がされた前記架橋密度で前記ラミネート処理が行えるようにラミネート加工手段の条件設定を調整する工程と、前記調整がされた前記ラミネート加工手段によって前記ラミネート加工製品の前記ラミネート処理を行う工程とを備え、前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じない構成を有していることを特徴とする。第8発明によれば、ラミネート加工製品のラミネート処理における架橋密度の測定を簡易に行うことができると共に場所による架橋密度のバラツキを容易に低減させ、ラミネート加工製品全体を最適な架橋密度になるように条件設定を容易に調整でき、高品質のラミネート加工製品を製造できる。
【0017】
第9発明の被試験体の架橋密度の測定装置は、第一の基板と、前記第一の基板に対向して配設される第二の基板とによって板状の架橋密度測定用シートを挟み込んでそれらを積層させた被試験体を用意し、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理を施した前記被試験体について、架橋密度の測定を行う被試験体の架橋密度の測定装置であって、前記被試験体について前記ラミネート処理を行うラミネート加工手段と、前記ラミネート処理が完了した前記被試験体を前記ラミネート加工手段から取り出して、前記第一の基板及び前記第二の基板を前記架橋密度測定用シートから剥離させて前記架橋密度測定用シートを取り出す架橋密度測定用シート取得手段と、前記架橋密度測定用シート取得手段によって取り出された前記架橋密度測定用シートにおいて一の基準地点と少なくとも一の比較地点とを選定して前記基準地点と前記比較地点との架橋密度を測定する架橋密度測定手段とを備え、前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じないように構成することを特徴とする。第9発明によれば、第1発明と同様の効果を奏する。
【0018】
第10発明の被試験体の架橋密度の調整装置は、第一の基板と、前記第一の基板に対向して配設される第二の基板とによって板状の架橋密度測定用シートを挟み込んでそれらを積層させた被試験体を用意し、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理に用いられる前記ラミネート加工手段において、前記ラミネート処理における被試験体の架橋密度の調整を行う被試験体の架橋密度の調整装置であって、前記ラミネート加工手段と、前記ラミネート処理が完了した前記被試験体を前記ラミネート加工手段から取り出して、前記第一の基板及び前記第二の基板を前記架橋密度測定用シートから剥離させて前記架橋密度測定用シートを取り出す架橋密度測定用シート取得手段と、前記架橋密度測定用シート取得手段によって取り出された前記架橋密度測定用シートにおいて一の基準地点と少なくとも一の比較地点とを選定して前記基準地点と前記比較地点との架橋密度を測定する架橋密度測定手段と、前記架橋密度測定手段によって測定された、前記基準地点の架橋密度に対する前記比較地点の架橋密度の割合が所定の許容範囲内か否かを判定する架橋密度分析手段と、前記架橋密度分析手段による判定の結果、前記割合が所定の許容範囲内でない場合には、前記ラミネート処理の所定の条件を調整することで前記割合が前記所定の許容範囲内になるように調整するラミネート加工条件設定手段とを備え、前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じない構成を有していることを特徴とする。第10発明によれば、第6発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この実施の形態における、太陽電池モジュールの一構成例を示す断面図である。
【図2】この実施の形態における、(a)被試験体の構成を示す断面図、(b)架橋密度測定用シートの断面図である。
【図3】この実施の形態の架橋密度の測定・調整システムの機能ブロック図である。
【図4】この実施の形態に係るラミネート加工手段の全体の構成を示す図である。
【図5】同上ラミネート加工手段において被試験体や太陽電池モジュールをラミネートするラミネート部の側断面図である。
【図6】同上ラミネート加工手段のラミネート処理時における側断面図である。
【図7】この実施の形態の架橋密度の測定・調整システムの工程を示すフローチャートである。
【図8】この実施の形態における被試験体の、透明基板と裏面材とで架橋密度測定用シートを挟み込んだ状態を示す断面図である。
【図9】この実施の形態における被試験体の、ラミネート処理後に透明基板及び裏面材をそれぞれ引き離して架橋密度測定用シートから剥離させた状態を示す断面図である。
【図10】この実施の形態における、架橋密度測定用シートにおいて基準地点と比較地点とを選定し、測定片を取得する状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から図10により本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<1> ラミネート加工製品

まず、この実施の形態において対象とする、ラミネート加工製品としての太陽電池モジュールと、架橋密度の測定に用いられる被試験体とについて説明する。
【0022】
図1は、この実施の形態における、結晶系セルを使用した、「ラミネート加工製品」としての太陽電池モジュールの一構成例を示す断面図である。この太陽電池モジュール10は、この実施の形態の測定・調整システム(後述)を構成するラミネート加工手段(後述)において製造されるものである。太陽電池モジュール10は、「第一の基板」としての透明基板11、及び透明基板11に対向して配設される「第二の基板」としての裏面材12を備える。透明基板11と裏面材12との間には、「内容物」としての、充填材13,14、ストリング15が封止されている。充填材13、14にはEVA(エチレンビニルアセテート)樹脂や、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂等が使用される。ストリング15は、電極16、17の間に結晶系セルとしての太陽電池セル18をリード線19を介して接続した構成である。
【0023】
<2>被試験体

一方、図2の(a)は、この実施の形態における、被試験体1Aの構成を示す断面図である。この被試験体1Aは、この実施の形態の測定・調整システム(後述)を構成するラミネート加工手段(後述)における架橋密度の測定に用いられるものである。被試験体1Aは、図1に示す太陽電池モジュール10と同じく、透明基板11、及び透明基板11に対向して配設される裏面材12を備える。そして、透明基板11と裏面材12とで架橋密度測定用シート1を挟み込んで、それら透明基板11、架橋密度測定用シート1、裏面材12を積層させた構成である。
【0024】
<3>架橋密度測定用シート

一方、図2の(b)は、この実施の形態における架橋密度測定用シート1の構成を示す断面図である。この架橋密度測定用シート1は、支持体2上に、架橋密度が0.1×10−4〜10×10−4mol/cc であるゴムシート層3を有する構成で、板状を呈する。支持体2としては、温度分布調査温度において形状を維持できる耐熱性、耐強度を有するシート基材であればいずれの素材を用いることもできる。例えば、プラスチックシート、紙、合成紙、不織布、金属シート等を用いることが考えられる。一方、ゴムシート層3としては、cis−イソポリプロピレンを主成分とする天然ゴムやアクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、エチレンプロピレンゴム(ECM,EPDM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム(Q)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)等の合成ゴムを用いることができる。また、ゴムシート層3はゴム成分が主成分となっていればよく、他の樹脂組成物と混練、共重合化されていればよい。
【0025】
また、架橋密度測定用シート1の厚さは、太陽電池モジュール10の充填材13、14及びストリング15の箇所の厚さとほぼ等しくなるように形成されている。即ち、この実施の形態においては、架橋密度測定用シート1の厚さは約1mmに形成されている。ただし、2〜3mm程度の厚さに形成されていてもよい。
【0026】
また、架橋密度測定用シート1の架橋密度は、太陽電池モジュール10の充填材13,14と同等であり、ラミネート加工手段におけるラミネート処理において充填材13,14とほぼ同様の架橋密度となるように形成されていることが望ましい。具体的には、0.1×10−4〜10×10−4mol/ccの架橋密度であることが望ましい。
【0027】
更に、架橋密度測定用シート1の支持体2及びゴムシート層3のいずれにも、この架橋密度測定用シート1の架橋反応によっても、架橋密度測定用シート1が透明基板11及び裏面材12のいずれとも接着しない材質で形成されていることが望ましい。即ち、一般に太陽電池モジュール10の充填材13、14に充填されているシランカップリング材のようなフィラーは、架橋密度測定用シート1には配合されていないことが望ましい。
【0028】
<4>本実施形態の架橋密度の測定・調整システム(被試験体の架橋密度の測定装置、および被試験体の架橋密度の調整装置)の構成

図3は、この実施の形態の架橋密度の測定・調整システム100Aの機能ブロック図である。同図に示す通り、この実施の形態の架橋密度の測定・調整システム100Aは、ラミネート加工手段100、架橋密度測定用シート取得手段400、架橋密度測定手段500、架橋密度分析手段600、ラミネート加工条件設定手段700を備えている。
【0029】
なお、本発明の被試験体の架橋密度の測定装置は、ラミネート加工手段100、架橋密度測定用シート取得手段400、架橋密度測定手段500の構成によって実現される。また、本発明の被試験体の架橋密度の調整装置は、ラミネート加工手段100、架橋密度測定用シート取得手段400、架橋密度測定手段500、架橋密度分析手段600、ラミネート加工条件設定手段700の構成によって実現される。
【0030】
<4−1−1>ラミネート加工手段

ラミネート加工手段100は、太陽電池モジュール製造用のラミネート装置を使用することができる。ラミネート加工手段100は、太陽電池モジュール10や、被試験体1Aに対するラミネート処理に用いられる。ラミネート加工手段100の具体的構成については後述する。
【0031】
<4−1−2>ラミネート加工手段の構成詳細

図4は、この実施の形態に係るラミネート加工手段100の全体の構成を示す図である。ラミネート加工手段100は、上ケース110と、下ケース120と、搬送ベルト130とを有する。搬送ベルト130は、ラミネート処理が施される前の被試験体1Aや、ラミネート処理が施される前の太陽電池モジュール10を上ケース110と下ケース120との間に搬送する。ラミネート加工手段100には、ラミネート処理が施される前の被試験体1Aや太陽電池モジュール10をラミネート加工手段100に搬送するための搬入コンベア200が設けられている。また、ラミネート加工手段100には、ラミネート後の被試験体1Aや太陽電池モジュール10をラミネート加工手段100から搬出するための搬出コンベア300が設けられている。搬入コンベア200と搬出コンベア300とは連設されている。被試験体1Aや太陽電池モジュール10は、搬入コンベア200から搬送ベルト130に受け渡され、搬送ベルト130から搬出コンベア300に受け渡される。また、ラミネート加工手段100には、上ケース110を水平状態に維持したまま下ケース120に対して昇降させる昇降装置(図示せず)が設けられている。
【0032】
図5は、ラミネート加工手段100において被試験体1Aや太陽電池モジュール10をラミネートするラミネート部101の側断面図である。図6は、ラミネート加工手段100のラミネート処理時における側断面図である。
上ケース110には、下方向に開口された空間が形成されている。この空間には、空間を水平に仕切るようにダイヤフラム112が設けられている。ダイヤフラム112は、シリコーン系のゴム等の耐熱性のあるゴムにより成形されている。上ケース110内には、ダイヤフラム112によって仕切られた空間(上チャンバ113)が形成される。
【0033】
また、上ケース110の上面には、上チャンバ113と連通し、上チャンバ113内の吸排気に用いられる吸排気口114が設けられている。
【0034】
下ケース120には、上方向に開口された空間(下チャンバ121)が形成されている。この空間には、熱板122(パネル状のヒータ)が設けられている。熱板122は、下ケース120の底面に立設された支持部材によって、水平状態を保つように支持されている。この場合に、熱板122は、その表面が下チャンバ121の開口面とほぼ同一高さになるように支持される。
【0035】
また、下ケース120の下面には、下チャンバ121と連通し下チャンバ121内の吸排気に用いられる吸排気口123が設けられている。
上ケース110と下ケース120との間であって、熱板122の上方には、搬送ベルト130が移動自在に設けられている。搬送ベルト130は、図2の搬入コンベア200からラミネート処理前の被試験体1Aや太陽電池モジュール10を受け取ってラミネート部101の中央位置、すなわち熱板122の中央部に正確に搬送する。また、搬送ベルト130は、ラミネート処理後の被試験体1Aや太陽電池モジュール10を図4の搬出コンベア300に受け渡す。
また、上ケース110と下ケース120との間であって、搬送ベルト130の上方には、溶融した充填材がダイヤフラムに付着することを防止する剥離シート140が設けられている。
【0036】
<4−2>架橋密度測定用シート取得手段

図3に示す架橋密度測定用シート取得手段400は、ラミネート処理が完了した被試験体1Aをラミネート加工手段から取り出して、この被試験体を形成する透明基板11及び裏面材12を架橋密度測定用シート1から剥離させて架橋密度測定用シート1を取り出す。
【0037】
架橋密度測定用シート取得手段400は、ラミネート加工手段100においてラミネート処理が施された、架橋密度の測定のために用いられる被試験体1Aから架橋密度測定用シート1を取り出すために必要な構成が設けられている。例えば、被試験体1Aの透明基板11及び裏面材12をそれぞれ引き離すと共に架橋密度測定用シート1を透明基板11及び裏面材12の間から抜き取るための機構や、当該機構を動作させるための制御手段やアクチュエータ等が設けられている。
【0038】
<4−3>架橋密度測定手段

図3に示す架橋密度測定手段500は、架橋密度測定用シート取得手段400によって取り出された架橋密度測定用シート1において一の基準地点と少なくとも一の比較地点とを選定して基準地点と比較地点との架橋密度を測定する。
【0039】
架橋密度測定手段500は、架橋密度測定用シート1の場所ごとの架橋密度を測定するために必要な構成が設けられている。具体的には、架橋密度測定用シート1上における架橋密度を測定する位置を特定するための画像処理機構等が設けられている。
【0040】
<4−4>架橋密度分析手段,<4−5>ラミネート加工条件設定手段

図3に示す架橋密度分析手段600は、架橋密度測定手段500において測定された、基準地点の架橋密度に対する比較地点の架橋密度の割合が所定の許容範囲内か否かを判定する。
【0041】
ラミネート加工条件設定手段700は、架橋密度分析手段600によって判定された割合を取得し、この割合が所定の許容範囲内でない場合には、ラミネート処理の所定の条件を調整することで上記割合が所定の許容範囲内になるように調整する。
【0042】
図3に示す架橋密度分析手段600、及びラミネート加工条件設定手段700は、それぞれ少なくとも一つのCPUを備え、各種データの処理や値の算出を行う。具体的には、架橋密度分析手段600は、架橋密度測定手段500の測定で得た複数の測定値から、一の基準地点と、比較地点とをそれぞれ選定すると共に基準地点の架橋密度と比較地点の架橋密度との割合を算出する。ラミネート加工条件設定手段700は、架橋密度分析手段が算出したそれぞれの値に基づいて、ラミネート加工手段100の加熱条件の調整を行う。
【0043】
<5>本実施形態の架橋密度の測定・調整システムの工程フロー

次に、この実施の形態の工程について説明する。図7は、この実施の形態の架橋密度の測定・調整システム100Aの工程を示すフローチャートである。以下、このフローチャートを用いて架橋密度の測定・調整システム100Aの工程を説明する。
【0044】
<ステップS1>

まず、架橋密度の測定・調整システム100Aの利用者は、図2に示す、透明基板11と裏面材12と架橋密度測定用シート1を揃え、これらを用いて、図8に示す、透明基板11と裏面材12とで架橋密度測定用シート1を挟み込んだ被試験体1Aを用意する(ステップS1)。
【0045】
<ステップS2>

次に、用意した被試験体1Aはラミネート加工手段100の搬入コンベア200上に載置される。被試験体1Aは搬入コンベア200から搬送ベルト130上に受け渡される。これにより、搬送ベルト130は、図5に示す通り、被試験体1Aをラミネート部101の中央位置に搬送し、当該位置に配設する(ステップS2)。なお、架橋密度の測定・調整システム100Aは、搬入コンベア200を使用せず、被試験体1Aがラミネート部101に直接配設されるように構成されてもよい。この状態で、昇降装置は上ケース110を下降させる。これにより、図6に示すように、上ケース110と下ケース120との内部にて上チャンバ113及び下チャンバ121は、それぞれ密閉状態に保たれる。
【0046】
<ステップS3>

次に、ラミネート加工手段100は、被試験体1Aに対し、ラミネート処理を行う(ステップS3)。具体的には、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113内の真空引きを行う。同様に、ラミネート加工手段100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121内の真空引きを行う。
【0047】
被試験体1A及び被試験体1Aの内部に含まれる架橋密度測定用シート1は、熱板122を構成する各ヒータモジュールによって加熱処理され、架橋密度測定用シート1は当該ラミネート処理によって架橋反応を呈する。
次に、ラミネート加工手段100は、下チャンバ121の真空状態を保ったまま、上ケース110の吸排気口114を介して、上チャンバ113に大気を導入する。これにより、上チャンバ113と下チャンバ121との間に気圧差が生じてダイヤフラム112が下方に押し出され、被試験体1Aは、下方に押し出されたダイヤフラム112と、熱板122とで挟圧される。
【0048】
ラミネート処理が終了した後、ラミネート加工手段100は、下ケース120の吸排気口123を介して、下チャンバ121に大気を導入する。このとき、昇降装置は、上ケース110を上昇させ、搬送ベルト130は、ラミネート処理後の被試験体1Aを搬出コンベア300に受け渡す。なお、架橋密度の測定・調整システム100Aは、搬出コンベア300を使用せず、被試験体1Aがラミネート部101から直接取り出されるように構成されてもよい。
【0049】
<ステップS4>

そして、架橋密度測定用シート取得手段400は、搬出コンベア300上の被試験体1Aからラミネート処理後の架橋密度測定用シート1を取り出す(ステップS4)。即ち、架橋密度測定用シート取得手段400は、図9に示すように、被試験体1Aの透明基板11及び裏面材12をそれぞれ引き離して架橋密度測定用シート1から剥離させ、架橋密度測定用シート1を透明基板11及び裏面材12の間から抜き取って取り出す。架橋密度測定用シート1はラミネート処理によって架橋反応を呈しているが、架橋反応によって透明基板11及び裏面材12のいずれとも接着が生じないので、透明基板11及び裏面材12はそれぞれ架橋密度測定用シート1から容易に引き離すことができ、被試験体1Aを破壊することなく、架橋反応を呈した架橋密度測定用シート1だけを容易に取り出すことができる。
【0050】
<ステップS5>

そして、架橋密度測定手段500は、取り出された架橋密度測定用シート1において基準地点と比較地点とを選定し、これら基準地点と比較地点との架橋密度を測定する(ステップS5)。
【0051】
<ステップS5の具体的実施態様>

図10は、架橋密度測定用シート1において基準地点と比較地点とを選定し、測定片を取得する状態を模式的に示した図である。具体的には、同図に示すように、架橋密度測定用シート1上にn個(n≧1,図10ではn=35)の仮想ブロック1B,1B,1B,・・・1Bを設定し、特定の仮想ブロック(図10では、架橋密度測定用シート1の四隅にあたる仮想ブロック1B,1B,1Bn−4,1B、及び略中央部にあたる仮想ブロック1B)について架橋密度を測定する。以下、図10に示す、n=35の場合を例にして説明する。
【0052】
この実施の形態においては、架橋密度を測定する仮想ブロック1B,1B,1B31,1B35、及び中央にあたる仮想ブロック1Bのうち、一の仮想ブロックを基準地点とし、他の少なくとも一の仮想ブロックを比較地点として架橋密度の分析を行う。従って、架橋密度測定用シート1の架橋密度を測定する際に基準となる箇所を含む一の仮想ブロックを基準地点とし、基準地点との関係で架橋密度の調整を図りたい箇所を含む一又は複数の仮想ブロックを比較地点とすることが望ましい。
【0053】
そして、この実施の形態においては、基準地点は架橋密度測定用シート1の略中央部である仮想ブロック1Bとし、比較地点は架橋密度測定用シート1の四隅にあたる仮想ブロック1B,1B,1B31,1B35として選定している。このような選定を行ったのは、太陽電池モジュール10を製造する際、略中央部は架橋密度が最も高くなり易い箇所であり、四隅を含む周辺部は架橋密度が最も低くなり易い箇所であるためである。即ち、架橋密度測定用シート1の略中央部を基準に周辺部の架橋密度の調整を図ることは、太陽電池モジュール10を製造する際に生ずる架橋密度のバラツキを低減させるために効果的である。
【0054】
ただし、基準地点、比較地点の選定は上記の態様には限られず、太陽電池モジュール10を製造する際に生ずる架橋密度のバラツキを容易に低減させることができることができる箇所であれば、いかなる箇所を基準地点及び比較地点として選定してもよい。即ち、基準地点の仮想ブロック1Bは、架橋密度測定用シート1の略中央部以外の箇所、例えば図10における、左上の仮想ブロック1Bの位置であってもよく、比較地点は架橋密度測定用シート1の周辺部分以外の箇所、例えば架橋密度測定用シート1の略中央部である、図10における仮想ブロック1Bの位置等であってもよい。
【0055】
更に、この実施の形態において比較地点は仮想ブロック1B,1B,1B31,1B35の4点としたが、4点より多くても少なくてもよい。
【0056】
この実施の形態においては、周知の膨潤法によって基準地点及び比較地点の架橋密度の測定を行う。そのため、架橋密度測定手段500は、図10に示す通り、基準地点の仮想ブロック1Bの略中央、及び比較地点の仮想ブロック1B,1B,1B31,1B35の略中央から適度な大きさ、例えば1センチメートル角程度の測定片1C,1C,1C,1C31,1C35をそれぞれ切り出す。そして、これらの測定片1C,1C,1C,1C31,1C35について、それぞれ周知の膨潤試験を行い、架橋密度を測定する。
【0057】
なお、架橋密度測定手段500は、膨潤法以外のいかなる測定方法で架橋密度の測定を行ってもよい。例えば、架橋密度測定手段500が周知のパルスNMR法(日本ゴム協会誌:VOL78,255(2005),岩蕗仁,永田員也etc.)等を用いて架橋密度の測定を行うこと等も想定される。充填材13、14がEVA樹脂で形成されている場合は、架橋反応によって充填材13、14が結晶化してしまうためパルスNMR法による測定はできないが、この実施の形態の架橋密度測定用シート1は、結晶を持っていないので、パルスNMR法による測定が可能となる。なお、パルスNMR法による測定の場合、架橋密度測定用シート1を透明基板11と裏面材12との間から取り出した状態のままで測定ができるので、測定片1C,1C,1C,1C31,1C35をそれぞれ切り出すことなく測定ができて、測定作業の簡素化を図ることができる。
【0058】
<ステップS6>

次に、架橋密度分析手段600は、架橋密度測定手段500において測定された、基準地点の架橋密度に対する比較地点の架橋密度の割合が、所定の許容範囲内か否かを判定する(ステップS6)。
【0059】
<ステップS6の具体的実施態様>

ここで、充填材13、14の架橋密度は、低すぎると太陽電池モジュール10を屋外で使用している際に充填材13、14の内部に水が侵入してストリング15が腐食するような事態を招きやすくなり、一方で高すぎると充填材13、14がもろくなって破損し易くなる。そのため、充填材13、14の架橋密度が低すぎず、かつ高すぎない所定の範囲が製品の品質を確保するために必要な許容範囲であり、架橋密度分析手段600は、かかる架橋密度がこの許容範囲になるような調整を行う。
【0060】
具体的には、架橋密度分析手段600は、以下の式(1)に基づいて基準地点の仮想ブロック1B、及び比較地点の仮想ブロック1B,1B,1B31,1B35の架橋密度の判定を行う。
Pxy=Bxy/A ・・・(1)
ここで、Pxy:架橋度合、Bxy:場所毎の架橋密度、x:架橋時間、y:太陽電池モジュール10の位置情報(ここでは仮想ブロック1B〜1B35の通し番号1〜35)、A:架橋密度測定用シート1を理想的に架橋した状態(例えばEPDMコンパウンドを用いて所定時間、所定温度、所定圧力でラミネート処理を行った状態)での架橋密度
【0061】
そして、架橋密度分析手段600は、下記の式(2)及び式(3)の条件を満たすか否かによって、所定の許容範囲内か否かを判定する。
【0062】
式(2)について以下説明する。
C≦Pxy≦D・・・(2)
式(2)は、それぞれの仮想ブロック1B,1B,1B,1B31,1B35の架橋度合が所定の許容範囲内か否かを判定する式である。ここで数値C,Dは、太陽電池モジュール10の充填材13,14に要求される架橋密度により適宜決定される。
【0063】
式(3)について説明する。
{(各比較地点の架橋密度)/(基準地点の架橋密度)}≧E・・・(3)
式(3)は、基準地点の仮想ブロック1Bの架橋密度と、それぞれの比較地点の仮想ブロック1B,1B,1B31,1B35の架橋密度との差異が所定の許容範囲か否かを判定する式である。すなわち架橋密度の場所ムラの程度を示している。ここで数値Eは、0.8に設定することが好ましいが、太陽電池モジュール10に要求される架橋密度により適宜増減させてもよい。
【0064】
<ステップS7→ステップS9>

そして、上記(2)及び(3)が全て許容範囲内である場合(ステップS7の“Yes”)、ラミネート加工条件設定手段700は、ラミネート加工手段100の設定を変更することなく、太陽電池モジュール10の製造を行わせる(ステップS9)。
【0065】
<ステップS7→ステップS8>

一方、上記(2)及び(3)に許容範囲内ではないものが含まれる場合(ステップS7の“No”)、ラミネート加工条件設定手段700は、ラミネート加工手段100のラミネート処理の条件を調整する(ステップS8)。具体的には、例えば、上記(2)の条件を満たさなかった比較地点の仮想ブロックのラミネート処理のおける圧力、温度、処理時間のうち少なくとも何れか一つの設定(特に温度や時間)の設定が変更される。ラミネート加工条件設定手段700は、ステップS8の調整結果のデータをラミネート加工手段100の制御手段(図示せず)に送り、制御手段(図示せず)のプログラム等の設定を変更させる。
【0066】
ステップS8の処理の後、ステップS1に戻り、以降の処理が、ステップS7の判定が“Yes”となるまで続けられる。
【0067】
<6.この実施形態における効果>

以上、この実施の形態においては、被試験体1Aの複数の箇所について架橋密度の測定を行い、それら複数の箇所同士の相対的な架橋密度の比較対照を容易に行うことができる。また、この実施の形態においては、現実の太陽電池モジュール10の充填材13、14と同様の架橋反応を得ると共に、架橋反応を起こさせた架橋密度測定用シート1を透明基板11及び裏面材12を破壊することなく容易に剥がして取り出すことができる。これにより、太陽電池モジュール10のラミネート処理における架橋密度の測定を格段に容易にしかも精度良く行うことができ、かつ、架橋密度の解析を迅速に行うことができて、高品質の太陽電池モジュール10の生産ラインの起ち上げを迅速に行うことができる。
【0068】
<7.この実施形態の変形例>

なお、この実施の形態においては、結晶系セルを利用した太陽電池モジュール10における架橋密度の測定及び調整を対象としたが、これに限らず、いわゆる薄膜系太陽電池モジュールにおける充填材の架橋密度の測定及び調整を対象とすることもできる。
【0069】
この実施の形態においては、太陽電池モジュール10における架橋密度の測定及び調整を対象としたが、太陽電池モジュール10以外のあらゆるラミネート加工製品における架橋密度の測定及び調整にもこの実施の形態を適用できる。
【0070】
この実施の形態においては、架橋密度測定用シート取得手段400、架橋密度測定手段500、架橋密度分析手段600,ラミネート加工条件設定手段700を全て自動制御されるものとしたが、これらのうち一部又は全部を架橋密度の測定・調整システム100Aの利用者が手動で行う構成としてもよい。
【0071】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0072】
1・・・架橋密度測定用シート
1A・・・被試験体
1B・・・仮想ブロック(基準地点)
1B,1B,1B31,1B35・・・仮想ブロック(比較地点)
10・・・太陽電池モジュール(ラミネート加工製品)
11・・・透明基板(第一の基板)
12・・・裏面材(第二の基板)
13,14・・・充填材(内容物)
15・・・ストリング(内容物)
100・・・ラミネート加工手段
400・・・架橋密度測定用シート取得手段
500・・・架橋密度測定手段
600・・・架橋密度分析手段
700・・・ラミネート加工条件設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板、及び前記第一の基板に対向して配設される第二の基板によって板状の架橋密度測定用シートを挟み込んでそれらを積層させた被試験体を用意する工程と、
前記被試験体をラミネート加工手段に配設し、前記被試験体に対し、前記ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理を施す工程と、
前記ラミネート処理が完了した前記被試験体を前記ラミネート加工手段から取り出して、前記第一の基板及び前記第二の基板を前記架橋密度測定用シートから剥離させて前記架橋密度測定用シートを取り出す工程と、
前記取り出された前記架橋密度測定用シートにおいて一の基準地点と少なくとも一の比較地点とを選定して前記基準地点と前記比較地点との架橋密度を測定する工程とを備え、
前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じない構成を有していることを特徴とする被試験体の架橋密度の測定方法。
【請求項2】
前記基準地点の架橋密度に対する前記比較地点の架橋密度の割合が所定の許容範囲内か否かを判定する工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の被試験体の架橋密度の測定方法。
【請求項3】
前記基準地点は、前記架橋密度測定用シートの略中央部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被試験体の架橋密度の測定方法。
【請求項4】
前記所定の許容範囲とは、特定の割合以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の被試験体の架橋密度の測定方法。
【請求項5】
前記ラミネート加工手段は太陽電池モジュール製造用のラミネート装置であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の被試験体の架橋密度の測定方法。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一つに記載の被試験体の架橋密度の測定方法によって得られた前記基準地点の架橋密度に対する前記比較地点の架橋密度の前記割合を取得し、前記割合が所定の許容範囲内でない場合には、前記被試験体に対する、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理の所定の条件を調整することで、前記割合が前記所定の許容範囲内になるように調整する工程を備えたことを特徴とする被試験体の架橋密度の条件設定方法。
【請求項7】
前記所定の条件は、前記ラミネート加工手段における前記ラミネート処理の温度、圧力、処理時間のうちの少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項6に記載の被試験体の架橋密度の条件設定方法。
【請求項8】
第一の基板、及び前記第一の基板に対向して配設される第二の基板によって、充填材を含むラミネート加工製品の内容物を封止して積層させたラミネート加工製品に対し、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理を施す、ラミネート加工製品のラミネート処理方法であって、
請求項1乃至5の何れか一つに記載の被試験体の架橋密度の測定方法による測定工程と、
請求項6又は7に記載の被試験体の架橋密度の条件設定方法による条件設定工程と、
前記条件設定工程によって調整がされた前記架橋密度で前記ラミネート処理が行えるようにラミネート加工手段の条件設定を調整する工程と、
前記調整がされた前記ラミネート加工手段によって前記ラミネート加工製品の前記ラミネート処理を行う工程とを備え、
前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じない構成を有していることを特徴とするラミネート加工製品のラミネート処理方法。
【請求項9】
第一の基板と、前記第一の基板に対向して配設される第二の基板とによって板状の架橋密度測定用シートを挟み込んでそれらを積層させた被試験体を用意し、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理を施した前記被試験体について、架橋密度の測定を行う被試験体の架橋密度の測定装置であって、
前記被試験体について前記ラミネート処理を行うラミネート加工手段と、
前記ラミネート処理が完了した前記被試験体を前記ラミネート加工手段から取り出して、前記第一の基板及び前記第二の基板を前記架橋密度測定用シートから剥離させて前記架橋密度測定用シートを取り出す架橋密度測定用シート取得手段と、
前記架橋密度測定用シート取得手段によって取り出された前記架橋密度測定用シートにおいて一の基準地点と少なくとも一の比較地点とを選定して前記基準地点と前記比較地点との架橋密度を測定する架橋密度測定手段とを備え、
前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じないように構成することを特徴とする被試験体の架橋密度の測定装置。
【請求項10】
第一の基板と、前記第一の基板に対向して配設される第二の基板とによって板状の架橋密度測定用シートを挟み込んでそれらを積層させた被試験体を用意し、ラミネート加工手段の少なくとも一部を真空状態にして加熱処理及び加圧処理を行うラミネート処理に用いられる前記ラミネート加工手段において、前記ラミネート処理における被試験体の架橋密度の調整を行う被試験体の架橋密度の調整装置であって、
前記ラミネート加工手段と、
前記ラミネート処理が完了した前記被試験体を前記ラミネート加工手段から取り出して、前記第一の基板及び前記第二の基板を前記架橋密度測定用シートから剥離させて前記架橋密度測定用シートを取り出す架橋密度測定用シート取得手段と、
前記架橋密度測定用シート取得手段によって取り出された前記架橋密度測定用シートにおいて一の基準地点と少なくとも一の比較地点とを選定して前記基準地点と前記比較地点との架橋密度を測定する架橋密度測定手段と、
前記架橋密度測定手段によって測定された、前記基準地点の架橋密度に対する前記比較地点の架橋密度の割合が所定の許容範囲内か否かを判定する架橋密度分析手段と、
前記架橋密度分析手段による判定の結果、前記割合が所定の許容範囲内でない場合には、前記ラミネート処理の所定の条件を調整することで前記割合が前記所定の許容範囲内になるように調整するラミネート加工条件設定手段とを備え、
前記架橋密度測定用シートは前記ラミネート処理によって架橋反応を呈すると共に前記架橋反応によって前記第一の基板及び前記第二の基板のいずれとも接着が生じない構成を有していることを特徴とする被試験体の架橋密度の調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−183710(P2011−183710A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52424(P2010−52424)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(709002303)日清紡メカトロニクス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】