説明

装置および方法

本発明は、複数の電極を含む多電極アレイに関し、電極は、スペーサ手段によって互いから離間され、電極は、スペーサ手段に固定され、スペーサ手段は、ハウジング内でカプセル化される。本発明は、本発明の多電極アレイを含む埋込装置、本発明のアレイ中で使用される電極を製造する方法、および本発明の多電極アレイを製造するための方法にも関する。また、本発明は、本発明の多電極アレイを使用して生体組織に対する被検物質の作用をモニタするための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多電極アレイ(MEA: multi-electrode array)、MEAの製造のための方法、MEAを含む埋込装置に関し、さらに、組織、組織のサンプルまたは培養物をモニタするための電気生理学的方法、特に被検化合物に対する組織のサンプルまたは培養物の反応をモニタするための電気生理学的方法におけるMEAの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板をベースとする形態の多電極アレイは、ディスクまたは高さが70μmのスパイクの形態にある、フォトリソグラフィ技法を使用してプリントされた、基板上で等距離の配置で互いに離間された電極の「2次元」アレイを含み、通常浅い皿の形である。
【0003】
MEAを使用するアッセイは、通常プレート形態で実施され、その結果、検査中の組織は、電気信号を測定するために、ディスクまたは高さが70μmの電極のアレイの上部に置かれる。MEAは、60カ所もの記録部位から同時に興奮性生体組織の細胞外の電気的活性を刺激し記録するために使用されてきた。ほとんどの場合、単一ユニット活動および/または緩徐電場電位が、解離細胞培養物(ニューロン、心筋細胞)、および器官型または短時間の組織切片(脳、脊髄、網膜他)などの標本中で記録される。
【0004】
これらのMEA形態の欠点は、それらが、平滑筋または心臓などの収縮組織への使用には適していないということである。というのは、それらの組織は、平坦でなく、記録中に収縮することがあり、電極上で十分に静止せず、良好な接触を得るために押し付ける、または「吸着」することが必要であり、それによって組織が損傷し、異常な結果をもたらす可能性があるからである。
【0005】
さらなる欠点は、先行技術のMEAが容易に再配置可能でないことである。すなわち電極を再配置するために、基板上で組織を移動しなければならない。電極は、深さ方向に調節することができず、したがって組織内の1層と接触するように構成することができない。
【0006】
MEAの1形態は、アレイを形成するように2つの電子顕微鏡(electron microscope: e. m.)のグリッド中に通すことによって離間される電極を有し、次いでそれらの電極は、電子顕微鏡のグリッドに接着剤で接着される。電極または電子顕微鏡のグリッドは、カプセル化されず、事実上、このアレイは、フィラメントが電子顕微鏡のグリッドによって離間されたワイヤ束である。使用の際、先行技術の装置中の電極の端部は、それぞれが個別にマニピュレータに取り付けられ、この装置は、ユニット型でないので、容易に移送し、マニピュレータまたはマイクロドライブのユニット上で保持されるようには構成されない。このタイプのMEAは、組織アッセイには使用されておらず、損傷のない動物の状況で短期、短時間のインプラントとして使用されているが、長期インプラントとしては使用されておらず、使用することもできなかった。
【0007】
知られたMEAでは、電極の先端は、平面構成であり、したがって、それらは、組織の表面で、または組織内の1層または複数の層と接触するように組織中に貫通して、組織の外形に合うように構成することができない。これらのMEAは、電気的活性だけを検出し、組織の運動、すなわち収縮を検出することができない。組織内の運動は、皿形のMEAを使用しても、融解水晶のフィラメントから形成された電極を有するMEAを使用しても評価することができない。というのは、これらは、運動を検知するための機械的変換器として働くのに必要な弾力性に欠けているからである。したがって、知られたMEAは、収縮組織内の電気信号を検出し、組織の随伴運動と相互に関連付けるためには使用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
原薬に対する組織の生体反応について情報を得るために、創薬において使用されるMEAアッセイを開発することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の電極を含む多電極アレイを提供し、その電極は、スペーサ手段によって互いから離間され、電極は、スペーサ手段に固定され、そのスペーサ手段は、ハウジング内でカプセル化される。
【0010】
本発明による多電極アレイは、少なくとも2つの電極を含み、本発明の典型的なMEA形態では、2、4、8、16、32、64、128、256または512個の電極がアレイ中に存在する。MEA中の電極数は、電気生理学アッセイに用いられる検出システム中の記録チャネル数に対応するように、選択することができる。
【0011】
アレイ中の電極の間隔は、MEAの提案される使用に依存する。電気生理学アッセイの場合、MEA中の電極の間隔は、一般に、約80μm〜約400μm、好適には約100μm〜300μmの範囲内であり、たとえば250μmである。埋込装置の場合、より大きい間隔が通常所望され、たとえば、約250μm〜約1000μmの範囲内であり、たとえば500μmである。
【0012】
本発明の多電極アレイでは、スペーサ手段およびハウジングは、単一にすることができ、したがってスペーサ手段は、ハウジングの不可分の部分にすることができ、たとえば、スペーサ手段は、ブロック中のチャネルとすることができ、ブロックは、ハウジングを形成する。
【0013】
本発明のMEA中に用いられる電極は、典型的には、直径が、約30μm〜約200μm、好ましくは約40μm〜約150μmの範囲内であり、たとえば125μmである。
【0014】
電極は、タングステン、ステンレス鋼、プラチナ、プラチナ/イリジウム、カーボンファイバ、伝導性ナノチューブ、カーボンナノチューブ、Elgiloy(登録商標)合金(Elgiloy Specialty Metals、米国、Elgin、IL60123)、または伝導性ポリマー(たとえば、ポリチオフェンまたは酸化ポリピロール)から製造することができる。
【0015】
ワイヤなどの金属電極は、本発明のMEAでは殊に実用的である。たとえばステンレスバネ鋼から形成された形状記憶を有する金属電極を使用することができ、そのような電極は、埋込装置中に組み込まれるMEAには特に有用である。
【0016】
本発明のMEAは、電極の少なくとも1つが中空であるように構築することができる。中空電極は、たとえば、ポリイミド、カーボンたとえばカーボンナノチューブから形成される、あるいは金属、たとえば細い鋼の毛細管から形成される伝導性チューブである。
【0017】
1つまたは複数の中空電極を有するMEAは、埋込装置中に組み込むことができ、それは、たとえば、原薬などの物質の局所的な送達を可能にするため、またはMEAが組織に接触する部位から流動体をサンプリングするため、短時間または長期のインプラントとしてもよい。中空電極は、薬物溜めに結合することができ、そこから原薬を投与することができ、薬物の投与は、MEAによって検知された電気信号を介して制御することができ、したがって特定の電気信号がMEAの電極によって検出されたとき、溜めからの薬物の投与が始動される。そのような長期的なインプラントは、たとえば、尿失禁がある、またはない過活動性膀胱、急迫性尿失禁、混合型尿失禁、てんかん、パーキンソン病、疼痛、心不整脈、不安症、うつ病、または医薬の正確で局所的な投与が必要であるすべての他の症状を治療するために、使用されることが予想される。長期的なインプラントからの局所的な薬物の投与は、計画的に投与することが困難である、または不可能である薬物に特に有用である。
【0018】
スペーサ手段は、複数の電子顕微鏡法のグリッド、たとえば2、3または4つの電子顕微鏡のグリッド、複数の細メッシュのパッチ、たとえば2、3または4つのメッシュパッチ、たとえば(たとえば上記に述べたような間隔の)鋼のメッシュ、または(たとえば上記に述べたような間隔の)チャネルを含むブロックとすることができる。スペーサ手段中のギャップまたはチャネルは、電極をギャップまたはチャネル中に通すことができるように、寸法が決められる。
【0019】
本発明の多電極アレイでは、電極は、規則的なパターンで、または規則的な繰り返されたパターンで離間することができる。電極は、たとえば組織の異なる層を貫通するために、パターン内の電極が様々な長さに設定されるようなパターンで配置することができる。MEAは、電極の同じパターンまたは異なるパターンの複数のブロックを使用して用意することができる。本発明のMEA中の電極は、それらが互いから等距離であるように離間することができる。電極は、たとえば6角形または放射状のパターン(中空でもよい中心電極を有する)で、または正方形パターンでMEA中に配置することができる。
【0020】
スペーサ手段および/またはハウジングは、成型用材料、たとえばアクリル樹脂、プラスチック、熱可塑性物質、熱硬化性物質またはゴム材料から形成することができる。特に埋込装置の場合、スペーサおよび/またはハウジングは、MEAがインプラントの部位で組織の外形に適合することができるように、可撓性材料から形成してもよい。インプラントの場合、ハウジングが生体適合性の熱可塑性材料などの生体適合性材料であることが最も好ましい。
【0021】
電極は、永続的にスペーサ手段に固定することができる。しかし、好ましくは、電極の長さを調節することができるように、また個々の電極が損傷したとき、それを交換することができるように、電極がスペーサ手段に取り外し可能に固定される。電極の長さを調節することができることは、MEAが電気生理学的アッセイに使用されるとき、有用である。というのは、これによって曲線状の外形の組織の表面に接触するように、または組織内の1層に接触するように電極を位置決めすることが可能になるからである。電極は、取り外し可能に電極を固定するために、たとえば可溶性または軟化性の接着剤を使用してスペーサ手段に接着することができ、あるいはスペーサ手段に電極を固定するために、取り外し可能なクランプなど固定手段を使用することができる。
【0022】
本発明の多電極アレイでは、電極は、その先端が平面または非平面構成とすることができるように、永続的に固定することができ、あるいは先端が平面または非平面構成に対して調節することができるように、取り外し可能に固定することができる。
【0023】
各電極は、一般に、電極の検知先端部から遠位にコネクタを含む。コネクタを使用してマルチチャネル電気生理学的データ収集システムにMEAの電極を結合することができ、多くのそのようなシステムは、市販されている(たとえば独国Multichannel Systems GmbH)。
【0024】
コネクタは、押しばめ型コネクタとすることができ、容易に電極を取り付け取り外すことができるように、取り外し可能であることが好ましい。
【0025】
インプラントに含まれるMEAは、テレメトリを使用して遠隔でアクセスすることができる。
【0026】
電極は、典型的には、電極の長さの少なくとも一部分に沿った電気絶縁層またはジャケットを備え、電極の先端が、使用する際、電気的に接触することができるように露出される。適切な絶縁材料には、エポキシライト(epoxylite)樹脂、ガラス、融解水晶、ポリイミド、Parylene-C(商標)、ウレタン、ダイアモンドおよびFormvar(商標)が含まれる。
【0027】
本発明の多電極アレイでは、電極は、電気信号を検出し、かつ電気的に組織を刺激することができる点で、または機械的変換器として働くことができる点で多機能である。
【0028】
本発明のMEAは、移植用の装置、たとえばパーキンソン病による震えを抑制するために視床下核に、またはてんかんおよび疼痛の他の中枢神経系(CNS: central nerve system)の対象を刺激するための深部脳インプラント中に、あるいは埋込型除細動器中に組み込むことができる。そのような埋込装置は、電極の湾曲によって与えられる形状記憶を有する金属電極を組み込むことができ、この特徴は、対象組織内での電極の正確な位置決めのために有用であり、これは、現在得られる装置からの著しい向上を示す。
【0029】
ここに記載するように、インプラントは、局所的な特定部位向けの薬物送達に使用することができる1つまたは複数の中空電極を有するMEAを含むことができる。電極の位置決めおよび/または薬物送達は、埋込装置によって検知された電気信号によって制御することができる。移植中、インプラントは、電気信号を検知およびレポートし、インプラントの正しい位置決めは、電気信号に対する所望の作用がレポートされたとき、検出することができる。本発明のMEAは、埋込型除細動器中に組み込むことができ、インプラントの正しい位置決めは、心臓活動の所望のパターンが検出されたとき、検出することができる。本発明のMEAは、パーキンソン病に関連した震えを抑制するための視床下核向けのインプラント中に組み込むことができる。MEAは、てんかんの抑制のためのインプラント中に組み込むこともできる。
【0030】
アッセイ方法
本発明のMEAは、興奮性組織中で電気信号をモニタするために従来の電気生理学的アッセイ装置中に組み込むことができる。
【0031】
本発明によって、電気生理学的アッセイ、たとえば被検物質、たとえば被検化合物の組織サンプルまたは組織培養物への作用を評価する電気生理学的アッセイにおいて、本発明によるMEAを使用することができる。これらのアッセイは、有力な治療剤を同定し、薬物の副作用を評価し、環境汚染物質、神経作用剤などの有害物質を同定するために使用することができる。
【0032】
本発明のMEAは、汚染物質または毒素および類似物質を検出するための環境モニタ用の検知装置中に組み込むこともできる。
【0033】
本発明は、1態様では、被検物質の生体組織への作用をモニタするための方法をさらに提供し、この方法は、
(a)培地中に生体組織を準備するステップと、
(b)MEA、特に本発明のMEAの電極の先端を組織に接触させるステップと、
(c)電極の1つ、いくつか、またはすべてによって検出された電気信号を記録するステップと、
(d)電極の機械的変換(たとえば、これに対応する電気信号)を記録することによって、および/または光学的手段を使用して、組織中の運動を任意選択で記録するステップと、
(e)被検物質に組織をさらすステップと、
(f)電極(または複数の電極)によって検出された電気信号を記録するステップと、
(g)電極(または複数の電極)の機械的変換を記録することによって、および/または光学的手段を使用して、組織中の運動を任意選択で記録するステップと、
(h)被検物質のある場合とない場合に記録された結果を比較するステップと、
を含む。
【0034】
本発明のMEAは、二重機能の検出器として動作することができる、すなわち、検出器は、筋活動電位またはニューロン活動(これらは高周波電気信号として検出される)、または、たとえば脳切片または全脳中の局所的な電場電位(これらは低周波電気信号として検出される)などの電気信号を検出することができるだけでなく、その電極は、たとえば筋収縮時、収縮組織中の運動を検出することができる機械的力変換器としても動作することができる。変換器は、組織中の運動を電気的エネルギーに変える。というのは、要素が機械的応力を受けたとき、電圧が生成される(典型的には、低周波数、たとえば10Hzより低い信号として検出される)からである。したがって、組織内の電気的活性と運動は、同時に検出することができ、これらのデータは、相互に関連付けることができる。
【0035】
これらの電気信号の検出は、光学的装置の使用と組み合わせて組織内の運動をモニタする、および/または記録することができ、これらのデータは、相互に関連付けることができる。
【0036】
任意の生体組織のサンプルまたは培養物は、本発明の方法で扱うことができる。生体組織は、興奮性および/または非興奮性組織の成分を含むことができる。方法は、脳組織サンプル(たとえば脳切片、全脳)、または脳組織培養物(たとえば器官型/神経の培養物、脊髄標本)などの組織に対する被検物質の作用を評価するのに適した単に電気生理学的アッセイとすることができる。さらに、本発明のMEAは、電気信号および組織の運動をともに検出するために使用することができ、それらは、収縮組織サンプル、たとえば平滑筋(たとえば膀胱、尿道、尿管、輸精管、大動脈、血管、腸間膜、気道平滑筋、気管、気管支、肺、腎動脈、静脈、動脈、胃腸、子宮、瞳孔括約筋、またはリンパ管)、心筋(たとえば、心室、心房または乳頭)、または骨格筋に対する被検物質の作用を評価するための方法で特に役立つ。方法は、筋細胞培養物(たとえば、心筋細胞培養物)または背根神経節などの分散型細胞培養物について実施することができる。
【0037】
本発明のアッセイで使用される組織は、検死サンプルとして得られた(ただし、組織自体は、まだ生きているものとする)、または生体検査によって得られたヒト組織とすることができ、あるいはヒト以外の動物からの組織を使用することができる。
【0038】
組織は、正常組織とすることができ、または特定の症状と関連付けられた組織、たとえばてんかん型活性を見せる動物からの海馬とすることができる。
【0039】
組織サンプルのサンプリング、前処理、および維持管理のための方法、および組織培養、たとえば器官型または分散型細胞培養のための方法は、本分野でよく知られている。同様に、組織サンプルのための培地、および組織培養のための培地は、本分野でよく知られており、本発明の方法で使用される培地の選択は、使用される組織サンプルまたは培養によって決定される。クレブス緩衝液は、膀胱標本などの組織サンプルに使用することができる。脳脊髄液などの生理液を置換するために使用される培地の組成もよく知られている。
【0040】
本発明の方法では、組織は、組織チャンバ中に配置または固定され、被検物質が導入される規定培地または他の生理溶液とすることができる、組織培養培地など適切な培地中に浸される。本発明によるアッセイは、わずかな量の被検物質だけが利用できるとき、特に有効である。というのは、そのようなアッセイは、被検物質を含んだ培地が集められるまたは再循環するように設定することができるからである。培地は、たとえば代謝体、分解生成物、被検化合物の代謝体、または被検物質に反応して組織から放出された2次メッセンジャー物質を検出するためにアッセイ中の時点でサンプルし、解析することができる。
【0041】
有力な治療剤として被検物質の作用を評価することに加えて、本発明の方法は、異常な神経または筋肉の活動など、起こり得る副作用を検出する上で役立つ。
【0042】
MEA装置の電極は、組織上に配置されるように、またはその中に貫通するように組織と接触させられる。
【0043】
本発明のMEAでは、電極は、平面方式で配置することができるが、電極が平面でないように調節することもでき、それによって、電極は、組織の表面で、または組織内の1層または複数の層と接触するように組織中に貫通して、組織の外形に合うように構成することができる。本発明のMEAは、圧迫損傷なしに組織の調査を可能にし、所望によって、組織の同じ層に、または異なる層に電極を接触させることができる点でユニークである。本発明のMEAは、制御しながら組織切片の表面上の壊死組織層中を貫通することができる点でもユニークである。本発明によるMEAは、組織の上部に配置することができ、かつ組織上に容易に再配置することができる、あるいは組織中に貫通することができるものである。
【0044】
高周波信号の検出によって組織内の電気的活性に関するデータが得られ、低周波信号(機械的変換器として動作する電極から生じる)の検出によって組織内の運動が表示される。方法は、組織の運動(持続性収縮または主収縮)をモニタするために光学装置を使用することができる。電気的活性に対する被検物質の作用および組織の関連する運動性反応は、モニタし評価することができる。
【0045】
本発明の方法は、イオンチャネルの開閉に関連する電気的活性および薬理学的作用剤として働く被検化合物によるそれらの活性調節を測定するために、使用することができる。筋組織の場合、収縮および伸長の付随した変化と収縮現象の頻度をモニタすることができる。
【0046】
多くの様々なタイプのイオンチャネルをエンコードする少なくとも400個のイオンチャネル遺伝子が存在する。すべての細胞は、同じタイプのイオンチャネルを含まず、正確には、同じ相補体のイオンチャネルを含む。イオンチャネルの挙動は、あるクラス内でさえ極めて異なることがある。
【0047】
一般に、細胞の静止膜電位で、ナトリウムチャネルおよびカルシウムチャネルの活性化(開くこと)は、興奮性であり、カリウムチャネルを閉じることは、興奮性である。したがって、筋細胞の場合、ナトリウムチャネルおよび/またはカルシウムチャネルの活性化は、収縮を促進することになり、カリウムチャネルの抑制は、同様の作用を有することになる。同じ原理が、分泌細胞に適用でき、そこではナトリウムチャネルおよび/またはカルシウムチャネルの活性化が、たとえばホルモンの分泌を促進する。神経細胞の場合、ナトリウムチャネルおよび/またはカルシウムチャネルの活性化は、ニューロン発射を促進し、かつニューロンのトラフィックを増加し、カリウムチャネルの抑制は、同様の作用を有することになる。したがって、イオンチャネルの活性の薬理学的調節は、細胞活動を促進する、または抑制する、いずれかを行い、したがって組織活性を促進し、または抑制することができる。
【0048】
カリウムチャネルを閉鎖する被検化合物は、筋収縮、ニューロン発射またはホルモン分泌を促進する。カリウムチャネルを開く被検化合物は、その逆の作用を有する。
【0049】
ナトリウムチャネルを閉鎖する被検化合物は、筋収縮、ニューロン発射またはホルモン分泌を抑制する。ナトリウムチャネルを開く被検化合物は、その逆の作用を有する。
【0050】
カルシウムチャネルを閉鎖する被検化合物は、筋収縮、ニューロン発射またはホルモン分泌を抑制する。カルシウムチャネルを開く被検化合物は、その逆の作用を有する。
【0051】
したがって、本発明の方法は、興奮性活性を調節する化合物などの物質、たとえばそのような活性を抑制する化合物、またはそのような活性を促進する化合物を検出するのに有効である。興奮性活性を抑制する化合物は、尿失禁があるまたはない過活動性膀胱、急迫性尿失禁、混合型尿失禁、疼痛(たとえば神経因性疼痛)、耳鳴りまたはてんかんなど、興奮性が増加される症状の治療に役立つ。興奮性活性を促進する化合物は、パーキンソン病、ハンチントン病またはアルツハイマー病など、ネットワーク興奮性が減少される、または損なわれる症状に有効である。本発明の方法は、被検化合物の起こり得る副作用を検出するのにも役立つ。
【0052】
本発明の方法では、生体組織は、被検化合物にさらされる前に興奮状態にさせることができる。これは、尿失禁があるまたはない過活動性膀胱、急迫性尿失禁、混合型尿失禁、疼痛(たとえば神経因性疼痛)、耳鳴りまたはてんかんなど異常興奮性の症状の治療に役立つことができる興奮性活性を抑制する化合物を検出するのに有効である。
【0053】
本発明の方法では、MEAの各電極は、関心ある組織内の同じまたは1つの層、たとえば筋細胞の層と接触させることができ、それは、極めて有利な場合がある。神経組織および平滑筋は、細胞の2つ以上の層から構成されることがしばしばであり、各細胞のタイプは、異なる機能を果たす。1つの層または細胞、すなわち単一細胞タイプ中の反応をモニタするために、アレイ中の電極のそれぞれが関心のある細胞層と接触することは、重要である。
【0054】
信号は、2、4、8、16、32、64、128、256または512個の電極から検出することができる。少数の電極は、基準電極およびグランド電極として使用し、それに対して他の読みが参照されて電圧測定値を得ることができる。たとえば、64個の電極のMEAを使用したとき、4つの電極、たとえば4つの隅部の電極は、基準電極またはグランド電極として使用するように選択することができる。あるいは、MEA中の電極のすべてからの信号は、MEAから離れて配置される基準電極およびグランド電極に対して記録することができる。
【0055】
電気信号は、従来の方法で記録する、および/または処理することができる。信号は、連続して記録することができ、または適切な時間区間中に取る、たとえば10または20秒毎に「ビンに入れる(binned)」ことができる。電極の機械的変換は、検出/記録することもできる。
【0056】
さらに、または代替えとして、組織の運動は、ビデオ装置、たとえばビデオ顕微鏡などの光学的手段を使用して記録することができる。画像解析ソフトウェアを使用して組織の画像上の位置をマークし、それらの運動をトレースすることができる。
【0057】
代替えとして、またはさらに、光学的手段による運動の検出/モニタを容易にするために電圧感受性染料またはカルシウム感受性染料を培地中に含めることができる。そのような染料は、容易に入手することができる(たとえば、Molecular Probesから、米国オレゴン州)。興奮性が増加すると電圧変化が発生して、そのような染料に蛍光を出させ、これは、市販の装置を使用して測定することができる。
【0058】
被検物質がある場合とない場合に記録された結果は、比較することができる。いくつかの実施形態では、組織の電気的活性を組織の運動と相互に関連付けると、被検物質がある場合とない場合の組織の時空間ダイナミックスを評価することができ、そのデータを比較して組織に対する被検化合物の作用を決定することができる。データは、クロノトポグラム(chronotopogram)または「ムービー」として提示することができる。
【0059】
本発明による方法は、組織内の細胞または複数の細胞についてのパッチクランプアッセイなどの細胞内電気生理学的アッセイを実施するステップをさらに含むことができる。細胞内アッセイは、組織内の細胞の細胞内状態についてのデータを得るために実施することができ、そのデータを、MEAを使用して検出された細胞外の活性と相互に関連付けることができる。このようにしてなされた記録から、MEAデータの付属物として化合物の働きのメカニズムの細部が得られる。
【0060】
本発明は、被検物質のヒト以外の動物への作用をモニタするためのアッセイ方法をさらに提供し、この方法は、
(a)麻酔されたヒト以外の動物を準備するステップと、
(b)動物中の所望の部位に本発明によるMEAの電極を移植するステップと、
(c)被検物質の投与前および投与後に電極によって検出された電気信号を記録するステップと、
(d)被検物質の投与前および投与後に記録された電気信号を比較するステップと、
を含む。
【0061】
ヒト以外の動物は、典型的には、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ヒト以外の霊長類、犬または猫である。
【0062】
移植部位は、平滑筋(たとえば、膀胱内の)、脊髄または脳など、ヒト以外の動物の体内の関心がある任意の組織とすることができる。
【0063】
本発明は、金属電極を製造する方法をさらに提供し、この方法は、
(a)実質的に平行な形で互いから離間され、かつマンドレルに固定された複数の金属ワイヤを設けるステップと、
(b)ワイヤ間に電気的接続部を形成するステップと、
(c)AC電源の第1のポートに電気的接続部を取り付けるステップと、
(d)エッチング溶液中に所定の深さまで金属ワイヤを浸漬して引き出すことを繰り返すステップであって、低電圧AC電流がエッチング溶液中のワイヤと伝導体(たとえば、カーボンロッドまたはプレート)の間に供給され、伝導体は、AC電源の第2のポートに取り付けられる、ステップと、
(e)ワイヤを電気エッチングすることによって形成された電極を洗浄し乾燥させるステップと、
を含む。
【0064】
金属ワイヤは、タングステンワイヤとすることができ、直径が最初約100μm〜約150μmの範囲内であり、たとえば125μmである。タングステンについて使用するのに適切なエッチング溶液は、Levick溶液(たとえば、10mol/1窒化ナトリウムおよび6mol/1水酸化カリウム)である。
【0065】
あるいは、金属ワイヤは、ステンレス鋼のワイヤとすることができ、エッチング溶液は、シアン化カリウムまたは濃硫酸とすることができ、任意選択で鉱油またはキシロールで上塗りすることができる。
【0066】
ワイヤは、一般に、実質的に平行な形でマンドレル上に数mm離間される。これは、各ワイヤが同程度にエッチングされることを保証するためであり、同様の直径および電気的インピーダンスの、整合されたセットの電極を設ける上で役立つ。
【0067】
ワイヤ間の電気的接続部は、ワイヤが接続される表面が伝導性であるマンドレルを使用して製作することができる。
【0068】
ワイヤは、電極の先端が所望の直径、好適には約1μmになるまで電気エッチングされる。伝導体は、カーボンロッドなどのロッドとすることができる。マンドレルは、浸漬手順中、電極がロッドのまわりに放射線状に配置されるように、断面を円形とすることができる。
【0069】
印加するAC電流は、典型的には、4〜8Vの範囲内、たとえば6Vである。
【0070】
一般に、電極は、所望のようにワイヤを細くして電極を形成するために、エッチング溶液中に約150〜210回、たとえば180回浸漬される。
【0071】
エッチングの後、マンドレルが切り離され、電極は、たとえば2回蒸留水または逆浸透浄化水に浸漬することによって洗浄され、たとえば空気乾燥によって乾燥される。
【0072】
電気エッチングの後、電極には絶縁材料の層を設けることができる。これは、液体の形の絶縁材料中に電極を浸漬(たとえば、1回のゆっくりした浸漬)することによって実施することができ、塗布される絶縁層の厚さは、電極が絶縁材料から引き抜かれる速度によって制御することができ、電極は、まだマンドレルに取り付けられている間に、絶縁材料中に浸漬することができ、これは、絶縁被膜の厚さが同様である電極を製造するのに役立つ。あるいは、絶縁層は、気相中で塗布することができる。
【0073】
電極を被覆するために使用することができる絶縁材料には、エポキシライト(Epoxylite)樹脂、ガラス、融解水晶、ポリイミド、Parylene-C(商標)、ウレタン、ダイアモンドおよびFormvar(商標)が含まれる。
【0074】
電極先端は、使用する前に絶縁が除去される。易熱性絶縁材料の場合、これは、加熱されたプラチナワイヤを使用して絶縁材料を融解するまたは焼き払い、それによって電極先端で数百ミクロンを露出させることによって達成することができる。あるいは、絶縁材料は、レーザを使用して除去する、または溶かして除去することができる。
【0075】
次いで、電極のインピーダンスを試験することができる。任意選択で、所望の寸法およびインピーダンスに電極先端を形成するために、各電極上に通常個別で第2のエッチングを行うことができる。
【0076】
電極先端は、円錐形、円筒形、または弾丸形状にすることができる。円錐形先端は、組織を「かぎ裂く」ことがある鋭い突起部を有しがちである。本発明のMEAでは、電極の先端が、弾丸の先端のような形状に形作られることが好ましい。というのは、この形状は、組織中に挿入され、そこから引き抜かれたとき、損傷が少ないことが判明しているからである。先端は、たとえばエッチングまたは研磨によって、またはレーザを使用して形作ることができる。第2のエッチングの後、電極のインピーダンスを再び測定することができる。
【0077】
任意選択で、電極先端は、この技術分野でよく知られた技法を使用して、金または銀で被覆することができる。金で被覆された電極先端は、任意選択で白金黒で被覆することができる。タングステンなどのいくつかの金属は、長期間の移植中に細胞傷害性になる恐れがあり、したがって細胞傷害作用を軽減するために金によって被覆することができる。金被覆の電極先端は、より容易な可視状態であり、それによって組織中への電極の位置決めが容易になる。白金黒によって被覆された電極が望ましい。というのは、それらは、被覆されていない電極よりインピーダンスが低く、信号対雑音比がより高いからである。
【0078】
本発明は、マイクロアレイ中で使用される金属電極のセットを製造する方法をまたさらに提供し、その方法は、前駆体電極ワイヤを共通電気伝導体に接続するステップと、エッチングバス中で一緒に電極ワイヤを電気化学的にエッチングして該電極のそれぞれの先端を細くするステップを含み、それによって、この方法は、電極の実質的に整合されたセットを生成する。
【0079】
さらに、本発明は、ここに述べる方法によって製造される電極の整合されたセットを提供する。
【0080】
本発明は、本発明の多電極アレイを製造する方法も提供し、この方法は、
(a)複数の電極を設けるステップと、
(b)スペーサ手段の異なるギャップまたはチャネル中に各電極を通すことによって互いから電極を離間するステップと、
(c)スペーサ手段に電極を固定するステップと、
(d)ハウジング内でスペーサ手段をカプセル化するステップと、
を含む。
【0081】
この態様では、ここに述べるMEAは、複数の電子顕微鏡グリッドを使用して電極を互いから離間することによって用意することができ、または代替え実施形態として複数の細メッシュのパッチを使用することができる。
【0082】
本発明は、本発明の多電極アレイを製造する方法も提供し、その方法は、
(a)複数の電極を設けるステップと、
(b)スペーサ手段の異なるチャネル中に各電極を通し、スペーサ手段に電極を固定することによって互いから電極を離間するステップであって、スペーサ手段は、スペーサ手段を含むハウジングの不可欠な部分である、ステップと、
を含む。
【0083】
構築するためのこの代替え方法では、電極は、ブロック中のチャネル中を通されて電極のアレイ配置が達成される。ブロック手法は、現在利用されているものよりはるかに大きいアレイを組み上げるために使用することができる。ブロック手法は、非平面の先端構成で電極を容易に配置することができ、さらに、速溶性または軟化性の接着剤または解除可能なクランプなどの取り外し可能な固定手段を使用して、電極を容易に取り外し、再配置し、または置換することができる点で有利である。
【0084】
電極は、その直径およびインピーダンスが同程度であるように調和がとれていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の、要素が60個ありNeuroZond(商標)MEAと称する多電極アレイを示す図である。
【図2】本発明のMEAデータ記録システムの概要を示す図である。
【図3】平滑筋活性の知られた調節器を使用して得られたデータを示す図である。
【図4】平滑筋内のニューロン活動に対する作用を示す図である(本発明の60チャネルNeuroZond(商標)MEAが使用された)。
【図5】全部のMEAシステムの写真を示す図である。
【図6】使用中のMEAの写真を示す図である。
【図7】MEAシステムを使用して(本発明の60チャネルNeuroZond MEAが使用された)、生体外フロントラットの視床下部腹内側部の核構造内の小細胞からさえ得られた信号対雑音比が、優れていることを示す図である。
【図8】この症状でラットの縁前方前頭葉内で、各部位におけるアレイにわたった様々なニューロンのタイプの活動を示す図である。
【図9】短時間生体内記録が、きゅう球中で実施された事例研究を示す図である。
【図10】同じ濃度(5.42×10-6M)の2つの臭気、すなわち(a)cineoneおよび(b)ピネン(pinene)(マークされた「オフ反応」に留意)について、きゅう球中で短時間生体内の記録中に様々な時空間ダイナミックスを検出することができることを示す図である。
【図11】抗肥満化合物の生体外アッセイ、すなわち組織浸漬溶液中で3mMのグルコースの投与時、ラットの視床下部腹内側部中の「グルコース反応性」(GR: glucose responsive)細胞および「グルコース感受性」(GS: glucose sensitive)細胞のレートメータ出力(VMH灰色領域、丸く囲む)を示す図である。
【図12】ラットVMH中の「グルコース反応性」ニューロンのレートメータ出力として示された、抗肥満の生体外アッセイで得られたデータについて、発射に対する時間(秒)のグラフ(5000〜6000秒から、%)を示し、3mMのグルコースを投与の後に薬物PYM50057が1μM(■)、3μM(●)および10μM(▲)で導入された図である。
【図13】ニューロン発射に対する3分間の8-OH-DPAT(●)30nMの作用、すなわちラット中脳の背側縫線/MEAを示す図である。
【図14】ニューロン発射に対するレチガビンおよびXE-991の作用、すなわちラット背側縫線/MEAを示す図である。
【図15】XE-991によるレチガビン抑制の回復を表す(図14の)チャネル34、43、48および57の記録を示す図である(不均一性に留意)。
【図16】ピークトゥピーク(p-p)振幅の周波数、すなわちNタイプのカルシウムチャネルのβサブユニットを対象とする被検化合物(10μM)による、横内嗅皮質の水平型スライスにおけるてんかん活性に対する作用の例を示す図である。
【図17】LFP記録で第1のタイプのてんかん関連の活性、すなわちアレイにわたって様々な程度で同期した「発作間スパイク」を示す図である。
【図18】アレイ幅で同期した本格的な発作の(または電子写真の)発病の例を表示する図である。
【図19】LFPデータストリームと同時に記録された同期したユニット発射の例を表す図である。
【図20】電極が様々な長さである長期生体内の頭部インプラントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1に、本発明の、要素が60個ありNeuroZond(商標)MEAと称する多電極アレイを示す。このMEAは、タングステン電極を使用して構成されており、その電極は、直径が125μmであり、エポキシライト(Epoxylite)によって被覆され、先端が露出され、「100メッシュ」の正方形に詰め込まれた構成を使用して離間される。
【0087】
個々の伝導性要素に最も通常に使用される材料は、タングステンである。したがって、電解手段によって容易に「微細加工できる」という利点があり、極めて硬い。ステンレス鋼は、埋込装置にはより良いが、扱うのはより困難である。100〜800KΩの範囲内(たとえば300KΩ)のインピーダンス値は、局所的な電場電位(LFP: local field potential)およびユニット活動を同時に良好な信号/雑音比で記録するのに最適である。正方形のパッケージ形態は、細胞構築学に基づき(たとえば電流源密度解析)、様々なデータ解析を実施するために最適であり、一方6角形のパッケージは、組織の単位容積当たりのチャネル数(スペーサのメッシュサイズが同じ)に関する限り若干の利点を有する。スペーサ材料は、いずれのパッケージ形態によっても任意の数のチャネルを作り上げるために現在使用することができる。
【0088】
本発明のMEAは、すべての主なデータ収集システムおよびすべてのコネクタのタイプに適合するように製作することができ、たとえば、それらは、従来の「Michigan Probe」ホルダおよびすべてのキャリアに適合する。
【0089】
図2に、本発明のMEAデータ記録システムの概要を示す。
【0090】
図3に、平滑筋活性の知られた調節器を使用して得られたデータを示す。MEAシステムを使用して(本発明の60チャネルNeuroZond(商標)MEAが使用された)記録された膀胱筋の自発性筋収縮の知られた活性調節器の作用を示す。トレースは、単位が分で実験時間に対してプロットした5分間の収縮数を示す。
【0091】
アセチルコリン(Ach、100μM)の使用は、活性を増加させた。回復後、KCNQ2/3活性化因子レチガビン(retigabine)が一過性収縮を抑制した。35℃から37℃へ潅水液温度を上げると活性量が増加した。最後に、Lタイプのカルシウムチャネル拮抗剤ニフェジピン(nifedipine)が添加された。これによって、すべての一過性収縮が予想されたように阻止された。
【0092】
図4に、平滑筋内のニューロン活動に対する作用を示す(本発明の60チャネルNeuroZond MEAが使用された)。A.最初、標本が12.5μMのニフェジピン中に浸漬され、これは、1500秒から2000秒の期間50μMのニフェジピンに変更された。これは、最初の興奮状態を引き起こし、その後活性がほとんど完全に阻止された。トレースがレートメータの記録だけであるが、発射パターンがこの粗いレベルの解析で隣接したチャネルとは同じでないことを、それでも見ることができる。B.チャネル22が、拡大して示してある。
【0093】
図5に、全部のMEAシステムの写真を示す。
【0094】
図6に、使用中のMEAの写真を示す。
【0095】
図7に、MEAシステムを使用して(本発明の60チャネルNeuroZond MEAが使用された)、生体外フロントラットの視床下部腹内側部の核構造内の小細胞からさえ得られた信号対雑音比が優れていることを示す。従来のスライス技法が使用され、スライスは、約4ml/分で浸み込ませた。これらの構造中の細胞は、これらが星型の形状であるので微小な「閉」電場を生成し、これらの細胞の集団から記録することができことが、本発明の主な利点である。
【0096】
図8に、この症状でラットの縁前方前頭葉内で各部位におけるアレイにわたって、様々なニューロンのタイプの活動を示す。これは、抑制性介在ニューロン(閾値と交差するより微小な信号)および主要突起細胞(錐体細胞)の両方の自発性活動を同時に正常な生理学的状態下で(従来の35℃のACSF培地中で)記録することができることを示す。
【0097】
図9に、短時間生体内記録がきゅう球中で実施された事例研究を示す。きゅう球僧帽細胞からの多電極アレイ記録を示す(5×5アレイ)。1.自発性集団バースト。2.制御、臭気なし。3.酢酸アミル。4.N-ブタノール。5.シネオール。6.ピネン。7.DL-カンフル。8.リナロール(最大反応)。9.リナロール「オフ反応」。すべては、濃度が2.7×10-5Mである。
【0098】
結果は、きゅう球中におけるピーク臭気反応のニューロン活動マップとして示す。これらの記録は、ウレタンで麻酔をかけられ定位固定ユニット内で固定された雄のウィスターラット(Wister rat)(400g)から記録された。本発明のNeuroZond MEAは、左きゅう球中に水平に突き通された(左除核後)。臭気は、正常の呼吸サイクルの制御下で動物の呼吸気中に存在し(マスク中のサーミスタプローブによって検出された)、貯蔵された純窒素によって希釈された。臭気物質の濃度は、特定の温度において臭気物質の相対飽和蒸気圧に従って特注の「きゅう覚計」によって決定された。
【0099】
図10に、同じ濃度(5.42×10-6M)の2つの臭気、すなわち(a)cineoneおよび(b)ピネン(pinene)(マークされた「オフ反応」に留意)について、きゅう球中で短時間生体内記録中に様々な時空間ダイナミックスを検出することができることを示す。
【0100】
図11に、抗肥満化合物の生体外アッセイ、すなわち組織浸漬溶液中で3mMのグルコースの投与時、ラットの視床下部腹内側部(VMH: ventromedial hypothalamus)中の「グルコース反応性」(GR: glucose responsive)細胞および「グルコース感受性」(GS: glucose sensitive)細胞のレートメータ出力(VMH灰色領域、丸く囲む)を示す。GR細胞は、3mMのグルコースの投与時、自発性発射の低下を示し、GS細胞は、その逆を示す。GR細胞に対する3mMのグルコースの作用を模倣する化合物は、抗肥満薬として使用することができる、つまり、GR細胞が「満腹回路」の重要な部分を形成するからである。
【0101】
図12に、ラットVMH中の「グルコース反応性」ニューロンのレートメータ出力として示された抗肥満の生体外アッセイで得られたデータについて、発射に対する時間(秒)のグラフ(5000〜6000秒から、%)を示し、3mMのグルコースを投与の後に、薬物PYM50057が1μM(■)、3μM(●)および10μM(▲)で導入された。
【0102】
図13に、ニューロン発射に対する3分間の8-OH-DPAT(●)30nMの作用、すなわちラット中脳の背側縫線/MEAを示す。これらの細胞は、セロトニンを含み、気分および睡眠のパターンを制御する上で特に重要である。
【0103】
図14に、ニューロン発射に対するレチガビンおよびXE-991の作用、すなわちラット背側縫線/MEAを示す。レチガビンおよびXE-991は、カリウムチャネルの特定の群(KCNQ)に作用する。
【0104】
図15に、XE-991によるレチガビン抑制の回復を表す(図14の)チャネル34、43、48および57の記録を示す(不均一性に留意)。
【0105】
図16に、ピークトゥピーク(p-p)振幅の周波数、すなわちNタイプのカルシウムチャネルのβサブユニットを対象とする被検化合物(10μM)による、横内嗅皮質の水平型スライスにおけるてんかん活性に対する作用の例を示す。最初の2000秒は、ゼロマグネシウムACSF(artificial cerebrospinal fluid:人工脳脊髄液)の再循環による制御期間を示す。4000秒で、これが供試の化合物を含むACSF容器に切り替えられる。プロットは、LFP記録で「てんかんの特徴」の発生(小円)、および時間に対するそれらのp-p振幅(Y軸による)を表す。これらの事象が10秒間のビン中で2つ以上ある場合、範囲は、縦線が加わる。
【0106】
図17に、LFP記録で第1のタイプのてんかん関連の活性、すなわちアレイにわたって様々な程度で同期した「発作間スパイク」を示す。
【0107】
図18に、アレイ幅で同期した本格的な発作の(または電子写真の)発病の例を表示する。
【0108】
図19に、LFPデータストリームと同時に記録された同期したユニット発射の例を表す。これらの大きな振幅のユニット発射は、発作の発病の始まりと関連付けられる。これらのスパイクは、実際、高周波数バースト内の最初の放電である。
【0109】
図20に、電極が様々な長さである長期生体内の頭部インプラントを示す。このタイプのインプラントは、ステンレス鋼のメッシュ(100メッシュ)のスペーサ材料シートを使用して製造された。個々の伝導性要素は、アレイ全体にわたって500ミクロン刻み(500ミクロン〜8mm)で長さを繰り返す順序で配列された。(目盛バーが1mmであることに注意)。そのようなインプラントの主な対象は、霊長類などのより大きい脊椎動物の皮質または脊髄の様々な部分であり、それらは、全身麻酔中で定位固定/X線制御下で硬膜を除去し軟膜の酵素による軟化後に移植される。そのような装置は、研究目的で使用されるだけでなく、本当の「神経人工器官」での前進ステップに相当する、つまり殊に、それらは、多くの様々な神経層に同時にポールを付けることができるからである。
【0110】
実施例
MEA方法
1.神経組織(脳スライス)
Charles Riverから得られたウィスターラット(Wister rat)またはマウスが、頚椎脱臼によって犠牲にされた。脳が迅速に除去され、関連のある領域を含む組織のブロックが準備された。脳組織は、シアノアクリレート接着剤(cyanoacylate glue)(Permabond C2)を使用して、ガラスのスライド上に接着された。ブロックは、脳ブロックの背後に直接接着された同様サイズの寒天ブロック(NaCl、126mM中3%)によって支持された。該脳スライスのコロナル面スライス(厚さ300μm)が、Vibratome(商標)(Oxford Instruments、Intracel社供給、Unit 4、英国、Station Road、Shepreth、Royston、Herts)を使用して脳から切り取られた。このスライスは、人工脳脊髄液(ACSF: artificial cerebrospinal fluid)に移され、この人工脳脊髄液は、(mMで)NaCl 126、KCl 5、NaH2PO4 1.24、CaCl2 2.4、MgCl2 1.3、NaHCO3 26、グロコース10をpH7.4で含み、「カルボゲン(carbogen)」(95% O2/5% CO2)によって連続的に泡立てられ、かつ室温に維持された。
【0111】
記録するため、個々のスライスは、専用の多電極アレイ(MEA)記録チャンバ/電子インターフェースの組み合わせに移され、そこで、それらは、33.2〜35.4℃(典型的には35℃)で、グルコース(10mM)を有し4〜4.5ml/分で流れるACSFを浸み込ませた。多電極アレイシステムは、規則的な8×8アレイで60個の電極から構成された(4つの隅部のチャネルは、共通グラウンドであり、したがって60個の電極から記録することができる)。
【0112】
MEAは、顕微鏡(ビデオ顕微鏡、OCU-CAM、PCE Power Control)を用いたスライスに対する3次元の制御下での背側侵入を用いて、位置決めすることができる「さすらうプローブ」(NeuroZond(商標)、ここで述べるように「社内で」設計され構築された)の部分を形成する。この技法は、スライス中の細胞構築学的標識を使用して標本の間における電極配置の整合性をもたらす。NeuroZond MEA中の個々の電極は、タングステンファイバから製作され、その先端が細くなるように電解でエッチングされ、3層のエポキシライト(Epoxylite)によって絶縁され、組織を傷つけずスライス中に容易に貫通することができるような規定された先端形状/インピーダンス値を得るために「微細加工される」(インピーダンス値は、100〜800KΩ)。電極間の間隔は、250μMであった。
【0113】
細胞外活動電位は、電極当たり、孤立ニューロンまたはいくつかのニューロンのいずれかから記録された。アレイの形状および寸法によって、対象構造からだけでなく、密接して位置した他の核/層からも、代表的なニューロンの集団または集合体をサンプルすることが可能であった。様々なアレイ中の個々の電極は、固定×10の利得を有する8チャネルのヘッドステージ増幅器のクラスターによって連続的に接続される(MPA-8、Multi Channel System、MCS GmbH、独国、Aspenhaustrasse 21、72770、Reutingen、Scientifica供給、Herts)。次いで、これらの前処理された広帯域の信号は、接続分離箱を介して64チャネルのプログラム可能な増幅器に送られ、そこから、高性能2重CPUの研究所のコンピュータに搭載された128チャネルのデータ収集ボードの半分のチャネルに送られる。データが、「仮想機器」ソフトウェアパッケージ、MCRack (MCS、Multi Channel Rack V3.5.1)によって収集され表示され、次の記録パラメータ、5000×の総利得、300Hz〜6KHzの帯域通過(ユニット活動用)、あるいは0.1Hz〜100、150または300Hzの帯域通過(局所電場電位用、LFP: local field potential)、1チャネルあたり25Kのサンプリングレート(A/D変換)、ならびに-4096〜+4095mVのA/D電圧範囲が全体にわたって用いられた。
【0114】
事前に設定された電圧閾値(それぞれ-12および-8μV)を横切ったすべてのスパイク波形またはLFP「事象」が、「タイムスタンプ」(すなわち「発生時刻」)および「スパイク切り出し」(すなわち、閾値通過前およびその後の2値化された波形)の両方として格納された。すべての実験データは、ハードディスク上に直接記録され、データ保存の様々な手段にバックアップが取られた。
【0115】
レートメータのヒストグラムが、データチャネルのそれぞれに作成された。このようにして、自発性活動を組み立てて地形的に表現することが可能である。被検物質が、灌流システムによって施され(「徐々に減るようにする」自重送りによって、または組織/化合物に依存するが通常0.1μM〜100μMの範囲内の濃度で再循環されて、いずれかで)、自発性活動に対する作用が、被検物質を除去した後の回復時間の測定と合わせて判定された。
【0116】
2.平滑筋(膀胱)
Charles Riverからのウィスターラットまたはマウスは、頚椎脱臼によって犠牲にされた。膀胱が取り出されて開かれ、Sylgard皿上に平坦なシートとしてピンで留められた。過活動性膀胱の研究のため、尿管上皮が除去された。
【0117】
膀胱シートは、記録チャンバに移され、そこで、人工脳脊髄液(ACSF)を浸み込ませ、その人工脳脊髄液は、(mMで)NaCl 126、KCl 5、NaH2PO4 1.24、CaCl2 2.4、MgCl2 1.3、NaHCO3 26およびグロコース10をpH7.4で含み、「カルボゲン」(95% O2/5% CO2)によって連続的に泡立てられ、35℃に維持され、かつ4.5ml/分で流れる。
【0118】
多電極アレイシステムは、規則的な8×8アレイで60個の電極から構成された(4つの隅部の電極は、共通グラウンドであり、したがって60個の電極から記録することができる)。
【0119】
MEAは、顕微鏡(ビデオ顕微鏡、OCU-CAM、PCE Power Control)を用いた膀胱シートに対して3次元での制御下で背側侵入を用いて、位置決めすることができる「さすらうプローブ」(NeuroZond、ここで述べるように「社内で」設計され構築された)の部分を形成する。この技法は、シート中の細胞構築学的標識を使用して標本の間における電極配置の整合性をもたらす。NeuroZond MEA中の個々の電極は、タングステンファイバから製作され、その先端が細くなるように電解でエッチングされ、3層のエポキシライトによって絶縁され、組織を傷つけず容易に組織に貫通することができるために、規定された先端形状/インピーダンス値(上記に述べたようなインピーダンス値)が得られるように「微細加工される」。電極間の間隔は、250μMである。
【0120】
細胞外筋活動電位は、電極当たり、孤立排尿筋細胞またはいくつかの細胞のいずれかから記録される。様々なアレイ中の個々の電極は、固定×10の利得を有する8チャネルのヘッドステージ増幅器のクラスターによって連続的に接続される(MPA-8、Multi Channel System、MCS GmbH、独国、Aspenhaustrasse 21、72770、Reutingen、Scientifica供給、英国、Herts)。次いで、これらの前処理された広帯域の信号は、接続分離箱を介して64チャネルのプログラム可能な増幅器に送られ、そこから、高性能2重CPUの研究所のコンピュータに搭載された128チャネルのデータ収集ボードの半分のチャネルに送られる。データが、「仮想機器」ソフトウェアパッケージ、MCRack (MCS、Multi Channel Rack V2.2.2.1)によって収集され表示され、次の記録パラメータ、すなわち5000×の総利得、100Hz〜1KHzの帯域通過、1チャネルあたり25Kのサンプリングレート(A/D変換)および-4096〜+4095mVのA/D電圧範囲が全体にわたって用いられた。
【0121】
事前に設定された電圧閾値(-15μV)を横切ったすべてのスパイク波形が、「タイムスタンプ」(すなわち「発生時刻」)および「スパイク切り出し」(すなわち、閾値通過前およびその後の2値化された波形)の両方として格納された。すべての実験データは、ハードディスク上に直接記録され、CD上にバックアップが取られた。
【0122】
レートメータのヒストグラムがデータチャネルのそれぞれに作成された。このようにして、自発性活動を地形的な表現で表すことが可能であった。被検物質が、灌流システム(神経組織について述べたような)によって施され、自発性活動に対するその作用が、被検物質を除去した後の回復時間の測定と合わせて判定された。
【0123】
MEAは、膀胱シートから高周波数電気的活性を記録しながら筋収縮の結果としての低周波信号を記録するために使用することもできる。自発性筋運動をビデオで追跡記録するために、シートの下に置かれたビデオカメラも使用することができる。
【0124】
3.平滑筋活性の知られた調節器を使用したMEAデータ
膀胱筋の自発性筋収縮の知られた調節器の作用は、上記に述べたMEAシステムを使用して記録された。図3に、トレースに、単位が分の実験の時間に対してプロットされた5分間の収縮数が示されている。
【0125】
アセチルコリン(Ach、100μM)の使用は、活性を増加させた。回復の後、KCNQ2/3活性化因子レチガビン(retigabine)(10μM)が一過性収縮を抑制した。35℃から37℃へ潅水液温度を上げると活性量が増加した。最後に、Lタイプのカルシウムチャネル拮抗剤ニフェジピン(nifedipine)が添加された。これによってすべての一過性の活動が予想されたように阻止された。
【0126】
4.MEA-平滑筋中のニューロン活動への作用
図4Aに、MEA全体にわたった電気的活性の記録を示す。最初、標本が12.5μMのニフェジピン中に浸漬され、これが1500秒から2000秒の期間50μMのニフェジピンに変更された。これは、最初の興奮状態を引き起こし、その後活性がほとんど完全に阻止された。トレースがレートメータの記録だけであるが、発射パターンがこの粗いレベルの解析で隣接したチャネルとは同じでないことを、それでも見ることができる。1つのチャネル、チャネル22が、図4Bで拡大して示してある。
【0127】
5.多電極アレイ(MEA)データ用の解析アルゴリズム
このような実験から得られた途方もない数量のデータの有意義な解析における重要な問題は、実験者が使用する情報が、ニューロンの大きな集団またはネットワーク内で、およびそれらの間でともに表現された複雑な時空間ダイナミックス中に埋まっているということにある。細胞外で記録されたニューロンの放電または「スパイク」(レートメータ出力の生成など、時間に対してプロットされた単一チャネル上に発射周波数の変化をグラフィカルに表現するもの)の解析および表現のための従来の技法は、そのようなデータセットから適切な情報を抽出することができない。
【0128】
多電極記録から得られたデータを解析するために、「重力クラスタリング(gravitational clustering)」およびその開発、および「連合刺激前後時間ヒストグラム(joint-peri-stimulus time histogram: joint-PSTH)」および「集団ベクトル(population vector)」の構築など、いくつか最近新しい技法が開発されている。しかし、これらの技法は、サンプルされ、通常特定の事象(感覚または電気的刺激、またはモータ出力)に時間が固定された集団内の個々の細胞間の関係の多重対解析(multiple pairwise analysis)に、ほとんど基づいている。そのような形であるこれらの方法は、MEAベースのアッセイに特有である大量の並列的な、かつ広範囲な電気生理学的記録に、理想的には適さない。
【0129】
その構造中に空間次元を本質的に組み込んだデータ解析技法が必要である。そのような技法を実行することによって、生体内で研究される領域のそれぞれ中のてんかんの「時空間ニューロン活動シグネチャ(spatiotemporal neural activity signature)」が生成される。
【0130】
NeuroZond MEA記録から得られたデータセットは、最初、2つの独特の戦略を使用して処理され、次いでその結果は、「病理インデックス(pathology index)」を生成し、「自然の(native)」状態と比較するために、「人工神経ネットワーク(ANN: Artificial Neural Network)」に基づく最終の共通経路中に送られる。
【0131】
NeuroZond MEA電極チャネルのそれぞれから得られたスパイク信号は、2つの異なる統合化プロトコルによって処理される。第1のプロトコルは、下流の電位の代数的加法または相殺を防止するために、信号を1極性でクリッピング(半波整流)するステップを含む。次いでこの「整流された」信号は、時定数(τ)が10〜15ms(精度が2%より高い)の「リークがある積分器」に印加される。この手順によって、実験者は、アレイ中のチャネルのそれぞれについて、全体のマルチユニット活動(MUA: multi-unit activity)の「活動包絡線」または「パワー」(RMSに相似)を表すDCアナログ電圧が得られる。そのような手順は、ハードウェアおよびソフトウェアの両方で実施することができる。
【0132】
個々のニューロンの発射に関する同様の出力を得るために(しばしば、アレイ中の任意の1個の電極によって、3〜4個の異なる細胞または「ユニット」を記録することができる)、スパイク波形の区別/分離(「スパイク分類」としても知られる)プロトコルが実行される。特に有効であると判明しているスパイク区別の方法は、「連続時間主要コンポーネント分類(continuous time principal component sorting)」である。この技法が良好な性能を有することは、第1の主要コンポーネント(PC)が活動電位波形の正規化平均に等しく、第2の主要コンポーネントが波形形状の差を測定し、第1のコンポーネントの時間導関数に相似するように、しばしば見えることを考えたとき、理解することができる。これらの特徴は、検出されたスパイクを分類するための理論的な特徴の最適対とほとんど同等である。
【0133】
主要コンポーネント解析は、デジタル信号処理チップ(DSP: digital signal processing chip)を利用してリアルタイムで実行することができる。しかし、このプログラムの仕事の初期段階中では、スパイク形状のオフラインバージョンの主要コンポーネント解析は、MATLAB (ver. 6.5/7.0)環境175内のMEA-Tools package (ver. 2.62)の「スパイクツール(Spike Tools)」コンポーネント(米国、The MathWorks社)を利用して実施することができる。データファイルを「構文解析」してMATLABの「データストリームオブジェクト」中に分解すると、MATLAB作業空間中にスパイク時間(「タイムスタンプ」)、関連チャネルおよび各チャネルについての主要コンポーネントの計算に関する、すべてのファイルヘッダおよびデータレコードの情報を含んだレコードが生成される。次いで、コンポーネントスコアのクラスターが特定され、「特徴空間」のペアワイズ2次元プロジェクション中で範囲が定められる(「クラスター切り取り」)(これは、3次元に増加することができる)。手順は、個々のスパイクおよびスパイク群をレビューし、有意義な分類に識別し、特定のクラスターに割り当てるようにそれらにレッテルを付けるため、ユーティリティによって拡張適用される。
【0134】
MEA-Toolsのオープンソースソフトウェアの開発によって、これらの2段階のスパイク分類プロトコルが向上される。初めに、多次元空間中で策定された「クラスター切り取り」手順は、K平均法(K-means)および「谷探索」(valley seeking)を含む進んだ分類アルゴリズムを使用して自動化することができる。次に、MATLAB環境下でより広範囲にプログラミングしMATLAB Wavelet Toolboxを使用すると、「ウェーブレットパケット分解(WPD: wavelet packet decomposition)」に基づくスパイク分類ツールが生成される。この方法は、バックグラウンド雑音から微小なスパイクを分離し、時間的に重なるスパイクを分解する両方の点で、主要コンポーネント方法より効率的である。
【0135】
一度スパイク分類手順が終了すると、個々のスパイクの発生時刻(すなわち、それらのタイムスタンプ)を含む「スパイクトレイン」ファイルが、上記に述べたソフトウェアベースの積分器に導入され、これ以降、積分MUA信号として扱うことができる。
【0136】
時間領域中の次の専用解析(すなわち時系列解析)は、NeuroExplorer (Nex)パッケージ、ならびにMATLABの信号処理および統計ツールボックス内の機能の組み合わせを利用して実行することができる。これらの手順は、米国デントンのノーステキサス大学のthe Center for Network NeuroscienceのGuenter Gross教授および彼の同僚等によって最初に開発された技法を実施し拡張するものである。
【0137】
最初に、18個の「ユニット活動変数」が、実験の症状発現全体にわたって(その長さは、パイロット実験によって決定され、60〜300分の範囲内である)、各チャネルについて1分時点で決定される。これらの実験の症状発現は、(i)自然状態、(ii)発作間の活性(および多スパイス)の電気生理学的な関連要因の存在、および(iii)本格的な発作の発病(てんかん重積持続状態)の電気生理学的な関連要因の存在から構成される。
【0138】
最初の10個の変数は、スパイクの「タイムスタンプ」から決定され、それら変数は、(1)スパイクレート(SR: spike rate、spm)、(2)SR変化(%)、(3)バースト中のスパイク数(NSIB: number of spikes in bursts)、(4)バースト中でないスパイク数(NSNIB: number of spikes not in bursts)、(5)バースト中のスパイク(SIB: spikes in bursts、%)、(6)バースト中でないスパイク(SNIB: spikes not in bursts、%)、(7)スパイク平均周波数(SMF: spike mean frequency、Hz)、(8)スパイクピーク周波数(SPF: spike peak frequency、Hz)、(9)バースト中のモーダルスパイク間間隔(MIIB: modal interspike interval in bursts、ms)、(10)バースト中でないモーダルスパイク間間隔(MIINIB: modal interspike interval not in bursts、ms)である。Nexのバースト検出器/解析コンポーネント(ポアソンサプライズ(Poisson surprise) Sを含む)を使用することができる。
【0139】
次の8個の変数は、上記に述べた積分手順の出力から得られたが、Nexバースト検出器も使用し、それらの変数は、(11)バーストレート(BR: burst rate、bpm)、(12)バーストレート変化(%)、(13)バースト持続期間(BD: burst duration、sec)、(14)バーストパワー(MUA)(BPMUA: burst power、標準化カーブ下面積(standardized "area-under-the-curve"))、(15)バーストパワー(UNIT)(BPUNIT: burst power、標準化カーブ下面積(standardized "area-under-the-curve"))、(16)バースト振幅(BA: burst amplitude、標準化積分ユニット(standardized integrated units))、(17)バースト期間(BPr.: burst period、sec.)、および(18)バースト間間隔(IBI: interburst interval、sec.)である。
【0140】
上記の「ユニット活動変数」から、様々な実験の症状発現中に存在する時間規則性およびネットワーク同期の程度が計算される。これは、上記に述べた活動変数のそれぞれについて、2つの異なる変動係数(CV: coefficient of variation)を生成することによって、達成することができる。すべての計算は、1分間の記録期間の内容に基づく。これらの値は、実験の発現症状について変動係数を用いた各チャネルの実験の発現症状の平均、および全ネットワーク(すなわち、すべてのサンプルされたチャネル)にわたる各分についての「分平均」を得るために使用される。各チャネルの実験の発現症状の変動係数(CVTIME)は、発現症状にわたるそのチャネルの時間的なパターンの揺らぎの測定値を表す。ネットワークにわたって平均されたCVTIMEは、たとえいくつかのパターンが存在しても、かつたとえそれらが同期されていなくても、ネットワークについてパターンの規則性を反映する。逆に言うと、分CV (CVNETWORK)は、チャネルの協調性を表す。実験の発現症状にわたって平均されたCVNETWORKは、たとえパターンが調子を合わせて揺らいだとしても、ネットワークの同期の程度を反映する。
【0141】
上記に述べたことに加えて、さらなる実験の活動変数、応答遅延時間(RDT: response delay time、または待ち時間(latency)、sec)の活動変数を、自然状態からてんかんの様々な電気生理学的な関連要因が存在する(上記に述べたように、LFP記録中に発作間のスパイク、多スパイクおよび/または発作の発病の出現によって、ほとんど検出される)までの遷移中の実験の発現症状中に得ることができる。RDTは、Nex中の累積合計統計(CUSUM: cumulative sum statistic)の修正版を使用して決定される。
【0142】
(i)自然状態および(ii)てんかんの電気生理学的な関連要因の存在である実験の症状発現について、時間領域中で時空間ニューロン活動シグネチャを生成するために、ユニット活動変数のそれぞれの二乗偏差値が計算され、アレイ全体にわたって合計されて識別計数(CI: coefficient of identification)を生成し、したがってCI(NATIVE OR EPILEPSY)=√Σ(meanvariable/SDvariable)2である。
【0143】
したがって、てんかん型活性に対して試験された任意の薬物の「薬効指針」は、同一の方法でCI(drug)を計算し、かつその値がCI(native)-CI(epilepsy)連続体上に存在するところを観察することによって、この領域中で得ることができる。チャネルのすべてにわたって変数のそれぞれの分平均を使用してこれらの操作を繰り返した場合、薬物の作用の時間的で良好な近似が得られる。
【0144】
様々な実験の発現症状中に(時間領域中で)サンプルされた神経ネットワークの挙動の最終の重要な測定値は、振動活動の存在および大きさの見積もりになる。これは、CVTIMEによって反映される高度なパターン規則性、およびCVNETWORKによって反映される同期の両方が、サンプルされたネットワークの活動が振動的でない状態で、アレイ全体にわたって存在することが可能であるからである。したがって、この測定値は、追加の有用な特性記述ネットワーク統計値を表す。
【0145】
初めに、自己相関関数が、異なる実験の症状発現に対して別々に、各チャネル上の識別されたユニットそれぞれについて計算され(期間-30〜30s、ビンサイズ50ms)、アレイ全体にわたって平均化される。その後、ガボール関数(減衰調和振動)が得られたヒストグラムにフィティングされる(指数λを2に設定)。この操作は、次の記述パラメータを生成する。このパラメータは、(i)調和振動の周波数ν、(ii)振幅A、(iii)ガウス曲線の減衰σ、および(iv)横座標の上のオフセットOである。最後に、これらのパラメータから振動の存在および程度の測定値として「減衰振幅」係数を得ることができる。2より大きい係数は、振動的なニューロン活動を示すと見なされ、それは、特に重要である(以下参照)。
【0146】
時間領域中で行うことができる最後の解析セットは、自然状態の「はっきりした特徴」またはてんかんの神経ネットワークの相関要因を表すアレイ全体にわたって記録されたスパイクトレイン中のすべてのシグネチャシーケンス、構造、およびパターンの抽出を目的とする。これは、カーネルの線形および非線形の「正準相関分析」を行うことによって達成することができる。これらの技法は、人工神経ネットワーク(ANN、「最終的な共通経路」に関する以下の項も参照)の構築および作動を必要とし、したがってMATLABのNeural Network Toolboxを使用して実施されることに留意すべきである。
【0147】
上記と対照的に、第2の主要な戦略は、「周波数領域」におけるアレイから得られるスパイクデータの解析を含む。一般に言うと、これらの手順は、「時間領域」で実行されるものより理論上計算的に複雑である。
【0148】
多チャネル(神経集合)のデータを解析するための3つの多変数技法が提案され、そのすべては、「時空間ニューロン集団活動マップ」から有意義な統計値を抽出するという考えを軸とする。
【0149】
上記に述べた実験の症状発現のそれぞれと関連付けられた時空間ニューロン集団活動マップの「分類器」として、線形判別解析(LDA: linear discriminant analysis)を使用することができる。
【0150】
ニューロンの共分散によっては単に生成されない高次の相関によって異なる実験の症状発現中に「突発的」であることがあるアレイによって記録されたニューロンの分類を識別するために、独立系コード解析(ICA: independent coding analysis)を使用することができる。
【0151】
最後に、多次元空間中で相似のニューラル集合体の相関を求めるために、主要コンポーネント解析(PCA: principal components analysis)を使用することができる。しかし、この技法を使用して得られた「集団ベクトル」がサンプルされたニューロン集団にわたって広く分布する傾向があり、したがってPCAが、共通入力源を共用することがあるニューロンの独立系分類を識別できないことに留意すべきである。しかし、PCAは、てんかんのニューラル関連因子の発現時にきゅう覚視床下部軸柱中で観察される極めて一過性の集団活動パターンの下で、重要なデータを生成することができる。
【0152】
部分的有向コヒーレンス(PDC: partial directed coherence)の技法である他の周波数領域多変数技法によって、これらの構造間の因果関係(すなわち、情報フローの方向性/てんかん活性の増殖)を決定することができる。誘起された生体内てんかん型活性によって引き起こされたすべての基礎の/自然な「方向性」の摂動は、定量化することができ、したがってすべての想定される抗てんかん医薬品候補化合物の「正規化能力」を定量化することができる。
【0153】
てんかん活性(発作間スパイク、多スパイクおよび持続性/間代性の発作の発病)の様々なLFP発現の検出および定量化、および人工物のふるい分けは、上記のユニット解析と並行して行うことができる。これは、Ayalaおよびその同僚達が開発したものと同様なパターン認識および抽出技法を利用して達成することができる。さらに、すべてのチャネルについてLFP信号パワースペクトル解析を連続的に行い、二乗平均平方根電圧の二乗(Vrms)2のためのデータを生成することができる。
【0154】
アレイ幅の「相関解析」は、すべての状態について実施することもできる。発作の記録中、信号が動的に変化しているとき、ピアソン相関係数が使用され、一方、発作間/多スパイクの期間中に信号が定常状態に近づいたとき、「振幅二乗コヒーレンス(MSC: magnitude squared coherence)」を高信頼度で見積もることが可能になり、それは、特定周波数帯域に関する情報をもたらす点で簡単なピアソン相関より有利である。
【0155】
MSCスペクトルは、次の標準周波数帯域に分けられ、その帯域は、「デルタ」(>0〜<4Hz)、「シータ」(4〜<8Hz)、「アルファ」(8〜13Hz)、「ベータ」(>13〜<30Hz)、および「ガンマ」(30〜80Hz)である。振幅二乗コヒーレンス(MSC)は、アレイの様々なチャネルから記録されたLFP「てんかんシグネチャ」間の相関の線形測定値をもたらし、ちょうど言及した異なる信号周波数の貢献を明確に示す能力がある、すなわちMSCは、周波数指標を有する相関係数として解釈することができる。てんかん研究での「コヒーレンス」の先使用は、発病中の増殖遅延および頭蓋内脳波図の空間的、時間的構造を研究するため、用いられていたことに留意すべきである。
【0156】
行うことができるLFP解析の最後の形態は、自己回帰である。これは、「増殖した」後放電対「自律的な」後放電の動的変化、およびきゅう覚視床下部軸柱中の様々な構造による研究中の焦点てんかんに対する相対的貢献に関する情報を得るために使用され、これらの機能が様々な想定される抗てんかん医薬品被検化合物によってどのように影響されるかを調べることにもなる。
【0157】
上記に述べた全体の解析手順のための最後の共通経路は、異なる実験状態の特徴抽出およびパターン認識のため、ユニットデータに適用された時間領域および周波数領域の両方の手順の結果を、様々なLFP解析の結果とともに、ANNに入力し、その結果として、様々な被検化合物の薬効の最も信頼できる指標を求めるための比較値を得ることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を含む多電極アレイであって、
前記電極は、スペーサ手段によって互いから離間され、
前記電極は、前記スペーサ手段に固定され、
前記スペーサ手段は、ハウジング内でカプセル化される、多電極アレイ。
【請求項2】
前記スペーサ手段および前記ハウジングは、単一である、請求項1に記載の多電極アレイ。
【請求項3】
前記電極は、直径が約30μm〜約200μm、好ましくは約40μm〜約150μmの範囲内であり、たとえば125μmである、請求項1または請求項2に記載の多電極アレイ。
【請求項4】
前記電極は、タングステン、ステンレス鋼、プラチナ、プラチナ/イリジウム、カーボンファイバ、伝導性ナノチューブ、カーボンナノチューブ、Elgiloy(登録商標)合金、または伝導性ポリマーを含む、請求項1から3のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項5】
前記電極は、金属電極である、請求項1から4のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項6】
前記電極は、形状記憶を有する、請求項5に記載の多電極アレイ。
【請求項7】
前記電極は、ステンレスバネ鋼から形成される、請求項6に記載の多電極アレイ。
【請求項8】
前記電極は、ワイヤである、請求項1から7のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項9】
前記電極の少なくとも1つは、中空である、請求項1から8のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項10】
前記スペーサ手段は、複数の電子顕微鏡法グリッドと、複数の細メッシュのパッチまたはチャネルを含むブロックと、を含む、請求項1から9のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項11】
前記電極は、規則的なパターン、または規則的な繰り返されたパターンで離間される、請求項1から10のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項12】
前記電極は、互いから等距離で離間される、請求項1から11のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項13】
前記ハウジングおよび前記スペーサ手段の1つまたは両方が、成型用材料から形成される、請求項1から12のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項14】
前記成型用材料は、アクリルポリマーまたは熱可塑性物質である、請求項13に記載の多電極アレイ。
【請求項15】
前記電極は、前記スペーサ手段に取り外し可能に固定される、請求項1から14のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項16】
前記電極の先端が、非平面構成である、または非平面構成に調節可能である、請求項1から15のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項17】
各電極が、駆動器に接続するためのコネクタを含む、多電極アレイ。
【請求項18】
各電極が、押しばめ型コネクタを含む、多電極アレイ。
【請求項19】
前記電極は、電気絶縁層またはジャケットを備える、請求項1から18のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項20】
前記電極は、二重機能の電気信号および機械的変換の検出器である、請求項1から19のいずれかに記載の多電極アレイ。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の多電極アレイを含む、埋込装置。
【請求項22】
被検物質の生体組織への作用をモニタするための方法であって、
(a)培地中に生体組織を準備するステップと、
(b)MEA、特に請求項1から20のいずれか一項に記載のMEAの電極の先端を前記組織サンプルに接触させるステップと、
(c)前記電極の1つまたは複数によって検出された電気信号を記録するステップと、
(d)前記1つまたは複数の電極の機械的変換を記録することによって、および/または光学的手段を使用して、前記組織中の運動を任意選択で記録するステップと、
(e)被検物質に前記組織をさらすステップと、
(f)前記1つまたは複数の電極によって検出された前記電気信号を記録するステップと、
(g)前記1つまたは複数の電極の機械的変換を記録することによって、および/または光学的手段を使用して、前記組織中の前記運動を任意選択で記録するステップと、
(h)前記被検物質のある場合とない場合に記録された結果を比較するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記組織は、前記被検物質にさらされる前に刺激を受ける、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組織は、平滑筋、心筋、骨格筋、脊髄組織、脳組織および分泌組織から選択される、請求項22または請求項23に記載の方法。
【請求項25】
各電極は、前記組織内の単1層と接触させられる、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記組織の前記運動は、光学的手段を使用して記録される、請求項22から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
電圧感受性染料またはカルシウム感受性染料が、前記培地中に含まれる、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記被検物質のある場合とない場合に記録された前記結果は、データ解析ソフトウェアを使用して比較される、請求項22から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組織内の1つの細胞または複数の細胞についてパッチクランプアッセイを行うステップをさらに含む、請求項22から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
金属電極を製造する方法であって、
(a)実質的に平行な形で互いから離間されマンドレルに固定された複数の金属ワイヤを設けるステップと、
(b)前記ワイヤ間に電気的接続部を形成するステップと、
(c)AC電源の第1のポートに前記電気的接続部を取り付けるステップと、
(d)エッチング溶液中に所定の深さまで前記金属ワイヤを浸漬して引き出すことを繰り返すステップであって、低電圧AC電流が、前記エッチング溶液中の前記ワイヤと伝導体の間に供給され、前記伝導体は、前記AC電源の第2のポートに取り付けられる、ステップと、
(e)前記ワイヤを電気エッチングすることによって形成された前記電極を洗浄し乾燥させるステップと、
を含む、方法。
【請求項31】
前記金属ワイヤは、タングステンワイヤである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記タングステンワイヤの最初の直径が、約100μm〜約150μmの範囲内である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記エッチング溶液は、Levick溶液を含む、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記金属ワイヤは、ステンレス鋼のワイヤである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記エッチング溶液は、シアン化カリウムまたは濃硫酸を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記電極に絶縁材料の層を設けるステップをさらに含む、請求項30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記絶縁材料は、エポキシライト樹脂、ガラス、融解水晶、ポリイミド、Parylene-C(商標)、ウレタン、ダイアモンドおよびFormvar(商標)から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記絶縁材料は、エポキシライト樹脂である、請求項30から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記電極先端の絶縁を除去するステップをさらに含む、請求項30から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記電極の電気的インピーダンスを試験するステップをさらに含む、請求項30から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
各電極に第2のエッチングを施して、所望の寸法およびインピーダンスに前記電極先端を形成するステップをさらに含む、請求項30から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第2のエッチングの後に、前記電極のインピーダンスを試験するステップをさらに含む、請求項30から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記電極先端を金で被覆するステップをさらに含む、請求項30から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記金被覆の電極先端を白金黒で被覆するステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
マイクロアレイ中で使用される金属電極のセットを製造する方法であって、
前駆体電極ワイヤを共通電気伝導体に接続するステップと、
エッチングバス中で一緒に前記電極ワイヤを電気化学的にエッチングして前記ワイヤのそれぞれ上の先端を細くするステップと、を含み、
それによって、電極の実質的に整合されたセットを生成する、方法。
【請求項46】
特に請求項45に記載の方法によって製造され、
それによって前記電極が実質的に整合された電気的インピーダンスを有する、整合された電極のセット。
【請求項47】
多電極アレイを製造する方法であって、
(a)複数の電極を設けるステップと、
(b)スペーサ手段の異なるギャップまたはチャネル中に各電極を通すことによって、互いから前記電極を離間するステップと、
(c)前記スペーサ手段に前記電極を固定するステップと、
(d)ハウジング内で前記スペーサ手段をカプセル化するステップと、
を含む、方法。
【請求項48】
複数のマイクロ電極を有する多電極アレイ(MEA)であって、
前記電極の先端が、非平面構成である、または非平面構成に調節可能である、多電極アレイ(MEA)。
【請求項49】
前記電極は、実質的に整合された電気的インピーダンスを有する、請求項48に記載の多電極アレイ(MEA)。
【請求項50】
筋組織の層からの電気信号をモニタする方法であって、
請求項48または49に記載のMEAを使用する、方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−504105(P2010−504105A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517447(P2009−517447)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050390
【国際公開番号】WO2008/004010
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(509007207)レクタス・セラピューティクス・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】