説明

装飾材の製造方法

【課題】透明なシート状基材の裏面に凹凸層を形成しその外側に光反射層を積層させる装飾材の製造方法において、光と影による立体的で明瞭な図柄表現を行うことが可能な装飾材の製造方法の提供。
【解決手段】シート状基材1の裏面に光透過性の紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂で図柄2を印刷し、図柄印刷層の外側に光反射層3を形成し、更にバックアップ層4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なシート状基材の裏面に凹凸層を形成しその外側に光反射層を積層させる装飾材の製造方法に関するもので、建築用の化粧板、天井板、家具、自動車などの装飾材料として使用される。
【背景技術】
【0002】
この種の装飾材の製造方法としては、特許文献1、2に開示されたものがある。
特許文献1に開示された方法は、アンカーコート層としてのポリエチレン樹脂を押し出してこれを着色半透明の基材上にコートすると同時にエンボス加工を施し、次いでそのエンボス加工面に金属蒸着層を形成し、その外側にヒートシール層を形成するようにしたものである。
しかしながら、この方法では、着色半透明の基材を使用しているため、金属蒸着層への光の入射量が制限され、なおかつ蒸着面で反射された光のすべてを外へ到達させられないため、光を利用した立体的な模様表現が不十分となり、図柄表現について制約を受ける不都合があった。
【0003】
また、特許文献2に開示された方法は、透明シートとエンボス加工を施したシートとをあらかじめ用意し、両シートの間に押出機から100℃に加熱されて押し出された溶融状態の着色樹脂を注入し、100℃に加熱されている金属ロール間に導いてしごきを与え、冷却後巻き取ってそのまま2日間エージングして樹脂を硬化させるものである。
しかしながら、この方法では、一方のシートにエンボス加工が行われた二つのシート間に溶融樹脂を注入するため、凹部にエアーが入り込むおそれがあり、しかも、装飾シートの完成までに2日間のエージングが必要となるため、品質上も作業効率上においても不都合が生じていた。
【0004】
上記いずれの方法においても、押出機及びエンボス加工機の配置が必須となるため、装置が大掛かりとなる問題が残されている。
また、エンボス加工による凹凸の表現では、図柄の際をシャープに表現できないため、立体的な図柄表現がぼやけてしまう不都合がある。しかも、エンボス加工を行うための金型を制作する必要があるから装飾シートを形成するコストも高くなって、それだけ図柄の数も制限せざるを得ない問題も残されていた。
【特許文献1】実開平4-29098 号公報
【特許文献2】特開平6-99698 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、透明なシート状基材の裏面に凹凸層を形成しその外側に光反射層を積層させる装飾材の製造方法において、光と影による立体的で明瞭な図柄表現を行えるようにすることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための技術的手段は、(イ)シート状基材の裏面に光透過性の紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂で図柄を印刷し、(ロ)図柄印刷層の外側に光反射層を形成すること、である。
【0007】
図柄を紫外線硬化型樹脂で印刷すると、紫外線を照射することによって瞬時に硬化するし、2液硬化型樹脂で印刷した場合でも印刷硬化までの時間が短いため、印刷された凸部の柄際をシャープに形成することができる。
透明なシート状基材から入射した光は、図柄印刷層を通過してその外側に設けられている光反射層に到達し、そこで反射させられることになる。
光反射層は、図柄の凸部の表面を覆う状態で形成されているから、反射面には凸状の図柄が形成する凹溝が形成され、入反射時の屈折によって光と影とが交錯して図柄が立体的に現れることになる。
【0008】
本発明における透明な基材シートとしては、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、塩化ビニルなどからなるプラスチック製の板やフィルムの他、透明ガラスも使用することができる。このシートは、無着色、着色のいずれのものであっても良い。
【0009】
図柄印刷層を形成する紫外線硬化型樹脂や2液硬化型樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂からなるインクを好適に使用することができる。
なお、この図柄印刷においては、シルクスクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、ポッティングなどの印刷法を使用することができる。
【0010】
光反射層を金属薄膜で形成すると金属色による反射光が得られると共に反射効率も高くなる。図柄印刷層の外側に蒸着又はスパッタリングなどによって薄膜層を形成する他、転写法によって金属薄膜を積層することができる。
また、光反射層は、金、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属微粉末やパール粉からなる光反射材を混入させた樹脂を使用して形成することもできる。この場合には、シルクスクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などの印刷法を使用する他、樹脂コーティング法を使用することができる。樹脂は着色無着色を問わない。
【0011】
光反射層での色彩に変化をもたせる場合には、図柄印刷層と光反射層との間に着色透明樹脂層を介在させることによっても行うことができる。例えば、図柄印刷層の外側に黄色の透明フィルムを介在させてアルミニウムを蒸着すると、金色の反射光が得られる。図柄の種類や光反射層の色合いを勘案して適宜設計することになる。
【0012】
光反射層の外側に反射バックアップ層を積層しておくと、装飾材を使用する下地の色彩などに光反射層が影響を受けないようにすることができる。
たとえば、光反射層を白色系統の薄い色合いのもので構成した場合下地の色によってはその影響を受けて反射光の色合いが変化することになる。この場合、バックアップ層として白色のインク層を積層したり、不透明なフィルムを張り付けたりすることによって、所望の色合いを確保することができる。なお、印刷によって形成する場合には、前記の印刷法を利用することができる。
このバックアップ層は光反射層からの反射光の色合いを調整する目的で使用することもできる。例えば、金属薄膜で光反射層を形成している場合には、黒色のバックアップ層を設けると黒みがかった金属色となり、白色のバックアップ層を設けると白みがかった金属色を形成することができることになる。
【0013】
なお、図柄印刷層、光反射層及びバックアップ層の厚みは、基材シートの種類や厚み、表現する図柄、装飾材の用途などを総合的に勘案して設計することになる。
また、光反射層やバックアップ層を樹脂で形成する場合には、装飾材の用途などを勘案して熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を選択することになる。
【発明の効果】
【0014】
光と影による立体的で明瞭な図柄表現を行える結果、引き締まった装飾効果をもたらす装飾材を手軽に形成できる利点がある。
また、図柄は印刷法によって表現できるため、印刷用の製版を制作して手軽に多様な図柄を廉価に得られる利点もある。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明方法によって形成した装飾板の断面を示したものてある。
この装飾板は、裏面を上向き状態にした厚さ2mmの無色透明のアクリル樹脂板1上に紫外線硬化樹脂からなるインクを用いて、線模様2、2を厚さ 0.2mmの凸状に印刷し、そのまま紫外線を照射して線模様を硬化させた。引き続き、その外側にパールマイカ粉を混入させた薄いブルー色の熱硬化性樹脂をシルクスクリーン印刷によって 0.5mmの厚さに塗布して光反射層3を形成し、これを加熱硬化させた後、その外側に同様の方法によって黒色の熱硬化性樹脂を 0.2mmの厚さに塗布してパックアップ層4を形成し、加熱硬化させて装飾板を得た。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明方法によって形成した装飾板の断面図
【符号の説明】
【0017】
1無色透明のアクリル板、 2紫外線硬化樹脂によって印刷した線模様、 3光反射層、 4バックアップ層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なシート状基材の裏面に凹凸層を形成しその外側に光反射層を積層させる装飾材の製造方法において、シート状基材の裏面に光透過性の紫外線硬化型樹脂又は2液硬化型樹脂で図柄を印刷し、その外側に光反射層を形成する装飾材の製造方法。
【請求項2】
光反射層を金属薄膜又は光反射材を混入させた樹脂で形成する請求項1に記載の装飾材の製造方法。
【請求項3】
図柄印刷層と光反射層との間に着色透明樹脂層を介在させる請求項1又は2に記載の装飾材の製造方法。
【請求項4】
光反射層の外側に反射バックアップ層を形成する請求項1、2又は3に記載の装飾材の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2007−216088(P2007−216088A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36097(P2006−36097)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000143798)株式会社キョーテック (3)
【Fターム(参考)】