説明

製薬組成物における改善

表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む皮膚状態の治療のための、製薬品として許容される2、4、12、13、または14族の金属化合物を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚状態の予防を含む治療、こうした治療における使用のための化合物及び製薬組成物、並びにこうした治療における使用のための医薬の製造のためのこうした化合物及び組成物の使用に関する。本発明はまた、皮膚への適用のための化粧品組成物に関する。特に本発明は、疾患または環境要因により損傷した皮膚または表皮バリアの修復方法、疾患または環境要因による損傷または崩壊に対する皮膚または表皮バリアの保護方法、こうした方法における使用のための組成物、並びにこうした方法の実施における使用のための医薬の製造のための、こうした化合物及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、上皮細胞間、特に角質細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む皮膚状態の治療において特に有用である。こうした皮膚状態の例には、様々な形態の湿疹及び皮膚炎、例えばアトピー性及び非アトピー性湿疹または皮膚炎、脂漏性湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、及び別の敏感肌状態、特に掻痒症を引き起こすかもしくはこれに関連したものが含まれる。
【0003】
こうした状態、特にアトピー性及び非アトピー性湿疹または皮膚炎、刺激性接触皮膚炎及び敏感肌は、いずれも部分的または完全に皮膚または表皮バリアの欠陥によりもたらされる。
【0004】
アトピー性湿疹及び刺激性接触皮膚炎はいずれも、表皮バリアに欠陥を伴って皮膚が乾燥し且つ僅かに痒みを持つ、慢性期によって特徴付けられる。バリアの欠陥のため、ハウスダストダニの糞便アレルゲン及び細菌、ストレプトコッカス・アウレウスにより放出される毒物等の環境性トリガーの侵入が可能になる(Cork 1997(3); Cork 1996(2))。これらのアレルゲンは、該アレルゲンが皮膚内の炎症誘発性サイトカインの産生を誘発するために起こるアトピー性湿疹の激発を誘発する(Cork 1996(2); Cork 1999(5))。
【0005】
アトピー性湿疹は、通常は2歳以前に発症し、小児の発達における重要な時期に多大な苦痛を引き起こす疾患である。湿疹様皮膚は乾燥、紅斑(赤み)、滲出、及び強度の掻痒(痒み)によって特徴付けられる。湿疹に関連する痒みのため、小児は出血するまでその皮膚を掻きむしってしまう。アトピー性湿疹の罹患率は過去50年間に亘ってますます増大しており、今や罹患する小児は30%に及ぶ(Williams 1992(15), Thestrup-Pedersen 1996(13), Cork et al., 2002(6))。この増大は、アトピー性湿疹を持つ患者においてより顕著な作用である皮膚バリアの破壊をそれぞれ引き起こす、石鹸、洗剤、及びハウスダストダニ等(White et al., 1987(14), Cork 1997(3))の環境要因への暴露の増大を伴っている(Cork et al., 2002(6))。
【0006】
アトピー性湿疹における欠陥表皮バリアは、角質細胞からの水分損失をもたらす。角質細胞は縮小してその間には裂け目が開き、刺激物及び/またはアレルゲンの侵入が可能になり、湿疹様病変の発展を始動させる。
【0007】
アトピー性湿疹は、主に子供時代の疾患であり、70%の小児は16歳時点までにその湿疹を「卒業」する。しかしながら、成年期においても依然として遺伝学的には環境性刺激物(石鹸、洗剤等)によって悪化するバリア破壊を起こしやすいことから、彼らは欧州においてもっとも一般的な職業病である手の刺激性接触皮膚炎を発症する可能性が高い。手の刺激性接触皮膚炎の現在の管理は、刺激回避、完全エモリエント療法(complete emollient therapy)処方計画(Cork 1998(4))、及び激発を治療するための局所的ステロイドからなる。
【0008】
敏感肌は人口の約50%を冒している状態であり、化粧品などの局所用製品の適用後に灼熱感、刺痛、及び赤みを呈する。敏感肌を有する個人は、アトピー性湿疹の病歴を有しうる。
【0009】
アトピー性湿疹は、1940年代の小児の4%から現在の小児の30%にまで罹患率が増大した疾患である。アトピー性湿疹は、数世代における変化と多くの環境要因との相互作用の結果として起こる多因子性疾患の例である。アトピー性湿疹の遺伝的根拠は過去60年に亘って変化していないが、我々の架橋には幾つかの変化があり、これらには石鹸及び洗剤を用いる洗浄の増大及びハウスダストダニへの暴露の増大が含まれる(Cork 2003(7))。
【0010】
過去50年に亘るアトピー性湿疹の原因に迫る研究の大多数が、IgE媒介アレルギー反応の発生に焦点を合わせている。しかしながら、アトピー性湿疹をもつ小児の大多数は、免疫学的にアトピー性ではない(Murphy et al., 1999(12), Flohr et al., 2004(9))。従って、本発明者は、アトピー性湿疹の発生の主要部位としての皮膚または表皮バリアに焦点を絞ってきた。
【0011】
皮膚内への刺激物及びアレルゲンの侵入に対するバリアは、角質層中に位置する。同時にこのバリアはホストからの水分の損失を回避し、よって内部恒常性を維持する(Cork 1997(3))。角質層は、角質細胞が煉瓦を成し、ラメラ脂質がモルタルを成すという、いわば煉瓦の壁のように映像化することができる(Elias 1983(8))。
【0012】
角質デスモソームは角質細胞を互いに固定し、角質細胞を押しのける剪断力を回避する(図1参照)。角質デスモソームは、煉瓦の穴を通ってこれらを互いに固定し、煉瓦の壁に引張り強度を付与する鉄杭の類似物として映像化することができる。
【0013】
角質細胞は、角質層キモトリプシン酵素(SCCE)等の皮膚特異的タンパク質分解酵素によって媒介されるタンパク質分解過程によって皮膚の表面から取り除かれる。これらのタンパク質分解酵素は、分泌型白血球タンパク質分解酵素抑制因子(SLPI)等の皮膚特異的タンパク質分解酵素抑制因子によって抑制される。落屑の過程は、時期尚早の落屑及び皮膚バリアの破壊を回避するために厳密に制御されていることが必須である。角質層の破壊/薄層化は、刺激物及びアレルゲンの侵入を可能にし、これがひいてはアトピー性湿疹の激発の発生をもたらしうる。
【0014】
角質層表皮バリアの完全性は皮膚タンパク質分解酵素、例えばSCCE、タンパク質分解酵素抑制因子、例えばSLPIのレベルと、接着タンパク質、例えば角質デスモシンの脆弱性とのバランスによって維持される。10以上の接着タンパク質、8つのタンパク質分解酵素、及び10のタンパク質分解酵素抑制因子が存在するため、状況は複雑である。
【0015】
健常な皮膚においては、剥離の際の細胞接着タンパク質(例えば角質デスモシン)の破壊はタンパク質分解酵素(例えばSCCE)とタンパク質分解酵素抑制因子(例えばSLPI)とのバランスの取れた発現によって制御される。遺伝的にアトピー性湿疹に罹患し易い個人においては、タンパク質分解酵素、例えばSCCEの発現の増大及び/またはタンパク質分解酵素抑制因子、例えばSLPIの発現の減少が見られ、これにより表皮バリアの時期尚早な破壊及び薄層化がもたらされ、刺激物及びアレルゲンの侵入が可能になる。
【0016】
従って、アトピー性湿疹は、遺伝−環境相互作用疾患の古典的な実例である。多数の環境要因が多数の遺伝子における変化と相互作用して疾患表現形を発生させている。アトピー性湿疹に関連する二つの環境因子であるハウスダストダニ及び黄色ブドウ球菌は、タンパク質分解酵素を産生するが、これは外側から皮膚バリアを破壊しうるものである(これが潜在的免疫賦活薬であるため、黄色ブドウ球菌もまた皮膚中でタンパク質分解酵素の産生を誘発しうる)。したがって、アトピー性湿疹においては、皮膚バリアが内因性及び外因性の両方のタンパク質分解酵素によって破壊されている。
【0017】
刺激性接触皮膚炎に含まれる過程は、本質的にアトピー性湿疹に含まれるものと同一でありうる。しかしながら、刺激性接触皮膚炎の場合には、当該状態の根底を成す表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退が、完全に環境的侵襲、例えば環境性刺激物への暴露によって引き起こされることがある。こうした場合には患者は該状態の発症について遺伝的素因を必ずしも有しない。本発明の関する全ての状態に含まれる過程は全て、アトピー性湿疹と刺激性接触皮膚炎との両方に含まれるものと類似の機構を経る皮膚または表皮バリアの破壊を含む。
【0018】
(アトピー性皮膚炎もしくは湿疹、刺激性接触皮膚炎及び同様の皮膚状態向けの既存の治療)
(i)完全エモリエント療法(最良実施)
エモリエントクリーム/軟膏、エモリエント石鹸代用品、並びに浴用及びシャワー用エモリエントからなる処方計画。これらの製品を全ての石鹸及び洗剤と置き換え、結果として皮膚バリアへの環境性損傷の低減を生み出す(Cork 1997(3), Cork 1998(4), Cork 1999(5))。欧州における主要なエモリエント製品の例には、Cream E45、Diprobase(登録商標)、Hydromol(登録商標)、Lipobase(登録商標)、及びOilatum(登録商標)が含まれる。
【0019】
エモリエントは皮膚バリアの部分的修復を生み出すが、これらの疾患に付随する欠陥角質デスモソームのために刺激物及びアレルゲンが依然として皮膚を通って侵入し、湿疹の激発を引き起こす。更にまた、これは頻繁な適用を含むために患者はエモリエント療法を非常に不便であると感じ、従って療法処方計画の投薬遵守は困難になりうる。
【0020】
(ii)局所的副腎皮質ステロイド
これらの薬剤はアトピー性湿疹の「激発」を治療するために使用される。局所的ステロイドの主要な副作用は皮膚萎縮及び副腎系抑制である。これらの副作用は、主に効力のある、非常に効力のある局所的副腎皮質ステロイドに関連する。ステロイド偏執症もしくはステロイド恐怖症は、治療処方計画に基づく投薬遵守が低いかもしくは全くない場合の顕著な原因であり、全ての副腎皮質ステロイドに付随する重要な問題である(Charman et al., 2000(1))。
【0021】
(iii)カルシニューリン抑制剤、タクロリムス(Protopic(登録商標):Fujisawa)及びピメクロリムス(Elidel(登録商標):Novartis)
これらの薬剤は、アトピー性湿疹の激発のための治療の新たな一群を代表する。これらはカルシニューリン経路を経てT細胞の選択的抑制を生み出す。カルシニューリン抑制剤は皮膚萎縮を引き起こさず、また副腎系にもいかなる影響も及ぼさない。しかしながら、カルシニューリン抑制剤を用いた治療は、アトピー性湿疹の激発を制御することができる一方で、こうした激発を引き起こす刺激物及びアレルゲンによる侵入を可能にする、表皮バリアにおける根本的な欠陥を修正することはない。
【非特許文献1】Cork 1997(3)
【非特許文献2】Cork 1996(2)
【非特許文献3】Cork 1999(5)
【非特許文献4】Williams 1992(15), Thestrup-Pedersen 1996(13)
【非特許文献5】Cork et al., 2002(6)
【非特許文献6】White et al., 1987(14)
【非特許文献7】Cork 1997(3)
【非特許文献8】Cork 1998(4)
【非特許文献9】Cork 2003(7)
【非特許文献10】Murphy et al., 1999(12), Flohr et al., 2004(9)
【非特許文献11】Elias 1983(8)
【非特許文献12】Charman et al., 2000(1)
【非特許文献13】Spergel and Paller 2003(16)
【非特許文献14】Kao et al.,(2003)
【非特許文献15】Berg, E. P. Pascut, F. C., Ciortea, L. I., O’Driscoll, D., Xiao, P. and Imhof, R. E. (2002)
【非特許文献16】Ciortea, L. I. O’driscoll, D., Berg, E. P., Xiao, P. Pascut, F. C. and Imhof, R. E. (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、表皮バリアの損傷を修復または回避することのできる新規な局所用製品、並びに刺激物及びアレルゲンによって侵入されうる程度及び薬剤治療を必要とするアトピー性湿疹のあらゆる二次的激発の頻度もしくは深刻度を低減させるためのその使用が求められている。
【0023】
本発明の目的は、上皮細胞間(特に角質細胞間)の細胞間接着における異常な減退を含む皮膚科状態、特に湿疹、皮膚炎等の状態、例えばアトピー性及び非アトピー性の湿疹または皮膚炎、脂漏性湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、および別の敏感肌状態、特に掻痒症を引き起こすかまたは掻痒症を伴う状態の治療であって、前述の既知の治療の欠点を呈さない治療を提供することである。とりわけ、簡便であり、複雑な処方計画も、局所的副腎皮質ステロイドの使用に関連するタイプの深刻な副作用を引き起こす可能性のある薬剤の使用も含まない治療を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第一の態様によれば、好ましくは角質層中の表皮(もしくは皮膚)バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む皮膚状態の治療のための、製薬品として許容される2、4、12、13、または14族の金属化合物を含む組成物が提供される。
【0025】
第二の態様によれば、本発明は、好ましくは角質層中の表皮(もしくは皮膚)バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む皮膚状態の治療のための、脂肪酸または脂肪酸の塩もしくは誘導体を含む組成物を提供する。
【0026】
第三の態様によれば、本発明は、好ましくは角質層中の表皮(もしくは皮膚)バリアの損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療のための、製薬品として許容される2、4、12、13、または14族の金属化合物及び脂肪酸または脂肪鎖の塩もしくは誘導体を含む組成物を提供する。
【0027】
金属化合物は、好ましくは粒状固体の形態であり、且つこの化合物の粒子の少なくとも約60、70、80、または90%が約5、2、1、0.5、好ましくは0.2μm未満のサイズであって、この粒子の平均サイズ(例えば中間値もしくは中央値)が約5、2、1、0.5、好ましくは0.2μm未満であると有利である。実施態様においては、金属化合物は超微粉砕されているか、もしくは超微粒のものであってもよく、この化合物の粒子は上限約0.2μmのサイズであってよい。本明細書中に記載する粒径は本技術分野における通常の技術により測定した場合の有効直径としてのものである。
【0028】
金属は好ましくは亜鉛であり、金属化合物は好ましくは無機塩もしくは酸化物である。最も好ましい金属化合物は酸化亜鉛である。好ましい実施態様においては、酸化亜鉛は超微粉砕されるかまたは超微粉酸化亜鉛であって、上限約0.2μmのサイズである粒子からなってよい。酸化亜鉛は米国特許第5587148号(その全内容を参照のためにここに取り込むこととする)に記載され、この特許文献に記載された方法の一つにより調製することのできる超微粉砕酸化亜鉛の形態であってよい。これらの好ましい特性を有する超微粉砕もしくは超微粉酸化亜鉛は、亜鉛または金属化合物の使用が必要とされる本発明のいかなる態様においても使用することができる。
【0029】
脂肪酸または脂肪酸の塩もしくは誘導体中の脂肪酸残基は、4乃至24、10乃至20、14乃至20、または16乃至18の炭素原子を含んでよい。実施態様においては、脂肪酸もしくは脂肪酸残基は飽和または不飽和であり、好ましくは飽和である。更なる実施態様では、脂肪酸もしくは脂肪酸残基はステアリン酸もしくはステアリン酸残基、あるいはパルミチン酸もしくはパルミチン酸残基である。好ましい脂肪酸塩はステアリン酸金属塩及びパルミチン酸金属塩であり、最も好ましいのはステアリン酸亜鉛またはパルミチン酸亜鉛である。以下の脂肪酸及びその残基を、本発明の実施に使用することができる(脂肪酸、塩、または誘導体が必要とされる場合のそのあらうる態様において)。
【0030】
【表1】

【0031】
本発明の第四の態様によれば、治療法における使用、表皮(もしくは皮膚)バリア、好ましくは角質層の損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療のための、亜鉛及び脂肪酸残基を含む組成物が提供される。亜鉛は塩もしくは酸化物の形態であってよく、脂肪酸残基は塩もしくは誘導体、または親脂肪酸の一部として存在して良い。亜鉛の塩もしくは酸化物は、好ましくは粒状固体の形態であり、且つこの化合物の粒子の少なくとも約60、70、80、または90%が約5、2、1、0.5、好ましくは0.2μm未満のサイズであって、この粒子の平均サイズ(例えば中間値もしくは中央値)が約5、2、1、0.5、好ましくは0.2μm未満であると有利である。実施態様においては、亜鉛の塩もしくは酸化物は超微粉砕されていても、もしくは超微粉のものであってもよく、この化合物の粒子は上限約0.2μmのサイズであってよい。脂肪酸または脂肪酸の塩もしくは誘導体中の脂肪酸残基は、4乃至24、10乃至20、14乃至20、または16乃至18の炭素原子を含んでよい。実施態様においては、脂肪酸もしくは脂肪酸残基は飽和または不飽和であり、好ましくは飽和である。更なる実施態様では、脂肪酸もしくは脂肪酸残基はステアリン酸もしくはステアリン酸残基、あるいはパルミチン酸もしくはパルミチン酸残基である。好ましい脂肪酸塩はステアリン酸金属塩及びパルミチン酸金属塩である。一実施態様では、亜鉛と脂肪酸残基とが亜鉛の脂肪酸塩を形成し、これは好ましくはステアリン酸亜鉛またはパルミチン酸塩である。
【0032】
本発明の第五の態様によれば、治療法における使用のための超微粉粒状固体としての亜鉛化合物を含む組成物が提供される。この組成物は好ましくは表皮(もしくは皮膚)バリア、好ましくは角質層の損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療における使用のためのものである。亜鉛化合物の少なくとも約60、70、80、または90%が約5、2、1、0.5、好ましくは0.2μm未満のサイズであるかまたはこの粒子の平均サイズ(例えば中間値もしくは中央値)が約5、2、1、0.5、好ましくは0.2μm未満である。実施態様においては、亜鉛化合物は超微粉砕されているかまたは超微粉のものであり、この化合物の粒子は上限約0.2μmのサイズであってよい。実施態様においては、亜鉛化合物は塩もしくは亜鉛酸化物であり、組成物は脂肪酸残基を更に含んで良い。脂肪酸残基は脂肪酸の塩もしくは誘導体の一部であるかまたは親脂肪酸であってよく、好ましくは4乃至24、10乃至20、14乃至20、または16乃至18の炭素原子を含む。実施態様においては、脂肪酸残基は飽和している。好ましくは、脂肪酸残基はステアリン酸またはパルミチン酸残基である。組成物は好ましくは製薬品として許容される担体または媒体を更に含み、且つ皮膚への局所適用向けである。
【0033】
好ましい実施態様においては、本発明による組成物は皮膚への局所適用向けに製剤化される。この点について、本発明の組成物は1つ以上の製薬品として許容される賦形剤、担体、希釈剤、または媒体を含み、石鹸、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スティック、スプレー、エアロゾル、バスオイル、シャンプー、ソープ、フォーム、スプレー、あるいは溶液の形態であって良い。本発明による組成物中に配合して良い好ましい賦形剤、希釈剤、または媒体には、PEG100、PEG200、PEG300、及びPEG400を含むポリエチレングリコール(PEG)、低級アルキルアルコール類、好ましくはエタノール、軽質流動パラフィン、Miglyol、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、ホホバオイル、グリセリルステアレート、ナトリウムシトレート、ポリソルベート、セテレス12、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、二ナトリウムココアンフォジアセテート、デヒドロ酢酸、流動シリコーン、アロエベラオイル抽出物、GPEG-20ステアレート、アラントイン、カーボマー、ナトリウムデヒドロアセテート、Medilan(低アレルギー性ラノリン)、シアバター、白色軟質パラフィン、ナトリウムピロリドンカルボン酸、黄色軟質パラフィン、セトマクロゴール、イソプロピルミリステート、水等が含まれる。
【0034】
本発明による局所的に適用可能な組成物中に配合可能な別の成分には、脂質ラメラの修復を促進するもの、例えばセラミド、並びにナトリウムピロリドンカルボン酸、尿素、ウロコ酸(urocoic acid)及び乳酸を含む自然の保湿因子中に見られる化合物が含まれる。
【0035】
亜鉛または別の製薬品として許容される2、4、12、13、または14族の金属化合物は、好ましくは本発明による組成物中に該組成物の0.5乃至75重量%、1乃至50重量%、4乃至30重量%、更に好ましくは5乃至25重量%の濃度で存在する。脂肪酸、脂肪酸の塩もしくは誘導体は、該組成物の1乃至50mg/ml、2乃至30mg/ml、5乃至20mg/ml、好ましくは8乃至16mg/mlの濃度で存在して良い。
【0036】
更なる態様において、本発明は、表皮(もしくは皮膚)バリア、好ましくは角質層の損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療のための、こうした皮膚状態に罹患した患者に本発明の前述のいずれかの態様による組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0037】
本発明の更に別の態様においては、表皮(もしくは皮膚)バリア、好ましくは角質層の損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療のための医薬の製造における、本発明の最初の五つの態様のいずれかによる組成物の使用が提供される。
【0038】
本発明の様々な態様に従って治療しようとする皮膚状態は、好ましくは表皮(もしくは皮膚)バリア、好ましくは角質層中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含むものである。これらの状態の根源を成す、表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退は、多数ある要因の1つ以上によって引き起こされうる。これらには、遺伝的に決定される要因、例えばアトピー性湿疹について上述したもの、及び環境的侵襲、例えば環境性刺激物への暴露などが含まれる。本発明によって治療可能な皮膚状態の例には、湿疹、皮膚炎、及び同様の状態、例えばアトピー性及び非アトピー性の湿疹又は皮膚炎、脂漏性湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、及び別の敏感肌状態、特に掻痒症を引き起こすかまたは掻痒症を伴うものが含まれる。日焼けを含む過剰な紫外線への暴露により生じる皮膚状態の回避または予防は、本発明によるあらゆる組成物のサンスクリーンとしてのまたはおむつかぶれの治療のための使用と同様に、本発明の所定の好ましい実施態様の範囲からは除かれる。
【0039】
近年、アトピー、特にアトピー性湿疹もしくは皮膚炎(文献中ではアトピー性湿疹とアトピー性皮膚炎との用語はほぼ同意で使用される)の皮膚兆候は、しばしばアトピー進行の開始を表すことが示されている(Spergel and Paller 2003(16))。幾つかの長い研究において、アトピー性湿疹もしくは皮膚炎に罹患した幼児のおよそ半数、特に重度のアトピー性湿疹の者が喘息を発症し、三分の二がさらにアレルギー性鼻炎(花粉症)を発症することが示されている。経皮刺激が原因となり、これに次ぐ敏感化T細胞の鼻腔及び気道中への移動と共にこれら上気道及び下気道の疾患を引き起こすと考えられている。動物モデル及びヒトの観察はこの理論に一致しており、経口抗ヒスタミン剤を用いた事前予防研究は初期の診療によりアトピー進行が遅延されうるとの証拠を提供している(Spergel and Paller 2003(16))。
【0040】
新生児の人生最初の六ヶ月間は、免疫系が「影響されやすく」、より容易にTH1からTH2にスイッチされうる。従って、アトピー性湿疹もしくは皮膚炎をもつ新生児における欠陥皮膚バリアが重要な時点でのアレルゲンの侵入を可能にしてTH1からTH2へのスイッチを引き起こす可能性、及びこの免疫変化がより重篤な湿疹、喘息、及び花粉症への素因を生じる可能性がある。従って、人生最初の六ヶ月の間に皮膚バリアが回復されるならば、TH1からTH2へのこのスイッチが回避または低減され、これに伴いアトピー進行及びアトピー性湿疹、喘息、及び花粉症の発症も回避または低減されうる。
【0041】
従って、本発明の更なる態様において、本発明による組成物は、アトピー進行の遅延化または回避、TH1からTH2へのスイッチの低減並びに/又は発展の制御、上気道及び下気道の疾患、特に喘息及びアレルギー性鼻炎の発展の危険性の回避、低減、並びに/又は予防の方法において使用可能である。この方法の実施において、本発明による組成物はアトピー性湿疹もしくは皮膚炎の治療に、特に約5、3、2、もしくは1歳または好ましくは6ヶ月以下の幼い小児及び乳児に使用される。この方式での気道疾患の治療方法もまた本発明の範疇に入る。
【0042】
本発明の更に別の態様では、本発明による組成物をタンパク質分解酵素アンタゴニストとして使用してこれにより掻痒症を回避または制御することができる。この方式での掻痒症の制御方法もまた本発明の範疇に入る。
【0043】
本発明の実施態様においては、治療は本発明による組成物を皮膚に局所的に投与する工程を含む。組成物は、好ましくは一日に一回もしくは二回、一日に0.01乃至500mg、0.1乃至100mg、0.2乃至25mg、0.3乃至10、好ましくは0.5乃至5mgの金属化合物もしくは亜鉛の用量、及び/又は一日に10乃至1000mg、25乃至750mg、50乃至500mg、75乃至250、好ましくは100乃至150mgの脂肪酸、脂肪酸の塩もしくは誘導体の用量を提供するために十分な量で、皮膚の各処置領域に適用される。
【0044】
更なる実施態様では、本発明による組成物は、天然もしくは組替えのいかなる角質層キモトリプシン酵素(SCCE)も、シリコーン化合物もしくは流体も、特に製薬品としての有効な量では含まない。別の好ましい実施態様では、金属化合物は硫酸亜鉛ではなく、亜鉛は硫酸亜鉛の形態では存在しない。
【0045】
実施態様においては、組成物中の粒状固体、あるいは亜鉛の塩、化合物または酸化物の粒子の少なくとも約60、70、80、または90%が約0.02、0.05、または0.1μm超のサイズであるか、または前記粒子の平均(例えば中間値または中央値)サイズが約0.02、0.05、または0.1μm超のサイズであると有利である。
【0046】
本明細書中では、周期表中の族は現在の(新)IUPAC命名法を用いて同定され、ここでは2、4、12、13、及び14がCAS系のIIa、IVb、IIb、IIIa、及びIvaに相当する。
【0047】
化合物または組成物の性質に条件付けするために本明細書中で使用される場合、「製薬品として許容される」なる語は、懸かる化合物または組成物が期待される治療効果を有する量または濃度で使用される場合に、著しい数の患者に著しい副作用を引き起こさない化合物または組成物であることを意味する。本明細書中の疾患、状態等の治療についてのすべての言及は、予防または回避処置並びに治療または治癒向け使用を包含する。
【0048】
以下の実施例は、例示のためにのみ与えられ、本発明の範囲をいかようにも制限することを企図しない。
【実施例】
【0049】
(実施例1:局所的副腎皮質ステロイド誘発タンパク質分解酵素皮膚バリア損傷モデル)
局所的グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)は、皮膚バリアを損傷し且つ表皮内の脂質に変化を引き起こし、さらに角質細胞を互いに固定する角質デスモソームの数に減少を引き起こす、アトピー性皮膚炎の治療に使用される。副腎皮質ステロイドはまた、剥離に関与する主要なタンパク質分解酵素である角質層キモトリプシン酵素(SCCE)をコード化する遺伝子である、KLK7の発現を上方調節することが示されている。したがって、グルココルチコイドで予備処理された皮膚は、皮膚もしくは表皮バリアを修復するため及び皮膚もしくは表皮バリアを損なう皮膚状態、特に上皮細胞間(とりわけ角質細胞間)の細胞間接着における異常な減退を含む、例えばアトピー性湿疹もしくは皮膚炎、脂漏性湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、及び別の敏感肌状態の治療において有用であるためのその性能について、化合物の有効性を試験するための優れたモデルを提供することができる。
【0050】
Kao et al (2003)(参考文献11)は、皮膚バリアの浸透性及び完全性を損なうグルチココルチコイド(gluticocorticoids)の機能が経皮水分損失(TEWL)の測定後にテープ剥離を利用することにより示しうること、及び剥離毎に除去されるタンパク質の量を示した。Kaoらによって開示された技術はバリア完全性及び角質細胞接着性の測定を提供する(TEWLにおけるあらゆる増大はバリア機能喪失の現れであり、皮膚剥離によって除去される全タンパク質の増大は細胞間接着の喪失の結果であり、逆もまた然りである)。従ってKaoによって利用された方法を以下の実施例で使用した。TEWL測定はBergら(Berg, E. P. Pascut, F. C., Ciortea, L. I., O’Driscoll, D., Xiao, P. and Imhof, R. E. (2002), Aquaflux- A new instrument for water vapour flux density measurement Proceedings of the 4th International Symposium on Humidity and Moisture, Centre for Measurement Standards, ITRI, RoC, ISBN 957-774-423-0, pp288-95)及びCiortea ら(Ciortea, L. I. O’driscoll, D., Berg, E. P., Xiao, P. Pascut, F. C. and Imhof, R. E. (2002), New methods for measuring water desorption and vapour permeation rates in membranes Proceedings of the 4th International Symposium on Humidity and Moisture, Centre for Measurement Standards, ITRI, RoC, ISBN 957-774-423-0, pp288-95.)に記載される方式で「Aquaflux AF 102」電解水分析器(Biox Systems Ltd.(Southwark Campus, 103 Borough Road, London SE1 0AA, UK)より入手可能)を使用して行った。
【0051】
(実施例1a)
軽質流動パラフィン中の超微粉酸化亜鉛(BASF Aktiengesellschaft (67056 Ludwigshafen, Germany)より、商標Z-Cote(登録商標)の品番55082355として、あるいはUnivar(Basildon, Essex, UK)より品番76011010として入手可能;更にZ-Cote(登録商標)(BASF); Mitchnick, M. A., Fairhurst, D. and Pinnell, S. R. (1999) J Am Acad Dermatol 40: 85-90も参照のこと) (25%) を協力者の左前腕に4日間に亘って一日二回適用した。この人の右の前腕には軽質流動パラフィンのみを適用した。フィンガーチップ単位一つ分のプロピオン酸クロベタゾール(強力な副腎皮質ステロイド)を研究領域に3日間に亘り一日二回適用した。TEWLを基線で測定し、次いで4、8、12、及び16のテープ片を除去した。この実験の結果は、図2に示されるが(この図中でZは酸化亜鉛の生成を示す)、超微粉酸化亜鉛調製物で予備処理された皮膚において、16のテープ片を除去した後に37.5%のTEWL低減を示した。
【0052】
(実施例1b)
軽質流動パラフィン中5及び15%の超微粉酸化亜鉛を、協力者の左上腕及び左前腕にそれぞれ4日に亘って一日二回適用した。右上腕には軽質流動パラフィンのみを適用した。フィンガーチップ単位一つ分のプロピオン酸クロベタゾールを研究領域に3日間に亘り一日二回適用した(クロベタゾールは酸化亜鉛調製物及び軽質流動パラフィンと組み合わせて、これら作用剤を用いた処置の最終日に適用した)。TEWLを基線で測定し、次いで4、8、12、及び16のテープ片を除去した。この実験の結果は図3に示され、5乃至15%の酸化亜鉛調製物で処置した領域が酸化亜鉛によって与えられる保護効果に対して用量依存性応答を呈することを示した。図3中、RFAは右前腕の略であり、LBは左上腕の略であり、RBは右上腕の略であり、Zは酸化亜鉛調製物の略であり、LLPは軽質流動パラフィン(単独で使用)の略である。
【0053】
(実施例1c)
軽質流動パラフィン中12mg/mlのステアリン酸亜鉛を右前腕に9日間に亘って一日二回適用した。左前腕には軽質流動パラフィンのみを適用した。6日目から9日目に亘って、フィンガーチップ単位一つ分のプロピオン酸クロベタゾールを左右の前腕及び右上腕に一日二回適用した。試験調製物とクロベタゾールとの両方が適用される日には、試験製剤をステロイドが適用される少なくとも一時間前に適用した。調製物を1時間に亘って皮膚に浸透させた。この期間後に残留したいかなる残渣もキムワイプを使用して拭い取った。10日目にTEWLを基線で測定し、次いで4、8、12、及び16のテープ片を除去した。この研究の結果は図4に示され、これらはステアリン酸亜鉛がクロベタゾールの作用に対しても保護できることを示す。図4中、LFAは左前腕の略であり、RFAは右前腕の略であり、RBは右上腕の略であり、ZSは軽質流動パラフィン中のステアリン酸亜鉛の略であり、更にLLPは軽質流動パラフィン(単独で使用)の略である。
【0054】
(実施例1d)
4日に亘る期間の間、エタノール中のPEG400(7部がPEG、3部がエタノール)フィンガーディップ単位2つ分を左前腕に4日間に亘って一日六回適用し、PEG400及びエタノール中のPEG400(7部がPEG、3部がエタノール)フィンガーディップ単位2つ分を右前腕に4日間に亘って一日六回適用した。その後左右の前腕及び左上腕をフィンガー単位一つ分のプロピオン酸クロベタゾールを用い、24時間の期間に亘って3回適用して処置した。TEWLを基線で測定し、更に4、8、12、及び16のテープ片除去の後に測定した。この研究の結果は図5に示されるが、ここではテープ剥離の際のTEWL増加速度は、コントロール及び媒体単独の場合と比べてパルミチン酸で処置した皮膚においては著しく低減されていることがわかる。図5中、LFAは左前腕の略であり、RFAは右前腕の略であり、LBは左上腕の略であり、Pはパルミチン酸調製物の略である。
軽質流動パラフィン中のステアリン酸亜鉛の略であり、更にLLPは軽質流動パラフィン(単独で使用)の略である。
【0055】
(実施例1e)
4日に亘る期間の間、エタノール中のPEG400(7部がPEG、3部がエタノール)フィンガーディップ単位2つ分を右前腕に一日六回適用し、PEG400及びエタノール中の超微粉酸化亜鉛(25%)(7部がPEG、3部がエタノール)フィンガーディップ単位2つ分を左前腕に一日六回適用し、PEG400及びエタノール中の12mg/mlのパルミチン酸及び超微粉酸化亜鉛(25%)(7部がPEG、3部がエタノール)フィンガーディップ単位2つ分を右上腕に一日六回適用した。その後両方の前腕及び上腕をフィンガー単位一つ分のプロピオン酸クロベタゾールを用い、48時間の期間に亘って3回適用して処置した。クロベタゾールが適用された二日間の間、超微粉酸化亜鉛単独またはパルミチン酸と組み合わせて超微粉酸化亜鉛を一日三回のみ、相互作用の機会を低減するためにクロベタゾールとは異なる時点で適用した。その後TEWLを基線で測定し、更に4、8、12、及び16のテープ片除去の後に測定した。この研究の結果は図6に示されるが、ここではテープ剥離の際のTEWL増加速度は、コントロール及び媒体単独の場合と比べて酸化亜鉛で及び酸化亜鉛とパルミチン酸とで処置した皮膚においては著しく低減されていることがわかる。図6中、LFAは左前腕の略であり、RFAは右前腕の略であり、LBは左上腕の略であり、RBは右上腕の略であり、Zは酸化亜鉛の略であり、Pはパルミチン酸調製物の略である。
【0056】
(実施例2:皮膚剥離性タンパク質分解酵素誘発皮膚バリア損傷モデル)
近年、テープ剥離のみで皮膚中のタンパク質分解酵素の産生が誘発されること、並びに皮膚がバッファで処置された場合には、皮膚のpHが酸性(pH4.5)に変更され、その後72時間に亘るバリア回復の速度が増大することが示された(Hachem et al., 2005参照)。従って、テープ剥離のみで皮膚もしくは表皮バリアを修復し、且つ皮膚もしくは表皮バリアを損なう皮膚状態、特に上皮細胞間(特に角質細胞間)の細胞間接着における異常な減退を含むもの、例えばアトピー性湿疹もしくは皮膚炎、脂漏性湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、及び別の敏感肌状態の処置において有用であるその性能について化合物の有効性を試験するための優れたモデルを成す。タンパク質分解酵素誘発性皮膚バリア損傷のこのモデルは、局所的副腎皮質モデルよりも格段に単純でもあり、この実施例で使用した。
【0057】
処置の前に、試験皮膚領域には50g/m2hr超のTEWLをもたらすために十分なテープ剥離を行った。フィンガー単位2つ分の試験製剤をテープ剥離した皮膚に適用した。基線測定値を得るためにテープ剥離完了の3時間後にTEWLを測定し、次いでテープ剥離の24時間後に測定した。図7は、TEWL減退について70% PEG400/30%エタノール混合物中に懸濁させた25%の酸化亜鉛からなる製剤(図7中のZ)、同様の媒体中に12mg/mlのパルミチン酸(図7中のP)、同様の媒体中に25%の酸化亜鉛及び12mg/mlのパルミチン酸からなる組成物(図7中の25% Z 12mg/ml P)によりもたらされる、21時間の間で二度に亘るTEWL測定の間での回復(%)を示す。図7中に示されるデータは媒体(PEG400)の陽性効果を説明するために修正されており、パルミチン酸と酸化亜鉛とが共に使用された場合には、皮膚バリア回復の誘発に対して、付加的効果を超えた、すなわち相乗的な効果を有することを示す。この研究に使用された酸化亜鉛は超微粉であった。
【0058】
(実施例3)
本発明による局所適用可能な製剤は、当業者にはよく知られているであろう種類の通常の技術及び装置を用い、以下の成分を混合することによって調製可能である。これら製剤中に使用された超微粉酸化亜鉛は、Z-Cote(登録商標)、Z-Cote(登録商標)HP1、またはZ-Cote(登録商標)MAX(登録商標)(これらは全てBASF Aktiengesellschaft(67056 Ludwigshafen, Germany)より入手可能)。Z-Cote(登録商標)HP1もしくはZ-Cote(登録商標)MAX(登録商標)は、2%の疎水性シリコーン物質で被覆された超微粉酸化亜鉛(Z-Cote(登録商標)HP1)もしくは1乃至4%の極性/疎水性シリコーン物質で被覆された超微粉酸化亜鉛(Z-Cote(登録商標)MAX(登録商標)からなる。Z-Cote(登録商標)は未被覆の超微粉酸化亜鉛である。Z-Cote(登録商標)の全等級を本発明の実施に使用することができる。
【0059】
(製剤1)
超微粉酸化亜鉛5%
パルミチン酸2%
軽質流動パラフィン10%
ポリエチレングリコール20%
水 63%
【0060】
(製剤2)
超微粉酸化亜鉛10%
パルミチン酸 2%
軽質流動パラフィン 10%
ポリエチレングリコール 20%
水 58%
【0061】
(参考文献)


【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は皮膚の断面図である。
【図2】実施例1aの結果を示す図である。
【図3】実施例1bの結果を示す図である。
【図4】実施例1cの結果を示す図である。
【図5】実施例1dの結果を示す図である。
【図6】実施例1eの結果を示す図である。
【図7】TEWLの回復(%)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む皮膚状態の治療のための、製薬品として許容される2、4、12、13、または14族の金属化合物を含む組成物。
【請求項2】
表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む皮膚状態の治療のための、脂肪酸または脂肪酸の塩もしくは誘導体を含む組成物。
【請求項3】
皮膚または表皮バリアの損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療のための、製薬品として許容される2、4、12、13、または14族の金属化合物及び脂肪酸または脂肪鎖の塩もしくは誘導体を含む組成物。
【請求項4】
皮膚状態が、表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
金属化合物が粒状固体である、請求項1、3、または4に記載の組成物。
【請求項6】
化合物の粒子の少なくとも約60、70、80、または90%が約5、2、1、0.5、または0.2μm未満のサイズである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
化合物の粒子の平均サイズが約5、2、1、0.5、または0.2μm未満である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
金属が亜鉛である、請求項1及び3乃至7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
金属化合物が無機塩または酸化物である、請求項1及び3乃至8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
化合物が酸化亜鉛である、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
脂肪酸または脂肪酸の塩もしくは誘導体を含み、前記脂肪酸または脂肪酸の塩もしくは誘導体中の脂肪酸残基が4乃至24、10乃至20、14乃至20、または16乃至18の炭素原子を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
脂肪酸または脂肪酸残基が飽和している、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
脂肪酸または脂肪酸残基がステアリン酸またはステアリン酸残基、あるいはパルミチン酸またはパルミチン酸残基である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
脂肪酸塩がステアリン酸金属塩またはパルミチン酸金属塩である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
脂肪酸塩がステアリン酸亜鉛またはパルミチン酸亜鉛である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
治療における使用のための、亜鉛及び脂肪酸残基を含む組成物。
【請求項17】
表皮バリアの損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療のためのものである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
皮膚状態が、表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
亜鉛が塩または酸化物の形態である、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
脂肪酸残基が、脂肪酸の塩もしくは誘導体または親脂肪酸の一部である、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
亜鉛が、塩または酸化物の形態であり、且つ粒状固体である、請求項16乃至20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
粒状固体の粒子の少なくとも約60、70、80、または90%が5、2、1、0.5または0.2μm未満のサイズであるか、または前記粒状固体の粒子の平均サイズが約5、2、1、0.5、または0.2μm未満である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
脂肪酸、または脂肪酸の塩もしくは誘導体中の脂肪酸残基が、4乃至24、10乃至20、14乃至20、または16乃至18の炭素原子を含む、請求項16乃至22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
脂肪酸または脂肪酸残基が飽和している、請求項16乃至23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
脂肪酸または脂肪酸残基が、ステアリン酸またはステアリン酸残基、あるいはパルミチン酸またはパルミチン酸残基である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
脂肪酸塩がステアリン酸金属塩またはパルミチン酸金属塩である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
亜鉛及び脂肪酸残基が亜鉛脂肪酸塩を成す、請求項16乃至26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
亜鉛脂肪酸塩がステアリン酸亜鉛またはパルミチン酸亜鉛である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
治療における使用のための超微粉粒状固体としての亜鉛化合物を含む組成物。
【請求項30】
表皮バリアの損傷または崩壊を含む皮膚状態の治療のための、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
皮膚状態が表皮バリア中の上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
化合物の粒子の少なくとも約60、70、80、または90%が5、2、1、0.5または0.2μm未満のサイズであるか、または前記粒子の平均サイズが約5、2、1、0.5、または0.2μm未満である、請求項28乃至31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
亜鉛化合物が塩または亜鉛酸化物である、請求項28乃至32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
脂肪酸残基を更に含む、請求項28乃至33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
脂肪酸残基が、脂肪酸の塩もしくは誘導体または親脂肪酸の一部である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
脂肪酸残基が、4乃至24、10乃至20、14乃至20、または16乃至18の炭素原子を含む、請求項34または35に記載の組成物。
【請求項37】
脂肪酸残基が飽和している、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
脂肪酸残基がステアリン酸残基またはパルミチン酸残基である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
脂質ラメラの修復を促進する成分を更に含む、請求項1乃至38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
セラミド、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素、ウロコ酸、または乳酸を更に含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
湿疹、皮膚炎様状態の治療のための、請求項1乃至40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
アトピー性湿疹、非アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、又は掻痒症の治療のための、請求項1乃至41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
亜鉛、亜鉛化合物、または別の2、4、12、13、または14族の金属化合物が、存在する場合には組成物の0.5乃至75重量%、1乃至50重量%、4乃至30重量%、または5乃至25重量%の濃度である、請求項1乃至42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
脂肪酸残基、脂肪酸、脂肪酸塩または脂肪酸誘導体が存在する場合に、組成物の1乃至50mg/ml、2乃至30mg/ml、5乃至20mg/ml、または8乃至16mg/mlの濃度である、請求項1乃至43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
皮膚への局所適用のために製剤化される、請求項1乃至44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
1つ以上の製薬品として許容される賦形剤、担体、希釈剤、または媒体を更に含む、請求項1乃至45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
アトピー進行の遅延化、回避、または予防、及び/またはTH1からTH2へのスイッチ低減のための、請求項1乃至46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
喘息及び/またはアレルギー性鼻炎の発展の制御、回避、発展の危険性の低減、または予防における使用のための、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
治療が皮膚への前記組成物の局所適用を含む、請求項1乃至48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
治療が予防的である、請求項1乃至49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
表皮または皮膚バリアの損傷または崩壊を含む皮膚状態の、こうした皮膚状態に罹患した患者に請求項1乃至50のいずれか一項に定義される組成物を投与する工程を含む治療方法。
【請求項52】
皮膚状態が、上皮細胞間の細胞間接着における異常な減退を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
上皮細胞が角質細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
皮膚状態に罹患した患者に請求項1乃至50のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、アトピー進行の遅延化、回避、または予防並びに/またはTH1からTH2へのスイッチの低減のための方法。
【請求項55】
皮膚状態に罹患した患者に請求項1乃至50のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、喘息及び/またはアレルギー性鼻炎の発展の制御、回避、発展の危険性の低減、または予防における使用方法。
【請求項56】
皮膚状態がアトピー性湿疹、非アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、または掻痒症である、請求項51乃至55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
組成物が皮膚に対して局所的に適用される、請求項51乃至56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
組成物が、一日に一回または二回投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
治療が予防的である、請求項51乃至58のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−504723(P2009−504723A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526559(P2008−526559)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050250
【国際公開番号】WO2007/020479
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(304051609)ヨーク・ファーマ・ピーエルシー (4)
【Fターム(参考)】