説明

補助具およびそれを備えた薬液注入ポートセット

【課題】 薬液注入ポートにカテーテルを接続するための操作が容易で、カテーテルが捻じれることのない補助具およびそれを備えた薬液注入ポートセットを提供すること。
【解決手段】 薬液注入ポート11のステム15をカテーテル12の基端部で被覆して、その外周にカテーテル固定部材13を取り付ける際に用いられる補助具20を、補助具本体21と、補助具本体21の外周面に形成された押圧部22とで構成した。また、補助具本体21に、カテーテル12の外径よりも長く、カテーテル固定部材13の外径よりも短い幅の外周側開口23aを備え内部にカテーテル12を貫通させることのできる軸方向貫通溝23を設けた。そして、押圧部22を補助具本体21の外周面に沿った略C字形の鍔部で構成した。また、薬液注入ポートセット10のカテーテル固定部材13を、環状のロック本体16と、アンチキンクチューブ17とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入ポートとカテーテルとの接続部にカテーテル固定部材を取り付ける際に用いられる補助具およびそれを備えた薬液注入ポートセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液注入ポートが接続されたカテーテルを患者の体に留置して静脈に抗がん剤や栄養剤等の薬液を一時的または長期にわたって供給することが行われている。この場合、カテーテルの先端部を体内における薬液を供給する部分まで延ばし、そのカテーテルの基端部に、カテーテル固定部材を介して薬液注入ポートを接続している。そして、薬液注入ポートを、体外から注射等により薬液を供給し易い体内の所定の位置に留置している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この埋設型カテーテル装置(薬液注入ポートセット)は、薬液注入ポートと、この薬液注入ポートに接続したカテーテルと、薬液注入ポートとカテーテルとの接続部分を覆うスリーブ(カテーテル固定部材)と、スリーブを薬液注入ポートとカテーテルとの接続部分に取り付けるためのキャップ(補助具)とを備えている。そして、薬液注入ポートの側部には、内周面に雌ねじが形成された円筒状の孔部が形成されているとともに、孔部を貫通して外部に延びる接続管が設けられている。また、スリーブは、カテーテルを挿通させる内腔と、薬液注入ポートの雌ネジに螺合する雄ねじとを備えた円筒体で構成され、スリーブの外周面における雄ねじ以外の部分には軸方向に延びる凹部が円周に沿って複数形成されている。
【0004】
そして、キャップは、円柱体に、外周側から中央側にかけてカテーテルを出し入れすることのできるカテーテル挿通部を設けるとともに、端面側に、スリーブの凹部が形成された部分を形状を一致させて挿入できるスリーブ嵌合部を設けた形状に形成されている。したがって、スリーブにカテーテルを挿通させ、そのカテーテルの基端部を接続管に接続した状態で、孔部の雌ねじとスリーブの雄ねじとを螺合させ、さらに、キャップをスリーブに嵌合させてキャップを回転することにより、雌ねじと雄ねじとを強く螺合させることができる。これによって、薬液注入ポートの接続管とカテーテルとは強固に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8―107934号公報
【発明の概要】
【0006】
前述した埋設型カテーテル装置の薬液注入ポートは、患者の体に形成された僅か数センチの長さの切開部に突出したカテーテルの基端部に取り付けられるため、狭いスペースの中で、接続操作を行わなければならない。そして、前述した従来の埋設型カテーテル装置のように、雌ねじと雄ねじとの螺合により、薬液注入ポートとスリーブとを接続する場合には、キャップを用いてスリーブを回転させる操作が必要になる。しかしながら、狭いスペースの中では、このような操作がしづらいという問題がある。また、スリーブが回転する際に、カテーテルは静止状態の接続管と回転するスリーブとによって挟まれた状態になるため、カテーテルに捻じれが生じる。このため、カテーテルが破損しやすくなるという問題もある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、その目的は、薬液注入ポートにカテーテルを接続するための操作が容易になるとともに、カテーテルが捻じれることがない補助具およびそれを備えた薬液注入ポートセットを提供することにある。
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る補助具の構成上の特徴は、薬液注入ポートの本体から突出する接続管をカテーテルの端部側部分で被覆し、カテーテルの端部側部分を接続管の外周面に押し付けるようにして、カテーテルの端部側部分の外周にカテーテル固定部材を取り付ける際に用いられる補助具であって、カテーテルを外周側から挿入できる外周側開口を備え内部にカテーテルを貫通させることのできる軸方向貫通溝が設けられた補助具本体と、補助具本体の外周面に形成された突部からなる押圧部とを備えたことにある。
【0009】
前述のように構成した補助具の補助具本体には、カテーテルを軸方向に沿わせて外周側から挿入できる軸方向貫通溝が設けられ、補助具本体の外周面には押圧部が形成されている。したがって、カテーテル固定部材の内部に通したカテーテルの基端側部分で薬液注入ポートの接続管を被覆し、補助具本体の軸方向貫通溝にカテーテルにおけるカテーテル固定部材よりも先端側部分を通した状態で、押圧部を薬液注入ポート側に押圧することにより、カテーテル固定部材をカテーテルを介して接続管の外周側に移動させることができる。
【0010】
すなわち、本発明によると、薬液注入ポートとカテーテル固定部材とをねじ同士の螺合によって接続するといったような複雑な操作をすることなく、双方を互いに押圧するといった簡単な操作で薬液注入ポートとカテーテルとを接続することができる。その際、補助具の押圧部でカテーテル固定部材を押圧するだけで済むため、スペースの狭い場所でも操作を容易に行えるとともに、押圧部を押圧する力を効果的にカテーテル固定部材に伝達することができ、確実な押圧操作ができる。また、カテーテルを捻じることがないため捻じれによりカテーテルを破損することがなくなる。なお、外周側開口の幅は、カテーテル固定部材の外径よりも短く、カテーテルの外径またはカテーテルを軽く押し潰したときの厚みよりも長くしておく。
【0011】
また、補助具本体としては、軸方向に所定の長さを備えたある程度長いもので構成してもよいし軸方向の長さが短い板状のもので構成してもよい。要は、外周側から内部にカテーテルを入れることのできる軸方向貫通溝と、カテーテル固定部材を押圧する操作をし易くするための押圧部とが備わっていればよい。さらに、カテーテル固定部材としては、カテーテルを接続管側に押し付ける固定部本体と、カテーテルの基端側部分を覆うチューブとで構成されるものを用いることが好ましい。これによると、カテーテルに折れが生じることを防止できる。
【0012】
また、本発明に係る補助具の他の構成上の特徴は、押圧部を補助具本体の外周面の円周方向に沿って形成された鍔部で構成したことにある。これによると、補助具によるカテーテル固定部材の押圧操作がさらにし易くなる。例えば、補助具本体の軸方向貫通溝内にカテーテルを挿入するときに、軸方向貫通溝を下方に向けた状態で補助具を上方からカテーテルに近づけていくとすると、押圧部は補助具本体の外周面に沿って形成されているため軸方向開口部側の下部側には押圧部は設けられていない状態になる。このため、押圧部の下部が体の切開部に当たって補助具の操作がし難くなるといったことは生じなくなる。この場合の押圧部の内周縁部の形状は略C字形になるが、外周縁部の形状は一部が開放された円形や一部が開放された四角形等種々の形状にすることができる。
【0013】
また、本発明に係る補助具のさらに他の構成上の特徴は、軸方向貫通溝の内周面に、押圧側開口の方が奥側よりも内径が大きくなったテーパ面を形成したことにある。通常、カテーテルにおける接続管を覆った部分は、他の部分よりも膨れており、この膨れた部分に補助具でカテーテル固定部材が押圧されながら移動していく。このため、補助具本体の軸方向貫通溝の内周面における押圧側開口、すなわち、カテーテル固定部材を押圧する側の開口よりも奥側の方が、内径が小さくなったテーパ面で構成することにより、補助具本体がカテーテルと接続管との接続部に当たる場合に、カテーテルに無理な力を加えることがなくなり、カテーテルが損傷することを防止できる。
【0014】
本発明に係る薬液注入ポートセットの構成上の特徴は、前述したいずれかの補助具と、薬液注入ポートと、カテーテルと、カテーテル固定部材とからなることにある。これによると、薬液注入ポートにカテーテルを接続するための操作が容易であるとともに、カテーテルが捻じれることがないため破損し難い薬液注入ポートセットを得ることができる。
【0015】
また、本発明に係る薬液注入ポートセットの他の構成上の特徴は、カテーテル固定部材が、環状のロック本体と、ロック本体に連通した状態で連結されロック本体よりも外径の小さなチューブとで構成されていることにある。これによると、カテーテルに折れが生じることも防止できる。また、ロック本体の外径よりもチューブの外径の方を小さくしているため、補助具でカテーテル固定部材を押圧するときの操作が容易になる。例えば、補助具本体の形状を筒状体に外周側開口を備えた軸方向貫通溝を設けた単純な形状にした場合でも、軸方向貫通溝の内部にチューブを入れた状態で、補助具本体の端部でカテーテル固定部材を押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液注入ポートセットを示した側面図である。
【図2】薬液注入ポートを示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】カテーテル固定部材を示しており、(a)は側面図、(b)は(a)のb−b断面図である。
【図4】補助具を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(b)のc−c断面図である。
【図5】カテーテル固定部材を介して薬液注入ポートとカテーテルとを接続した状態を示した側面図である。
【図6】患者の体に薬液注入ポートとカテーテルとを留置した状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る補助具および薬液注入ポートセットを図面を用いて詳しく説明する。図1は、同実施形態に係る補助具20を備えた薬液注入ポートセット10を示している。この薬液注入ポートセット10は、患者A(図6参照)の静脈(B2等)内に、抗がん剤や栄養剤等の薬液を供給するために使用される薬液注入ポート11とカテーテル12とをカテーテル固定部材13で接続するためのものであり、補助具20を用いて、薬液注入ポート11とカテーテル12との接続部にカテーテル固定部材13が取り付けられる。薬液注入ポート11は、患者Aの体内における静脈の近傍の皮下に留置され、カテーテル12は、例えば、静脈内に留置される。
【0018】
薬液注入ポート11は、図2に示したように、ポート本体14と、本発明に係る接続管としてのステム15とで構成されている。ポート本体14は、平面(図2(a))が略楕円形で、側面(図2(b))が略台形に形成され、上面中央に凹部が形成された基板14aの表面に厚板状のセプタム14bを取付けて構成されており、基板14aとセプタム14bとで囲まれる部分に空間部が形成されている。セプタム14bは、シリコーンゴムで構成されており、針を刺し込むことができるとともに、針を抜くと針で刺した穴が塞がる性質を備えている。
【0019】
このため、ポート本体14のセプタム14bに薬液が充填された注射器の針を刺し、注射器からポート本体14内に薬液を注入すると、その薬液は、ポート本体14内の空間部に充填される。また、基板14aは、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン等で構成することができる。ステム15は、ポート本体14の内部に連通する液体流路(図示せず)が内部に形成された筒状体で構成されており、外周面の先端に拡径部15aが形成されている。
【0020】
ステム15の基端側部分の外径は、カテーテル12の内径と同じか僅かに大きく設定され、ステム15の先端の拡径部15aの最大外径は、カテーテル12の内径よりも大きく設定されている。例えば、カテーテル12の内径を1.5mmとすると、ステム15の基端側部分の外径は1.6mm程度で、拡径部15aの最大外径は2.4mm程度に設定される。このため、カテーテル12の基端開口(薬液注入ポート11側に位置する端部を基端部、静脈の内部側に挿入される端部を先端部とする。)から内部に向ってステム15に挿し込むと、拡径部15aの部分でカテーテル12が外周側に伸びることにより、ステム15にカテーテル12を接続することができる。
【0021】
カテーテル固定部材13は、図3に示したように、ロック本体16と、ロック本体16に連結された本発明に係るチューブとしてのアンチキンクチューブ17とで構成されている。ロック本体16は、軸方向の長さが短い円筒状の被押圧部16aと、内径が被押圧部16aと同じで外径が被押圧部16aよりも小さく、軸方向の長さが被押圧部16aよりも長い円筒状の接続部16bとを連通させた一体からなる部材で構成されている。そして、ロック本体16の内部に形成された固定用穴部16cの内周面における被押圧部16aの接続部16b側部分に、中心軸側に向かって僅かに突出する係合突部18が円周に沿って形成されている。
【0022】
また、接続部16bの外周面には、先端から基端側にいくほど徐々に大径になるテーパ面と、テーパ面の基端部よりも小径の同径面からなるストレート面とが形成されており、テーパ面とストレート面との境界には段部18aが形成されている。固定用穴部16cの内部側には、カテーテル12が外周面を覆った状態のステム15を押し込むことができ、そのとき、ステム15の拡径部15aが係合突部18を超えて係合突部18に係合し、ロック本体16は、ポート本体14に接近したところに位置するようになる。
【0023】
また、アンチキンクチューブ17は、内部にカテーテル12の基端側部分を貫通させることのできる保護チューブで構成されている。このアンチキンクチューブ17は、基端側部分で接続部16bを覆った状態でロック本体16に固定されている。このとき、接続部16bの基端側のストレート面を覆うアンチキンクチューブ17の基端部は段部18aを締め付けることにより固定される。これによって、アンチキンクチューブ17は、接続部16bから外れることを防止される。また、アンチキンクチューブ17における接続部16bのテーパ面を覆う部分には、接続部16bのテーパ面に沿って膨れた膨出部17aが形成される。
【0024】
補助具20は、図4に示したように、周面の一部が開放された略筒状の補助具本体21と、鍔状の押圧部22とで構成されている。補助具本体21は、円筒体の外周部から中心側の空間に連通する軸方向貫通溝23が軸方向に沿って設けられた形状に形成されている。すなわち、軸方向貫通溝23は、補助具本体21の軸方向に貫通するとともに、補助具本体21の外周側に開放された外周側開口23aを備えた溝部で構成されている。外周側開口23aの幅は、カテーテル12の外径よりも広く設定されている。また、外周側開口23aの幅は、カテーテル固定部材13のアンチキンクチューブ17の外径よりもやや広くなるように設定されている。
【0025】
そして、軸方向貫通溝23における補助具本体21の中心軸側の部分は、開口部に連通する略円形の貫通穴に形成されており、その直径は、外周側開口23aの幅よりも大きくなっている。また、軸方向貫通溝23の先端側の部分は、基端側よりも内径が小さくなっており、先端側部分は、全体に同径になったストレート面部23cで構成されている。このストレート面部23cの内部には、アンチキンクチューブ17を収容できる。
【0026】
また、軸方向貫通溝23の基端側部分は、先端側から基端側(基端開口)に向かって徐々に直径が大きくなったテーパ面部23bで構成されている。この軸方向貫通溝23のテーパ面部23bは、アンチキンクチューブ17の膨出部17aを収容できる形状に形成されている。押圧部22は、補助具本体21の基端側外周に設けられており、中央に穴部が形成された円板を、外周側開口23aに対応する部分で直線状に切断して略C形の鍔状にした形状に形成されている。すなわち、押圧部22の直線部分は、軸方向貫通溝23の中心から外周側開口23aの幅方向の中心に延びる仮想線に直交するように形成されている。
【0027】
このため、まず、カテーテル固定部材13の内部を貫通させたカテーテル12の基端部分でステム15を覆い、カテーテル12におけるカテーテル固定部材13よりも先端側部分を補助具20の軸方向貫通溝23内に入れる。その状態で、押圧部22でロック本体16を薬液注入ポート11側に押圧することにより、補助具20をカテーテル12に沿わせながらカテーテル固定部材13側に移動させて、カテーテル固定部材13で、カテーテル12をステム15に固定することができる。この場合、押圧部22でロック本体16の被押圧部16aを押圧することにより、ロック本体16は、ステム15の拡径部15aに対応する部分を乗り越える。また、軸方向貫通溝23のテーパ面部23bは、開口側が奥側よりも広くなったテーパ面に形成されているため、アンチキンクチューブ17の膨出部17aを無理な力でロック本体16の接続部16bに押し付けることはない。
【0028】
これによって、カテーテル12は、図5に示したように、良好な状態でカテーテル固定部材13によってステム15に固定される。なお、ロック本体16およびステム15は、それぞれチタンやチタン合金等の金属やポリプロピレン等のプラスチックで構成することができる。また、カテーテル12やアンチキンクチューブ17は、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂からなる管状体で構成することができる。なお、カテーテル12は軟質の材料で構成し、アンチキンクチューブ17は、カテーテル12と同じか、やや硬質の材料で構成する。
【0029】
この構成において、カテーテル固定部材13を介して接続された薬液注入ポート11とカテーテル12とを用いて患者Aの静脈内に、薬液を供給する場合には、まず、先端が静脈内に挿入されたカテーテル12の基端側部分をカテーテル固定部材13の内部に貫通させる。ついで、カテーテル12の基端部に薬液注入ポート11のステム15を接続する。そして、カテーテル固定部材13を、カテーテル12を介してステム15に係合させる。この場合の操作は、まず、カテーテル12の外周に取り付けたカテーテル固定部材13を、薬液注入ポート11側に移動させて、ロック本体16をステム15に接近させる。
【0030】
その状態で、カテーテル12を補助具20の外周側開口23aから軸方向貫通溝23内に入れる。そして、補助具20をカテーテル12に沿わせながらカテーテル固定部材13側に移動させて押圧部22でカテーテル固定部材13のロック本体16を薬液注入ポート11側に押圧することにより、ロック本体16を係合突部18がステム15の拡径部15aを越えるまで押し込む。これによって、カテーテル12は、ステム15に強固に接続され、ポート本体14内の空間部が、ステム15の液体流路を介して、カテーテル12内の液体流路に連通する。カテーテル12とステム15との接続操作が終了すると、補助具20は、カテーテル12から取り外す。
【0031】
この場合、カテーテル12は、例えば、図6に示したようにして、患者Aの胸部Cから静脈内に挿入される。すなわち、胸部Cにおける静脈、例えば、鎖骨下静脈B1の近傍部分を切開して、その近傍に位置する鎖骨下静脈B1からカテーテル12を挿入し、その先端側部分を上大静脈B2に到達させる。また、カテーテル12の基端部に接続された薬液注入ポート11は、胸部皮下に埋めておく。この場合、アンチキンクチューブ17によって、カテーテル12が屈曲することを防止されるとともに、カテーテル12がロック本体16の開口縁部に押圧されることもない。
【0032】
したがって、カテーテル12の液体流路は、適正な状態で連通した状態を維持する。そして、患者Aの静脈内に薬液を供給する際には、まず、薬液が充填された注射器の針を皮膚面から刺してセプタム14bを貫通させ針の先端をポート本体14の内部に位置させる。そして、注射器からポート本体14内に薬液を注入する。これによって、薬液は、ポート本体14の内部からカテーテル12の内部を通過して上大静脈B2内に入っていく。
【0033】
このように、本実施形態に係る薬液注入ポートセット10の補助具20は、補助具本体21と鍔状の押圧部22とで構成されており、補助具本体21には、カテーテル12を外周側から挿入できる軸方向貫通溝23が設けられている。したがって、カテーテル固定部材13の内部にカテーテル12を通した状態で、カテーテル12の基端側部分で薬液注入ポート11のステム15を被覆し、補助具本体21の軸方向貫通溝23内にカテーテル12を通して押圧部22でロック本体16を薬液注入ポート11側に押圧するだけの簡単な操作で、カテーテル12をステム15に固定することができる。
【0034】
この場合、押圧部22でカテーテル固定部材13のロック本体16を押圧するだけの操作で済むため、スペースの狭い場所でも操作を容易に行えるとともに、カテーテル12を捻じることがないため捻じれによりカテーテル12を破損することがなくなる。また、押圧部22が下縁部が直線状になった鍔状に形成されているため、押圧操作がし易くなる。すなわち、押圧部22が指を当てやすい面積を備えているとともに、押圧部22の下縁部が体の切開部に当たって補助具20の操作がし難くなるといったことが生じない。
【0035】
また、軸方向貫通溝23の基端側にテーパ面部23bを設けるとともに、カテーテル固定部材13にアンチキンクチューブ17を設けている。このため、カテーテル12に無理な力が加わらなくなり、カテーテル12に折れが生じたり、カテーテル12が損傷したりすることを防止できる。
【0036】
また、本発明に係る補助具およびそれを備えた薬液注入ポートセットは、前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、補助具本体21を軸方向に長いもので構成しているが、軸方向に短いもの、例えば、押圧部22の内周側部分だけで補助具本体を構成してもよい。また、カテーテル固定部材13をロック本体16またはロック本体16の被押圧部16aだけで構成することもできる。この場合、補助具20の補助具本体21を、もう少し小さくすることができる。
【0037】
また、カテーテル固定部材13を被押圧部16aだけで構成した場合には、補助具20を使用する際に、カテーテル12の基端部とステム15との接続部が、テーパ面部23b内に位置するようになり、カテーテル12に無理な力が加わってカテーテル12が損傷することが防止される。さらに、前述した実施形態では、薬液注入ポート11が接続されたカテーテル12を静脈に留置するようにしているが、この薬液注入ポート11が接続されたカテーテル12は、所定の方法を用いて動脈に留置することもできる。また、本発明に係る補助具および薬液注入ポートセットを構成する各部材の材料についても、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
10…薬液注入ポートセット、11…薬液注入ポート、12…カテーテル、13…カテーテル固定部材、15…ステム、16…ロック本体、17…アンチキンクチューブ、20…補助具、21…補助具本体、22…押圧部、23…軸方向貫通溝、23a…外周側開口、23b…テーパ面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液注入ポートの本体から突出する接続管をカテーテルの端部側部分で被覆し、前記カテーテルの端部側部分を前記接続管の外周面に押し付けるようにして、前記カテーテルの端部側部分の外周に前記カテーテル固定部材を取り付ける際に用いられる補助具であって、
前記カテーテルを外周側から挿入できる外周側開口を備え内部に前記カテーテルを貫通させることのできる軸方向貫通溝が設けられた補助具本体と、前記補助具本体の外周面に形成された突部からなる押圧部とを備えたことを特徴とする補助具。
【請求項2】
前記押圧部を前記補助具本体の外周面の円周方向に沿って形成された鍔部で構成した請求項1に記載の補助具。
【請求項3】
前記軸方向貫通溝の内周面に、押圧側開口の方が奥側よりも内径が大きくなったテーパ面を形成した請求項1または2に記載の補助具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載された補助具と、前記薬液注入ポートと、前記カテーテルと、前記カテーテル固定部材とからなる薬液注入ポートセット。
【請求項5】
前記カテーテル固定部材が、環状のロック本体と、前記ロック本体に連通した状態で連結され前記ロック本体よりも外径の小さなチューブとで構成されている請求項4に記載の薬液注入ポートセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233586(P2010−233586A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81675(P2009−81675)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】