説明

補修情報報知装置

【課題】電解コンデンサの実際の動作状態を監視することにより、CATV用機器の電源部の補修情報を報知することのできる補修情報報知装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る補修情報報知装置1は、交流を直流に変換する変換回路に含まれる直流の脈動を平滑化する電解コンデンサが充放電する電圧から直流成分を除去して脈動電圧信号を生成する脈動電圧信号生成部11と、脈動電圧信号から交流の周波数の4倍より高い高周波数を除去する高周波成分除去部12と、高周波数が除去された脈動電圧信号の電圧に比例した電圧信号を生成する電圧信号生成部13と、予め定められた少なくとも1つの閾値信号を生成する閾値信号生成部14と、電圧信号が閾値信号よりも大きくなったときに補修情報を報知する補修情報報知部15とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補修情報報知装置に関し、特に、CATV用機器の電源部の補修情報を報知する補修情報報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CATVシステムで使用されているテレビジョン信号伝送用機器には、電源部を内蔵しているものと、伝送部と電源部とが別置され、同軸ケーブル等を介して電源部から伝送部に電力を供給するものとがある。いずれの形式であっても、伝送部は直流電力で動作するため、電源部は、交流を直流に変換する変換回路を有している。この変換回路は、テレビジョン信号に対しては雑音となる脈動成分を極力低減する必要があるため、電解コンデンサと、コイルとを組み合わせた平滑回路を含むことが普通である。
【0003】
但し、電解コンデンサは、電解液の変質、漏洩等により性能が経時的に劣化してしまうところ、劣化が進むと、電源部が供給する直流電力の脈動が大きくなってしまう。
【0004】
従来のアナログテレビジョン放送では、CATV機器が伝送するテレビジョン信号はアナログ信号であり、電解コンデンサの性能が劣化して電源部が供給する直流電力の脈動が大きくなると、テレビジョン受像機の画質が劣化する。このたため、電解コンデンサを含む電源部の補修時期は、画質から判断することが可能であった。
【0005】
しかし、今後主流となるデジタルテレビジョン放送では、CATV機器が伝送するテレビジョン信号はデジタル信号となるので、電解コンデンサの性能が劣化して電源部が供給する直流電力の脈動が大きくなっても、画質が徐々に劣化するということはなく、突然CATV機器が動作を停止するという事態が予想される。
【0006】
このような突然の動作停止を避けるためには、電解コンデンサが劣化しているか否かを監視し、電解コンデンサが劣化したと判断された場合には、それを補修情報として報知することが必要となる。
【0007】
尚、電解コンデンサの劣化に関しては、特開2000−222025号公報に記載されているような自己診断装置等が知られている。
【特許文献1】特開2000−222025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような自己診断装置は、電解コンデンサへの通電時間に基いて電解コンデンサの劣化を判断するものであるところ、電解コンデンサへの通電時間と性能劣化とは必ずしも線形の関係にはなく、予想以上の速度で劣化した場合には、診断装置か劣化を検知する前に機能が停止してしまうという事態を回避できない。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術における課題を解決するためになされたものであって、電解コンデンサの実際の動作状態を監視することにより、CATV用機器の電源部の補修情報を報知することのできる補修情報報知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る補修情報報知装置は、交流を直流に変換する変換回路に含まれる直流の脈動を平滑化する電解コンデンサが充放電する電圧から直流成分を除去して脈動電圧信号を生成する脈動電圧信号生成部と、前記脈動電圧信号から前記交流の周波数の4倍より高い高周波を除去する高周波成分除去部と、高周波が除去された前記脈動電圧信号の電圧に比例した直流電圧信号を生成する電圧信号生成部と、予め定められた少なくとも1つの閾値信号を生成する閾値信号生成部と、前記電圧信号が前記閾値信号よりも大きくなったときに補修情報を報知する補修情報報知部とを含んでいることを特徴としている。かかる構成により、電解コンデンサの性能が劣化したときに、速やかに補修情報を報知することができる。
【0011】
また、本発明に係る補修情報報知装置は、前記閾値信号生成部が、第1の閾値信号と、前記第1の閾値信号より大きい第2の閾値信号とを生成し、前記補修情報報知部が、前記電圧信号が前記第1の閾値信号よりも大きくなったときに前記電解コンデンサの交換を促す第1の補修情報を報知し、前記電圧信号が前記第2の閾値信号よりも大きくなったときに前記変換回路の動作を停止させる第2の補修情報を報知するように構成されていることを特徴としている。かかる構成により、電解コンデンサの性能が劣化したときに自動的に変換回路の動作を停止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る補修情報報知装置は、電解コンデンサの充放電電圧に含まれる脈動電圧を監視することにより、CATV用機器の電源部の補修情報を報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明に係る補修情報報知装置1は、図1に示すように、脈動電圧信号生成部11(交流を直流に変換する変換回路に含まれる直流の脈動を平滑化する電解コンデンサが充放電する電圧から直流成分を除去して脈動電圧信号を生成する)と、高周波成分除去部12(脈動電圧信号から交流の周波数の4倍より高い高周波を除去する)と、電圧信号生成部13(高周波が除去された脈動電圧信号の電圧に比例した直流電圧信号を生成する)と、閾値信号生成部14(予め定められた少なくとも1つの閾値信号を生成する)と、補修情報報知部15(電圧信号が閾値信号よりも大きくなったときに補修情報を報知する)と、を含んでいる。
【0014】
図2は、本発明の実施形態の一例を示す回路図である。変換回路2は、商用電源20から供給される交流の電圧を、所望の電圧に降圧あるいは昇圧するトランス21と、降圧あるいは昇圧後の交流を整流して直流に変換するダイオードブリッジ22と、平滑回路(整流後の直流に含まれる脈動を平滑化するための電解コンデンサ23で構成される)とを含んでいる。尚、本実施形態においては、平滑回路は一つの電解コンデンサ23によって構成されているが、複数個の電解コンデンサによって構成することもできる。
【0015】
脈動電圧信号生成部11は、比較的静電容量変化の少ないコンデンサ31(例えば、磁器コンデンサ)によって構成されている。
【0016】
高周波成分除去部12は、低周波通過型フィルタであり、図2は、抵抗321、及び、コンデンサ322で構成されるパッシブ型を示しているが、演算増幅器を使用したアクティブ型としてもよい。尚、ダイオード検波回路が検波できる大きさより脈動電圧信号が小さい場合は、低周波通過型フィルタの出力を増幅する増幅回路を設けてもよい。
【0017】
電圧信号生成部13は、高周波成分が除去された脈動電圧信号の電圧、実効電圧、或いは、ピーク電圧に比例した直流電圧信号を生成する。電圧信号が、高周波成分が除去された脈動電圧信号の電圧に比例した実効電圧である場合には、電圧信号生成部13として、第1のダイオード331、及び、第2のダイオード332からなるダイオード検波回路33を適用することができる。また、電圧信号が、高周波成分が除去された脈動電圧信号の電圧に比例したピーク電圧である場合には、電圧信号生成部13として、ピーク保持回路を適用することができる。
【0018】
閾値信号生成部14は、可変電圧源(例えば、ボルテージレギュレータとポテンショメータ)で構成され、第1の閾値信号生成回路341、及び、第2の閾値信号生成回路342を含んでいる。
【0019】
補修情報報知部15は、演算増幅器を使用した第1の比較器351、及び、第2の比較器352で構成され、補修情報を報知する発光ダイオード353、及び、リレイ354を駆動する。
【0020】
次に本発明に係る補修情報報知装置1の動作を説明する。磁器コンデンサ31は、電解コンデンサ23が充放電する電圧に含まれる直流成分を除去し、脈動電圧成分だけを含む脈動電圧信号を生成する。
【0021】
抵抗321、及び、コンデンサ322で構成される低周波通過型フィルタは、脈動電圧信号に含まれる高周波成分を除去し、商用電源の周波数(例えば、50サイクル)の数倍(例えば、4倍)の周波数(例えば、200サイクル)以下の脈動電圧信号だけを抽出する。
【0022】
ダイオード検波回路33は、高周波成分が除去された脈動電圧信号を整流して、脈動電圧信号の実効電圧に比例した直流電圧信号を生成する。この直流電圧信号は、電解コンデンサ23の性能劣化が進行するほど高電圧となり、この直流電圧信号を監視することにより、電解コンデンサ23の劣化度合を判定できる。
【0023】
第1の閾値信号生成回路341は、電解コンデンサ23が交換を要する程度に劣化したと判断される第1の閾値電圧を生成する。そして、第2の閾値信号生成回路342は、これ以上の運用は無理であると判断される第2の閾値電圧を生成する。
【0024】
第1の比較器351は、直流電圧信号と第1の閾値信号生成回路341で生成される第1の閾値電圧とを比較し、直流電圧信号が第1の閾値電圧より高くなったときに、発光ダイオード353を発光させて、補修員に電解コンデンサ23の交換を促す。
【0025】
第2の比較器352は、直流電圧信号と第2の閾値信号生成回路342で生成される第2の閾値電圧とを比較し、直流電圧信号が第2の閾値電圧より高くなったときに、リレイ354を動作させて、商用電源20から変換回路2への電力供給を遮断する。
【0026】
以上に説明したように、本発明に係る補修情報報知装置によれば、電解コンデンサの充放電電圧に含まれる脈動電圧を監視して、CATV用機器の電源部の補修情報を報知することができ、デジタルCATVの分野においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る補修情報報知装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る補修情報報知装置1の回路図である。
【符号の説明】
【0028】
1:補修情報報知装置、
11:脈動電圧信号生成部、
12:高周波成分除去部、
13:電圧信号生成部、
14:閾値信号生成部、
15:補修情報報知部、
2:変換回路、
20:商用電源、
21:トランス、
22:ダイオードブリッジ、
23:電解コンデンサ、
31:コンデンサ、
321:抵抗、
322:コンデンサ、
33:ダイオード検波回路、
341:第1の閾値信号生成回路、
342:第2の閾値信号生成回路、
351:第1の比較器、
352:第2の比較器、
353:発光ダイオード、
354:リレイ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を直流に変換する変換回路に含まれる直流の脈動を平滑化する電解コンデンサが充放電する電圧から直流成分を除去して脈動電圧信号を生成する脈動電圧信号生成部と、
前記脈動電圧信号から前記交流の周波数の4倍より高い高周波を除去する高周波成分除去部と、
高周波が除去された前記脈動電圧信号の電圧に比例した電圧信号を生成する電圧信号生成部と、
予め定められた少なくとも1つの閾値信号を生成する閾値信号生成部と、
前記電圧信号が前記閾値信号よりも大きくなったときに補修情報を報知する補修情報報知部とを有していることを特徴とする補修情報報知装置。
【請求項2】
前記閾値信号生成部が、第1の閾値信号と、前記第1の閾値信号より大きい第2の閾値信号とを生成し、
前記補修情報報知部が、前記電圧信号が前記第1の閾値信号よりも大きくなったときに前記電解コンデンサの交換を促す第1の補修情報を報知し、前記電圧信号が前記第2の閾値信号よりも大きくなったときに前記変換回路の動作を停止させる第2の補修情報を報知するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の補修情報報知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−11107(P2009−11107A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171445(P2007−171445)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000221270)東芝テクノネットワーク株式会社 (7)
【Fターム(参考)】