補聴器用アンテナシステム
【課題】補聴器アンテナシステムで、改良された無線通信を提供する。
【解決手段】アンテナシステムは、電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機3を備えており、前記アンテナの第1の部分19が、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有しており、前記第1の部分19が、ユーザによって前記アンテナシステムがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分19において電流が前記ユーザの前記身体に対して実質的に直交する方向に流れるように配置されており、それによって前記アンテナから放射された電磁場が、その電場を前記ユーザの前記身体の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記身体の前記表面に沿って伝播する。両耳用補聴器システムは、少なくとも1つのそのような補聴器アセンブリ1を備える。
【解決手段】アンテナシステムは、電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機3を備えており、前記アンテナの第1の部分19が、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有しており、前記第1の部分19が、ユーザによって前記アンテナシステムがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分19において電流が前記ユーザの前記身体に対して実質的に直交する方向に流れるように配置されており、それによって前記アンテナから放射された電磁場が、その電場を前記ユーザの前記身体の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記身体の前記表面に沿って伝播する。両耳用補聴器システムは、少なくとも1つのそのような補聴器アセンブリ1を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線データ通信に適した、例えば補聴器に備えられるアンテナシステムといった、アンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器は、非常に小さく、繊細な機器であり、人間の外耳道の中に、あるいは外耳の後ろにフィットするほど小さなハウジングに入れられた、多くの電子金属部材を備えている。この多くの電子金属部材は、補聴器ハウジングの小さなサイズと組み合わさって、無線通信機能を持つ補聴器に使用される無線周波数アンテナに、高度な設計上の制約を課している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、補聴器のアンテナは、ラジオ放送や、リモコンからのコマンドを受信するために使用されている。通常、このようなアンテナは、結果として得られる放射パターンの指向性に関して特別な関心を払わずに、補聴器ハウジングに収まるように設計されている。例えば、耳掛け型(BTE:behind-the-ear)補聴器ハウジングは、通常、バナナ型の形状をした耳掛け型補聴器ハウジングの長手方向に対して、長手方向が平行となるように配置されたアンテナを収容している。挿耳型(ITE:in-the-ear)補聴器は、通常、例えばWO2005/081583に開示されているような、補聴器のフェースプレート上に配置されたパッチアンテナか、あるいは、例えばUS2010/20994に開示されているような、フェースプレートに対して垂直な方向に、補聴器ハウジングの外側へ突き出したワイヤアンテナを備えている。
【0004】
本発明は、改良された無線通信を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、上記のおよび他の目的は、電磁場の放射および受信のためのアンテナと相互接続された、無線データ通信のための送受信機を備える補聴器アセンブリを備える補聴器を提供することで実現される。その補聴器は、前記アンテナの収容のためのハウジングを備えている。前記アンテナは、第1の部分を備えている。前記第1の部分は、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有している。前記第1の部分は、ユーザによって前記ハウジングがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの耳軸(ear to ear axis)に対して実質的に平行な方向に流れるように配置されている。これによって、前記アンテナから放射された電磁場が、その電場を前記ユーザの頭部の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記頭部の前記表面に沿って伝播する。
【0006】
前記補聴器アセンブリは、典型的には、音声の受信と、受信された前記音声から相当する第1音声信号への変換のためのマイクロフォンと、前記第1音声信号から前記補聴器のユーザの聴力損失を補償する第2音声信号への処理のための信号処理装置と、前記信号処理装置の出力に接続された、第2音声信号から出力音声信号への変換のためのレシーバをさらに備えている。好ましくは、前記補聴器アセンブリは、支持要素を介して相互接続された第1の面および第2の面を有している。
【0007】
本発明の別の側面では、ユーザの身体に装着されるように構成されたアンテナシステムが提供される。前記アンテナシステムは、電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機を備えている。前記アンテナは、第1の部分を備えている。前記第1の部分は、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有している。前記第1の部分は、ユーザによって前記アンテナシステムがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの前記身体に対して実質的に直交する方向に流れるように配置されている。これによって、前記アンテナから放射された電磁場は、その電場を前記ユーザの前記身体の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記身体の前記表面に沿って伝播する。
【0008】
このようなアンテナシステムを提供することの利点は、例えば人体通信網(BAN)、あるいはウェアラブル無線人体通信網といった無線人体通信網(WBAN)と、人体の外部の送受信機の間の相互接続が実現されることである。人体の外部の送受信機は、処理ユニットであってもよく、インターネットや幾つかのコンピュータまたは処理ユニットの間での他の任意のイントラまたは相互接続を介して、継続的にまたはユーザ、オペレータ、プロバイダ、あるいはシステムが生成したトリガからの要求に応じて、オペレータ、アラームサービス、ヘルスケアプロバイダ、医師ネットワーク等に接続されるように構成されていてもよい。
【0009】
好ましくは、前記アンテナから放射された前記電磁場は、主としてユーザの頭部または身体の表面に沿って伝播する。
【0010】
以下では、主に両耳用補聴器といった補聴器に関連して本発明を説明する。しかしながら、開示される特徴および実施形態は、本発明の如何なる側面とも組み合わせて用いることができる。
【0011】
第1の部分は、前記ハウジングが前記ユーザによって動作位置に装着された場合に、励起に応じて電流が少なくとも前記第1の部分において前記ユーザの耳軸に対して実質的に平行な方向に流れる構造を持つことが好ましい。
【0012】
励起に応じて、アンテナによって放射された電磁場のかなりの部分、例えば60%、例えば80%は、電場をユーザの頭部の表面に対して実質的に直交させながら、ユーザの頭部の表面に沿って伝播する。電磁場がユーザの頭部の周りで回折されると、頭部の表面との相互作用による損失が最小化される。これにより、両耳用補聴器において通常はユーザの他方の耳に配置された第2補聴器や、例えばリモコン、電話、テレビセット、スパウスマイク、補聴器フィッティングシステム、例えばBluetooth(登録商標)ブリッジ装置といった中継部品などといった補聴器アクセサリによる、格段に改善された電磁放射の受信が実現される。
【0013】
電磁場はユーザの頭部の周りで、頭部の表面との相互作用を最小限として回折されるので、ユーザの頭部の周りでの電磁場の強度は格段に改善される。従って、ユーザの他方の耳に配置された両耳用補聴器システムの第2補聴器に設けられた、あるいは通常はユーザの前方に配置される上記のアクセサリに設けられた、他のアンテナおよび/または送受信機との相互作用が増強される。ユーザの頭部の周りの電磁場を提供することのさらなる利点は、例えばアクセサリといった外部装置との全方向の接続性を提供することである。
【0014】
アンテナの第1の部分は送受信機と接続することができ、第1の部分が電磁場の所望の伝送周波数で大振幅の電流を流すように構成することができる。これによって、アンテナにより放射され、ユーザの一方の耳のアンテナから反対側の耳へ、あるいはアクセサリといった外部装置へ伝搬する電磁場の電力の大部分は、アンテナの第1の部分により提供される。好ましくは、第1の部分を有する近接アンテナ要素と寄生アンテナ要素の電流は、その電流が第1の部分で最大電流振幅を有するように構成される。好ましくは、第1の部分は、アクセサリアンテナ要素の励起点に近接する第1の端部と、寄生アンテナ要素の励起点に近接する第2の端部を有している。寄生アンテナ要素は寄生アンテナ要素の励起点の反対側に自由端を有していてもよく、第1の部分と寄生アンテナ要素を組み合わせた長さは、電磁放射の4分の1の波長あるいはその任意の奇倍数に実質的に相当していてもよい。寄生アンテナ要素が、接地平面の短い寸法に沿って、例えば第1の部分に沿って流れる電流のさらなる励起を支援し、それによって電磁放射の表面波をさらに励起することは、有利な点である。
【0015】
アンテナの第1の部分は、ハウジングがユーザによって動作位置に装着されたときに、第1の部分の長手方向が、耳軸に対して平行となるように配置された、言い換えると、頭部または第1の部分の動作位置に近接する他の身体部分の表面に対して直交するように、あるいは実質的に直交するように配置された、第1の直線部分、すなわち、例えばロッド状の部分であってもよい。
【0016】
第1の部分を流れる電流が、ユーザの耳軸に対して平行な、あるいは実質的に平行な方向に流れるように配置された第1の部分の構成は、以下でさらに説明するような、放射された電磁場の有利な特徴により、アンテナを反対側の耳あるいは近接する反対側の耳に配置された装置との間の無線通信に適したものにする。
【0017】
好ましくは、少なくとも第1の部分を備えるアンテナは、補聴器ハウジングの内部に収容され、好ましくは、それによって補聴器ハウジングの内側に、ハウジングの外側に突き出ることなく、アンテナが配置される。
【0018】
動作中、アンテナの第1の部分がユーザの頭部の周りを伝播する電磁場に寄与し、それによってロバストで低損失な無線データ通信を提供することは、有利な点である。
【0019】
頭部の側面に対して垂直な、あるいは他の身体部分に対して垂直な電流成分により、電磁場の表面波がより効果的に励起される。これによって、例えば耳から耳への経路のゲインが、例えば10−15dB、例えば10−20dB改善される。
【0020】
アンテナはユーザの頭部の周りの回折に対して実質的にTM偏向された、例えばユーザの頭部の表面に関してTM偏向された電磁場を放射してもよい。
【0021】
アンテナは電磁場を第1の部分における電流経路の方向に放射しない、あるいは実質的に放射しないので、補聴器ハウジングがユーザの耳においてその動作位置に配置されたときに、アンテナは電磁場をユーザの耳軸の方向に放射しない、あるいは実質的に放射しない。むしろ、補聴器ハウジングが使用中その動作位置に配置されたときに、アンテナはユーザの頭部の表面に対して平行な方向に伝播する電磁場を放射する。これによって、放射された電磁場の電場は、少なくともアンテナが動作中に配置される頭部の側面に沿って、頭部の表面に対して直交する、あるいは実質的に直交する方向を有する。この場合、頭部の組織における伝送損失は、電場成分が頭部の表面に対して平行な電磁場の伝送損失よりも低減される。頭部の周りの回折は、アンテナにより放射された電磁場を一方の耳から頭部を回って他方の耳へと伝播させる。
【0022】
直線アンテナを流れる電流は、アンテナの長さに沿った定在波を形成する。そして、適切な動作のためには、直線アンテナは、直線アンテナの長さが放射された電磁場の4分の1の波長、あるいはその任意の倍数、あるいは任意の奇倍数での、共振周波数で、あるいは実質的に共振周波数で動作する。従って、第1の部分は、電磁場の所望の波長での放射に適切なアンテナの組み合わせた長さを実現するために、アンテナの第2の部分と、さらに他の部分とも、相互接続することができる。アンテナの第2の部分とさらに他の部分は、第1の部分と相互接続する寄生アンテナ要素を形成することができる。寄生アンテナ要素は、パッチ形状、ロッド形状、モノポール形状、メアンダライン形状など、あるいはそれらの任意の組み合わせに形成することができる。
【0023】
一実施形態では、ユーザによってハウジングがその動作位置に装着されたときの、ユーザの耳軸に対して実質的に平行な方向における第1の部分と寄生アンテナ要素の組み合わせた長さは、4分の1の波長、あるいは4分の1の波長の任意の倍数、あるいは奇倍数であってもよい。
【0024】
第1の部分が十分な長さを有しており、電流により形成される定在波の最大値において、およびその近傍において、アンテナを流れる全電流に比べて高い電流を流す一実施形態において、第1の部分は近接アンテナから放射される電磁場に著しく寄与する。これによって、寄生アンテナ要素の向きは、それほど重要でないか、まったく重要でなくなる。なぜなら、これらの他の要素はアンテナから放射される電磁場に著しい寄与をしないからである。
【0025】
従って、寄生アンテナ要素の電流経路の向きは、補聴器ハウジングの形状および小さな寸法、およびハウジング内の他の部品の所望の位置および形状の制限に応じて決定されてもよい。例えば、寄生アンテナ要素の第2の部分およびさらに他の部分は、ユーザの耳において補聴器ハウジングがその動作位置に装着されたときに、電流がそれらの部分を頭部の表面に対して平行な方向に流れるように配置されてもよい。寄生アンテナ要素は、寄生アンテナ要素の励起点の反対側に自由端を有することが好ましい。
【0026】
補聴器は、放射された電磁場の所望の指向特性と、ことによれば所望の偏向を実現するために、寄生アンテナ要素をさらに備えていてもよい。
【0027】
従って、第1の部分および1またはそれ以上の寄生アンテナ要素により形成されたアンテナは、電流が第1の部分の内部を使用中のユーザの耳軸に対して平行な方向に流れ、それによりアンテナ要素の組み合わされた長さが所望の電磁場の効果的な放射のための所望の長さとなるような構造を有していてもよい。所望の長さは電磁放射の4分の1の波長またはその任意の倍数、あるいはその任意の奇倍数であることが好ましい。しかしながら、アンテナが補聴器の内側にフィットし、かつ所望の無線周波数で所望の放射パターンと偏向で放射するように構成するために、アンテナを流れる電流の経路が幾つかの屈曲点を呈することも考えられる。
【0028】
アンテナ全体の物理的な長さは、アンテナを、アンテナ短縮化部品と呼ばれる、アンテナの定在波のパターンを変形し、それによりアンテナの実効長さを変化させるインピーダンスを有する電子部品と相互接続することによって、低減することができる。アンテナの必要とされる物理的な長さは、例えばアンテナをインダクタと直列に接続する、あるいはキャパシタと並列に接続することによって短縮される。
【0029】
従って、アンテナは、補聴器ハウジングがユーザの耳においてその動作位置に装着されたときに、その長手方向がユーザの耳軸に対して平行となるように補聴器ハウジングに配置された、比較的短い長さの単一の直線部分を有していてもよい。さらに、単一の直線部分、例えば第1の部分は、アンテナ短縮化部品、例えば直列インダクタと直列に接続されていてもよい。
【0030】
補聴器は、リモコンまたは電話、テレビ、テレビボックス、テレビストリーミングボックス、スパウスマイク、補聴器フィッティングシステム等の他のアクセサリと通信するためのプライマリアンテナ要素をさらに備えていてもよい。プライマリアンテナ要素は、典型的にはユーザから離れて配置された装置との通信を促進するように配置されている。従って、プライマリアンテナ要素は、電磁放射を補聴器アクセサリに放射し、電磁放射をアクセサリから受信するために、典型的にはハウジング上に、あるいはハウジングの内部に設けられている。
【0031】
アンテナの第1の部分は、第1の部分が補聴器の電子回路から給電されるように、励起点を有していてもよい。第1の部分は、能動的に励起されてもよいし、その代わりに、受動的に励起されてもよい。第1の部分とプライマリアンテナ要素は、共通の励起/給電点を有していてもよい。通常は、アンテナ要素の励起点は、接地電位、例えばゼロ電位あるいは相対的な接地電位に接続する点である。プライマリアンテナは接地平面の長辺、例えば矩形の接地平面の長辺で給電されてもよく、それによって電流は主に接地平面の短い寸法に沿って、頭部の側面に対して垂直に、あるいはアンテナシステムが取り付けられる身体部分に対して垂直に流れる。
【0032】
ユーザの身体に装着されるように構成された補聴器のアンテナ、あるいはアンテナシステムは、複数のアンテナ要素、例えばプライマリアンテナ要素、第1の部分および/または1またはそれ以上の寄生アンテナ要素を備えることができる。アンテナ要素は、補聴器またはアンテナシステムと相互作用する任意の他の装置の動作中に相互作用する別々の構造要素を形成することができる。
【0033】
例えば耳掛け型補聴器ハウジングは、通常、プライマリアンテナ要素を、それらの長手方向がバナナ形状の耳掛け型補聴器ハウジングの長手方向に対して平行となるように、その補聴器の1つの面に配置して収容する。他方、挿耳型補聴器は、通常、補聴器のフェースプレートに配置されたパッチアンテナが設けられている。
【0034】
本発明の一実施形態では、プライマリアンテナ要素は補聴器アセンブリの第1の面に設けられており、寄生アンテナ要素の少なくとも一部は、補聴器アセンブリの第2の面に設けられている。補聴器アセンブリの第1の面および第2の面は実質的に平行であって、プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素は、補聴器アセンブリの反対側の面に配置されていてもよい。プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素は、支持要素、例えばプライマリアンテナ要素および/または寄生アンテナ要素に対する接地平面、例えば接地電位平面を形成する支持要素、例えば第1の部分を備える支持要素によって接続されていてもよい。支持要素は導電要素であってもよい。
【0035】
一実施形態において、プライマリアンテナ要素は、第1の部分の少なくとも一部を励起することができ、それによって寄生アンテナ要素を励起することができる。これにより、第1の部分がアンテナを備えていないとしても、寄生アンテナ要素とプライマリアンテナ要素に対する接地平面を構成するのであれば、電流は第1の部分において誘導されるであろう。従って、第1の部分は接地平面を形成してもよく、そこではプライマリアンテナ要素の励起に応じて第1の部分において誘導された電流が流れる。従って、接地平面はプライマリアンテナ要素によって誘導された電流を導く。本発明の好ましい実施形態において、寄生アンテナの励起点は、プライマリアンテナ要素の励起点の反対側にある。
【0036】
好ましい実施形態において、プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、ユーザの身体に対して実質的に直交する、例えばユーザの耳軸に対して実質的に平行な軸に沿って、距離を置いて設けられている。その距離は、16分の1の波長と完全な波長の間、例えば16分の1の波長と4分の3の波長の間、例えば16分の1の波長と8分の5の波長の間、例えば16分の1の波長と半分の波長の間、例えば16分の1の波長と8分の3の波長の間、例えば16分の1の波長と8分の1の波長の間、であることが好ましい。幾つかの実施形態においては、より低い限界値である8分の1の波長を用いることが有利である。特に好ましい実施形態においては、第1の部分の長さは16分の1の波長と8分の1の波長の間である。最適な長さは、任意のサイズの制約や電磁場の強度を含む、幾つかの基準に基づいて選択される。
【0037】
励起に応じて、第1の部分の内部をプライマリアンテナ要素の励起点から寄生アンテナ要素の励起点へ、ユーザの耳軸に対して平行な方向に誘導電流が流れ、その電流は寄生アンテナ要素を励起するであろう。
【0038】
好ましくは、プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、それらのアンテナ要素の接地平面に設けられており、それによって、補聴器がユーザによってその動作位置に装着されたときに、プライマリアンテナ要素の励起に応じて電流が、少なくとも第1の部分を頭部に対して実質的に直交する方向に流れる。プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、耳軸に対して角度を形成する軸に沿って設けられていてもよいと考えられる。好ましい実施形態において、接地平面はプライマリアンテナ要素と寄生アンテナ要素を接続するプリント回路基板であってもよい。この場合、プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、ともにプリント回路基板に設けられる。従って、接地電位平面はプリント回路基板であってもよいが、接地電位平面はそれらのアンテナ要素の励起に応じて電流を導電可能などのような物質から形成されてもよい。接地平面は電流を導くための、例えば銅線といった単一の導電経路として形成されてもよい。
【0039】
少なくとも第1の部分の長さは、プライマリアンテナ要素の励起点から寄生アンテナ要素の励起点までの電流経路の長さとして規定される。
【0040】
寄生要素を設けることの利点は、寄生アンテナ要素が設けられていないアンテナシステムに比べて、アンテナシステムの周波数帯が格段に増えることである。プライマリアンテナと第1の部分のみを有するアンテナシステムに比べて、周波数帯は係数2で改善され、周波数帯を二倍にすることができる。好ましい実施形態において、寄生アンテナ要素はプライマリアンテナ要素の鏡像である、あるいは寄生アンテナ要素とプライマリアンテナ要素は対称なアンテナ構造を形成し、例えばそれによって、プライマリアンテナ要素はメアンダアンテナ構造を形成し、寄生アンテナ要素は対応するメアンダアンテナ構造を形成する。寄生アンテナ要素とプライマリアンテナ要素は、同一のアンテナ構造を形成してもよい。
【0041】
プライマリアンテナ要素と、第1の部分と、1またはそれ以上の寄生アンテナ要素の具体的な配置は、補聴器の形状により決定されてもよい。
【0042】
例えば、耳掛け型補聴器ハウジングは、通常、プライマリアンテナ要素を、その長手方向がバナナ形状の耳掛け型補聴器ハウジングの長手方向に対して平行となるように、補聴器の1つの面に配置して収容する。他方、挿耳型補聴器には、通常は、補聴器のフェースプレートに配置されたパッチアンテナが設けられている。
【0043】
本発明の一実施形態においては、ハウジングは、使用中ユーザの耳の後ろに配置されるように構成された、耳掛け型補聴器ハウジングであって、プライマリアンテナ要素は、補聴器アセンブリの第1の長辺に設けられおり、寄生アンテナ要素は、補聴器アセンブリの第2の長辺に設けられている。プライマリアンテナ要素と寄生アンテナ要素は、第1の部分、例えばプリント回路基板に設けられた第1の部分、例えばアンテナ等を備える支持要素を介して接続されていてもよい。あるいは、第1の部分は、それらのアンテナ要素についての接地平面を構成してもよい。
【0044】
寄生アンテナ要素、第1の部分およびプライマリアンテナ要素を備える補聴器のアンテナは、ISM周波数帯で動作するように構成されていてもよい。好ましくは、それらのアンテナは、少なくとも1GHzの周波数で、例えば1.5GHzと3GHzの間の周波数で、例えば2.4GHzの周波数で動作するように構成されている。
【0045】
本発明の上記および他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、それらの実施形態を詳細に説明することで、当業者により明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1a】ユーザの人体模型頭部モデルと、ユーザの頭部の解剖学的な幾何学構造を規定するためのx、yおよびz軸を有する三次元正規直交座標である。
【図1b】典型的な補聴器のブロック図を示す。
【図2a】頭上から見た平行アンテナ構成の頭部の周りの電場Eの強度のプロットである(従来技術)。
【図2b】頭上から見た直交アンテナ構成の頭部の周りの電場Eの強度のプロットである。
【図3】平行アンテナ構成と直交アンテナ構成の総合効率をアンテナ長さの関数として示す。
【図4】直交アンテナを有する例示的なBTE補聴器の各種部品の側面から見た図である。
【図5a】直交アンテナを有する別の例示的なBTE補聴器の各種部品の左側面から見た図である。
【図5b】図5aに示す部品の右側面から見た図である。
【図6】本発明の一実施形態において支持要素の少なくとも第1の部分にわたる電流分布のプロットである。
【図7a】プライマリアンテナ要素と少なくとも1つの寄生アンテナ要素の模式的な実施形態を示す。
【図7b】プライマリアンテナ要素と少なくとも1つの寄生アンテナ要素の模式的な実施形態を示す。
【図7c】プライマリアンテナ要素と少なくとも1つの寄生アンテナ要素の模式的な実施形態を示す。
【図8a】補聴器をユーザの左側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【図8b】補聴器をユーザの左側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【図8c】補聴器をユーザの右側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【図8d】補聴器をユーザの右側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下では、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全になるように提供され、そして完全に、当業者に本発明の範囲を伝えるであろう。
【0048】
以下では、平行アンテナまたはアンテナの平行部分とは、それぞれ、使用中ユーザの耳に着用される装置のアンテナまたはアンテナの部分であって、ユーザの耳において頭部の表面に対して平行な方向、言い換えるとユーザの耳軸に対して垂直な方向にのみ電流を流すものを意味しており、直交アンテナまたはアンテナの直交部分とは、それぞれ、使用中ユーザの耳に着用される装置のアンテナまたはアンテナの部分であって、少なくともアンテナの一部において、ユーザの耳において頭部の表面に対して直交する方向、言い換えるとユーザの耳軸に対して平行な方向に電流を流すものを意味している。
【0049】
アンテナの放射パターンは、通常、アンテナの遠方場での水平面および垂直面での放射電力の極座標プロットで示されている。プロットされた変数は、電界強度、単位立体角あたりの電力、または指向性利得である。ピークの放射は、最大利得の方向に発生する。
【0050】
人体に近接する無線通信用のアンテナを設計する際、人間の頭部は、鼻、耳、口および目といった感覚器官が取り付けられた、丸みを帯びた輪郭により近似することができる。このような丸みを帯びた輪郭9が図1aに示されている。図1aでは、人体模型頭部モデルとともに、頭部に対する方向を定義するx、yおよびz軸を持つ通常の三次元直交座標系が示されている。
【0051】
頭部の表面のすべての点が、法線ベクトルと接線ベクトルを有している。法線ベクトルは頭部の表面に直交しており、接線ベクトルは頭部の表面に平行である。頭部の表面に沿って伸びるエレメントは、頭部の表面に対して平行であると言うことができ、頭部の表面上の点から伸びており、頭部から周囲の空間へ放射状に外側に向けて伸びるオブジェクトは、頭部に対して直交すると言う事ができる。
【0052】
例えば、図1aの頭部の表面上で最も左側にある図1aの参照符号8の点は、座標系のyz平面に対して平行な接線ベクトルと、x軸に対して平行な法線ベクトルを有している。従って、y軸とz軸は点8において頭部の表面に対して平行であり、x軸は点8において頭部の表面に対して直交している。
【0053】
図1aの人体模型の頭部でモデル化されたユーザは、地面(図示していない)に直立しており、地面はxy平面に対して平行である。従って、ユーザの頭からつま先へ伸びる胴体軸はz軸に対して平行であり、ユーザの鼻はy軸に沿って紙面の外側を指し示している。
【0054】
右外耳道と左外耳道を通る軸は、図中のx軸に対して平行である。従って、耳から耳への軸(耳軸)は、それが頭部の表面を離れる点において、頭部の表面に直交している。耳軸は、頭部の表面と同様に、以下において、本発明の要素の具体的な形態を記述する際に、基準として使用される。
【0055】
耳介の面の向き方は人によって異なっているにも関わらず、耳介は、ほとんどの被験者において、主に頭部の表面に対して平行な平面内に位置しているから、耳軸は耳に対して直交する役割も有していると、しばしば表現される。
【0056】
外耳道挿入型の補聴器は、外耳道にフィットする形状の細長いハウジングを有している。そして、この種の補聴器の長手方向軸は、耳軸に対して平行である。通常は、耳掛け型の補聴器も、耳介の頂部に掛けるために、よくバナナのような形状とされる細長いハウジングを有している。従って、この種の補聴器ハウジングは、ユーザの頭部の表面に対して平行な長手方向軸を有している。
【0057】
図1aを参照すると、耳掛け型の装置の長さは、主にy軸に沿って測定されるのに対して、幅はx軸に沿って測定され、高さはz軸に沿って測定される。
【0058】
図1bに、典型的な(従来技術の)聴覚装置のブロック図を示す。補聴器は、入って来る音声を受信し、それを音声信号に変換するマイクロフォン101を備えている。レシーバ102は、聴覚装置プロセッサ103からの出力を、例えばユーザの聴覚障害を補償するために修正された出力音声に変換する。従って、聴覚装置プロセッサ103は、アンプ、コンプレッサおよび雑音抑制システムなどの要素を備えていてもよい。適切な動作のためには、ロッド状のアンテナは、通常、所望の周波数において、放射された電磁場の波長の4分の1にほぼ等しい長さを有している。従来、直交するロッド状のアンテナは、補聴器ハウジングから部品を突出させることなく、ハウジングの内部に収容するには、あまりにも長いものとなっている。
【0059】
図2aおよび図2bは、人間の一方の耳に配置されたアンテナによって電磁場が放射された場合の、人間の頭部の回りで広がる電磁場の電力を示している。電磁場は人間の頭上から観察されている。電力値はグレーレベルで示されており、黒は高い電力を示し、白は低い電力を示している。
【0060】
図2aにおいて、電磁場は平行なロッドアンテナによって放射されている。アンテナは図2aの左側に、白いロッドとして白く示されている。図2aは従来技術の平行なアンテナがどのように動作するかを示している。プロットは、頭部の周りの電磁場の強度を示している。プロットにおける電磁場の強度は、グレーレベルの色調により示されている。例えば、放射するアンテナの周りのプロットは黒である。従って、アンテナの周りの電磁場の強度は強い。アンテナからの距離が増加するにつれて、グレーレベルは薄くなっていく。頭部の反対側における受信アンテナにおける電磁場の強度は非常に小さく、受信アンテナの周りのプロットはほとんど白である。従って、人間の両耳に取り付けられた装置の平行アンテナを用いて信頼性の高い無線通信を実現するためには、それらの装置が受信信号を増幅するための強力なアンプ、および/または高電力で電磁信号を送信するための強力なアンプを備えていなければならない。補聴器においては、バッテリが補聴器の回路に提供する電力は小さく、限られた電力容量しか有していないので、これは望ましいことではない。
【0061】
図2bでは、直交するロッドアンテナによって電磁場が放射されている。ここでも、アンテナは図2bの左側に、白いロッドとして示している。
【0062】
電場の強度は、図2aと同様に、頭部の周りにプロットされている。頭部の反対側の受信アンテナにおける電磁場の強度は図2aよりも大きく、従って人間の両耳に取り付けられた装置の直交アンテナの間では、強力なアンプを必要とすることなく、信頼性の高い無線通信を確立することができることに気が付くであろう。
【0063】
このような改善は、平行なロッドアンテナが電磁場を主にアンテナの位置において頭部の表面に垂直な方向に放射しており、電磁場の電場が頭部の表面に対して平行であって、頭部の組織における抵抗性の伝送損失を増大させるという事実によるものと考えられる。
【0064】
これに対し、直交するロッドアンテナは、主に頭部の表面に対して平行な方向に電磁場を放射しており、頭部の周りの電磁場の伝送を容易としている。また、電磁場の電場が頭部の表面に対して垂直であって、それにより頭部の組織による伝送損失が低減されている。
【0065】
補聴器ハウジング内で利用可能な限られたスペースは、補聴器ハウジングの内部に直交するロッドアンテナを収容することを困難にしている。しかしながら、反対側の耳において受信される放射された電磁場の一部に対して大きく寄与するロッドアンテナの一部が、その直交する方向を維持している限り、ロッド状のアンテナが、大幅に性能を悪化させることなく、1またはそれ以上の屈曲部を備えることができることが示されている。
【0066】
動作中、ロッドアンテナは定在波の電流を流す。ロッドアンテナの自由端は、電流がゼロである定在波のノードを構成する。従って、ロッドアンテナの自由端に近い部分は、放射された電磁信号の磁場のほとんどの部分について貢献していない。補聴器の送受信回路に接続され電流が供給されるロッドアンテナの付け根において、電流は最大振幅を有し、従ってアンテナの付け根に近い部分、あるいはアンテナの給電点または励起点は、放射された電磁場の磁場のかなりの部分に貢献する。
【0067】
従って、好ましくは、アンテナの付け根に近い部分、あるいはアンテナの励起点は、ユーザの耳に所望の動作位置で配置されたときに、ユーザの頭部の表面に対して直交する長手方向を有するアンテナの第1の部分を構成する。アンテナの残りの部分の向きは、ユーザーの反対側の耳において電磁場が所望の電力を得るためには重要ではないが、その(それらの)部分は、所望の無線周波数での適切な動作のために必要な長さ、例えば電磁場の波長の4分の1またはその倍数に等しい長さ、あるいはほぼ等しい長さをアンテナが有するために、必要とされる。
【0068】
図3では、人間の頭部の周りの経路損失に関して、平行なモノポールロッドアンテナと直交するモノポールロッドアンテナの総合的な効率を、物理的なアンテナの長さの関数として比較している。アンテナの共振周波数は、直列インダクタンスを使用することで、同一に保たれている。最も短い直交アンテナでさえ、最も長い平行アンテナに比べて、頭部の反対側における電磁場を確立する上でより効果的であることに留意すべきである。
【0069】
図4はユーザによって所望の動作位置にハウジングが取り付けられたときに、長手方向がユーザの耳軸に対して実質的に平行となるように配置された第1の部分10を備えるアンテナ10、5を備えるBTE補聴器の各種部品のアセンブリ1を示している。第1の直線部分10は、補聴器アセンブリの上面16に配置されており、アセンブリ1の上面16の幅全体にわたって伸びている。第1の直線部分10は、プリント回路基板6から給電される。アンテナはさらに、長手方向が第1の直線部分10の長手方向に対して実質的に垂直であり、BTE補聴器アセンブリ1の側面に対して実質的に平行な、第2の直線部分5を備えている。アンテナは、長手方向が第1の部分10および第2の直線部分5の双方に対して実質的に垂直であり、アセンブリの側面11に対して実質的に平行、すなわちBTE補聴器ハウジングに対して実質的に平行な第3の直線部分14で終端している。補聴器アセンブリ1の全体を収容するBTE補聴器ハウジング15は、図4において破線で示されている。
【0070】
アンテナの第1の直線部分10、第2の直線部分5および第3の直線部分14は電気的に相互接続されており、相互接続された第1の直線部分、第2の直線部分および第3の直線部分が、必要な長さのアンテナを形成している。第2の部分と第3の部分が、寄生アンテナ要素を形成している。第1の直線部分10と第2の直線部分5の接続部は、通常は、補聴器アセンブリ1の上面16およびアセンブリの側面11が交差する箇所に配置されている。電流が励起点17を通って第1の直線部分10に流入すると、続いて2つの部分が接続する屈曲部を通過して、第2の直線部分5に電流が流入する。
【0071】
第2の直線部分5および第3の直線部分14は、補聴器アセンブリの右側面11または左側面12に沿って伸びており、従って、補聴器ハウジング15の内部の右側面または左側面に沿って伸びている。そして、アンテナは他の部品との電気的な接続を持たない自由端で終端している。従って、アンテナの内部の電流は、自由端でゼロまたはノードを有し、アンテナ電流は励起点において最大の大きさを有する。
【0072】
図示された部品のアセンブリ1は、補聴器ハウジング15(破線)内に収容される。図示されたBTE補聴器では、バッテリ2は補聴器ハウジングの後部に収納され、送受信機3は補聴器のアセンブリ1の中央に収納される。バッテリ2は、ユーザの鼓膜に向けて放射する音声を生成し、無線データ通信を行うための送受信機3を含み、少なくともプライマリアンテナ要素に相互接続された、補聴器の回路および構成部品に電力を供給する。送受信機3は、それぞれ音声を生成するためのものと、無線データ通信のためのものである、2つの分離された送受信機として設けられていてもよい。補聴器の信号処理装置(図示せず)は、プリント回路基板6上に配置されている。
【0073】
補聴器がユーザの耳においてその動作位置に取り付けられると、アンテナの第1の直線部分10、第2の直線部分5および第3の直線部分14の間の直交する角度が、ユーザの頭部の表面に対して平行な電磁波の放射と、頭部の表面に対して直交する電磁場を提供する。
【0074】
直交アンテナを備える別の例示的なBTE補聴器では、直交アンテナは比較的短い単一の直線部分を有している。単一の直線部分は、補聴器ハウジング内において、補聴器がユーザの耳において動作位置に配置されたときに、長手方向がユーザの頭部の表面に対して直交するように、あるいは実質的に直交するように配置されている。さらに、単一の直線部分はアンテナ短縮化部品、例えば直列インダクタ、あるいは寄生アンテナ要素と直列に接続されている。
【0075】
しかしながら、アンテナおよびアンテナの形態についてのさらに別の実施形態についても考えることができる。
【0076】
好ましくは、プライマリアンテナ要素は、例えばリモコン、携帯電話、テレビなどの外部の装置とも通信することができる。一般的には、アンテナのそれぞれの部分は、多種多様な幾何学形状に形成することができる。互いに関連して、少なくとも1つの導電部分が主に耳軸に対して平行な(耳に近接する点8においてユーザの頭部9の表面に対して直交する)電流を流し、それにより頭部の周りの表面での電磁波の伝送が実質的に減衰されないように、電磁場が所望の方向および所望の極性で放射されるための、上記の関連する形態に従う限り、それらはワイヤまたはパッチであってよいし、曲がっていても真っ直ぐでもよいし、長くても短くてもよい。好ましくは、少なくとも一つの導電部分は、励起点の近くに設けられる。
【0077】
障害物を含む通信を考慮する場合は、具体的な波長、従って放射された電磁場の周波数が重要となる。本発明では、障害物は頭部の表面の近くに配置されたアンテナを備える補聴器を有する頭部である。例えば1GHzの周波数のように、波長が長過ぎてより低い周波数に低減する場合、頭部のより多くの部分が近接場領域に位置することになる。この結果、様々な回折により、電磁場が頭部の周りを伝搬することがより困難になる。他方で、波長が短過ぎる場合、頭部は大きすぎる障害物となって、この場合も電磁波が頭部の周りを伝搬することが困難になる。従って、長い波長と短い波長の間で最適化することが好ましい。一般に、耳から耳への通信は、産業、科学および医療用の周波数帯で、2.4GHzを中心とする所望の周波数を用いて行われる。
【0078】
図5aおよび図5bは、別の実施形態に係る直交アンテナを備えた別のBTE補聴器についての、補聴器の各種部品のアセンブリ1の両側面を示している。
【0079】
BTE補聴器の図示された補聴器アセンブリは、バッテリ2、送受信機3、プリント回路基板6、内部の壁の部品、すなわち補聴器アセンブリの第1の側面11および第2の側面12、およびプライマリアンテナ要素7を含んでいる。プライマリアンテナ要素は、平行アンテナとして構成されている。信号処理装置(図示せず)は、プリント回路基板6上に配置されている。
【0080】
図5aにおいて、プライマリアンテナ要素7は、補聴器ハウジングの第1の(右側の)側面12に配置されている。しかしながら、プライマリアンテナ要素7は、ハウジングの第2の(左側の)側面、ハウジングの上面、ハウジングの前面、ハウジングの後面、あるいはハウジングの下面に配置されていてもよい。プライマリアンテナ要素7の許容される長さは、それが配置されるハウジングの面の長さにより制限される。その面が長いほど、その部分も長くすることができる。一般に、プライマリアンテナ要素の長さは、動作周波数、アンテナを流れる電流の群速度、および所望のゼロ点の個数によって規定される。通常は、その速度は自由空間における光速度によって近似される。波の4分の1の長さのアンテナは、励起点において最大の大きさの電流を有し、アンテナの終端部においてゼロ点を有するであろう。
【0081】
プライマリアンテナ要素7は、補聴器の電子機器を相互作用から保護する場合は受動要素として機能し、あるいは特定の放射パターンに対して構成されたアンテナの一部として機能するであろう。図5a、図5bに示す実施形態において、プライマリアンテナ要素7はプリント回路基板の励起点17から励起されている能動要素であり、周囲の空間に電磁場を放射する。ハウジングのどの面にプライマリアンテナ要素が配置されるかに応じて、放射された電場は、ユーザの頭部9に関して、わずかに異なる特性と放射パターンを有することになるであろう。
【0082】
図5bは、図5aに示すBTE補聴器アセンブリ1の第2の側面、この場合は左側の側面から見た図であり、寄生アンテナ要素5を示している。寄生アンテナ要素5は、電荷の流れを導通するために、金属または類似の材料から構成される。寄生アンテナ要素は、補聴器ハウジングの何れの面に配置されていてもよい。
【0083】
プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素は、プライマリアンテナ要素に対する接地平面を形成する、支持要素あるいは接続要素6、この場合はプリント回路基板6を介して相互接続されている。この場合、プライマリアンテナ要素の励起により、電磁場により生成された電流は、支持要素6の少なくとも第1の部分19において、その最大値を有しており、プライマリアンテナ要素から寄生アンテナ要素へ流れて、寄生アンテナ要素を励起する。第1の部分は支持要素の全体またはその任意の部分を備えていてもよい。
【0084】
好ましくは、寄生アンテナ要素5の励起点18は、プライマリアンテナ要素7の励起点17から耳軸に実質的に平行な軸に沿って距離を置いて配置されている。好ましくは、寄生アンテナ要素5の励起点18とプライマリアンテナ要素7の励起点17は、補聴器アセンブリ1の反対側の面に配置されている。しかしながら、励起点17,18が耳軸に対して実質的に平行な軸に沿って距離を置いて設けられている限り、平行またはプライマリアンテナ要素7および/または寄生アンテナ要素5の少なくとも一部は、補聴器の何れの面に設けられていてもよいことが予想される。
【0085】
さらに、プライマリアンテナ要素7および/または寄生アンテナ要素の少なくとも一部は、支持要素に沿って伸びていてもよい。好ましくは、支持要素の第1の部分19は、放射された電磁場の16分の1の波長と完全な波長の間にあって、その長さは励起点17,18の間の最大電流の経路に沿って測定される。
【0086】
図5bでは、寄生アンテナ要素5はアセンブリ1の左側面11に配置されている。寄生アンテナ要素5は、補聴器における他の要素に接続していない独立した要素であってもよいし、例えばプリント回路基板6を介してプライマリアンテナ要素7に動作可能に接続されていてもよい。
【0087】
図5bでは、プライマリアンテナ要素7と寄生アンテナ要素5を相互接続する回路基板6の導電部分が、例示された補聴器の直交アンテナの第1の部分を構成している。これは、相互接続を第1の部分の長手方向の所望の位置に配置し、それによってユーザの反対側の耳において受信される電磁場の所望の部分の放射のために第1の部分の所望の電流経路を形成するためである。
【0088】
図5bの実施形態において、3つの導電部分、すなわちプライマリアンテナ要素7、寄生アンテナ要素5、およびプリント回路基板6は、互いに関して、補聴器がユーザの頭部9に配置され、電流が導電要素を流れるときに、上述のような電磁場の放射のために、第3の導電要素6の電流が耳軸に対して平行な方向に流れるように構成されている。従って、補聴器は使用中に耳に装着され、頭部におけるこの位置では、耳軸に対して平行な導電要素は頭部の表面に対して直交するから、導電部分は、第1の部分を構成しており、直交している。
【0089】
プライマリアンテナ要素7と寄生アンテナ要素5を相互接続する回路基板6の上記部分の電流は、放射された電磁場が頭部の表面に対して実質的に平行に伝播するためには、耳軸に対して実質的に平行な方向に流れなければならない。従って、頭部の反対側の耳に到達するまで、電磁場は頭部の表面に沿って伝播する。
【0090】
アンテナの放射パターンの構成はサイドローブを有しているかも知れないが、放射された電力のほとんどは頭部の表面に対して平行に伝播する。
【0091】
図5に示す直交アンテナの3つの部分の構成は、さらに、放射された電磁場の全体がTMモードに偏向されて、電場が頭部の表面に対して直交し、あるいは実質的に直交して、電磁場が頭部の組織において、抵抗性の伝送損失なしに、あるいは低い抵抗性の伝送損失で伝播するという特性を有している。
【0092】
好ましくは、効果的な放射を実現するために、アンテナの第1の部分の電流経路の長さは、耳軸に対して平行な(ユーザの耳において補聴器の動作位置の近くで頭部の表面に対して直交する)プリント回路基板6に配置されている例示された実施例において、それが配置されている補聴器アセンブリの面の長さに等しい。この構成は、例えば、上記の導電部分を補聴器アセンブリの上面に配置し、プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素5を右側面および左側面にそれぞれ配置することで、実現することができる。例示された補聴器が耳の後ろの動作位置に配置されている場合、第3の部分は、第1の部分を構成し、直交しており、ハウジングの上面全体に沿って伸びているであろう。さらに、支持要素の少なくとも第1の部分において最大電流を実現するために、第1の部分が、放射された電磁場の16分の1の波長から完全な波長までの間の長さを有することが好ましい。
【0093】
図6に第1の部分19における典型的な電流分布を示す。第1の部分は、プライマリアンテナ要素についての励起点17によって励起され、最大電流20は寄生アンテナ要素についての励起点18への最短経路に沿っている。
【0094】
直交アンテナを備える別の例示的なBTE補聴器では、直交アンテナは比較的短い単一の直線部分を有している。単一の直線部分は、補聴器がユーザの耳において動作位置に配置されたときに、長手方向がユーザの頭部の表面に対して直交する、あるいは実質的に直交するように、補聴器ハウジングに配置されている。さらに、単一の直線部分は、アンテナ短縮化部品、例えば直列インダクタと直列に接続されている。
【0095】
しかしながら、アンテナとアンテナの構成については、他の実施形態を考えることもできるであろう。
【0096】
図7a−図7cに、考えられるアンテナ設計の幾つかを模式的に示す。補聴器のアセンブリ1を上面から見ており、アンテナおよびアンテナ励起点の位置が図示されている。
【0097】
図7aは、励起点17を有するプライマリアンテナ要素21を示す。サポート(接続)要素23は、プライマリアンテナ要素21の接地平面を形成しており、寄生アンテナ要素22についての励起点18は、プライマリアンテナ要素21の励起点17から、耳軸に対して実質的に平行な軸に沿って距離を置いて配置されている。支持要素23の第1の部分19は、本実施例では、補聴器の全体の幅を超えて伸びることはない。
【0098】
図7bは、励起点17,18の間の距離が補聴器アセンブリの幅に相当する場合の例を示す。図7cでは、励起点17,18が耳軸に対して直交する軸に沿って互いに距離を置いて配置されている代替実施形態を示す。この場合、寄生アンテナ要素22は、最大電流が頭部に直交するアンテナの部分において提供されるように、アンテナ短縮化部品に接続されていることが好ましい。
【0099】
好ましい実施形態において、プライマリアンテナ要素21と寄生アンテナ要素22は同一のアンテナ構造を形成している。例えば、プライマリアンテナ要素21と寄生アンテナ要素22の双方ともが、同一形態と同一寸法を有するアンテナ構造を形成していてもよく、アンテナ要素21,22のそれぞれが、例えば同一寸法と同一形態を有するメアンダラインアンテナを形成していてもよい。
【0100】
図面では耳掛け型補聴器のみを示しているものの、説明されたアンテナ構造は、ユーザが補聴器をその動作位置に装着したときに、第1の部分が電流をユーザの耳軸に対して平行な方向に導くように形成されている限り、挿耳型補聴器を含む他の全ての形式の補聴器についても同様に適用可能であることが把握されるであろう。
【0101】
図8は本発明に係る補聴器についての指向性のプロットを示している。補聴器がユーザの右手側に配置された場合とユーザの左手側に配置された場合の間で、相違は極めて小さいことが分かる。この相違は、アンテナ配置のミラーリングによるものであって、左手側の装置については、右手側の装置に比べて、プライマリアンテナ要素が頭部からより遠くに配置されている。従って、本発明の補聴器の利点は、外部のアクセサリや、両耳用補聴器における2つの補聴器の他方への無線接続に対する影響を最小限に抑えながら、ユーザの右手側および左手側において用いることができるであろう。
【0102】
図8aは、φ=0°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、図8bはφ=90°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、何れもユーザの左手側の位置に配置された本発明に係る補聴器について、2441MHzにおけるものである。
【0103】
図8cはφ=0°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、図8dはφ=90°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、何れもユーザの右手側の位置に配置された本発明に係る補聴器について、2441MHzにおけるものである。
【0104】
一般的には、アンテナの様々な部分を多様な幾何学的形状に形成することができる。互いに関連して、少なくとも1つの導電部分が、主に耳軸に対して平行な(耳に近接する点8においてユーザの頭部9の表面に対して直交する)電流を流し、それにより頭部の周りの表面での電磁波の伝送が減衰されないように、電磁場が所望の方向および所望の極性で放射されるための、上記の関連する形態に従う限り、それらはワイヤまたはパッチであってよいし、曲がっていても真っ直ぐでもよいし、長くても短くてもよい。
【0105】
障害物を含む通信を考慮する場合は、具体的な波長、従って放射された電磁場の周波数が重要となる。本発明では、障害物は頭部の表面の近くに配置されたアンテナを備える補聴器を有する頭部である。例えば1GHzの周波数のように、波長が長過ぎてより低い周波数に低減する場合、頭部のより多くの部分が近接場領域に位置することになる。この結果、様々な回折により、電磁場が頭部の周りを伝搬することがより困難になる。他方で、波長が短過ぎる場合、頭部は大きすぎる障害物となって、この場合も電磁波が頭部の周りを伝搬することが困難になる。従って、長い波長と短い波長の間で最適化することが好ましい。一般に、耳から耳への通信は、産業、科学および医療用の周波数帯で、2.4GHzを中心とする所望の周波数を用いて行われる。
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線データ通信に適した、例えば補聴器に備えられるアンテナシステムといった、アンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
補聴器は、非常に小さく、繊細な機器であり、人間の外耳道の中に、あるいは外耳の後ろにフィットするほど小さなハウジングに入れられた、多くの電子金属部材を備えている。この多くの電子金属部材は、補聴器ハウジングの小さなサイズと組み合わさって、無線通信機能を持つ補聴器に使用される無線周波数アンテナに、高度な設計上の制約を課している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、補聴器のアンテナは、ラジオ放送や、リモコンからのコマンドを受信するために使用されている。通常、このようなアンテナは、結果として得られる放射パターンの指向性に関して特別な関心を払わずに、補聴器ハウジングに収まるように設計されている。例えば、耳掛け型(BTE:behind-the-ear)補聴器ハウジングは、通常、バナナ型の形状をした耳掛け型補聴器ハウジングの長手方向に対して、長手方向が平行となるように配置されたアンテナを収容している。挿耳型(ITE:in-the-ear)補聴器は、通常、例えばWO2005/081583に開示されているような、補聴器のフェースプレート上に配置されたパッチアンテナか、あるいは、例えばUS2010/20994に開示されているような、フェースプレートに対して垂直な方向に、補聴器ハウジングの外側へ突き出したワイヤアンテナを備えている。
【0004】
本発明は、改良された無線通信を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、上記のおよび他の目的は、電磁場の放射および受信のためのアンテナと相互接続された、無線データ通信のための送受信機を備える補聴器アセンブリを備える補聴器を提供することで実現される。その補聴器は、前記アンテナの収容のためのハウジングを備えている。前記アンテナは、第1の部分を備えている。前記第1の部分は、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有している。前記第1の部分は、ユーザによって前記ハウジングがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの耳軸(ear to ear axis)に対して実質的に平行な方向に流れるように配置されている。これによって、前記アンテナから放射された電磁場が、その電場を前記ユーザの頭部の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記頭部の前記表面に沿って伝播する。
【0006】
前記補聴器アセンブリは、典型的には、音声の受信と、受信された前記音声から相当する第1音声信号への変換のためのマイクロフォンと、前記第1音声信号から前記補聴器のユーザの聴力損失を補償する第2音声信号への処理のための信号処理装置と、前記信号処理装置の出力に接続された、第2音声信号から出力音声信号への変換のためのレシーバをさらに備えている。好ましくは、前記補聴器アセンブリは、支持要素を介して相互接続された第1の面および第2の面を有している。
【0007】
本発明の別の側面では、ユーザの身体に装着されるように構成されたアンテナシステムが提供される。前記アンテナシステムは、電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機を備えている。前記アンテナは、第1の部分を備えている。前記第1の部分は、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有している。前記第1の部分は、ユーザによって前記アンテナシステムがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの前記身体に対して実質的に直交する方向に流れるように配置されている。これによって、前記アンテナから放射された電磁場は、その電場を前記ユーザの前記身体の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記身体の前記表面に沿って伝播する。
【0008】
このようなアンテナシステムを提供することの利点は、例えば人体通信網(BAN)、あるいはウェアラブル無線人体通信網といった無線人体通信網(WBAN)と、人体の外部の送受信機の間の相互接続が実現されることである。人体の外部の送受信機は、処理ユニットであってもよく、インターネットや幾つかのコンピュータまたは処理ユニットの間での他の任意のイントラまたは相互接続を介して、継続的にまたはユーザ、オペレータ、プロバイダ、あるいはシステムが生成したトリガからの要求に応じて、オペレータ、アラームサービス、ヘルスケアプロバイダ、医師ネットワーク等に接続されるように構成されていてもよい。
【0009】
好ましくは、前記アンテナから放射された前記電磁場は、主としてユーザの頭部または身体の表面に沿って伝播する。
【0010】
以下では、主に両耳用補聴器といった補聴器に関連して本発明を説明する。しかしながら、開示される特徴および実施形態は、本発明の如何なる側面とも組み合わせて用いることができる。
【0011】
第1の部分は、前記ハウジングが前記ユーザによって動作位置に装着された場合に、励起に応じて電流が少なくとも前記第1の部分において前記ユーザの耳軸に対して実質的に平行な方向に流れる構造を持つことが好ましい。
【0012】
励起に応じて、アンテナによって放射された電磁場のかなりの部分、例えば60%、例えば80%は、電場をユーザの頭部の表面に対して実質的に直交させながら、ユーザの頭部の表面に沿って伝播する。電磁場がユーザの頭部の周りで回折されると、頭部の表面との相互作用による損失が最小化される。これにより、両耳用補聴器において通常はユーザの他方の耳に配置された第2補聴器や、例えばリモコン、電話、テレビセット、スパウスマイク、補聴器フィッティングシステム、例えばBluetooth(登録商標)ブリッジ装置といった中継部品などといった補聴器アクセサリによる、格段に改善された電磁放射の受信が実現される。
【0013】
電磁場はユーザの頭部の周りで、頭部の表面との相互作用を最小限として回折されるので、ユーザの頭部の周りでの電磁場の強度は格段に改善される。従って、ユーザの他方の耳に配置された両耳用補聴器システムの第2補聴器に設けられた、あるいは通常はユーザの前方に配置される上記のアクセサリに設けられた、他のアンテナおよび/または送受信機との相互作用が増強される。ユーザの頭部の周りの電磁場を提供することのさらなる利点は、例えばアクセサリといった外部装置との全方向の接続性を提供することである。
【0014】
アンテナの第1の部分は送受信機と接続することができ、第1の部分が電磁場の所望の伝送周波数で大振幅の電流を流すように構成することができる。これによって、アンテナにより放射され、ユーザの一方の耳のアンテナから反対側の耳へ、あるいはアクセサリといった外部装置へ伝搬する電磁場の電力の大部分は、アンテナの第1の部分により提供される。好ましくは、第1の部分を有する近接アンテナ要素と寄生アンテナ要素の電流は、その電流が第1の部分で最大電流振幅を有するように構成される。好ましくは、第1の部分は、アクセサリアンテナ要素の励起点に近接する第1の端部と、寄生アンテナ要素の励起点に近接する第2の端部を有している。寄生アンテナ要素は寄生アンテナ要素の励起点の反対側に自由端を有していてもよく、第1の部分と寄生アンテナ要素を組み合わせた長さは、電磁放射の4分の1の波長あるいはその任意の奇倍数に実質的に相当していてもよい。寄生アンテナ要素が、接地平面の短い寸法に沿って、例えば第1の部分に沿って流れる電流のさらなる励起を支援し、それによって電磁放射の表面波をさらに励起することは、有利な点である。
【0015】
アンテナの第1の部分は、ハウジングがユーザによって動作位置に装着されたときに、第1の部分の長手方向が、耳軸に対して平行となるように配置された、言い換えると、頭部または第1の部分の動作位置に近接する他の身体部分の表面に対して直交するように、あるいは実質的に直交するように配置された、第1の直線部分、すなわち、例えばロッド状の部分であってもよい。
【0016】
第1の部分を流れる電流が、ユーザの耳軸に対して平行な、あるいは実質的に平行な方向に流れるように配置された第1の部分の構成は、以下でさらに説明するような、放射された電磁場の有利な特徴により、アンテナを反対側の耳あるいは近接する反対側の耳に配置された装置との間の無線通信に適したものにする。
【0017】
好ましくは、少なくとも第1の部分を備えるアンテナは、補聴器ハウジングの内部に収容され、好ましくは、それによって補聴器ハウジングの内側に、ハウジングの外側に突き出ることなく、アンテナが配置される。
【0018】
動作中、アンテナの第1の部分がユーザの頭部の周りを伝播する電磁場に寄与し、それによってロバストで低損失な無線データ通信を提供することは、有利な点である。
【0019】
頭部の側面に対して垂直な、あるいは他の身体部分に対して垂直な電流成分により、電磁場の表面波がより効果的に励起される。これによって、例えば耳から耳への経路のゲインが、例えば10−15dB、例えば10−20dB改善される。
【0020】
アンテナはユーザの頭部の周りの回折に対して実質的にTM偏向された、例えばユーザの頭部の表面に関してTM偏向された電磁場を放射してもよい。
【0021】
アンテナは電磁場を第1の部分における電流経路の方向に放射しない、あるいは実質的に放射しないので、補聴器ハウジングがユーザの耳においてその動作位置に配置されたときに、アンテナは電磁場をユーザの耳軸の方向に放射しない、あるいは実質的に放射しない。むしろ、補聴器ハウジングが使用中その動作位置に配置されたときに、アンテナはユーザの頭部の表面に対して平行な方向に伝播する電磁場を放射する。これによって、放射された電磁場の電場は、少なくともアンテナが動作中に配置される頭部の側面に沿って、頭部の表面に対して直交する、あるいは実質的に直交する方向を有する。この場合、頭部の組織における伝送損失は、電場成分が頭部の表面に対して平行な電磁場の伝送損失よりも低減される。頭部の周りの回折は、アンテナにより放射された電磁場を一方の耳から頭部を回って他方の耳へと伝播させる。
【0022】
直線アンテナを流れる電流は、アンテナの長さに沿った定在波を形成する。そして、適切な動作のためには、直線アンテナは、直線アンテナの長さが放射された電磁場の4分の1の波長、あるいはその任意の倍数、あるいは任意の奇倍数での、共振周波数で、あるいは実質的に共振周波数で動作する。従って、第1の部分は、電磁場の所望の波長での放射に適切なアンテナの組み合わせた長さを実現するために、アンテナの第2の部分と、さらに他の部分とも、相互接続することができる。アンテナの第2の部分とさらに他の部分は、第1の部分と相互接続する寄生アンテナ要素を形成することができる。寄生アンテナ要素は、パッチ形状、ロッド形状、モノポール形状、メアンダライン形状など、あるいはそれらの任意の組み合わせに形成することができる。
【0023】
一実施形態では、ユーザによってハウジングがその動作位置に装着されたときの、ユーザの耳軸に対して実質的に平行な方向における第1の部分と寄生アンテナ要素の組み合わせた長さは、4分の1の波長、あるいは4分の1の波長の任意の倍数、あるいは奇倍数であってもよい。
【0024】
第1の部分が十分な長さを有しており、電流により形成される定在波の最大値において、およびその近傍において、アンテナを流れる全電流に比べて高い電流を流す一実施形態において、第1の部分は近接アンテナから放射される電磁場に著しく寄与する。これによって、寄生アンテナ要素の向きは、それほど重要でないか、まったく重要でなくなる。なぜなら、これらの他の要素はアンテナから放射される電磁場に著しい寄与をしないからである。
【0025】
従って、寄生アンテナ要素の電流経路の向きは、補聴器ハウジングの形状および小さな寸法、およびハウジング内の他の部品の所望の位置および形状の制限に応じて決定されてもよい。例えば、寄生アンテナ要素の第2の部分およびさらに他の部分は、ユーザの耳において補聴器ハウジングがその動作位置に装着されたときに、電流がそれらの部分を頭部の表面に対して平行な方向に流れるように配置されてもよい。寄生アンテナ要素は、寄生アンテナ要素の励起点の反対側に自由端を有することが好ましい。
【0026】
補聴器は、放射された電磁場の所望の指向特性と、ことによれば所望の偏向を実現するために、寄生アンテナ要素をさらに備えていてもよい。
【0027】
従って、第1の部分および1またはそれ以上の寄生アンテナ要素により形成されたアンテナは、電流が第1の部分の内部を使用中のユーザの耳軸に対して平行な方向に流れ、それによりアンテナ要素の組み合わされた長さが所望の電磁場の効果的な放射のための所望の長さとなるような構造を有していてもよい。所望の長さは電磁放射の4分の1の波長またはその任意の倍数、あるいはその任意の奇倍数であることが好ましい。しかしながら、アンテナが補聴器の内側にフィットし、かつ所望の無線周波数で所望の放射パターンと偏向で放射するように構成するために、アンテナを流れる電流の経路が幾つかの屈曲点を呈することも考えられる。
【0028】
アンテナ全体の物理的な長さは、アンテナを、アンテナ短縮化部品と呼ばれる、アンテナの定在波のパターンを変形し、それによりアンテナの実効長さを変化させるインピーダンスを有する電子部品と相互接続することによって、低減することができる。アンテナの必要とされる物理的な長さは、例えばアンテナをインダクタと直列に接続する、あるいはキャパシタと並列に接続することによって短縮される。
【0029】
従って、アンテナは、補聴器ハウジングがユーザの耳においてその動作位置に装着されたときに、その長手方向がユーザの耳軸に対して平行となるように補聴器ハウジングに配置された、比較的短い長さの単一の直線部分を有していてもよい。さらに、単一の直線部分、例えば第1の部分は、アンテナ短縮化部品、例えば直列インダクタと直列に接続されていてもよい。
【0030】
補聴器は、リモコンまたは電話、テレビ、テレビボックス、テレビストリーミングボックス、スパウスマイク、補聴器フィッティングシステム等の他のアクセサリと通信するためのプライマリアンテナ要素をさらに備えていてもよい。プライマリアンテナ要素は、典型的にはユーザから離れて配置された装置との通信を促進するように配置されている。従って、プライマリアンテナ要素は、電磁放射を補聴器アクセサリに放射し、電磁放射をアクセサリから受信するために、典型的にはハウジング上に、あるいはハウジングの内部に設けられている。
【0031】
アンテナの第1の部分は、第1の部分が補聴器の電子回路から給電されるように、励起点を有していてもよい。第1の部分は、能動的に励起されてもよいし、その代わりに、受動的に励起されてもよい。第1の部分とプライマリアンテナ要素は、共通の励起/給電点を有していてもよい。通常は、アンテナ要素の励起点は、接地電位、例えばゼロ電位あるいは相対的な接地電位に接続する点である。プライマリアンテナは接地平面の長辺、例えば矩形の接地平面の長辺で給電されてもよく、それによって電流は主に接地平面の短い寸法に沿って、頭部の側面に対して垂直に、あるいはアンテナシステムが取り付けられる身体部分に対して垂直に流れる。
【0032】
ユーザの身体に装着されるように構成された補聴器のアンテナ、あるいはアンテナシステムは、複数のアンテナ要素、例えばプライマリアンテナ要素、第1の部分および/または1またはそれ以上の寄生アンテナ要素を備えることができる。アンテナ要素は、補聴器またはアンテナシステムと相互作用する任意の他の装置の動作中に相互作用する別々の構造要素を形成することができる。
【0033】
例えば耳掛け型補聴器ハウジングは、通常、プライマリアンテナ要素を、それらの長手方向がバナナ形状の耳掛け型補聴器ハウジングの長手方向に対して平行となるように、その補聴器の1つの面に配置して収容する。他方、挿耳型補聴器は、通常、補聴器のフェースプレートに配置されたパッチアンテナが設けられている。
【0034】
本発明の一実施形態では、プライマリアンテナ要素は補聴器アセンブリの第1の面に設けられており、寄生アンテナ要素の少なくとも一部は、補聴器アセンブリの第2の面に設けられている。補聴器アセンブリの第1の面および第2の面は実質的に平行であって、プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素は、補聴器アセンブリの反対側の面に配置されていてもよい。プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素は、支持要素、例えばプライマリアンテナ要素および/または寄生アンテナ要素に対する接地平面、例えば接地電位平面を形成する支持要素、例えば第1の部分を備える支持要素によって接続されていてもよい。支持要素は導電要素であってもよい。
【0035】
一実施形態において、プライマリアンテナ要素は、第1の部分の少なくとも一部を励起することができ、それによって寄生アンテナ要素を励起することができる。これにより、第1の部分がアンテナを備えていないとしても、寄生アンテナ要素とプライマリアンテナ要素に対する接地平面を構成するのであれば、電流は第1の部分において誘導されるであろう。従って、第1の部分は接地平面を形成してもよく、そこではプライマリアンテナ要素の励起に応じて第1の部分において誘導された電流が流れる。従って、接地平面はプライマリアンテナ要素によって誘導された電流を導く。本発明の好ましい実施形態において、寄生アンテナの励起点は、プライマリアンテナ要素の励起点の反対側にある。
【0036】
好ましい実施形態において、プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、ユーザの身体に対して実質的に直交する、例えばユーザの耳軸に対して実質的に平行な軸に沿って、距離を置いて設けられている。その距離は、16分の1の波長と完全な波長の間、例えば16分の1の波長と4分の3の波長の間、例えば16分の1の波長と8分の5の波長の間、例えば16分の1の波長と半分の波長の間、例えば16分の1の波長と8分の3の波長の間、例えば16分の1の波長と8分の1の波長の間、であることが好ましい。幾つかの実施形態においては、より低い限界値である8分の1の波長を用いることが有利である。特に好ましい実施形態においては、第1の部分の長さは16分の1の波長と8分の1の波長の間である。最適な長さは、任意のサイズの制約や電磁場の強度を含む、幾つかの基準に基づいて選択される。
【0037】
励起に応じて、第1の部分の内部をプライマリアンテナ要素の励起点から寄生アンテナ要素の励起点へ、ユーザの耳軸に対して平行な方向に誘導電流が流れ、その電流は寄生アンテナ要素を励起するであろう。
【0038】
好ましくは、プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、それらのアンテナ要素の接地平面に設けられており、それによって、補聴器がユーザによってその動作位置に装着されたときに、プライマリアンテナ要素の励起に応じて電流が、少なくとも第1の部分を頭部に対して実質的に直交する方向に流れる。プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、耳軸に対して角度を形成する軸に沿って設けられていてもよいと考えられる。好ましい実施形態において、接地平面はプライマリアンテナ要素と寄生アンテナ要素を接続するプリント回路基板であってもよい。この場合、プライマリアンテナ要素の励起点と寄生アンテナ要素の励起点は、ともにプリント回路基板に設けられる。従って、接地電位平面はプリント回路基板であってもよいが、接地電位平面はそれらのアンテナ要素の励起に応じて電流を導電可能などのような物質から形成されてもよい。接地平面は電流を導くための、例えば銅線といった単一の導電経路として形成されてもよい。
【0039】
少なくとも第1の部分の長さは、プライマリアンテナ要素の励起点から寄生アンテナ要素の励起点までの電流経路の長さとして規定される。
【0040】
寄生要素を設けることの利点は、寄生アンテナ要素が設けられていないアンテナシステムに比べて、アンテナシステムの周波数帯が格段に増えることである。プライマリアンテナと第1の部分のみを有するアンテナシステムに比べて、周波数帯は係数2で改善され、周波数帯を二倍にすることができる。好ましい実施形態において、寄生アンテナ要素はプライマリアンテナ要素の鏡像である、あるいは寄生アンテナ要素とプライマリアンテナ要素は対称なアンテナ構造を形成し、例えばそれによって、プライマリアンテナ要素はメアンダアンテナ構造を形成し、寄生アンテナ要素は対応するメアンダアンテナ構造を形成する。寄生アンテナ要素とプライマリアンテナ要素は、同一のアンテナ構造を形成してもよい。
【0041】
プライマリアンテナ要素と、第1の部分と、1またはそれ以上の寄生アンテナ要素の具体的な配置は、補聴器の形状により決定されてもよい。
【0042】
例えば、耳掛け型補聴器ハウジングは、通常、プライマリアンテナ要素を、その長手方向がバナナ形状の耳掛け型補聴器ハウジングの長手方向に対して平行となるように、補聴器の1つの面に配置して収容する。他方、挿耳型補聴器には、通常は、補聴器のフェースプレートに配置されたパッチアンテナが設けられている。
【0043】
本発明の一実施形態においては、ハウジングは、使用中ユーザの耳の後ろに配置されるように構成された、耳掛け型補聴器ハウジングであって、プライマリアンテナ要素は、補聴器アセンブリの第1の長辺に設けられおり、寄生アンテナ要素は、補聴器アセンブリの第2の長辺に設けられている。プライマリアンテナ要素と寄生アンテナ要素は、第1の部分、例えばプリント回路基板に設けられた第1の部分、例えばアンテナ等を備える支持要素を介して接続されていてもよい。あるいは、第1の部分は、それらのアンテナ要素についての接地平面を構成してもよい。
【0044】
寄生アンテナ要素、第1の部分およびプライマリアンテナ要素を備える補聴器のアンテナは、ISM周波数帯で動作するように構成されていてもよい。好ましくは、それらのアンテナは、少なくとも1GHzの周波数で、例えば1.5GHzと3GHzの間の周波数で、例えば2.4GHzの周波数で動作するように構成されている。
【0045】
本発明の上記および他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、それらの実施形態を詳細に説明することで、当業者により明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1a】ユーザの人体模型頭部モデルと、ユーザの頭部の解剖学的な幾何学構造を規定するためのx、yおよびz軸を有する三次元正規直交座標である。
【図1b】典型的な補聴器のブロック図を示す。
【図2a】頭上から見た平行アンテナ構成の頭部の周りの電場Eの強度のプロットである(従来技術)。
【図2b】頭上から見た直交アンテナ構成の頭部の周りの電場Eの強度のプロットである。
【図3】平行アンテナ構成と直交アンテナ構成の総合効率をアンテナ長さの関数として示す。
【図4】直交アンテナを有する例示的なBTE補聴器の各種部品の側面から見た図である。
【図5a】直交アンテナを有する別の例示的なBTE補聴器の各種部品の左側面から見た図である。
【図5b】図5aに示す部品の右側面から見た図である。
【図6】本発明の一実施形態において支持要素の少なくとも第1の部分にわたる電流分布のプロットである。
【図7a】プライマリアンテナ要素と少なくとも1つの寄生アンテナ要素の模式的な実施形態を示す。
【図7b】プライマリアンテナ要素と少なくとも1つの寄生アンテナ要素の模式的な実施形態を示す。
【図7c】プライマリアンテナ要素と少なくとも1つの寄生アンテナ要素の模式的な実施形態を示す。
【図8a】補聴器をユーザの左側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【図8b】補聴器をユーザの左側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【図8c】補聴器をユーザの右側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【図8d】補聴器をユーザの右側に配置した場合の、ユーザの頭部の回りの電磁場の分布を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下では、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全になるように提供され、そして完全に、当業者に本発明の範囲を伝えるであろう。
【0048】
以下では、平行アンテナまたはアンテナの平行部分とは、それぞれ、使用中ユーザの耳に着用される装置のアンテナまたはアンテナの部分であって、ユーザの耳において頭部の表面に対して平行な方向、言い換えるとユーザの耳軸に対して垂直な方向にのみ電流を流すものを意味しており、直交アンテナまたはアンテナの直交部分とは、それぞれ、使用中ユーザの耳に着用される装置のアンテナまたはアンテナの部分であって、少なくともアンテナの一部において、ユーザの耳において頭部の表面に対して直交する方向、言い換えるとユーザの耳軸に対して平行な方向に電流を流すものを意味している。
【0049】
アンテナの放射パターンは、通常、アンテナの遠方場での水平面および垂直面での放射電力の極座標プロットで示されている。プロットされた変数は、電界強度、単位立体角あたりの電力、または指向性利得である。ピークの放射は、最大利得の方向に発生する。
【0050】
人体に近接する無線通信用のアンテナを設計する際、人間の頭部は、鼻、耳、口および目といった感覚器官が取り付けられた、丸みを帯びた輪郭により近似することができる。このような丸みを帯びた輪郭9が図1aに示されている。図1aでは、人体模型頭部モデルとともに、頭部に対する方向を定義するx、yおよびz軸を持つ通常の三次元直交座標系が示されている。
【0051】
頭部の表面のすべての点が、法線ベクトルと接線ベクトルを有している。法線ベクトルは頭部の表面に直交しており、接線ベクトルは頭部の表面に平行である。頭部の表面に沿って伸びるエレメントは、頭部の表面に対して平行であると言うことができ、頭部の表面上の点から伸びており、頭部から周囲の空間へ放射状に外側に向けて伸びるオブジェクトは、頭部に対して直交すると言う事ができる。
【0052】
例えば、図1aの頭部の表面上で最も左側にある図1aの参照符号8の点は、座標系のyz平面に対して平行な接線ベクトルと、x軸に対して平行な法線ベクトルを有している。従って、y軸とz軸は点8において頭部の表面に対して平行であり、x軸は点8において頭部の表面に対して直交している。
【0053】
図1aの人体模型の頭部でモデル化されたユーザは、地面(図示していない)に直立しており、地面はxy平面に対して平行である。従って、ユーザの頭からつま先へ伸びる胴体軸はz軸に対して平行であり、ユーザの鼻はy軸に沿って紙面の外側を指し示している。
【0054】
右外耳道と左外耳道を通る軸は、図中のx軸に対して平行である。従って、耳から耳への軸(耳軸)は、それが頭部の表面を離れる点において、頭部の表面に直交している。耳軸は、頭部の表面と同様に、以下において、本発明の要素の具体的な形態を記述する際に、基準として使用される。
【0055】
耳介の面の向き方は人によって異なっているにも関わらず、耳介は、ほとんどの被験者において、主に頭部の表面に対して平行な平面内に位置しているから、耳軸は耳に対して直交する役割も有していると、しばしば表現される。
【0056】
外耳道挿入型の補聴器は、外耳道にフィットする形状の細長いハウジングを有している。そして、この種の補聴器の長手方向軸は、耳軸に対して平行である。通常は、耳掛け型の補聴器も、耳介の頂部に掛けるために、よくバナナのような形状とされる細長いハウジングを有している。従って、この種の補聴器ハウジングは、ユーザの頭部の表面に対して平行な長手方向軸を有している。
【0057】
図1aを参照すると、耳掛け型の装置の長さは、主にy軸に沿って測定されるのに対して、幅はx軸に沿って測定され、高さはz軸に沿って測定される。
【0058】
図1bに、典型的な(従来技術の)聴覚装置のブロック図を示す。補聴器は、入って来る音声を受信し、それを音声信号に変換するマイクロフォン101を備えている。レシーバ102は、聴覚装置プロセッサ103からの出力を、例えばユーザの聴覚障害を補償するために修正された出力音声に変換する。従って、聴覚装置プロセッサ103は、アンプ、コンプレッサおよび雑音抑制システムなどの要素を備えていてもよい。適切な動作のためには、ロッド状のアンテナは、通常、所望の周波数において、放射された電磁場の波長の4分の1にほぼ等しい長さを有している。従来、直交するロッド状のアンテナは、補聴器ハウジングから部品を突出させることなく、ハウジングの内部に収容するには、あまりにも長いものとなっている。
【0059】
図2aおよび図2bは、人間の一方の耳に配置されたアンテナによって電磁場が放射された場合の、人間の頭部の回りで広がる電磁場の電力を示している。電磁場は人間の頭上から観察されている。電力値はグレーレベルで示されており、黒は高い電力を示し、白は低い電力を示している。
【0060】
図2aにおいて、電磁場は平行なロッドアンテナによって放射されている。アンテナは図2aの左側に、白いロッドとして白く示されている。図2aは従来技術の平行なアンテナがどのように動作するかを示している。プロットは、頭部の周りの電磁場の強度を示している。プロットにおける電磁場の強度は、グレーレベルの色調により示されている。例えば、放射するアンテナの周りのプロットは黒である。従って、アンテナの周りの電磁場の強度は強い。アンテナからの距離が増加するにつれて、グレーレベルは薄くなっていく。頭部の反対側における受信アンテナにおける電磁場の強度は非常に小さく、受信アンテナの周りのプロットはほとんど白である。従って、人間の両耳に取り付けられた装置の平行アンテナを用いて信頼性の高い無線通信を実現するためには、それらの装置が受信信号を増幅するための強力なアンプ、および/または高電力で電磁信号を送信するための強力なアンプを備えていなければならない。補聴器においては、バッテリが補聴器の回路に提供する電力は小さく、限られた電力容量しか有していないので、これは望ましいことではない。
【0061】
図2bでは、直交するロッドアンテナによって電磁場が放射されている。ここでも、アンテナは図2bの左側に、白いロッドとして示している。
【0062】
電場の強度は、図2aと同様に、頭部の周りにプロットされている。頭部の反対側の受信アンテナにおける電磁場の強度は図2aよりも大きく、従って人間の両耳に取り付けられた装置の直交アンテナの間では、強力なアンプを必要とすることなく、信頼性の高い無線通信を確立することができることに気が付くであろう。
【0063】
このような改善は、平行なロッドアンテナが電磁場を主にアンテナの位置において頭部の表面に垂直な方向に放射しており、電磁場の電場が頭部の表面に対して平行であって、頭部の組織における抵抗性の伝送損失を増大させるという事実によるものと考えられる。
【0064】
これに対し、直交するロッドアンテナは、主に頭部の表面に対して平行な方向に電磁場を放射しており、頭部の周りの電磁場の伝送を容易としている。また、電磁場の電場が頭部の表面に対して垂直であって、それにより頭部の組織による伝送損失が低減されている。
【0065】
補聴器ハウジング内で利用可能な限られたスペースは、補聴器ハウジングの内部に直交するロッドアンテナを収容することを困難にしている。しかしながら、反対側の耳において受信される放射された電磁場の一部に対して大きく寄与するロッドアンテナの一部が、その直交する方向を維持している限り、ロッド状のアンテナが、大幅に性能を悪化させることなく、1またはそれ以上の屈曲部を備えることができることが示されている。
【0066】
動作中、ロッドアンテナは定在波の電流を流す。ロッドアンテナの自由端は、電流がゼロである定在波のノードを構成する。従って、ロッドアンテナの自由端に近い部分は、放射された電磁信号の磁場のほとんどの部分について貢献していない。補聴器の送受信回路に接続され電流が供給されるロッドアンテナの付け根において、電流は最大振幅を有し、従ってアンテナの付け根に近い部分、あるいはアンテナの給電点または励起点は、放射された電磁場の磁場のかなりの部分に貢献する。
【0067】
従って、好ましくは、アンテナの付け根に近い部分、あるいはアンテナの励起点は、ユーザの耳に所望の動作位置で配置されたときに、ユーザの頭部の表面に対して直交する長手方向を有するアンテナの第1の部分を構成する。アンテナの残りの部分の向きは、ユーザーの反対側の耳において電磁場が所望の電力を得るためには重要ではないが、その(それらの)部分は、所望の無線周波数での適切な動作のために必要な長さ、例えば電磁場の波長の4分の1またはその倍数に等しい長さ、あるいはほぼ等しい長さをアンテナが有するために、必要とされる。
【0068】
図3では、人間の頭部の周りの経路損失に関して、平行なモノポールロッドアンテナと直交するモノポールロッドアンテナの総合的な効率を、物理的なアンテナの長さの関数として比較している。アンテナの共振周波数は、直列インダクタンスを使用することで、同一に保たれている。最も短い直交アンテナでさえ、最も長い平行アンテナに比べて、頭部の反対側における電磁場を確立する上でより効果的であることに留意すべきである。
【0069】
図4はユーザによって所望の動作位置にハウジングが取り付けられたときに、長手方向がユーザの耳軸に対して実質的に平行となるように配置された第1の部分10を備えるアンテナ10、5を備えるBTE補聴器の各種部品のアセンブリ1を示している。第1の直線部分10は、補聴器アセンブリの上面16に配置されており、アセンブリ1の上面16の幅全体にわたって伸びている。第1の直線部分10は、プリント回路基板6から給電される。アンテナはさらに、長手方向が第1の直線部分10の長手方向に対して実質的に垂直であり、BTE補聴器アセンブリ1の側面に対して実質的に平行な、第2の直線部分5を備えている。アンテナは、長手方向が第1の部分10および第2の直線部分5の双方に対して実質的に垂直であり、アセンブリの側面11に対して実質的に平行、すなわちBTE補聴器ハウジングに対して実質的に平行な第3の直線部分14で終端している。補聴器アセンブリ1の全体を収容するBTE補聴器ハウジング15は、図4において破線で示されている。
【0070】
アンテナの第1の直線部分10、第2の直線部分5および第3の直線部分14は電気的に相互接続されており、相互接続された第1の直線部分、第2の直線部分および第3の直線部分が、必要な長さのアンテナを形成している。第2の部分と第3の部分が、寄生アンテナ要素を形成している。第1の直線部分10と第2の直線部分5の接続部は、通常は、補聴器アセンブリ1の上面16およびアセンブリの側面11が交差する箇所に配置されている。電流が励起点17を通って第1の直線部分10に流入すると、続いて2つの部分が接続する屈曲部を通過して、第2の直線部分5に電流が流入する。
【0071】
第2の直線部分5および第3の直線部分14は、補聴器アセンブリの右側面11または左側面12に沿って伸びており、従って、補聴器ハウジング15の内部の右側面または左側面に沿って伸びている。そして、アンテナは他の部品との電気的な接続を持たない自由端で終端している。従って、アンテナの内部の電流は、自由端でゼロまたはノードを有し、アンテナ電流は励起点において最大の大きさを有する。
【0072】
図示された部品のアセンブリ1は、補聴器ハウジング15(破線)内に収容される。図示されたBTE補聴器では、バッテリ2は補聴器ハウジングの後部に収納され、送受信機3は補聴器のアセンブリ1の中央に収納される。バッテリ2は、ユーザの鼓膜に向けて放射する音声を生成し、無線データ通信を行うための送受信機3を含み、少なくともプライマリアンテナ要素に相互接続された、補聴器の回路および構成部品に電力を供給する。送受信機3は、それぞれ音声を生成するためのものと、無線データ通信のためのものである、2つの分離された送受信機として設けられていてもよい。補聴器の信号処理装置(図示せず)は、プリント回路基板6上に配置されている。
【0073】
補聴器がユーザの耳においてその動作位置に取り付けられると、アンテナの第1の直線部分10、第2の直線部分5および第3の直線部分14の間の直交する角度が、ユーザの頭部の表面に対して平行な電磁波の放射と、頭部の表面に対して直交する電磁場を提供する。
【0074】
直交アンテナを備える別の例示的なBTE補聴器では、直交アンテナは比較的短い単一の直線部分を有している。単一の直線部分は、補聴器ハウジング内において、補聴器がユーザの耳において動作位置に配置されたときに、長手方向がユーザの頭部の表面に対して直交するように、あるいは実質的に直交するように配置されている。さらに、単一の直線部分はアンテナ短縮化部品、例えば直列インダクタ、あるいは寄生アンテナ要素と直列に接続されている。
【0075】
しかしながら、アンテナおよびアンテナの形態についてのさらに別の実施形態についても考えることができる。
【0076】
好ましくは、プライマリアンテナ要素は、例えばリモコン、携帯電話、テレビなどの外部の装置とも通信することができる。一般的には、アンテナのそれぞれの部分は、多種多様な幾何学形状に形成することができる。互いに関連して、少なくとも1つの導電部分が主に耳軸に対して平行な(耳に近接する点8においてユーザの頭部9の表面に対して直交する)電流を流し、それにより頭部の周りの表面での電磁波の伝送が実質的に減衰されないように、電磁場が所望の方向および所望の極性で放射されるための、上記の関連する形態に従う限り、それらはワイヤまたはパッチであってよいし、曲がっていても真っ直ぐでもよいし、長くても短くてもよい。好ましくは、少なくとも一つの導電部分は、励起点の近くに設けられる。
【0077】
障害物を含む通信を考慮する場合は、具体的な波長、従って放射された電磁場の周波数が重要となる。本発明では、障害物は頭部の表面の近くに配置されたアンテナを備える補聴器を有する頭部である。例えば1GHzの周波数のように、波長が長過ぎてより低い周波数に低減する場合、頭部のより多くの部分が近接場領域に位置することになる。この結果、様々な回折により、電磁場が頭部の周りを伝搬することがより困難になる。他方で、波長が短過ぎる場合、頭部は大きすぎる障害物となって、この場合も電磁波が頭部の周りを伝搬することが困難になる。従って、長い波長と短い波長の間で最適化することが好ましい。一般に、耳から耳への通信は、産業、科学および医療用の周波数帯で、2.4GHzを中心とする所望の周波数を用いて行われる。
【0078】
図5aおよび図5bは、別の実施形態に係る直交アンテナを備えた別のBTE補聴器についての、補聴器の各種部品のアセンブリ1の両側面を示している。
【0079】
BTE補聴器の図示された補聴器アセンブリは、バッテリ2、送受信機3、プリント回路基板6、内部の壁の部品、すなわち補聴器アセンブリの第1の側面11および第2の側面12、およびプライマリアンテナ要素7を含んでいる。プライマリアンテナ要素は、平行アンテナとして構成されている。信号処理装置(図示せず)は、プリント回路基板6上に配置されている。
【0080】
図5aにおいて、プライマリアンテナ要素7は、補聴器ハウジングの第1の(右側の)側面12に配置されている。しかしながら、プライマリアンテナ要素7は、ハウジングの第2の(左側の)側面、ハウジングの上面、ハウジングの前面、ハウジングの後面、あるいはハウジングの下面に配置されていてもよい。プライマリアンテナ要素7の許容される長さは、それが配置されるハウジングの面の長さにより制限される。その面が長いほど、その部分も長くすることができる。一般に、プライマリアンテナ要素の長さは、動作周波数、アンテナを流れる電流の群速度、および所望のゼロ点の個数によって規定される。通常は、その速度は自由空間における光速度によって近似される。波の4分の1の長さのアンテナは、励起点において最大の大きさの電流を有し、アンテナの終端部においてゼロ点を有するであろう。
【0081】
プライマリアンテナ要素7は、補聴器の電子機器を相互作用から保護する場合は受動要素として機能し、あるいは特定の放射パターンに対して構成されたアンテナの一部として機能するであろう。図5a、図5bに示す実施形態において、プライマリアンテナ要素7はプリント回路基板の励起点17から励起されている能動要素であり、周囲の空間に電磁場を放射する。ハウジングのどの面にプライマリアンテナ要素が配置されるかに応じて、放射された電場は、ユーザの頭部9に関して、わずかに異なる特性と放射パターンを有することになるであろう。
【0082】
図5bは、図5aに示すBTE補聴器アセンブリ1の第2の側面、この場合は左側の側面から見た図であり、寄生アンテナ要素5を示している。寄生アンテナ要素5は、電荷の流れを導通するために、金属または類似の材料から構成される。寄生アンテナ要素は、補聴器ハウジングの何れの面に配置されていてもよい。
【0083】
プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素は、プライマリアンテナ要素に対する接地平面を形成する、支持要素あるいは接続要素6、この場合はプリント回路基板6を介して相互接続されている。この場合、プライマリアンテナ要素の励起により、電磁場により生成された電流は、支持要素6の少なくとも第1の部分19において、その最大値を有しており、プライマリアンテナ要素から寄生アンテナ要素へ流れて、寄生アンテナ要素を励起する。第1の部分は支持要素の全体またはその任意の部分を備えていてもよい。
【0084】
好ましくは、寄生アンテナ要素5の励起点18は、プライマリアンテナ要素7の励起点17から耳軸に実質的に平行な軸に沿って距離を置いて配置されている。好ましくは、寄生アンテナ要素5の励起点18とプライマリアンテナ要素7の励起点17は、補聴器アセンブリ1の反対側の面に配置されている。しかしながら、励起点17,18が耳軸に対して実質的に平行な軸に沿って距離を置いて設けられている限り、平行またはプライマリアンテナ要素7および/または寄生アンテナ要素5の少なくとも一部は、補聴器の何れの面に設けられていてもよいことが予想される。
【0085】
さらに、プライマリアンテナ要素7および/または寄生アンテナ要素の少なくとも一部は、支持要素に沿って伸びていてもよい。好ましくは、支持要素の第1の部分19は、放射された電磁場の16分の1の波長と完全な波長の間にあって、その長さは励起点17,18の間の最大電流の経路に沿って測定される。
【0086】
図5bでは、寄生アンテナ要素5はアセンブリ1の左側面11に配置されている。寄生アンテナ要素5は、補聴器における他の要素に接続していない独立した要素であってもよいし、例えばプリント回路基板6を介してプライマリアンテナ要素7に動作可能に接続されていてもよい。
【0087】
図5bでは、プライマリアンテナ要素7と寄生アンテナ要素5を相互接続する回路基板6の導電部分が、例示された補聴器の直交アンテナの第1の部分を構成している。これは、相互接続を第1の部分の長手方向の所望の位置に配置し、それによってユーザの反対側の耳において受信される電磁場の所望の部分の放射のために第1の部分の所望の電流経路を形成するためである。
【0088】
図5bの実施形態において、3つの導電部分、すなわちプライマリアンテナ要素7、寄生アンテナ要素5、およびプリント回路基板6は、互いに関して、補聴器がユーザの頭部9に配置され、電流が導電要素を流れるときに、上述のような電磁場の放射のために、第3の導電要素6の電流が耳軸に対して平行な方向に流れるように構成されている。従って、補聴器は使用中に耳に装着され、頭部におけるこの位置では、耳軸に対して平行な導電要素は頭部の表面に対して直交するから、導電部分は、第1の部分を構成しており、直交している。
【0089】
プライマリアンテナ要素7と寄生アンテナ要素5を相互接続する回路基板6の上記部分の電流は、放射された電磁場が頭部の表面に対して実質的に平行に伝播するためには、耳軸に対して実質的に平行な方向に流れなければならない。従って、頭部の反対側の耳に到達するまで、電磁場は頭部の表面に沿って伝播する。
【0090】
アンテナの放射パターンの構成はサイドローブを有しているかも知れないが、放射された電力のほとんどは頭部の表面に対して平行に伝播する。
【0091】
図5に示す直交アンテナの3つの部分の構成は、さらに、放射された電磁場の全体がTMモードに偏向されて、電場が頭部の表面に対して直交し、あるいは実質的に直交して、電磁場が頭部の組織において、抵抗性の伝送損失なしに、あるいは低い抵抗性の伝送損失で伝播するという特性を有している。
【0092】
好ましくは、効果的な放射を実現するために、アンテナの第1の部分の電流経路の長さは、耳軸に対して平行な(ユーザの耳において補聴器の動作位置の近くで頭部の表面に対して直交する)プリント回路基板6に配置されている例示された実施例において、それが配置されている補聴器アセンブリの面の長さに等しい。この構成は、例えば、上記の導電部分を補聴器アセンブリの上面に配置し、プライマリアンテナ要素および寄生アンテナ要素5を右側面および左側面にそれぞれ配置することで、実現することができる。例示された補聴器が耳の後ろの動作位置に配置されている場合、第3の部分は、第1の部分を構成し、直交しており、ハウジングの上面全体に沿って伸びているであろう。さらに、支持要素の少なくとも第1の部分において最大電流を実現するために、第1の部分が、放射された電磁場の16分の1の波長から完全な波長までの間の長さを有することが好ましい。
【0093】
図6に第1の部分19における典型的な電流分布を示す。第1の部分は、プライマリアンテナ要素についての励起点17によって励起され、最大電流20は寄生アンテナ要素についての励起点18への最短経路に沿っている。
【0094】
直交アンテナを備える別の例示的なBTE補聴器では、直交アンテナは比較的短い単一の直線部分を有している。単一の直線部分は、補聴器がユーザの耳において動作位置に配置されたときに、長手方向がユーザの頭部の表面に対して直交する、あるいは実質的に直交するように、補聴器ハウジングに配置されている。さらに、単一の直線部分は、アンテナ短縮化部品、例えば直列インダクタと直列に接続されている。
【0095】
しかしながら、アンテナとアンテナの構成については、他の実施形態を考えることもできるであろう。
【0096】
図7a−図7cに、考えられるアンテナ設計の幾つかを模式的に示す。補聴器のアセンブリ1を上面から見ており、アンテナおよびアンテナ励起点の位置が図示されている。
【0097】
図7aは、励起点17を有するプライマリアンテナ要素21を示す。サポート(接続)要素23は、プライマリアンテナ要素21の接地平面を形成しており、寄生アンテナ要素22についての励起点18は、プライマリアンテナ要素21の励起点17から、耳軸に対して実質的に平行な軸に沿って距離を置いて配置されている。支持要素23の第1の部分19は、本実施例では、補聴器の全体の幅を超えて伸びることはない。
【0098】
図7bは、励起点17,18の間の距離が補聴器アセンブリの幅に相当する場合の例を示す。図7cでは、励起点17,18が耳軸に対して直交する軸に沿って互いに距離を置いて配置されている代替実施形態を示す。この場合、寄生アンテナ要素22は、最大電流が頭部に直交するアンテナの部分において提供されるように、アンテナ短縮化部品に接続されていることが好ましい。
【0099】
好ましい実施形態において、プライマリアンテナ要素21と寄生アンテナ要素22は同一のアンテナ構造を形成している。例えば、プライマリアンテナ要素21と寄生アンテナ要素22の双方ともが、同一形態と同一寸法を有するアンテナ構造を形成していてもよく、アンテナ要素21,22のそれぞれが、例えば同一寸法と同一形態を有するメアンダラインアンテナを形成していてもよい。
【0100】
図面では耳掛け型補聴器のみを示しているものの、説明されたアンテナ構造は、ユーザが補聴器をその動作位置に装着したときに、第1の部分が電流をユーザの耳軸に対して平行な方向に導くように形成されている限り、挿耳型補聴器を含む他の全ての形式の補聴器についても同様に適用可能であることが把握されるであろう。
【0101】
図8は本発明に係る補聴器についての指向性のプロットを示している。補聴器がユーザの右手側に配置された場合とユーザの左手側に配置された場合の間で、相違は極めて小さいことが分かる。この相違は、アンテナ配置のミラーリングによるものであって、左手側の装置については、右手側の装置に比べて、プライマリアンテナ要素が頭部からより遠くに配置されている。従って、本発明の補聴器の利点は、外部のアクセサリや、両耳用補聴器における2つの補聴器の他方への無線接続に対する影響を最小限に抑えながら、ユーザの右手側および左手側において用いることができるであろう。
【0102】
図8aは、φ=0°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、図8bはφ=90°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、何れもユーザの左手側の位置に配置された本発明に係る補聴器について、2441MHzにおけるものである。
【0103】
図8cはφ=0°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、図8dはφ=90°の全体的な指向性についてのθカットを示しており、何れもユーザの右手側の位置に配置された本発明に係る補聴器について、2441MHzにおけるものである。
【0104】
一般的には、アンテナの様々な部分を多様な幾何学的形状に形成することができる。互いに関連して、少なくとも1つの導電部分が、主に耳軸に対して平行な(耳に近接する点8においてユーザの頭部9の表面に対して直交する)電流を流し、それにより頭部の周りの表面での電磁波の伝送が減衰されないように、電磁場が所望の方向および所望の極性で放射されるための、上記の関連する形態に従う限り、それらはワイヤまたはパッチであってよいし、曲がっていても真っ直ぐでもよいし、長くても短くてもよい。
【0105】
障害物を含む通信を考慮する場合は、具体的な波長、従って放射された電磁場の周波数が重要となる。本発明では、障害物は頭部の表面の近くに配置されたアンテナを備える補聴器を有する頭部である。例えば1GHzの周波数のように、波長が長過ぎてより低い周波数に低減する場合、頭部のより多くの部分が近接場領域に位置することになる。この結果、様々な回折により、電磁場が頭部の周りを伝搬することがより困難になる。他方で、波長が短過ぎる場合、頭部は大きすぎる障害物となって、この場合も電磁波が頭部の周りを伝搬することが困難になる。従って、長い波長と短い波長の間で最適化することが好ましい。一般に、耳から耳への通信は、産業、科学および医療用の周波数帯で、2.4GHzを中心とする所望の周波数を用いて行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機と、前記アンテナの収容のためのハウジングを備える補聴器アセンブリを備える補聴器であって、
前記アンテナが、第1の部分を備えており、
前記第1の部分が、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有しており、
前記第1の部分が、ユーザによって前記ハウジングがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの耳軸に対して実質的に平行な方向に流れるように配置されており、それによって前記アンテナから放射された前記電磁場が、その電場を前記ユーザの頭部の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記頭部の前記表面に沿って伝播する補聴器。
【請求項2】
前記第1の部分が、4分の1の波長またはその任意の倍数の全長を有するアンテナの一部を形成している、請求項1の補聴器。
【請求項3】
前記アンテナの前記第1の部分が、能動的に励起される、請求項1または2の補聴器。
【請求項4】
前記アンテナが受動的に励起されるアンテナである、請求項1または2の補聴器。
【請求項5】
前記アンテナが、寄生アンテナ要素をさらに備えており、
前記寄生アンテナ要素がパッチ形状、ロッド形状、モノポール形状、メアンダライン形状またはそれらの任意の組み合わせを備えている、請求項1から4の何れか一項の補聴器。
【請求項6】
プライマリアンテナ要素をさらに備えている、請求項5の補聴器。
【請求項7】
前記プライマリアンテナ要素と前記寄生アンテナ要素が、前記補聴器アセンブリの反対側の面に配置されている、請求項6の補聴器。
【請求項8】
前記第1の部分が、前記プライマリアンテナ要素および前記寄生アンテナ要素に対する接地電位平面を形成している、請求項6または7の補聴器。
【請求項9】
前記寄生アンテナ要素の励起点が、前記プライマリアンテナ要素の励起点の反対側にある、請求項6から8の何れか一項の補聴器。
【請求項10】
前記第1の部分が、前記ユーザによって前記ハウジングが動作位置に装着されたときに、長手方向が前記ユーザの耳軸に対して実質的に平行となるように配置された第1の直線部分である、請求項6から9の何れか一項の補聴器。
【請求項11】
前記アンテナの前記電流が、前記電磁場を放射している間、前記第1の部分において最大振幅を有する、請求項6から10の何れか一項の補聴器。
【請求項12】
前記寄生アンテナ要素が、例えば直列インダクタといった、アンテナ短縮化部品を備える、請求項6から11の何れか一項の補聴器。
【請求項13】
前記ハウジングが、使用中、前記ユーザの耳の後ろに位置するように構成された耳掛け型のハウジングである、請求項6から12の何れか一項の補聴器。
【請求項14】
前記第1の部分が、その長手方向が前記ハウジングの幅方向に沿うように、前記ハウジング内に収容されている、請求項13の補聴器。
【請求項15】
前記プライマリアンテナ要素と前記寄生アンテナ要素が同一のアンテナ構造である、請求項6から14の何れか一項の補聴器。
【請求項16】
少なくとも1つの請求項1から15の何れか一項の補聴器を備える、両耳用補聴器システム。
【請求項17】
ユーザの身体に装着されるように構成されたアンテナシステムであって、
電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機を備えており、
前記アンテナが、第1の部分を備えており、
前記第1の部分が、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有しており、
前記第1の部分が、前記ユーザによって前記アンテナシステムがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの前記身体に対して実質的に直交する方向に流れるように配置されており、それによって前記アンテナから放射された前記電磁場が、その電場を前記ユーザの前記身体の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記身体の前記表面に沿って伝播する、アンテナシステム。
【請求項1】
電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機と、前記アンテナの収容のためのハウジングを備える補聴器アセンブリを備える補聴器であって、
前記アンテナが、第1の部分を備えており、
前記第1の部分が、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有しており、
前記第1の部分が、ユーザによって前記ハウジングがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの耳軸に対して実質的に平行な方向に流れるように配置されており、それによって前記アンテナから放射された前記電磁場が、その電場を前記ユーザの頭部の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記頭部の前記表面に沿って伝播する補聴器。
【請求項2】
前記第1の部分が、4分の1の波長またはその任意の倍数の全長を有するアンテナの一部を形成している、請求項1の補聴器。
【請求項3】
前記アンテナの前記第1の部分が、能動的に励起される、請求項1または2の補聴器。
【請求項4】
前記アンテナが受動的に励起されるアンテナである、請求項1または2の補聴器。
【請求項5】
前記アンテナが、寄生アンテナ要素をさらに備えており、
前記寄生アンテナ要素がパッチ形状、ロッド形状、モノポール形状、メアンダライン形状またはそれらの任意の組み合わせを備えている、請求項1から4の何れか一項の補聴器。
【請求項6】
プライマリアンテナ要素をさらに備えている、請求項5の補聴器。
【請求項7】
前記プライマリアンテナ要素と前記寄生アンテナ要素が、前記補聴器アセンブリの反対側の面に配置されている、請求項6の補聴器。
【請求項8】
前記第1の部分が、前記プライマリアンテナ要素および前記寄生アンテナ要素に対する接地電位平面を形成している、請求項6または7の補聴器。
【請求項9】
前記寄生アンテナ要素の励起点が、前記プライマリアンテナ要素の励起点の反対側にある、請求項6から8の何れか一項の補聴器。
【請求項10】
前記第1の部分が、前記ユーザによって前記ハウジングが動作位置に装着されたときに、長手方向が前記ユーザの耳軸に対して実質的に平行となるように配置された第1の直線部分である、請求項6から9の何れか一項の補聴器。
【請求項11】
前記アンテナの前記電流が、前記電磁場を放射している間、前記第1の部分において最大振幅を有する、請求項6から10の何れか一項の補聴器。
【請求項12】
前記寄生アンテナ要素が、例えば直列インダクタといった、アンテナ短縮化部品を備える、請求項6から11の何れか一項の補聴器。
【請求項13】
前記ハウジングが、使用中、前記ユーザの耳の後ろに位置するように構成された耳掛け型のハウジングである、請求項6から12の何れか一項の補聴器。
【請求項14】
前記第1の部分が、その長手方向が前記ハウジングの幅方向に沿うように、前記ハウジング内に収容されている、請求項13の補聴器。
【請求項15】
前記プライマリアンテナ要素と前記寄生アンテナ要素が同一のアンテナ構造である、請求項6から14の何れか一項の補聴器。
【請求項16】
少なくとも1つの請求項1から15の何れか一項の補聴器を備える、両耳用補聴器システム。
【請求項17】
ユーザの身体に装着されるように構成されたアンテナシステムであって、
電磁場の放射と受信のためのアンテナに相互接続された、無線データ通信のための送受信機を備えており、
前記アンテナが、第1の部分を備えており、
前記第1の部分が、前記電磁場の少なくとも16分の1の波長と完全な波長の間の長さを有しており、
前記第1の部分が、前記ユーザによって前記アンテナシステムがその動作位置に装着されたときに、前記第1の部分において電流が前記ユーザの前記身体に対して実質的に直交する方向に流れるように配置されており、それによって前記アンテナから放射された前記電磁場が、その電場を前記ユーザの前記身体の表面に対して実質的に直交させつつ、前記ユーザの前記身体の前記表面に沿って伝播する、アンテナシステム。
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図1a】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図1a】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【公開番号】特開2012−90266(P2012−90266A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−224705(P2011−224705)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(503021401)ジーエヌ リザウンド エー/エス (31)
【氏名又は名称原語表記】GN RESOUND A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, DK−2750 Ballerup Denmark
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224705(P2011−224705)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(503021401)ジーエヌ リザウンド エー/エス (31)
【氏名又は名称原語表記】GN RESOUND A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, DK−2750 Ballerup Denmark
【Fターム(参考)】
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