説明

製造ライン監視システム

【課題】製造ライン監視システムにおいて、各製造設備の正確な稼働率を把握することを第1の目的とし、アラームが報告された複数の製造設備に対してどの製造設備を優先処理するのかの判断をしやすくすることを第2の目的とする。
【解決手段】上位ホスト100は各製造設備300から報告されるアラーム文字情報に対する故障状態を製造設備300毎に故障定義情報部130に登録している。そして、上位ホスト100は、製造設備300からアラーム文字情報が報告されると故障定義情報部130に登録された故障状態を基に故障扱いとするか否かを判定し、アラーム文字情報の内容が故障扱いアラームであると判定した場合には製造設備300からの設備状態の通知が故障でなくても上位ホスト100側が設備状態を故障扱いとする。また、設備状態表示部210と稼働率表示部220とを1つの画面201に並列表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位ホストにて複数の製造装置を管理する製造ライン監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の製造装置から構成される製造ラインを監視するシステムが、例えば特許文献1〜4で提案されている。
【0003】
特許文献1では、複数の製造設備から情報を受信するFAコンピュータと、FAコンピュータから受信した情報に基づいてデータベースを構築し、構築したデータベースに従って管理者に情報を表示するホストコンピュータと、を含んだ監視システムが提案されている。この製造システムでは、故障についてのアラーム発信条件が設定されており、そのアラーム発信条件を満たす場合、ホストコンピュータが故障としてアラームを発生させるようになっている。
【0004】
特許文献2では、制御工程毎に設けられた各制御装置が互いに接続され、各制御装置は自己の制御状態が正常かまたは異常かを表す情報を他の制御装置に送信するように構成された連続プロセスプラント制御システムが提案されている。このシステムでは、各制御装置は他の制御装置からの送信情報に基づいて制御の続行又は停止を行う。例えば、制御装置に取り付けられたセンサによる位置確認時に許容範囲外の位置異常が検出された場合、当該制御装置は制御を停止し、他の制御装置に「異常情報=許容範囲外の位置異常」等のテキスト情報を送信している。
【0005】
特許文献3では、製品ロットの処理前に製造設備の設定条件を受信し、この設定条件を製造基準値と比較することにより、不適合であれば稼働を許可せず、製造設備のメンテナンス等を促す品質管理システムが提案されている。
【0006】
特許文献4では、表示装置上に製造設備のマップ画像を表示させ、そのマップ画像上に製造設備の稼働率情報を表示する半導体製造プロセス解析システムが提案されている。このシステムでは、マップ画像上のアラームが発生した製造設備にアラームの印が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−133620号公報
【特許文献2】特開平8−214377号公報
【特許文献3】特開平8−195407号公報
【特許文献4】特開2009−188015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、ホストコンピュータはデータベースの構築に際して製造設備の設備状態の変更までは行っておらず、設備状態については製造設備から報告される設備状態を表示するに留まっている。これでは事実上製造設備の故障にも関わらず、アラームだけが発信されるため、製造設備から故障が通知されない場合には製造設備はホストコンピュータにおいて故障扱いとはならないので、製造システムにおいて正しい稼動状態や正しい稼働率を把握することができないという問題があった。
【0009】
特許文献2では、制御装置から報告されたアラーム文字情報を受け取るが、その文字情報で故障状態にするのかの判定を行うことができない。このため、システム全体の正しい稼動状態や正しい稼働率を把握することができないという問題があった。
【0010】
特許文献3では、製造設備のメンテナンス等を促すシステムではあるが、製造設備の状態(異常)を直接検出するシステムではない。そのため、製品ロットの処理とは直接関係のない製造設備の異常や稼働状況(稼働率)を把握することができないため、製造設備の軽微な異常停止(チョコ停)への対応時間を減らすことができないという問題があった。
【0011】
特許文献4では、アラームが発生した製造設備に印が表示されるが、各製造設備の設備状態を画面に表示することができず、またアラームの発生日時も表示されない。このため、複数の製造設備でアラームが報告されたときに、どの製造設備を優先的に対処するべきかを作業者が判断することができないという問題があった。
【0012】
本発明は上記点に鑑み、各製造設備の正確な稼働率を把握することができる製造ライン監視システムを提供することを第1の目的とする。また、アラームが報告された複数の製造設備に対してどの製造設備を優先処理すべきかを作業者に判断させることができる製造ライン監視システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、製品を製造するための複数の製造設備(300)と、複数の製造設備(300)の設備状態および稼働率をそれぞれ取得する上位ホスト(100)と、上位ホスト(100)が取得した設備状態および稼働率をそれぞれ表示する設備状態表示装置(200)と、を備えて構成されている。複数の製造設備(300)は、上位ホスト(100)に報告すべき事項をアラーム文字情報としてそれぞれ出力する。
【0014】
上位ホスト(100)は、複数の製造設備(300)から出力されるアラーム文字情報を検出する設備異常検出部(110)を備えている。また、アラーム文字情報に応じた故障状態が複数の製造設備(300)毎に予め登録されており、設備異常検出部(110)にて検出されたアラーム文字情報とこのアラーム文字情報を出力した製造設備(300)に対応した故障状態とを比較することによりアラーム文字情報を出力した製造設備(300)の故障状態を特定すると共に、特定した故障状態に基づく当該製造設備(300)の稼働率を取得し、特定した故障状態および取得した稼働率を出力する故障定義情報部(130)を備えている。さらに、故障定義情報部(130)にて特定された故障状態に従ってアラーム文字情報が出力された製造設備(300)の設備状態を設定すると共に、設定した設備状態と当該製造設備(300)の稼働率とを含んだ設備状態変更情報を設備状態表示装置(200)に出力する設備状態変更部(150)を備えている。
【0015】
そして、設備状態表示装置(200)は、設備状態変更部(150)から通知される設備状態変更情報に基づいて複数の製造設備(300)の設備状態をそれぞれ表示する設備状態表示部(210)を備えていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、上記の構成において、設備状態表示装置(200)は、設備状態変更部(150)から通知される設備状態変更情報に基づいて複数の製造設備(300)の設備状態をそれぞれ表示する設備状態表示部(210)と、複数の製造設備(300)の稼働率をそれぞれ表示する稼働率表示部(220)と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
これによると、上位ホスト(100)の故障定義情報部(130)は各製造設備(300)から報告されたアラーム文字情報を予め登録された故障状態と照合しているので、製造設備(300)から報告されたアラーム文字情報が故障ではなくアラームを示すものであっても、その製造設備(300)を故障扱いとすることができる。このように、故障定義情報部(130)が判定した各製造設備(300)の設備状態に基づく稼働率を算出しているので、各製造設備(300)の正確な稼働率をそれぞれ把握することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、設備状態表示装置(200)は、1つの画面(201)に設備状態表示部(210)と稼働率表示部(220)とを並列表示することを特徴とする。これによると、製造設備(300)が故障した際の深刻度が一目でわかるため、製造設備(300)の故障への作業者の速やかな対応が可能となる。したがって、アラームが報告された複数の製造設備(300)に対してどの製造設備(300)を優先的に対処するべきかを作業者に判断させやすくすることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、稼働率は、現在時刻から過去24時間において製造設備(300)が実際に稼働していた時間の割合であることを特徴とする。これにより、日の変わり目でも正確な稼働率を得ることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明では、設備状態表示装置(200)は故障情報表示部(230)を備えており、設備状態変更部(150)から製造設備(300)の設備状態の故障が通知された場合に故障情報表示部(230)を設備状態表示装置(200)の画面(201)にポップアップ表示すると共に故障情報表示部(230)に故障した製造設備(300)の情報を表示することを特徴とする。これにより、故障した製造設備(300)の情報が作業者に一目でわかるようにすることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、故障情報表示部(230)には調整開始ボタン(232)が備えられており、この調整開始ボタン(232)が操作されると故障した製造設備(300)の設備状態が調整中の状態に変更され、故障情報表示部(230)は設備状態表示装置(200)の画面(201)から消去されると共に少なくとも調整開始時の時刻および故障の内容が設備状態表示装置(200)に記録されるようになっていることを特徴とする。これにより、製造設備(300)で異常が発生した後、誰かが対応していることが分かるようにすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、請求項5または6に記載の発明において、設備状態表示装置(200)に対して製造設備(300)の設備状態の故障が複数通知された場合、画面(201)には故障情報表示部(230)が複数重複表示されることを特徴とする。これにより、作業者が稼働率や稼働率の目標値を参考にして、どの製造設備(300)を優先的に対処すべきかを判断させやすくすることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明のように、設備状態表示部(210)には、複数の製造設備(300)が一覧表示されていると共に、強調表示として、複数の製造設備(300)のそれぞれの設備状態を示す設備状態表示(212)を行うことができる。また、強調表示として、請求項9に記載されたネックとなる製造設備(300)を示すネック表示(213d)、請求項10に記載された複数の製造設備(300)の稼動モードを示す稼動モード表示(213a)、請求項11に記載された複数の製造設備(300)を所定の製造設備(300)毎にグループ化したライン(500)を枠線(211a)で囲んだライン表示(211b)、請求項12に記載されたポートとして使用できない製造設備(300)を示すポート状態表示(213b)、さらには、請求項13に記載されたチャンバとして使用できない製造設備(300)を示すチャンバ状態表示(213c)を行うことができる。
【0024】
また、請求項14に記載の発明のように、稼働率表示部(220)では、複数の製造設備(300)の稼働率による並び替え表示を行うことや、請求項15に記載の発明のように稼働率の目標値を下回っている製造設備(300)の強調表示を行うことができる。
【0025】
請求項16に記載の発明では、複数の製造設備(300)は、上位ホスト(100)の設備異常検出部(110)に対して自己の設備状態をそれぞれ報告する。また、設備状態変更部(150)は、設備異常検出部(110)に対する複数の製造設備(300)のそれぞれの報告に従って複数の製造設備(300)毎に設備状態を変更する。そして、故障定義情報部(130)は、設備状態変更部(150)で生産の目的で使用しない設備状態に変更された製造設備(300)については、上位ホスト(100)にて稼働率の計算から外すので、正確な稼働率を把握することができる。
【0026】
請求項17に記載の発明では、請求項16に記載の発明において、設備状態変更部(150)は、設備異常検出部(110)に対して複数の製造設備(300)のうちのいずれかから応答がないことを検出し、応答がない製造設備(300)の設備状態を設備停止に変更することを特徴とする。
【0027】
このように、設備状態の報告が不可能となった製造設備(300)を上位ホスト(100)側で設備停止すなわち故障であると判定しているので、各製造設備(300)の正確な稼働率をそれぞれ把握することができる。
【0028】
請求項18に記載の発明では、設備状態表示部(210)には、製造設備(300)の設備状態を示すシグナルタワー表示(214)がなされることを特徴とする。これにより、設備状態表示装置(200)にシグナルタワー(202)が取り付けられていなくても、設備状態表示部(210)にシグナルタワー(202)と同じ表示を行うことができる。したがって、作業者は設備状態表示部(210)に示されたシグナルタワー表示(214)によっても製造設備(300)の設備状態の変化があったことを確認することができる。
【0029】
請求項19に記載の発明では、設備状態表示装置(200)は、複数の製造設備(300)毎に複数設けられていると共に、スピーカ(203)をそれぞれ備え、複数の製造設備(300)の1つの集まりをエリア(400)とすると、複数の設備状態表示装置(200)はエリア(400)毎に異なるブザー音を鳴らすことを特徴とする。
【0030】
これにより、作業者は、どのエリア(400)の製造設備(300)に問題が生じたのかをブザー音の違いによって判断することができる。このため、問題が生じた製造設備(300)を素早く特定することができ、稼働率の向上に繋げることができる。
【0031】
請求項20に記載の発明では、上位ホスト(100)は、設備異常検出部(110)にて検出されたアラーム文字情報の履歴を保存するアラーム記憶データベース(120)を備えていることを特徴とする。これにより、製造設備(300)から送られてきたアラームの履歴を残すことができる
請求項21に記載の発明では、設備状態表示装置(200)は、設備状態表示部(210)に表示される製造設備(300)の表示レイアウトを変更するための設備レイアウト情報部(240)を備えていることを特徴とする。これにより、設備状態表示部(210)の表示レイアウトを所望のレイアウトに変更することができる。
【0032】
請求項22に記載の発明では、設備状態表示装置(200)の画面(201)にはマウスのカーソル(204)が表示されるようになっており、そして、設備状態表示部(210)に表示されている製造設備(300)を示す表示マークの上にカーソル(204)が配置されると、少なくとも、カーソル(204)が配置された製造設備(300)の正式名称と当該製造設備(300)の配置位置を示す座標の数値とがポップアップ表示されるようにすることもできる。これにより、慣れていない作業者でもどの製造設備(300)であるかを特定でき、また、製造設備(300)の配置位置を示す座標の数値が表示されるので、製造設備(300)のレイアウトの修正が容易となる。
【0033】
請求項23に記載の発明では、稼働率表示部(220)にはグラフボタン(226)が備えられており、このグラフボタン(226)が操作されると、設備状態表示装置(200)の画面(201)に稼働率のグラフが表示されることを特徴とする。これにより、各製造設備(300)の稼働率の変化を作業者が視覚的に確認することができる。
【0034】
請求項24に記載の発明では、請求項23に記載の発明において、稼働率のグラフには、前日までの各日においては0時から23時59分までに製造設備(300)が実際に稼働していた時間の割合が稼働率としてそれぞれ表示され、当日においてはグラフボタン(226)が操作された現在時刻から過去24時間において製造設備(300)が実際に稼働していた時間の割合が稼働率として表示されることを特徴とする。これにより、日の変わり目でも正確な稼働率を表示することができる。
【0035】
請求項25に記載の発明では、上位ホスト(100)は、複数の製造設備(300)それぞれの稼働率のデータを保存するための稼働率データベース(140)を備え、稼働率データベース(140)に保存された過去から現在までの稼働率のデータがCSV形式のデータとしてダウンロード可能であることを特徴とする。これにより、ダウンロードしたデータを稼働率の分析に利用することができる。
【0036】
請求項26に記載の発明では、複数の製造設備(300)の1つの集まりがエリア(400)とされ、設備状態表示装置(200)はエリア(400)毎に複数設けられている。また、設備状態表示部(210)はエリア外調整ボタン(216)を備え、エリア外調整ボタン(216)が操作されると、当該設備状態表示部(210)を備えた設備状態表示装置(200)に対応するエリア(400)とは異なるエリア(400)に対応する設備状態表示装置(200)の情報が呼び出されると共に当該異なるエリア(400)に対応する設備状態表示装置(200)の操作が可能になることを特徴とする。
【0037】
これにより、発生したエリア(400)に作業者が不在のときに、他のエリア(400)の作業者が代理をする場合に、発生したエリア(400)の設備状態表示装置(200)に行くまでの歩行時間が削減できる。また、作業者が他のエリア(400)の情報を知りたいときに、作業者がその場から離れなくても他のエリア(400)の情報を得ることができる。
【0038】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る製造ライン監視システムの構成図である。
【図2】図1に示される上位ホストおよび設備状態表示装置の具体的な構成図である。
【図3】アラーム文字情報による故障判定の模式図である。
【図4】設備状態表示装置の外観の一例を示した図である。
【図5】設備状態表示部の模式図である。
【図6】製造設備の情報をポップアップ表示した模式図である。
【図7】設備状態変更ウィンドウの模式図である。
【図8】稼働率表示部の模式図である。
【図9】稼働率目標値設定ウィンドウの模式図である。
【図10】並べ替えウィンドウの模式図である。
【図11】設備詳細ウィンドウの模式図である。
【図12】設備検索条件入力ウィンドウの模式図である。
【図13】コメント入力ウィンドウの模式図である。
【図14】稼働率グラフウィンドウの模式図である。
【図15】設備状態表示装置の画面上に設備状態表示部と稼働率表示部とを並列表示した模式図である。
【図16】故障情報表示部の模式図である。
【図17】定義ファイルの一例を示した図である。
【図18】上位ホストが製造設備からアラーム文字情報を受信した場合の処理内容を示したフローチャートである。
【図19】故障情報表示部の一例として「故障扱いアラーム」のポップアップ表示を示した図である。
【図20】故障情報表示部の一例として「アラーム」のポップアップ表示を示した図である。
【図21】製造設備の異常発生から調整開始までの流れを示した図である。
【図22】設備アラーム一覧ウィンドウの模式図である。
【図23】製造設備の異常が解除された後の流れを示した図である。
【図24】製造ライン監視システムの導入前に対して導入3ヶ月後の対応時間の削減効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る製造ライン監視システムの構成図である。この図に示されるように、製造ライン監視システムは、上位ホスト100と、複数の設備状態表示装置200と、複数の製造設備300と、を備えて構成されている。
【0041】
上位ホスト100は、複数の製造設備300を管理する管理装置である。このような上位ホストは、CPU、メモリ、ハードディスク、インターフェース等で構成されたサーバなどのコンピュータを用いた情報システムである。上位ホスト100の大きな役割としては、複数の製造設備300の設備状態および稼働率をそれぞれ取得することである。
【0042】
ここで、「設備状態」とは、製造設備300の状態であり、「稼動中」、「準備中」、「仕掛待ち」、「故障」、「休止中」、「オフライン」、「調整中」、「非生産状態」、「仕掛停止」、「設備停止」の各状態を指す。
【0043】
「稼動中」とは製造設備300が製品を処理(加工、測定、検査)している状態のことであり、「準備中」とは製造設備300のメンテナンスをしている状態のことである。「仕掛待ち」とは製造設備300が空いている(処理をしていない)状態のことであり、「故障」とは製造設備300で異常が発生した状態のことである。「休止中」とは長期の故障などで暫く製造設備300を使用しない状態のことであり、「オフライン」とは製造設備300が上位ホスト100と通信していない状態のことである。「調整中」とは製造設備300で異常が発生した後、作業者が復帰作業をしている状態のことであり、「非生産状態」とは生産では使用していない状態(開発専用機、設備立ち上げ中等)のことである。「仕掛停止」とは製品の仕掛を止めている状態のことであり、「設備停止」とは製造設備300と上位ホスト100との通信の中で上位ホスト100が異常を検知した状態のことである。
【0044】
また、「稼働率」とは、製造設備300が起動している時間に対して、製造設備300が製品の製造のために稼動している時間の割合である。具体的に、稼働率は、製造設備300が現在時刻から過去24時間で製品を処理していた時間の割合である。稼働率が高いほど、製造設備300の生産性が高いことを表している。
【0045】
設備状態表示装置200は、上位ホスト100が取得した設備状態および稼働率をそれぞれ表示する装置である。図1に示されるように、複数の製造設備300の1つの集まりをエリア400とすると、設備状態表示装置200はエリア400毎に設けられている。
【0046】
製造設備300は、製品を製造するための装置である。例えば、製品として半導体チップ等の半導体製品を製造する場合、1台1台が半導体チップを製造するためのいずれかの工程を実施する設備になっている。図1に示されるように、複数の製造設備300は、所定の製造設備300毎にグループ化されたライン500を構成している。
【0047】
そして、上位ホスト100、設備状態表示装置200、および製造設備300は、それぞれLAN600によって接続されており、相互に通信可能になっている。
【0048】
上記のような製造ライン監視システムの構成において、各部の具体的な機能および作動について、図を参照して説明する。
【0049】
図2は、上位ホスト100および設備状態表示装置200の具体的な構成図である。この図に示されるように、まず、各製造設備300は、上位ホスト100に報告すべき事項をアラーム文字情報としてそれぞれ出力する。「報告すべき事項」とは、製造設備300において生じた何かしらのイベントであり、上位ホスト100に情報として伝えるべき事項である。したがって、報告すべき事項は、製造設備300の故障に限られない。このアラーム文字情報は製造設備300のアラームであり、このアラームが製造設備300の故障を示すものであるか否かは上位ホスト100が判定する。この判定については後述する。
【0050】
また、各製造設備300は、上位ホスト100に対して所定のタイミングで自己の設備状態をそれぞれ報告する。所定のタイミングとは、定期的でも良いし、設備状態が変更されたタイミング等の不定期でも良い。
【0051】
上位ホスト100は、図2に示されるように、設備異常検出部110と、アラーム記憶データベース120(図2のアラーム記憶DB)と、故障定義情報部130と、稼働率データベース140(図2の稼働率DB)と、設備状態変更部150と、を備えている。
【0052】
設備異常検出部110は、常に上位ホスト100と製造設備300との通信状態を監視し、複数の製造設備300から出力されるアラーム文字情報や設備状態を検出する検出部である。設備異常検出部110は製造設備300からのアラーム文字情報を検出した場合、そのアラーム文字情報を故障定義情報部130に通知すると共に、アラーム記憶データベース120に保存する。
【0053】
アラーム記憶データベース120は、設備異常検出部110にて検出されたアラーム文字情報の履歴を保存する記憶手段である。アラーム記憶データベース120に記憶されたアラーム文字情報の履歴は上位ホスト100からダウンロード可能になっており、チョコ停の改善のために利用できるようになっている。
【0054】
また、各製造設備300は、アラーム文字情報だけではなく、上位ホスト100の設備異常検出部110に対して自己の設備状態をそれぞれ報告している。これに伴い、設備異常検出部110は、各製造設備300のそれぞれの設備状態の報告も検出している。
【0055】
故障定義情報部130は、設備異常検出部110にて検出されたアラーム文字情報に基づいてアラーム文字情報を出力した製造設備300の設備状態を特定するものである。このため、故障定義情報部130は、アラーム文字情報に応じた故障状態が複数の製造設備300毎に予め登録されており、それぞれのアラーム文字情報に対して故障状態(故障/アラーム/解除)が定義されている。
【0056】
例えば、故障定義情報部130は、設備異常検出部110にて検出されたアラーム文字情報とこのアラーム文字情報を出力した製造設備300に対応した故障状態とを比較することによりアラーム文字情報を出力した製造設備300の故障状態を特定する。例えば、あるアラーム文字情報に対する故障状態が「故障」だった場合、故障定義情報部130は設備状態変更部150に「故障」を通知する。また、あるアラーム文字情報に対する故障状態が「アラーム」だった場合、故障定義情報部130は設備状態変更部150に「アラーム」を通知する。また、あるアラーム文字情報に対する故障状態が「解除」だった場合、故障定義情報部130は設備状態変更部150に「解除」を通知する。
【0057】
図3は、アラーム文字情報による故障判定の模式図である。この図に示されるように、各製造設備300から上位ホスト100(設備異常検出部110)に報告されるアラーム文字情報を基に、製造設備300毎に故障定義情報(設備アラーム)が故障定義情報部130に設定されている。すなわち、図3に示されるように、「EQP−13」、「EQP−24」、「EQP−36」等の各製造設備300に対して、それぞれどのアラームを故障扱いとするのかが定義されている。このように、故障定義情報部130では、アラーム文字情報を「故障」として扱うアラームが異なり、各製造設備300に対する定義に従って故障扱いとするか否かが判定される。
【0058】
そして、アラーム文字情報を出力した製造設備300の設備状態が故障定義情報部130にて故障であると判定されると、その旨が設備状態表示装置200に出力され、設備状態表示装置200にその旨が表示される。
【0059】
また、故障定義情報部130は、特定した故障状態に基づく当該製造設備300の稼働率を取得し、特定した故障状態および取得した稼働率を設備状態変更部150に出力する。故障定義情報部130は、取得した稼働率を稼働率データベース140にも出力する。このように、各製造設備300の故障状態は、アラーム文字情報に応じて定義された故障状態に従って変更されるので、製造設備300から報告されたアラーム文字情報が故障ではなくアラームを示すものであっても、その製造設備300は故障扱いとされる。このため、故障定義情報部130では各製造設備300の設備状態に基づく稼働率が算出され、各製造設備300の正確な稼働率が得られる。
【0060】
稼働率データベース140は、故障定義情報部130で取得された稼働率のデータを保存する記憶手段である。この稼働率データベース140には各製造設備300それぞれの過去から現在までの稼働率のデータが保存されており、CSV(comma separate valve)形式のデータとしてダウンロード可能である。また、過去も含めた月単位の稼働率のデータをCSV形式のデータで保存することも可能であり、ダウンロードしたデータを稼働率の分析に利用することができる。
【0061】
設備状態変更部150は、故障定義情報部130にて特定された故障状態に従ってアラーム文字情報が出力された製造設備300の設備状態を設定するものである。設備状態変更部150は、故障定義情報部130にて特定された故障状態に従って設定した設備状態と、この設備状態の製造設備300の稼働率と、を含んだ設備状態変更情報を設備状態表示装置200に出力する。
【0062】
例えば、設備状態変更部150は、各製造設備300からアラーム文字情報や設備状態が送られてくるタイミングで、設備状態表示装置200の設備状態表示部210と稼働率表示部220とに設備状態および稼働率の変更を通知する。また、設備状態変更部150は、故障定義情報部130から「故障」が通知されてきたタイミングで設備状態表示装置200の設備状態表示部210と稼働率表示部220と故障情報表示部230とに設備状態の「故障」を通知する。また、設備状態変更部150は、故障定義情報部130から「アラーム」が通知されてきたタイミングで設備状態表示装置200の故障情報表示部230に「アラーム」を通知する。さらに、設備状態変更部150は、故障定義情報部130から「解除」が通知されてきたタイミングで設備状態表示装置200の設備状態表示部210と稼働率表示部220と故障情報表示部230とに設備状態の「解除」を通知する。
【0063】
上記のように、設備状態変更部150は、設備異常検出部110に対する複数の製造設備300のそれぞれの報告に従って複数の製造設備300毎に設備状態を変更する。これに伴い、故障定義情報部130は、設備状態変更部150で変更された設備状態に応じた稼働率を取得することとなる。このため、設備状態が非生産状態等の製造設備300については、上位ホスト100において稼働率の計算から外れるので、当該製造設備300の正確な稼働率を把握することが可能となる。
【0064】
また、上記では、設備状態変更部150は製造設備300のそれぞれの報告に従って製造設備300毎に設備状態を変更しているが、設備異常検出部110に対して複数の製造設備300のうちのいずれかから応答がない場合もある。これは、通信設備の異常や、製造設備300の通信機能に異常が生じた場合等で起こりうる。このような場合、設備状態変更部150は、製造設備300に応答がないことを検出し、応答がない製造設備300の設備状態を設備停止に変更する。このように、設備状態の報告が不可能となった製造設備300を上位ホスト100側で設備停止すなわち故障であると判定することで、報告がない製造設備300についての正確な稼働率が得られる。
【0065】
さらに、作業者が意図的に製造設備300を生産の目的で使用しない設備状態に変更することもある。この場合も、故障定義情報部130は、設備状態変更部150で生産の目的で使用しない設備状態(非生産状態)に変更された製造設備300については、稼働率の計算から外すので、正確な稼働率が得られる。
【0066】
設備状態表示装置200は、作業者に対して、各製造設備300の情報をそれぞれ表示する装置である。図4は、設備状態表示装置200の外観の一例を示した図である。この図に示されるように、工場内には複数の設備状態表示装置200が存在し、設備状態表示装置200はエリア400毎に設けられている。それぞれの設備状態表示装置200は担当する製造設備300が異なっている。
【0067】
また、設備状態表示装置200は画面201を有しており、この画面201に各製造設備300の情報をそれぞれ表示するようになっている。設備状態表示装置200にはマウスやキーボードが備えられている。そして、設備状態表示装置200の画面201にはマウスのカーソルが表示されるようになっており、作業者がマウスやキーボードを操作することによって各種の設定、変更等を行えるようになっている。
【0068】
さらに、図4に示されるように、設備状態表示装置200にはシグナルタワー202とスピーカ203とが取り付けられている。シグナルタワー202は例えば赤点滅信号を表示する。スピーカ203から流すブザー音は複数の音色の中から選択することができ、工場内に複数の設備状態表示装置200が存在してもブザー音によってエリア400を区別することができる。例えば、設備状態表示装置200は、スピーカ203からのブザー音とシグナルタワー202の赤点滅信号とにより作業者(オペレータ)を呼ぶ。
【0069】
また、上述のように、工場内には複数のエリア400が設定されているため、複数の設備状態表示装置200はエリア400毎に異なるブザー音(メロディ)を鳴らすようになっている。これにより、工場内に複数の設備状態表示装置200が存在していても、作業者はブザー音によってエリア400を区別することができる。すなわち、作業者は、どのエリア400に居ても、どのエリア400の製造設備300に問題が生じたのかをブザー音の違いによって判断することが可能となる。このため、問題が生じた製造設備300の素早い特定が可能となり、当該製造設備300の稼働率の向上を図ることができる。
【0070】
上記のような設備状態表示装置200は、設備状態表示部210と、稼働率表示部220と、故障情報表示部230と、設備レイアウト情報部240と、を備えている。これらのうち、設備状態表示部210、稼働率表示部220、および故障情報表示部230は、設備状態表示装置200の画面201に表示されるウィンドウである。
【0071】
設備状態表示部210は、設備状態変更部150から通知される設備状態変更情報に基づいて各製造設備300の設備状態を設備状態表示装置200の画面201に表示するウィンドウである。また、設備状態表示部210は、設備状態表示装置200の画面201に複数の製造設備300を格子状に表示し、設備状態変更部150から通知された各々の製造設備300の設備状態をリアルタイムに更新することで、工場内にある製造設備300の設備状態を集中監視できるようになっている。
【0072】
図5は、設備状態表示部210の模式図である。この図に示されるように、設備状態表示部210には、設備状態表示装置200が管轄するエリア400の各製造設備300が一覧表示されていると共に、各種のボタンが設けられている。この設備状態表示部210には、各製造設備300の関する様々な強調表示がなされている。
【0073】
まず、設備状態表示装置200が管轄するエリア400の複数の製造設備300において、ライン500を枠線211aで囲んだライン表示211bがなされている。1つのエリア400内に複数の異なるグループに属する製造設備300が混在している場合に、その製造設備300のグループ単位であるライン500を設備状態表示装置200の画面201上で枠線211aで囲み、製造設備300のグループ名(ライン名、図5では「ライン01」等)を表示することにより、複数の異なるライン500が混在していることをライン表示211bで表現することができる。
【0074】
また、各製造設備300のそれぞれの設備状態は設備状態表示212によって表現されている。設備状態表示212は、作業者が各製造設備300の設備状態を色で判断できる表示である。なお、図5では色をハッチングで表現している。上述のように、設備状態には、稼動中、準備中、仕掛待ち、故障、休止中、オフライン、調整中、非生産状態、仕掛停止、設備停止があり、各製造設備300の現在の設備状態と同じ色で表示されている。
【0075】
すなわち、上述のように、全ての製造設備300は上位ホスト100と常に通信をしており、設備状態を上位ホスト100へ報告している。そして、設備状態表示装置200は上位ホスト100より、設備状態表示部210にて管理している各製造設備300の設備状態を画面201に表示している。設備状態表示装置200では各製造設備300の設備状態をリアルタイムに表示することができる。
【0076】
また、稼働モードを切り替えることが可能な製造設備300に関しては、その稼働モードが製造設備300から上位ホスト100に通知された場合、設備状態表示装置200の画面201に製造設備300の稼動モードを示す稼動モード表示213aがなされる。稼動モードとは、製造設備300をどのように稼動させるかを示すモードであり、フルオート、セミオート、マニュアルの各モードがある。稼動モード表示213aは、例えば製造設備300を示す表示マークの下辺に引かれたライン(図5ではハッチングで表現している)として表示される。これにより、作業者は、稼動モード表示213aの色によって稼働モードを判断することができる。
【0077】
搬送機によるフルオート工場の場合、ほとんどの製造設備300がフルオートであることが多いので、フルオートの場合は稼動モード表示213aを非表示として、稼働モードがセミオートとマニュアルの製造設備300のみ稼動モード表示213aを行う。
【0078】
処理すべきロットを置くポートや所定の雰囲気で所定の工程を実施する処理チャンバの各状態が製造設備300から上位ホスト100へ通知されることもある。このような場合、上位ホスト100の設備状態変更部150にて設備状態が変更され、その設備状態変更情報が設備状態表示装置200に通知されると、画面201に配置された製造設備300の表示マークにその情報が表示される。例えば、「EQP−43」の製造設備300を示す表示マークの上辺にポート状態表示213bが設けられ、「EQP−43」の製造設備300を示す表示マークの下辺にチャンバ状態表示213cが設けられる。通常、ポートや処理チャンバが使用不可な場合(例えば、メンテナンス中や故障中等)のみこれらの表示を行い、使用可能な場合(例えば、稼動中や空き等)では非表示とすることもできる。製造設備300にポートや処理チャンバが複数ある場合はポート状態表示213bやチャンバ状態表示213cが複数表示される。これにより、ポートや処理チャンバの稼働状態も管理することが可能となる。
【0079】
さらに、処理能力が十分ではなく、常に稼働状況を確認する必要がある等の理由でネックとなる製造設備300については、当該製造設備300の表示マークの外枠に沿ってネック表示213d(図5では太線で表現している)が設けられる。このネック表示213dによって製造設備300がネック設備であることを表示することができる。これにより、ネック設備の製造設備300について作業者に注意を促すことができる。
【0080】
なお、稼働モードを示す稼動モード表示213aはネックとなる製造設備300を示すネック表示213dのラインより前面に表示することが好ましい。
【0081】
そして、上述のように、設備状態表示装置200にはシグナルタワー202が設けられているが、設備状態表示部210にはこのシグナルタワー202が点滅している映像を表示するシグナルタワー表示214が設けられている。このようなシグナルタワー表示214は、設備状態表示装置200にシグナルタワー202が設けられていない場合でも設備状態表示装置200の画面201にシグナルタワー202の映像が表示される。このため、作業者はシグナルタワー表示214によっても製造設備300の異常を知ることが可能となる。
【0082】
また、設備状態表示部210に表示されている製造設備300を示す表示マークの上にカーソルが配置されると、カーソルが配置された製造設備300の正式名称と当該製造設備300の配置位置を示す座標の数値が表示されるようになっている。この模式図を図6に示す。
【0083】
設備状態表示部210の各製造設備300は通常は「EQP−11」等の設備略称を示す表示マークしか表示されていないが、各製造設備300の上にカーソル204を移動させると、図6に示されるように、その製造設備300の情報(設備名称、座標、ポート状態、チャンバ状態)がポップアップ表示される。
【0084】
これにより、製造設備300の設備名称が設備略称だけではどの製造設備300なのかを判断しにくい場合に別の画面を出さなくても容易に判断することができる。また、製造設備300の座標は、製造設備300のレイアウトを編集するときに、各製造設備300がどの座標に配置されているかを見やすくするために利用される。さらに、ポート状態およびチャンバ状態は、何番目が使用不可な状態にあるのかが容易に分かるようになっている。このように、カーソル204を移動させるだけで各製造設備300の簡易情報を容易に知ることができる。
【0085】
続いて、設備状態表示部210に設けられたボタンについて説明する。図7は、設備状態変更ウィンドウの模式図である。図5において設備状態表示部210に設けられた状態変更ボタン215が押されると、図7に示される設備状態変更ウィンドウ215aが設備状態表示装置200の画面201に表示される。設備状態表示装置200における製造設備300の設備状態は、製造設備300から送られてくる稼動状態によって自動で変更されるが、作業者が手動で稼動状態を変更したい場合に使用される。例えば、減産などで製造設備300を停止する場合、その製造設備300の稼動状態を手動で“非生産状態”にすることにより、稼働率の計算から外すことができる。
【0086】
また、図5において設備状態表示部210に設けられたエリア外調整ボタン216が押されると、当該設備状態表示部210を備えた設備状態表示装置200に対応するエリア400とは異なるエリア400に対応する設備状態表示装置200の情報が呼び出される。これにより、当該異なるエリア400に対応する設備状態表示装置200の操作が可能になる。このように、エリア外調整ボタン216は、作業者が他のエリア400の情報を知りたいときや、作業者が現在のエリア400から離れなくても、他のエリア400の情報を得ることができるボタンである。
【0087】
なお、状態変更ボタン215やエリア外調整ボタン216等のボタンは、マウスのカーソル204による操作だけでなく、キーボードのファンクションキーを押すことによっても操作することができる。また、図5において設備状態表示部210に設けられた「設備詳細」および「調整開始」の各ボタンについては、後で説明する。
【0088】
稼働率表示部220は、各製造設備300の稼働率や稼働率の目標値をそれぞれ表示するウィンドウである。設備状態表示装置200にて管理されているエリア400の製造設備300のリアルタイムの稼働率(24時間の内で処理していた時間)が表示される。それぞれの製造設備300に目標値を設定することができ、製造設備300が故障したときの緊急度を表現できる。
【0089】
図8は、稼働率表示部220の模式図である。この図に示されるように、稼働率表示部220には、設備状態表示装置200にて管理されている製造設備300毎の稼働率に関するリアルタイムの情報(ライン名、設備名称、目標値、稼働率、故障回数、故障時間、設備状態、稼働モード)が表示されている。なお、故障回数は、現在時刻から過去24時間での故障回数を表しており、故障時間は現在時刻から過去24時間での故障していた時間の総和を表している。
【0090】
具体的に、稼働率表示部220は、上位ホスト100の故障定義情報部130で計算されると共に設備状態表示装置200が設備状態変更部150から設備状態変更情報として受け取った稼働率を表示している。
【0091】
通常は設備状態表示装置200にて管理されている各製造設備300の稼働率はその数値が悪い順に降順に表示されるようになっており、稼働率が悪い製造設備300が一目でわかるようになっている。稼働率の並び順に関しては、並び替え機能により、設備名称順、ライン名順、故障回数順、故障時間順、目標値順に昇順または降順を選んで並び替えることができる。
【0092】
また、設備名称、目標値、稼働率は通常は黒字で表示されているが、稼働率表示部220に表示されているリアルタイムの稼働率が目標値を下回る製造設備300については強調表示が行われる。具体的には、現時点でそれぞれの製造設備300の稼働率が目標値を達成していなければ製造設備300の設備名称、目標値、稼働率がそれぞれ赤字に強調表示され、さらに稼働率が目標値よりもN%以上(例えば30%以上といった大幅な値)下回っている製造設備300については背景が例えばピンク色に強調表示される。これにより、製造設備300が故障したときの緊急度が表現され、対応すべき製造設備300の優先度がわかり易くなっている。
【0093】
そして、稼働率表示部220には、設備状態表示部210において製造設備300の現在の設備状態を示す色と同じ色が付されている。また、稼動モード表示213aやネック表示213dも稼働率表示部220に表示されている。
【0094】
続いて、稼働率表示部220に設けられている各ボタンの機能について説明する。まず、図8において稼働率表示部220に設けられた目標値ボタン221が押されると、図9に示される稼働率目標値設定ウィンドウ221aが設備状態表示装置200の画面201に表示される。この稼働率目標値設定ウィンドウ221aは、稼働率表示部220にて管理しているエリア400の製造設備300毎の稼働率の目標値を変更するためのウィンドウである。稼働率目標値設定ウィンドウ221aには現状の稼働率の目標値が表示されており、変更したい製造設備300の目標値を入力することで稼働率の目標値を変更できるようになっている。これにより、それぞれの製造設備300に対する稼働率の目標値を設定することができる。
【0095】
また、図8において稼働率表示部220に設けられた並べ替えボタン222が押されると、図10に示される並べ替えウィンドウ222aが設備状態表示装置200の画面201に表示される。この並べ替えウィンドウ222aは、稼働率表示部220にて表示されている稼働率の一覧表を並べ替えることができるウィンドウである。設備名称順、稼働率順、ライン名順、故障回数順、故障時間順、目標値順で優先順位を決めてそれぞれ昇順、降順を選択することができる。
【0096】
また、図8において稼働率表示部220に設けられた設備詳細ボタン223が押されると、図11に示される設備情報詳細ウィンドウ223aが設備状態表示装置200の画面201に表示される。この設備情報詳細ウィンドウ223aでは、設備状態表示部210で示された各製造設備300の詳細情報を参照することができる。
【0097】
設備情報詳細ウィンドウ223aでは、エリア名称、ライン名、設備コード、設備名称、設備略称、稼動状態、状態開始時刻、稼働率目標値[%]、稼働率[%]、故障回数[回/日]、コメント、ポート状態、チャンバ状態、の各項目が表示される。なお、状態開始時刻とは、稼動状態が現在の状態に変更されてからの経過時間を表している。
【0098】
また、図8において稼働率表示部220に設けられた設備検索ボタン224が押されると、図12に示される設備検索条件入力ウィンドウ224aが設備状態表示装置200の画面201に表示される。設備検索条件入力ウィンドウ224aでは、ライン名と設備名称から製造設備300を検索することが可能になっている。稼働率表示部220にて管理している製造設備300の台数が多い場合、稼働率を確認したい製造設備300がどこにあるかを探すに時間が掛かってしまうが、検索機能をつけることで、製造設備300を探す時間を短縮することができる。
【0099】
また、図8において稼働率表示部220に設けられたコメント入力ボタン225が押されると、図13に示されるコメント入力ウィンドウ225aが設備状態表示装置200の画面201に表示される。このコメント入力ウィンドウ225aを開き、作業者がキーボードを用いて製造設備300毎に日毎のコメントを記録することができる。これにより、稼働率が低かった日に何が起こったかを記録に残すことができる。このコメント入力ウィンドウ225aでコメントが入力されると、設備情報詳細ウィンドウ223aのコメント欄にコメントが反映される。
【0100】
さらに、図8において稼働率表示部220に設けられたグラフボタン226が押されると、図14に示される稼働率グラフウィンドウ226aが設備状態表示装置200の画面201に表示される。この稼働率グラフウィンドウ226aでは、設備状態表示部210で管理しているエリア400の製造設備300について、過去も含めた月単位で日毎の稼働率のトレンドを折れ線グラフで表示することができる。ここでの日毎の稼働率とは、各日において0時0分から23時59分までに製造設備300が実際に稼働していた時間の割合のことを示している。これにより、前日までの各日における各製造設備300の稼働率の変化を作業者がグラフで確認することができる。
【0101】
また、本日(当日)の稼働率を稼働率グラフウィンドウ226aに表示させる場合は、グラフボタン226が操作された現在時刻から過去24時間における稼働率が表示される。これにより、日の変わり目でも正確な稼働率を表示することができる。
【0102】
そして、日毎の非稼動要因と時間を積み上げ棒グラフで表示することもできる。非稼動要因積み上げ棒グラフとは、それぞれの製造設備300の日毎の非稼動要因(準備中、仕掛け待ち、故障、調整中、仕掛停止、設備停止)のそれぞれの時間を積み上げ棒グラフで表したグラフである。この積み上げグラフによって、稼働率が低かった日にどのような非稼動要因があったかが一目で分かるようになっている。
【0103】
稼働率グラフウィンドウ226aでは、稼働率表示部220にて設定されている稼働率の目標値も表示される。Y軸(稼働率)レンジを変更することができ、例えば60〜80%の間の稼働率の変動を細かく確認することができる。条件入力ボタン226bを操作して各条件を設定することが可能である。描画条件を設定した後にグラフ描画ボタン226cを操作することにより、描画条件に従ったグラフが稼働率グラフウィンドウ226aに表示される。統計情報として、1ヶ月の平均稼働率、故障回数、総故障時間を確認することができる。
【0104】
そして、稼働率グラフウィンドウ226aに表示される稼働率は、上位ホスト100で取得された最新の稼働率である。過去も含めた月単位の稼働率のデータは、上位ホスト100の稼働率データベース140にCSV形式のデータで保存されているので、図14に示されるCSV出力ボタン226dを操作することにより稼働率のデータをダウンロードでき、稼働率の分析に利用することができる。
【0105】
なお、所望の積み上げ棒グラフをクリックするとコメントを残せる。そして、日付をクリックすると、コメントを閲覧することもできる。また、稼働率表示部220に設けられた設備詳細ボタン223は、図5に示された設備状態表示部210にも設けられている。
【0106】
上記の設備状態表示部210と稼働率表示部220とは、設備状態表示装置200の1つの画面201に並列表示される。図15は、設備状態表示部210と稼働率表示部220とを設備状態表示装置200の1つの画面201に並列表示した模式図である。このように、1つの画面201に設備状態表示部210と稼働率表示部220とを同時に表示することにより、稼働率が目標値に達していない製造設備300をリアルタイムで誰でも簡単に把握できるようにすることができる。このような並列表示により、製造設備300が故障した際の深刻度が一目でわかるため、製造設備300の故障への作業者の速やかな対応が可能となる。したがって、複数の製造設備300から同時期にアラームが報告されたときに、どの製造設備300を優先的に対処するべきかを作業者が判断することができる。
【0107】
そして、図2に示される故障情報表示部230は、上位ホスト100の設備状態変更部150から製造設備300の設備状態の故障もしくはアラームが設備状態表示装置200に通知された場合に設備状態表示装置200の画面201にポップアップ表示されるウィンドウである。この故障情報表示部230には故障した製造設備300の情報が表示される。したがって、作業者は故障情報表示部230によって故障した製造設備300が一目でわかるようになっている。また、製造設備300が同時に複数故障し、工場内に作業者が1人しかいなかった場合でも、作業者が画面201に表示された稼働率表示部220を確認することにより、稼働率が目標値に達していない等の重要な製造設備300から優先して復旧を行うことが可能となり、生産への影響を軽減することが可能となる。
【0108】
図16は、設備状態表示部210の上にポップアップ表示された故障情報表示部230の模式図である。この図に示されるように、故障情報表示部230には、該当製造設備300の情報として、製造設備名称、発生日時、アラーム文字情報が表示される。そして、上位ホスト100の設備状態変更部150から設備状態表示装置200に故障状態として解除が通知された場合、設備状態表示装置200の画面201に該当製造設備300の故障もしくはアラームを示す故障情報表示部230が表示されていれば、当該故障情報表示部230は消去される。
【0109】
また、図16に示されるように、故障情報表示部230には、閉じるボタン231、設備詳細ボタン223、および調整開始ボタン232が備えられている。閉じるボタン231は設備状態表示装置200の画面201から故障情報表示部230を消去するボタンであり、設備詳細ボタン223は図11に示される設備情報詳細ウィンドウ223aを開くためのボタンである。
【0110】
調整開始ボタン232は、製造設備300の調整開始を選択するためのボタンである。「調整開始」とは、製造設備300の異常を作業者が発見し、現在対応中であることを示している。作業者が調整開始ボタン232を選択すると、故障情報表示部230が画面201から消え、故障した製造設備300の設備状態の表示が「調整中」に変更される。この「調整中」とは、製造設備300で異常が発生した後、作業者が復帰作業をしている状態のことであり、他の作業者が見ても現在誰かが対応していることが分かるようになっている。
【0111】
また、調整開始ボタン232が選択されたときの調整開始時の時刻、故障の内容、対応している作業者等の情報が設備状態表示装置200に記録されるようになっている。そして、当該製造設備300から上位ホスト100に対して設備状態が調整中に変更されたことも通知される。これにより、当該製造設備300の設備状態が稼働率の計算に反映され、正確な稼働率が得られる。
【0112】
さらに、設備状態表示装置200が管理するエリア400の複数の製造設備300からそれぞれの故障が設備状態表示装置200に通知された場合や、上位ホスト100の設備状態変更部150から設備状態表示装置200に対して製造設備300の設備状態の故障が複数通知された場合には、図示しないが、設備状態表示装置200の画面201には故障情報表示部230が複数重複表示される。すなわち、故障を知らせる複数のポップアップ表示が画面201に重複表示される。これにより、作業者が稼働率や稼働率の目標値を参考にして、どの製造設備300を優先的に対処すべきかを判断することができる。
【0113】
図2に示される設備レイアウト情報部240は、設備状態表示部210に表示される各製造設備300の表示レイアウト(設備選択、配列)を管理するものである。この設備レイアウト情報部240には表示レイアウトを示す定義ファイルが格納されている。
【0114】
図17は、定義ファイルの一例を示した図である。この図に示される定義ファイルを編集することで、新規の製造設備300の追加、不要な製造設備300の削除、管理対象となる製造設備300の変更、製造設備300の移動等を表示に反映させることができる。これにより、設備状態表示部210の表示レイアウトを所望のレイアウトに変更することができる。
【0115】
以上が、製造ライン監視システムの全体構成である。なお、搬送設備に関しても、上位ホスト100と常に通信しており、製造設備とみなすことができるため、搬送設備からアラーム文字情報が通知された場合にも製造設備300と同様に扱うことができる。
【0116】
次に、設備状態表示部210に登録されている製造設備300において故障が発生した場合について説明する。図18は、上位ホスト100が製造設備300から故障を示すアラーム文字情報を受信した場合の処理内容を示したフローチャートである。
【0117】
まず、上位ホスト100において製造設備300から発生アラームの情報が含まれたアラーム文字情報が受信されると(ステップ701)、故障定義情報部130に当該発生アラームが登録されているか否かが判定される(ステップ702)。ここで、発生アラーム自体が故障定義情報部130に登録されていない場合は故障に関する事項ではないとして、上位ホスト100の処理は終了する。
【0118】
一方、発生アラームが故障定義情報部130に登録されている場合はこの発生アラームが故障扱いとするアラームとして登録されているか否かが判定される(ステップ703)。発生アラームが故障扱いとするアラームに登録されている場合、上位ホスト100の設備状態変更部150を介して「故障扱いアラーム」のポップアップを設備状態表示装置200の画面201上に表示する指示が出される(ステップ704)。これにより、設備状態表示装置200の画面201には故障を示す故障情報表示部230がポップアップ表示される。この様子を図19に示す。
【0119】
図19には故障扱いアラームのポップアップ例が示されている。この図に示されるように、設備状態表示部210には該当する製造設備300の情報として、エリア名、ライン名、設備名称、設備略称、日時、アラーム内容が表示される。また、故障を示すウィンドウであるので、調整開始ボタン232も表示される。そして、設備状態表示装置200に備え付けられているシグナルタワー202とスピーカ203によって作業者を呼ぶ。なお、設備状態表示部210にもシグナルタワー表示214が表示される。
【0120】
この後、上位ホスト100では設備状態変更部150において製造設備300の設備状態が“故障中”に変更される(ステップ705)。これにより、その旨が設備状態表示装置200にて反映される。また、故障定義情報部130では変更された設備状態に基づく稼働率の計算が行われる。こうして、上位ホスト100の処理は終了する。
【0121】
また、発生アラームが故障扱いとするアラームに登録されていない場合(ステップ703)、上位ホスト100の設備状態変更部150を介して「アラーム」のポップアップを設備状態表示装置200の画面201上に表示する指示が出される(ステップ706)。これにより、設備状態表示装置200の画面201にはアラームを示す故障情報表示部230がポップアップ表示される。この様子を図20に示す。なお、図20では故障情報表示部230のみを示している。
【0122】
図20に示されるように、故障情報表示部230には図19と同様に該当する製造設備300の情報が表示される。また、アラームを示すウィンドウであるので、調整開始ボタン232は表示されず、上位ホスト100の設備状態変更部150において製造設備300の設備状態は変更されない。設備状態表示装置200に備え付けられているシグナルタワー202とスピーカ203については動作しないが、動作させても良い。こうして、上位ホスト100の処理は終了する。
【0123】
上記では、各製造設備300からアラーム文字情報が出力される場合について説明したが、製造設備300が自ら設備状態を報告する場合についても同じ処理が行われる。
【0124】
続いて、製造設備300に故障が発生した場合の作業者の行動について、図21を参照して説明する。まず、上記のようにして製造設備300に異常(故障)が発生すると(ステップ707)、設備状態表示装置200のシグナルタワー202とスピーカ203が鳴動する(ステップ708)。作業者がこれに気づくと(ステップ709)、作業者が該当する設備状態表示装置200の位置まで移動する(ステップ710)。
【0125】
そして、作業者が故障した製造設備300とその異常内容を確認し、故障情報表示部230の調整開始ボタン232を押下する(ステップ711)。この後、作業者は製造設備300の復旧作業を開始する。
【0126】
上記のようにして製造設備300に異常が生じた場合、設備状態表示装置200にて管理されている製造設備300で発生した異常の情報(故障、アラーム)と作業者が調整開始した時刻が履歴として当該設備状態表示装置200に一定期間保存される。この履歴は、図22に示される設備アラーム一覧ウィンドウ205でいつでも表示することができる。これにより、過去の故障やアラームの内容、回数、調整時間等を故障の分析に利用することができる。
【0127】
次に、異常(故障)が発生した製造設備300に対して作業者が調整を行い、当該製造設備300に生じていた異常が解除された場合について、図23を参照して説明する。まず、製造設備300において設備状態の故障が解除される。これにより、製造設備300から故障が解除されたことを示すアラーム文字情報が出力される。
【0128】
上位ホスト100において製造設備300から解除アラームの情報が含まれたアラーム文字情報を受信すると(ステップ712)、故障定義情報部130に当該解除アラームが登録されているか否かが判定される(ステップ713)。そして、解除アラーム自体が故障定義情報部130に登録されていない場合は上位ホスト100の処理は終了する。
【0129】
一方、解除アラームが故障定義情報部130に登録されている場合、上位ホスト100の設備状態変更部150により当該製造設備300の設備状態が故障中となる前の設備状態に変更される(ステップ714)。また、故障定義情報部130では変更された設備状態に基づく稼働率の計算が行われ、その計算結果が設備状態表示装置200に反映される。こうして、上位ホスト100の処理は終了する。
【0130】
発明者らは、上記の製造ライン監視システムを導入する前と導入3ヶ月後とで、製造設備300に対する対応時間の変化について調べた。その結果を図24に示す。図24は、各エリア400(A〜G)において、導入前の対応時間を1とした場合の導入前の対応時間と導入3ヶ月後の対応時間との比を示している。ここでのエリア400とは、工場内で1人または複数の作業者が担当する設備群を表している。また、対応時間とは、製造設備300で故障または故障扱いアラームが発生してから作業者がアラームを解除するまでの平均時間である。
【0131】
図24のグラフから明白なように、本実施形態に係る製造ライン監視システムを導入することで、導入前よりも対応時間を飛躍的に短縮することができる。また、対応時間の短縮により、製造設備300の生産停止時間を削減することができ、その稼働率を飛躍的に向上できる。さらに、稼働率の向上は、二酸化炭素等の温室効果ガスの削減に繋がり、地球環境へも貢献できる。
【0132】
本発明によれば、製造業の生産工場において、複数の製造設備300を集中管理することができるようになることから、製造設備300の生産停止時間削減等の稼働率向上を実現しつつ、省人化も同時に実現することができ、特に自動化工場における導入効果は絶大である。
【0133】
以上説明したように、本実施形態では、上位ホスト100と各製造設備300とが常に通信しており、上位ホスト100は各製造設備300から報告されるアラーム文字情報に対する故障状態を製造設備300毎に故障定義情報部130に登録している。また、上位ホスト100は、製造設備300からアラーム文字情報が報告されたタイミングで故障定義情報部130に登録された故障状態を基に故障扱いとするか否かを判定し、アラーム文字情報の内容が故障扱いアラームであると判定した場合には製造設備300からの設備状態の通知が故障でなくても上位ホスト100側が設備状態を故障扱いとすることが特徴となっている。
【0134】
このように、上位ホスト100の故障定義情報部130は各製造設備300から報告されたアラーム文字情報を予め登録された故障状態と照合しているので、製造設備300から報告されたアラーム文字情報が故障ではなくアラームを示すものであっても、その製造設備300を故障扱いとすることができる。また、故障定義情報部130が判定した各製造設備300の設備状態に基づく稼働率を算出しているので、各製造設備300の正確な稼働率をそれぞれ把握することができる。
【0135】
そして、複数の製造設備300から同時期にアラームが報告されたときに、作業者がどちらの製造設備300を優先的に対処するべきかの判断ができないという問題に対しては、設備状態表示部210と稼働率表示部220とを1つの画面201に並列表示している。これにより、稼働率が目標値に達していない製造設備300をリアルタイムに誰でも簡単に把握できるので、製造設備300が故障した際の深刻度が一目でわかり、製造設備300の故障への速やかな対応が可能となる。したがって、作業者はどの製造設備300を優先的に対処するべきかを判断することができる。
【0136】
また、各製造設備300の設備状態をそれぞれ表示し、またアラームの発生日時も表示しているので、複数の製造設備300でアラームが報告されたときに、どの製造設備300を優先的に対処するべきかを判断できるようにすることができる。
【0137】
さらに、製品ロットの処理とは直接関係のない製造設備300の異常や稼働状況(稼働率)も把握することをできるようにすることで、チョコ停への対応時間を減らすことができる。
【0138】
(他の実施形態)
上記実施形態で示された製造ライン監視システムの構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明の特徴を含んだ他の構成とすることもできる。例えば、製造設備300は半導体(ウエハ)等のデバイスを製造(試作を含む)する場合に限定されるものではなく、他の製品を製造するものでも構わない。したがって、上記の製造ライン監視システムは製造業の生産工場全般に渡り有効である。
【符号の説明】
【0139】
100 上位ホスト
110 設備異常検出部
120 アラーム記憶データベース
130 故障定義情報部
140 稼働率データベース
150 設備状態変更部
200 設備状態表示装置
201 画面
210 設備状態表示部
220 稼働率表示部
230 故障情報表示部
240 設備レイアウト情報部
300 製造設備
400 エリア
500 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造するための複数の製造設備(300)と、前記複数の製造設備(300)の設備状態および稼働率をそれぞれ取得する上位ホスト(100)と、前記上位ホスト(100)が取得した前記設備状態および稼働率をそれぞれ表示する設備状態表示装置(200)と、を備えて構成されており、
前記複数の製造設備(300)は、前記上位ホスト(100)に報告すべき事項をアラーム文字情報としてそれぞれ出力し、
前記上位ホスト(100)は、
前記複数の製造設備(300)から出力されるアラーム文字情報を検出する設備異常検出部(110)と、
前記アラーム文字情報に応じた故障状態が前記複数の製造設備(300)毎に予め登録されており、前記設備異常検出部(110)にて検出されたアラーム文字情報とこのアラーム文字情報を出力した製造設備(300)に対応した故障状態とを比較することにより前記アラーム文字情報を出力した製造設備(300)の故障状態を特定すると共に、特定した故障状態に基づく当該製造設備(300)の稼働率を取得し、前記特定した故障状態および前記取得した稼働率を出力する故障定義情報部(130)と、
前記故障定義情報部(130)にて特定された故障状態に従って前記アラーム文字情報が出力された製造設備(300)の設備状態を設定すると共に、設定した設備状態と当該製造設備(300)の稼働率とを含んだ設備状態変更情報を前記設備状態表示装置(200)に出力する設備状態変更部(150)と、を備え、
前記設備状態表示装置(200)は、前記設備状態変更部(150)から通知される設備状態変更情報に基づいて前記複数の製造設備(300)の設備状態をそれぞれ表示する設備状態表示部(210)を備えていることを特徴とする製造ライン監視システム。
【請求項2】
製品を製造するための複数の製造設備(300)と、前記複数の製造設備(300)の設備状態および稼働率をそれぞれ取得する上位ホスト(100)と、前記上位ホスト(100)が取得した前記設備状態および稼働率をそれぞれ表示する設備状態表示装置(200)と、を備えて構成されており、
前記複数の製造設備(300)は、前記上位ホスト(100)に報告すべき事項をアラーム文字情報としてそれぞれ出力し、
前記上位ホスト(100)は、
前記複数の製造設備(300)から出力されるアラーム文字情報を検出する設備異常検出部(110)と、
前記アラーム文字情報に応じた故障状態が前記複数の製造設備(300)毎に予め登録されており、前記設備異常検出部(110)にて検出されたアラーム文字情報とこのアラーム文字情報を出力した製造設備(300)に対応した故障状態とを比較することにより前記アラーム文字情報を出力した製造設備(300)の故障状態を特定すると共に、特定した故障状態に基づく当該製造設備(300)の稼働率を取得し、前記特定した故障状態および前記取得した稼働率を出力する故障定義情報部(130)と、
前記故障定義情報部(130)にて特定された故障状態に従って前記アラーム文字情報が出力された製造設備(300)の設備状態を設定すると共に、設定した設備状態と当該製造設備(300)の稼働率とを含んだ設備状態変更情報を前記設備状態表示装置(200)に出力する設備状態変更部(150)と、を備え、
前記設備状態表示装置(200)は、前記設備状態変更部(150)から通知される設備状態変更情報に基づいて前記複数の製造設備(300)の設備状態をそれぞれ表示する設備状態表示部(210)と、前記複数の製造設備(300)の稼働率をそれぞれ表示する稼働率表示部(220)と、を備えていることを特徴とする製造ライン監視システム。
【請求項3】
前記設備状態表示装置(200)は、1つの画面(201)に前記設備状態表示部(210)と前記稼働率表示部(220)とを並列表示することを特徴とする請求項2に記載の製造ライン監視システム。
【請求項4】
前記稼働率は、現在時刻から過去24時間において前記製造設備(300)が実際に稼働していた時間の割合であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項5】
前記設備状態表示装置(200)は故障情報表示部(230)を備えており、前記設備状態変更部(150)から製造設備(300)の設備状態の故障が通知された場合に前記故障情報表示部(230)を前記設備状態表示装置(200)の画面(201)にポップアップ表示すると共に前記故障情報表示部(230)に故障した製造設備(300)の情報を表示することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項6】
前記故障情報表示部(230)には調整開始ボタン(232)が備えられており、この調整開始ボタン(232)が操作されると前記故障した製造設備(300)の設備状態が調整中の状態に変更され、前記故障情報表示部(230)は前記設備状態表示装置(200)の画面(201)から消去されると共に少なくとも調整開始時の時刻および故障の内容が前記設備状態表示装置(200)に記録されるようになっていることを特徴とする請求項5に記載の製造ライン監視システム。
【請求項7】
前記設備状態表示装置(200)に対して製造設備(300)の設備状態の故障が複数通知された場合、前記画面(201)には前記故障情報表示部(230)が複数重複表示されることを特徴とする請求項5または6に記載の製造ライン監視システム。
【請求項8】
前記設備状態表示部(210)には、前記複数の製造設備(300)が一覧表示されていると共に、強調表示として、前記複数の製造設備(300)のそれぞれの設備状態を示す設備状態表示(212)がなされることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項9】
前記設備状態表示部(210)には、前記複数の製造設備(300)が一覧表示されていると共に、強調表示として、ネックとなる製造設備(300)を示すネック表示(213d)がなされることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項10】
前記設備状態表示部(210)には、前記複数の製造設備(300)が一覧表示されていると共に、強調表示として、前記複数の製造設備(300)の稼動モードを示す稼動モード表示(213a)がなされることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項11】
前記設備状態表示部(210)には、前記複数の製造設備(300)が一覧表示されていると共に、強調表示として、前記複数の製造設備(300)を所定の製造設備(300)毎にグループ化したライン(500)を枠線(211a)で囲んだライン表示(211b)がなされることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項12】
前記設備状態表示部(210)には、前記複数の製造設備(300)が一覧表示されていると共に、強調表示として、ポートとして使用できない製造設備(300)を示すポート状態表示(213b)がなされることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項13】
前記設備状態表示部(210)には、前記複数の製造設備(300)が一覧表示されていると共に、強調表示として、チャンバとして使用できない製造設備(300)を示すチャンバ状態表示(213c)がなされることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項14】
前記稼働率表示部(220)では、前記複数の製造設備(300)の稼働率による並び替え表示がなされていることを特徴とする請求項2ないし13のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項15】
前記稼働率表示部(220)では、稼働率の目標値を下回っている製造設備(300)の強調表示がなされていることを特徴とする請求項2ないし14のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項16】
前記複数の製造設備(300)は、前記上位ホスト(100)の設備異常検出部(110)に対して自己の設備状態をそれぞれ報告し、
前記設備状態変更部(150)は、前記設備異常検出部(110)に対する前記複数の製造設備(300)のそれぞれの報告に従って前記複数の製造設備(300)毎に設備状態を変更し、
前記故障定義情報部(130)は、前記設備状態変更部(150)で生産の目的で使用しない設備状態に変更された製造設備(300)については、稼働率の計算から外すことを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項17】
前記設備状態変更部(150)は、前記設備異常検出部(110)に対して前記複数の製造設備(300)のうちのいずれかから応答がないことを検出し、前記応答がない製造設備(300)の設備状態を設備停止に変更することを特徴とする請求項16に記載の製造ライン監視システム。
【請求項18】
前記設備状態表示部(210)には、前記製造設備(300)の設備状態を示すシグナルタワー表示(214)がなされることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項19】
前記設備状態表示装置(200)は、前記複数の製造設備(300)毎に複数設けられていると共に、スピーカ(203)をそれぞれ備え、
前記複数の製造設備(300)の1つの集まりをエリア(400)とすると、前記複数の設備状態表示装置(200)は前記エリア(400)毎に異なるブザー音を鳴らすことを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項20】
前記上位ホスト(100)は、前記設備異常検出部(110)にて検出されたアラーム文字情報の履歴を保存するアラーム記憶データベース(120)を備えていることを特徴とする請求項1ないし19のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項21】
前記設備状態表示装置(200)は、前記設備状態表示部(210)に表示される製造設備(300)の表示レイアウトを変更するための設備レイアウト情報部(240)を備えていることを特徴とする請求項1ないし20のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項22】
前記設備状態表示装置(200)の画面(201)にはマウスのカーソル(204)が表示されるようになっており、
前記設備状態表示部(210)に表示されている製造設備(300)を示す表示マークの上に前記カーソル(204)が配置されると、少なくとも、前記カーソル(204)が配置された製造設備(300)の正式名称と当該製造設備(300)の配置位置を示す座標の数値とがポップアップ表示されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし21のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項23】
前記稼働率表示部(220)にはグラフボタン(226)が備えられており、このグラフボタン(226)が操作されると、前記設備状態表示装置(200)の画面(201)に前記稼働率のグラフが表示されることを特徴とする請求項2ないし22のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項24】
前記稼働率のグラフには、前日までの各日においては0時から23時59分までに前記製造設備(300)が実際に稼働していた時間の割合が前記稼働率としてそれぞれ表示され、当日においては前記グラフボタン(226)が操作された現在時刻から過去24時間において前記製造設備(300)が実際に稼働していた時間の割合が前記稼働率として表示されることを特徴とする請求項23に記載の製造ライン監視システム。
【請求項25】
前記上位ホスト(100)は、前記複数の製造設備(300)それぞれの稼働率のデータを保存するための稼働率データベース(140)を備え、
前記稼働率データベース(140)に保存された過去から現在までの稼働率のデータがCSV形式のデータとしてダウンロード可能であることを特徴とする請求項1ないし24のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。
【請求項26】
前記複数の製造設備(300)の1つの集まりがエリア(400)とされ、前記設備状態表示装置(200)は前記エリア(400)毎に複数設けられており、
前記設備状態表示部(210)はエリア外調整ボタン(216)を備え、前記エリア外調整ボタン(216)が操作されると、当該設備状態表示部(210)を備えた設備状態表示装置(200)に対応するエリア(400)とは異なるエリア(400)に対応する設備状態表示装置(200)の情報が呼び出されると共に当該異なるエリア(400)に対応する設備状態表示装置(200)の操作が可能になることを特徴とする請求項1ないし25のいずれか1つに記載の製造ライン監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−160056(P2012−160056A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19732(P2011−19732)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】