説明

補強された繊維複合構成材の製造方法ならびに、補強された繊維複合構成材を製造するためのバキュームマットおよびアレンジメント

航空機および宇宙機のための繊維複合構成材(1)を補強する方法では、少なくとも一つの補強部材(4)を再現可能に収容する、少なくとも一つの収容部(6)を有するバキュームマット(5)が準備される。少なくとも一つの補強部材(4)は、バキュームマット(5)の少なくとも一つの収容部(6)に挿入される。少なくとも一つの補強部材(4)が挿入されたバキュームマット5は、補強される繊維複合構成材(1)に、シールするように再現可能に取り付けられ、成形部(2)を形成する。そして少なくとも成形部(2)が硬化され、少なくとも一つの補強部材(4)を繊維複合構成材(1)に接続する。その後、バキュームマット(5)は、補強された繊維複合構成材(1)から離され、再使用のために備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機および宇宙機のための補強された繊維複合構成材の製造方法、ならびに補強された繊維複合構成材を製造するためのバキュームマットおよびアレンジメントに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明および本発明の課題はあらゆる繊維複合構成材に適用されうるが、本明細書では、例えば、航空機の外郭構造(skin shell)などの、平面状のストリンガによって補強された炭素繊維プラスチック材料(CFRP)構成材(以下、「繊維複合構成材」とも称する)に適用した場合について説明する。
【0003】
CFRPからなるストリンガでCFRPからなる外郭構造を補強し、追加的重量を最小限に抑えつつ飛行中における高いストレスに対する耐性を向上させることが一般的に知られている。この点において、例えばTストリンガ、ΩストリンガまたはIストリンガなどの異なる種類のストリンガが用いられる。
【0004】
Tストリンガの断面は、ベースとバーからなる。ベースは、外郭構造との接触面を形成する。例えばTストリンガなどのストリンガで補強された外郭構造の使用は、航空機の組立(特に、例えばエポキシ樹脂などの樹脂マトリクスを、半完成繊維製品に注入する真空注入工程)において普及している。例えばプリプレグ(prepreg)などを用いた他の公知の繊維複合構成材の製造方法と比較して、注入プロセスは、より経済的な半完成繊維製品を用いることができるので費用効果が高い。
【0005】
ここで、「半完成繊維製品」とは、織物、レイドスクリム(interlaid scrim)および繊維マットを意味する。半完成繊維製品は、エポキシ樹脂などの樹脂マトリクスで含浸され、そして例えばオートクレーブによって硬化される。
【0006】
真空注入工程では、バキュームバック(vacuum bag)とよばれる部材を形成するために、使い捨てのポリイミドフィルムが現在用いられている。構成材の包装(wrapping)工程は、完全に手作業で行われ、特に、例えば上述したストリンガなどの補強部材などが用いられる場合、非常に時間がかかる。構成部材のゆがみを防止するために、バキューム膜を、補強部材の輪郭に正確に追従するように、補強部材上に配置しなければならないからである。さらに、外気に対しての強固なシールを達成するために、バキューム膜は、同じく手作業で、適切なシール材を用いることでシールされなければならない。このような手作業による工程管理のため、再現性の信頼性は著しく低かった。例えば、繊維複合構成材上の補強部材の位置決めのために、大きい許容誤差が求められていた。大きい許容誤差は、構成材の重量を増加に繋がりうる。不完全な真空構造は、構成材が廃物としてはねられることにさえも繋がりうる。
【0007】
使い捨てフィルムは、予め硬化されたT型補強部材または他の補強部材と共にでなければ用いられることができない。硬化されていないT型補強部材または他の補強部材は、真空構造(vacuum structure)の内部または外部に、追加的なベースプレートを必要とする。さらに、この製造技術ではウェットストリンガ(すなわち硬化されていないストリンガ)は、硬化後それぞれ所望のサイズに、引き伸ばされなければならない。硬化後、使い捨てフィルムおよびシールテープを取り除くために、相当な手作業による労力が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この背景に対して、本発明の目的は、上述した問題を解決または著しく低減すべく、繊維複合構成材の補強方法ならびに、補強された繊維複合構成材を製造するためのバキュームマットおよびアレンジメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この本発明の目的は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項7の特徴を有するバキュームマットと、請求項16の特徴を有するアレンジメントとによって達成される。
【0010】
本発明によれば、バキュームマットが、少なくとも一つの収容部を有する、航空機および宇宙機のための繊維複合構成材を補強する方法が提供される。少なくとも一つの収容部は、少なくとも一つの補強部材を再現可能に収容する。少なくとも一つの補強部材は、バキュームマットの収容部に挿入される。少なくとも一つの補強部材が挿入されたバキュームマットは、その後、シールするように、補強される繊維複合構成材に再現可能に取り付けられ、成形部を形成する。そして、少なくとも成形部が硬化され、少なくとも一つの補強部材を繊維複合構成材に接続する。その後、バキュームマットは、補強された繊維複合構成材から離され、再使用のために備えられる。
【0011】
さらに、航空機または宇宙機のための補強された繊維複合構成材を製造するためのバキュームマットが提供される。バキュームマットは、少なくとも一つの補強部材を収容するための、少なくとも一つの収容部を有する。バキュームマットは、バキュームマットの外周に配置され、連携する接触面に接触したとき、バキュームマットを外気からシールするための自己シール部を有する。さらにバキュームマットは、バキュームマット移動手段と連携する少なくとも一つのコンタクト部、を有する。
【0012】
航空機または宇宙機のための補強された繊維複合構成材を製造するためのアレンジメントも提供される。補強される繊維複合構成材はベースプレートによって支持される。アレンジメントは、少なくとも一つの補強部材を収容するための、少なくとも一つの収容部を有するバキュームマットを有する。バキュームマットは、挿入された少なくとも一つの補強部材と共に、バキュームマット移動手段によって、補強される繊維複合構成材に対して所定の位置に移動されうる。ベースプレートおよびバキュームマット移動手段は、互いに対応し、補強される前記繊維複合構成材に対する前記バキュームマットの再現可能な位置決めのためのセンタリング手段を有する。さらにベースプレートおよびバキュームマットは、互いに対応し、バキュームマットを外気から包装シール(encircling sealing)するシール手段を有する。
【0013】
このように、本発明は、上述した従来のアプローチと比較して、時間の消費を著しく抑えられるという有利な効果を有する。従来のアプローチと比較して、手作業の大部分が省略されるからである。さらに、高い再現性および高い位置決め精度が得られ、不良品のリスクおよびエラー発生率(error probability)が低減される。バキュームマットは再利用されることができ、要求される材料の量を減らすことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態および改良された形態は、従属項によって提供される。
【0015】
本発明の基本的思想は、再利用可能で、シリコーンからなるバキュームマットをバキュームバックとして用いることである。バキュームマットは、収容される補強部材の幾何学的寸法を成形する成形型(moulding component)によって形成された凹部を有する少なくとも一つの収容部を備えるように製造される。これにより、例えば、剛性を有する(プレ硬化または硬化された)または柔軟性を有する(硬化されていない)補強部材(例えば、Tストリンガ)、が挿入され、補強される繊維複合構成材上のバキュームマットに再現可能に位置決めされうる、事前に形成された「ポケット」が提供される。ポケット(補強部材のためのバキュームマット凹部)の輪郭を正確に形成することで、ネット型(net shape)と呼ばれる形状のストリンガを製造することができる。ネット型ストリンガは硬化後、構成材のミリング(milling)を未然に防ぐ。
【0016】
補強部材が挿入されたバキュームマットは、バキュームマット移動手段によって移動される。移動手段の適切なグリッパーは、対応するバキュームマットのコンタクト部と連携し、シンプルかつ容易なバキュームマットの持ち上げおよび下降を確実にする。コンタクト部は、好ましくは、バキュームマットの収容部に配置され、そして、グリッパーと機械的、空気力学的および/または電磁気的に連携(cooperation)しうる構成部材を有しうる。
【0017】
バキュームグリッパーとの連携は、例えば、コンタクト部の特定の剛性(specific rigidity)によって達成される。機械的連携(mechanical cooperation)のために、コンタクト部は、例えば、グリッパーのくいに対応したシート(seat)を備える。電磁気的連携(electromagnetic cooperation)のために、磁化部(magnetisable portion)が、例えば収容部に存在する。磁化部と電磁気的グリッパーとが接続および分離することで、磁化部が電磁気的グリッパーによって容易につかまれたり、リリースされうる。これにより、バキュームマットの迅速な持ち上げと、下降が可能になる。
【0018】
バキュームマット移動手段は、バキュームマットおよび補強される繊維複合構成材が配置されたベースプレートの適切なセンタリング手段とも連携することができる。センタリング手段は、例えばセンタリングピンと、ベースプレートの端部のセンタリング穴とから構成されうる。これにより、同一の、つまり再現可能なバキュームマットそして繊維複合構成材の補強部材の位置決めが達成される。バキュームマットが所定の位置に配置されると、グリッパーが開き、バキュームマット移動手段は、例えば、クレーンや適切なレール構造によって脇に移動される。バキュームマットが所定の位置に配置されたことは、例えばセンタリング手段のリミットスイッチ(limit switch)を介して、制御手段に通知されうる。
【0019】
バキュームマットは、外周部に配置され、接触表面に接触したときにバキュームマットを外部からシールする自己シール部を有する。シール部は、V型の沈みキー(sunk key)を有することが好ましい。これによりシンプルな自己シール(self−sealing)が実現されうる。
【0020】
形成された少なくとも一つの成形部が硬化され、そして少なくとも一つの補強部材が繊維複合構成材に接続された後に、繊維複合構成部材からバキュームマットを離す際、バキュームマットに空気またはガスが供給されうる。この目的のため、閉鎖可能な空気供給手段がバキュームマット上に配置されていることが好ましい。空気供給手段を通して、空気またはガスがバキュームマットとそのベースプレートとの間に供給される。これにより、バキュームマットの取り外しを促進させるというメリットが得られる。
【0021】
さらに、少なくとも一つの凹部が、成形型からの離型を容易にするための少なくとも一つの切れ込みを凹部の長軸の延長線上に備えることが望ましい。成形型からの離型の際、空気またはガスが供給されると、切れ込みが広がることで、凹部の広がりが促進され、凹部内に配置された補強部材が解放され、その結果エラー発生率が減少されるからである。
【0022】
バキュームマットはTストリンガおよびΩストリンガまたはIストリンガに適しうる。バキュームマットは、Uストリンガにも用いられうる。しかしながら、この場合、位置決め工程は省略される。U形状のほとんどは、繊維複合構成材の積層基材の一部であり、そしてT形状は、U形状の2つの側面から形成されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、収容部を有する本発明の第1の実施の形態のバキュームマットと、繊維複合構成材の成形部との断面の模式図である。
【図2】図2は、図1に示された収容部のAA線による断面図である。
【図3】図3は、成形部を有する繊維複合構成材の例と、本発明の第2の実施の形態のバキュームマットとの斜視図である。
【図4】図4は、図3に示された本発明の第2の実施の形態のバキュームマットと、繊維複合構成材の3つの成形部との断面の模式図である。
【図5】図5は、本発明の第1または第2の実施の形態のバキュームマットの収容部と、第1の実施の形態のバキュームマット移動手段との、断面の模式図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態のバキュームマットの収容部と、第2の実施の形態のバキュームマット移動手段との、断面の模式図である。
【図7】図7は、本発明の第4の実施の形態のバキュームマットの収容部と、第3の実施の形態のバキュームマット移動手段との、断面の模式図である。
【図8】図8は、図7の楕円で囲まれた領域の保持部の拡大模式図である。
【図9】図9は、補強された繊維複合構成材を製造するための本発明のアレンジメントの例の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図面では、特に説明する場合を除き、同一の符番は、同一のまたは同じ機能を有する構成要素を意味する。
【0026】
図1は、収容部6を有する本発明の第1の実施の形態のバキュームマット5と、繊維複合構成部材1の繊維複合構成部材部分3の成形部2の断面の模式図である(図3参照)。
【0027】
図1では、繊維複合構成材部分3は、製造用アレンジメントのベースプレート24上に配置される(図9参照)。ベースプレートについては詳細に後述する。繊維複合構成材部分3は、図示された成形部2に真空注入で導入された補強用の補強部材4(図面ではTストリンガ)を備える。
【0028】
この目的のため、補強部材4は、予めバキュームマット5の収容部6の凹部10に挿入され、完全に凹部10に包含される。凹部10は、補強部材4に対応した形状を有する。本実施の形態では、バキュームマット5はシリコーンから形成される。収容部6では、シリコーン材料からなる収容体9が補強部材4を包囲する。繊維複合構成体1が硬化される前に、補強部材4は、硬化されていてもよいし、完全硬化しない程度(すなわち柔軟性を有する程度)にプレ硬化されていてもよい。補強部材は収容体9によって支持される。
【0029】
バキュームマット5の材料(シリコーン)の(極めて柔軟で柔らかい)性質により、補強部材が挿入されたバキュームマット5は、適切なバキュームマット移動デバイス12によって、補強部材4によって補強される繊維複合構成材部分3に取り付けられる。その際、補強部材3の下部が繊維複合構成材部分3に直接接触する。バキュームマット移動デバイス12については後述する。これにより、繊維複合構成材部分3および補強部材4はバキュームマット5によって覆われる。バキュームマット5は、バキュームマットの外周部に配置された自己シール部(self−sealing portion)7によって、構造体を、外気からシールする。本実施の形態では、シール部7は、ベースプレート24に形成された溝と連携する、V字形状の沈みキー(sunk key)である。
【0030】
バキュームマット5の収容部6における凹部10は、予め形成された「ポケット」を構成する。「ポケット」はバキュームマットの製造中にダミー構成材(dummy component)によって形成される。ダミー構成材は補強部材4の等寸の複製品である。この結果、凹部に収容される補強部材4の全ての幾何学的な特性が、凹部に再現される。
【0031】
図2は、図1に示される収容部6のAA線による断面図である。図2に示されるように、凹部10は、切れ込み11によって、長軸方向に拡張される。切れ込み11によって、成形部2が硬化された後に、バキュームマット5の成形型からの離型(繊維複合構成材部分3に接続された補強部材4からのバキュームマットの持ち上げ)が容易になるというメリットが得られる。以下、このメリットについてより詳細に説明する。
【0032】
上述した例では、一つの補強部材4のみを図示し(図1)、説明したが、図3に示されるように繊維複合構成材1の補強には、複数の補強部材4が要求されることもある。図3は、本発明の第2の実施の形態のバキュームマット5と、成形部2を有する繊維複合構成材1との斜視模式図である。
【0033】
図3では、6つの補強部材4が、繊維複合構成材1の繊維複合構成材部分3上に配置され、バキュームマット5によって覆われている。本実施の形態では、バキュームマット5は、補強部材4ごとに凹部10を有する。さらに、第2の実施の形態では、バキュームマット5は、閉鎖可能な空気供給手段23を備える。バキュームマット5が成形型から離型される際、空気供給手段23を通して空気またはガスがバキュームマット5と繊維複合構成材部分3との間に供給され、離型を促進する。具体的には、図2に示された切れ込みが、供給された空気によって広げられ、収容体9がそれぞれの補強部材から容易に取り外されることを可能にする。
【0034】
図4は、図3に示された本発明の第2の実施の形態のバキュームマット5と、繊維複合構成材1の3つの成形部2との断面模式図である。閉鎖可能な空気供給手段23は、接続管を構成する。空気供給手段23の閉鎖は、バルブ(不図示)を手動、空気力学的または電気的/電磁気的に閉鎖することで達成される。これらの空気供給手段23は、真空注入の際に真空を供給するための手段としても用いられる。
【0035】
上述したように、バキュームマット5は、バキュームマット移動デバイス12によって移動される。このため、バキュームマット移動デバイス12は、バキュームマット5を持ち上げるためのグリッパー(gripper)13を有する。図5には、第1の実施の形態のグリッパー13が模式的に示される。この例では、グリッパー13は2つのグリッパーアーム14を備える。2つのグリッパーアームの上端は、グリップアームが矢印に示されるように後方および前方に回転できるようにジョイントでハサミ型に連結される。グリッパーアームの下端は、バキュームグリップ部(vacuum gripper element)15を備える。図5では、バキュームブリップ部15は、バキュームマット5の収容部6の収容体9の外側と連携する。バキュームグリップ部15との連携のため、収容部6は、補強された接触部22を有する。グリッパーアーム14は、例えば、圧縮空気を利用した、または電動の駆動装置(不図示)などによって回転される。バキュームマット5を持ち上げるには、グリッパーアームを収容部6に向けて回転させ、吸引によってバキュームマット5を引き寄せ、そしてバキュームマット5を所望の位置に移動させる。
【0036】
図5と同様に、図6は、本発明の第3の実施の形態のバキュームマット5の収容部6と、第2の実施の形態のバキュームマット移動手段12との断面の模式図である。図6に示されたバキュームマット移動手段12は、バキュームマット5の収容部6の収容体9のコンタクト部22における磁化部17と連携する電磁気的グリッパー部16を有する。本実施の形態における操作は容易に想像されうる。
【0037】
図7は、グリッパーのさらなる機械的構成を示す。図5および図6と同様に、図7は、本発明の第4の実施の形態のバキュームマット5の収容部6と、第3の実施の形態のバキュームマット移動手段12との断面の模式図である。グリッパーアーム14の下端は、本実施の形態では、直方体(立方体)の機械的グリップ部19を備える。図7の楕円で囲まれた領域の拡大模式図である図8に示されるように、機械的グリップ部19は、その長軸方向(矢印)に調節可能なくい(peg)20を有する。機械的グリップ部19は、バキュームマット5をつかむため、バキュームマット5の収容部6のコンタクト部22における噛合部(engaging element)18のシート(seat)21に、調節可能なくい20が引っ込んだ状態で挿入される。直方体19が完全にそれぞれのシート21に収容されると、くい20は、外側に飛び出し、対応する凹部に挿入され、ロック効果(locking effect)を生じさせる。くい20は、例えば電動モータや、電磁気的手段または空気力学的手段によって調節されうる。例えば、くい20は、空気力学的にバネ応力とは逆の力を加えることで引っ込み、くい20が凹部に達した際に、バネ応力によって凹部にロックされうる。さらなる機械的グリップ手段も、もちろん可能である。また、上述した例を組み合わせることも可能である。
【0038】
図9は、補強された繊維複合構成材1を製造するための例示的なアレンジメント(arrangement)と、上述したバキュームマット移動手段12との、断面の模式図である。
【0039】
バキュームマット移動手段12は、例えばモジュール化された構成を有していてもよい。これにより、バキュームマット移動手段12は、異なる寸法を有する繊維複合構成材1に容易に適合でき、例えば同じグリッパー手段13を用いることが可能となる一方で、異なるグリッパー手段13を組み合わせることも可能になる。
【0040】
図示された例では、ベースプレート24上に配置された繊維複合構成材1は、上述したように前もってバキュームマット5における凹部10に収容された4つの補強部材4によって補強される。このフィッティング工程(fitting procedure)は、例えば、異なる空間または、ベースプレート24の脇で実行される。バキュームマット移動デバイス12は、上述したように、グリップ部で補強部材4を備えるバキュームマット5をつかみ、図9に示されるようにバキュームマット5をベースプレート24に移動させる。これは、状況に応じて、例えば、クレーン装置や、レールシステムを利用した様々な方法で、実行されうる。
【0041】
相互の位置決めを容易に再現可能にするため、ベースプレート24およびバキュームマット移動手段12は、この場合、構造体デバイスの端部にセンタリング手段25を有する。センタリング手段25は、例えば、バキュームマット移動手段12に設けられたセンタリングピン(centring pin)および、ベースプレート24に設けられ、ピンに対応したシート(seat)である。
【0042】
バキュームマット5が中央に配置され、位置決めされ、シールするように配置されると、上述したようにグリッパー手段13が開き、そしてバキュームマット移動手段12がベースプレートのわきに移動される。シールは、上述されたようにV型の沈みキーからなる自己シール部によって実行される。繊維複合構成材1は、その後硬化されうる。その後、上述されたように、バキュームマット移動手段12は再び、バキュームマット5上に配置され、バキュームマット5を持ち上げる。
【0043】
アレンジメントは、センタリング手段25、バキュームマット移動デバイス12を駆動する駆動手段、グリッパー手段13を駆動する駆動手段およびさらなる表示手段やセンサー手段に接続した制御手段を有していてもよい。この結果、補強された繊維複合構成材1の製造を自動的に、実行することができ、高い生産性と低いエラー発生率を達成することができ、かつバキュームマット5を再利用することができる。
【0044】
以上、好ましい実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、様々な形態に変更してもよい。
【0045】
例えば、Tストリンガだけでなく、Ωストリンガおよび/またはIストリンガならびにUストリンガなどの他の形状を有する補強部材を本発明の手段によって取り扱ったり、加工したりすることも可能である。Uストリンガを取り扱う場合、特別な位置決め工程が採用される。
【0046】
バキュームマット5は、ストリンガ(補強部材4)だけでなく、ストリンガ保持形状(stringer retaining profile)と呼ばれる部材にも使用されうる。このように、バキュームマットは高い多用途性と、好ましい再利用可能性を有する。
【0047】
航空機および宇宙機のための繊維複合構成材1を補強する方法では、少なくとも一つの収容部6を有するバキュームマット5は、少なくとも一つの補強部材4を再現性良く収容する。少なくとも一つの補強部材4は、バキュームマット5の収容部6に挿入される。少なくとも一つの補強部材4が挿入されたバキュームマット5は、補強される繊維複合構成材1に再現性良く、シールするように取り付けられ、成形部2を形成する。そして少なくとも成形部2が硬化され、少なくとも一つの補強部材4を繊維複合構成材に接続する。その後、バキュームマット5は、補強された繊維複合構成材1から離され、再使用のために備えられる。この方法では、対応するバキュームマット5および、対応する補強された繊維複合構成材1を製造するアレンジメントが用いられうる。
【符号の説明】
【0048】
1 繊維複合構成材
2 成形部
3 繊維複合構成材部分
4 補強部材
5 バキュームマット
6 収容部
7 シール部
8 V型沈みキー
9 収容体
10 凹部
11 切れ込み
12 バキュームマット移動手段
13 グリッパー手段
14 グリッパーアーム
15 バキュームグリッパー部
16 電磁的グリッパー部
17 磁化部
18 噛合部
19 機械的グリッパー部
20 くい
21 シート
22 コンタクト部
23 空気供給手段
24 ベースプレート
25 センタリング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの補強部材(4)を収容するための、少なくとも一つの収容部(6)を有し、かつ航空機または宇宙機のための補強された繊維複合構成材(fibre composite component)(1)を製造するためのバキュームマット(5)であって、
前記少なくとも一つの収容部(6)は、前記補強部材(4)を収容するための凹部(10)と、前記凹部(10)に結合し、成形型から離型するための少なくとも一つの切れ込み(11)とを備え、
前記バキュームマット(5)は、外周に配置され、連携する接触面(associated contact surface)に接触したときに、前記バキュームマット(5)を外気からシールするための自己シール部(self−sealing portion)(7)と、バキュームマット移動手段(12)と連携する少なくとも一つのコンタクト部(22)と、を有する、バキュームマット(5)。
【請求項2】
前記凹部(10)は、成形型からの離型のために、前記凹部(10)を長軸方向に拡張する少なくとも一つの切れ込み(11)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のバキュームマット(5)。
【請求項3】
前記シール部(7)は、V型沈みキー(8)を構成することを特徴とする請求項1または2に記載のバキュームマット(5)。
【請求項4】
少なくとも一つの閉鎖可能な空気供給手段(23)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバキュームマット(5)。
【請求項5】
少なくとも一つの前記コンタクト部(22)は、少なくとも一つの前記収容部(6)に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバキュームマット(5)。
【請求項6】
少なくとも一つの前記コンタクト部(22)は、前記バキュームマット移動手段(12)のバキュームグリッパー(13、14、15)と連携しうるように、対応した剛性を有するように構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバキュームマット(5)。
【請求項7】
少なくとも一つの前記コンタクト部(22)は、前記バキュームマット移動手段(12)の磁気的および/または電磁気的グリッパー(13、14、16)と連携しうるように、対応した磁化部(magnetisable component)(17)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバキュームマット(5)。
【請求項8】
少なくとも一つの前記コンタクト部(22)は、前記バキュームマット移動手段(12)の機械的グリッパー(13、14、19)と連携しうるように、対応した噛合部(18)を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のバキュームマット(5)。
【請求項9】
前記バキュームマット(5)は、再利用可能なシリコーンバキュームバッグを構成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバキュームマット(5)。
【請求項10】
補強される繊維複合構成材(1)を支持するベースプレート(24)と;
バキュームマット(5)と;
前記バキュームマット(5)上のコンタクト部(22)と連携する少なくとも一つのグリッパー手段(13)を備え、かつ少なくとも一つ補強部材(4)が挿入された前記バキュームマット(5)を、補強される前記繊維複合構成材(1)に対して所定の位置に移動するバキュームマット移動手段(12)と;
を有し、航空機および宇宙機のための補強される前記繊維複合構成材(1)を製造するアレンジメント(arrangement)であって、
前記ベースプレート(24)および前記バキュームマット移動手段(12)は、互いに対応し、補強される前記繊維複合構成材(1)に対する前記バキュームマット(5)の再現可能な位置決めのためのセンタリング手段(25)と、互いに対応し、前記バキュームマット(5)を外気から包装シール(encircling sealing)するシール手段と、を有し、
前記バキュームマット(5)は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバキュームマットである、アレンジメント。
【請求項11】
再現可能に配置された前記バキュームマット(5)を感知し、かつ前記バキュームマット移動手段(12)を制御する制御手段と接続された表示手段(indicating means)をさらに有することを特徴とする請求項10に記載のアレンジメント。
【請求項12】
少なくとも一つの補強部材(4)を再現可能に収容できる請求項1〜9のいずれか一項に記載されたバキュームマット(5)を準備するステップと;
少なくとも一つの補強部材(4)を前記バキュームマット(5)の少なくとも一つの収容部(6)に挿入するステップと;
前記少なくとも一つの補強部材(4)が挿入された前記バキュームマット(5)を、請求項9または10に記載のアレンジメントのバキュームマット移動手段(12)で、請求項9または10に記載のアレンジメントの補強される繊維複合構成部材(1)に、シールするように再現可能に取り付け、成形部(2)を形成するステップと;
前記成形部(2)を硬化し、前記少なくとも一つの補強部材(4)を前記繊維複合構成材(1)に接続するステップと;そして
前記バキュームマット(5)を、前記バキュームマット移動手段(12)で、補強された前記繊維複合構成材(1)から離すステップと;
を有する航空機および宇宙機のための繊維複合構成材(1)を補強する方法。
【請求項13】
前記バキュームマット(5)が前記繊維複合構成材(1)から離されるとき、前記バキュームマット(5)に空気またはガスが供給されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つの補強部材(4)は、硬化されていない状態、プレ硬化された状態または硬化された状態で、前記収容部(6)に挿入されることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−506149(P2011−506149A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538525(P2010−538525)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065699
【国際公開番号】WO2009/080410
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(509203120)エアバス オペラツィオンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (67)
【Fターム(参考)】