説明

装飾体の製造方法

【課題】印刷手段を用いてマイクロレンズの形状を好適に制御しつつ製造することができる装飾体の製造方法を提供する。
【解決手段】基材1上に第一のピッチでパターンが配列されるように形成した視覚表現絵柄3と、視覚表現絵柄上に撥液性を有するニスを用いて第一のピッチと異なる第二のピッチで抜きドット形状4aが配列されるように形成された撥液パターン4と、撥液パターン上に透明ニスを塗布して抜きドット形状上に形成したマイクロレンズ5と、基材と視覚表現絵柄との間に形成された反射層2とを有する装飾体20の製造方法は、マイクロレンズの径が50μm以上450μm以下となるように撥液パターンが形成され、撥液パターン上に2.5μm以上6.0μm以下の塗工厚で透明ニスが塗布されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾体の製造方法、より詳しくは、マイクロレンズを利用した、特殊な視覚効果を有する装飾体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明な合成樹脂板の表面に、微細な凸レンズであるマイクロレンズを規則正しく配列したマイクロレンズシートを利用して、特殊な視覚効果を発揮するようにした装飾材料が知られている。マイクロレンズシートは、精密な金型を用いて熱可塑性樹脂シートの表面に微細な凹凸を賦型して製造するシートであるため、高価なものである。特許文献1に記載された装飾シートは、透明性シートの表面に複数の凸レンズ形状の突起を連続した任意のパターンで設けると共に、該シートの裏面に表面と同じ連続パターンをもつ模様を表面の連続パターンに対して変位させて印刷したことを特徴とする装飾シートである。
【0003】
マイクロレンズを賦型法ではなく、印刷法によって形成しようとする試みもなされている。特許文献2に記載された点描画模様の装飾体は、透明基板の表面に透明性を有する印刷インキにより透明性を有する多数の独立した凸状集光素が一定の微細なピッチにて規則正しい配列状態に印刷され、透明基板の裏面に表面の凸状集光素と同形状で同配列状態又は異形状で同配列状態の多数の着色画素が印刷され、かつ、交差角度により、着色画素の視認サイズが大幅に変化するように表面の凸状集光素に対し交差角をずらせた位置関係となっており、着色画素が表面から見て立体感を有する拡大画像として現出し、視点を移動させると拡大画像が揺らぎ感を呈することを特徴とする点描画模様の装飾体である。
この装飾体は、網点のように規則的なパターンを重ねて交差角をずらすと振幅が大きくなったり小さくなったりして網点が揺らいで見える現象を利用して、立体的な点描画模様を現出せしめた装飾体である。
【0004】
特許文献3に記載された立体模様装飾体は、透明又は不透明な装飾体の表面に、所望の色に着色したドット状の模様を連続して所定のパターンに複数層または単一層付設し、上記装飾体及び各模様の表面に、略半球形状断面を有する透明なドット状の凸レンズを連続して上記模様と略同一のパターンに付設し、上記各模様及び凸レンズの各パターンをモアレ模様が現出する角度に変位させて、上記各模様及び凸レンズを、上記装飾体表面に設定した密領域に向けて徐々に密状態となるように配列し、該密領域から遠くなる部分に設定した粗領域に向けて徐々に粗状態となるようなグラデーションに配列した立体模様装飾体である。この装飾体は、密領域及び粗領域を有するグラデーションのモアレ模様を立体的に現出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2761861号公報
【特許文献2】特許第3338860号公報
【特許文献3】特開2005−193501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された装飾シートは、金型によるレンズシートを用いるためにどうしても高価なものとならざるを得ないという問題がある。
特許文献2に記載された点描画模様の装飾体、および特許文献3に記載された立体模様装飾体は、いずれも印刷手段によってレンズを形成するものであるから、高価な金型が必要ないという利点がある。しかしながら、詳細は後述するが、発明者は、印刷手段によってマイクロレンズを形成する際は、諸条件を適切に設定しないと印刷に特有の問題事象が発生するため、形成されるマイクロレンズの形状を好適に制御することが容易でないことを見出した。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、印刷手段を用いてマイクロレンズの形状を好適に制御しつつ製造することができる装飾体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材上に第一のピッチでドットパターン状に形成した視覚表現絵柄と、前記視覚表現絵柄上に撥液性を有するニスを用いて前記第一のピッチと異なる第二のピッチで抜きドット形状が配列されるように形成された撥液パターンと、前記撥液パターン上に透明ニスを塗布して前記抜きドット形状上に形成したマイクロレンズと、前記基材と前記視覚表現絵柄との間に形成された反射層とを有する装飾体の製造方法であって、前記マイクロレンズの径が50μm以上450μm以下となるように前記撥液パターンが印刷により形成され、前記撥液パターン上に2.5μm以上6.0μm以下の塗工厚で前記透明ニスが印刷により塗布されることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、前記抜きドット形状の径が80μm以上500μm以下となるように前記撥液パターンが形成されるのが好ましく、200μm以上300μm以下となるように前記撥液パターンが形成されるのがより好ましい。
【0010】
また、本発明においては、前記マイクロレンズの径と高さとの比が5以上45以下となるように前記抜きドット形状の径および前記塗工厚が設定されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の装飾体の製造方法によれば、印刷手段を用いてマイクロレンズの形状を好適に制御しつつ装飾体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る装飾体の製造方法により製造された装飾体の一例を示す断面図である。
【図2】同製造方法により製造された装飾体の他の例を示す断面図である。
【図3】同装飾体において視覚効果が生じる機序を説明するための拡大平面図である。
【図4】視覚効果が生じる機序を説明するための拡大平面図であり、図3よりも拡大倍率を下げたものである。
【図5】同装飾体における視覚表現絵柄の他の例を説明するための拡大平面図である。
【図6】同装飾体において不良レンズが発生した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に従って本発明に係る装飾体について詳細に説明する。
図1は、本発明の装飾体の製造方法により製造される装飾体の一例を示した断面説明図である。図1に示す装飾体20は、基材1上に形成された視覚表現絵柄3と、視覚表現絵柄3の上に撥液性を有するニスを用いて形成された撥液パターン4と、撥液パターン4の上に透明ニスを塗布して形成されたマイクロレンズ5とを有し、基材1と視覚表現絵柄3との間に反射層2が設けられている。
【0014】
基材1としては、紙、合成樹脂フィルム、合成樹脂板など任意の材質の基材が使用できるが、大面積の基材であっても微細なマイクロレンズを精度よく形成できるという観点からは、オフセット印刷法やグラビア輪転印刷法が使用できる紙や合成樹脂フィルム、紙にフィルムを貼り合わせたもの等が望ましい。合成樹脂板などの板材を基材として、スクリーン印刷法による印刷を適用してもよい。
【0015】
反射層2としては、金属箔や金属蒸着層、金属粉末顔料やパール顔料等の光輝性顔料を含むインキ層などが用いられる。紙やフィルムにアルミニウムを蒸着した蒸着紙や蒸着フィルムを反射層つきの基材として使用してもよい。反射層2が存在することにより、入射した外光が反射層で反射して射出するため、反射する光量が増大することによって、拡大模様が強く現出する。
【0016】
視覚表現絵柄3としては、円形、四角形、三角形、ハート形、あるいは文字等任意の図形を微細化して用いることができる。視覚表現絵柄3は、ドットパターン状に配列して印刷方式に応じて通常使用される透明着色インキまたは不透明着色インキを用いて印刷する。
【0017】
撥液パターン4は、撥液性を有するインキを用いて、所定の径の抜きドット形状4aを複数有するように形成されている。撥液性のインキとしては、通常使用するインキやニスにシリコーンオイルやシリコーン樹脂を少量添加したインキや、シリコーン樹脂やフッ素系樹脂をバインダーとするインキを使用することができる。通常撥液パターン4は無色透明とするのが一般的であるが、デザイン上の効果を求めて、適宜着色することもできる。撥液パターン4の形状は、図3に示したような正三角形状に配列した水玉模様のネガや、正方形状に配列した水玉模様のネガ、あるいは、碁盤目、ハニカム形状など任意に設定することができる。
【0018】
撥液パターン4の表面に透明ニスを塗布して撥液パターン4に沿ってはじかせると、透明ニスは、撥液パターン4の抜きドット形状4aの部位に集まり、凸状に盛り上がってマイクロレンズ5を形成する。透明ニスとしては、マット剤などの充填剤を含まない透明性のよい樹脂組成物で、固形分の多いものが好ましい。例えば、紫外線硬化型の固形分100%の透明グロスニスは、好ましく使用できるものである。
【0019】
図2は、他の例の装飾体21を示す断面図である。この例では、反射層2と視覚表現絵柄層3との間に透明層6が設けられている。透明層6は、入射光および反射光の光路を長くして拡大模様の立体感を強め、視覚効果を向上させる働きをする。透明層6としては、透明樹脂の塗膜や、透明フィルムを使用することができる。
【0020】
透明層6を透明顔料や染料を用いて着色すると、さまざまな金属光沢を表現することが可能となる。例えば反射層2をアルミニウム箔とし、透明層6を黄褐色にすると金色を表現することができる。同様に透明層6をグレー色にするとステンレススチールの質感を与えることができる。
【0021】
図3は、本発明に係る装飾体において拡大模様による視覚効果の発生する機序を示した拡大平面図である。この例では、視覚表現絵柄3が円形のドットであり、一定の視覚表現絵柄ピッチ(第一のピッチ)7で正三角形状に配列されている。この上から撥液性のインキを用いて形成した撥液パターン4が設けられている。撥液パターン4は、一定のマイクロレンズピッチ(第二のピッチ)8で正三角形状に配列した円形のドットのネガパターンすなわち抜きドット形状4aの集合となっており、撥液パターン4の上に塗布された透明ニスが弾かれて抜きドット形状4aに集まることでマイクロレンズ5が形成されている。マイクロレンズ5の径としては、0.05mm〜0.45mm程度が適当である。
【0022】
視覚表現絵柄ピッチ7とマイクロレンズピッチ8を、異なる値に設定すると、視覚表現絵柄3のドットとマイクロレンズ5の位置関係が徐々にずれていき、1ピッチずれた位置で再び一致しようとする。両者が一致した部分では、視覚表現絵柄3の中央部がマイクロレンズ5で拡大され、両者が一致しない部分では、隣接する2つの視覚表現絵柄の中間部がマイクロレンズ5で拡大される。このように、拡大される視覚表現絵柄の部分が徐々にずれて移動して行き、1ピッチずれた位置で、元に戻る。このピッチの一致、不一致が繰返す結果、肉眼で見ると、あたかも視覚表現絵柄が拡大されたかのように認識される視覚効果が生じるのである。視覚表現絵柄ピッチ7およびマイクロレンズピッチ8の値としては、0.05mm〜1.0mm程度で互いに異なるように設定されるのが好ましい。
【0023】
図4は、拡大模様の発生する機序を示した拡大平面説明図であり、図3よりも拡大倍率を下げたものである。図から分かるように、視覚表現絵柄の中央部が拡大される領域9と、視覚表現絵柄の中間部が拡大される領域10とが周期的に一定の間隔で現れる。これが拡大模様となって現出し、肉眼によって認識されるのである。
【0024】
図5は、装飾体の他の例を示す拡大平面説明図である。この例では、四角形の視覚表現絵柄3aが形成され、視覚表現絵柄3aが図3と同様の視覚表現絵柄ピッチ7で配列されている。マイクロレンズ5の仕様は図3の場合と同様であり、マイクロレンズピッチ8も同様である。このようにすると、拡大模様としては、視覚表現絵柄3aの形状である四角形状の拡大模様が現出する。視覚表現絵柄としては、上述した円形や四角形以外にも任意の形状の絵柄が使用でき、現出する拡大模様は、元の視覚表現絵柄を拡大した図形となる。
【0025】
以上が本発明の製造方法で製造される装飾体の概要であるが、印刷を用いてこのような装飾体を製造しようとすると、撥液パターン4の抜きドット形状4aの径と、マイクロレンズ5を形成する透明ニスの塗工厚とを適切に設定しないと、様々な不具合の生じる可能性が高くなることを発明者は見出した。
【0026】
すなわち、マイクロレンズ5を形成する透明ニスの塗工厚に対して、抜きドット形状4aの径やマイクロレンズピッチが小さすぎると、図6に示すように、隣接するマイクロレンズが結合して不良レンズBL1が発生する。不良レンズBL1の下方の視覚表現絵柄3は狙い通りに拡大されないため、装飾体の視覚効果に貢献せず、視覚効果が減弱されることがある。
【0027】
また、マイクロレンズの径に対して高さ(厚み)が小さすぎると、マイクロレンズの上面の曲率が小さすぎるため、マイクロレンズによって視覚表現絵柄が充分に拡大されず、上述とは異なる機序で視覚効果が減弱あるいは消失される。
【0028】
このように、印刷を用いて装飾体10、11等を好適に製造するにあたっては、条件設定は必ずしも容易でなく、様々なパラメータが最適化されることが必要であることが見出された。そこで、発明者は、上述した各パラメータにおける好適な条件を明らかにすべく、検討を行ったので、以下に説明する。
【0029】
まず、検討の条件について示す。
反射層を有する基材として、VM−PET貼合紙(商品名ブリリアンシルバーS、京王製紙(株)製、坪量310g/m、サイズ650mm×950mm)を使用した。この基材上に、透明黄インキ(商品名FDOL−MP、東洋インキ製造(株)製)を下層にベタ印刷後、黒インキ(商品名FDカルトンACE、東洋インキ製造(株)製)で所定ピッチでドットを印刷して視覚表現絵柄を形成した。
【0030】
次に、透明ニスを用いて、所定の抜きドット径(抜きドット形状の径、マイクロレンズの径の設定値)およびドット間隙(マイクロレンズピッチとレンズ径との差)で撥液パターンを形成した。
さらに、マイクロレンズを形成する透明ニスを所定の塗工厚で塗布し、UV照射により硬化させてマイクロレンズを形成した。
【0031】
各グループの抜きドット径およびドット間隙の設定値、およびニス塗工厚は以下の通りである。また、各グループにおける視覚表現絵柄のピッチも併せて示す。
グループ1
抜きドット径 60μm、ドット間隙20μm(マイクロレンズピッチ80μm)
ニス塗工厚 3.7μm
視覚表現絵柄ピッチ 90μm
グループ2
抜きドット径 80μm、ドット間隙30μm(マイクロレンズピッチ110μm)
ニス塗工厚(()内はサンプル数)4.5μm(1)、3.7μm(1)
視覚表現絵柄ピッチ 120μm
グループ3
抜きドット径 140μm、ドット間隙30μm(マイクロレンズピッチ170μm)
ニス塗工厚(()内はサンプル数)4.5μm(1)、3.7μm(1)
視覚表現絵柄ピッチ 160μm
グループ4
抜きドット径 300μm、ドット間隙30μm(マイクロレンズピッチ330μm)
ニス塗工厚(()内はサンプル数)6.2μm(1)、5.7μm(1)、4.5μm(1)、3.7μm(1)、2.5μm(1)、2.0μm(1)
視覚表現絵柄ピッチ 310μm
グループ5
抜きドット径 500μm、ドット間隙40μm(マイクロレンズピッチ540μm)
ニス塗工厚(()内はサンプル数)4.5μm(1)、3.7μm(1)
視覚表現絵柄ピッチ 510μm
グループ6
抜きドット径 550μm、ドット間隙50μm(マイクロレンズピッチ600μm)
ニス塗工厚 3.7μm
視覚表現絵柄ピッチ 540μm
【0032】
各グループの各サンプルにおいて、以下の評価を行った。
レンズ直径(μm) 各サンプルにおいて、無作為に選んだ10個のマイクロレンズの径を計測し、その平均値とした。
レンズ高さ(μm) 各サンプルについて厚さ方向の断面サンプル(幅30mm)を5つ作成し、各断面サンプルを計測してマイクロレンズの高さの最高値を取得した。各サンプルの最高値の平均値をレンズ高さとした。
目視評価 各サンプルにおいて無作為に設定した30mm×30mmの領域について、視覚表現絵柄の視覚効果、および装飾体の外観の2点を総合的に評価し、○:製品として問題なく利用可能、△:若干品質が劣るが製品として利用可能、×:製品として利用不可の3段階で評価した。
結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示すように、グループ1は、隣接するマイクロレンズが結合した不良レンズが多数確認され、その結果外観不良が著しく、製品として利用不可のレベルであった。同様の不良レンズは、グループ2の各サンプルおよびグループ3のニス塗工厚4.5μmのサンプルでも認められたが、頻度はグループ1ほど著しくなく、いずれも製品として利用可能な水準であった。
一方、グループ6では、マイクロレンズ表面の曲率が小さすぎるため、視覚効果がほとんど確認できず、製品として利用不可のレベルであった。また、グループ5のニス塗工厚3.7μmのサンプルではマイクロレンズ表面の曲率が小さいことにより視覚効果がやや見えにくくなったが、製品として利用可能な水準であった。
また、ニス塗工厚を多段階に設定して検討したグループ4では、ニス塗工厚6.2μmのサンプルで不良レンズを多数生じ、製品として利用不可のレベルとなった。また、ニス塗工厚2.0μmのサンプルで視覚効果がほとんど確認できず、製品として利用不可のレベルとなった。
その他のサンプルでは、マイクロレンズの結合による不良レンズの発生はなく、視覚効果も充分に得られる装飾体とすることができた。
なお、グループ6は、グループ5に対してドット間隙を広くした上でニス粒を大きくすることによりマイクロレンズの曲率を改善しようと設定したグループであったが、ドット間隙に小さなニス残りの粒が発生した。グループ6ではニス残りの粒が多く発生し、表面外観がマット調となった。ドット間隙は40μm以下が望ましく、広げすぎた場合視覚効果とは関係ないニス粒が発生しやすくなることがわかった。
【0035】
上記検討結果より、撥液パターンの抜きドット径が80μmから500μmの範囲内にあれば、マイクロレンズを形成するニスの塗工厚を概ね2.5μmから6.0μmの範囲内とすることで、マイクロレンズの径が50μmから450μmの範囲内となり、印刷により好適に装飾体を製造できることが確認された。
また、抜きドット径を200μm台にすると、上記範囲内であれば、ニス塗工厚をそれほど厳密に制御しなくても、概ね好適に装飾体を製造できることが示唆された。
【0036】
さらに、上記範囲内で、抜きドット径を大きく、ニス塗工厚を小さく設定する場合は、マイクロレンズを形成するニス塗工時の雰囲気温度を低めにする等により当該ニスの粘度を高めにし、抜きドット径を小さく、ニス塗工厚を大きく設定する場合は、マイクロレンズを形成するニス塗工時の雰囲気温度を高めにする等により当該ニスの粘度を低めにすることで、より好適に装飾体を製造できると考えられた。
さらに目安として、形成されるマイクロレンズ径とレンズ高さとの比率(レンズ径/レンズ高さ)が5以上45以下となるように、予備試験等により上述の各種パラメータを設定することで、好適に装飾体を製造できることが示唆された。
【0037】
以上、本発明について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 基材
2 反射層
3、3a 視覚表現絵柄
4 撥液パターン
4a 抜きドット形状
5 マイクロレンズ
7 視覚表現絵柄ピッチ(第一のピッチ)
8 マイクロレンズピッチ(第二のピッチ)
10、11 装飾体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に第一のピッチでドットパターン状に形成した視覚表現絵柄と、前記視覚表現絵柄上に撥液性を有するニスを用いて前記第一のピッチと異なる第二のピッチで抜きドット形状が配列されるように形成された撥液パターンと、前記撥液パターン上に透明ニスを塗布して前記抜きドット形状上に形成したマイクロレンズと、前記基材と前記視覚表現絵柄との間に形成された反射層とを有する装飾体の製造方法であって、
前記マイクロレンズの径が50μm以上450μm以下となるように前記撥液パターンが印刷により形成され、
前記撥液パターン上に2.5μm以上6.0μm以下の塗工厚で前記透明ニスが印刷により塗布されることを特徴とする装飾体の製造方法。
【請求項2】
前記抜きドット形状の径が80μm以上500μm以下となるように前記撥液パターンが形成されることを特徴とする請求項1に記載の装飾体の製造方法。
【請求項3】
前記抜きドット形状の径が200μm以上300μm以下となるように前記撥液パターンが形成されることを特徴とする請求項2に記載の装飾体の製造方法。
【請求項4】
前記マイクロレンズの径と高さとの比が5以上45以下となるように前記抜きドット形状の径および前記塗工厚が設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の装飾体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254528(P2012−254528A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127266(P2011−127266)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】