説明

製剤における溶出改善方法および溶出性の改善された製剤

【課題】腸溶性ポリマーコーティング製剤中の有効成分の溶出遅延を改善する方法の提供。
【解決手段】アルカリ性pH調節剤を用いることを特徴とする、腸溶性ポリマーコーティング製剤中の有効成分の溶出改善方法および、(1)腸溶性ポリマーと相互作用する化合物と(2)アルカリ性pH調節剤を含有してなる製剤。アルカリ性pH調節剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム等が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤における溶出改善方法、および、溶出性の改善された製剤に関する
【背景技術】
【0002】
有効成分とアルカリを含有し、腸溶膜でコーティングした製剤は多々知られているが(特許文献1ないし17)、アルカリが及ぼす有効成分の溶出性に対する効果については知られていない。
【特許文献1】米国特許第4539198号明細書
【特許文献2】米国特許第5711967号明細書
【特許文献3】国際公開WO98/27967号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2001/058424号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開US2005/025824号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開US2004/028737号明細書
【特許文献7】国際公開WO2004/108067号パンフレット
【特許文献8】国際公開WO2004/096208号パンフレット
【特許文献9】国際公開WO2005/041934号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開US2005/118256号明細書
【特許文献11】国際公開WO2005/055955号パンフレット
【特許文献12】国際公開WO2005/072709号パンフレット
【特許文献13】国際公開WO2005/077420号パンフレット
【特許文献14】国際公開WO2005/099666号パンフレット
【特許文献15】国際公開WO2005/105036号パンフレット
【特許文献16】国際公開WO2005/105045号パンフレット
【特許文献17】国際公開WO2006/014973号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
腸溶性ポリマーコーティング製剤において、有効成分が腸溶性ポリマーと相互作用することにより腸溶膜ポリマーの溶解性が阻害され、その結果として有効成分の溶出遅延が生じることがある。このような溶出遅延を改善することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルカリ性pH調節剤を用いることにより、腸溶性ポリマーコーティング製剤における有効成分の溶出性が改善することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
〔1〕アルカリ性pH調節剤を用いることを特徴とする、腸溶性ポリマーコーティング製剤中の有効成分の溶出改善方法。
〔2〕有効成分が、腸溶性ポリマーと相互作用する化合物である上記〔1〕記載の方法。
〔3〕有効成分が、塩基性官能基を有する化合物である上記〔1〕記載の方法。
〔4〕有効成分が、式
【化1】

〔式中、Arは、式
【化2】

で表される基(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノ、Rは水素原子またはC1−6アルキル、RはC1−6アルキル、Rは水素原子またはC1−6アルキルを示す)、Xはカルボニル基、あるいはヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基、Lは置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基を示す。〕で表される化合物またはその塩である上記〔1〕記載の方法。
〔5〕有効成分が、5-[5-({2-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-7-スルホンアミドのp-トルエンスルホン酸塩である上記〔1〕記載の方法。
〔6〕アルカリ性pH調節剤が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸ニカリウムから選ばれる1または2以上の化合物である上記〔1〕記載の方法。
〔7〕腸溶性ポリマーコーティング製剤が、(1)有効成分と(2)アルカリ性pH調節剤とを含有してなる核を腸溶性ポリマーでコーティングした製剤である上記〔1〕記載の方法。
〔8〕腸溶性ポリマーコーティング製剤が、有効成分を含有する核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングしてなる製剤である上記〔1〕記載の方法。
〔9〕(1)腸溶性ポリマーと相互作用する化合物と(2)アルカリ性pH調節剤を含有してなる製剤。
〔10〕(1) 腸溶性ポリマーと相互作用する化合物および(2)アルカリ性pH調節剤を含有してなる核を、腸溶性ポリマーでコーティングしてなる製剤。
〔11〕腸溶性ポリマーと相互作用する化合物を含有してなる核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングしてなる製剤。
〔12〕腸溶性ポリマーと相互作用する化合物が、式
【化3】

〔式中、Arは、式
【化4】

で表される基(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノ、Rは水素原子またはC1−6アルキル、RはC1−6アルキル、Rは水素原子またはC1−6アルキルを示す)、Xはカルボニル基、あるいはヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基、Lは置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基を示す。〕で表される化合物またはその塩である上記〔9〕ないし〔11〕のいずれか1つに記載の製剤。
〔13〕(1) 腸溶性ポリマーと相互作用する化合物と(2)アルカリ性pH調節剤を配合することを特徴とする製剤の製造方法。
〔14〕(1) 腸溶性ポリマーと相互作用する化合物および(2)アルカリ性pH調節剤を含有してなる核を、腸溶性ポリマーでコーティングすることを特徴とする製剤の製造方法。
〔15〕腸溶性ポリマーと相互作用する化合物を含有してなる核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングすることを特徴とする製剤の製造方法等に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法により、腸溶性ポリマーコーティング製剤中の有効成分の溶出性を改善することができる。その結果、従来の製剤と比較して、生体における有効成分の吸収量を増加できる。吸収量の増加は、改良前製剤の吸収量を1として1.01〜100倍、好ましくは1.05〜30倍、より好ましくは1.1〜10倍である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「アルカリ性pH調節剤」とは、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ジイソプロパノールアミン、酒石酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、リン酸水素ナトリウム、メグルミン、モノエタノールアミン、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム等から選ばれる1または2以上の化合物があげられる。なかでも、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸ニカリウムから選ばれる1または2以上の化合物が好ましい。
【0007】
アルカリ性pH調節剤の量は製剤重量に対して、0.1〜70%(W/W)、好ましくは0.5〜60%(W/W)、より好ましくは1〜50%(W/W)が望ましい。
【0008】
本明細書中、「腸溶性ポリマーコーティング製剤」とは、有効成分を含有する核を腸溶性ポリマーで被覆した製剤(散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤等)を意味する。「腸溶性ポリマーコーティング製剤」は、
(a)(1)有効成分と(2)アルカリ性pH調節剤とを含有してなる核を腸溶性ポリマーでコーティングすることにより得られる製剤、または、
(b)有効成分を含有する核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングすることにより得られる製剤を意味する。
【0009】
本明細書中、「腸溶性ポリマー」とは、例えば、カルボキシメチルエチルセルロース、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、酢酸フタル酸セルロース、シェラック、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、等から選ばれる1または2以上の化合物があげられる。なかでも、メタクリル酸コポリマーL(オイドラギットL100)、メタクリル酸コポリマーS(オイドラギットS100)、メタクリル酸コポリマーLD、乾燥メタクリル酸ポリマーLD等から選ばれる1または2以上の化合物が好ましい。
腸溶性ポリマーのコーティング量は核粒重量に対して1−200%(W/W)、好ましくは5−100%(W/W)、より好ましくは10−60%(W/W)が望ましい。
【0010】
本明細書中、「有効成分」とは、薬理作用を有する化合物を意味する。「有効成分」のなかでも、腸溶性ポリマーと相互作用する化合物であるものが好ましい。
ここで「腸溶性ポリマーと相互作用する化合物」とは、不溶化度が30〜100%(W/W)である化合物が好ましく、不溶化度が40〜99.5%(W/W)である化合物がより好ましく、とりわけ、不溶化度が50〜99.0%(W/W)である化合物が好ましい。
ここで、「不溶化度」とは、Y(%(W/W))=(1−X/X)×100と定義する。XはpH7.2の50mMリン酸緩衝液40mLに溶解させた化合物量を表す。この液に、モル比としてXの10分の1量にあたるメタクリル酸コポリマー(オイドラギットS100)を加えて16時間激しく振とうした後に、緩衝液中に残存している化合物量をXと表す。
【0011】
また、「有効成分」としては、塩基性官能基を有する化合物であるものが好ましい。「塩基性官能基」としては、例えば、アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム基等があげられる。
「塩基性官能基を有する化合物」としては、摂氏25℃におけるpKaが8〜14である部位を有する化合物が好ましく、pKaが9〜14である部位を有する化合物がより好ましい。
【0012】
「有効成分」としては、なかでも、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用とα1拮抗作用に基づく排尿障害予防・治療剤である、式
【化5】

〔式中、Arは、式
【化6】

で表される基(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノ、Rは水素原子またはC1−6アルキル、RはC1−6アルキル、Rは水素原子またはC1−6アルキルを示す)、Xはカルボニル基、あるいはヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基、Lは置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基を示す。〕で表される化合物またはその塩が好ましい。
【0013】
化合物(I)中の各記号について、以下のように説明する。
Arは、式
【化7】

で表される基(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノ、Rは水素原子またはC1−6アルキル、RはC1−6アルキル、Rは水素原子またはC1−6アルキルを示す)を示す。
で表される「C1−6アルキル−アミノスルホニル」としては、例えば、メチルアミノスルホニル、エチルアミノスルホニル、プロピルアミノスルホニル、イソプロピルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、イソブチルアミノスルホニル、sec−ブチルアミノスルホニル、tert−ブチルアミノスルホニル、ペンチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル等が挙げられる。
【0014】
で表される「C1−6アルキル−カルボニルアミノ」としては、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、プロピルカルボニルアミノ、イソプロピルカルボニルアミノ、ブチルカルボニルアミノ、イソブチルカルボニルアミノ、sec−ブチルカルボニルアミノ、tert−ブチルカルボニルアミノ、ペンチルカルボニルアミノ、ヘキシルカルボニルアミノ等が挙げられる。
で表される「C1−6アルキル−スルホニルアミノ」としては、例えば、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、プロピルスルホニルアミノ、イソプロピルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、イソブチルスルホニルアミノ、sec−ブチルスルホニルアミノ、tert−ブチルスルホニルアミノ、ペンチルスルホニルアミノ、ヘキシルスルホニルアミノ等が挙げられる。
、RおよびRで表される「C1−6アルキル」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
Lで表される「置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基」としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、オキソ、C1−3アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシなど)、ニトロ、シアノ、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシなど)、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルチオ(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、tert−ブチルチオなど)、ヒドロキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなど)、ホルミル、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル−カルボニル(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニルなど)、C1−6アルコキシ−カルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルなど)、モノ−またはジ−C1−6アルキル−カルバモイル(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイルなど)、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニルなど)、ホルミルアミノ、C1−6アルキルスルホニルアミノ(例えば、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、プロピルスルホニルアミノ、イソプロピルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、イソブチルスルホニルアミノ、tert−ブチルスルホニルアミノなど)、C1−6アルキル−カルボニルオキシ(例えば、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシなど)、C1−6アルコキシ−カルボニルオキシ(例えば、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、イソプロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、tert−ブトキシカルボニルオキシなど)、モノ−またはジ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ(例えば、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシなど)及びフェニル等から選ばれる1ないし5個、好ましくは1ないし3個の置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基(−CHCHCHCH−、−CHCHCHCHCH−)が挙げられる。
【0015】
Arとしては、式
【化8】

(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノを示す)で表される基が好ましく、特に、式
【化9】

で表される基が好ましい。
Xとしては、カルボニル基、およびヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基がともに好ましい。
Lとしては、無置換のC4−5アルキレン基(−CHCHCHCH−、−CHCHCHCHCH−)、特に、−CHCHCHCH−が好ましい。
【0016】
化合物(I)が塩である場合、このような塩としては、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。
有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
これらの塩のなかでも、薬学的に許容し得る塩が好ましく、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩などの無機塩;または酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩などの有機塩が好ましい。
化合物(I)は、無水物、水和物のいずれであってもよい。水和物の場合、0.1ないし5個の水分子を有していてもよい。
【0017】
化合物(I)としては、
6−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]インダン−4−スルホンアミドまたはその塩、
N−メチル−6−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]インダン−4−スルホンアミドまたはその塩、
5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩、
5−[6−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ヘキサノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩、
N−メチル−5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩、
N−イソプロピル−5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩、
2−メトキシ−5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]ベンゼンスルホンアミドまたはその塩、
N−イソプロピル−2−メトキシ−5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]ベンゼンスルホンアミドまたはその塩、
7−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−5−スルホンアミドまたはその塩、
N−{5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−イル}アセトアミドまたはその塩、
N−{5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−イル}メタンスルホンアミドまたはその塩、
5−[1−ヒドロキシ−5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンチル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩が挙げられ、特に
6−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]インダン−4−スルホンアミドまたはその塩、
5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩、
N−{5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−イル}メタンスルホンアミドまたはその塩、
5−[1−ヒドロキシ−5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンチル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩などが好ましい例として挙げられ、なかでも、
5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩、
とりわけ、
5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドのp−トルエンスルホン酸塩が好ましい例として挙げられる。
【0018】
化合物(I)は、欧州特許出願明細書第1466625号記載の方法に準じて製造することができるが、例えば以下に示す[製造法A]、[製造法B]あるいは[製造法C]の方法によって製造される。[製造法A]、[製造法B]あるいは[製造法C]において、アルキル化反応、加水分解反応、アミノ化反応、エステル化反応、アミド化反応、エーテル化反応、酸化反応、還元反応,還元的アミノ化反応などを行う場合、これらの反応は、自体公知の方法にしたがって行われる。このような方法としては、例えばオーガニック ファンクショナル グループ プレパレーションズ(ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS)第2版、アカデミックプレス社(ACADEMIC PRESS, INC.)1989年刊;コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーション (Comprehensive Organic Transformations) VCH Publishers Inc.,1989年刊等に記載の方法などが挙げられる。
また、以下に記載の製造法において、化合物(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(Ia)、および(Ib)はそれぞれ塩を形成していてもよい。「塩」は、例えば、前記「化合物(I)が塩である場合」の「塩」を適用することができる。
【0019】
[製造法A]
化合物(II)と化合物(III)のカップリング反応により化合物(I)を製造する方法。
【化10】

[式中、Zは脱離基を、その他の各記号は前記と同意義を示す。]
で示される「脱離基」としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、C1−6アルキルスルホニルオキシ(例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシなど)、C6−10アリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシなど)などが用いられる。特に、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子など)、メタンスルホニルオキシ等が好ましい。
本カップリング反応は、無溶媒あるいは適当な溶媒、例えば、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、カルボン酸系溶媒、水等に溶解または懸濁して行うことができる。これらは、二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。好ましくは、例えば、無溶媒、あるいはエタノール等のアルコール系溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が用いられる。
また、本カップリング反応は適当な塩基を添加して行ってもよい。また、塩基を溶媒として用いることもできる。
【0020】
このような「塩基」としては、例えば、
1)例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化物(例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウムなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアミド類(例えば、リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の低級アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシドなど)などの強塩基;
2)例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)などの無機塩基;および
3)例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン類;例えばDBU(1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデス−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノン−5−エン)などのアミジン類;例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、2,6−ルチジンなどの塩基性複素環化合物などの有機塩基などが挙げられる。
「塩基」としては、例えば、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類等が好ましい。
本カップリング反応の際、化合物(III)の水素原子をあらかじめ金属原子、例えば、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属等で置換しておいてもよい。
【0021】
本カップリング反応は、−100℃ないし300℃で行うことができるが、0℃ないし150℃が好ましい。反応時間は、例えば、1分ないし1日である。
本カップリング反応は、化合物(II)と化合物(III)を任意の比率で行うことができ、さらにどちらかを溶媒として用いることもできる。
化合物(III)は、文献公知であり、市販のものを利用することができる。例えば、Fluorochem社(英国)から購入可能である。
化合物(II)は、例えば、以下に示すようなフリーデル−クラフツ反応等の方法で製造することができる。
【化11】

[式中、Zは脱離基を、その他の各記号は前記と同意義を示す。]
で示される「脱離基」としては、前記Zと同様のものを適用できる。好ましくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子など)あるいは水酸基である。
本反応は、好ましくは酸触媒を添加して反応を行うことができるが、酸触媒を添加せずに反応を行うこともできる。反応に用いられる酸触媒としては、例えば、硫酸、無水リン酸、ポリリン酸等の鉱酸、塩化アルミニウム、四塩化スズ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、塩化亜鉛等のルイス酸等を挙げることができる。好ましくは、ポリリン酸、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、塩化亜鉛等が挙げられる。酸触媒は、任意の当量を用いることができるが、通常、化合物(IV)あるいは化合物(V)に対して0.1当量ないし10当量である。また、場合によっては酸触媒を溶媒として用いることもできる。
本反応は、無溶媒あるいは適当な溶媒、例えば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ニトロ化炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、カルボン酸系溶媒等に溶解または懸濁して行うことができる。これらは、二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。好ましくは、例えば無溶媒、あるいはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ニトロメタン等のニトロ化炭化水素系溶媒、ニトロベンゼン等の芳香族系溶媒、二硫化炭素等が用いられる。
本反応は、−100℃ないし300℃で行うことができるが、通常、0℃ないし150℃が好ましい。反応時間は、例えば、1分ないし3日である。
本反応は、化合物(IV)と化合物(V)を任意の比率で行うことができ、さらにどちらかを溶媒として用いることもできる。
化合物(IV)は、それ自体公知あるいはそれに準じた方法により製造することができる。例えばシンセシス(Synthesis) 10, 862 (1984)、ジャーナル オブ ザ ケミカル ソサイエティー(J. Chem. Soc.) 1518 (1964)、シンセシス(Synthesis) 851 (1984)、特開平9−124605等に記載の方法あるいはそれに準じた方法によって製造することができる。
化合物(V)は、それ自体公知あるいはそれに準じた方法により製造することができる。例えば、オーガニック シンセシス(Org. Syn.) Coll. Vol.1, 12 (1941)、ヘルベチカ ヒミカ アクタ(Helv. Chem. Acta) 42, 1653 (1959) 等に記載の方法あるいはそれに準じた方法によって製造することができる。
【0022】
[製造法B]
化合物(VI)と化合物(VII)のカップリング反応により化合物(I)を製造する方法。
【化12】

[式中、各記号は前記と同意義を示す。]
本カップリング反応は、無溶媒あるいは適当な溶媒中で行うことができる。「溶媒」は、前記製造法Aで述べた「溶媒」と同様なものを用いることができるが、例えば、無溶媒、あるいはエタノール等のアルコール系溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が好ましい。
また、本カップリング反応は、適当な塩基を添加して行ってもよい。また、塩基を溶媒として用いることもできる。「塩基」は、前記製造法Aで述べた「塩基」と同様なものを用いることができる。
【0023】
本カップリング反応の際、化合物(VI)の水素原子をあらかじめ金属原子、例えば、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属等で置換しておいてもよい。
本カップリング反応は、−100℃ないし300℃で行うことができるが、0℃ないし150℃が好ましい。反応時間は、例えば1分ないし1日である。
本カップリング反応は、化合物(VI)と化合物(VII)を任意の比率で行うことができ、さらにどちらかを溶媒として用いることもできる。
【0024】
化合物(VII)は、例えば、以下に示すような対応するアルコール体(VIII)を脱離基Zに変換する方法によって合成することができる。
【化13】

[式中、各記号は前記と同意義を示す。]
脱離基Zとしては、例えば、塩素原子、臭素原子、メタンスルホニルオキシが好ましい。アルコールから塩素原子への変換方法としては、例えば、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(J. Am. Chem. Soc.)3950(1985)、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J. Org. Chem.)5291(1986)に記載の方法が挙げられる。アルコールから臭素原子への変換方法としては、例えば、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(J. Am. Chem. Soc.)1612(1977)、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(J. Am. Chem. Soc.)8749 (1973)に記載の方法が挙げられる。アルコールからメタンスルホニルオキシへの変換方法としては、例えば、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(J. Med. Chem.)1258(1968)、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J. Org. Chem.)84 (1998)に記載の方法が挙げられる。アルコール体(VIII)は、例えばヨーロピアン ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Eur. J. Org. Chem.)691(2001)記載の方法によって合成することができる。
【0025】
化合物(VI)は、例えば、以下に示すように前記化合物(II)に対するアンモニアの置換反応によって製造することができる。
【化14】

[式中、各記号は前記と同意義を示す。]
本置換反応は、適当な溶媒中で行うことができる。「溶媒」は、前記製造法Aで述べた「溶媒」と同様なものを用いることができるが、例えば、水、エタノール等のアルコール系溶媒、トルエン等の芳香族系溶媒、あるいはジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が好ましい。アンモニアは、アンモニア水、前記溶媒に溶解したアンモニア、あるいはガス状のアンモニアとして用いられる。
本置換反応は、−100℃ないし300℃で行うことができるが、0℃ないし200℃が好ましい。加熱条件下で反応を行う場合、オートクレーブや封管等、加圧が可能な装置を用いるのが望ましい。反応時間は、例えば、1分ないし1日である。
【0026】
化合物(VI)は、他に例えば前記化合物(II)に対してアジド化を行った後、還元することによっても製造することができる。
【化15】

[式中、各記号は前記と同意義を示す。]
アジド化反応は、例えば、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(J. Am. Chem. Soc.)951(1955)、ジャーナル オブ ザ ケミカル ソサイエティー(J. Chem. Soc.)72(1908)記載の方法に準じて行うことができる。
アジドの還元反応は、例えば、ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(J. Med. Chem.)658(1969)、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(J. Am. Chem. Soc.)2034(1986)記載の方法に準じて行うことができる。
【0027】
化合物(VI)は、他に例えば前記化合物(II)に対するガブリエル合成(Gabriel synthesis)反応によっても製造することができる。
【化16】

[式中、各記号は前記と同意義を示す。]
ガブリエル合成反応は、例えば、アンゲバンテ ヘミー インタナショナル エディション イン イングリッシュ(Angew. Chem. Int. Ed. Engl.)919(1968)、シンセシス(Synthesis)389(1976)記載の方法に準じて行うことができる。
【0028】
[製造法C]
化合物(I)のXがヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基の場合、対応するカルボニル基を有する化合物の還元反応によっても合成することができる。すなわち、式
【化17】

[式中、各記号は前記と同意義を示す。]
化合物(Ib)は、化合物(Ia)の還元反応により製造することができる。化合物(Ic)は、化合物(Ib)をさらに還元反応に付すことにより製造することができる。また、化合物(Ic)は、化合物(Ia)から直接、還元反応により製造することができる。
【0029】
化合物(Ia)から化合物(Ib)への還元反応で用いられる還元試薬としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム、ボラン錯体(ボラン−THF錯体、カテコールボラン等)等が挙げられ、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等が好ましい。還元試薬の使用量は、例えば、化合物(Ia)1モルに対して、約0.1〜約50モル、好ましくは約0.1〜約10モルである。
還元反応は、通常、反応に不活性な溶媒中で行われる。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの溶媒は、適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は、通常、約−80℃〜約80℃、好ましくは約−40℃〜約40℃であり、反応時間は、通常、約5分間〜約48時間、好ましくは約1時間〜約24時間である。
【0030】
化合物(Ia)から化合物(Ib)への還元反応は、接触水素添加反応を用いてもよい。接触水素添加反応は、水素雰囲気中、触媒存在下に行うことが出来る。触媒としては、パラジウム炭素、水酸化パラジウム炭素、酸化パラジウム等のパラジウム類;展開ニッケル触媒等のニッケル類;酸化白金、白金炭素等の白金類;ロジウム炭素等のロジウム類等が挙げられる。その使用量は、化合物(Ia)1モルに対して、約0.001〜約1モル、好ましくは約0.01〜約0.5モルである。
【0031】
接触水素添加反応は、通常、反応に不活性な溶媒中で行われる。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸等のカルボン酸類;水またはそれらの混合物が挙げられる。
反応が行われる水素圧は、通常、約1〜約50気圧であり、好ましくは約1〜約10気圧である。反応温度は、通常、約0℃〜約150℃、好ましくは約20℃〜約100℃であり、反応時間は、通常、約5分間〜約72時間、好ましくは約0.5時間〜約40時間である。
化合物(Ib)から化合物(Ic)への還元反応は、例えば、トリエチルシラン、ボラン等の還元剤を用いる方法、あるいはトリフルオロ酢酸、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム等の酸(ルイス酸)の存在下、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム等の還元剤を用いる方法により行うことができる。還元試薬の使用量は、例えば、化合物(Ib)1モルに対して、約0.1〜約50モル、好ましくは約0.1〜約10モルである。
この時の反応溶媒、反応温度、反応時間は、上記「化合物(Ia)から化合物(Ib)への還元反応」で用いた条件と同様の条件で行うことができる。
化合物(Ib)から化合物(Ic)への還元反応は、接触水素添加反応を用いてもよい。反応条件は、上記「化合物(Ia)から化合物(Ib)への還元反応」での接触水素添加反応と同様の条件を用いることができる。
化合物(Ib)から化合物(Ic)への還元反応として好ましくは、例えばトリエチルシランによる方法が挙げられる。
化合物(Ia)から化合物(Ic)への還元反応は、上記「化合物(Ia)から化合物(Ib)への還元反応」あるいは「化合物(Ib)から化合物(Ic)への還元反応」と同様の条件で行うことができる他、例えば、オーガニック リアクションズ(Org. React.) 4, 378 (1948) 等に記載のヴォルフ−キシュナー(Wolff-Kishner)反応、またはオーガニック リアクションズ(Org. React.) 22, 401 (1975) 等に記載のクレメンゼン還元(Clemmensen reduction)反応による方法、あるいはそれらに準じた方法によって行うことができる。
【0032】
化合物(Ia)から化合物(Ic)への還元反応として、好ましくは、例えば、ヴォルフ−キシュナー反応、またはクレメンゼン還元反応による方法が挙げられる。
【0033】
化合物(I)のうち特に、5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドまたはその塩については、以下の製造法によっても合成することができる。
【化18】

[式中、Zは脱離基を示す。]
Zで示される「脱離基」としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、C1−6アルキルスルホニルオキシ(例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシなど)、C6−10アリールスルホニルオキシ(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシなど)などが用いられる。なかでも、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子など)、メタンスルホニルオキシ等が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
5−クロロペンタノイル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミド(ii)またはその塩と、2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチルアミン(iii)またはその塩とを脱水条件下で反応させ、その生成物(iv)を加水分解することにより、5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミド(i)またはその塩を製造する。
【0034】
本カップリング反応は、無溶媒あるいは適当な溶媒、例えば、炭化水素系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなど)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなど)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリルなど)、アミド系溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、カルボン酸系溶媒(例えば、酢酸など)等に溶解または懸濁して行うことができる。これらは、二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。好ましくは、酢酸プロピル等のエステル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒等が用いられる。
また、本カップリング反応は、適当な塩基を添加して行うのが好ましい。また、塩基を溶媒として用いることもできる。
「塩基」としては、例えば、
1)例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化物(例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウムなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアミド類(例えば、リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の低級アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert−ブトキシドなど)などの強塩基;
2)例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなど)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)などの無機塩基;および
3)例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリンなどのアミン類;例えばDBU(1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデス−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノン−5−エン)などのアミジン類;例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、2,6−ルチジンなどの塩基性複素環化合物などの有機塩基などが挙げられる。
【0035】
「塩基」としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン類等が好ましい。
本カップリング反応はヨウ化ナトリウムや臭化カリウムなどの塩存在下に行ってもよい。
本カップリング反応の際、化合物(ii)は化合物(iii)よりも多めに用い、通常は化合物(iii)1モルに対して化合物(ii)を1ないし3モル量程度用いる。また、化合物(iii)は、その水素原子をあらかじめ金属原子、例えば、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属等で置換しておいてもよい。
本カップリング反応は、−100℃ないし300℃で行うことができるが、0℃ないし150℃が好ましい。反応時間は、例えば、1分ないし1日である。
本カップリング反応における脱水条件とは、(1)Dean−Stark装置あるいはそれと同等の装置を用いて反応系中から反応生成物である水を除去する方法、(2)乾燥剤(例えば、モレキュラーシーブス等)を反応系中に共存させ、反応生成物である水を除去する方法、(3)断続的に反応系中に溶媒を追加し、留去しながら反応生成物である水を共沸除去する方法などが用いられる。
【0036】
有効成分の量は、製剤重量に対して0.01〜90%(W/W)、好ましくは0.03〜80%(W/W)、より好ましくは0.1〜70%(W/W)が望ましい。
【0037】
以下、本発明の製剤の製造法について記載する。
(1)有効成分とアルカリ性pH調節剤を含有してなる製剤
有効成分、アルカリ性pH調節剤、通常製剤化に用いられる賦形剤などを適宜配合して製造することができる。例えば、乳糖、白糖、マンニトール、コーンスターチ、結晶セルロースなどの賦形剤と、有効成分とアルカリ性pH調節剤の配合をヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴール、プルロニックF68、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉などの結合剤を用い、必要ならばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤を加えて撹拌造粒機、湿式押し出し造粒機、流動層造粒機などで製造することにより得られる。かかる製剤としては、腸溶性ポリマーと相互作用する化合物とアルカリ性pH調節剤を含有してなる製剤が好ましい。
腸溶性ポリマーと相互作用する化合物としては、
【化19】

〔式中、Arは、式
【化20】

で表される基(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノ、Rは水素原子またはC1−6アルキル、RはC1−6アルキル、Rは水素原子またはC1−6アルキルを示す)、Xはカルボニル基、あるいはヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基、Lは置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基を示す。〕で表される化合物またはその塩が好ましい。
【0038】
(2)有効成分とアルカリ性pH調節剤とを含有してなる核を腸溶性ポリマーでコーティングした製剤
有効成分とアルカリ性pH調節剤とを含有してなる核は、ノンパレル(Freund社製)、セルフィア(旭化成(株)製)などの不活性担体を核粒として、その上に有効成分、アルカリ性pH調節剤、通常製剤化に用いられる賦形剤を適宜配合してコーティングして製造することができる。例えば、特開昭63−301816に記載の方法によって製造することができる。例えば、不活性担体の核上に有効成分等をコーティングすることにより核粒を得る場合には、例えば遠心転動造粒機(CF−mini、CF−360、Freund社製)あるいは転動造粒装置(パウレック MP−10)などを用い湿式造粒により製造することができる。また結合剤等を含む溶液を不活性担体の核上に噴霧などにて添加しながら有効成分等を散布してコーティングしてもよい。製造装置は限定されないが、例えば、後者のコーティングにおいては遠心転動造粒装置などを用いて製造するのが好ましい。上記の2種の装置によるコーティングを組み合わせて実施して有効成分を2段階でコーティングしてもよい。不活性担体核を用いない場合には、乳糖、白糖、マンニトール、コーンスターチ、結晶セルロースなどの賦形剤と有効成分をヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴール、プルロニックF68、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉などの結合剤を用い、必要ならばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤を加えて撹拌造粒機、湿式押し出し造粒機、流動層造粒機などで製造することにより得られる。
得られた核は篩い分け操作により所望の大きさの粒子を得ることができる。ローラーコンパクターなどによる乾式造粒により核粒を調製してもよい。粒子の大きさとしては10μmから5mm、好ましくは30μmから3mm、さらに好ましくは60μmから2mmの粒子が用いられる。かかる製剤としては、腸溶性ポリマーと相互作用する化合物およびアルカリ性pH調節剤を含有してなる核を、腸溶性ポリマーでコーティングしてなる製剤が好ましい。
【0039】
腸溶性ポリマーを含有する層のコーティングは、有効成分とアルカリ性pH調節剤とを含有してなる核に、腸溶性ポリマーと通常製剤化に用いられる賦形剤とを適宜配合してコーティングして製造することができる。例えば、転動造粒装置(パウレックMP−10)などを用いて製造することができる。腸溶性ポリマーは単独で、あるいは2種以上を組み合わせてコーティングしてもよく、または2種以上のポリマーを順次コーティングして多層にしてもよい。
コーティングに際しては製剤化を行うため必要により添加される賦形剤(例、隠蔽剤(酸化チタンなど)、静電気防止剤(酸化チタン、タルクなど))を適宜加えてもよい。さらに必要に応じてクエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、フタル酸ジエチル、ポリエチレングリコールなどの可塑剤、安定化剤などを用いてもよい。
コーティング量は核重量に対して1−200%(W/W)、好ましくは5−100%(W/W)、より好ましくは10−60%(W/W)が望ましい。
【0040】
(3)有効成分を含有する核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングしてなる製剤
有効成分を含有する核は、ノンパレル(Freund社製)、セルフィア(旭化成(株)製)などの不活性担体を核粒として、その上に有効成分および通常製剤化に用いられる賦形剤を適宜配合してコーティングして製造することができる。例えば、特開昭63−301816に記載の方法によって製造することができる。例えば、不活性担体の核上に有効成分等をコーティングすることにより核粒を得る場合には、例えば遠心転動造粒機(CF−mini、CF−360、Freund社製)あるいは転動造粒装置(パウレック MP−10)などを用い湿式造粒により製造することができる。また結合剤等を含む溶液を不活性担体の核上に噴霧などにて添加しながら有効成分等を散布してコーティングしてもよい。製造装置は限定されないが、例えば、後者のコーティングにおいては遠心転動造粒装置などを用いて製造するのが好ましい。上記の2種の装置によるコーティングを組み合わせて実施して有効成分を2段階でコーティングしてもよい。不活性担体核を用いない場合には、乳糖、白糖、マンニトール、コーンスターチ、結晶セルロースなどの賦形剤と有効成分をヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、マクロゴール、プルロニックF68、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉などの結合剤を用い、必要ならばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤を加えて撹拌造粒機、湿式押し出し造粒機、流動層造粒機などで製造することにより得られる。
得られた核は篩い分け操作により所望の大きさの粒子を得ることができる。ローラーコンパクターなどによる乾式造粒により核粒を調製してもよい。粒子の大きさとしては10μmから5mm、好ましくは30μmから3mm、さらに好ましくは60μmから2mmの粒子が用いられる。かかる製剤としては、腸溶性ポリマーと相互作用する化合物を含有してなる核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングしてなる製剤が好ましい。
【0041】
アルカリ性pH調節剤を含有する層のコーティングは、有効成分を含有する核に、アルカリpH調節剤、コーティング物質、通常製剤化に用いられる賦形剤を適宜配合してコーティングして製造することができる。例えば、転動造粒装置(パウレックMP−10)などを用いて製造することができる。コーティング物質は単独で、あるいは2種以上を組み合わせてコーティングしてもよく、または2種以上のコーティング物質を順次コーティングして多層にしてもよい。
コーティング物質としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどの高分子基剤に、ショ糖(精製白糖)、コーンスターチなどの澱粉糖、乳糖、蜂蜜および糖アルコール(マンニトール,エリスリトールなど)などの糖類を適宜配合したものなどが挙げられる。アルカリ性pH調節剤を含有する層には、この外にも製剤化を行うため必要により添加される賦形剤(例、隠蔽剤(酸化チタンなど)、静電気防止剤(酸化チタン、タルクなど))を適宜加えてもよい。
コーティング量は核重量に対して1−300%(W/W)、好ましくは5−200%(W/W)、より好ましくは10−100%(W/W)が望ましい。
【0042】
腸溶性ポリマーを含有する層のコーティングは、有効成分を含有する核にアルカリ性pH調節剤をコーティングして製造した核に、腸溶性ポリマーと通常製剤化に用いられる賦形剤とを適宜配合してコーティングして製造することができる。例えば、転動造粒装置(パウレックMP−10)などを用いて製造することができる。腸溶性ポリマーは単独で、あるいは2種以上を組み合わせてコーティングしてもよく、または2種以上のポリマーを順次コーティングして多層にしてもよい。
コーティングに際しては製剤化を行うため必要により添加される賦形剤(例、隠蔽剤(酸化チタンなど)、静電気防止剤(酸化チタン、タルクなど))を適宜加えてもよい。さらに必要に応じてクエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、フタル酸ジエチル、ポリエチレングリコールなどの可塑剤、安定化剤などを用いてもよい。
コーティング量は核重量に対して1−200%(W/W)、好ましくは5−100%(W/W)、より好ましくは10−60%(W/W)が望ましい。
【0043】
本製剤の製造の際、中間被覆層をコーティングしてもよい。有効成分が、例えば、アルカリ性pH調節剤に対して不安定な薬物である場合、アルカリ性pH調節剤が腸溶性ポリマーに対して不安定な物質である場合など、中間被覆層を設けて有効成分とアルカリ性pH調節剤との直接の接触を遮断することは、薬剤の安定性の向上を図る上で好ましい。このような中間被覆層は複数の層で形成されていてもよい。
【0044】
中間被覆層用のコーティング物質としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどの高分子基剤に、ショ糖(精製白糖)、コーンスターチなどの澱粉糖、乳糖、蜂蜜および糖アルコール(マンニトール,エリスリトールなど)などの糖類を適宜配合したものなどが挙げられる。中間被覆層には、この外にも製剤化を行うため必要により添加される賦形剤(例、隠蔽剤(酸化チタンなど)、静電気防止剤(酸化チタン、タルクなど))を適宜加えてもよい。
中間被覆層の被覆量は、主薬を含有する核重量に対して、通常、1−150%(W/W)、好ましくは2−100%(W/W)である。被覆は常法によって行える。例えば、これらの中間層被覆層成分を精製水などで希釈し、液状として散布して被覆するのが好ましい。その際、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤を噴霧しながら行うのが好ましい。
【0045】
以下に参考例、実施例、実験例および試験例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、実施例で用いた添加剤(白糖・でんぷん球状顆粒、精製白糖、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、メタクリル酸コポリマーS、メタクリル酸コポリマーL、マンニトール、タルク、クエン酸トリエチル、炭酸水素ナトリウム)は、日本薬局方第15改正あるいは医薬品添加物規格2003適合品を用いた。
参考例1
【0046】
5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミド p−トルエンスルホン酸塩(以下、化合物Aと略記することがある)の製造
(1)5−クロロ−1−(2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)ペンタン−1−オンの製造
【化21】

2,3−ジヒドロベンゾフラン(35.6g,0.296mol)、トルエン(160mL)を混合し攪拌開始した。25℃以下で無水塩化アルミニウム(III)(39.5g,0.296mol,1.00当量)を加えた。20〜30℃で30分間攪拌した。−5〜5℃で5−クロロペンタノイルクロリド(48.3g,0.312mol,1.05当量)を滴下し、トルエン(20mL)で洗い込んだ。−5〜5℃で1時間攪拌した。25℃以下で反応液を氷水(180mL)に滴下した。有機層を分離し水(180mL)で2回洗浄した。約110mLまで減圧濃縮した。20〜30℃で30分間攪拌した。1時間でn−ヘプタン(214mL)を滴下した。冷却し0〜10℃で30分間攪拌した。結晶をろ取し、約50℃で真空乾燥して表題化合物(65.6g,収率92.8%)を得た。
H NMR(CDCl3):δ1.86-1.88 (4H,br), 2.94 (2H,t,J=6.7Hz), 3.25 (2H,t,J=8.7Hz), 3.56-3.60 (2H,m), 4.66 (2H,t,J=8.8Hz), 6.80 (1H,d,J=8.4Hz), 7.80 (1H,d,J=8.4Hz), 7.85 (1H,s).
【0047】
(2)5−(5−クロロペンタノイル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミドの製造
【化22】

塩化チオニル(18.7g,0.157mol,1.00当量)、クロロスルホン酸(73.0g,0.627mol,4.00当量)を混合し、攪拌を開始した。10℃以下で5−クロロ−1−(2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)−1−ペンタン(18.5g,77.5mmol)を分割して加えた。35〜45℃で1.5時間攪拌した。15℃以下で反応液を氷水(187mL)と4−メチル−2−ペンタノン(187mL)の混液に滴下した。20〜30℃で有機層を分離し、飽和食塩水(94mL)で4回洗浄した。10℃以下で10%アンモニア水(112mL)を滴下した。20〜30℃で1時間攪拌した。ヘプタン(750mL)をゆっくり滴下した。冷却し、0〜10℃で30分間攪拌した。結晶をろ取し、約50℃で真空乾燥して表題化合物(22.3g,収率90.5%)を得た。
H NMR(DMSO-d6):δ1.70-1.83 (4H,br), 3.01 (2H,t,J=6.8Hz), 3.31 (2H,t,J=9.4Hz), 3.68 (2H,t,J=6.3Hz), 4.81 (2H,t,J=8.8Hz), 7.37 (2H,s), 8.08 (2H,br).
【0048】
(3)5−[5−({2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミド p−トルエンスルホン酸塩の製造
【化23】

窒素雰囲気下、5−(5−クロロペンタノイル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−7−スルホンアミド(31.8g,0.100mol)、{2−[2−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミン(32.8g,0.160mol,1.60当量)、ヨウ化ナトリウム(15.0g,0.100mol,1.00当量)、炭酸ナトリウム(12.7g,0.120mol,1.20当量)、酢酸n−プロピル(220mL)を混合し攪拌開始した。還流液の水分離を行いながら3時間加熱還流した。40℃以下に冷却し、1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液(100mL)を加えた。有機層を分離し、水(100mL)で2回洗浄した。分離有機層をp−トルエンスルホン酸1水和物(28.5g,0.150mol,1.50当量)の酢酸エチル(220mL)溶液に50〜60℃で加えた。種結晶(0.30g)を加え、50〜60℃で1時間攪拌した。20℃まで徐冷した。室温で終夜静置した。冷却し、0〜10℃で1.5時間攪拌した。結晶をろ取し、約50℃で真空乾燥して表題化合物の粗結晶(55.3g,84.0mmol,収率84.0%)を得た。粗結晶(30.0g,45.5mmol)、水(4.5mL)、アセトン(90mL)を混合し、50〜60℃で加熱溶解した。50〜60℃で酢酸エチル(90mL)を滴下した。種結晶(0.15g)を加え、50〜60℃で30分間攪拌した。得られた懸濁液に50〜60℃で酢酸エチル(240mL)を滴下した。冷却し、0〜10℃で1時間攪拌した。結晶をろ取し、約50℃で真空乾燥して表題化合物(28.6g,43.4mmol,収率95.4%)を得た。
H NMR(DMSO-d6):δ1.67 (4H,brs), 2.28 (3H,s), 2.97-3.33 (10H,m), 4.82 (2H,t,J=8.8Hz), 7.11 (2H,d,J=8.0Hz), 7.37-7.50 (8H,m), 8.10 (2H,d,J=7.1Hz), 8.50 (2H,brs).
参考例2
【0049】
化合物A400μgをpH7.2の50mMリン酸緩衝液40mLに溶解し、モル比として化合物Aの10分の1量にあたる11mgのメタクリル酸コポリマー(オイドラギットS100)を加えた。16時間激しく振とうした後、遠心、ろ過を行い緩衝液中に残存する化合物A量を測定した。化合物Aの不溶化度は71.2%(W/W)であった。
【実施例1】
【0050】
下記組成のうち、化合物A85.5g、精製白糖245.1g、コーンスターチ163.2gおよび低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース85.5gをよく混合し、散布剤とした。遠心転動造粒機(CF−260、フロイント産業株式会社製)に白糖・でんぷん球状顆粒(商品名:ノンパレル-101、フロイント産業株式会社製)を270.0g投入し、ヒドロキシプロピルメトルセルロース2910溶液(4w/w%)を噴霧しながら上記の散布剤をコーティングし球形顆粒を得た。球形顆粒を40℃、16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1400μmの顆粒を得た。

顆粒100.0mg中の組成
白糖・でんぷん球状顆粒 31mg
化合物A 10mg
精製白糖 29mg
コーンスターチ 19mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 1mg
計 100mg
比較例1
【0051】
精製水41.04gと無水エタノール369.36gの混液にメタクリル酸コポリマーSを21.375g、メタクリル酸コポリマーLを7.125gおよびクエン酸トリエチルを2.85g溶解し、得られる溶液にタルク14.25gを分散させコーティング溶液を製造した。実施例1で得た球状顆粒95gに、上記コーティング溶液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)中で給気温度35℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2の条件でコーティングすることにより、pH依存的(一定のpH以上の環境で活性成分を放出する)な溶解をする放出制御膜をコーティングした下記組成の放出制御顆粒を得た。球形顆粒を40℃、16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1400μmの腸溶性顆粒を得た。

放出制御顆粒148mg中の組成
実施例1の顆粒 100mg
メタクリル酸コポリマーS 22.5mg
メタクリル酸コポリマーL 7.5mg
タルク 15mg
クエン酸トリエチル 3mg
計 148mg
比較例2
【0052】
実施例1で得られた顆粒にマンニトール層コーティング液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)を用いてコーティングし、そのまま乾燥し下記組成の顆粒を得た。マンニトール層コーティング溶液は、精製水380.0gにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を11.4g、マンニトールを28.5g溶解し、タルク17.1gを分散させ製造した。コーティング操作条件は給気温度:55℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2で行った。

マンニトール層コーティング顆粒160mg中の組成
実施例1の顆粒 100.0mg
マンニトール 30mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12mg
タルク 18mg
計 160mg
比較例3
【0053】
比較例2で得られた顆粒に中間層コーティング液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)を用いてコーティングし、そのまま乾燥し下記組成の顆粒を得た。中間層コーティング溶液は、精製水125.0gにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を6.25g溶解し、タルク6.25gを分散させ製造した。コーティング操作条件は給気温度:55℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2で行った。得られた球形顆粒を40℃で16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1700μmの顆粒を得た。

中間層コーティング顆粒112.5mg中の組成
比較例2の顆粒 100.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 6.25mg
タルク 6.25mg
計 112.5mg
比較例4
【0054】
精製水41.04gと無水エタノール369.36gの混液にメタクリル酸コポリマーSを21.375g、メタクリル酸コポリマーLを7.125gおよびクエン酸トリエチルを2.85g溶解し、得られる溶液にタルク14.25gを分散させコーティング溶液を製造した。比較例3で得た球状顆粒95gに、上記コーティング溶液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)中で給気温度35℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2の条件でコーティングすることにより、pH依存的(一定のpH以上の環境で活性成分を放出する)な溶解をする放出制御膜をコーティングした下記組成の放出制御顆粒を得た。得られた球形顆粒を40℃で16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1700μmの腸溶性顆粒を得た。

放出制御顆粒148mg中の組成
比較例3の顆粒 100mg
メタクリル酸コポリマーS 22.5mg
メタクリル酸コポリマーL 7.5mg
タルク 15mg
クエン酸トリエチル 3mg
計 148mg
【実施例2】
【0055】
下記組成のうち、化合物A35g、精製白糖73.1g、コーンスターチ66.5g、炭酸水素ナトリウム23.6gおよび低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース35gをよく混合し、散布剤とした。遠心転動造粒機(CF−160、フロイント産業株式会社製)に白糖・でんぷん球状顆粒(商品名:ノンパレル-101、フロイント産業株式会社製)を110.0g投入し、ヒドロキシプロピルメトルセルロース2910溶液(4w/w%)を噴霧しながら上記の散布剤をコーティングし球形顆粒を得た。球形顆粒を40℃、16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1400μmの顆粒を得た。

顆粒100.0mg中の組成
白糖・でんぷん球状顆粒 32mg
化合物A 10mg
精製白糖 21mg
コーンスターチ 19mg
炭酸水素ナトリウム 7mg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 1mg
計 100mg
【実施例3】
【0056】
実施例2で得られた顆粒に中間層コーティング液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)を用いてコーティングし、そのまま乾燥し下記組成の顆粒を得た。中間層コーティング溶液は、精製水125.0gにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を6.25g溶解し、タルク6.25gを分散させ製造した。コーティング操作条件は給気温度:55℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2で行った。得られた球形顆粒を40℃で16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1400μmの顆粒を得た。

中間層コーティング顆粒112.5mg中の組成
実施例2の顆粒 100.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 6.25mg
タルク 6.25mg
計 112.5mg
【実施例4】
【0057】
精製水41.04gと無水エタノール369.36gの混液にメタクリル酸コポリマーSを21.375g、メタクリル酸コポリマーLを7.125gおよびクエン酸トリエチルを2.85g溶解し、得られる溶液にタルク14.25gを分散させコーティング溶液を製造した。実施例3で得た球状顆粒95gに、上記コーティング溶液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)中で給気温度35℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2の条件でコーティングすることにより、pH依存的(一定のpH以上の環境で活性成分を放出する)な溶解をする放出制御膜をコーティングした下記組成の放出制御顆粒を得た。得られた球形顆粒を40℃で16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1700μmの腸溶性顆粒を得た。

放出制御顆粒148mg中の組成
実施例3の顆粒 100mg
メタクリル酸コポリマーS 22.5mg
メタクリル酸コポリマーL 7.5mg
タルク 15mg
クエン酸トリエチル 3mg
計 148mg
【実施例5】
【0058】
実施例1で得られた顆粒にアルカリ層コーティング液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)を用いてコーティングし、そのまま乾燥し下記組成の顆粒を得た。アルカリ層コーティング溶液は、精製水200gにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を8gおよび炭酸水素ナトリウムを20g溶解し、得られる溶液にタルク12gを分散させ製造した。コーティング操作条件は給気温度:55℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2で行った。

アルカリ層コーティング顆粒160mg中の組成
実施例1の顆粒 100mg
炭酸水素ナトリウム 30mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12mg
タルク 18mg
計 160mg
【実施例6】
【0059】
実施例5で得られた顆粒に中間層コーティング液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)を用いてコーティングし、そのまま乾燥し下記組成の顆粒を得た。中間層コーティング溶液は、精製水125.0gにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910を6.25g溶解し、タルク6.25gを分散させ製造した。コーティング操作条件は給気温度:55℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2で行った。得られた球形顆粒を40℃で16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1700μmの顆粒を得た。

中間層コーティング顆粒112.5mg中の組成
実施例5の顆粒 100.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 6.25mg
タルク 6.25mg
計 112.5mg
【実施例7】
【0060】
精製水27.36gと無水エタノール246.24gの混液にメタクリル酸コポリマーSを14.25g、メタクリル酸コポリマーLを4.75gおよびクエン酸トリエチルを1.90g溶解し、得られる溶液にタルク9.5gを分散させコーティング溶液を製造した。実施例6で得た球状顆粒95gに、上記コーティング溶液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)中で給気温度35℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2の条件でコーティングすることにより、pH依存的(一定のpH以上の環境で活性成分を放出する)な溶解をする放出制御膜をコーティングした下記組成の放出制御顆粒を得た。得られた球形顆粒を40℃で16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1700μmの腸溶性顆粒を得た。

放出制御顆粒148mg中の組成
実施例6の顆粒 100mg
メタクリル酸コポリマーS 15mg
メタクリル酸コポリマーL 5mg
タルク 10mg
クエン酸トリエチル 2mg
計 132mg
【実施例8】
【0061】
精製水41.04gと無水エタノール369.36gの混液にメタクリル酸コポリマーSを21.375g、メタクリル酸コポリマーLを7.125gおよびクエン酸トリエチルを2.85g溶解し、得られる溶液にタルク14.25gを分散させコーティング溶液を製造した。実施例6で得た球状顆粒95gに、上記コーティング溶液を転動攪拌流動層コーティング機(SPIR−A−FLOW、フロイント産業株式会社製)中で給気温度35℃、ロータ回転数:100rpm、注液速度:2.5g/分、スプレーエア圧力:1.0kg/cm2の条件でコーティングすることにより、pH依存的(一定のpH以上の環境で活性成分を放出する)な溶解をする放出制御膜をコーティングした下記組成の放出制御顆粒を得た。得られた球形顆粒を40℃で16時間真空乾燥し、丸篩で篩過し710μm〜1700μmの腸溶性顆粒を得た。

放出制御顆粒148mg中の組成
実施例6の顆粒 100mg
メタクリル酸コポリマーS 22.5mg
メタクリル酸コポリマーL 7.5mg
タルク 15mg
クエン酸トリエチル 3mg
計 148mg
【実施例9】
【0062】
実施例7で得た腸溶性顆粒312.5mgを2号ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル2個に充填してカプセル剤(化合物A:10mg相当)を得た。
比較例5
【0063】
比較例1で得た腸溶性顆粒178.6mgを2号ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル2個に充填してカプセル剤(化合物A:10mg相当)を得た。
実験例1
【0064】
本発明および従来の技術で製造した腸溶性顆粒を溶出試験により評価した。
実施例4、7、8および比較例1、4で得られた腸溶性顆粒について、溶出試験(パドル法、pH6.8の50mMリン酸バッファー、900mL、回転数50rpm)を行った。その結果を表1に示す。
従来の技術と比較して、本発明の技術で製造した腸溶性顆粒では、溶出開始時間後の化合物Aの溶出速度および溶出量が増加し、溶出性が改善された。
【0065】
表1



実験例2
【0066】
実施例9で得たカプセル剤を絶食下のカニクイザルに水10mLとともに経口投与した。投与後、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、24時間の化合物Aの血漿中薬物濃度はそれぞれ1ng/mL、2ng/mL、7ng/mL、113ng/mL、58ng/mL、37ng/mL、31ng/mL、6ng/mLであった。また、24時間までの血中濃度曲線下面積は618.3ng・h/mLであった。
比較例5で得たカプセル剤を絶食下のカニクイザルに水10mLとともに経口投与した。投与後、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、24時間の化合物Aの血漿中薬物濃度はそれぞれ0ng/mL、0ng/mL、34ng/mL、35ng/mL、27ng/mL、16ng/mL、12ng/mL、7ng/mLであった。また、24時間までの血中濃度曲線下面積は266.5ng・h/mLであった。
従来の技術と比較して、本発明の技術で製造した腸溶性顆粒では、カニクイザルへの投与において化合物Aの吸収量が増加した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の方法により、腸溶性ポリマーコーティング製剤中の有効成分の溶出性を改善し、生体における有効成分の吸収量を増加できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性pH調節剤を用いることを特徴とする、腸溶性ポリマーコーティング製剤中の有効成分の溶出改善方法。
【請求項2】
有効成分が、腸溶性ポリマーと相互作用する化合物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
有効成分が、塩基性官能基を有する化合物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
有効成分が、式
【化1】

〔式中、Arは、式
【化2】

で表される基(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノ、Rは水素原子またはC1−6アルキル、RはC1−6アルキル、Rは水素原子またはC1−6アルキルを示す)、Xはカルボニル基、あるいはヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基、Lは置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基を示す。〕で表される化合物またはその塩である請求項1記載の方法。
【請求項5】
有効成分が、5-[5-({2-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}アミノ)ペンタノイル]-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-7-スルホンアミドのp-トルエンスルホン酸塩である請求項1記載の方法。
【請求項6】
アルカリ性pH調節剤が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸ニカリウムから選ばれる1または2以上の化合物である請求項1記載の方法。
【請求項7】
腸溶性ポリマーコーティング製剤が、(1)有効成分と(2)アルカリ性pH調節剤とを含有してなる核を腸溶性ポリマーでコーティングした製剤である請求項1記載の方法。
【請求項8】
腸溶性ポリマーコーティング製剤が、有効成分を含有する核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングしてなる製剤である請求項1記載の方法。
【請求項9】
(1)腸溶性ポリマーと相互作用する化合物と(2)アルカリ性pH調節剤を含有してなる製剤。
【請求項10】
(1)腸溶性ポリマーと相互作用する化合物および(2)アルカリ性pH調節剤を含有してなる核を、腸溶性ポリマーでコーティングしてなる製剤。
【請求項11】
腸溶性ポリマーと相互作用する化合物を含有してなる核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングしてなる製剤。
【請求項12】
腸溶性ポリマーと相互作用する化合物が、式
【化3】

〔式中、Arは、式
【化4】

で表される基(式中、Yはメチレンまたは酸素原子、Rはアミノスルホニル、C1−6アルキル−アミノスルホニル、C1−6アルキル−カルボニルアミノまたはC1−6アルキル−スルホニルアミノ、Rは水素原子またはC1−6アルキル、RはC1−6アルキル、Rは水素原子またはC1−6アルキルを示す)、Xはカルボニル基、あるいはヒドロキシ基で置換されてもよいメチレン基、Lは置換基を有していてもよいC4−5アルキレン基を示す。〕で表される化合物またはその塩である請求項9ないし11のいずれか1項記載の製剤。
【請求項13】
(1)腸溶性ポリマーと相互作用する化合物と(2)アルカリ性pH調節剤を配合することを特徴とする製剤の製造方法。
【請求項14】
(1)腸溶性ポリマーと相互作用する化合物および(2)アルカリ性pH調節剤を含有してなる核を、腸溶性ポリマーでコーティングすることを特徴とする製剤の製造方法。
【請求項15】
腸溶性ポリマーと相互作用する化合物を含有してなる核を、アルカリ性pH調節剤を含有する第一層でコーティングし、さらに腸溶性ポリマーを含有する第二層でコーティングすることを特徴とする製剤の製造方法。

【公開番号】特開2008−214249(P2008−214249A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52962(P2007−52962)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】