説明

補強された医療機器を形成する、複数壁の寸法回復可能なチューブ

複数層の寸法回復可能なチューブシステム(100)およびその製造方法であって、そのシステムは、第1層(103)、第2層(105)および補強構造体(107)を有する。第1層は、少なくとも1つの架橋可能なポリマーを含有する。第2層は、第1層の隣に位置し、ポリマーを含有する。補強構造体は、第1層の隣に位置する。第1層および第2層の一方または双方は、寸法的に回復可能である。第1層は実質的に架橋しており、第2層は実質的に架橋していない。補強された医療機器を形成するために、システムを加熱し、寸法を回復させ、補強構造体は第2層に組み込まれるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、寸法回復可能なチューブを対象とする。特に、本発明は、強化(または補強された)ポリマーチューブを形成する、複数(または多重)壁、例えば二重壁の寸法回復(または復原)可能なチューブを対象とする。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
既知の方法によって、様々な用途のための単一層の寸法回復可能なチューブを形成することができる。例えば、Cookらによる米国特許第3,086,242号およびWrayによる米国特許第3,370,112号は、チューブの内側と外側との間の圧力差を用いることによりチューブを膨張させる方法および装置を開示しており、それらの文献は引用により全体が本明細書に組み込まれる。CookらおよびWrayは、ポリマー材料のチューブを架橋および膨張させることにより寸法回復可能なチューブを製造する方法を、説明している。双方の場合とも、チューブの内側と外側との間の圧力差を用いることにより、チューブを膨張させる。熱で回復可能なチューブを形成するために、チューブを押出成形または別の方法で適切に形成し、架橋させる。チューブを架橋させた後、次にチューブをその結晶融解温度と等しいもしくはそれより高い温度または温度範囲まで加熱し、材料における結晶構造を融解させる。チューブを高温にしながら、チューブ壁を横切るように圧力差を与え、チューブを膨張させる。チューブをこの圧力差にさらした後、次にチューブを冷却領域に通し、結晶融解温度より低い温度または温度範囲までチューブを冷却し、寸法回復可能なチューブを形成する。チューブの外側の大気圧または準大気圧を適用しながら、チューブの内側に空気を連続的に供給することにより、圧力差を与えることができる。再加熱すると、チューブは架橋されたときにそれが有していた構造に戻る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カテーテルのような医療機器は、カテーテルの用途に有用な弾力性、可撓性、潤滑性および絶縁性、ならびに体内環境に対する耐性を含む、必要な構造的および化学的な特性を提供するために、補強材料を一般的に必要とする。カテーテルの現在の製造方法は、膨張させたフッ化エチレンプロピレン(“FEP”)チューブの内側に、ポリエーテルブロックアミドポリマーまたはポリエステルエラストマーのような非架橋ポリマーの層を配置する方法を含む。例えば組紐状ステンレス鋼繊維のような、当該技術分野において既知であるカテーテルを補強するための補強材料から製造したブレードを、そのアセンブリの内側に配置する。次に、アセンブリを高温、例えば約182℃〜約218℃(約360°F〜約425°F)まで加熱すると、非架橋ポリマーの溶融およびFEPチューブの収縮が生じる。FEPチューブが収縮すると、FEPチューブは溶融した非架橋ポリマーに力を及ぼし、ポリマーをブレードの方へ押しやり、アセンブリを一体化させる。アセンブリを一体化させた後、FEPチューブを取り除いて廃棄し、得られた製品は、カテーテルとして用いるのに適する。この方法は、特にFEPの除去による収率の低下および下層に対する潜在的なダメージのせいで、FEPチューブまたは取り除く必要のある類似の器具の使用が、プロセスに複雑さおよびコストを付加するという欠点を有する。更に、FEPを回収するために必要とされる高温は、高いエネルギーコストを要求し、装置を特殊化させる。
【0004】
求められるのは、製造が容易で、生じる製造廃棄物がより少なく、上記で言及した欠点に悩まされない補強された医療機器に使用する寸法回復可能な(または寸法を元に戻すこともしくは寸法復原が可能な)チューブを形成する方法およびシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要約
本発明の1つの要旨は、複数層の寸法回復可能なチューブシステムを含む。システムは、第1層、第2層および補強構造体を有する。第1層は、少なくとも1つの架橋可能なポリマーを含有する。第2層は第1層の隣に位置し、ポリマーを含有する。補強構造体を第2層の隣に配置する。第1層および第2層の一方または双方は、寸法回復可能である。第1層は実質的に架橋しており、第2層は実質的に架橋していない。補強された医療機器を形成するために、システムを加熱して寸法を元に戻すと、補強構造体は第2層に組み込まれるようになる。
【0006】
本発明のもう1つの要旨は、補強された医療機器(またはデバイス)の製造方法を含む。その方法は、好ましくは架橋剤を含有する第1層を設けることを含む。第2層を第1層の隣に設け、複数層アセンブリを形成する。第1層の架橋が生じるのに十分な条件に、第1層をさらす。複数層アセンブリを膨張させて、複数層アセンブリを寸法回復可能な状態にする。補強構造体を第2層の隣に設ける。第1層を少なくとも部分的にその寸法を元に戻すのに十分な温度まで複数層アセンブリを加熱し、補強構造体を第2層に組み込む。複数層アセンブリを一体化させて、補強された複数層機器を形成する。
【0007】
本発明のもう1つの要旨は、寸法を元に戻した少なくとも1つのポリマー第1層を有する複数層機器を有して成る補強された医療機器を含む。更に、機器は、第1層の隣に位置する少なくとも1つのポリマー第2層を有する。機器は、第2層に組み込まれた補強構造体をも有する。第2層および第1層の双方は、架橋していても、架橋していなくてもよい。
【0008】
本発明の1つの態様の利点は、より容易な方法で、また廃棄物を減少させて、寸法回復可能な第1層が、補強構造体の構成(またはフォーメーション)および組み込みを提供することである。
【0009】
本発明のもう1つの利点は、補強された機器の形成方法が、少ないプロセス工程によって、既に利用可能な装置を用いて実施できることである。
【0010】
本発明のもう1つの利点は、補強された機器の最終的な一体化後、第1層を取り除く必要がなく、それゆえ、製造廃棄物の量を最小化することである。
【0011】
本発明は、FEPにより現在得ることができる収縮比よりも高い収縮比を可能にする。大きい方のシャフトを小さい方のシャフトに1つの部品で接続するために、この概念を用いることもできる。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を例により図示する添付図面と併せて、好ましい態様の以下のより詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の1つの態様に基づく、補強された機器、例えば医療機器を形成する、寸法回復可能な複数層アセンブリの斜視図を示す。
【0014】
【図2】図2は、本発明の1つの態様に基づく、補強構造体が配置されている、補強された機器、例えば医療機器を形成する、寸法回復可能な複数層アセンブリの回復前の斜視図を示す。
【0015】
【図3】図3は、図2のアセンブリの断面図を示す。
【0016】
【図4】図4は、本発明の1つの態様に基づく補強された医療機器の斜視図を示す。
【0017】
【図5】図5は、図4のアセンブリの断面図を示す。
【0018】
【図6】図6は、本発明の別の態様に基づいて補強された医療機器を形成する、寸法回復可能な複数層アセンブリの斜視図を示す。
【0019】
【図7】図7は、本発明の更に別の態様に基づいて補強された医療機器を形成する、寸法回復可能な複数層アセンブリの斜視図を示す。
【0020】
図面全体を通して同じまたは同様の部分を意味するために、同じ参照番号を用いる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
本発明は、寸法回復可能な材料の少なくとも1つの層を有するアセンブリを、好ましくはチューブまたはシースの形態で利用し、加熱した時、実質的に架橋していない材料に力を加えて、その非架橋材料を補強構造体の上に、周囲におよび/または中に押しやり、医療機器として有用な補強構造体を形成する。本明細書で用いる時、「架橋(または架橋している)」材料およびその文法的な変化形を、部分的にまたは完全に架橋している材料または化学的な(例えば、ポリマーの)架橋の程度が高い材料として規定する。本明細書で用いる時、「非架橋(または架橋していない)」材料およびその文法的な変化形を、全く架橋していない材料または化学的な架橋の程度が低い材料として規定し、架橋量は流動できるほど十分に少ない。例えば、非架橋材料は、補強構造体を非架橋材料に浸入させることができるほど十分な流動性を有することが好ましい。更に「架橋不可能な」材料およびその文法的な変化形を、架橋可能な材料にて架橋させるのに十分な条件にさらされた場合に、架橋に対して部分的または全体的に抵抗を有する材料として規定する。
【0022】
本発明の1つの態様は、補強された医療機器を形成する複数層システムを含み、その複数層システムは、寸法回復可能な材料の少なくとも1つの層を含む。熱で回復可能なポリマーの材料は、寸法が熱に不安定な材料であり、しばしば「弾性記憶」を有すると言われる。熱で回復可能な材料の1つの形態には、細長い要素を覆うまたは包むのに適するチューブシースが含まれる。当該技術分野の当業者に周知のように、弾性記憶の特性を有する材料は、寸法が熱に不安定であり、熱の適用により形状および/または大きさを変化させることができる。最初の押出成形またはポリマーを所望の形状に成形する別の方法により、弾性記憶をポリマー材料に与えることができる。そして、例えば、高エネルギー電子ビーム、Co60ガンマ線照射といった高エネルギー放射線への露出、もしくは紫外線照射への露出によって、または、例えば過酸化物の導入といった化学的手段によって、ポリマーを架橋させる、またはポリマーに架橋材料の特性を付与する。次に、架橋したポリマー材料を加熱し、変形させ、その後、急冷または他の適当な冷却によって変形した状態で固定させる。別の態様では、幾つかのシステムに対しては、より大きな力を用いることにより、室温で膨張(または伸張)を達成して、ポリマーを変形させることができる。変形した材料は、回復に十分な高温に露出するまで、ほぼ永久にその形状のままである。結晶融点より低い温度にて、ポリマーに相当な力を与えるのに十分に大きな分子量を有する、幾つかのパーフルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレンおよびFEP)ならびにポリオレフィンまたはビニルポリマーのような材料に、実際に架橋させることなく、弾性記憶の特性を与えることもできる。ガラス転移温度と融点との間の温度にて、これらの材料を膨張させることができる。膨張は約120パーセントから約600パーセントであり得、それはしばしば、溶融(アモルファス)状態における単なる膨張により成し遂げられるものよりも遙かに大きい。
【0023】
単一チューブ形状が望ましい場合、材料の平坦なシートを単純に巻いてチューブにし、継ぎ目を適切に封止することによって、材料の平坦なシートから単一チューブ形状を製造してよい。巻いて、熱を適用する前の状態にしたシートとして、チューブを供給してよい。チューブ形状または別の均一な細長い形状を有する物体を覆うために、回復可能なものをしばしば用いて、例えば、周辺シール保護体を提供する。細長い対象に自由な端部がない場合、いわゆる巻き付け材料(wrap−around material)を用いることが一般的であり、それは一般的にシートの形態の材料であって、対向する長手方向の端部が重なり合うように覆うべき物体の周りに巻き付けることによって取り付けられる。巻き付け材料を物体の周囲に保持するために、封止手段を対向する長手方向の端部と一緒に固定するように適用してもよいが;当該技術分野の当業者は、特定の用途に応じて、接着成分が対象物に材料を取り付けるのに十分であり得ることを容易に理解するであろう。1つの実施例の態様において、チューブシステムは、実質的にシリンダー形状を有する複数層の熱収縮可能なチューブである。
【0024】
例えば、チューブシステムは実質的にシリンダー状であってよく、回復させたチューブの内径に対する膨張させたチューブの内径の比率(回復率)は、約1.2〜約6またはそれより大きくない。内側壁および膨張したポリマーの外側被覆物は合わせて、約0.04mm(0.0016インチ)〜約1.25mm(0.05インチ)の厚さを有してよい。内側層は外側層より厚くてよい。別の態様において、回復の際により大きな力を望む場合、外側層は内側層より厚くてよい。
【0025】
図1は、層の一部を取り除いた、補強された医療機器を形成するシステムにおける寸法回復可能な複数層アセンブリ100の斜視図を示す。図1に示す態様において、アセンブリ100は、物質からなるチューブ(またはチューブ素材)を形成するシリンダー状に配置した層を有し、そこにおいて、外側層103は内側層105を同心円状に包囲する。図1〜図7に表す大きさは概略にすぎず、原寸に比例して描いていない。層の厚さは、補強された医療機器の所望の特性に応じて決まり、外側層103および内側層105にて用いる材料組成に応じて変化する。
【0026】
図1に示すように、寸法回復可能なアセンブリ100は、外側層103および内側層105を有する。外側層103および内側層105を同時押出成形し、隣り合う関係に配置することが好ましい。本明細書で用いる時、「隣り合う(または隣に)」は、層のすぐ近くに層が位置していることおよび/または層の中間にある層もしくは材料を有することが可能な層を有していることを含む。寸法回復可能な構造体に形成され得るポリマー材料から、外側層103および内側層105を形成することが好ましい。外側層103および内側層105は、同じ材料または異なる材料で形成してよい。ポリマー材料として用いる材料は、特に限定されず、寸法回復可能な構造体をされ得るいずれの材料を含んでもよい。例えば、本発明で用いるのに適するポリマーには、例えば、ポリオレフィン、飽和ポリエステル、ポリアミドおよびポリビニルハロゲン化物などが含まれてよい。更に、熱可塑性エラストマーのようなエラストマー、ポリシロキサンおよび可塑化ポリ塩化ビニルなどを用いてよい。更に、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンならびにエチレン、プロピレンおよびブテンの種々の共重合体;エチレン−エチルアクリレート、エチレン−ビニルアセテート、エチレン−メチルアクリレートまたはエチレン−ブチルアクリレートの共重合体であって、エチレンコモノマーから派生した繰り返しユニットが主(例えば、約80%〜90%)である共重合体、ならびにポリエチレン自体が大部分を占めているそのような共重合体の混合物を用いてよい。別の態様では、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体などの、フルオロポリマーを用いてよい。この態様で用いるのに好ましいポリマーには、ポリエーテルブロックアミドポリマー、ポリエステル熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン熱可塑性エラストマーが含まれる。加えて、上記に記載したポリマーのようなポリマーの混合物を、外側層103および/または内側層105の形成に利用してよい。外側層および/または内側層を、異なる物理的または熱的な特性を有するポリマー、例えば、化学組成物は同じであるが硬さまたは色が異なるポリマーの、2つまたはそれより多くのセグメントから構成してよい。そのようなセグメントを融合させ、互いに結合させて、単一の構造体にすることができる。
【0027】
外側層103は、電子ビームまたは外側層の材料を架橋できる他の適当なエネルギー源を照射した時、架橋を促進する架橋剤を更に含有してよい。適当な架橋剤は、照射した場合に外側層103内で架橋を促すいずれの架橋促進剤を含んでもよい。適当な架橋促進剤には、限定するわけではないが、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレン−ジマレイミドおよび多官能アクリレートまたはメタアクリレートが含まれる。それに加えてまたは別の方法として、放射線架橋の代わりに、過酸化物のような化学的な架橋剤を用いてもよい。
【0028】
内側層105は、実質的に架橋していないエラストマーポリマーを含有することが好ましい。内側層105は、外側層103のポリマーを含有してよく、あるいは異なる材料から作ってもよい。内側層105を、照射の間、架橋に対する抵抗を提供するのに十分なポリマーおよび必要に応じて架橋阻害剤(例えば、幾つかの酸化防止剤)から形成する。架橋阻害剤には、電離放射線にさらされたときに、内側層105のポリマーに、架橋に対する抵抗性(または耐性)を付与するいずれかの材料が含まれる。適当な架橋阻害剤には、限定するわけではないが、フェノール系酸化防止剤もしくはチオエステル、または芳香族ジスルフィドが含まれる。内側層が補強構造体(図1には図示せず)と接触して流動する必要がある態様の場合、内側層105の架橋を実質的に避けることが好ましいが、補強構造体が浸入できるのに十分な流動性を材料が維持するならば、照射の間、ある程度の架橋が内側層105にもたらされてよい。
【0029】
別の態様において、内側層105は、例えばワックスなどの流動化剤を含有してよい。ワックスは、架橋に対して更なる抵抗性を与えることが好ましく、酸化防止剤と組み合わせる場合には特にそうである。本発明で用いるのに適するワックス組成物には、限定するわけではないが、低分子量のポリエチレンポリマーもしくはポリプロピレンポリマーまたはチューブ状の層にて用いるのに適する他のワックスポリマーの組成物が含まれてよい。
【0030】
内側層は架橋しても、架橋しなくてもよいが、好ましくは、架橋せず、内側層の流動能力を高めるために架橋阻害剤を含有してよい。別の態様において、内側層105は、接着剤を含有してよい。図7に示すような「反転させた」態様が望まれる場合、本発明のこの態様において、内側層105にて用いる接着剤には、架橋可能な接着剤が含まれてよい。内側層105にて用いるのに好ましい接着性ポリマーには、ポリエチレン共重合体(例えば、エチレン共重合体)、ポリアミドおよびそれらの組み合わせが含まれてよい。エチレンと1つまたはそれより多くのモノオレフィン系不飽和極性コモノマーの特定の共重合体は、モノオレフィン系不飽和有機エステルおよびエチレンにより共重合可能な酸を含有するコモノマーを有する。適当な不飽和エステルに含まれるのは、限定するわけではないが、ビニルアセテート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニルおよび安息香酸ビニルなどを含む、アルカン酸および芳香族酸のビニルエステルである。モノオレフィン系不飽和酸のアルキルエステルおよびアリールエステル、限定するわけではないが、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、フェニルアクリレート、クロトン酸メチルおよびクロトン酸エチルなどを用いてよい。適当な不飽和酸には、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれてよい。適用できる共重合体には、上記に記載のモノマーの1つまたはそれより多くのものとエチレンとの共重合体が含まれる。好ましい共重合体には、エチレンとビニルアセテートとの共重合体、エチレンとビニルアセテートとアクリル酸またはメタクリル酸のいずれかとのターポリマーが含まれる。別の好ましい共重合体には、エチレンおよびエチルアクリレートのポリマーが含まれる。内側層105のポリマー組成物のような接着剤は、照射の間、僅かに架橋していてもよく、例えば約20%未満の架橋である。
【0031】
内側層105は、1または複数の上記の構成要素を、単独でまたは組み合わせで含有することができ、その組成は、得られる医療機器の所望の特性によって決定されてよい。更に、所望の特性を提供するために、他の添加剤、例えば、着色剤、染料もしくは顔料、安定剤、充填剤、架橋阻害剤、酸化防止剤、反応促進剤、平滑剤、X線不透過充填剤または他の添加剤を、外側層103および/または内側層105に添加してよい。
【0032】
上記でより詳細に説明したように、そのようなポリマー材料を熱で回復可能な状態にする既知の方法により、外側層103および内側層105を、寸法回復可能な構造体として形成する。外側層103および内側層105を、例えば、同時押出成形によってチューブ形状にするなど、複数層アセンブリ100に形成した後、アセンブリに電離放射線または紫外放射線を照射する。電離放射線を、加速電子線、X線、ガンマ線、アルファ粒子、ベータ粒子、中性子または他の高エネルギー放射線源によって供給してよい。放射線への暴露は、少なくとも外側層103のポリマー材料を架橋させるのに十分であることが好ましい。2〜60メガラド(Mrads)の放射線量を用いて、外側層103に十分な架橋をもたらすことができる。照射は架橋を促す好ましい方法であるが、別の態様では、化学架橋剤が外側層103に存在してよく、そこでの架橋メカニズムはポリマー材料の化学架橋である。
【0033】
上記で説明したように、同時押出成形した層または別の方法で形成した複数の層は、異なる程度に架橋していることが好ましい。特に、外側層103は、架橋していないことが好ましい内側層105より多く架橋していることが好ましい。上記で説明したように、高エネルギー電子のビームを材料に照射することにより、架橋を達成することができ、外側層103と内側層105との架橋の量の差異は、外側層103に対する架橋促進剤、内側層105に対する酸化防止剤および/または架橋阻害剤の選択的な量の添加により提供されることが好ましい。本発明の別の態様では、外側層103にてより多くの量の架橋を促すために、外側層103が内側層105より多く照射されるような方法で、放射線源を用いてよい。
【0034】
本発明の好ましい態様では、同じポリマー材料を外側層103および内側層105に組み込む。照射後、外側層103は実質的に完全に架橋しており、内側層105は実質的に架橋していない。更に、二重層システム(即ち、外側層103および内側層105)に関するシステムを示し説明してきたが、任意の数の層を設けてもよい。その上、更なる補強構造体107(図2)を、外側層103または内側層105の隣を含む、システム内の適当ないずれの場所に設けてもよい。追加の層または構造体を、外側層103および/または内側層105の隣またはそのすぐ近くを含む、適当ないずれの方法で設けてもよい。
【0035】
図2〜図3は、例えば補強された医療機器など、補強された機器の形成の準備において、内側層105に隣り合う補強構造体107の配置を示す。補強構造体107を形成する材料は、特に限定されず、医療機器として用いるのに望ましい特性を提供するいずれの材料を含有してもよく、内側層105に組み込む場合は特にそうである。望ましい特性には、高い引っ張り強度、ねじれに対する耐性、高い破裂圧力、穿刺耐性、耐薬品性、ヒト組織適合性、熱的安定性、無毒性、水分に対する耐性およびガスまたは放射線により殺菌する能力が含まれてよい。例えば、補強構造体は、単繊維の金属材料または合金材料で形成したまたは織ったブレード(braid;または組紐)または布帛を含んでよい。例えば、補強構造体107は、ステンレス鋼ワイヤ、PET繊維、ナイロン繊維および/もしくはアラミド繊維の織物または組紐を含んでよい。更に、補強構造体は、細長いテープまたは繊維の束の形態をとってもよい。別の態様では、補強構造体107は、穴のあいた不織シート、または内側層のポリマーと互いにかみ合う微細な突起部を有する層を有してよい。別の態様では、補強構造体107を、高温に対する耐性を有するポリマー材料の織物から形成する。更に別の態様では、補強構造体107は、内側層と接してスパイラル状に巻き付けた、コイル状に巻いた、または別のように配置した金属繊維またはポリマー繊維を含有してよい。ブレードまたは布帛のような補強構造体は、人体内の環境において有用な医療機器に剛性および弾力性を提供する。補強構造体107の配置は、図2〜図3に示す場所に限定されず、外側層103の加熱および収縮に応答して補強構造体107の内側層105への組み込みを与える補強構造体107のいずれの配置を含んでもよい。補強構造体は、第1層および/または第2層の全長にわたって、あるいは用途に応じて第1層および/または第2層の長さの一部のみにわたって延びていてよい。特定の特性を提供するために、2つまたはそれより多くの異なる種類の補強構造体を同じチューブシステムに用いてよい。
【0036】
医療機器を形成するために、少なくとも外側層103の構造体を回復させるのに十分な温度にまで、図2〜図3に示す、隣り合う補強構造体107を有するアセンブリ100を加熱する。例えば、アセンブリ100を炉で加熱してよく、またはヒートガンもしくは類似の機器からの熱にさらしてよい。加熱の適当な温度は用いるポリマーに依存し、例えば、エチレン共重合体の場合の90℃(194°F)から、FEPの場合の250℃(482°F)まで、あるいはそれより高い温度であってよい。アセンブリを十分に加熱し、外側層103を収縮させ、それによって、内側層105に力を与え、それを溶融させる、あるいは補強構造体107の方へ流れることができる状態にする。補強構造体107の内側層105への組み込みが終わったとき(例えば図4参照)、材料を冷却し一体化させて、補強された機器400を形成する。本発明の1つの態様では、補強構造体107を内部に組み込ませる硬化可能な材料(例えば、接着剤)を含有する、内側層105は、硬化することが許容される。
【0037】
図4に示すように、寸法を元に戻した補強された機器400は、外側層103および内側層105を有する。外側層103および内側層105は、実質的に十分にその寸法が回復することが好ましい。内側層105は、そこに組み込まれた補強構造体107を有する。図5に示すように、そのように限定するわけではないが、補強構造体107を内側層105によって十分に包み込むことが好ましく、補強構造体107を補強された機器400の内側の環境または補強された機器400の外側の環境に露出することを実質的に防ぐ。
【0038】
本発明は、図1〜図5にて上記に示し説明したアレンジメントに限定されず、追加の層を有することができる。例えば、図6に示すように、本発明は、架橋している外側層103および架橋していない内側層105を有する、寸法回復可能な3層システムを有する、1つの態様を含む。寸法回復可能なアセンブリ100は、内側層105に隣り合い、架橋している内側キャッピング層601を更に有する。外側層103および内側層105は、例えば、外側層103および内側層105に関して上記に記載した組成物のような組成物を含有する。更に、内側キャッピング層601は、外側層105に関して上記で説明したような、架橋している組成物を含有する。内側キャッピング層601および外側層103は、同一の組成物を含有してよく、あるいは異なってもよい。本発明のこの態様において、外側層105および内側キャッピング層601は、架橋の量および割合を増加させる架橋剤を含有することが好ましい。
【0039】
別の態様では、図7に示すように、本発明は、架橋していない外側層701および架橋している内側層703を有するもう1つのシステムを含む態様を含む。内側層703は架橋している組成物を含有し、それは例えば、外側層103に関して上記に記載した組成物である。外側層701は、架橋していない組成物を含有し、それは例えば、内側層105に関して上記に記載した組成物である。図7のアレンジメントは、補強構造体(図7に図示せず)をアセンブリ100の外側層701に組み込むことを可能にするものであって、補強構造体を外側層701の隣に配置して、補強層を外側層701に引き込むことを含む、適当ないずれの技術を用いても達成できる。別の態様では、補強構造体を外側層701の隣に配置してよく、寸法回復可能な架橋している更なる層(図7に図示せず)を補強構造体の隣に設けてよく、回復させた場合、寸法回復可能な層は、架橋していない外側層701の中に補強構造体を押し込む。更に、図7の態様は、図6に示す内側キャッピング層601と類似する、架橋していない更なる内側キャッピング層(図示せず)を含んでよい。
【0040】
上記において、チューブ状構造体および同心アレンジメントに関して図示し、説明してきたが、平面状のまたは他のアレンジメントの寸法回復可能な材料を利用してよく、その材料は、既知の結合技術を用いて互いに結合することができ、医療機器として用いるのに望ましい機械的特性を有する補強された機器を形成する。更に、カテーテルに適するものとして説明してきたが、補強された構造体400は、バルーンのようなカテーテル部品または他の医療機器を構成することもできる。更に、補強された機器400は、医療用途に限定されず、補強された可撓性チューブを必要とするいずれの用途を含んでもよい。例えば、本発明の態様に基づく機器400は、例えばイントロデューサー、ダイレーター、リーダーおよび生理系機器(例えばアブレーションカテーテル)などの他の医療用途を含む。
【0041】
本発明の1つの態様は、外側層および内側層を同時押出成形により製造する、補強された医療機器を形成する寸法回復可能な複数層チューブアセンブリを含む。外側層が架橋している層である場合、それは、0.5重量%〜5重量%の架橋促進剤、2重量%〜5重量%の濃厚顔料、0.5重量%〜1重量%の酸化防止剤および実質的にポリマーである残部を含有してよく、全ての重量パーセントは、全組成物の重量に対するものである。内側層が架橋していない場合、それは、0.5重量%〜1重量%の酸化防止剤、2重量%〜5重量%の濃厚顔料、および場合により、1重量%〜5重量%の架橋阻害剤を含有してよく、残部は実質的にポリマーであり、全ての重量パーセントは、全組成物の重量に対するものである。次に、外側層および内側層を同時押出成形したアセンブリに電子ビームを照射する。次に、アセンブリを常套の膨張技術により膨張させ、アセンブリを寸法回復可能な状態にする。補強された医療機器を形成するために、例えばブレードなどの補強構造体を、寸法回復可能なアセンブリの内側で、内側層の隣に配置する。ブレードを有しているアセンブリを、炉にて約120℃(250°F)より高い温度まで加熱する。内側層は溶融し、外側層は収縮し、それによって内側層を流動させて、そこにブレードを組み込む。次に、アセンブリを冷却させることができる。得られた機器は、外側層および強化した内側層を有する。
【0042】
本発明の別の態様は、外側層および内側層を同時押出成形することにより製造する、補強された医療機器を形成する寸法回復可能な複数層チューブアセンブリを有する。外側層は、0.5重量%〜5重量%の架橋促進剤、2重量%〜5重量%の濃厚顔料、0.5重量%〜1重量%の酸化防止剤および実質的にポリマーである残部を含有し、全ての重量パーセントは、全組成物の重量に対するものである。内側層は、全組成物の1重量%〜5重量%の架橋阻害剤を含有し、残部は、実質的には接着特性を有するポリマー材料である。次に、外側層および内側層を同時押出成形したアセンブリに電子ビームを照射する。次に、アセンブリを常套の膨張技術により膨張させ、そのアセンブリを、寸法回復可能な状態にする。補強された医療機器を製造するために、例えば、ステンレス鋼ブレードなどの補強構造体を、アセンブリの内側で内側層の隣に配置する。ブレードを有するアセンブリを、炉にて約120℃(250°F)より高い温度まで加熱する。内側層は溶融し、外側層は収縮し、それによって内側層を流動させて、そこにブレードを組み込む。次に、アセンブリを冷却することができる。得られた機器は、外側層および補強した内側層を有する。
【0043】
本発明の原理を以下の実施例により更に説明するが、限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0044】
外側層組成物を、76.2mm(3’’)の直径の180°まで加熱した2本ロールミルにより製造した。外側層の(架橋可能な)組成物を、PEBAX(登録商標)ポリエーテルブロックアミドポリマー樹脂(Arkema Corporationから購入可能)を2.5%または5.0%の架橋促進剤(トリアリルイソシアヌレート)と混合することにより製造した。これらの混合物を電気プレスにて180℃(365°F)で押圧し、152mm×152mm×0.635mm(6インチ×6インチ×0.025インチ)のプラークにした。これらのプラーク試料に、1.0MeVの電子ビームを用いて10ミリラド〜20ミリラド照射し、200℃でE30に対する試験を実施することにより、架橋密度を調べた。E30の試験は、ホットボックスを備えたInstron(登録商標)の試験機を用い、200℃で30%の伸張における力を測定した。6.35mm×102mm×0.635mm(0.25インチ×4インチ×0.025インチ)の寸法を有する試料を、48.3mm(1.9インチ)のつかみ具を有するInstron試験機に配置し、50mm/分の速度で引っ張った。この試験を200℃、即ち、最も高い温度で溶融するPEBAX(登録商標)樹脂の融点よりも少なくとも25℃高い温度にて実施した。(PEBAX(登録商標)7233は、174℃という最も高い融点を有していた。)良好に膨張するチューブは、一般的に0.34MPa(50psi)より大きいE30値を有し、好ましくは0.62MPa(90psi)より大きいE30を有する。E30のデータを表1にまとめる。ASTM D−3418に基づき測定した各PEBAX(登録商標)樹脂の融点、およびASTM D2240により測定した15秒後のショアD値であるショア硬さ(デュロメーター)を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
PEBAX(登録商標)樹脂を、1.0%〜3.0%のLOWINOX(登録商標)TBM6酸化防止剤(Chemtura Corporationから購入可能なフェノール系酸化防止剤)と混合することにより、あるいは1.0%〜4.0%のLOWINOX(登録商標)TBM6酸化防止剤および18.0%のEPOLENE(登録商標)C13ワックス(Eastman Chemical Companyから購入可能)の組み合わせと混合することにより、内側層の(架橋していない)組成物を製造した。これらの混合物を電気プレスにて180℃(365°F)で押圧し、152mm×152mm×0.635mm(6インチ×6インチ×0.025インチ)のプラークにした。これらのプラーク試料に、1.0MeVの電子ビームにより10ミリラド〜20ミリラド照射し、ASTM D 1238−04c試験方法に基づき、メルトフローレート(MFR)試験にて評価した。その方法は、押出成形の可塑度計による熱可塑性プラスチックのフローレートの試験方法であり、条件230/2.16(2.16kgの負荷で230℃)の手順Aであって、引用することによって本明細書に組み込む。チューブの試作品に変形させるために、照射していないPEBAX(登録商標)樹脂のMFRと等しいまたはそれより大きいMFR値を有する、複数の組成物を選択した。MFRデータを表2にまとめる。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
16個の組成物を用いてチューブの層を形成した。10個の組成物は外側層用とし、6個の組成物は内側層用とした。外側層の組成物を、0.5%の酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から購入できるフェノール系酸化防止剤のIrganox(登録商標)1010)および0.5%〜3.0%の濃厚顔料(PolyOne Corporationから購入できるWilson(登録商標)50−BU−302またはWilson(登録商標)50−YE−308)を添加することにより、表1の組成物から変更した。内側層の組成物を、0.25%の酸化防止剤を添加することにより、表2の組成物から変更した。外側層(15および16)の2つの組成物は、5%のワックスも含有していた。これら16の組成物は異なるデュロメーター樹脂を表した。
【0051】
表3に列挙したすべての組成物を、二重壁チューブに変化させた。各組成物を、31.8mm(1.25インチ)のDavis Standard押出機にて溶融混合し、ペレット化した。同時押出成形ラインを用いて二重壁チューブを同時押出成形し、表4に示す層を有するチューブを作製した。ほとんどの試作品では、各チューブの試作品の双方の層を同じ樹脂から製造した。149℃(300°F)と190℃(374°F)との間の温度で、31.8mm(1.25インチ)のDavis Standard押出機にて、外側の(架橋している)層を押出成形した。163℃(325°F)と204℃(399°F)との間の温度で、19.1mm(0.75インチ)のC.W.Brabender押出機を用いて、内側の(架橋していない)層を押出成形した。例えば、PEBAX(登録商標)5533(組成物6および8、表3)から作った二重壁チューブ(実施例1、表4)は、0.89mm(0.035インチ)の押出成形した外側直径(OD)および0.69mm(0.027インチ)の押出成形した内側直径(ID)、ならびに0.051mm(0.002インチ)の外側層の非膨張壁の全平均厚さおよび0.051mm(0.002インチ)の内側層の非膨張壁の全平均厚さを有していた。0.5MeVの電子ビームを用いてチューブに25ミリラド照射して、200℃におけるE30値を0.74MPa(107psi)にし、加圧器にて177℃(350°F)で膨張させ、1.73mm(0.068インチ)の膨張したIDおよび0.686mm(0.027インチ)の回復したID、0.076mm(0.003インチ)の外側層の平均的な回復した壁厚および0.064mm(0.0025インチ)の内側層の平均的な回復した壁厚を有するチューブを提供した。
【0052】
同様にして、表3に列挙した他の組成物から更なる2重壁チューブを作った。例えば、組成物1(外側)および組成物3(内側)を組み合わせてPEBAX(登録商標)7233(実施例2、表4)から二重壁チューブを同時押出成形した。組成物4(外側)および組成物5(内側)を同時押出成形し、PEBAX(登録商標)6333(実施例3、表4)から二重壁チューブを作った。組成物9(外側)および組成物10(内側)を同時押出成形し、PEBAX(登録商標)4033(実施例4、表4)から二重壁チューブを作った。組成物11(外側)および組成物12(内側)を同時押出成形し、PEBAX(登録商標)3533(実施例5、表4)から2重壁チューブを製造した。組成物13(外側)および組成物14(内側)を同時押出成形し、PEBAX(登録商標)2533(実施例6、表4)から二重壁チューブを作った。更に、2つの異なるPEBAX(登録商標)樹脂から1つのチューブ試作品を作った。外側層をPEBAX(登録商標)3533(組成物11)から作り、内側層をPEBAX(登録商標)4033(組成物10)(実施例7、表4)から作った。最後に、1つのチューブ試作品において、層を反転させた。(架橋していない)外側層をPEBAX(登録商標)5333(組成物8)から作り、(架橋している)内側層をPEBAX(登録商標)5333(組成物7)(実施例8、表4)から作った。これらのチューブ試作品のすべてに、0.5MeVの電子ビームを用いて25ミリラド照射し、177℃(350°F)にて加圧器を用いて膨張させた。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
実施例で示した、寸法回復可能な複数層システムは、補強された医療機器の製造に用いるのに適する。複数の層を有するアセンブリ100を、補強構造体107の隣に配置する。補強構造体107を有するアセンブリを熱にさらし、あるいは寸法を元に戻す別の条件にさらす。アセンブリ100が回復すると、補強構造体107は回復したアセンブリ300に組み込まれるようになる。
【0057】
本発明を好ましい態様に関して説明してきたが、当該技術分野の当業者は、様々な変更を行なってよく、本発明の範囲から逸脱しなければ、同等のものをその要素と置換してよいことを理解するであろう。更に、特定の条件または物質を本発明の教示に適応させるために、その本質的な範囲から逸脱することなく、多くの変更を行なうことができる。従って、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の方法として開示した特定の態様に限定されず、本発明は、添付の請求項の範囲に含まれるすべての態様を含むことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1架橋ポリマー層;および
当該第1層の隣に配置される第2非架橋ポリマー層;
を有する、複数層の寸法回復可能なチューブシステムであって:
当該第1層および当該第2層の一方または双方は寸法回復可能であり、寸法が回復すると補強構造体がそこに組み込まれるように構成されるシステム。
【請求項2】
前記第1層は、(a)前記チューブシステムの外側層および(b)前記チューブシステムの内側層の一方である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1層は、ポリオレフィン、飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルハロゲン化物、エラストマーおよびそれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含有し、好ましくは、前記第1層は、ポリエーテルブロックアミド共重合体、ポリエステル、ポリウレタンエラストマーおよびそれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2層は、ポリオレフィン、飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルハロゲン化物、エラストマーおよびそれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含有し、好ましくは、前記第2層は、ポリエーテルブロックアミド共重合体、ポリエステル、ポリウレタンエラストマーおよびそれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1層は、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレン−ジマレイミドおよびそれらの組み合わせから成る群から選択した架橋剤を含有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2層は、フェノール系酸化防止剤、チオエステルおよびそれらの組み合わせから成る群から選択した酸化防止剤を更に含有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2層は接着剤を含有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
架橋可能な第1層を設けること;
当該第1層の隣に第2層を設けて、複数層アセンブリを形成すること;
当該第1層の架橋を生じさせるのに十分な条件に当該第1層をさらすこと;
当該複数層アセンブリを膨張させて、当該複数層アセンブリを寸法的に回復可能な状態にすること;
補強構造体を当該第2層の隣に配置すること;
当該第1層を少なくとも部分的に寸法的に回復させ、かつ当該補強構造体を当該第2層に組み込ませるのに十分な温度まで、当該複数層アセンブリを加熱すること;および
当該複数層アセンブリを一体化させ、補強された複数層機器を形成すること:
を含む補強された医療機器の製造方法。
【請求項9】
前記条件は電離放射線による照射を含み、好ましくは、当該照射は、加速電子線、紫外線、X線、ガンマ線、アルファ粒子、ベータ粒子、中性子およびそれらの組み合わせから成る群から選択される高エネルギー源にさらすことを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記補強構造体は織成されたブレードである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの架橋している寸法が回復したポリマー第1層;
当該第1層の隣に配置された少なくとも1つのポリマー第2層;および
当該第2層に組み込まれた補強構造体;
を有する複数層機器
を有して成る補強された医療機器。
【請求項12】
前記複数層機器はカテーテルである、請求項11に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−530278(P2010−530278A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513257(P2010−513257)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/007721
【国際公開番号】WO2008/156841
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(399132320)タイコ・エレクトロニクス・コーポレイション (234)
【氏名又は名称原語表記】Tyco Electronics Corporation
【出願人】(509350228)
【氏名又は名称原語表記】Douglas A. QUAST
【Fターム(参考)】