説明

補助具及びそれを用いる内視鏡システム並びにその使用方法

【課題】経鼻内視鏡では制限を受けていた処置や治療を行えるようにする。
【解決手段】一方の外鼻孔から挿入される挿入部16をもつ経鼻内視鏡11と併用される補助具12を設ける。補助具12は、他方の外鼻孔から挿入される挿入部35をもつ。補助具12の後端には、把持部22aに設けた鉗子入口19に係合する係合部36がある。係合部36には、共通の鉗子入口42と、この鉗子入口42から補助具12の挿入部35に設けた鉗子管路に繋がる管路と、前記鉗子入口42から内視鏡11の鉗子管路に繋がる短絡管とがある。各挿入部16,35の先端には、互いを着脱自在に固定する固定手段が設けられている。各挿入部16,35は、双方の外鼻孔から挿入されて後鼻孔付近で固定手段により先端面が同じ向きになるように固定され、その後は食道から胃に向けて一緒に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経鼻内視鏡と組み合わせて使用される補助具、及びそれを用いる内視鏡システム、並びにその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、体内に挿入する挿入部を経口内視鏡よりも細径にした経鼻内視鏡が知られている(特許文献1、特許文献2)。この内視鏡を使用する経鼻内視鏡検査は、挿入部が舌のつけ根を通らず、のどにも触れないので、経口内視鏡検査に比べ、検査時の吐き気・不快感が大幅に軽減できて被検者の苦痛や負担を軽減することができると共に、経口内視鏡検査に比べ麻酔薬も少量で良く、また、被検者は検査中に術者等と会話をすることができ、口呼吸も可能となる等の利点があるため、需要が増えている。
【0003】
経鼻内視鏡には、経口内視鏡と同じに、体内に挿入される挿入部の先端部に観察光学系と照明光学系とが内蔵されており、照明光学系で被写体を照明し、照明された被写体の画像情報を観察光学系で映像信号として取り出し、モニタ等によりその画像を表示する。挿入部には、先端部から基端部へと貫通する内部空間に、鉗子管路(吸引管路を兼ねる)、送気・送水用管路、及びライトガイド等が収容されている。
【0004】
ライトガイドは、光が入射する入射端と光を出射する出射端とを有し、光を光源装置から先端部へと導く。出射端から出射される光は、照明レンズを通して先端部の先端面に設けた照明窓から被写体に向けて照射される。鉗子管路は、一端が先端面に露呈して設けた鉗子出口に、また他端が基端部に露呈して設けた鉗子入口にそれぞれ繋がっており、鉗子入口から鉗子出口へと処置具の挿入をガイドする。送気・送水用管路は、先端面に露呈して設けた送気・送水ノズルに繋がっており、基端部に設けた手元操作部のボタン操作により観察光学系の先端面(観察窓)や体腔内に空気や水を送る。
【特許文献1】特開2006−68030号公報
【特許文献2】特開2007−61377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経鼻内視鏡は、外鼻孔から中鼻道(下鼻道)へと狭く曲がりくねった挿入経路を通過させるため、経口内視鏡ものと比べて挿入部が柔軟にできているという特徴があるが、経口内視鏡の挿入部の径(約9mm)に対し非常に細い径(5〜6mm程度)になっている。このように挿入部が細いと、内部空間に設けられている鉗子管路の径(約2mm)も細く、よって、その鉗子管路に挿入することができる鉗子の種類や数が限られる。このため、胃や食道のポリープを切り取ったり(ポリペクトミー、ポリープ切除術、粘膜切除術)、出血している部分(胃潰瘍など)をクリップでつまんで血を止めたりすること(止血術)等の処置や治療が困難な場合があった。
【0006】
また、挿入部の小径化に伴って、送気・送水用管路も小径になっているので、送気・送水の力が弱く、さらには、鉗子管路を使って吸引するときの吸引力も弱いことから、経口内視鏡と比べて空気や水を送り、胃を拡げ観察窓の曇りを除き、きれいな視野を確保することや、観察に邪魔となる余分な残渣や体液などを吸引することに限界があった。そこで、経鼻内視鏡検査で病変が見つかった場合は、経口内視鏡を挿入する等の他の方法で処置・治療を行わなければならない場合もあった。また、ライトガイドの径も細いため、ライトガイドのファイバーバンドルを構成するファイバの本数が経口内視鏡のものと比べて略半分となってしまう。このため、照度や配光特性が低下し、経口内視鏡より遠景も暗くなるという欠点があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、小径に伴う構成や機能の制限により経鼻内視鏡では困難とされていた処置や治療を行うことができるように工夫した補助具、及びこれを用いる内視鏡システム、並びにその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の補助具は、一方の外鼻孔から体腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と組み合わせて使用され、前記他方の外鼻孔から前記体腔内に挿入することで前記内視鏡の機能を補助する挿入部を備えたものである。
【0009】
また、本発明の内視鏡システムは、一方の外鼻孔から体腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と;他方の外鼻孔から前記体腔内に挿入され、前記内視鏡と組み合わせて使用され、前記内視鏡の機能を補助する挿入部を有する補助具と;を備えたものである。
【0010】
内視鏡としては、観察手段に加えて、鉗子管路、照明手段、送気管路、及び送水管路のうちの少なくともいずれか一つの機能をもっていればよい。補助具は、いずれか一つの機能を補助する機能を挿入部に備えている。
【0011】
補助具の挿入部には、先端部から後端部へと貫通する鉗子管路を少なくとも備えていればよい。なお、補助具の挿入部には、鉗子管路に加えて、内視鏡の照明の補助を行うために、ライトガイドと照明レンズを組み込んでもよい。また、内視鏡の送気・送水を補助するために、送気・送水管路を設けても良い。さらに、内視鏡のウォータージェット機構を補助するためにウォータージェット管路を設けても良い。
【0012】
補助具の後端部に係合部を設け、内視鏡の挿入部の基端部に係脱自在に係合させるのがよい。係合部の係合先としては、内視鏡の手元操作部でもよいし、挿入部と手元操作部との間、または挿入部の手元操作部寄りの基端部でもよい。補助具の後端部を内視鏡に係合させておけば、補助具の後端部を持つ必要がないため、双方の挿入部の挿入や処置又は治療を簡便に行える。また、内視鏡の挿入部に、先端部から基端部へと貫通する鉗子管路と、前記基端部又は手元操作部に露呈して設けられ前記鉗子管路に繋がる鉗子入口とを設ける場合には、前記係合部に、一端が前記補助具の鉗子管路に繋がりかつ他端が外部に露呈する鉗子入口と、前記鉗子入口と前記内視鏡の鉗子入口とを接続するための短絡管とを設けるのが、鉗子入口を共通して使用することができるので望ましい。
【0013】
補助具を併用して処置・治療を行う場合、両方の外鼻孔に各々挿入後に、互いの挿入部の先端を固定する必要がある。そこで、補助具及び内視鏡との挿入部のうちのいずれか一方又は両方の先端部に、互いの先端部同士を先端面が同じ方向に向くように着脱自在に固定するための固定手段を設ける。固定手段としては、磁石体同士の磁着により固定する方法やスネア型の弾性ワイヤで他方の挿入部の先端を捕捉して固定する方法等を採用することができる。
【0014】
経鼻内視鏡の挿入部には、一般的に、先端部に小型の撮像素子が内蔵され、かつ先端部から基端部へと貫通する内部空間に少なくとも細径の鉗子管路が設けられている。この内視鏡の挿入部を一方の外鼻孔から体腔内に挿入する。補助具には、内視鏡の鉗子管路よりも大径で且つ先端部から後端部へと貫通する鉗子管路を有する。この補助具の挿入部を他方の外鼻孔から前記体腔内に挿入する。前記補助具及び前記内視鏡との挿入部のうちのいずれか一方又は両方の先端部に固定手段が設けられている。双方の先端部を鼻孔から食道までの範囲に挿入し、固定手段により双方の先端部を先端面が同じ方向を向くように着脱自在に固定する。
【0015】
そして、補助具の挿入部を他方の外鼻孔に挿入する前又は後、あるいは双方の挿入部の先端部を固定した後に、補助具の挿入部の後端部に設けた係合部を内視鏡の挿入部の基端部に係脱自在に係合させて互いの鉗子管路を接続する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一方の外鼻孔から体腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と組み合わせて使用され、前記他方の外鼻孔から前記体腔内に挿入することで前記内視鏡の機能を補助する挿入部を備えている補助具を設けため、従来経鼻内視鏡を使用して出来なかった処置・治療を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
内視鏡システム10は、図1に示すように、経鼻内視鏡(以下、「内視鏡」)11、補助具12、光源装置13、プロセッサ装置14、及びモニタ15等を備えている。内視鏡11には、一方の外鼻孔に挿入される挿入部16を持っている。挿入部16の基端部に接続される把持部22aには、手元操作部17が取り付けられ、手元操作部17には、光源装置13、及びプロセッサ装置14にそれぞれ接続されるユニバーサルコネクタ18がユニバーサルケーブル18aの先端に設けられている。この内視鏡11の挿入部16には、先端部から把持部22aへと貫通する内部空間に鉗子管路が設けられている。鉗子管路は、一端が先端部に設けた鉗子出口に、また他端は把持部22aに設けた鉗子入口19にそれぞれ接続されている。なお、鉗子入口19は、手元操作部17に設けてもよい。把持部22aと手元操作部17とで操作部本体を構成する。
【0018】
内視鏡11の挿入部16は、周知のように、先端硬質部20、湾曲部21、及び軟性部22とで構成されている。湾曲部21の前後には、補助具12を組み合わせて使用するための円筒状の磁石体23,24が一対設けられている。なお、先端硬質部20と湾曲部21とが本発明の内視鏡11の挿入部16の先端部を構成する。
【0019】
内視鏡の先端硬質部20には、硬質な金属材料等で形成された先端部本体の内部に観察光学系、撮像素子、及び照明光学系等が内蔵されている。ユニバーサルコネクタ18は、ライトガイド用コネクタ(LGコネクタ)25と、これから延設されたコード26の先端に設けたビデオ用コネクタ(電気コネクタ)27とから構成されている。電気コネクタ27がプロセッサ装置14に、また、LGコネクタ25が光源装置13にそれぞれ接続される。
【0020】
プロセッサ装置14には、電源回路、撮像素子から得られる撮像信号を画像処理してコンポジット信号やRGBコンポーネント信号にエンコードするための画像処理回路等が設けられている。光源装置13には、光源ランプが内蔵されており、その光は、手元操作部17を通って挿入部16の内部空間に収容したライトガイド(ファイバーバンドル)によって把持部22aから先端部へと導かれて照明光学系に入射する。
【0021】
軟性部22は、手元操作部17と湾曲部21との間を細径で長尺状に繋ぐ部分であり、可撓性を有している。湾曲部21は、手元操作部17に設けた湾曲操作ノブ28の操作に連動して挿入部16の内部空間に収容したアングルワイヤが押し引きされて湾曲動作する。これにより、先端硬質部20の先端面を体腔内の所望の方向に向けて観察部位を観察する。観察部位は、照明光学系から放たれる光により照明され、その反射光を観察光学系を介して撮像素子で撮像し、画像処理回路を介してモニタ15に表示される。
【0022】
手元操作部17には、2つの湾曲操作ノブ28や鉗子入口19の他に、送気・送水ボタン30、吸引ボタン31、及びウォータージェット口(WJ口)32等が設けられている。WJ口32には、被観察部位に向けて噴射するための洗浄水や薬液等の流体を収容したシリンジや送水装置等が着脱自在に接続される。なお、WJ口32、及び鉗子入口19は、通常は着脱自在な栓により塞がれている。
【0023】
補助具12は、内視鏡と組み合わせて使用されるものであり、挿入部35と係合部36とを有している。挿入部35は、内視鏡11の挿入部16が挿入されていない他方の外鼻孔に挿入される。係合部36は、挿入部35の後端部に設けられ、内視鏡11の操作部本体(把持部22a又は手元操作部17)に着脱自在に係合する。補助具12の挿入部35は、先端から順に先端部37、湾曲部38、及び可撓管部39とで構成されている。
【0024】
補助具12の湾曲部38には、挿入方向に対する前後に、円筒状の磁石体40,41が一対設けられている。これら一対の磁石体40,41は、挿入経路のうちの後鼻道から食道までの範囲に挿入されたときに、内視鏡11の一対の磁石体23,24に磁着する。これにより、補助具12の湾曲部38は、内視鏡11の湾曲部21の湾曲に従動して湾曲し、補助具12の先端部37の先端面は、内視鏡11の先端硬質部20の先端面と同じ向きになる。
【0025】
補助具12の先端部37は、硬質な材料で形成されている。湾曲部38は、内視鏡11の湾曲部21と一緒に湾曲する柔軟な部分である。可撓管部39は、係合部36と湾曲部38との間を細径で長尺状に繋ぐ部分であり、可撓性を有している。なお、先端部37と湾曲部38とは、本発明の補助具12の挿入部35の先端部を構成する。
【0026】
補助具12の挿入部35には、先端部から係合部36へと貫通する鉗子管路が設けられている。この鉗子管路は、一端が先端面に設けた鉗子出口に、また他端は係合部36に設けた鉗子入口42に接続されている。なお、鉗子入口42には、鉗子栓42aが装着されている。鉗子栓42aは、処置具によって押し開かれるスリット又は小孔を形成した弾性を有する栓部をもっており、鉗子管路72を通じて体内汚液等が鉗子入口42から外部に噴出しないように鉗子入口42を部分的にシールする。係合部36は、手元操作部17に設けた鉗子入口19に着脱自在に係合され、係合することで補助具12の鉗子管路を手元操作部17の鉗子入口19に繋げる短絡路を有している。これにより、鉗子等の処置具は、補助具12の鉗子入口42から挿入し、挿入後に挿入方向の先端の向きを変えることで、使用する鉗子管路を内視鏡11と補助具12とを選択することができる。
【0027】
挿入部16,35は、どちらも外鼻孔から後鼻孔、食道と経て胃や十二指腸等に挿入されるために、細径のフレキシブルな管状に形成されており、略同じ径、及び長さになっている。なお、内視鏡を用いる処置又は治療時において補助具12の係合部36を手元操作部17に係合するタイミングとしては、双方の挿入部16,35を体腔内に挿入する前と挿入後とが考えられる。後者の場合には、補助具12の挿入部35の長さを内視鏡11の挿入部16よりも長くしておくと作業がし易いので望ましい。また、鼻孔への挿入テストで内視鏡11の挿入部16を片方の鼻孔に挿入するのが無理であると判断される場合もあるので、補助具12の挿入部35は、内視鏡11の挿入部16よりも細径にしておくのが好適である。
【0028】
内視鏡11の軟性部22は、図2に示すように、内側より順に可撓性を保ちながら内部を保護するフレックスと呼ばれる螺管44と、この螺管44の上に被覆され外層46の樹脂を保持するブレードと呼ばれるネット45と、このネット45上に樹脂を被着した外層46との3層からなる可撓性管47で構成されている。
【0029】
内視鏡11の軟性部22の内部には、先端硬質部20の照明用レンズに照明光を導くためのライトガイド48,49、アングルワイヤ50、鉗子管路51、送気・送水管路52、多芯ケーブル53、及び、ウォータージェット管路(WJ管路)54等の複数本の内容物が遊挿されている。多芯ケーブル53は、主に、映像信号処理部から撮像センサを駆動するための信号を送るとともに、撮影センサから得られる撮像信号を映像信号処理部に送るためのケーブルであり、複数の信号線を保護被膜で覆った断面形状になっている。アングルワイヤ50は、上下用と左右用との2本のアングルワイヤを湾曲操作ノブ28の操作に連動する2つのプーリに各々掛け回してそれら先端を湾曲部21に向けて挿通しているので軟性部22の内部には4本あり、それぞれが密着コイルパイプ50aの中に挿通されている。
【0030】
内視鏡11の先端硬質部20の先端面20aには、図3に示すように、観察窓55、一対の照明窓56,57、ウォータージェットノズル(WJノズル)58、鉗子出口59、送気・送水ノズル60などが露呈して設けられている。観察窓55には、体腔内の被観察部位の像光を取り込むための対物光学系の一部が配されている。照明窓56,57は、観察窓55を挟んだ両側に設けられ、光源装置13から伝送される光を、ライトガイド48,49を介して体腔内の被観察部位に照射する。
【0031】
内視鏡11の鉗子出口59は、鉗子管路51を介して手元操作部17に設けた鉗子入口19と連通されている。送気・送水ノズル60は、手元操作部17に設けた送気・送水ボタン30を操作することによって患部に送気・送水をしたり、観察窓55に向けて洗浄水やエアーを噴射する。WJノズル58は、WJ口32に着脱自在に取り付けられるシリンジから供給される洗浄水や薬液等の流体を被観察部位に向けて噴射する。
【0032】
観察窓55には、図4に示すように、対物光学系61の一部が露呈して配されている。照明窓56,57から発する照明光は、被観察部位を反射して対物光学系61に入射する。入射した被写体光は、対物光学系61を通ってプリズム62に入射してプリズム62の内部で屈曲することで撮像素子63の結像面に結像する。撮像素子63には、回路基板64に接続されており、この回路基板64には多芯ケーブル53の各信号線53aが接続されている。
【0033】
内視鏡11の先端硬質部20から湾曲部21の外層は、柔軟性を有するアングルゴム65で形成されている。アングルゴム65の内側には、アングルワイヤ50の先端が係合している先端側接続リング66が設けられている。先端側接続リング66には、基端部に向けて、複数の節輪(図示なし)が湾曲中心となる左右及び上下のピンで交互に連結されている。各節輪の内側には、アングルワイヤ50が摺動自在に係合しており、節輪列は、上下用と左右用とのアングルワイヤ50の押し引きにより上下及び左右に湾曲する。
【0034】
内視鏡11の湾曲部21の内部には、軟性部22から挿通されている鉗子管路51が配されている。この鉗子管路51は、合成樹脂製のフレキシブル管となっている。この鉗子管路51の先端には、先端硬質部20の内部に配した硬質管67が接続されている。この硬質管67は、先端が鉗子出口59に接続されている。
【0035】
補助具12の可撓管部39は、図5に示すように、内視鏡11の軟性部22と同じに、螺管68、ネット69、及び外層70との3層からなる可撓性管71で覆われている。螺管68は、鉗子管路72の周りに設けられており、可撓性を保ちながら鉗子管路72を保護する。ネット69は、螺管68の上に被覆され外層70の樹脂を保持する。外層70は、ネット69上に樹脂を被着したものである。
【0036】
補助具12の鉗子管路72は、合成樹脂製のフレキシブル管で作られており、その内径は補助具12の挿入部35の外径に対して略70%以上の径、内視鏡11の鉗子管路51の内径に対して略2倍以上の径になっている。これにより、大型の処置具を補助具12の鉗子管路72に挿入することができる。
【0037】
補助具12の先端部37は、図6に示すように、先端部本体73で覆われている。先端部37の先端面37aには、鉗子出口76が露呈して形成されている。鉗子出口76には、硬質管75が接続されており、この硬質管75にフレキシブルな鉗子管路72が接続されている。これら鉗子出口76、硬質管75、及び鉗子管路72の内径は、略同じになっている。
【0038】
補助具12の湾曲部38は、内視鏡11の湾曲部21に追従して湾曲するように柔軟な表皮74で覆われている。この湾曲部21の表皮74は、可撓管部39と略同じ構成をしているが、内視鏡11の湾曲部38の湾曲に対して内側又は外側で追従して湾曲したときに、先端部37の先端面37aが内視鏡11の先端面20aに対してずれることがないように、挿入方向に対して僅かに伸縮する。
【0039】
補助具12の湾曲部38に設けた一対の磁石体40,41は、図7に示すように、表面に凹凸が出ないように、表皮74に一段凹んだ凹部77、78を一対設け、一対の凹部77,78にそれぞれ嵌め込まれている。一方、内視鏡11の湾曲部21の前後に設けた一対の磁石体23,24も、表面に凹凸が出ないように、一段凹んだ凹部79,80に嵌め込まれている。これらの一対の磁石体23,24と、磁石体40,41は、間隔が同じになっており、所定距離をおいた二カ所で磁着させることで、内視鏡11と補助具12との湾曲部21,38を先端面20a,37aが揃った状態で並列的に固定することができる。
【0040】
なお、これら磁石体23,24,40,41が本発明の固定手段を構成する。固定手段としては、磁石体同士を磁着させることに限らず、磁石体と磁着体との組でもよい。また、複数の磁石体をリング状のバンドに取り付け、そのバンドを凹部に嵌め込むようにしてもよい。
【0041】
内視鏡11は、図8に示す撮像素子63を先端硬質部20に備え、また、CPU83、基準クロック発振器84、タイミングジェネレータ(TG)85、及びアナログ信号処理回路(AFE:Analog Front End processor)86等をユニバーサルコネクタ18の内部に備えている。
【0042】
撮像素子63は、CCDやCMOS等であり、対物光学系61により結像する被写体像を撮像する。この受光面には、複数の色セグメントからなるカラーフィルタ(例えば、ベイヤー配列の原色カラーフィルタ)が配置されている。
【0043】
CPU83は、内視鏡11の各部の動作制御を行う。TG85は、基準クロック発振器84により生成される基準クロック信号に基づき、撮像素子63の駆動パルス(垂直/水平駆動パルス)を生成するとともに、AFE86用の同期パルスを生成し、前記駆動パルス及び同期パルスをそれぞれ撮像素子63、及びAFE86に入力する。撮像素子63は、TG85から入力された駆動パルスに応じて撮像動作を行い、撮像信号をAFE86に出力する。
【0044】
AFE86は、相関二重サンプリング回路(CDS)88、自動ゲイン制御回路(AGC)89、及びアナログ/デジタル変換器(A/D)90により構成されている。CDS88は、撮像素子63から出力される撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、撮像素子63で生じるリセット雑音及びアンプ雑音の除去を行う。AGC89は、CDS88によりノイズ除去が行われた撮像信号をゲイン調整する。A/D90は、AGC89により増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタル信号に変換し、ユニバーサルコネクタ18を介してプロセッサ装置14に送る。
【0045】
また、TG85は、AFE86から出力される撮像信号に対応した、水平同期信号、垂直同期信号、及びクロック信号を、それぞれユニバーサルコネクタ18を介してプロセッサ装置14に送る。
【0046】
プロセッサ装置14は、CPU91、アイソレーション回路(絶縁回路)92、デジタル信号処理回路(DSP)93、同期信号発生回路(SSG)94、及びデジタル/アナログ変換器(D/A)95等を備えている。
【0047】
CPU91は、プロセッサ装置14、及び光源装置13の動作制御を行う。アイソレーション回路92は、内視鏡11をプロセッサ装置14から絶縁分離するためのものである。デジタル信号処理回路(DSP)93は、撮像信号に信号処理を施して映像信号を生成する。
【0048】
同期信号発生回路(SSG)94は、補正された水平同期信号、垂直同期信号、及びクロック信号を発生する。デジタル/アナログ変換器(D/A)95は、DSP93から出力された映像信号をNTSC方式等のアナログ映像信号に変換する。
【0049】
SSG94には、内視鏡11のTG85から出力された水平駆動パルス、垂直駆動パルス、及びクロックパルスがアイソレーション回路92を介して入力される。SSG94は、入力された水平駆動パルス、垂直駆動パルス、及びクロックパルスの間の位相ずれを補正して、位相ずれが補正された水平駆動パルス、垂直駆動パルス、及びクロックパルスを発生し、これらの信号をDSP93に入力する。
【0050】
DSP93には、内視鏡11のAFE86から出力された撮像信号がアイソレーション回路92を介して入力される。DSP93は、入力された撮像信号に対し、色分離、色補間、ゲイン補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、画像強調処理等を行い、輝度(Y)信号と色差(C)信号とからなるY/C形式の映像信号を生成し、生成した映像信号をD/A95に入力する。D/A95は、入力された映像信号をNTSC方式のアナログ映像信号に変換し、コネクタ96に外部接続されたモニタ15に出力する。
【0051】
光源装置13は、光源ランプ97、光源ドライバ98、絞り機構99、集光レンズ100、及びCPU101を備えている。光源ランプ97は、キセノンランプやハロゲンランプ等から放たれる白色の光源である。光源ドライバ98は、光源ランプ97を駆動する。絞り機構99は、光源ランプ97とライトガイド48,49の入射端との間に配され、ライトガイド48,49への入射光量を増減させる。集光レンズ100は、絞り機構99を通過した光を集光してライトガイド48,49の入射端に導く。CPU101は、プロセッサ装置14のCPU91と通信し、光源ドライバ98、及び絞り機構99の制御を行う。光源ランプ97から発せられた光は、絞り機構99、及び集光レンズ100を介してライトガイド48,49の入射端に入射し、ライトガイド48,49の出射端から出射され、照明レンズ102,103を介して照明窓56,57から体腔内へ照射される。
【0052】
内視鏡11の送気・送水ノズル60に繋がる送気・送水管路52の後端は、送気用管路104と送水用管路105との二股に分かれている。送気用管路104と送水用管路105は、送気・送水ボタン30に各々接続されている。詳しくは図9に示すように、送気・送水ボタン30は、管路切換機能を有し、送気用ポート106、送水用ポート107、給水用ポート108、及び、給気用ポート109を有している。送水用ポート107には送水用管路105が、送気用ポート106には送気用管路104が接続されている。また、給水用ポート108には、ユニバーサルコネクタ18に設けた送水コネクタ110を介して送水タンク111が接続される。給気用ポート109には、ユニバーサルコネクタ18を介して光源装置13に内蔵したバルブ112、及び送気ポンプ113が接続される。
【0053】
光源装置13には、送気圧を選択する送気ボタン114が外部に露呈して設けられている。送気ボタン114で選択した送気圧の情報はCPU101に送られ、CPU101は送気圧の情報に基づいてバルブ112の弁を調節する。送気・送水ボタン30には、ボタンの一部に孔115が空いており、送気ポンプ113は、常に駆動して前記孔115から空気を吐出している。送気・送水ボタン30の孔115を塞ぐ操作を行うことで、送気・送水ノズル60までの管路が繋がり、送気・送水ノズル60より空気が吹き出す。さらに、詳しくは図10に示すように、送気・送水ボタン30を押し込む操作を行うと、給気用ポート109が塞がれ、空気は送水タンク111に流れ込む。空気は、送水タンク111内の水を押し出し、水は給水用ポート108を介して送水用ポート107から送気・送水管路52を経て送気・送水ノズル60から吹き出す。
【0054】
内視鏡11の挿入部16に収容したWJ管路54は、図8に示すように、一端がWJノズル58に接続され、他端が手元操作部17に設けたWJ口32に接続されている。WJ口32には、シリンジ121又はシリンジ121に取り付けたチューブ等が接続される。シリンジ121内に注入した液体は、プランジャーを軸方向に移動操作することでWJ管路54を通ってWJノズル58から患部に向けて噴出する。
【0055】
内視鏡11の鉗子管路51の後端は、鉗子入口19と手元操作部17に設けた吸引ボタン31とに分岐して接続されている。吸引ボタン31には、鉗子管路51に繋がるポート116と、ユニバーサルコネクタ18に設けた吸引コネクタ118に繋がるポート117とを有する。吸引コネクタ118には、詳しくは図11に示すように、吸引装置119に繋がるチューブ120が接続される。吸引ボタン31の押下操作によりポート116,117が繋がり、吸引装置119は、内視鏡11の鉗子管路51を介して鉗子出口59から体腔内の汚物や血液その他の体液を吸引し、吸引タンク123に貯留する。
【0056】
内視鏡11の鉗子入口19には、補助具12の係合部36が係合する。係合部36は、鉗子管路72と内視鏡11の鉗子入口19とを繋ぐ短絡管122を有している。係合部36を鉗子入口19に接続すると、内視鏡11の鉗子管路51と補助具12の鉗子管路72とが接続される。補助具12を併用して手元操作部17の吸引ボタン31を押下操作すると、吸引装置119が内視鏡11及び補助具12の鉗子管路51,72を介して双方の鉗子出口59,76から体腔内の汚物や血液その他の体液を多量に吸引することができる。
【0057】
次に上記構成の作用を、図12を参照しながら説明する。経鼻内視鏡検査では、まず前処置として、内視鏡11の挿入部16を挿入するために外鼻孔の奧の鼻腔から中(下)鼻道に麻酔を行うとともに挿通テストを行い、挿入部16が挿通可能な挿入経路のある鼻腔を決定する。なお、挿入予定の鼻腔が狭く挿入部16が挿入できないと判断した場合は、他方の外鼻孔を用いるため、両方の外鼻孔から鼻腔に麻酔を施す。前処置は座位又は仰臥位で行い、その後に、仰臥位又は左側臥位で挿入部16を一方の外鼻孔に挿入していく。挿入経路は、図13に示すように、一方の外鼻孔130から中鼻道131又は下鼻道132を通して後鼻孔(内鼻孔)133、食道134、そして胃へと到達させる経路である。
【0058】
十二指腸や胃を観察して処置や治療を必要としない場合は、内視鏡11の挿入部16を抜く。また、病変が見つかった場合で、かつ内視鏡11の小径の鉗子管路51を使って処置又は治療を行える場合には、その鉗子管路51を使って小型のスネアや生体鉗子等の処置具を挿入して処置又は治療を行う。
【0059】
内視鏡11の鉗子管路51では処置又は治療を行えない場合には、補助具12を併用する。補助具12を内視鏡11と併用する場合、まず補助具12の挿入部35を他方の外鼻孔に挿入するため、他方の外鼻孔の奧の鼻腔に麻酔を行う。次に、内視鏡11と補助具12との挿入部16、35の先端部を固定して一緒に挿入する必要があるため、内視鏡11の挿入部16をいったん後鼻孔133から食道134までの範囲に先端部が位置するように引き戻す。その後に、補助具12の挿入部35を他方の外鼻孔から挿入し、中鼻道131又は下鼻道132を通して、後鼻孔133から食道134までの範囲に挿入する。このとき、両方の挿入部16,35の先端面20a、37aが略同じ位置となるように互いの挿入部16,35を相対的にずらして、内視鏡の磁石体23と補助具12の磁石体40とを、また、内視鏡の磁石体24と補助具12の磁石体41とを磁着させる。これにより、双方の湾曲部21,38が並列して密着し、双方の先端面20a,37aが同じ向きとなる。
【0060】
その後、補助具12の係合部36を内視鏡11の鉗子入口19に係合させ、係合完了後に、双方の挿入部16,35を徐々に挿入していく。このとき、モニタ15の画面を見ながら湾曲操作ノブ28を操作して内視鏡11の湾曲部21を湾曲させながら挿入を行っていく。補助具12の湾曲部38は、磁石体23,24と磁石体40,41との磁着により内視鏡11の湾曲部21に密着しているため、内視鏡11の湾曲部21と一緒に湾曲し、また、内視鏡11の挿入部16の挿入に追従して挿入される。このため、内視鏡11の挿入部16のみをもって挿入していくだけで補助具12の挿入部35も一緒に挿入される。
【0061】
その後は、モニタ15の画面に処置又は治療を施す必要のある患部が映し出されると、スネアや生検鉗子等の処置具を、係合部36に設けた鉗子入口42から補助具12の鉗子管路72に入り込むように挿入して、処置具の先端処置部材、例えば一対の鉗子カップや絞断用ループ等を補助具12の鉗子出口76から露呈させて処置又は治療を行う。
【0062】
処置具の一例として説明した生検鉗子は一般に、先端に一対の鉗子カップが開閉自在に取り付けられた操作ワイヤを可撓性シース内に挿通し、操作ワイヤの後端を鉗子入口の外で軸線方向に進退操作することによって、可撓性シースの先端から一対の鉗子カップを挿脱することでその鉗子カップを嘴状に開閉駆動する。生検鉗子は、主に組織採取を目的として使用されており、適合する鉗子管路の外径としては、例えば2.8mm以上必要になるものが多い。
【0063】
また、スネアは一般に、弾性ワイヤを曲げて形成された絞断用ループがシースの手元側からの操作によりシースの先端内に出入りするように構成されていて、その絞断用ループが、シース内に引き込まれた状態では窄まった状態に弾性変形し、シース内から前方に押し出されるとループ状に膨らんだ形状に広がるようになっている。スネアでポリープ切除を行う場合には、ポリープの根元部分を絞断用ループで適度に締め付けた状態にしてから絞断用ループに高周波電流を通電することにより、絞断用ループに接触している部分の生体組織を焼灼して切断と凝固を同時に行う。このスネアも、適合する鉗子管路の外径が、例えば2.8mm以上必要になるものが多い。
【0064】
このようなスネアや生検鉗子等の処置具を補助具12の鉗子管路72を使用して、例えば組織を採る組織採取(バイオプシ)、異物の摘出、出血を止める、腫瘍の摘出、胆石の破砕等の治療や処置を行う。また、体内汚物や血液その他の体液等を吸引したい場合、手元操作部17の吸引ボタン31を押下操作すると、内視鏡11の鉗子出口59のみならず、補助具12の鉗子出口76からも吸引するため、迅速な吸引を行うことができ、また、双方の鉗子出口59,76から同時に吸引することができるので、生体組織を多く採取することができる。
【0065】
治療又は処置を終了した後には、生検鉗子又はスネア等の処置具を、補助具12の鉗子入口42から引き抜き、しかる後に、双方の挿入部16,35をゆっくりと引き抜いていく。この途中、例えば後鼻孔から食道までの範囲を通過するまでに、双方の挿入部16,35の先端部の固定を解除する。この操作は、内視鏡11の挿入部16と補助具12の挿入部35とのいずれか一方を他方に対して挿入方向に相対的にずらすことで磁石体23,24と磁石体40,41との磁着を解除することができる。双方の先端部の固定を解除した後には、補助具12、内視鏡11の順に挿入部35,16を個別に引き抜く。最後に、補助具12の係合部36を手元操作部17の鉗子入口19から外す。
【0066】
なお、内視鏡11の鉗子管路51を使って処置又は治療が行えないことが初めから分かっている場合には、最初から補助具12を使えばよい。補助具12の係合部36を手元操作部17に接続するタイミングとしては、補助具12の挿入部35を挿入する前に行ってもよいし、双方の挿入部16,35の先端部を固定した後に行ってもよい。
【0067】
上記実施形態では、補助具12の係合部36を内視鏡11の手元操作部17に接続する構成としているが、本発明ではこれに限らず、補助具12の後端部から係合部を省略し、内視鏡11と補助具12との後端部を接続しない構造にしてもよい。この場合には、図14に示すように、補助具140の後端部に、鉗子管路72の後端から分岐してそれぞれに繋がる鉗子入口141と吸引コネクタ142とを設け、吸引コネクタ142と吸引装置143とを接続する形態で使用してもよい。吸引装置143は、補助具140専用の吸引装置であり、制御部145、及びポンプ146を備える。この場合、フットスイッチ144を制御部145に繋げ、フットスイッチ144を足で押下操作をすることで補助具12での吸引操作を行うのが、内視鏡11と併用するときに手の操作を増やすことなく行えるので望ましい。この実施形態では、内視鏡11の鉗子管路51と補助具12の鉗子管路72とを使っての吸引を個別に行える。これにより、大きな生体組織の採取は補助具12の鉗子管路72を使い、また、小さなものの採取は内視鏡11の鉗子管路51を使うように分けて採取することができる。
【0068】
また、上記各実施形態では、固定手段として磁石体23,24,40,41を双方に設け、磁石体同士の磁着により双方の先端部を固定しているが、本発明ではこれに限らず、一方に電磁石を、他方に磁性体を設け、電磁石を設けた一方に電磁石をオン−オフするための操作部を設ける構造にしてもよい。電磁石は、操作部の操作に応答して電磁石に電流が流れて磁性体に磁着する。内視鏡11に電磁石を設ける場合には、ユニバーサルコネクタ18を介して光源装置13又はプロセッサ装置14から電流を伝送すればよい。逆に補助具12に電磁石を設ける場合には、電流を取り入れる端子を補助具12の後端部に設け、その端子と光源装置13又はプロセッサ装置14を接続する構造としてもよいし、別に電源装置を用意し、その電源装置と補助具12の端子とを接続する構造としてもよい。
【0069】
また、固定手段としては、磁力を利用する固定手段に限らず、図15に示すように、補助具150の挿入部35の内部空間に鉗子管路72とは別に、スネア型の捕捉具151を挿通するための捕捉用管路152を設け、捕捉具151の先端に設けた捕捉用ループ153で内視鏡11の先端部を捕捉して、互いの先端部を先端面が同じ向きになるように固定する構造としてもよい。捕捉用管路152は、鉗子管路72に比べ小径となっており、一端が補助具12の先端部に設けた管路出口154に、また、他案が後端部に設けた管路入口155にそれぞれ接続されている。捕捉具151は、シース内に弾性ワイヤを摺動自在に収容したものであり、先端に弾性ワイヤを折り曲げて形成した開閉自在な捕捉用ループ153を、また、後端には管路入口155から露呈するハンドル156をそれぞれ持っている。
【0070】
捕捉具151は、ハンドル156をシースに対して押し引きすることで捕捉用ループ153が、シース内に引き込まれた状態では窄まった状態に弾性変形し、シース内から前方に押し出されるとループ状に膨む。鼻孔に挿入するときには、窄まった状態にしておき、先端部同士を固定するときにはループ状に膨らませ、内視鏡11の挿入部16の先端部を捕捉した後にはハンドル156を引くことで、捕捉用ループ153がすぼまって内視鏡11側の先端部を補助具150側の先端部に固定することができる。
【0071】
この場合、捕捉用ループ153を突出させる管路出口154は、補助具150の先端部37の後端側の周面に形成すれば、捕捉時に先端部同士を並行に密着させることができる。この実施形態では、先端部同士を固定するときに、内視鏡11側の先端部を補助具12よりも挿入方向の後方に位置させておけば、捕捉用ループ153がモニタ15の画面に映るため、そのループ153の画像を見ながら内視鏡11側の先端部が捕捉用ループ153に通るように内視鏡11の挿入部16を挿入していけばよいため、確実な固定が行える。なお、捕捉具151を内視鏡11側に設けてもよい。
【0072】
ところで、経鼻内視鏡11としては、WJノズル58を備えていないものが多い。そこで、このような内視鏡11を補助する補助具161としては、図16に示すように、観察対象に向けて液体を噴出するためのウォータージェット管路(WJ管路)160を鉗子管路72に加えて設けた構造ものを併用すればよい。この場合、補助具161の後端部に送水装置162を接続するためのウォータージェット口(WJ口)163を設け、WJ管路160の後端をWJ口163に接続する。WJ管路160の先端は、先端部37の先端面37aに設けたウォータージェットノズル(WJノズル)164に接続されている。
【0073】
送水装置162は、送水用ポンプ165、そのポンプ165の駆動を制御する制御部166、フットスイッチ167、及び送水用ポンプ165に接続された送水タンク168を有する。制御部166は、フットスイッチ167の押下操作に応答して送水用ポンプ165を駆動して送水タンク168の液体を補助具161に送り込む。送り込まれた液体は、WJ管路160を通ってWJノズル164から噴出する。WJノズル164やWJ管路160は、鉗子管路72や鉗子出口76に比べて小径でよいので、鉗子管路72や鉗子出口76を大径に維持することができる。なお、補助具161に設けるWJノズル164の数は複数でもよい。この場合、WJ管路をパラレルに配し、WJ口も個別に設けることで、異なる液体を同時に噴出することができる。
【0074】
また、術者が経鼻内視鏡検査時にモニタ15に映る画面が暗いと感じる場合がある。そこで、WJ管路の代わりにライトガイドを挿入部に収容し、挿入部の先端面に照明窓を設けて内視鏡の照明に加えて照明光をアップする補助具を用いてもよい。このような補助具としては、図17に示すように、補助具170の後端部から延設したコード171の先端にライトガイド用コネクタ(LGコネクタ)172を設け、LGコネクタ172を光源装置13に接続し、内視鏡11用として作られる光源装置13の光を分けてもらうのが好適である。光源装置13には、双方のLGコネクタ25,172が接続されるスコープソケットが2つ設けられている。補助具170の先端部37の内部には、照明レンズが内蔵されており、照明レンズは、物体側の面が先端部37の先端面37aに設けた照明窓174に露呈され、また、疑似光源側の面がライトガイド175の出射端の近傍に配される。ライトガイド175の入射端は、LGコネクタ172を介して光源装置13の内部に導かれる。
【0075】
この実施形態の場合、内視鏡11の照明光に補助具170の照明光が加わるため、内視鏡11の撮像素子63に必要な光量の照明範囲が広がり配光特性が向上する。また、光量がアップするので遠景も明るくなる。これにより、良好な画質を提供することができる。なお、補助具170に設ける照明窓174の数は複数でもよい。また、補助具専用の光源装置を用いてもよい。この場合、2つの光源装置同士を接続し、内視鏡用の光源装置が作り出す光量に応答して同じ光量になるように補助具用の光源装置の光量を制御する構成にするのが望ましい。なお、補助具に設ける照明機能としては、ライトガイドや照明レンズの代わりに、LED、及びLEDを駆動するドライバ等を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の経鼻内視鏡と補助具からなる内視鏡システムの使用状態を示す説明図である。
【図2】内視鏡の挿入部を示す断面図である。
【図3】内視鏡の挿入部の先端面を示す説明図である。
【図4】内視鏡の先端硬質部の内部を示す断面図である。
【図5】補助具の挿入部を示す断面図である。
【図6】補助具の先端部の内部を示す断面である。
【図7】内視鏡と補助具との双方の先端部を固定した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の内視鏡システムの電気的接続形態と、物理的接続形態との概略を示す説明図である。
【図9】送気・送水ボタンの管路切換の概略を示す説明であり、送気・送水ボタンの孔を塞ぐ操作を行って内視鏡の送気・送水ノズルから空気を送る状態を示している。
【図10】送気・送水ボタンの管路切換の概略を示す説明であり、送気・送水ボタンを押下操作して内視鏡の送気・送水ノズルから液体を送る状態を示している。
【図11】内視鏡の手元操作部に設けた吸引コネクタに吸引装置を接続した状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の内視鏡システムを使って内視鏡検査又は処置・治療を行う手順を示すフローチャートである。
【図13】内視鏡及び補助具を外鼻孔から中鼻道を通して後鼻孔・食道に挿入する状態を示す説明図である。
【図14】補助具の後端部を内視鏡の手元操作部に接続しない別の実施形態を示す説明図である。
【図15】先端部同士を固定する固定手段として、内視鏡の挿入部の先端部を捕捉するスネア型捕捉具を補助具に設けた他の実施形態を示す説明図である。
【図16】鉗子管路とウォータージェット管路とを補助具の挿入部に収容した実施形態を示す説明図である。
【図17】鉗子管路とライトガイドとを補助具の挿入部に収容した実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0077】
10 内視鏡システム
11 内視鏡
12 補助具
16 内視鏡側の挿入部
35 補助具側の挿入部
36 係合部
51 内視鏡側の鉗子管路
59 内視鏡側の鉗子出口
72 補助具側の鉗子管路
76 補助具側の鉗子出口
122 短絡管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の外鼻孔から体腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と組み合わせて使用され、前記他方の外鼻孔から前記体腔内に挿入することで前記内視鏡の機能を補助する挿入部を備えていることを特徴とする補助具。
【請求項2】
前記内視鏡の機能は、鉗子管路、照明手段、送気管路、及び送水管路のうちの少なくともいずれか一つの機能となっていることを特徴とする請求項1記載の補助具。
【請求項3】
一方の外鼻孔から体腔内に挿入される挿入部を有する内視鏡と、
前記内視鏡と組み合わせて使用され、他方の外鼻孔から前記体腔内に挿入されることで前記内視鏡の機能を補助する挿入部を有する補助具と、
を備えた内視鏡システム。
【請求項4】
前記内視鏡の機能は、鉗子管路、照明手段、送気管路、及び送水管路のうちの少なくともいずれか一つの機能となっていることを特徴とする請求項3記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記補助具の挿入部は、先端部から後端部へと貫通する鉗子管路を備えていることを特徴とする請求項3又は4記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記補助具の鉗子管路は、後端部から分岐して吸引源に接続される吸引管路を兼ねていることを特徴とする請求項5内視鏡システム。
【請求項7】
前記補助具の後端部には、前記内視鏡の挿入部の基端部に接続される操作部本体に係脱自在に係合する係合部が設けられていることを特徴とする請求項3ないし6いずれか記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記内視鏡の挿入部には、先端部から基端部へと貫通する鉗子管路と、前記操作部本体に露呈して設けられ前記鉗子管路に繋がる鉗子入口とが設けられており、
前記係合部には、一端が前記補助具の鉗子管路に繋がりかつ他端が外部に露呈する鉗子入口と、前記鉗子入口と前記内視鏡の鉗子入口とを接続するための短絡管とが設けられていることを特徴とする請求項7記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記補助具及び前記内視鏡との挿入部のうちのいずれか一方又は両方の先端部には、互いの先端部同士を先端面が同じ方向に向くように着脱自在に固定するための固定手段が設けられていることを特徴とする請求項3ないし8いずれか記載の内視鏡システム。
【請求項10】
先端部に撮像素子を内蔵し、かつ先端部から基端部へと貫通する内部空間に少なくとも鉗子管路を有する内視鏡の挿入部を一方の外鼻孔から体腔内に挿入するステップと、
前記内視鏡の鉗子管路よりも大径で且つ先端部から後端部へと貫通する鉗子管路を有する補助具の挿入部を他方の外鼻孔から前記体腔内に挿入するステップと、
前記補助具及び前記内視鏡との挿入部のうちのいずれか一方又は両方の先端部に設けた固定手段により双方の先端部を、先端面が同じ方向を向くように後鼻孔から食道までの範囲で着脱自在に固定するステップと、
前記補助具の挿入部を他方の外鼻孔に挿入する前又は後、あるいは双方の挿入部の先端部を固定した後で、前記補助具の挿入部の後端部に設けた係合部を、前記内視鏡の挿入部の基端部に接続される操作部本体に係脱自在に係合させて互いの鉗子管路を接続するステップと、
を含むことを特徴とする内視鏡システムの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−63483(P2010−63483A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229873(P2008−229873)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】