説明

製紙方法および紙

製紙で使用する紙パルプを次のように製造する。(a)紙パルプ用原料として用いる繊維含有繊維材料を沈殿反応装置へ投入し、(b)水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などの反応性鉱物材料を沈殿反応装置へ投入し、(c)反応性鉱物材料および繊維材料を、沈殿反応装置において、および/またはこれらの材料を沈殿反応装置へ投入する前に結合させて繊維懸濁液を作り、(d1)沈殿反応装置へ、二酸化炭素などの、反応性鉱物材料を沈殿させる沈殿剤を含有するガスを投入して、沈殿反応装置内部に沈殿剤を含むガス空間を形成し、(d2)沈殿反応装置へ投入されるおよび/またはそこで生成される繊維懸濁液を、固形物質および/または液体および/または粒子として含有する液滴などの小さな部分にして、ガス空間へ分散、すなわち散布し、これによって、沈殿された鉱物材料が繊維上に填料を形成し、(e)処理済繊維懸濁液を沈殿反応装置から排出し、繊維懸濁液によって形成された填料含有紙パルプを所定の濃度で抄紙機の地合い部へ投入し、ワイヤなどの水透過性地合い基部を介して紙パルプに排出させることによって紙パルプから水を除去し、得られた紙ウェブを乾燥し、かつ仕上げをして、仕上げ紙製品を生産する。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明は、上記に示す独立請求項による製紙方法に関するものである。本発明はさらに、紙に関するものである。
【0002】
天然細粉砕炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム(PCC)、カオリン、および滑石などの鉱物原料を含有する填料が紙の製造に用いられて、光学および印刷特性を含むさまざまな紙の特性を改良している。さらに、填料を添加することによって紙の製造に、より少量の繊維材料を使用することができる。これによって、一般に明らかに添加填料の費用を越える費用の節約が達成される。
【0003】
したがって一般に、製紙に用いられる繊維懸濁液に対してできる限り多くの填料を添加することが望ましいと考えられる。しかし、紙の強度特性に関する因子のため、炭酸カルシウムなどの填料の添加量を通常、20〜25%を越えないようにする必要がある。
【0004】
炭酸カルシウムを増量するために、カルシウム系填料を水酸化カルシウムの形で繊維懸濁液へ添加すること、およびそのカルシウムを二酸化炭素ガスを添加することによって転換して軽質炭酸カルシウムにすることが提唱されている。これによって、炭酸カルシウムを直接に表面へさらに繊維の中へ沈殿および付着させ、このようにして、紙に対してより多くの炭酸塩を添加することができる。
【0005】
これら従来技術の方式の弱点は、次のことであると考えられる。
− 沈殿反応を行なうのに比較的長時間を要する。
− 沈殿反応が一部不完全になる。
− 用いる工程が連続していない、または
− 用いる装置を製紙工程に簡単に統合できない。
【0006】
米国特許第6,471,825号が、繊維懸濁液に添加した水酸化カルシウムを炭酸カルシウムの形で直接に繊維上へ沈殿させることを提唱している。この場合、繊維および水酸化カルシウムを含有する懸濁液を、最初にディスクリファイナ型装置で処理して、二酸化炭素ガスを懸濁液に投入する前にいずれの繊維束をも分散させることが提案されている。
【0007】
ディスクリファイナ型装置において、繊維懸濁液は、繊維材料に対して弱体化作用を及ぼす荒い処理を受ける。二酸化酸素を繊維懸濁液へ投入した後、懸濁液はオーガミキサで攪拌される。しかし、ブレードもしくはオーガミキサを装備した従来の沈殿反応装置の場合、二酸化炭素と水酸化カルシウムとの迅速で効率的な混合を確実に行ない、それによって反応をできる限り完全に確実に行なうことが困難である。これらの反応装置においては、軽質炭酸カルシウムの繊維への結合を達成することも難しい。
【0008】
次に米国特許第5,679,220号は、繊維懸濁液に対して添加した水酸化カルシウムを炭酸カルシウムの形で、二酸化炭素ガスの助けにより繊維上へ沈殿させながら、繊維懸濁液を、平滑な内壁を有する長い2隔室の管状反応装置に流す方法を開示している。水酸化カルシウム含有の懸濁液は、管状反応装置の第1隔室の中央部付近で繊維懸濁液に投入される。繊維懸濁液には、水酸化カルシウム含有の懸濁液をこれに投入する前および後に、二酸化炭素ガスが投入される。二酸化炭素ガスは、管の内側を流れ過ぎる懸濁液へガスを吸収させる目的で、反応装置の壁に作られている入口を通して反応装置へ投入される。長さが2メートルを越える比較的長い攪拌用反応装置における繊維懸濁液の滞留時間は1分を超える。
【0009】
さらに、たとえば欧州特許出願第969141号に開示されているような、繊維材料に填料材料を投入する製紙方法が知られている。この方法は、紙を、ウェブの地合いの後にカレンダ掛けすることを特徴としている。繊維に対して炭酸カルシウムを加える繊維材料の前処理は、公報には詳細に開示されていない。
【0010】
したがって、本発明は、以前の方法よりも優れた製紙方法を作り出すことを目的とする。本発明はさらに、優れた紙を作り出すことを目的とする。
【0011】
上述の従来技術の問題を最小限度にする方法を作り出すことを目的とする。
【0012】
したがって、最初に繊維と、水酸化カルシウムもしくは酸化カルシウムなどの鉱物材料と、二酸化炭素ガスなどの沈殿剤化学物質とが沈殿工程中に非常に良好に確実に混合される方法を生み出し、このように前処理された繊維材料からの製紙を可能にすることを目的とする。
【0013】
したがって、炭酸カルシウムの繊維上への、もしくは繊維の中への沈殿を非常に短時間で、できる限り完全に開始させ、かつ発生させることを可能にする方法を生み出すことも目的とする。
【0014】
これによって、さらに、従来のやり方によって達成されているものと比べて、紙の填料含有量を増加させることが可能な方法を生み出すことを目的とする。
【0015】
また、紙、板紙、または他の対応する製品の特性、典型的には光学特性および強度特性に対して所望のように影響を及ぼすことができる方法を生み出すことを目的とする。
【0016】
さらに鉱物材料を、非常にさまざまな繊維懸濁液の繊維上および上記繊維懸濁液に存在する固形材料上へ沈殿させるときに用いるのに適した方法を生み出すことを目的とする。
【0017】
また、紙、板紙、またはウェブの形の同様な製品を製造する連続工程を得ることを目的とする。
【0018】
上述の目的を達成するため、本発明の方法および紙は、上記独立請求項に記載される本発明の詳細な説明に述べられていることを特徴とする。
【0019】
本発明は製紙方法に関するものであり、全体として次の段階を含む。
(a)紙パルプ用原料として用いられる繊維材料を沈殿反応装置へ投入し、
(b)水酸化カルシウムCa(OH)2 などの反応性鉱物材料を沈殿反応装置へ投入し、
(c)反応性鉱物材料と繊維材料を沈殿反応装置で、および/または沈殿反応装置へ投入する前に、これらを結合させて繊維懸濁液を作り、
(d)繊維懸濁液を沈殿反応装置において上記反応性鉱物材料の沈殿剤に接触させて、懸濁液内の反応性鉱物材料を少なくとも部分的に沈殿させ、これによってこのようにして沈殿した鉱物材料の少なくとも一部を繊維懸濁液内の繊維上へ沈殿させ、(d1)上記鉱物材料を沈殿させる二酸化炭素などの物質を含有するガスを沈殿反応装置へ投入して、上記沈殿剤を含有するガス空間を沈殿反応装置の内部に作り、(d2)沈殿反応装置へ投入した、および/またはそこで生成された繊維懸濁液を、固形物質および/または液体を含有する液滴および/または粒子などの小さい粒子の形で上記ガス空間へ分散もしくは散布し、
(e)このように処理された繊維懸濁液を沈殿反応装置から放出し、
この後、繊維懸濁液によって作られた紙パルプは、抄紙機の地合い部上へ送られて、パルプが浸透性地合い基部を通して排水できることによって、紙パルプは紙になる。
【0020】
代表的には、反応装置の内部に所望のガス空間を維持するために、気体沈殿剤が連続ガス流で沈殿反応装置へ投入される。ガスにおける沈殿剤の量を、たとえば気体沈殿剤の供給源、その品質、および/または所望の紙の特性に応じて、かなり変化させることができる。沈殿反応装置へ投入される気体は、通常二酸化炭素などの沈殿剤を、5%より多く、代表的には10%より多く、所望の場合は100%も含有する。したがって、沈殿剤を含有するガスを純粋の、もしくはほぼ純粋の二酸化炭素、煙道ガス、または二酸化炭素を含有する他の適したガスもしくはガス混合物にすることができる。所望の場合、二酸化炭素以外の、選択した反応性鉱物材料を沈殿させるのに適した他の沈殿剤を使用することも当然可能である。ガスは代表的には、沈殿反応装置内に過剰圧力を生じるように沈殿反応装置へ投入される。
【0021】
本発明の方法は、繊維懸濁液をその液相および固体相で、液滴および/または粒子の形で極小部分に分散させられているガス空間へ投入することを目的とする。この場合における繊維懸濁液は公知もしくは新規の方法によって、純粋な液滴、繊維および鉱物材料などの固形物質を含有する液滴、固形物質粒子および/または液体で被覆した固形物質粒子へ分散される。繊維懸濁液の繊維材料はこのようにして少なくとも一部が、別個の繊維へ分散される。他方、繊維懸濁液の液相は、主として10mmより小さい、代表的には1mmより小さい液滴へ分散される。小さな液滴と、繊維と、他の固形物質粒子がガス空間へ分散して、ほとんど霧状のガス懸濁液を生成し、これは、反応装置へ投入されている繊維懸濁液よりもかなり大きい体積流量を有する。これによって液滴および/または粒子と、周囲のガスとの間に大きな接触領域を作り出し、沈殿すべき反応性鉱物材料とガス中の沈殿剤との間の沈殿反応を非常に迅速にかつ完全にすることができる。
【0022】
本発明の方法を適用する場合、主としてほぼ個々に別個の繊維がガス抱被によって包囲され、これが、包囲している液体から鉱物材料の繊維表面への、および繊維内への沈殿を迅速、かつ効率的にすることがさらに考えられる。以前は、反対に、微小な泡のガスを、程度の差はあるが粘性の繊維懸濁液へ投入することを目的としており、この方法において沈殿工程は、本発明のようには迅速もしくは効率的ではない。
【0023】
本発明の方法を適用する場合、非常に活性な沈殿材料領域が繊維に作られ、領域を介して繊維が相互繊維結合を形成すると考えられ、他方、これらの領域で沈殿反応が継続する。これらの結合が、製造される紙の強度特性を高める。
【0024】
本発明の好ましい実施例によれば、活性帯域が沈殿反応装置の前に、またはその中へ、望ましくは繊維材料の流れに関してその出発点に作られている。活性帯域において、繊維懸濁液は、繊維をたとえば摩擦力学的に、もしくは摩擦化学的に活性化する力を受けて、繊維が互いに結合する、または繊維が沈殿中の、および/または沈殿した鉱物材料と結合する能力を高める。繊維を活性化することは、製造された紙の強度特性に対して明確な影響を及ぼす。
【0025】
本実施例の活性化帯域において、繊維懸濁液を小さな液滴および/または粒子へ分散させて活性化することができる。この活性化は、望ましくはアルカリ性の条件で行われ、繊維は、たとえばCa(OH)2の添加によって膨張する。
【0026】
活性化帯域において、繊維懸濁液に、たとえば連続衝撃、逆衝撃、せん断力、乱流、超過圧力パルスおよび不足圧力パルス、または同様の力を受けさせることができ、この力は、繊維をとくに繊維表面を機械的に、たとえば繊維をフィブリル化もしくは粉砕すること、または鉱物材料に対して繊維内部(内腔)を開くことによって活性化させる。他方、繊維、とくに繊維表面を、その表面に活性OH基を生成するように、化学的に活性化させることもできる。
【0027】
本発明の好ましい実施例によれば、活性化を、たとえばブレードもしくは同様のものを装備した複数の、代表的には3〜8個、最も代表的には4〜6個の同心のケージを有するいわゆる多ケージ衝撃粉砕機の原理によって作動するフロースルーミキサを設けた活性化帯域を有する沈殿反応装置において誘発させることができる。少なくともケージは1つおきに回転子として働き、隣接するケージがさまざまな方向に、またはさまざまな速度で移動する固定子もしくは回転子として働く。回転子の速度を5m/sと250m/sの間で変化させることができる。隣接するケージの速度差は10〜500m/s、代表的には50〜200m/sである。この原理によって作動する粉砕機もしくはミキサは、たとえばフィンランド国特許公報第105669B号、第105112B号および公報第WO-96/18454号に以前から開示されている。
【0028】
衝撃粉砕機の原理によって作動するフロースルーミキサにおいて、繊維懸濁液は、代表的にはケージの中心から半径方向に外側へ向かってミキサを通り抜ける。これによってケージのブレードもしくは同様なものが衝撃および逆衝撃を生じることができて、外へ向かって流れる繊維懸濁液に影響を与え、これによってせん断力と、乱流と、不足圧力パルスおよび超過圧力パルスを発生し、これらが繊維活性効果を生じる。衝撃粉砕機原理により作動する反応装置は、固形物質含有量が多いときと非常に少ない両方の場合で繊維懸濁液を効率的に処理することができ、それらを沈殿段階に適したものにする。したがって、本発明による沈殿反応装置においては、0.1〜40%、代表的には1〜15%、最も代表的には3〜7%の固形物質含量などの大きく変動する固形物質含有量の鉱物材料を沈殿することができる。限界は主として入口管と出口管における繊維懸濁液の汲上可能性による。
【0029】
フロースルーミキサの隣接するケージ、回転子、ブレード、または同様なものは、代表的には対向する方向に動き、これによって効果的な連続衝撃を、対向する方向に、すなわち衝撃および逆衝撃を生じて、反応装置を流れ通る繊維懸濁液に影響を与えることができる。他方、固定ケージもしくは固定子が同一の方向に動くケージ間に、すなわち回転子間に配設されている場合、固定子ブレードによって衝撃を生成させ、固定子ブレードと衝突する回転子によって逆衝撃を引き起こさせて、反応装置を流れ通る繊維懸濁液に影響を与えることができる。同様の結果を、同一方向に非常に異なる速度で動く回転子によって生じさせることができる。
【0030】
フロースルーミキサの回転子および固定子のブレードもしくは同様のものを繊維懸濁液へ向けて、ケージの中心から半径方向に外へ向けて進めることもできる。回転子および固定子ケージの寸法がそれぞれの中心から外に向かって大きくなっているので、フロースルーミキサの入口または中心と出口または外側のケージとの間に圧力差が生じる。中心から外側へ動くと、圧力が低下する。その結果として生じる圧力差が繊維懸濁液のフロースルーミキサの通過を助ける。
【0031】
本発明の好ましい実施例によれば、機械的活性化とは、たとえば繊維表面を処理して、自由な反応性の繊維表面を出し、これに対して沈殿する鉱物材料が容易に付着することができる、またはフィブリルを繊維表面へ運び、フィブリルに対して沈殿する鉱物材料が容易に付着できる場合である。フィブリルの形成によって繊維の比表面積が大きくなり、増加して行く沈殿鉱物材料の量と、繊維が結合することを可能にする。生成されたフィブリルの一部を繊維から剥離することができ、それによって繊維懸濁液中の微細繊維の量が増し、これは、ある場合には望ましいことである。
【0032】
好ましい実施例によれば、機械的活性化はまた、繊維を超過圧力パルスおよび不足圧力パルスで処理して、繊維が開き、裂かれ、またはそれらに孔が形成されて、繊維懸濁液の大量の反応性鉱物材料が繊維へ貫通して、そこに沈殿することを可能にする場合である。
【0033】
好ましい実施例によれば、化学的活性化とは、たとえば、繊維表面を活性化して、沈殿するもしくは沈殿した鉱物材料を結合することができる活性化化学基を繊維表面に生成する場合である。たとえば、活性OH基は鉱物材料と結合を行ない、鉱物材料を繊維に結合することができ、これを繊維表面に生成することができる。
【0034】
本発明の代表的方法によれば、繊維材料と、石灰乳Ca(OH)2などの反応性鉱物材料は、これらの材料を沈殿反応装置へ導入する前に、繊維懸濁液の中で望ましくは結合させる。繊維材料および反応性鉱物材料を含有する繊維懸濁液は代表的には、スラリもしくは懸濁液の形で、沈殿すべき反応性鉱物材料を繊維材料懸濁液へ添加することによって生成される。スラリもしくは懸濁液は迅速、均一に繊維懸濁液に混合することができる。他方、沈殿すべき反応性鉱物材料も繊維材料懸濁液に固形物の形で、たとえば粉体の形で添加することができる。繊維材料懸濁液を沈殿反応装置へ投入する前に、繊維材料懸濁液に反応性鉱物材料を添加する場合、繊維は、所望の場合、反応性鉱物材料を吸収するのに数分掛かり、その鉱物材料がアルカリの場合、これが、繊維を膨張させて活性化および/または炭酸塩化に関して有利な形にするのに役立つ。このような場合、沈殿工程の開始時に鉱物材料は繊維上へ、さらにその中へ、より容易に沈殿する。所望の場合、繊維材料および鉱物材料を沈殿反応装置へ別個に導入して、沈殿反応装置だけで混合できることは当然可能である。
【0035】
本発明による方法を適用する場合、原料と、原料の投入比と、pHと、圧力と、温度などの鉱物材料沈殿条件を選択して当該工程に合わせることができる。本特許の方式は、これらの条件に対してなんらの制限を設定するものではない。
【0036】
この説明では、他に記載のない限りは、次のことが適用される。
― 繊維材料懸濁液とは、少なくとも繊維材料を含有する液体系懸濁液のことをいう。
― 繊維懸濁液とは、少なくとも繊維材料と、沈殿に必要な反応性鉱物材料とを含有している液体系懸濁液をいう。
― 気体懸濁液とは、繊維材料と、反応性鉱物材料と、気体沈殿剤とから成り、繊維材料および反応性材料が微細粒化されている懸濁液をいう。
― 処理済繊維懸濁液とは、少なくとも繊維材料と、沈殿した鉱物材料粒子とを含有する液体系懸濁液をいう。
【0037】
上述の懸濁液は、当然、沈殿した鉱物粒子、もしくは非沈殿鉱物材料などの他の材料も含むことができる。
【0038】
本発明による方法によれば、使用される反応性鉱物材料を水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、すなわち石灰乳、もしくは他のCa2+イオン供給源にすることができ、それによっていわゆる軽質炭酸カルシウム(PCC)を繊維上へ、および/またはその中へ沈殿させることができる。本発明は、酸化カルシウムまたは硫酸カルシウムなどの他の同様な反応性鉱物材料も使用することができ、これらを気体沈殿剤によって繊維上へ沈殿させて、それへ結合させることができる。
【0039】
沈殿に用いられる反応性鉱物材料は繊維、製造される紙、もしくは製造工程においてどの特性を改良すべきかにしたがって選択される。繊維懸濁液、とくに繊維へ沈殿すべき鉱物材料は、白色度(whiteness)、白色度(brightness)、不透明度、光沢、かさ、プリント、印刷適性、濾水性、乾燥度などの紙の特性を高めるのに役立てることができる。
【0040】
気体沈殿剤は、望ましくは沈殿用化学物質として使用される。したがって、たとえば、二酸化炭素を水酸化カルシウム用の気体沈殿剤として用いることができる。したがって、純粋もしくはほぼ純粋の二酸化炭素(CO2)などの二酸化炭素含有のガス、煙道ガス、または他の適したガスを沈殿反応装置へ投入することができる。二酸化炭素以外の他の適した沈殿剤を使用することもできる。
【0041】
本発明は、沈殿可能な反応性物質を繊維懸濁液においてその繊維上へのみではなく、懸濁液の他の無機粒子もしくは有機粒子の表面へも沈殿させることを可能にする。これらの粒子には、たとえば、鉱物材料の粒子を含むことができる。このような粒子を酸化チタン粒子、または不純物の粒子もしくは繊維からの微細繊維とすることができる。このような場合、本発明の方法を用いて、不完全にインキ抜きした繊維に残っているインキ残滓を、軽質炭酸カルシウムもしくは同様の物質で被覆することもできる。無機粒子上へ沈殿した反応性物質は粒子を繊維へ結合することができ、この場合、粒子は紙の繊維によって保持される。他方、繊維上へ沈殿した鉱物材料は繊維同士を互いに結合させることができ、これによって、製造すべき紙の強度を高める。
【0042】
繊維材料および沈殿すべき反応性鉱物材料に加えて、沈殿反応装置へ投入される繊維懸濁液は、製紙もしくはそれと同様のことに用いられる次のような他の固形物質を含有することができる。
― 酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、滑石、カオリン、酸化チタンなどの他の鉱物材料、および/または、
― 繊維系微細繊維、他の微細繊維もしくはインキ抜き中に繊維から脱落した不純物などの不純物、さまざまな工程のリジェクト、
― 澱粉もしくは殺生物剤などの歩留まりを向上させるのに用いる物質。
【0043】
上述の物質の多くは、反応装置の段階の後、紙パルプをヘッドボックスから地合い部へ、すなわち1つの移動している地合い基部(ワイヤ)上へ、または2つの移動する地合い基部(ワイヤ)の間へ投入する前に、PCC含有の紙パルプの中へ導入することができる。
【0044】
本発明は、繊維状の材料から作られる紙、板紙、または他の同様のパルプもしくはウェブ形状の製品の製造に使用するのに適している。したがって、本発明は次のことに使用するのに適している。
― 新聞用紙、上級紙、雑誌用紙、クラフト紙、薄葉紙、特殊紙、または板紙などのウェブ形状製品の製造、
― 化学パルプ、機械パルプ、ケミメカニカルパルプ、サーモメカニカルパルプもしくはセミメカニカルパルプ、リサイクル繊維パルプ、またはこれらの混合物などのさまざまな種類のパルプで作られる製品の製造、
― 一次繊維、化学もしくは機械繊維、漂白もしくは未漂白繊維、粉砕もしくは非粉砕繊維、乾燥もしくは非乾燥、インキ汚染もしくはインキ抜きリサイクル繊維もしくは抄紙機損紙から得た繊維などのさまざまな種類の繊維から作る紙の製造、またはこれらの混合物から作る紙の製造。
【0045】
上述の方法による製紙において作られる填料(たとえばPCC)を含有する紙パルプは、適切な濃度でヘッドボックスから、抄紙機のシングルまたはツインワイヤフォーマ(水透過性の1つもしくは2つの移動する地合い基部)である地合い部へ投入される。地合い部において、密着して連続した紙ウェブが、水および材料のような紙パルプ成分から作られ、水に溶解している懸濁微細繊維が、上述の1つもしくは2つの地合い基部を通して流出する。好ましい実施例において、生成工程は中性アルカリ性製紙工程であり、これは繊維懸濁液のpHが一般に6.5と9の間であることを意味している。前処理から得られたPCC含有の繊維懸濁液を反応装置からパルプチェストへ投入することができ、ここからこれが、バックウォータ希釈(たとえば、ワイヤピット)を介して、ヘッドボックスの前に配されているパルプ処理装置(空気分離、スクリーン、その他)へ送られる。ヘッドボックスの前には、紙の構造に影響を及ぼす他の物質、たとえば湿部のサイズ剤(たとえば、ASA、AKD)などの、中性アルカリ製紙工程および/または補助剤たとえば歩留まり改善剤と共存できる他の物質を、PCC含有の処理済繊維懸濁液に混合することができる。
【0046】
PCC含有の繊維懸濁液が紙ウェブの構成を決める最終紙パルプの一部をなすこともできるが、パルプは、上述の処理済繊維懸濁液を、他の繊維を含有する1以上の他のパルプ部分へ混合することによって得ている。
【0047】
紙パルプの繊維材料の前処理において、繊維および反応性鉱物材料が微細繊維懸濁液の形で気体沈殿剤へ、すなわち以前の方法とは逆の方法で投入される場合、反応性鉱物材料と、繊維材料と、気体沈殿剤を、沈殿に関してはかなり容易に、かつ効率的に混ぜ合わせることができる。
【0048】
沈殿反応はただちに始まり、反応は、微細繊維懸濁液滴とガスとの間の実質的に広い接触面において迅速に起こる。沈殿は繊維表面ばかりでなく繊維の中へも容易に行われる。繊維材料の構成と、反応性鉱物材料および/または気体沈殿剤と、本発明の方法および装置とを調節することによって、強度特性および光学特性などの取得可能な紙の特性を制御することができる。
【0049】
繊維懸濁液を細かく分散させるほど、反応が一層迅速かつ効果的になると考えられる。
【0050】
衝撃粉砕機の原理で作動するフロースルーミキサは、繊維懸濁液を気体沈殿剤へ分散して、霧状の気体懸濁液を作ることができ、この場合、気体と、繊維と、沈殿すべき反応性鉱物材料とが非常に効率的に混合される。本発明の方法は、沈殿工程の成分を微細に均質化して気体懸濁液を作ることができ、この場合、さまざまな成分が互いにただちに反応し合うことが可能になる。このことは、たとえば、活性化された繊維が非活性化状態へ戻りそうになった場合、すなわち繊維内に形成するフィブリルもしくは孔が閉じようとする場合に、とくに望ましい。繊維懸濁液の鉱物材料は、少なくとも部分的にフィブリルの戻りを防ぐ傾向がある。必要ならば、繊維懸濁液を一回または数回再活性化することができる。
【0051】
沈殿段階の前および/または沈殿段階中に繊維材料を活性化して、繊維同士で結合する能力および沈殿鉱物材料を結合する能力を高めることによって、より効率的な沈殿段階と、紙の特性の改善とを得ることができる。沈殿反応装置においてたとえ一回の処理でも所望の沈殿段階および所望の紙特性を得るには十分であると考えられる。
【0052】
次に、添付の図面を参照して本発明を簡潔に説明する。
【0053】
図1は、本発明による連続沈殿反応装置10を示し、これは、沈殿槽12と、沈殿槽内に配設した分散沈殿装置14と、繊維懸濁液入口管16と、気体沈殿剤入口管18と、処理済繊維懸濁液出口管20を含む。さらに装置は、駆動部22と、駆動部22と上記装置14との間にある軸受密封部24を含む。
【0054】
分散活性化装置14は、図2にその水平断面図を示すが、これは、いわゆるフロースルーミキサであり、ミキサは、ブレード26a、26’a、26”a、28a、28’a、28”aを装備した6個の同心ケージ26,26'、26”、28、28'、28”を有している。装置14において繊維懸濁液が、小さな粒子と、液滴および/または固形粒子へ分散される。同装置14は繊維懸濁液の繊維を活性化して、繊維同士が結合し、さらに沈殿鉱物材料を受容する能力を高めるように使用される。分散活性化装置における滞留時間は短く、10sより短く、代表的には2sより短く、最も代表的には1sより短くなることさえある。
【0055】
図2に矢印で示すように、分散装置の第1のケージ26、26’、26”は回転子として働き、同図に示す場合においては反時計回りに移動する。第1のケージに隣接する他のケージ28、28’、28”もやはり回転子として働くが、同図に示す場合は時計回りに移動する。これらのケージにはブレード26a、26a’、26a”、28a、28a’、28a”が装備されており、これらが、装置を通って半径方向に外へ向けて移動する繊維懸濁液と衝突して、繰り返し衝撃および逆衝撃を与える。同時に、ブレードが互いに接近するため、回転子の隣接するブレード間に超過圧力が生じ、さらにブレードが互いから離れるため、不足圧力が生じる。圧力差が非常に迅速な超過および不足圧力パルスを生じる。同時に、せん断力と乱流が、装置14を通過する繊維懸濁液に生じる。
【0056】
繊維材料および反応性鉱物材料を含有する繊維懸濁液または繊維スラリが管16を介して分散活性化装置の中心部30へ投入され、ここから繊維懸濁液は、回転子ブレードおよび中心部と外側のケージとの間の圧力差によって誘導されて、半径方向に外へ向かって最も外側のケージ20”の開放外側縁端部32の方へ移動する。必要な場合、繊維懸濁液を、ケージ間の装置14へ投入することもできる。所望の場合、繊維材料および反応性鉱物材料を分散活性化装置14へ別個の管を介して投入することができるが、このような場合、繊維および鉱物材料を含有する繊維懸濁液はこの段階まで作られない。
【0057】
相反する方向に動く回転子ブレードにより生じる衝撃と、逆衝撃と、せん断力と、乱流ばかりでなく、超過および不足圧力パルスが、繊維懸濁液を、非常に微細な部分と、液滴と、固形粒子に分散させると同時に、繊維をたとえばフィブリル化によって活性化する。活性化は、とりわけ、繊維懸濁液に対して発揮される強力な衝撃と、大きなせん断力によって効果的になる。しかし、本発明の方法によれば、繊維懸濁液は、ケージを通る比較的開放的な経路に沿って移動することができるので、円盤型もしくは円錐型リファイナ式方法により処理される繊維のように、粉砕および繊維破壊力を受けることがない。本発明の方式によれば、繊維は、いずれにせよ、瞬間的にしか回転子ブレードの表面に接触しない。
【0058】
図1および図2に示す前処理段階において、本発明の方法によれば、気体沈殿剤が分散活性化装置のケージの中心部30へ管18によって投入される。この中心点から、気体が半径方向に外へ流れて、分散装置およびこれを取り巻く沈殿槽12の空間の両方に、気体沈殿剤を含有する気体空間を形成する。気体は、沈殿反応装置の上部から管21によって排出される。所望の場合、気体沈殿剤を、分散活性化装置のケージへもしくはそれらの間へ投入することもできる。沈殿反応はこの分散活性化装置の気体空間ですでに始めることができる。
【0059】
分散活性化装置14で処理されながら、繊維懸濁液は、非常に微細な液滴および分子を形成し、これらが装置14から、それを取り巻いている気体空間の一部34’へ分散される。これらの微細液滴および粒子は分散活性化装置から、主としてその一番外側のケージの全域から霧状の流れ36になって放出される。分散活性化装置の外側では、微細液滴および粒子が沈殿槽の広い面積にわたって拡がるため、沈殿反応が比較的長時間続くと考えられる。処理済繊維懸濁液が、沈殿槽の底部に配置されているプールにおいて沈積し、槽から管20を介して排出される。
【0060】
沈殿槽12の大きさ、形、幅および高さを選択して、分散活性化装置から飛び出る液滴および粒子の沈殿槽の気体空間34’における滞留時間を最適にできる。繊維懸濁液の滞留時間を、沈殿槽12の高さに加えてその形をタワー状にすることによって、延長することができる。
【0061】
沈殿反応装置10において行われる工程も、たとえば分散活性化装置のケージ数と、ケージ間の間隔と、各ケージのブレード間の間隔もしくはブレードの寸法および位置とを調節することによって制御することができる。
【0062】
沈殿槽12の底部から排出される繊維懸濁液を循環して同一の沈殿反応装置へ戻し、または他の反応装置へ供給して処理を完成させることができる。
【0063】
他の前処理段階を示す図3および図4において、本発明による沈殿反応装置は、その分散活性化装置とともに、適切な場合には、図1および図2におけるものと同一の参照番号を用いている。図3に示す本発明による第2の沈殿反応装置10は主として、反応装置が、囲まれた最も外側のケージ32を装備した分散活性化装置14を含む点と、沈殿反応装置が、分散活性化装置を越えて延在する別個の沈殿空間を含まない点で、図1および図2に示すものとは異なる。図3および図4による方法は、たとえば沈殿反応が分散活性化装置の気体空間において所望のようにすでに行う時間があると予想できる場合に使用するのに適している。
【0064】
図3および図4のものなどの分散装置において、ハウジング40が最も外側のケージ28”を取り巻いてケージを包囲している。ハウジングには処理済繊維懸濁液を装置14から排出する出口42が作られている。処理済繊維懸濁液を、出口42を介して次の処理もしくは次の工程へ送ることができる。
【0065】
図3の反応装置は、沈殿がこの装置で行われない場合にも繊維懸濁液の活性化に使用するのに適している。図1の沈殿反応装置ばかりでなく、図3の反応装置も2つもしくはそれ以上の一連の反応装置を形成するように配設することができる。図5は、図1に示すもののような沈殿反応装置が3個ある群を示す。本図において、適切な場合には前の図におけると同じ参照番号を使用している。
【0066】
図5は、3個の沈殿反応装置10と、10’と、10”を示し、この場合、Ca(OH)2を含有する繊維懸濁液はCO2ガスで処理して、Ca2+イオンを炭酸塩化、すなわちCaCO3を沈殿させる。複数の反応装置が直列に連結されて、第1の反応装置10からの繊維と、沈殿炭酸塩と、未沈殿水酸化カルシウムとを含有する一部処理されている繊維懸濁液が、出口20から第2の反応装置10’の入口16’へ投入される。第2の反応装置10’から処理済繊維懸濁液が、出口20から第3の反応装置10”の入口16”へそれぞれ投入される。
【0067】
二酸化炭素含有ガスが管18と、18’と、18”を介してそれぞれの反応装置へ投入される。入口18を介して二酸化炭素含有ガスが第1の反応装置10へ導入されて、分散活性化装置14にすでにある繊維への沈殿(炭酸塩化)および活性炭素の生成を始める。軽質炭酸カルシウムは、繊維懸濁液の繊維および他の粒子上へ沈殿する。炭酸塩は別個の粒子として繊維懸濁液中へも沈殿する。同一もしくは他の二酸化炭素含有ガスを管18’と18”によって第2および第3の沈殿反応装置10”および10”へ投入して、沈殿反応(炭酸化)を完成することができる。ガスは出口21と、21’と、21”とを介して反応装置から排出される。
【0068】
沈殿反応装置10へ投入される繊維懸濁液を、これを反応装置へ投入する前に、沈殿反応装置10の手前に連結されている別個の活性化装置で活性化させることができる。活性化装置は、望ましくは衝撃粉砕機型のフロースルーミキサである。
【0069】
図6は、第2の沈殿反応装置群を示し、これは2つの直列連結された図1による沈殿反応装置10および10’を含む。第1の沈殿反応装置10の手前には、主として図3のように構成されたフロースルーミキサ型活性装置44が配されている。この活性装置の内部では、沈殿反応装置へ投入された繊維材料が活性化される。しかし、気体沈殿剤は活性装置へは投入されない。
【0070】
活性化装置44へは、管46を介して上部から繊維材料が投入される。活性化された繊維材料は、中間タンク48を介して第1の沈殿反応装置10へ供給される。沈殿用鉱物材料である水酸化カルシウムを活性化装置44の手前の管50を介して、または活性化装置の後の管52を介して、懸濁液に添加することができる。中間タンク48において、繊維懸濁液はアルカリ条件下で所定の時間膨張させることができる。中間タンクから、繊維材料および沈殿用鉱物材料を含有する繊維懸濁液は、下方から管16を介して分散活性化装置14へ投入される。代表的には二酸化炭素である気体沈殿剤18が、繊維懸濁液とともに装置14へ送り込まれる。沈殿反応装置の上部から管21を介してガスが排出され、ガスは代表的には蒸気および二酸化炭素を含有している。ガスは、ガス洗浄冷却装置54に処理のために供給される。装置54で処理された二酸化炭素含有ガスは循環されて、管18を介して沈殿反応装置10へ戻される。沈殿反応装置の底部に集まる処理済繊維懸濁液は、そこから出口管20へ排出される。
【0071】
図6の第2の沈殿反応装置10’は主として、第1の沈殿反応装置10と同じように機能する。第1の反応装置10の底部から排出されて管20へ入る代表的には繊維懸濁液と、水酸化カルシウムと、さらには軽質炭酸カルシウムとを含有する繊維懸濁液が、管16’を介して下部から第2の反応装置10’の分散活性化装置14’へ投入される。洗浄冷却装置54から二酸化炭素含有ガスが第2の反応装置10’へ送られる。第2の反応装置10’の底部から、主としてすでに処理されている繊維懸濁液と、典型的には繊維上へ沈殿している所望の量の炭酸カルシウムが管20’を介して排出される。第2の反応装置10’の上部からガスが排出されて、再循環するためにガス洗浄冷却機54へ送られる。
【0072】
図7は、3つの沈殿反応装置10、10’、10”を直列に連結して成る沈殿反応装置の第3の群を示す。反応装置は、一方の上部に他方が連結されており、繊維懸濁液が上部から反応装置の分散活性化装置へ投入される。第1の反応装置10が一番上に、第3の反応装置10”が底部にあり、反応装置を流れ通る繊維懸濁液は主として下方へ流れる。第3の沈殿反応装置の正面には、図6による別の前活性化装置44と、中間タンク48とが配設されている。
【0073】
本発明の利点は次の通りである。
― 繊維懸濁液を、沈殿のために同時に活性化および分散することができる。
― 沈殿反応が非常に迅速、効果的、完全で、沈殿反応装置を1回通した運転でも良い結果が得られる。
― 活性化工程によって繊維の強力で効果的な処理が達成されるが、繊維に対してとくに破壊その他の損傷を与えることがない。
― 活性化工程を調整することができる。
― 繊維懸濁液と、鉱物材料と、ガスの非常に効果的な混合が達成され、その結果、繊維懸濁液のそれぞれ少量単位が処理され、それぞれの少量単位で沈殿が行われる。
― 繊維への沈殿に対しても影響を及ぼすことができる。
― 沈殿反応によって繊維同士を結合し、紙の強度が改善されると考えられる。
― インキ抜き後に繊維に残っているインキ残滓を、沈殿反応により被覆することができる。
― 沈殿反応によって無機質および有機質の粒子を繊維へ結合することができ、これによって粒子を紙に保持させることができる。
― 沈殿によって紙の白色度、強度および不透明度などの品質を、以前よりも、より良く最適化できる。
― 前処理を連続製紙工程に組み入れて、連続する紙パルプの流れを、前処理から得られたPCC含有繊維懸濁液から作って、懸濁液をヘッドボックスから地合い部へ供給することができる。
【0074】
図8は、製紙方法を模式的に示す。繊維懸濁液が上述の前処理工程後に投入されるパルプチェストMから、繊維材料が希釈(たとえば、ワイヤピットP)を介してパルプ調整装置へ送られ、ここから紙パルプはヘッドボックスHへ、さらに地合い部Fへ送られて、ここで、連続して進行する紙ウェブWが形成される。
【0075】
次の実施例に示す試験は、本発明による繊維/PCC製品の炭酸化を、他の提案されている方法と比較することを目的としている。これは、本発明を説明することを目的としており、その範囲を限定するものではない。
【0076】
これらの試験のすべてにおいて使用された材料は、同種類の機械粉砕の上級紙製造用マツ繊維であり、濃度は約3.5%、固形物質が約17%のCa(OH)2スラリと、同様の組成のCO2含有ガスであった。
【0077】
(K1)本発明による方法によって、繊維/PCC繊維生成物を、沈殿後に70/30の繊維/PCC比を達成するように、松繊維含有繊維パルプと、必要量のCa(OH)2スラリとを混合して作り、その後、繊維/Ca(OH)2懸濁液を2回、図1に示す沈殿反応装置からポンプで汲み出した。繊維/Ca(OH)2懸濁液を次に本発明の方法によって微細懸濁液の形で汲み出してCO2含有ガスの中へ投入した。過剰なCO2含有ガスを次に装置へ投入した。この処理後の繊維/PCC生成物のpHは7であった。
【0078】
(V1)比較のために、繊維/PCC生成物を、繊維/Ca(OH)2懸濁液を6回流動式化学ミキサから汲み出して化学ミキサで生成した。さらにCO2含有ガスの過剰分をこの化学ミキサへ投入した。処理直後の繊維/PCC生成物のpHは7であった。
【0079】
(V2)別の比較のために、化学ミキサは流動不可能である以外は、試験(V1)と同様の沈殿を行ない、CO2含有ガスの過剰分だけをミキサへ投入した。繊維/Ca(OH)2懸濁液を6回化学ミキサから汲み出した。処理直後の繊維/PCC生成物のpHは7であった。
【0080】
(K1)本発明により作られた生成物のpHは、生成から24時間後でも7であり、炭酸化が完全であることを証明した。
【0081】
(V1)この実施例により作られた生成物のpHは、生成から24時間後は10であり、炭酸化が不完全であったことを証明しているが、炭酸化反応を完全にするために、生成物の炭酸化を数分間連続させる必要があった。炭酸化が不完全であると、製紙中に抄紙機の湿部において化学的に問題が生じる。
【0082】
(V2)この実施例により作られた生成物のpHは、生成から24時間後は11であり、炭酸化が不完全であったことを証明しているが、炭酸化反応を完全にするためには、生成物の炭酸化を数分間連続させる必要があった。
【0083】
これらのすべての試験において、実際の炭酸化に要する時間は短いものであったが、本発明による方法の場合だけが、非常に短時間で炭酸化が完全であり、さらなる炭酸化を必要としなかった。
【0084】
上述の説明および一例として提案した実施例によって本発明の範囲を限定することは、目的ではなく、目的は、本発明を上述の特許請求の範囲内で広く適用することである。したがって、本発明の方法を紙、板紙もしくは同様のものの製造方法において、紙、板紙もしくは同様のものに原料として用いる繊維材料の他のいかなる前処理において用いて、繊維およびその表面を活性化して、たとえば、それらの機械的もしくは化学的結合能力を増大し、鉱物材料を機械的もしくは化学的に結合するそれらの能力を増大し、活性OH基をその表面に生成し、および/またはそれらの内部(内腔)を開放して、とりわけ、鉱物材料が繊維内へ沈殿させることができる。繊維材料はその後、衝撃粉砕機の原理で作動するフロースルーミキサにおいて前処理されるが、これは次のものを含んでいる。
― ブレードを設けた複数の、代表的には3〜8個、最も代表的には4〜6個の同心状のケージ。これらのうちの少なくとも1つおきのケージが回転子として機能し、上記ケージに隣接するケージが固定子または回転子として機能し、隣接するケージ同士の速度差は10〜500m/s、望ましくは50〜200m/sである。
― 繊維材料を主として上記ケージの中心部へ投入する投入装置。
― 繊維懸濁液が半径方向にケージを通って外側へ流れることができ、さまざまな方向にケージを出る開放外側ケージ、または、ケージから半径方向に外側へ流れる繊維懸濁液を放出するための1個以上の出口を設けた外側ケージ。
【0085】
前処理は、たとえば、Ca(OH)2の添加によって繊維が膨張した場合に実行することが望ましい。本発明による繊維の前処理は、繊維上に沈殿させるべき反応性鉱物材料に繊維材料を接触させる前に繊維材料を活性化することにとくに適している。本発明による前処理はさらに、繊維材料を前処理して繊維材料において必要な同様の特性を達成することを目的とする他の工程に使用することにも適している。
【0086】
本発明により作られた紙において、填料PCCが結合の形成もしくはシートの形成に対して影響を及ぼさないように、填料PCCは、繊維のメッシュの内部および内腔の内部に「隠されている」。この種の紙は、紙パルプ繊維自体に添加された鉱物からPCCが出てくる紙よりも良好な強度特性を有する。
【0087】
本発明による80g/m2の紙は、30/70のPCC/繊維比で作られ、対照の紙は、PCCを通常の添加剤として導入している紙であった。本発明により製造された紙は、良好な比引張強さ(19.3→30.9)と、比引裂強さ(7.0→9.0)を有した。耐折強さは6から31に増大した。
【0088】
この紙はさらに、対照の紙に比べて、有孔度が低く(シートの密度が、より高く)、不透明度および地合いが改善されている。シートの白色度も、填料の一部が「隠されて」いるので、同量の通常の填料を含有する紙に比べて減じている。
【0089】
上述のようにPCCを加えて前処理した紙における繊維は、望ましくは処理済繊維の乾燥重量の少なくとも20重量%のPCCを含み、好ましくは20〜50重量%である。繊維は、少なくとも25重量%のPCCを含むことが好ましく、たとえば25重量%〜50重量%が上述の方式で繊維へ導入される。紙パルプには他の繊維も含めることができ、その場合、上述の方法で導入される、紙パルプの合計重量に対するPCCの割合は、それに応じて小さくなる。すべての繊維原料が上述の方法で前処理されており、少なくともPCCが20重量%、望ましくは20重量%〜50重量%、最も望ましくは少なくとも25重量%、たとえば25重量%〜50重量%である紙製品が望ましい。
【0090】
本発明により作られた紙におけるPCCは、上述の方法によって繊維上へ導入されるが、PCCはナノサイズの軽質炭酸カルシウムであり、軽質炭酸カルシウムは、代表的には100nm未満の粒子サイズである。沈殿条件を選択することによって、粒子の平均サイズおよびサイズの分布に対して影響を及ぼすことができる。
【0091】
さらに、他の填料を添加することによって、前処理済み繊維におけるナノサイズの填料を補うことができる。追加填料は、通常の大きさの填料、たとえば別個に沈殿したPCCもしくは化学的に異なる填料でもよい。
【0092】
本発明の方法により作られる紙を、抄紙機での紙ウェブの乾燥後に、オンライン、または別の仕上げ工程のいずれかにより仕上げることができる。表面を仕上げるために、紙ウェブをたとえばカレンダ掛けすることができる。上述の方法により作られた紙ウェブを、可能なカレンダ掛け処理後に、印刷用紙(たとえば、SC紙)として使用することができ、または紙ウェブを、可能なカレンダ掛け処理後に、オンラインで、もしくは別個の塗工機で塗工することができ(たとえば、LWC紙)、この場合コーティングは印刷面として機能する。PCCが前処理において繊維材料上へ導入される繊維材料が、化学パルプである場合、主としてこのパルプから、またはこのパルプだけから作られる印刷用紙製品は、非塗被上級紙、すなわちWFU、もしくは塗被上級紙、すなわちWFC、または複写用紙にすることができる。本発明は、これにもかかわらす、印刷用紙に限定されることはなく、すべての紙製品に適用することができる。特許請求の範囲において、用語「紙」は、板紙を始めとして、坪量に関係なくウェブの形で元来作られるすべての弾性繊維系紙製品をいう。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の方法による沈殿反応装置の縦断面図を模式的に一例として示す図である。
【図2】図2は、図1に示す沈殿反応装置に配設した分散および活性化段階の水平断面図を模式的に一例として示す。
【図3】図3は、本発明の方法による第2の沈殿反応装置の縦断面図を模式的に一例として示す。
【図4】図4は、図3に示すものと同様な沈殿反応装置に配設した分散活性化装置の水平断面図を模式的に一例として示す。
【図5】図5は、本発明の方法による沈殿反応装置群の縦断面図を模式的に一例として示す。
【図6】図6は、本発明の方法による第2の沈殿反応装置群の縦断面図を模式的に一例として示す。
【図7】図7は、本発明の方法による第3の沈殿反応装置群の縦断面図を模式的に一例として示す。
【図8】図8は、本発明による製紙方法を模式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
填料含有紙パルプを所定の濃度で抄紙機の地合い部へ投入し、ワイヤなどの水透過性地合い基部を介して前記パルプに排出させることによって前記紙パルプから水を除去し、このようにして生産した紙ウェブを乾燥し、かつ仕上げをして、仕上げ紙製品を生産する製紙方法において、前記紙パルプを次のように製造する、すなわち、
(a)紙パルプ用原料として用いる繊維を含有する繊維材料を沈殿反応装置へ投入し、
(b)水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などの反応性鉱物材料を該沈殿反応装置へ投入し、
(c)該反応性鉱物材料および前記繊維材料を、該沈殿反応装置において、および/またはこれらの材料を該沈殿反応装置へ投入する前に結合させて繊維懸濁液を作り、
(d)該繊維懸濁液を前記沈殿反応装置において前記反応性鉱物材料の沈殿剤に接触させて、該懸濁液の該反応性鉱物材料を少なくとも部分的に沈殿させ、これによって、このようにして生成した沈殿鉱物材料の少なくとも一部を該繊維懸濁液の繊維上へ沈殿させ、
(d1)前記沈殿反応装置へ、二酸化炭素などの、前記鉱物材料を沈殿させる沈殿剤を含有するガスを投入して、該沈殿反応装置内部に該沈殿剤を含むガス空間を形成し、(d2)該沈殿反応装置へ投入されるおよび/またはそこで生成される前記繊維懸濁液を、固形物質および/または液体を含有する液滴および/または粒子などの小さな部分にして、前記ガス空間へ分散または散布し、
(e)前記処理済繊維懸濁液を前記沈殿反応装置から排出し、
その後、該繊維懸濁液によって作られた前記紙パルプを前記抄紙機の地合い部へ投入して、該パルプに水透過性地合い基部を介して排出させることによって紙を生成することを特徴とする製紙方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製紙方法において、段階(d2)において、前記繊維懸濁液の液相を、主として10mmより小さい、代表的には1mmより小さい液滴で前記ガス空間へ分散することを特徴とする製紙方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製紙方法において、前記沈殿反応装置の前に、または前記繊維の流れ方向に関して該沈殿反応装置の開始点に配置している活性化帯域において前記繊維懸濁液に対して力を及ぼし、該力が前記繊維を活性化して、該繊維が互いに結合する能力および、該繊維が前記沈殿中のおよび/または沈殿した鉱物材料へ結合する能力を高めることを特徴とする製紙方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製紙方法において、前記繊維懸濁液を活性化するために、反復的な衝撃、逆衝撃、剪断力、乱流、超過圧力および不足圧力、または他の同様な力などの力をそれに及ぼし、該力が、
− 機械的に前記繊維を、とくに該繊維の表面を、たとえば該繊維をフィブリル化もしくは粉砕することによって、または該繊維の内部(内腔)を前記鉱物材料に対して開放することによって活性化し、および/または、
− 化学的に前記繊維の表面を、たとえば活性OH基を該繊維表面に生成することによって活性化することを特徴とする製紙方法。
【請求項5】
請求項3に記載の製紙方法において、前記活性化帯域を流れ通る前記繊維懸濁液の流れに対して、5〜250m/sで動くブレードもしくは同様なものによって該繊維懸濁液の流れに生成される強力で繰り返しの衝撃および逆衝撃を与えることを特徴とする製紙方法。
【請求項6】
請求項3に記載の製紙方法において、前記沈殿反応装置の活性化帯域に衝撃粉砕機型フロースルーミキサがあり、該ミキサは、ブレードを設けた複数の代表的には3〜8、最も代表的には4〜6個の同心のケージを有し、該ケージのうち少なくとも1つおきのケージが回転子として働き、該ケージに隣接する前記ケージが固定子もしくは回転子として働き、該隣接するケージの速度差が10〜500m/s、代表的には50〜200m/s であり、
− 前記繊維懸濁液を、前記フロースルーミキサを通して、ケージの中心から半径方向に外へ向けて投入し、該ケージのブレードが、反復する衝撃と、逆衝撃と、剪断力と、乱流と、および/または超過圧力および不足圧力を生じて、これらがともに前記繊維を活性化させるために、前記外へ向かって流れる繊維懸濁液に影響を与えることを特徴とする製紙方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製紙方法において、前記鉱物材料の沈殿用沈殿剤を含有し前記沈殿反応装置へ投入すべきガスの少なくとも一部を、該反応装置へ前記活性化帯域を介して投入して、この活性化帯域において活性化される前記繊維を、活性化時にただちに、もしくはその直後に前記沈殿剤と接触可能にすることを特徴とする製紙方法。
【請求項8】
請求項3から7までのいずれかに記載の製紙方法において、前記繊維材料および前記反応性鉱物材料を含有する前記懸濁液の前記活性化帯域における滞留時間は短く、10秒より少なく、代表的には2秒より少なく、最も代表的には1秒より少ないことを特徴とする製紙方法。
【請求項9】
請求項1に記載の製紙方法において、二酸化炭素などの前記沈殿剤を5%より多く、代表的には10%より多く含有するガスを前記沈殿反応装置へ投入することを特徴とする製紙方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製紙方法において、
− 前記沈殿剤を含有する前記ガスは、純粋もしくはほぼ純粋の二酸化炭素、煙道ガス、もしくは他の二酸化炭素含有ガスであり、または前記使用される鉱物材料の沈殿に適した他のガスを含有し、またはこれらのガスの混合物であり、
− 前記沈殿剤を含有するガスを、該ガスが前記反応装置で超過圧力を生じるように、該沈殿反応装置へ投入することを特徴とする製紙方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製紙方法において、
− 前記繊維懸濁液を、直列に連結した2つ以上の沈殿反応装置から取り出し、該沈殿反応装置において前記ガス空間がさまざまな組成を有し、たとえば、
− 第1の沈殿反応装置の沈殿剤含有ガスは、純粋もしくはほぼ純粋の二酸化炭素であり、次の沈殿反応装置もしくは複数の反応装置においては煙道ガスもしくは他の二酸化炭素がより少ないガスであり、または、
− 第1の沈殿反応装置もしくは複数の反応装置の前記沈殿剤含有ガスは、二酸化炭素がより少ないガスであり、次の沈殿反応装置もしくは複数の反応装置においては純粋もしくはほぼ純粋の二酸化炭素であることを特徴とする製紙方法。
【請求項12】
請求項1に記載の製紙方法において、
− 前記反応性鉱物材料は、水酸化カルシウムと、流酸カルシウム、酸化カルシウムと、本目的に適し前記沈殿剤により沈殿可能な他の反応性材料、および/またはこれらの混合物を含み、
− 前記反応性鉱物材料を製品の所望の品質に合わせて、たとえば所望の光学特性に合わせて選択することを特徴とする製紙方法。
【請求項13】
請求項1に記載の製紙方法において、前記繊維材料は、
− ケミカル、メカニカル、ケミメカニカル、サーモメカニカル、セミケミカル、または他の同様の工程から得られる一次繊維と、
− 新聞用紙、クラフト紙、薄葉紙、特殊用紙、もしくは板紙から得られるインキ抜き、もしくは未インキ抜き再生繊維、抄紙機損紙からの繊維、または他の同様な繊維と、
− 漂白もしくは非漂白繊維、粉砕もしくは非粉砕繊維、乾燥もしくは非乾燥繊維と、
またはこれらの混合物とを含むことを特徴とする製紙方法。
【請求項14】
請求項1に記載の製紙方法において、前記繊維材料が、繊維系微細繊維などの微細物質に加えて、不純物および/または鉱物材料を含有することを特徴とする製紙方法。
【請求項15】
請求項1に記載の製紙方法において、前記繊維材料を、0.1〜40%、さらに代表的には1〜15%、最も代表的には3〜7%の濃度で前記沈殿反応装置へ投入することを特徴とする製紙方法。
【請求項16】
紙パルプ含有の填料を所定の濃度で抄紙機の地合い部へ投入し、該パルプにワイヤなどの透過性地合い基部を介して排水させることによって該紙パルプから水を除去し、このようにして製造した紙ウェブを乾燥しおよび仕上げを行って、仕上げ紙製品を製造し、これによって前記紙パルプ用の原料として用いている繊維材料を前処理し、該繊維および繊維表面を活性化して、たとえば、機械的もしくは化学的に結合するそれらの能力を高め、機械的もしくは化学的に鉱物材料へ結合するそれらの能力を高め、それらの表面に活性OH基を生成し、および/またはそれらの内部(内腔)が開いて、とりわけ、前記鉱物材料が前記繊維の中へも沈殿できる紙製造方法において、該方法は、衝撃粉砕機の原理によって作動するフロースルーミキサにおける前記繊維材料の前処理を含み、該ミキサにおいては、
− ブレードを設けた複数の代表的には3〜8、最も代表的には4〜6個の同心のケージがあり、該ケージのうち少なくとも1つおきのケージが回転子として働き、該ケージに隣接する前記ケージが固定子もしくは回転子として働き、該隣接するケージの速度差が10〜500m/s、代表的には50〜200m/sであり、
− 前記繊維材料を主として前記ケージの中心部へ供給する供給装置があり、
− 前記繊維懸濁液が前記ケージを通って半径方向に外に向けて流れて、該ケージからさまざまな方向に出ることを可能にする開放外側ケージ、または前記ケージから半径方向に外へ向けて流れる前記繊維懸濁液を放出するために1つ以上の出口を設けている外側ケージがあり、
その後、前記繊維懸濁液を前記鉱物材料沈殿用の前記沈殿剤に接触させることによって該鉱物材料を前記繊維の表面上へ沈殿させ、その後、前記繊維懸濁液を含有する紙パルプを、前記抄紙機の地合い部へ投入し、該パルプに水透過性地合い基部を介して排出させることによって紙を生成することを特徴とする紙製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の紙製造方法において、たとえばCa(OH)2 を添加することによって前記繊維を膨張させながら前記活性化を行なうことを特徴とする紙製造方法。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれかに記載の前処理方法によって前記紙パルプにおいて少なくとも部分的に前処理された繊維を用いて作られ、それによって該紙パルプは、前記前処理した繊維の総重量に対して、ナノサイズの填料粒子、とくにPCCを少なくとも20重量%含むことを特徴とする紙。
【請求項19】
請求項18に記載の紙において、その繊維原料の全部が、上述の前処理された繊維からなることを特徴とする紙。
【請求項20】
請求項18または19に記載の紙において、該紙は、湿部サイズによってサイズ塗被されることを特徴とする紙
【請求項21】
請求項18、19または20に記載の紙において、該紙は、カレンダ掛けおよび/または塗工した紙であることを特徴とする紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−528947(P2007−528947A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519942(P2006−519942)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000410
【国際公開番号】WO2005/005726
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500530823)ユーピーエム−キンメネ コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】UPM−KYMMENE CORPORATION
【出願人】(506016842)
【氏名又は名称原語表記】FP−PIGMENTS OY
【Fターム(参考)】