説明

装置の開口部の開閉判定

【課題】装置の開口部の開閉判定の精度を向上させる。
【解決手段】装置は、装置の開口部を開放したり閉じたりする開閉機構と、開閉機構による開口部の開閉動作に応じて動く第1の可動体と、第1の可動体の動き量を検出する動き検出部と、検出された動き量に基づき開口部が閉じられているか否かを判定する判定部と、装置内に配置されると共に移動可能な第2の可動体と、開口部が閉じられている状態においては第2の可動体の移動に応じて第1の可動体を動かすと共に、開口部が開放されている状態においては第2の可動体の移動に応じて第1の可動体を動かさない動き伝達機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の開口部の開閉判定を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、例えばインクカートリッジの脱着を行うための開口部と、当該開口部を開放したり閉じたりするカバーと、を有している。開口部を開放したままでの印刷動作の実行を回避する等のため、インクジェットプリンタは、一般に、開口部が閉じられているか否かの判定(開口部の開閉判定)を行う判定装置を有している。開口部の開閉判定を行う判定装置としては、例えば、カバーによる開口部の閉鎖時にカバーと干渉して変位するセンサレバーとセンサレバーの変位を検出する検出部とを有する開閉センサが利用される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−264160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開口部の開閉判定を行う判定装置として従来の開閉センサが利用される場合、開閉センサの接点ばらつき等を原因として、開口部がわずかに開放されていても当該開放を検出できず、開口部が閉じられていると判定される場合があった。また、開閉センサは、センサレバーがカバー以外の物体に干渉して変位しても開口部が閉じられていると判定するため、開口部の開閉状態を誤って判定するおそれがあった。このように、従来の開口部の開閉判定を行う判定装置は、判定精度に向上の余地があった。
【0005】
なお、このような問題は、インクジェットプリンタの有するインクカートリッジの脱着を行うための開口部の開閉判定に限らず、装置の有する開口部の開閉判定を行う場合一般に共通の問題であった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、装置の開口部の開閉判定の精度を向上させることを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]装置であって、
前記装置の開口部を開放したり閉じたりする開閉機構と、
前記開閉機構による前記開口部の開閉動作に応じて動く第1の可動体と、
前記第1の可動体の動き量を検出する動き検出部と、
検出された前記動き量に基づき前記開口部が閉じられているか否かを判定する判定部と、
前記装置内に配置されると共に移動可能な第2の可動体と、
前記開口部が閉じられている状態においては前記第2の可動体の移動に応じて前記第1の可動体を動かすと共に、前記開口部が開放されている状態においては前記第2の可動体の移動に応じて前記第1の可動体を動かさない動き伝達機構と、を備える、装置。
【0009】
この装置では、第1の可動体が開閉機構による開口部の開閉動作に応じて動き、検出された第1の可動体の動き量に基づき開口部が閉じられているか否かが判定される。また、開口部が閉じられている状態においては動き伝達機構により第2の可動体の移動に応じて第1の可動体が動かされ、開口部が開放されている状態においては第2の可動体の移動に応じて第1の可動体が動かされない。そのため、この装置では、装置の開口部の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の装置であって、
前記第1の可動体は、前記開閉機構による前記開口部の開閉動作に応じて往復移動するリニアスケールであり、
前記動き伝達機構は、前記開口部が閉じられている状態において前記第2の可動体の移動に応じて前記リニアスケールを移動させる、装置。
【0011】
この装置では、開閉機構による開口部の開閉動作に応じて往復移動するリニアスケールの動き量が検出され、検出された動き量に基づき開口部が閉じられているか否かが判定される。また、動き伝達機構は、開口部が閉じられている状態において第2の可動体の移動に応じてリニアスケールを移動させる。そのため、この装置では、装置の開口部の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0012】
[適用例3]適用例1に記載のモータ制御装置であって、
前記第1の可動体は、前記開閉機構による前記開口部の開閉動作に応じて回転する回転スケールであり
前記動き伝達機構は、前記開口部が閉じられている状態において前記第2の可動体の移動に応じて前記回転スケールを回転させる、装置。
【0013】
この装置では、開閉機構による開口部の開閉動作に応じて回転する回転スケールの動き量が検出され、検出された動き量に基づき開口部が閉じられているか否かが判定される。また、動き伝達機構は、開口部が閉じられている状態において第2の可動体の移動に応じて回転スケールを回転させる。そのため、この装置では、装置の開口部の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0014】
[適用例4]適用例2または適用例3に記載の装置であって、
前記第1の可動体は、動きの方向に沿って並ぶ複数のスリットを有し、
前記動き検出部は、光を発する発光部と前記発光部から発せられた光を受ける受光部とを有すると共に、前記受光部による受光状態を表す信号に基づき前記第1の可動体の動き量を検出する、装置。
【0015】
この装置では、動き検出部が第1の可動体の動き量を検出することができる。
【0016】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の装置であって、
前記第2の可動体は、前記装置内において往復移動するキャリッジである、装置。
【0017】
この装置では、装置内において往復移動するキャリッジを用いて、装置の開口部の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、開口部の開閉判定方法および装置、印刷装置、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。
【図2】プリンタ10の上部筐体30が上方に移動した状態を示す説明図である。
【図3】センサユニット400の構成を示す説明図である。
【図4】印刷機構部50の構成を示す説明図である。
【図5】キャリッジ60とセンサユニット400との関係を示す説明図である。
【図6】第2実施例におけるキャリッジ60aとセンサユニット400との関係を示す説明図である。
【図7】第3実施例におけるセンサユニット400bの概略構成を示す説明図である。
【図8】第3実施例におけるキャリッジ60bとセンサユニット400bとの関係を示す説明図である。
【図9】第4実施例におけるプリンタ10cの構成を概略的に示す説明図である。
【図10】第4実施例におけるセンサユニット700の構成を示す説明図である。
【図11】第4実施例におけるキャリッジ60cとセンサユニット700との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を第1実施例ないし第4実施例および変形例に基づいて説明する。
【0021】
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。プリンタ10は、記録媒体である印刷用紙Pに対して液体インクを噴射して文字や図形を記録するインクジェット式プリンタである。また、プリンタ10は、いわゆる複合機タイプのプリンタであり、光学的に画像を読み込むスキャナ機能を有している。
【0022】
図1に示すように、プリンタ10は、印刷機構部50を収容する本体筐体20を有する。本体筐体20には、印刷機構部50へと供給される印刷用紙Pを本体筐体20の内部に導入する給紙トレイ12と、印刷機構部50から排出された印刷用紙Pを本体筐体20の外部に導出する排紙トレイ14とが配設されている。印刷機構部50の詳細な構成については後述する。
【0023】
本体筐体20には、プリンタ10の各部を制御する制御部40が収容されている。本実施例では、制御部40は、セントラルプロセッシングユニット(Central Processing Unit、CPU)と、リードオンリメモリ(Read Only Memory、ROM)と、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)などのハードウェアを備えたASIC(Application Specific Integrated Circuits)を含む。制御部40には、プリンタ10の各種機能を実現させるソフトウェアがインストールされている。
【0024】
本体筐体20の上部には、上部筐体30が配設されている。上部筐体30には、スキャナ機能を実現する図示しないスキャナ機構が収容されている。上部筐体30は、回動軸350を中心にして回転移動可能に本体筐体20に設置されている。図2は、プリンタ10の上部筐体30が上方に移動した状態を示す説明図である。上部筐体30が回動軸350を中心にして上方に回転移動すると、本体筐体20の上面の少なくとも一部に設けられた開口部22(図1)が開放される。この状態では、ユーザが開口部22を介して印刷機構部50にアクセスすることができる。上部筐体30が下方に回転移動して本体筐体20の上部に覆い被さると(図1参照)、開口部22は閉じられる。上部筐体30は、本発明における開閉機構に相当する。
【0025】
図2に示すように、プリンタ10は、センサユニット400を有する。図3は、センサユニット400の構成を示す説明図である。図3(a)はセンサユニット400の斜視図であり、図3(b)はセンサユニット400の正面図である。図2および図3に示すように、センサユニット400は、リニアスケール420とセンサ410とを含んでいる。
【0026】
リニアスケール420は、上部筐体30に接合されており(図2参照)、上部筐体30の回転移動(すなわち本体筐体20の開口部22の開閉動作)に応じて、長手方向に沿って往復移動する(図3(b)の矢印参照)。また、リニアスケール420は、長手方向に沿って所定の間隔(例えば180dpi)で並ぶ図示しない複数のスリットを有している。リニアスケール420は、本発明における第1の可動体に相当する。
【0027】
センサ410は、リニアスケール420を介して対向する発光部412と受光部414とを有するフォトインタラプタセンサである。発光部412は図示しない発光素子から光を発し、受光部414は発光部412から発せられた光を図示しない受光素子により受光する。センサ410は、印刷機構部50(もしくは本体筐体20)に固定されている。
【0028】
上部筐体30の回転移動に伴いリニアスケール420が長手方向に沿って移動すると、発光部412から発せられた光がリニアスケール420のスリットを通過して受光部414により受光される受光状態と、発光部412から発せられた光がリニアスケール420により遮られて受光部414により受光されない非受光状態と、が交互に繰り返される。このとき受光部414は、受光状態と非受光状態との繰り返しを表すパルス信号を出力する。本実施例では、受光部414は、互いに位相の異なる2つのパルス信号を出力する。センサ410は、2つのパルス信号の位相のずれおよびパルス数に基づき、リニアスケール420の移動方向および移動量を検出する。なお、リニアスケール420の移動量は、動き量とも表現できる。センサユニット400は、リニアスケール420の動き量を検出するため、本発明における動き検出部に相当する。
【0029】
図4は、印刷機構部50の構成を示す説明図である。印刷機構部50は、印刷用紙Pに対するインク滴の噴射が実施される印刷領域に配設された長方形形状のプラテン530を有する。プラテン530の上には、印刷用紙Pが図示しない紙送り機構によって給送される。印刷機構部50は、また、インクカートリッジIcが搭載され記録ヘッド610を有するキャリッジ60を有する。キャリッジ60は、プラテン530の長手方向に沿って移動可能なようにガイドロッド520に支持され、キャリッジモータ510によりタイミングベルト512を介して駆動される。これにより、キャリッジ60は、プラテン530の上を長手方向に沿って往復移動(主走査)する。記録ヘッド610は、キャリッジ60に搭載されたインクカートリッジIcからインクの供給を受け、印刷用紙Pに対してインクを吐出する。キャリッジ60は、本発明における第2の可動体に相当する。
【0030】
図4に示すように、キャリッジ60は、その移動方向に沿った一方の端に、略三角柱形状のテーパー部61を有する。
【0031】
図5は、キャリッジ60とセンサユニット400との関係を示す説明図である。図5は、キャリッジ60およびセンサユニット400を側方から見た図である。図5に示すように、プリンタ10は、キャリッジ60とセンサユニット400との間に介在する伝達部800を有する。伝達部800は、断面円形形状の輪部810と、輪部810と接続されると共にリニアスケール420の下端を支持可能な支持部820と、を含んでいる。伝達部800は、キャリッジ60が移動すると輪部810がキャリッジ60のテーパー部61のテーパー面62に干渉するような位置に配置されており、キャリッジ60の接近に伴い輪部810がテーパー面62に沿って上昇することにより、全体として上方に押し上げられる。キャリッジ60のテーパー部61と伝達部800とは、本発明における動き伝達機構に相当する。
【0032】
伝達部800は、上部筐体30が本体筐体20の上部に覆い被さって開口部22が閉じられている開口閉鎖状態(図1参照)においては、キャリッジ60の移動に伴う伝達部800の上方への移動に応じて支持部820がリニアスケール420を上方に押し上げるような位置に配設されている。なおかつ、伝達部800は、上部筐体30が上方に移動して開口部22を開放している開口開放状態(図2参照)(すなわちリニアスケール420が上方に移動している状態)においては、キャリッジ60の移動に伴い伝達部800が上方へ移動しても支持部820がリニアスケール420に干渉せず、リニアスケール420を上方に押し上げることのないような位置に配設されている。そのため、プリンタ10では、開口閉鎖状態においてはキャリッジ60の移動に応じてリニアスケール420を上方に移動させることができるが、開口開放状態においてはキャリッジ60の移動に応じてリニアスケール420を移動させることはできない。
【0033】
本実施例のプリンタ10では、制御部40が、センサユニット400による検出結果に基づき、本体筐体20の開口部22の開閉判定を行う。すなわち、制御部40は、本発明における判定部として機能する。具体的には、制御部40は、上部筐体30が本体筐体20の上部に覆い被さって開口部22が閉じられている状態を基準状態とし、センサ410により検出されるリニアスケール420の基準状態からの移動方向および移動量に基づき上部筐体30の位置を検出し、開口部22が閉じられているか開放されているかを判定する。そのため、本実施例のプリンタ10では、プリンタ10各部の寸法や位置の製品ばらつきに関わらず、開口部22の開閉判定を高精度で実行することができる。
【0034】
なお、開口部22が閉じられているとは、開口部22が例えば上部筐体30のような開閉機構により完全に閉じられている状態のみを意味するものとしてもよい。この場合には、制御部40は、検出されたリニアスケール420の基準状態からの移動量がゼロの場合には開口部22は閉じられていると判定し、検出された移動量がゼロより大きい場合には開口部22は開放されていると判定する。また、開口部22が閉じられているとは、開口部22が完全に閉じられている状態に限らず、開口部22が所定のわずかな開口量だけ開放されている状態をも含むものとしてもよい。この場合には、制御部40は、検出されたリニアスケール420の基準状態からの移動量が所定の閾値以下の場合には開口部22は閉じられていると判定し、検出された移動量が所定の閾値より大きい場合には開口部22は開放されていると判定する。
【0035】
また、制御部40は、キャリッジ60の移動に応じたリニアスケール420の移動の有無に基づき、開口部22の開閉判定を行うことができる。すなわち、制御部40は、キャリッジ60を伝達部800に干渉し得る位置まで移動させ、キャリッジ60の移動に応じたリニアスケール420の移動がセンサ410により検出された場合には開口部22は閉じられていると判定し、キャリッジ60の移動に応じたリニアスケール420の移動が検出されなかった場合には開口部22は開放されていると判定する。従って、例えば、制御部40は、リニアスケール420の基準状態からの移動方向および移動量に基づく開口部22の開閉判定において開口部22が閉じられていると判定された場合に、さらにキャリッジ60の移動に応じたリニアスケール420の移動の有無に基づく開口部22の開閉判定を行い、両方の開閉判定において開口部22が閉じられていると判定された場合にのみ、最終的に真に開口部22が閉じられていると判定することができる。これにより、リニアスケール420の基準状態からの移動方向および移動量に基づく判定では何らかの理由により実際には開口部22が開放された状態であるにも関わらず開口部22が閉じられていると誤判定される場合であっても、キャリッジ60の移動に応じたリニアスケール420の移動の有無に基づく判定を行うことにより、誤判定を防止することができる。従って、本実施例のプリンタ10では、本体筐体20の開口部22の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0036】
B.第2実施例:
図6は、第2実施例におけるキャリッジ60aとセンサユニット400との関係を示す説明図である。図6は、キャリッジ60aおよびセンサユニット400を側方から見た図である。第2実施例においても、図5に示した第1実施例と同様に、キャリッジ60aとセンサユニット400との間に伝達部800が介在している。ただし、第2実施例では、キャリッジ60aと伝達部800との関係が、図5に示した第1実施例とは異なっている。第2実施例のプリンタ10の他の構成は、第1実施例と同じである。
【0037】
図6に示すように、第2実施例では、キャリッジ60aが、キャリッジ60aから斜め下方に伸びる棒状形状の連結部63を有している。連結部63は、長楕円形状の穴部64を有しており、穴部64には伝達部800の輪部810がスライド移動可能なように嵌合している。キャリッジ60aの連結部63と伝達部800とは、本発明における動き伝達機構に相当する。
【0038】
第2実施例においても、キャリッジ60aが伝達部800の方へ移動すると、連結部63の穴部64における輪部810の位置が上方へと移動し、伝達部800が全体として上方に押し上げられる。従って、第2実施例においても、第1実施例と同様に、キャリッジ60aの移動に応じたリニアスケール420の移動の有無に基づく開口部22の開閉判定を行うことができ、本体筐体20の開口部22の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0039】
C.第3実施例:
図7は、第3実施例におけるセンサユニット400bの概略構成を示す説明図である。第3実施例では、センサユニット400bがリニアスケール420の代わりにロータリースケール(回転スケール)430を有している点が、第1実施例におけるセンサユニット400(図3)とは異なっている。第3実施例のプリンタ10の他の構成は、第1実施例と同じである。
【0040】
ロータリースケール430は、上部筐体30の回転移動(すなわち本体筐体20の開口部22の開閉動作)に応じて回転するように(図7の矢印参照)、例えばリンクを介して上部筐体30と結合されている。また、ロータリースケール430は、円周方向に沿って所定の間隔で並ぶ図示しない複数のスリットを有している。第1実施例と同様に、センサ410は、互いに位相の異なる2つのパルス信号の位相のずれおよびパルス数に基づき、ロータリースケール430の回転方向および回転量を検出する。なお、ロータリースケール430の回転量は、動き量とも表現できる。ロータリースケール430は、本発明における第1の可動体に相当する。
【0041】
図8は、第3実施例におけるキャリッジ60bとセンサユニット400bとの関係を示す説明図である。図8(a)は、キャリッジ60bおよびセンサユニット400bを側方から見た図である。また、図8(b)は、図8(a)のB−B断面図である。キャリッジ60bは、センサユニット400b方向に向かって水平に伸びた腕部65を有している。図8(a)に示すように、腕部65の上側の表面には、複数の歯が形成されている。また、ロータリースケール430は、中間部材434を介して歯車436と接続されている。歯車436の歯は腕部65の歯と咬み合っており、歯車436はキャリッジ60b(の腕部65)の水平移動に伴い回転する。そのため、ロータリースケール430もキャリッジ60b(の腕部65)の水平移動に伴い回転する。キャリッジ60bの腕部65と歯車436とは、本発明における動き伝達機構に相当する。
【0042】
腕部65と歯車436との位置関係は、上部筐体30が本体筐体20の上部に覆い被さって開口部22が閉じられている開口閉鎖状態(図1参照)においては、歯車436の歯と腕部65の歯とが咬み合い、かつ、上部筐体30が上方に移動して開口部22を開放している開口開放状態(図2参照)(すなわちロータリースケール430および歯車436が上方に移動している状態)においては、歯車436の歯と腕部65の歯とが咬み合うことのないような位置関係となっている。そのため、開口閉鎖状態においてはキャリッジ60bの移動に応じてロータリースケール430を回転させることができるが、開口開放状態においてはキャリッジ60bの移動に応じてロータリースケール430を回転させることはできない。
【0043】
第3実施例においても、ロータリースケール430が上部筐体30の回転移動(すなわち本体筐体20の開口部22の開閉動作)に応じて回転するため、センサユニット400bによるロータリースケール430の回転方向および回転量の検出結果に基づき本体筐体20の開口部22の開閉判定を行うことができ、プリンタ10各部の寸法や位置のばらつきに関わらず、開口部22の開閉判定を高精度で実行することができる。また、第3実施例においても、キャリッジ60bの移動に応じたロータリースケール430の回転の有無に基づき、開口部22の開閉判定を行うことができるため、本体筐体20の開口部22の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0044】
D.第4実施例:
図9は、第4実施例におけるプリンタ10cの構成を概略的に示す説明図である。第4実施例では、センサユニット700の構成が、図2に示した第1実施例のセンサユニット400とは異なっている。第4実施例のプリンタ10cの他の構成は、第1実施例と同じである。
【0045】
第4実施例におけるセンサユニット700は、発光部710と受光部720と後述するリニアスケール730とを含んでいる。図9に示すように、発光部710は上部筐体30に接合されており、上部筐体30の回転移動(すなわち本体筐体20の開口部22の開閉動作)に応じて、上下に移動する。また、受光部720は印刷機構部50(もしくは本体筐体20)に固定されている。すなわち、上部筐体30の回転移動に応じて、発光部710と受光部720との相対的な位置関係は変化する。上部筐体30が本体筐体20の上部に覆い被さって開口部22が閉じられている開口閉鎖状態においては、発光部710の光軸と受光部720の光軸とが合致し、受光部720は発光部710から発せられた光を受光可能な状態となる。一方、上部筐体30が上方に回転移動して開口部22が開放されている開口開放状態においては、発光部710の光軸と受光部720の光軸とが合致せず、受光部720は発光部710から発せられた光を受光できない状態となる。
【0046】
図10は、第4実施例におけるセンサユニット700の構成を示す説明図である。図10は、発光部710の光軸Aeと受光部720の光軸Arとが合致した状態(すなわち開口閉鎖状態)におけるセンサユニット700を側方から見た図である。センサユニット700のリニアスケール730は、発光部710の光軸Aeと受光部720の光軸Arとが合致した状態において、当該光軸に干渉するような位置に配設されている。すなわち、リニアスケール730は、開口部22が閉じられた開口閉鎖状態において発光部710から受光部720への光の経路上に位置する。また、リニアスケール730は、長手方向(水平方向)に沿って所定の間隔で並ぶ図示しない複数のスリットを有している。
【0047】
図11は、第4実施例におけるキャリッジ60cとセンサユニット700との関係を示す説明図である。図11は、キャリッジ60cおよびセンサユニット700を上方から見た図である。第1実施例と同様に、キャリッジ60cは、テーパー部61cを有する。ただし、第4実施例のテーパー部61cは、テーパー面62cが上方ではなく側方に存在する点が、第1実施例のテーパー部61とは異なっている。また、プリンタ10cは、キャリッジ60cとセンサユニット700との間に介在する伝達部800cを有する。第1実施例と同様に、伝達部800cは、輪部810cと支持部820cとを含んでいる。伝達部800cは、キャリッジ60cが移動すると輪部810cがキャリッジ60cのテーパー部61cのテーパー面62cに干渉するような位置に配置されており、キャリッジ60cの接近に伴い輪部810cがテーパー面62cに沿って水平移動することにより、全体として水平移動する。伝達部800cは、キャリッジ60cの移動に伴う伝達部800cの水平移動に応じて支持部820cがリニアスケール730を水平移動させるような位置に配設されている。このときのリニアスケール730の移動方向は、複数のスリットが並ぶ方向である(図11の矢印参照)。
【0048】
図10に示す発光部710の光軸Aeと受光部720の光軸Arとが合致した状態(すなわち開口閉鎖状態)では、センサユニット700はリニアスケール730の移動を検出することができる。すなわち、リニアスケール730が静止しているときは、受光部720は常に受光状態を表す信号を出力する一方、リニアスケール730が移動しているときは、受光部720は受光状態と非受光状態との繰り返しを表すパルス信号を出力する。従って、受光部720がパルス信号を出力すると、リニアスケール730の移動が検出される。一方、発光部710の光軸Aeと受光部720の光軸Arとが合致していない状態(すなわち開口開放状態)では、リニアスケール730の移動の有無に関わらず、受光部720は常に非受光状態を表す信号を出力するため、センサユニット700はリニアスケール730の移動を検出することができない。
【0049】
第4実施例のプリンタ10cでは、制御部40が、発光部710と受光部720との光軸の一致を検出することにより本体筐体20の開口部22の開閉判定を行う。すなわち、制御部40は、本発明における判定部として機能する。具体的には、制御部40は、受光部720が常に受光状態を表す信号を出力していることを検出したとき、開口部22が閉じられていると判定し、受光部720が常に非受光状態を表す信号を出力していることを検出したとき、開口部22が開放されていると判定する。
【0050】
また、制御部40は、キャリッジ60cの移動に応じたリニアスケール730の移動の検出の有無に基づき、開口部22の開閉判定を行うことができる。すなわち、制御部40は、キャリッジ60cを伝達部800cに干渉する位置まで移動させることによりリニアスケール730を移動させ、センサユニット700によりリニアスケール730の移動が検出されたか否かを判定する。制御部40は、リニアスケール730の移動が検出されたら開口部22は閉じられていると判定し、リニアスケール730の移動が検出されなかったら開口部22は開放されていると判定する。第4実施例では、発光部710と受光部720との光軸の一致を検出することによる開口部22の開閉判定では何らかの理由により実際には開口部22が開放された状態であるにも関わらず開口部22が閉じられていると誤判定される場合であっても、キャリッジ60cの移動に応じたリニアスケール730の移動の検出の有無に基づく開閉判定を行うことにより、誤判定を防止することができる。従って、第4実施例のプリンタ10cでは、本体筐体20の開口部22の開閉判定の精度を向上させることができる。
【0051】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0052】
E1.変形例1:
上記各実施例では、プリンタ10は複合機タイプのプリンタであるが、プリンタ10はスキャナ機能を有さない単機能タイプのプリンタであってもよい。この場合、開口部22はカバーにより開閉されるとすればよい。また、プリンタ10は、キャリッジ60にインクカートリッジIcが搭載されるいわゆるオンキャリッジタイプのプリンタであるとしているが、プリンタ10はキャリッジ60にインクカートリッジIcが搭載されないいわゆるオフキャリッジタイプのプリンタであるとしてもよい。また、プリンタ10はインクジェットタイプのプリンタではなく、他のタイプのプリンタ(例えばレーザープリンタ)であるとしてもよい。
【0053】
また、上記各実施例では、本体筐体20の開口部22の開閉判定について説明したが、本発明は、他の開口部(例えば排紙トレイ14により開閉される排紙用の開口部(図1参照))の開閉判定にも適用可能である。また、上記各実施例では、プリンタ10の有する開口部の開閉判定について説明したが、本発明はプリンタ10に限らず、装置一般の有する開口部の開閉判定に適用可能である。また、上記各実施例では、上部筐体30の位置を精度よく検出可能であることから、本発明は、開口部の開閉判定に限らず、開閉機構の開口量(開きの程度)の検出にも適用可能である。
【0054】
E2.変形例2:
上記各実施例では、センサとして、発光部(発光部412や発光部710)と受光部(受光部414や受光部720)とが対向して配置されるセンサを採用しているが、発光部と受光部とが並列配置される反射型センサを採用することも可能である。
【0055】
E3.変形例3:
上記各実施例では、第1の可動体としてリニアスケール420やロータリースケール430、リニアスケール730等を採用しているが、第1の可動体はスケールである必要はない。また、上記各実施例では、第1の可動体の動き量を検出する動き検出部としてセンサユニット400やセンサユニット700を採用しているが、動き検出部は第1の可動体の動き量を検出するものであればセンサである必要はない。例えば、第1実施例において、センサ410が上部筐体30に接続されて上部筐体30の回転移動に応じて上下に移動し、リニアスケール420が印刷機構部50(もしくは本体筐体20)に固定されているとしてもよい。この場合には、センサ410が第1の可動体に相当することとなる。
【0056】
また、上記各実施例では、第2の可動体としてキャリッジ60(60a、60b、60c)を採用しているが、第2の可動体は、他の移動する要素であってもよい。例えば、プリンタが、厚さの異なる印刷用紙Pへの印刷処理やCD−R表面への直接印刷のためにプラテン530の表面と記録ヘッド610との間のギャップを調整する処理ギャップ調整機構(APG:Auto Platen Gap機構)(特開2008−80649号公報参照)を有する場合には、処理ギャップ調整機構を第2の可動体として利用可能である。また、プリンタがEJフレーム(排紙フレーム)を有する場合には、EJフレームを第2の可動体として利用可能である。
【0057】
E4.変形例4:
上記第4実施例では、開口閉鎖状態であるか開口開放状態であるか否かに関わらず、キャリッジ60cの移動に応じてリニアスケール730が水平移動するような構成であるとしているが、上部筐体30の移動(すなわち開口部22の開閉動作)に応じてリニアスケール730が移動し、開口開放状態においてはキャリッジ60cの移動に応じてリニアスケール730が水平移動することはないような構成を採用することも可能である。また、キャリッジ60cの移動に応じたリニアスケール730の移動方向は水平方向に限らず、垂直方向や斜め方向であってもよい。
【0058】
また、上記第4実施例において、発光部710が上部筐体30に接続され、受光部720が印刷機構部50(もしくは本体筐体20)に固定されているが、反対に、受光部720が上部筐体30に接続され、発光部710が印刷機構部50(もしくは本体筐体20)に固定されているとしてもよい。
【0059】
また、上記第4実施例では、第1の可動体としてリニアスケール730が採用されているが、リニアスケール730の代わりに、円周方向に沿って複数のスリットを有し、キャリッジ60cの移動に応じて回転する回転スケールを用いることも可能である。
【0060】
E5.変形例5:
上記各実施例では、テーパー部61や連結部63や腕部65がキャリッジ60と一体となっている構成を採用しているが、テーパー部61や連結部63や腕部65がキャリッジ60と別体となっている構成を採用することも可能である。この場合にも、キャリッジ60の移動に応じて、別体としてのテーパー部61や連結部63や腕部65が移動するような構成とすればよい。
【0061】
また、上記各実施例のように、テーパー部61や連結部63や腕部65がキャリッジ60と一体となっている構成を採用する場合には、キャリッジ60がプリンタ10から飛び出すことのないように設計される。
【0062】
E6.変形例6:
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0063】
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【符号の説明】
【0064】
10…プリンタ
12…給紙トレイ
14…排紙トレイ
20…本体筐体
22…開口部
30…上部筐体
40…制御部
50…印刷機構部
60…キャリッジ
61…テーパー部
62…テーパー面
63…連結部
64…穴部
65…腕部
350…回動軸
400…センサユニット
410…センサ
412…発光部
414…受光部
420…リニアスケール
430…ロータリースケール
434…中間部材
436…歯車
510…キャリッジモータ
512…タイミングベルト
520…ガイドロッド
530…プラテン
610…記録ヘッド
700…センサユニット
710…発光部
720…受光部
730…リニアスケール
800…伝達部
810…輪部
820…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
前記装置の開口部を開放したり閉じたりする開閉機構と、
前記開閉機構による前記開口部の開閉動作に応じて動く第1の可動体と、
前記第1の可動体の動き量を検出する動き検出部と、
検出された前記動き量に基づき前記開口部が閉じられているか否かを判定する判定部と、
前記装置内に配置されると共に移動可能な第2の可動体と、
前記開口部が閉じられている状態においては前記第2の可動体の移動に応じて前記第1の可動体を動かすと共に、前記開口部が開放されている状態においては前記第2の可動体の移動に応じて前記第1の可動体を動かさない動き伝達機構と、を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1の可動体は、前記開閉機構による前記開口部の開閉動作に応じて往復移動するリニアスケールであり、
前記動き伝達機構は、前記開口部が閉じられている状態において前記第2の可動体の移動に応じて前記リニアスケールを移動させる、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1の可動体は、前記開閉機構による前記開口部の開閉動作に応じて回転する回転スケールであり、
前記動き伝達機構は、前記開口部が閉じられている状態において前記第2の可動体の移動に応じて前記回転スケールを回転させる、装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の装置であって、
前記第1の可動体は、動きの方向に沿って並ぶ複数のスリットを有し、
前記動き検出部は、光を発する発光部と前記発光部から発せられた光を受ける受光部とを有すると共に、前記受光部による受光状態を表す信号に基づき前記第1の可動体の動き量を検出する、装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の装置であって、
前記第2の可動体は、前記装置内において往復移動するキャリッジである、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−99957(P2013−99957A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10690(P2013−10690)
【出願日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【分割の表示】特願2008−218197(P2008−218197)の分割
【原出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】