説明

製品保管方法,製品保管装置,加工システム,被保管製品の製造方法,及び被保管製品

【課題】多くの工数及び大きい負荷が生じることなく、異なる厚さの加工製品を高いスペース効率で保管することができる製品保管方法を提供する。
【解決手段】板状又は立体状の加工製品(W)を集合保管する製品保管方法である。所定の経路で循環移動する紐状又は帯状の無端循環部材(34a)に加工製品(W)を保持可能な複数のホルダ(36)を所定のピッチ(P1)で取り付けておき、加工製品(W)の厚さ(hz)に応じてホルダ(36)の間隔を選定する。無端循環部材(34a)を循環移動させると共に、複数のホルダ(36)の内、選定した間隔に対応したホルダ(36)に加工製品(W)を保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品保管方法,製品保管装置,加工システム,被保管製品の製造方法,及び被保管製品に係り、特に、曲げ加工装置で立体状に加工された製品を一時的に集合保管する用途に好適な製品保管方法,製品保管装置,加工システム,被保管製品の製造方法,及び被保管製品に関する。
【背景技術】
【0002】
製品保管装置として、曲げ加工機で立体状に加工された製品を一時的にパレット座の上に縦置きで密着並積する集積装置が特許文献1に記載されている。
この集積装置のパレット座に所定間隔で仕切りを設け、隣接する仕切り間に製品を収めれば、製品同士を接触させずに一時的に集積保管することができる。仕切りの所定間隔は、立体状に加工された製品をできるだけ近接収納して高いスペース効率を得るために、必要最小限の間隔とする。
このような仕切りを設けた製品保管装置を汎用化する場合、異なる厚さ(高さ)の立体状製品を保管できるようにする必要がある。そこで、製品保管におけるスペース効率を高めるために、仕切りの間隔を段階的に変更できるようにした収納装置が検討され、一例が特許文献2に開示されている。特許文献2には、曲げ加工製品ではないが立体的な材料をこのような思想で収納する収納装置の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−69947号公報
【特許文献2】特開2006−68358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、製品保管装置の仕切り間隔を変更できるようにした場合、その変更作業は容易とは言い難い。特に、厚みが小さい(高さが低い)製品の保管に利用した場合には、その分仕切りの枚数が多くなるので、仕切りの取り付け作業や、より厚みが大きい製品の保管に利用する際に行う仕切りの取り外し作業には多くの工数がかかる。
また、仕切りは製品と同等かそれ以上の大きさが必要であり、製品が大型の場合、仕切り装脱時において作業者にかかる負荷は大きい。
また、外した仕切りは、いずれ使用するので保管しておかなければならず、そのための保管スペースが必要となる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、多くの工数及び大きい負荷が生じることなく、異なる厚さの曲げ加工製品を高いスペース効率で保管することができる製品保管方法,製品保管装置,加工システム,被保管製品の製造方法,及び被保管製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の手順及び構成を有する。
1) 板状又は立体状の加工製品(W)を集合保管する製品保管方法であって、
所定の経路で循環移動する紐状又は帯状の無端循環部材(34a)に、前記加工製品(W)を保持可能な複数のホルダ(36)を所定のピッチ(P1)で取り付けておき、
前記加工製品(W)の厚さ(hz)に応じて前記加工製品(W)を保持させるホルダ(36)の間隔を選定し、
前記無端循環部材(34a)を循環移動させると共に、前記複数のホルダ(36)の内、選定した前記間隔に対応したホルダ(36)に前記加工製品(W)を保持させることを特徴とする製品保管方法である。
2) 前記間隔を、前記ピッチ(P1)のn倍(n:自然数)であって、前記厚さ(hz)を越える最小値に選定することを特徴とする1)に記載の製品保管方法である。
3) 前記間隔毎に前記無端循環部材(34a)を停止させて前記循環移動を間欠的に行うことを特徴とする1)又は2)に記載の製品保管方法である。
4) 前記ホルダ(36)は、前記加工製品(W)を立てた姿勢で、上下方向に離隔する少なくとも2箇所の部位(36a)(36b)で接触して保持することを特徴とする1)〜3)のいずれか一つに記載の製品保管方法である。
5) 板状又は立体状の加工製品(W)を集合保管する製品保管装置(51)であって、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材(34a)と、
前記無端循環部材(34a)に所定のピッチ(P1)で取り付けられ前記加工製品(W)を保持可能な複数のホルダ(36)と、
前記無端循環部材(34a)を循環移動させる駆動部(4)と、
を備え、
前記駆動部(4)は、前記加工製品(W)の厚さ(hz)に応じて選択された前記ピッチ(P1)のn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材(34a)を間欠的に循環移動させることを特徴とする製品保管装置(51)である。
6) 前記ホルダ(36)は、立てた姿勢の前記加工製品(W)を、上下方向に離隔する少なくとも2箇所の部位(36a)(36b)で接触して保持するよう構成されていることを特徴とする5)に記載の製品保管装置(51)である。
7) 前記無端循環部材(34a)はチェーンであることを特徴とする5)又は6)に記載の製品保管装置(51)である。
8) 前記ホルダ(36)は、前記加工製品(W)が挿入され得るスリット(36d)を有していることを特徴とする5)〜7)のいずれか一つに記載の製品保管装置(51)である。
9) 前記ホルダ(36)は、前記加工製品(W)を、互いの凹凸係合によって吊り下げ保持するよう構成されていることを特徴とする5)〜8)のいずれか一つに記載の製品保管装置(51)である。
10) 第1の加工装置(61)と、
前記第1の加工装置(61)で加工された第1段階の加工製品(W61)を一時的に集合保管する第1の保管装置(64,51B)と、
前記第1の保管装置(64,51B)から搬出された前記第1段階の加工製品(W61)に対し加工して第2段階の加工製品(W62)とする第2の加工装置(62)と、
前記第1の保管装置(64,51B)と共に上下方向に重ねて配置され、前記第2段階の加工製品(W62)を一時的に集合保管する第2の保管装置(51,51T)と、を備え、
少なくとも前記第2の保管装置(51,51T)は、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材(34a)と、
前記無端循環部材(34a)に所定のピッチ(P1)で取り付けられ前記加工製品(W62)を保持可能な複数のホルダ(36)と、
前記無端循環部材(34a)を循環移動させる駆動部(4)と、を有すると共に、
前記駆動部(4)が、前記加工製品(W62)の厚さ(hz)に応じて選択された前記ピッチ(P1)のn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材(34a)を間欠的に循環移動させるよう構成されており、
さらに、前記第1の保管装置(64,51B)は、前記第1段階の加工製品(W61)を一側部(SB1)側からを受け入れると共に前記一側部(SB1)側へ搬出し、前記第2の保管装置(51,51T) は、前記第2段階の加工製品(W62)を前記一側部(SB1)側から受け入れると共に前記一側部(SB1)とは反対の他側部(SB2)側へ搬出するよう構成されている加工システム(KS,KSA)である。
11) 前記第2の保管装置(51,51T)から搬出される前記第2段階の加工製品(W62)を取り出すための開口部(63b,163b)を有して前記第2の保管装置(51,51T)の前記他側部(SB2)に対向して設けられたパネル(PN)を備えたことを特徴とする10)に記載の加工システム(KS,KSA)である。
12) 製品保管装置(51)において吊り下げにより集合保管される被保管製品(W)の製造方法であって、
前記製品保管装置(51)は、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材(34a)と、
前記無端循環部材(34a)に所定のピッチで取り付けられ、前記被保管製品(W)の周縁部に設けられた第1の所定形状部(KG)に係合する第2の所定形状部(HKG)を有して前記被保管製品(W)を吊り下げ保持可能とされた複数のホルダ(36)と、
前記無端循環部材(34a)を循環移動させる駆動部(4)と、
を備え、
前記駆動部(4)は、前記被保管製品(W)の所定の厚さ(hz)に応じて選択された前記ピッチ(P1)のn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材(34a)を間欠的に循環移動させるよう構成されており、
平板状の素材に対し、前記素材から得る最終製品の展開形状を外形形状としてなる中間製品(We)をミクロジョイント部(mj)を除いて切断して形成すると共に、前記素材の周縁部に前記第1の所定形状部(KG)を切断により形成する切断工程と、
前記切断工程で得られた前記中間製品(We)に対し、外形厚さを前記素材の厚さよりも厚くなるよう増厚変形を施して前記所定の厚さ(hz)を有する前記被保管製品(W)とする増厚加工工程と、を含むことを特徴とする被保管製品の製造方法である。
13) 製品保管装置(51)において吊り下げにより集合保管され得る被保管製品(W)であって、
前記製品保管装置(51)は、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材(34a)と、
前記無端循環部材(34a)に所定のピッチ(P1)で取り付けられ、前記被保管製品(W)の周縁部に設けられた第1の所定形状部(KG)に係合する第2の所定形状部(HKG)を有して前記被保管製品(W)を吊り下げ保持可能とされた複数のホルダ(36)と、
前記無端循環部材(34a)を循環移動させる駆動部(4)と、
を備え、
前記駆動部(4)は、前記被保管製品(W)の所定の厚さ(hz)に応じて選択された前記ピッチ(P1)のn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材(34a)を間欠的に循環移動させるよう構成されており、
平板状の素材に、
前記素材からミクロジョイント部(mj)を除いて切断され、前記素材から得る最終製品の展開形状を外形形状として有すると共に外形厚さが前記素材の厚さよりも厚くなるように加工された加工部(Wm1)を有する中間製品(We)と、
前記素材の周縁部に形成された前記第1の所定形状部(KG)と、
を有してなることを特徴とする被保管製品(W)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多くの工数及び大きい負荷が生じることなく、異なる厚さの曲げ加工製品を高いスペース効率で保管することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製品保管装置の実施例を説明するための斜視図である。
【図2】本発明の製品保管装置の実施例を説明するための三面図である。
【図3】本発明の製品保管装置の実施例における要部を説明するための断面図である。
【図4】本発明の製品保管装置の実施例におけるチェーンを説明するための部分斜視図である。
【図5】本発明の製品保管装置の実施例で保管する加工製品を説明するための斜視図である。
【図6】本発明の製品保管装置の実施例で保管する加工製品を説明するための要部拡大図である。
【図7】本発明の製品保管装置の実施例におけるホルダを説明する斜視図である。
【図8】本発明の製品保管装置の実施例におけるホルダで加工製品を保持させた状態を説明する斜視図である。
【図9】本発明の製品保管装置の実施例におけるホルダで保持する加工製品を説明するための側面図である。
【図10】本発明の製品保管装置の実施例において、加工製品の複数個を保持した状態を説明する上面図である。
【図11】本発明の製品保管装置の実施例において、別の加工製品の複数個を保持した状態を説明する上面図である。
【図12】本発明の製品保管装置の実施例において、さらに別の加工製品の複数個を保持した状態を説明する上面図である。
【図13】本発明の製品保管装置の実施例を含む保管システムにおけるブロック図である。
【図14】本発明の製品保管装置の実施例を含む保管システムにおける動作を説明するためのフロー図である。
【図15】本発明の加工システムの実施例を説明するための二面図である。
【図16】本発明の加工システムの実施例における製品保管装置を説明するための斜視図である。
【図17】本発明の加工システムの実施例における製品保管装置を説明するための三面図である。
【図18】本発明の加工システムの実施例に用いられる保持アクチュエータを説明するための斜視図である。
【図19】本発明の加工システムの実施例で用いられる保持アクチュエータの動作を説明するための部分断面図である。
【図20】本発明の加工システムの実施例における変形例を説明するための二面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図20を用いて説明する。
【0010】
<実施例>
まず、図1〜図4を参照して、本発明の製品保管装置の実施例である保管装置51の概要について説明する。
図1は、本発明の製品保管装置の実施例である保管装置51の外観斜視図である。図2(a)〜(c)は、保管装置51の三面図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は左側面図、図2(c)は上面図である。図1及び図2(a)〜(c)は、加工製品Wを一つ保持した状態が示されている。図3は、図2におけるSec1−Sec1位置での断面図である。図4は、保管装置51におけるチェーン34a,34bを説明するための部分斜視図である。
保管装置51には、便宜的に図1に矢印で示される上下左右前後の方向を規定し、以下、この方向に従って説明する。
【0011】
保管装置51は、加工製品Wを集めて保管する装置であり、特に一時的に集合保管する場合に好適な装置である。
保管装置51は、床面Gに設置されるH字状の台座1と、台座1から上方に向けて立設した一対の支柱2と、支柱2により支持され製品を保持する保持部3と、台座1に取り付けられ保持部3を駆動する駆動部4と、駆動部4の駆動力を保持部3に伝達するシャフト5と、を有して構成されている。
【0012】
保持部3は、左右方向に延在したフレーム部31を有する。フレーム部31の左端部には、回動軸線CL32が上下方向となる姿勢でローラ32が取り付けられている。ローラ32は、シャフト5に直接的又は間接的に連結されており、駆動部4の駆動により回動軸線CL32まわりの所定方向に回転するようになっている。この所定方向は、例えば図2(c)における時計まわり方向(矢印DR1)である。
フレーム部31の右端部には、回動軸線CL33が上下方向となる姿勢でローラ33が回転自在に取り付けられている。
ローラ32には、上下方向に所定の距離d1〔図2(a)参照〕だけ離隔して一対のスプロケット32a,32bが取り付けられている。また、ローラ33には、上下方向に所定の距離d1だけ離隔して一対のスプロケット33a,33bが取り付けられている。
上側のスプロケット32aとスプロケット33aとは、上下方向において同じ高さ位置に設けられ、両スプロケット32a,33aにチェーン34aが掛け渡されている。
下側のスプロケット32bとスプロケット33bとは、上下方向において同じ高さ位置に設けられ、両スプロケット32b,33bにチェーン34bが掛け渡されている。
【0013】
チェーン34a,34bは、図4に示されるように、上下のプレート35p,35pそれぞれにボルト孔35aが形成されたフランジ35を備えている。
チェーン34a,34bには、加工製品Wを保持するための部材であるホルダ36が、フランジ35のボルト孔35aを利用して所定の間隔にて所定数ネジ止めされている。所定の間隔は、例えば一定のいわゆるピッチP1とされる。
このピッチP1にて、チェーン34a,34bの全長が等分割されるように、チェーン34a,34bのリンク数と、ホルダ36の所定の個数と、回動軸線CL32,CL33の間隔L1〔図2(c)参照〕と、の関係が相互に設定されている。
チェーンは、その替わりとしてベルトを用いてもよい。また、ベルト以外のものでもよく、紐状又は帯状の無端(エンドレス)なる循環部材とされ、駆動部4の駆動により、所定の経路(軌道)を循環移動するものであればよい。
【0014】
ここで、フレーム部31の断面構造を、図2におけるSec1−Sec1位置での断面図である図3も参照して説明する。
図3において、フレーム部31は、上面プレート部31a,中プレート31d,及び下プレート31eと、各プレート間に配置された支持体31b及び支持体31cと、を有し、各部材同士がねじ締結等で一体化された構造になっている。この構造は一例であり、限定されるものではない。
上面プレート部31aにおける前方側縁部及び後方側縁部それぞれには、ガイドレール37a,37bが設けられている。ガイドレール37a,37bは、例えばパイプ状の部材とされている。
一方、各ホルダ36には、その上方側において、水平方向に延びる回動軸線CL36fを中心として自由に回転するアイドラ36fが設けられている。そして、このアイドラ36fは、チェーン34a,34bの循環移動に伴ってガイドレール37a,37b上を転動するようになっている。
これにより、ホルダ36の姿勢がより安定すると共に、ホルダ36が保持した加工製品Wの質量及びホルダ36自身の質量を、フレーム部31で確実に受けることができるようになっている。すなわち、加工製品Wの質量及びホルダ36の質量に基づく鉛直下方向への力Fgがガイドレール37a,37bとの当接点TS1にてフレーム部31側へ伝達される。
【0015】
チェーン34a,34bは、それぞれ中プレート31d,下プレート31eによってフレーム部31の中心軸線CL31に向かう移動が規制されている。
これにより、当接点TS1を支点として各チェーン34a,34bに生じたモーメントM1,M2に起因するホルダ36の回動を規制することができる。
この規制される回動は、図3における左側のホルダ36については反時計まわり方向の回動であり、右側のホルダ36については時計まわり方向の回動である。
ホルダ36は、加工製品Wの質量が大きくても、チェーン34aのみならずチェーン34bも設けてホルダ36の下側がチェーン34bに固定されていること、及びモーメントM2によるホルダ36の回動をチェーン34bを介してフレーム部31で規制できることにより、加工製品Wを極めて安定的に保持することができる。
【0016】
加工製品Wの質量が、その保持により生じるモーメントM1に対し上側のチェーン34aとフレーム部31とによって強度的に支障のなく回動規制ができる質量であれば、下側のチェーン34b及びそれに係る構造を設けることなくホルダ36により加工製品Wは良好に保持される。
【0017】
上述の保管装置51は、台座1を有して床置き状態で使用するものを説明したが、上方(天井等)の梁等に支柱2を接続して点吊り状態で使用するものであってもよい。
【0018】
次に、保管装置51で一時保管される加工製品Wについて図5及び図6を参照して説明する。
図5に示されるように、加工製品Wは、平板状の素材から形成され、例えば、対向する一対の縦辺Waと対向する一対の横辺Wbとからなる矩形の外形形状を有し、最終的に製品となる部分である中間体Weが一つ又は複数形成されるようレーザ加工と曲げ加工とをこの順で施された途中段階の製品である。図5では、中間体Weが二つ形成される加工製品Wが示されている。
中間体Weは、周囲をレーザ加工により複数箇所のミクロジョイントmjを残して切断されると共に、レーザ加工後の曲げ加工で起こされた折り曲げ部Wm1,Wm2を有する加工途中段階のものである。
折り曲げ部Wm1の、加工製品Wにおける表面Wpからの高さをh1とし、折り曲げ部Wm2の加工製品Wにおける表面Wpからの高さをh2とする。ここでは、例えば、h2<h1とされている。
【0019】
加工製品Wには、保管装置51で保管できるようにするための所定の形状なる係合部KGが形成されている。係合部KGは、例えばスリット部Wsである。具体的には、スリット部Wsは加工製品Wの一つの隅部(図5における右上隅)に形成されている。スリット部Wsが設けられる隅部は、加工製品Wの保管姿勢における地面から遠い側(天側)となる隅部である。スリット部Wsは、例えばレーザ加工で形成される。
スリット部Wsは、図6に詳細が示されるように、縦辺Wa側を開口部Ws1として保管姿勢における水平方向に、所定の幅d2及び奥行きd3で切り込まれた切り込みWs2と、切り込みWs2の奥側において上方に向け所定の幅d4で抉られた切り込みWs3とを有して形成されている。
切り込みWs1の上方側における、切り込みWs3と縦辺Waとの間の部位は、首部Ws2bとされている。
【0020】
次に、加工製品Wを直接保持するホルダ36について図7を主に参照して詳述する。
図7に示されるように、ホルダ36は、一方向(図7の上下方向)に延在する基部36kと、基部36kの両端部から同じ側に、ほぼ90°の曲げ角度で折り曲げられた長腕部36aと短腕部36bとを有するように形成されている。短腕部36bは、長腕部36aよりも短く形成されている。
基部36kには、チェーン34aのフランジ35のボルト孔35aとの共締めを可能にするための孔36k1と、チェーン34bのフランジ35のボルト孔35aとの共締めを可能にするための孔36k2とが、それぞれ複数個形成されている。
また、基部36kの上方側には、上述のアイドラ36fが、回動軸線CL36fまわりに回動自由に取り付けられている。
【0021】
ホルダ36は、その上方部に、加工製品Wの係合部KGが係合する被係合部HKGが形成されている。係合部KGと被係合部HKGとは、所定の形状同士で、例えば凹凸係合で互いに係合するようになっている。被係合部HKGは、長腕部36aと、それに形成された係合スリット36d及び係合孔36cと、を含んで構成されている。
すなわち、長腕部36aは、基部36k側において、所定の幅d5及び長さd6なる矩形の係合孔36cを有している。また、長腕部36aは、その先端側が開口部36d1とされ、開口部36d1から基部36kに向かって少なくとも奥側が一定の所定の幅d7となるよう切り込まれた係合スリット36dを有している。係合スリット36dの開口部36d1側は、基部36kから離れるに従って拡幅するテーパ部36d2とされている。
係合スリット36dには保持する加工製品Wが挿入される。従って、所定の幅d5,d7は、加工製品Wをがたなく保持できるように、加工製品Wの板厚tに対し、ほぼ同じか僅かに大きく設定されている。
一方、短腕部36bは、先端側が開口部36e1とされ基部36kに向かって略V字状に切り込まれた当接スリット36eを有している。
【0022】
図8には、ホルダ36で加工製品Wを保持した状態が示されている。加工製品Wは、その係合部KGがホルダ36の被係合部HKGに係合して保持される。
ホルダ36に加工製品Wを保持させるには、チェーン34a,34bに対して基部36kが上下方向に延在する姿勢で固定されたホルダ36に対し、まず、加工製品Wを立てた姿勢として係合スリット36dに差し込む。この差し込みは、係合スリット36dにテーパ部36d2が設けられているので大変容易である。
次に、加工製品Wを、そのスリット部Wsに長腕部36aにおける係合スリット36dよりも根本側が入り込むようにやや持ち上げながら差し込み、切り込みWs2の最奥部Ws2a(図6参照)に、係合スリット36dの奥端部36d3(図7参照)が当接したら持ち上げを解除して自然状態にする。これにより、切り込みWs2の首部Ws2b(図6参照)が係合孔36cに係合し、下方向の移動が規制される。
ここで、係合孔36cの長さd6は、首部Ws2bの幅寸法(d3−d4)に対しほぼ同じか僅かに小さく設定されているので、加工製品Wは、長腕部36aの延在方向のがたがほとんどない状態でホルダ36に保持される。
【0023】
図8において、加工製品Wには、長腕部36aとの係合部分を支点S1として、矢印Mで示されるモーメントMが生じる。このモーメントMによる回動を規制するために、長腕部36aから下方に距離L2だけ離隔した位置に短腕部36bが設けられ、その当接スリット36eに加工製品Wが差し込まれて縦辺Waを当接部位S2にて当接させるようになっている。
当接スリット36eはV字状に形成されているので、加工製品Wを長腕部36aの係合スリット36dに立てた姿勢で挿入すれば、当接スリット36e内に自然に誘導されるようになっている。
ホルダ36が、加工製品Wを、係合スリット36dと当接スリット36eとの上下方向に離隔した二箇所以上の部位によって保持するので、加工製品Wが大型であっても、また、重量物であっても、安定して保持できる。
【0024】
次に、ホルダ36がチェーン34a,34bに取り付けらている間隔であるピッチP1について、説明する。
ピッチP1の設定は次のように行う。すなわち、曲げ加工により表面から起こされた部位を有してホルダ36に保持され得る種々の加工製品Wそれぞれについて、一方の表面Wpaからの最大曲げ高さhamaxと、他方の表面Wpbからの最大曲げ高さhbmaxと、の和である合算曲げ高さhtを求めて比較し、この合算曲げ高さhtの最も小さい値である最小合算曲げ高さhtminに加工製品Wの板厚tを加えた値より大きい寸法で設定する。好ましくは、この条件に適合し、実使用に支障のないできるだけ小さい値で設定する。
【0025】
ピッチP1の設定について、図9(a)及び図9(b)を参照してより具体的に説明する。
図9(a)は、図5に示される加工製品Wを上方から見た図であり、各中間体Weは、一方の表面Wpa側へ折り曲げ高さh1,h2 (h2<h1)で折り曲げられた折り曲げ部Wm1,Wm2を有している。
図9(b)には、図5に示される加工製品Wに対し、中間体Weにさらに他方の表面Wpb側へ折り曲げ高さh3(h1<h3)で折り曲げられた折り曲げ部Wm3を有する加工製品Wh1が示されている。
【0026】
この場合、加工製品Wの最大曲げ高さhamaxはh1であり、最大曲げ高さhbmaxは0(ゼロ)であるから、加工製品Wの合算曲げ高さhtはh1となる。
一方、加工製品Wh1の最大曲げ高さhamaxはh1であり、最大曲げ高さhbmaxはh3であるから、加工製品Wh1の合算曲げ高さhtはh1+h3となる。
ホルダ36に対して、加工製品Wと加工製品Wh1との二種を保持させる可能性がある場合には、最小合算曲げ高さhtminは、h1+h3とh1との内の小さい方であるh1になる。従って、ピッチP1は、P1>h1+tとなるように設定する。好ましくは、ピッチP1は、この条件に適合し、実使用に支障のないできるだけ小さい値で設定する。
【0027】
さらに詳しく図10を参照して説明する。
例えば、加工製品Wの複数をそれぞれホルダ36で保持して一時保管する際の集合度合いを高めるためには、ピッチP1をできるだけhtmin+tに近い値とするのが望まれるが、現実には、加工製品Wが保持された状態における、がたに起因するふらつき、あるいは各部材の寸法又は取り付け位置のばらつき等による隣接製品との接触可能性、を考慮して、htmin+tの値に一定の余裕分(余裕間隔)である隙間hyを加えてピッチP1を設定する。
すなわち、P1=htmin+t+hy とする。
【0028】
次に、上述のように、条件内で出来る限り狭く設定されたピッチP1にてチェーン34a,34bに装着された複数のホルダ36に対し、折り曲げ高さが大きく(高く)トータルの厚みが厚い(大きい)加工製品Wh1を取り付ける作業方法について説明する。
ここで、加工製品Wh1は、図9(b)に示されるように、トータル厚さhzが、hz=h1+t+h3であり、かつ、P1<hz<2×P1であるとする。
この場合、加工製品Wh1を既に保持させているホルダ36の隣のホルダ36に、もう一つの加工製品Wh1を保持させると、折り曲げ部Wm1と折り曲げ部Wm3とが接触して傷が付いてしまう可能性がある。
すなわち、隣接するホルダ36にそれぞれ加工製品Wh1を保持させた状態で、折り曲げ部Wm1と折り曲げ部Wm3とが互いに干渉しない位置にあるとしても、加工製品Wh1のホルダ36hでの着脱作業で接触させてしまい不良品にしてしまう虞がある。
そこで、図11に示されるように、加工製品Wh1を一つおきのホルダ36に装着する。この保持方法により、ホルダ36のピッチ変更作業を不要として、実質的にピッチP1を2×P1に変更したのと等価な状態で、ホルダ36により加工製品Wh1を保持することができる。
【0029】
別の例として、トータル厚さhzが、2×P1<hz<3×P1である加工製品Wh2の場合は、図12に示されるように、二つおきのホルダ36に装着するとよい。この場合は、ホルダ36のピッチ変更作業を不要として、実質的にピッチP1を3×P1に変更したのと等価な状態で、ホルダ36により加工製品Wh2を保持することができる。
【0030】
すなわち、トータル厚さhzが、
n×P1<hz<(n+1)×P1 (ただし、n:自然数)
となっている加工製品Whnを保持させる場合には、加工製品Whnを、n個おきのホルダ36(n個のホルダ36を非装着として)に装着するとよい。
この作業方法により、保管装置51に単種の加工製品Whのみを複数保管する場合に、そのトータル厚さhzの上限が限定されることなく、高いスペース効率で保管することができる。
また、保管装置51にトータル厚さhzが異なる複数種の加工製品Wh1,Wh2,Wh3,・・・を保管させる場合も、ホルダ36の付け替えやピッチP1の変更などの調整作業が一切不要であり、保持させるホルダ36を、トータル厚さhzに応じて、一つおき、三つおき、などと適宜選択して選択することで、複数種の加工製品Wh1,Wh2,Wh3,・・・を混在させた状態にてかつ高いスペース効率で保管することができる。
【0031】
図13は、保管装置51と、保管装置51の動作を制御する制御系等と、を含む保管システムHSのブロック図である。
保管システムHSは、保管装置51における駆動部4の動作を制御する制御部52と、制御部52に対する指示を作業者が行うための入力部53と、ホルダ36の位置を検出するセンサ部54と、制御部52が行う制御の基となる、ピッチP1情報,ホルダ36で保持させる加工製品のトータル厚さhz情報,及び動作プログラムを格納した記憶部55と、制御部52からの指示により動作状態やピッチ等の情報を表示する表示部56と、を有して構成されている。
【0032】
センサ部54によるホルダ36の位置検出は、光電センサの出力、カメラで撮影した画像、駆動部4に設けられたエンコーダからの出力等、限定されない種々のソースに基づいて行うことができる。
図13では、制御部52,入力部53,センサ部54,記憶部55,及び表示部56が保管装置52の外にあるものとして記載されているが、これに限定されるものではなく、少なくともいずれか一つが保管装置52に組み込まれていてもよい。
【0033】
加工製品Wを何個おきのホルダ36に保持すればよいか、については、作業者が適宜判定してもよいが、制御部52が判定するように構成してもよい。
図14は、この判定方法の一例を示すフローチャートである。
まず、作業者が、入力部53から、これから保持させる加工製品を特定する製品情報(例えば品番)を入力する(ステップS51)。
次に、制御部52は、記憶部55に格納されている各種データを参照し、種々の保管装置の内の当該保管装置51におけるピッチP1と、ステップS51で入力された製品情報により特定される加工製品に対応するトータル厚さhzと、を取得する(ステップS52)。
次に、制御部52は、hz/P1を実行し、結果における整数値をKとする。すなわち、K=QUOTIENT(hz,P1)を実行する(ステップS53)。
次に、制御部52は、Kを、加工製品Wを保持させないホルダの数である非保持ホルダ数(加工製品を例えば二つおきに保持させる場合であれば2)として設定する(ステップS54)。
次に、制御部52は、設定したKの値を表示部56に表示させる(ステップS55)。
【0034】
実際の保持作業においては、駆動部4を、例えば人的着脱作業が可能な程度の速度で連続的に動作させ、作業者が、表示部56に表示されたK値に基づいて定められたホルダ36に加工製品Wを保持させる。
また、別の例として、駆動部4を、Kの値に応じて間欠的に動作させてもよい。具体的には、駆動部4は、チェーン34a,34bを、所定の距離(間隔)移動させたら一端停止させ、所定時間停止したら、再び所定の間隔だけ再駆動する。一回の移動間隔(距離)は、ピッチP1のn倍(n:自然数)である。ここにおいてn=Kである。所定の停止時間は、任意に設定され得る。
この駆動により、作業者による加工製品Wの脱着位置において、ホルダ36が、k個通過してk+1番目毎に停止する動作が実行される。
この場合、制御部52における、ホルダ36が所定の位置にあるか等についての判断は、センサ部54から出力されるホルダ36の位置情報、あるいは、チェーン34a,34bの位置情報、等に基づいて実行される。
【0035】
上述した保管装置51を含む一時保管装置は、加工装置の搬出側に置かれ、次工程への供給前の一時的保管に用いられる。
その一例として、保管システムHSを、レーザ加工装置及び曲げ加工装置からなる加工装置群の搬出側に置いて加工システムKSを構成したものを説明する。
【0036】
図15(a)は、加工システムKSの配置図(上面図)であり、図15(b)は加工システムKSの右側面図である。
加工システムKSは、被保管製品である加工製品Wを鉛直方向に立てた姿勢で加工するレーザ加工装置61と、レーザ加工装置61で加工された加工製品Wに曲げ加工を施す曲げ加工装置62と、加工製品Wを一時的に保管する一時保管装置63と、を有して構成されている。この例は、一時保管装置63を、いわゆるレーザベンディング複合機に用いた例である。
図16は、一時保管装置63の外観を示す斜視図であり、図17(a)〜図17(c)は、その三面図である。詳しくは、図17(a)は正面図、図17(b)は左側面図、図17(c)は上面図である。
【0037】
一時保管装置63は、レーザ加工装置61で加工された加工製品W61をトレイ64a上に集めて一時的に保管するトレイ保管装置64と、曲げ加工装置62で加工された加工製品W62を一時的に保管する上述の保管装置51と、有し、トレイ保管装置64の上側に保管装置51が配置された上下二段構成となっている。また、トレイ保管装置64と保管装置51とを囲うパネルPNを有している。パネルPNは、少なくともトレイ保管装置64と保管装置51との少なくとも一方の側部SB2側を覆うようになっている。
トレイ保管装置64におけるトレイ64aは、所定数の加工製品W61を立てた姿勢にて集合して収めることができる。また、トレイ64aは、図15(b)の両矢印DR11に示されるように、レーザ加工装置61側の「A位置」と、曲げ加工装置62側の「B位置」との間を往復移動可能とされている。
図15(b)では、便宜的に二つのトレイ64aが示されているが、実際は一つである。図16及び図17(a)ではトレイ64aが「B位置」にある状態が示されている。
保管装置51は、点吊り状態とされており、駆動部4は、一時保管装置63の上部に配置されている。
【0038】
一時保管装置63は、次に説明するような各加工装置61,62との連携で各ワークを保管する。
レーザ加工装置61で加工された加工製品W61は、レーザ加工搬出アクチュエータ65によってトレイ保管装置64の「A位置」にあるトレイ64aに順番に収められる。
トレイ64aに収められた加工製品W62が所定数に達すると、トレイ64aは「B位置」に移動する。「B位置」に搬送された加工製品W61は、立てた姿勢のまま曲げ加工搬入アクチュエータ66によって一つずつ取り出され、曲げ加工装置62に供給される。
トレイ64a上の加工製品W61がすべて取り出されると、トレイ64aは「A位置」に移動し、加工製品W61が再度収容されるのを待つ。
【0039】
加工製品W61は、曲げ加工装置62により曲げ加工が施された後、加工製品W62として曲げ加工搬出アクチュエータ67から保持アクチュエータ68に受け渡され、保持アクチュエータ68によって、下段から上段に持ち上げられると共に上段に設けられた保管装置51における所定のホルダ36に引っ掛けられ、保持される。
ホルダ36は、駆動部4の駆動により、図15,図16,及び図17(c)に示される矢印DR2方向に移動する。各図では、ホルダ36それぞれに加工製品W62が引っ掛けられて保持されている。もちろん、加工製品Wのトータル厚さhzに応じ、ホルダ36は、間欠的に(所定個おきに)保持に利用される。
加工製品W62は、一時保管装置63の一方の側部SB1からホルダ36に掛けられ、他方の側部SB2から取り出される。具体的には、一時保管装置63は、保管装置51の他方の側部SB2(図16の手前側)において、加工製品W62の取り出し部となる開口部63bと、開口部63bを開閉するためのスライド扉63aを有している。スライド扉63aは、通常は閉状態とされ開口部63bは塞がれているが、稼働時に一方の側部SB1側(後方側)からホルダ36に掛けられた加工製品W62が所定の軌道(経路)を移動して他方の側部SB2側(前方側)に来た際に、作業者はスライド扉63aを開け、開口部63bから加工製品W62を取り出し、次工程へ供給する。
【0040】
図16及び図17では、スライド扉63aの開状態が示されている。また、一時保管装置63は、開口部63bの右隣に、透明樹脂を介して内部を視認可能とする塞がれた窓部63cを有している。
【0041】
図18には保持アクチュエータ68の外観が示されている。図18は、図16における右上方やや前側から見た斜視図である。
図18において、保持アクチュエータ68は、一時保管装置63のフレーム63fに固定されている。
保持アクチュエータ68は、シリンダ68d1で開閉され、閉状態で加工製品W62を挟持するクランパ68dと、クランパ68dを矢印DR2で示される前後方向(図16も参照)に所定のストロークL6aで移動させる前後シリンダ68aと、クランパ68dを支持するベース68bと、前後シリンダ68aを含むベース68bを矢印DR3で示される上下方向に所定のストロークL6bで移動させる昇降シリンダ68eと、を有して構成されている。
また、クランパ68dは、微動シリンダ68d2により、加工製品W62を保持した状態で上下方向に所定のストロークL6cで昇降するようになっている。
ストロークL6cは、少なくとも、図6,図19に示される加工製品W,W62における上下方向の距離d68を越える値とされる。距離d68は、具体的には、首部Ws2bの下側端部位置と、切り込みWs3の上方側端部との間の上下方向距離である。
【0042】
保持アクチュエータ68は、昇降シリンダ68eが下端部に位置し、クランパ68dが後方側に位置した状態で、加工製品W62が曲げ加工搬出アクチュエータ67から図18に示されるクランプ位置に供給されるので、それをクランパ68dによりクランプする。
そして、加工製品W62は、クランパ68dによりクランプされた状態で、昇降シリンダ68eの動作により、ストロークL6bの上端部に運ばれ、前後シリンダ68aの動作により図18の保持位置に移動される。
この移動は、ホルダ36の循環移動での位置と同期がとれており、加工製品W62は、保持されるべきホルダ36が保持アクチュエータ68に対応する位置に来たときに、保持アクチュエータ68によって係合スリット36dに挿入される。
加工製品W62は、この保持位置において、図19の左側の図に示されるように、ホルダ36における係合スリット36dの奥端部36d3が、加工製品W62の切り込みWs2の最奥部Ws2aに当接し、かつ、首部Ws2bが係合孔36cに進入していない上下方向位置にある。
ここで、微動シリンダ68d2を動作させ、加工製品W62を下方に移動させることで、図19の右側に示されるように、首部Ws2bが係合孔36c内に進入し、加工製品W62はホルダ36によって保持される。
【0043】
保持アクチュエータ68の動作は、制御部52(図15〜図17には図示せず)により制御される。すなわち、加工製品W62をどのホルダ36に引っ掛けるかは、制御部52により判断される。制御部52は、この自らの判断に基づいて駆動部4と保持アクチュエータ68との駆動を関連づけて制御するので、無駄のない、またホルダ36への誤装着のない確実な動作が安定的に実行される。
【0044】
このようにして自動的にホルダ36に保持された加工製品W62は、チェーン54a,54bが掛け渡された所定の軌道(経路)上を移動し、保持アクチュエータ68とは反対側の側部SB2に到達すると、所定のタイミングで作業者により取り出される。この取り出し動作を取り出しアクチュエータ(図示せず)により自動化してももちろんよい。
【0045】
上述の加工システムKSによれば、前段の加工装置で加工された加工製品と、後段の加工装置で加工された加工製品とを、上下2段のそれぞれの場所で一時保管するので、加工製品の一時保管において、高いスペース効率が得られる。
また、保管装置51は、一側面SB1側から加工製品W62のホルダ36への取り付け作業が行われ、他側面SB2側で加工製品W62のホルダ36からの取り外し作業が行われ、その間、加工製品W62を任意の軌道(経路)で集合的に滞留させることができるので、無駄なスペースがなく、極めて高いスペース効率で加工製品W62の一時保管が可能になっている。
【0046】
上述した加工システムKSにおける一時保管装置63は、トレイ保管装置64と保管装置51とを上下二段構成にしたものであるが、保管装置51を上下二段構成にしてもよい。
次に、この保管装置51を上下二段に備えた一時保管装置163を有する加工システムKSAについて図20を参照して説明する。
【0047】
図20(a)は、加工システムKSAの配置図(上面図)であり、図20(b)は加工システムKSAの右側面図である。
【0048】
一時保管装置163は、下段の保管装置51Bと上段の保管装置51Tと、を有している。具体的には、レーザ加工装置61で加工された加工製品W61をホルダ36Bで吊り下げ保持して一時的に保管する下段の保管装置51Bと、曲げ加工装置62で加工された加工製品W62を一時的に保管する上段の保管装置51Tと、有して上下二段構成となっている。また、保管装置51Bと保管装置51Tとを囲うパネルPNを有している。パネルPNは、少なくとも保管装置51Bと保管装置51Tとの少なくとも一方の側部SB2側に対向して側部SB2に対抗して側部SB2を覆うようになっている。上段の保管装置51Tは、点吊り状態とされており、駆動部4Tは、一時保管装置163の上部に配置されている。
【0049】
保管装置51B,51Tは、それぞれ複数のホルダ36B,36Tを有して所定数の加工製品W61,W62を吊り下げ保持により集合させて収める。
一時保管装置163は、次に説明する各加工装置61,62との連携で各ワークを保管する。
まず、ホルダ36Bは、所定の経路上を循環移動する。その移動経路上の「ワークW61収容位置」において、レーザ加工搬出アクチュエータ165によってワークW61が引っ掛けられてそれを保持し、保持したワークW61は「ワークW61取り出し位置」において、曲げ加工搬入アクチュエータ166によって一つずつホルダ36Bから外されて曲げ加工装置62に供給される。
【0050】
加工製品W61は、曲げ加工装置62により曲げ加工が施された後、加工製品W62として曲げ加工搬出アクチュエータ67から保持アクチュエータ68に受け渡され、保持アクチュエータ68によって、下段から上段に持ち上げられると共に上段に設けられた保管装置51Tにおける所定のホルダ36Tに引っ掛けられ、保持される。
ホルダ36B,36Tは、駆動部4B,4Tの駆動により、それぞれ独立して矢印DR2方向に移動する。図20では、複数のホルダ36B,36Tそれぞれに加工製品W61,W62が引っ掛けられて保持されているが、上述のように加工製品W61,W62のトータル厚さに応じ、ホルダ36B,36Tは、間欠的に(所定個おきに)保持に利用される。
【0051】
上段の保管装置51Tにおいて、加工製品W62は、一時保管装置163の一方の側部SB1からホルダ36Tに掛けられ、他方の側部SB2から取り出される。具体的には、一時保管装置163は、保管装置51Tの他方の側部SB2において、加工製品W62の取り出し部となる開口部163bと、開口部163bを開閉するためのスライド扉163aを有している。スライド扉163aは、通常は閉状態とされ開口部163bは塞がれているが、稼働時に一方の側部SB1側(後方側)からホルダ36Tに掛けられた加工製品W62が所定の軌道(経路)を移動して他方の側部SB2側(前方側)に来た際に、作業者はスライド扉163aを開け、開口部163bから加工製品W62を取り出し、次工程へ供給する。
【0052】
上述の加工システムKSAによれば、前段の加工装置で加工された加工製品と、後段の加工装置で加工された加工製品とを、上下2段のそれぞれの場所で一時保管するので、加工製品の一時保管において、高いスペース効率が得られる。
また、保管装置51は、一側面SB1側から加工製品W62のホルダ36への取り付け作業が行われ、他側面SB2側で加工製品W62のホルダ36からの取り外し作業が行われ、その間、加工製品W62を任意の軌道(経路)で集合的に滞留させることができるので、無駄なスペースがなく、極めて高いスペース効率で加工製品W62の一時保管が可能になっている。
【0053】
また、レーザ加工を施した製品を一方の段(下段)に保管し、さらに曲げ加工を施した製品を他方の段(上段)に保管し、両段の保管装置として循環移動する複数のホルダ36を備えた保管装置51を用いているので、トレイ64aの移動時間を考慮する必要がなく、各加工装置の加工時間の違い等を良好に吸収して、ロスタイムの少ない良好なタクトタイム設定が可能となる。
【0054】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてさらに別の変形例としてもよい。
【0055】
加工システムKS,KSAにおける加工装置は、レーザ加工装置又は曲げ加工装置に限るものではない。また、複数の加工装置の組み合わせは、この二つの加工装置に限るものではない。
加工装置は、加工製品Wを立てた姿勢で加工するものに限らない。姿勢変換装置などを用いて保管装置51への投入時に加工製品Wが立て姿勢に姿勢変換されていればよい。
チェーン34a,34bの掛け渡し軌道は、上述の一つの方向に延在するものでなくてよい。保管装置51を設置するスペースにおいて許される限り、また、保持した加工製品が移動の際に干渉しない限り、自由に軌道(経路)を形成することができる。
また、ホルダ36が取り付けられる部材は、チェーン34a,34bに限らない。例えば、ベルトであってもよい。ホルダ36は、所定の経路を循環移動する紐状又は帯状の無端循環部材に取り付けられていればよい。
【0056】
加工システムKS,KSAにおける、制御部52,入力部53,センサ部54,記憶部55,及び表示部56の存在場所は、限定されない。加工システムKS,KSA以外に設けられていてもよく、また、いずれか一つが加工システムKS,KSAに含まれていてもよい。
加工システムKSAにおいて、加工製品W61を保管する保管装置51Bを下段とし、加工製品W62を保管する保管装置51Tを上段としたが、保管位置は上下逆であってもよい。
すなわち、レーザ加工装置61からの加工製品W61が上段の保管装置51Tに収容され、循環経路を移動した後、搬出されて下方への移動を経て曲げ加工装置62に搬入され、曲げ加工された加工製品W62が下段の保管装置51Bに側部SB1側から収容され、循環経路を移動した後に反対側の側部SB2側の開口部から取り出されるようになっていてもよい。
【0057】
互いに係合し合う係合部KG及び被係合部HKGの形状は、上述のものに限らない。ホルダ36に保持され得るものであれば、係合形態は適宜設定できる。
【0058】
ホルダ36で保持され得る加工製品は、素材に対し折り曲げ部を有して立体状に加工されたものに限らない。絞り等の変形により立体状となっているものでもよい。これらの加工は、素材の少なくとも一部を変形させて、その素材の板厚よりも厚く(高く)なるようにその外形の厚さ(高さ)を増加させる増厚変形加工である。
また、加工製品は、立体状に加工されていない板状のままであってももちろんよい。
【符号の説明】
【0059】
1 台座、 2 支柱、 3 保持部、 4,4B,4T 駆動部
5 シャフト、 6a,6b ローラ
31 フレーム部、 31a 上面プレート部
32,33 ローラ、 32a,32b,33a,33b スプロケット
34a,34b チェーン
35 フランジ、 35a ボルト孔、 35p プレート
36,36B,36T ホルダ
36a 長腕部、 36b 短腕部、 36c 係合孔、 36d 係合スリット
36d1 開口部、 36d2 テーパ部、 36d3 奥端部
36e 当接スリット、 36e1 開口部
36k 基部、 36f アイドラ
37 ガイドレール
51,51B,51T 保管装置
52 制御部
61 レーザ加工装置、 62 曲げ加工装置
63,163 一時保管装置
63a,163a スライド扉、 63b,163b 開口部
64 トレイ保管装置、 64a トレイ
65,165 レーザ加工搬出アクチュエータ
66 曲げ加工搬入アクチュエータ
67 曲げ加工搬出アクチュエータ
68 保持アクチュエータ
68a 前後シリンダ、 68b ベース、 68d クランパ
68d1 シリンダ、 68d2 微動シリンダ、 68e 昇降シリンダ
CL31 中心軸線、 CL32,CL33,CL36f 回動軸線
d1 距離、 d2〜d6 幅、 d6 長さ、 d68 距離
Fg 力、 G 床面
h1〜h3 高さ、 hamax,hbmax 最大曲げ高さ
ht 合算曲げ高さ、 htmin 最小合算曲げ高さ
hy 隙間(余裕間隔)、 hz トータル厚さ
HS 保管システム
KG 係合部、 HKG 被係合部
KS,KSA 加工システム
L1 (ローラの)軸線間隔、 L2 (長腕部と短腕部との間の)距離
L6a〜L6c ストローク
mj ミクロジョイント
M,M1,M2 モーメント
PN パネル
S1 支点、S2 当接部位
SB1,SB2 側部
t 板厚
TS1 当接点
P1 ピッチ
W,Wh,W61,W62 加工製品
Wa 縦辺、 Wb 横辺、 We 中間体
Wm1〜Wm3 折り曲げ部
Wp 表面、 Wpa 一方の表面、 Wpb 他方の表面
Ws スリット部、 Ws1 開口部、 Ws2,Ws3 切り込み
Ws2a 最奥部、 Ws2b 首部、 Wt (最薄の)加工製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状又は立体状の加工製品を集合保管する製品保管方法であって、
所定の経路で循環移動する紐状又は帯状の無端循環部材に、前記加工製品を保持可能な複数のホルダを所定のピッチで取り付けておき、
前記加工製品の厚さに応じて前記加工製品を保持させるホルダの間隔を選定し、
前記無端循環部材を循環移動させると共に、前記複数のホルダの内、選定した前記間隔に対応したホルダに前記加工製品を保持させることを特徴とする製品保管方法。
【請求項2】
前記間隔を、前記ピッチのn倍(n:自然数)であって、前記厚さを越える最小値に選定することを特徴とする請求項1記載の製品保管方法。
【請求項3】
前記間隔毎に前記無端循環部材を停止させて前記循環移動を間欠的に行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の製品保管方法。
【請求項4】
前記ホルダは、前記加工製品を立てた姿勢で、上下方向に離隔する少なくとも2箇所の部位で接触して保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製品保管方法。
【請求項5】
板状又は立体状の加工製品を集合保管する製品保管装置であって、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材と、
前記無端循環部材に所定のピッチで取り付けられ前記加工製品を保持可能な複数のホルダと、
前記無端循環部材を循環移動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記加工製品の厚さに応じて選択された前記ピッチのn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材を間欠的に循環移動させることを特徴とする製品保管装置。
【請求項6】
前記ホルダは、立てた姿勢の前記加工製品を、上下方向に離隔する少なくとも2箇所の部位で接触して保持するよう構成されていることを特徴とする請求項5記載の製品保管装置。
【請求項7】
前記無端循環部材はチェーンであることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の製品保管装置。
【請求項8】
前記ホルダは、前記加工製品が挿入され得るスリットを有していることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の製品保管装置。
【請求項9】
前記ホルダは、前記加工製品を、互いの凹凸係合によって吊り下げ保持するよう構成されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の製品保管装置。
【請求項10】
第1の加工装置と、
前記第1の加工装置で加工された第1段階の加工製品を一時的に集合保管する第1の保管装置と、
前記第1の保管装置から搬出された前記第1段階の加工製品に対し加工して第2段階の加工製品とする第2の加工装置と、
前記第1の保管装置と共に上下方向に重ねて配置され、前記第2段階の加工製品を一時的に集合保管する第2の保管装置と、を備え、
少なくとも前記第2の保管装置は、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材と、
前記無端循環部材に所定のピッチで取り付けられ前記加工製品を保持可能な複数のホルダと、
前記無端循環部材を循環移動させる駆動部と、を有すると共に、
前記駆動部が、前記加工製品の厚さに応じて選択された前記ピッチのn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材を間欠的に循環移動させるよう構成されており、
さらに、前記第1の保管装置は、前記第1段階の加工製品を一側面側からを受け入れると共に前記一側面側へ搬出し、前記第2の保管装置は、前記第2段階の加工製品を前記一側面側から受け入れると共に前記一側面とは反対の他側面側へ搬出するよう構成されている加工システム。
【請求項11】
前記第2の保管装置から搬出される前記第2段階の加工製品を取り出すための開口部を有して前記第2の保管装置の前記他側面に対向して設けられたパネルを備えたことを特徴とする請求項10記載の加工システム。
【請求項12】
製品保管装置において吊り下げにより集合保管される被保管製品の製造方法であって、
前記製品保管装置は、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材と、
前記無端循環部材に所定のピッチで取り付けられ、前記被保管製品の周縁部に設けられた第1の所定形状部に係合する第2の所定形状部を有して前記被保管製品を吊り下げ保持可能とされた複数のホルダと、
前記無端循環部材を循環移動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記被保管製品の所定の厚さに応じて選択された前記ピッチのn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材を間欠的に循環移動させるよう構成されており、
平板状の素材に対し、前記素材から得る最終製品の展開形状を外形形状としてなる中間製品をミクロジョイント部を除いて切断して形成すると共に、前記素材の周縁部に前記第1の所定形状部を切断により形成する切断工程と、
前記切断工程で得られた前記中間製品に対し、外形厚さを前記素材の厚さよりも厚くなるよう増厚変形を施して前記所定の厚さを有する前記被保管製品とする増厚加工工程と、を含むことを特徴とする被保管製品の製造方法。
【請求項13】
製品保管装置において吊り下げにより集合保管され得る被保管製品であって、
前記製品保管装置は、
所定の経路で掛け渡され循環移動可能な紐状又は帯状の無端循環部材と、
前記無端循環部材に所定のピッチで取り付けられ、前記被保管製品の周縁部に設けられた第1の所定形状部に係合する第2の所定形状部を有して前記被保管製品を吊り下げ保持可能とされた複数のホルダと、
前記無端循環部材を循環移動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、前記被保管製品の所定の厚さに応じて選択された前記ピッチのn倍(n:自然数)の移動距離毎に停止するよう前記無端循環部材を間欠的に循環移動させるよう構成されており、
平板状の素材に、
前記素材からミクロジョイント部を除いて切断され、前記素材から得る最終製品の展開形状を外形形状として有すると共に外形厚さが前記素材の厚さよりも厚くなるように加工された加工部を有する中間製品と、
前記素材の周縁部に形成された前記第1の所定形状部と、
を有してなることを特徴とする被保管製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−112491(P2013−112491A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261699(P2011−261699)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】