説明

製紙用表面サイズ剤

【課題】ステキヒトサイズ度やペン書きサイズ度およびインクジェット適性などの各種サイズ効果に優れた水溶性型の製紙用表面サイズ剤を提供する。
【解決手段】少なくとも、スチレン系モノマー成分と、アニオン性ビニルモノマー成分と、架橋性モノマー成分を含有するモノマー成分を共重合させて得られる、重量平均分子量20,000〜100,000、重量平均分子量/数平均分子量の比2.5未満の共重合体を含有する製紙用表面サイズ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製紙用表面サイズ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙用表面サイズ剤は、紙に塗工することで、サイズ効果(紙の液体吸収性をコントロールし、インクの滲みなどを抑える)を付与することができる薬品であり、紙のステキヒトサイズ度や筆記適性およびインクジェット適性などのサイズ効果を向上させることができる。このような表面サイズ剤としては、例えば、スチレン等の疎水性不飽和モノマーと(メタ)アクリル酸等のアニオン性ビニルモノマーを主成分とする共重合体を含有する表面サイズ剤(特許文献1参照)が知られている。
【0003】
こうした製紙用表面サイズ剤は、一般にエマルジョン型と水溶液型に大別できる。前者は、疎水性不飽和モノマーの比率を比較的高く設計することができるためサイズ効果に優れるが、ロッドメタリングサイズプレスやゲートロール方式のような、強い剪断力下で表面サイズ剤の塗工を行う方式において、糟が多量に発生することがある。一方、後者は、機械的安定性は優れるが、均一な水溶性を付与し、製品を安定化させるために親水性不飽和モノマーを多く使用する必要があり、サイズ効果が不充分となる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−095282
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ステキヒトサイズ度やペン書き適性およびインクジェット適性などの各種サイズ効果に優れた水溶性型の製紙用表面サイズ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討を行った結果、スチレン系モノマー成分を主成分とし、さらに、特定のアニオン性ビニルモノマー成分および架橋性モノマー成分を重合して得られ、重量平均分子量を特定の範囲とし、かつその分子量分布の幅を一定以下に狭めた共重合体を用いた製紙用サイズ剤とすれば、前記の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、少なくとも、スチレン系モノマー成分、アニオン性ビニルモノマー成分、および架橋性モノマー成分を含有するモノマー成分を共重合させて得られる、重量平均分子量20,000〜100,000、重量平均分子量/数平均分子量の比が1以上2.5未満の共重合体を含有する製紙用表面サイズ剤。;全モノマー成分中スチレン系モノマー成分を59〜84重量%、アニオン性ビニルモノマー成分を15〜40重量%、架橋性モノマー成分を0.0001〜3重量%含有する前記製紙用表面サイズ剤;架橋性モノマーが(メタ)アクリルアミド類および/または(メタ)アクリル酸エステル類である前記記載の製紙用表面サイズ剤。;前記共重合体が水溶性である製紙用表面サイズ剤。;固形分濃度23〜32重量%、25℃におけるブルックフィールド粘度が10〜500mPa・sである前記製紙用表面サイズ剤、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製紙用表面サイズ剤は、ロッドメタリングサイズプレスやゲートロール等のような塗工方式おいて、糟の発生がないため、安定的な操業が可能であり、また、各種サイズ効果(特にステキヒトサイズ度、ペン書き適性、インクジェット適性)に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の製紙用表面サイズ剤は、少なくとも、スチレン系モノマー成分、アニオン性ビニルモノマー成分、および架橋性モノマー成分を含有するモノマー成分を共重合させて得られる重量平均分子量が20,000〜100,000であり、かつ重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(以下、Mw/Mn比という。)が1以上2.5未満の共重合体を含有するものである。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0010】
本発明の共重合体を構成するスチレン系モノマーとしては、特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0011】
本発明の共重合体を構成するアニオン性ビニルモノマーとしては、分子内にアニオン性官能基又はその塩を有するラジカル重合性官能基を1つ有するものであれば、特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。以下、同様。)等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、ムコン酸等の不飽和ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物、ジカルボン酸と各1価アルコールとを反応させて得られる半エステル;ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸基含有不飽和モノマー;および、これらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機塩基類等が挙げられる。なお、当該半エステルの置換基としては、炭素数が1〜18程度の直鎖または分岐鎖のアルキル基を例示でき、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2エチルヘキシル基、デシル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。その他の半エステル置換基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基、さらには、ベンジル基が挙げられる。なお、これら半エステル置換基の中でも、炭素数は1〜12程度のアルキル基が好ましい。本発明に係る製紙用表面サイズ剤水溶液の粘度が高くなり、表面サイズ剤を強い剪断力下で塗工する方式で塗工した場合、糟が多量に発生するなどして塗工時の操業安定性が悪くなるためである。以上に例示したアニオン性モノマー中では(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸中和塩がスチレン系モノマーとの共重合性に優れサイズ効果が良好となる点において好ましい。
【0012】
本発明の共重合体を構成する架橋性モノマーとしては、分子内に複数のラジカル重合性官能基を有するものや、分子中のメチル基またはメチレン基の水素が引き抜かれることを利用して、共重合体に多くの分岐構造を導入できるものであれば、特に制限なく公知のものを使用できる。
分子内に複数のラジカル重合性官能基を有するものとしては、2〜4官能性の架橋性モノマーが挙げられる。具体的には、2官能性の架橋性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミドなどビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
3官能性のモノマーとしては、1,3,5トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン、トリアリルトリメリテート、N,N−ジアリルアクリルアミド等が挙げられる。
4官能性モノマーとしては、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等があげられる。
また、分子中のメチル基またはメチレン基の水素が引き抜かれることを利用するものとしては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミドも架橋性モノマーとして使用することができる。これらは、一種を単独でまた二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、製造時の反応制御が容易なことから、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドまたはテトラメチロールメタンテトラアクリレートが好ましい。
このような架橋性モノマーを使用することで、共重合体の分子量が高くなり、紙に塗布した際にサイズ剤の紙内部への浸透が抑制され、サイズ効果が高くなるものと推測される。
【0013】
本発明の製紙用サイズ剤の主成分である共重合体のモノマー成分の使用割合としては、十分なサイズ効果の確保の観点から、好ましくは、スチレン系モノマー成分が59〜84重量%程度、アニオン性ビニルモノマー成分が15〜40重量%程度、架橋性モノマー成分が0.0001〜3重量%程度であり、より好ましくは、スチレン系モノマー成分が64〜79重量%程度、アニオン性ビニルモノマー成分および/またはカチオン性モノマー成分が20〜35重量%程度、架橋性モノマー成分が0.001〜2重量%程度である。
【0014】
前記スチレン系モノマー成分を59重量%以上とすることにより、得られる共重合体の疎水性が高められて、サイズ効果が向上するため好ましく、84重量%以下とすることにより固形分濃度を高く設計した場合にも適度の水溶性を付与でき、ゲル化しにくく、取扱い性のよい均一な製紙用表面サイズ剤とすることができるため好ましい。さらに、架橋性モノマー成分を0.0001モル%以上、3モル%以下とすることにより、低分子量域のポリマーが減少して、Mw/Mn比が小さくなるとともに、高分子量域のポリマーが増加してサイズ効果が向上するために好ましい。
【0015】
本発明の共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要により前記共重合体を構成するモノマー成分と共重合可能なその他のモノマーを併用することができる。その他のモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルなどの単官能の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、炭素数6〜22のα−オレフィン、ビニルピロリドンなどが挙げられる。また、該モノマーの使用割合は、共重合体中、通常20重量%未満、好ましくは10重量%未満である。また、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の連鎖移動剤を併用してもよい。
【0016】
本発明の共重合体の製造方法は、特に限定されないが、水溶液重合、懸濁重合、など各種公知の重合方法を採用することができる。
【0017】
例えば、溶液重合法を採用する場合には、適当な加熱装置と攪拌機を備えた反応容器に、スチレン系モノマー、アニオン性ビニルモノマー成分、架橋性モノマー、および必要に応じて用いるその他の任意のモノマーを所定量加え、ついで当該容器に水、有機溶剤を加えこれらのモノマー成分を溶解させる。さらに、公知の重合開始剤を添加して混合し、窒素気流中で反応系内を、80〜130℃程度に昇温し、還流下で4時間程度重合反応を行ったのちに中和し、有機溶剤を留去することにより製造することができる。
【0018】
好ましくは、有機溶剤を留去する前に、ハイドロキノンのような重合禁止剤を添加する、または重合途中に亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤、または、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤を加えることにより、有機溶剤留去工程において重合の進行を防止して、後述する重量平均分子量およびMw/Mn比の調整が容易になり、高濃度で低粘度の製品を得ることができる。重合禁止剤、還元剤、レドックス開始剤の種類、量については特に制限されることなく、公知のものを使用することができる。
【0019】
溶液重合に使用する有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールなどのアルコール類等を使用することができる。重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−メチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、また過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどの有機過酸化物などが挙げられる。重合開始剤の使用量としては、重合速度や、得られる共重合体の分子量などを考慮して適宜決定すればよいが、通常は、共重合体を構成する各モノマー全量に対して、0.1〜3重量%程度が好適である。
【0020】
本発明の共重合体は、重量平均分子量を20,000〜100,000、Mw/Mn比を1以上2.5未満に調整されていることが必要である。重量平均分子量が20,000未満の場合、充分なサイズ効果が得られない。また重量平均分子量が100,000を超える場合には適度の水溶性を付与できないことから、ゲル化しにくく安定で、取扱い性、操業性のよい均一な製紙用表面サイズ剤とすることができない。また、Mw/Mn比が2.5を超える場合には、得られる共重合体中に低分子のポリマーが多く存在するために充分なサイズ効果が得られない。
なお、本発明における重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値である。
【0021】
こうして得られた共重合体は、固形分濃度が通常23〜32重量%、この固形分濃度の範囲おける粘度(B型粘度計:25℃)が通常10〜500mPa・s、pHが通常8.0〜10.0となるように調整され、高濃度でありながら粘度を比較的低く抑えられた、サイズ性能と取扱い性に優れた製紙用表面サイズ剤として使用される。
【0022】
本発明の製紙用表面サイズ剤は、単独で塗工に供することもできるが、澱粉、カルボキシメチルセルロース、アクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、消泡剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤、増膜助剤、顔料、染料と混合して塗工液として使用することもできる。
【0023】
また、本発明の製紙用表面サイズ剤は、上記各種の原紙に対して従来公知の塗布方法、例えば含浸法、サイズプレス法、カレンダー法、スプレー法、ゲートロールコーターなどを用いて塗工される。その塗布量は通常は0.001〜5g/m2(固形分)程度、好ましくは0.005〜1g/m2である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。
なお、得られた水溶性の製紙用表面サイズ剤の分子量と粘度は以下の方法により測定した。結果を表1に示す。なお、以下「部」および「%」とはすべて重量基準である。
(分子量)
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(HLC8120GPC、使用カラムTSKgel SuperH−RC、TSKgel SuperHM−L、展開溶媒 THF)にて重量平均分子量および数平均分子量をポリスチレン換算値として測定した。
(粘度)
225mlのマヨネーズ瓶に得られた製紙用サイズ剤を入れ、25℃でB型粘度計を使用して、測定した。
【0025】
(実施例1)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えたフラスコにイソプロピルアルコール 85部、イオン交換水 43部、スチレン 116.8部、80%アクリル酸 78.8部、メチレンビスアクリルアミド 0.18部を混合したモノマー混合液を、窒素気流下に攪拌しながら、70℃まで昇温し、t-ブチルパーオキシ-2エチルヘキサノエート(商品名「パーブチルO」日本油脂株式会社製)を 7.3部仕込んだ。更に80〜90℃まで昇温させ、4時間保温した。ついで、イオン交換水200部、ハイドロキノンを0.045部および48%水酸化カリウム水溶液 92部(対アクリル酸90%中和相当)を仕込み中和し、イソプロピルアルコールを留去して共重合体の固形分濃度が25%になるように調整し、これを水溶性の製紙用表面サイズ剤とした。得られた水溶性の製紙用表面サイズ剤の特性値を表1に示す。
【0026】
(実施例2〜5)
スチレンとアニオン性ビニルモノマー成分であるアクリル酸、メチレンビスアクリルアミドの使用量(重量%)を表1記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0027】
(実施例6)
架橋性モノマー成分であるメチレンビスアクリルアミドをN,Nジメチルアクリルアミドに変更した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0028】
(実施例7)
架橋性モノマー成分であるメチレンビスアクリルアミドをテトラメチロールメタンテトラアクリレートに変更した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0029】
(実施例8)
アニオン性ビニルモノマーであるアクリル酸をメタクリル酸に変更した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0030】
(実施例9)
共重合可能なその他の任意のモノマーとしてメタクリル酸ブチルを併用し、各成分の使用量を表1記載のものにした以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0031】
(実施例10)
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えたフラスコにイソプロピルアルコール 85部、イオン交換水 43部、スチレン 116.8部、80%アクリル酸 78.8部、メチレンビスアクリルアミド 0.18部を混合したモノマー混合液を、窒素気流下に攪拌しながら、70℃まで昇温し、t-ブチルパーオキシ-2エチルヘキサノエート(商品名「パーブチルO」日本油脂株式会社製)を 7.3部仕込んだ。更に80〜90℃まで昇温させ、3時間保温した。ついで、イオン交換水10部に溶解した過硫酸アンモニウム0.9部、イオン交換水10部に溶解した亜硫酸水素ナトリウムを0.38部仕込み、1時間保温した。ついで、イオン交換水200部、および48%水酸化カリウム水溶液 92部(対アクリル酸90%中和相当)を仕込み中和し、イソプロピルアルコールを留去し共重合体の固形分濃度が25%になるように調整し、これを水溶性製紙用表面サイズ剤とした。得られた水溶性の製紙用表面サイズ剤の特性値を表1に示す。
【0032】
(実施例11)
スチレンとアニオン性ビニルモノマー成分であるアクリル酸、メチレンビスアクリルアミドの使用量(重量%)を表1記載のものに変更した以外は、実施例10と同様にして製造した。
【0033】
(比較例1〜3)
スチレンとアニオン性ビニルモノマー成分であるアクリル酸、メチレンビスアクリルアミドの使用量(重量%)を表2記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0034】
(比較例4)
架橋性モノマー成分メチレンビスアクリルアミドを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0035】
(比較例5)
ハイドロキノンを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0036】
(表面サイズ剤の性能試験)
上記により得られた各水溶性の表面サイズ剤を用いて塗工液を調製し、これを未塗工紙に塗工して、そのサイズ効果(ステキヒトサイズ度、ペン書きサイズ度)、およびインクジェット適性についての性能を試験した。
表面サイズ剤、澱粉(商品名「王子エースA」、王子コーンスターチ株式会社製)、無機塩類として塩化ナトリウムとをそれぞれ0.4:5.0:1.0(重量比)の割合で混合して塗工液を調製した。次に、未塗工の中性上質原紙(坪量65g/m、ステキヒトサイズ度5秒)を用意し、塗工液をバーコーターで片面に吸液量12g/m塗工し、105℃の回転式ドラムドライヤーに1分間通して乾燥し、塗工紙を作成して、以下の性能試験に供した。
【0037】
(ステキヒトサイズ度)
前記サイズ処理をした塗工紙を、JIS P−8122に準拠して、ステキヒトサイズ度(秒)を測定した。数値が大きいほど良好なサイズ度を表す。結果を表3に示す。
【0038】
(ペン書きサイズ度)
前記サイズ処理をした塗工紙について、J.Tappi No.12に準拠してペン書きサイズ度を測定した。数値が大きいほど良好なサイズ度を表す。結果を表3に示す。
【0039】
(インクジェット適性評価(印字濃度試験))
インクジェット適性の評価は前記サイズ処理をした各印刷用紙に、キャノン(株)製インクジェットプリンターBJ−300Jを用いてモノクロ(顔料)でベタ印刷した。次いで、反射濃度計(商品名「グレタグD186」、グレタグマクベス株)製)を用いて得られた印刷部位の濃度測定を行った。数値が大きいほど印字濃度が高いことを示す。結果を表3に示す。
【0040】
(インクジェット適性評価(フェザリング試験))
フェザリングの評価は、前記サイズ処理をした塗工紙に、キャノン(株)製インクジェットプリンターBJ−300Jを用いてモノクロ(顔料)で直交する線幅一定の直線及び文字を印字し、目視にて直線及び文字の外縁のにじみを目視評価することで行った。フェザリングの全くないものを6とし、インクがにじんでしまって文字の判別がつかないものを1とした。結果を表3に示す。
【0041】
【表1】

(表中の各記号)
BMA:メタクリル酸ブチル
MBAA:メチレンビスアクリルアミド
DMAA:N,Nジメチルアクリルアミド
TMMTA:テトラメチロールメタンテトラアクリレート
Mw:重量平均分子量
Mn:数平均分子量
【0042】
【表2】

(表中の各記号)
BMA:メタクリル酸ブチル
MBAA:メチレンビスアクリルアミド
DMAA:N,Nジメチルアクリルアミド
TMMTA:テトラメチロールメタンテトラアクリレート
Mw:重量平均分子量
Mn:数平均分子量
*:得られた共重合体がゲル化したため測定することができなかった。
【0043】
【表3】

*:得られた共重合体がゲル化したため測定することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、スチレン系モノマー成分、アニオン性ビニルモノマー成分、および架橋性モノマー成分を含有するモノマー成分を共重合させて得られる、重量平均分子量20,000〜100,000、重量平均分子量/数平均分子量の比が1以上2.5未満の共重合体を含有する製紙用表面サイズ剤。
【請求項2】
全モノマー成分中スチレン系モノマー成分を59〜84重量%、アニオン性ビニルモノマー成分を15〜40重量%、架橋性モノマー成分を0.0001〜3重量%含有する請求項1記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項3】
架橋性モノマーが(メタ)アクリルアミド類および/または(メタ)アクリル酸エステル類である請求項1〜2のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項4】
前記共重合体が水溶性である請求項1〜3のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。
【請求項5】
前記製紙用表面サイズ剤が、固形分濃度23〜32重量%、25℃におけるブルックフィールド粘度10〜500mPa・sである請求項1〜4のいずれかに記載の製紙用表面サイズ剤。

【公開番号】特開2009−161885(P2009−161885A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1618(P2008−1618)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】