説明

製造物、製造物位置決め方法、認識マーク判別方法および製造物位置決めプログラム

【課題】製造設備や認識マークの特性が相違しても認識マークを信頼性よく読み取る製造物、製造物位置決め方法、認識マーク判別方法および製造物位置決めプログラムを得る。
【解決手段】製造物位置決め方法20の認識マーク読取ステップ21では、製造物の読取面に互いに近接配置され、認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る。読み取った認識マークに応じて、製造物の種類を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の製造物および製造物を製造または加工する際の製造物位置決め方法、認識マーク判別方法および製造物位置決めプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に限らず、各種の工業的な製造工程で製造あるいは加工される物としての製造物は、製造あるいは加工の過程でこれらの処理を行う装置との正確な位置決めが必要とされる場合が多い。このため、製造物には予め、あるいは製造工程の途中で、光学的な認識マークが付けられ、この認識マークを用いて製造上の位置決めを行うことが多い。
【0003】
認識マークは、一般にその周囲の反射光の強度差を読取装置で光学的に読み取ることで認識されるものである。ところが、認識マークはすべての製造物で共通した同一の光学的な特性を持っているものではない。製造物によって認識マークを構成する材料や、色、反射率等の光学的な特性が異なる。このため、ある読取装置にとっては、「A」という認識マークの読み取りが良好に行えても、「B」という他の認識マークの読み取りがうまく行えない場合がある。反対に、読取装置を変えると、今度は「B」という認識マークの読み取りは良好に行われ、「A」という認識マークの読み取りがうまく行えないという場合もある。
【0004】
そこで認識マークのコントラストを上げて認識の度合いを高めることが本発明の関連技術として提案されている(たとえば特許文献1参照)。この関連技術では、マスク上に形成されたマスクマークと、プリント基板を載置する基板ステージに設けられた基準部材上に形成された基準マークとを照明ビームで照明する。そして、これら2種類のマークから発生したビームを観察系を用いて観察するようにしている。
【0005】
ところで、近年、プリント基板の製造技術では、様々な特性を有するマスクが用いられるようになっている。これによりマスクの種類によっては、マスクマークから発生するビームの強度が弱くなり、マスクマークの像を十分なコントラストで観察できない場合がある。そこで、この関連技術では基板ステージに照明ビームに対する特性が互いに異なる複数の基準マークを配置している。そして、観察視野内に位置決めする基準マークを複数の中から選択することで、マスクマークの像と基準マークの両者のビームの強さの差を拡大させる。これにより高いコントラストでマスクマークの観察が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表特許 WO2002/049083(公報第7ページ第14行目〜第8ページ第9行目)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この関連技術では、製造物に1種類のマスクマークを形成し、この製造物を複数の基準マークを設けたステージに載置して、両者の位置関係を設定する。ところが、製造設備によっては製造設備本体に位置的に固定された読取部が、移動可能な製造物上に形成された認識マークを単独で認識して、製造設備本体に対する位置決めを行うことも多い。このような製造設備の場合には、製造設備本体との位置関係が既知となった処理部を用いて製造物に対して処理を行うので、読取部は処理部と製造物の双方の位置変動を考慮する必要がない。したがって、このような製造設備に対して、2種類のマークの間のコントラストを上げる技術を用いて認識マークの認識率を向上させることはできない。
【0008】
この一方で、製造物の製造あるいは加工に使用される製造設備は国内あるいは外国の各地で各種のものが使用されるようになってきている。このため、同一種類の製造物であっても、取り扱う製造設備が異なると、位置決めや製造物自体の種類を判別するために使用する認識マークの読み取りが安定しないという問題が発生している。これは、読取部の光学的な特性が異なったり、読み取り時に製造物に照射する光源の照射条件が異なることが製造設備側の原因として考えられている。また、製造物が同一の場合でも、認識マークを形成する材料や表面の状態が異なって、光の反射具合や反射光の波長特性が異なる場合があり、これが製造物側の原因として考えられている。
【0009】
このような原因による認識マークの読み取り不良に対して、製造設備に対応して認識マークを変更することも考えられる。しかしながら、認識マークを変更することは製造物自体の設計を変更する必要が生じる場合もあり、現実的ではない。また、認識マークを変更しても、新たな製造設備が登場すればこれに対して良好な認識を行える保証はない。
【0010】
そこで本発明の目的は、製造設備や認識マークの特性が相違しても認識マークを信頼性よく読み取ることが可能な製造物、認識マーク判別方法、製造物位置決め方法および製造物位置決めプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、製造物が、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性をそれぞれ相違させた認識マークを、光学的に検出可能な面上に複数互いに近接するように配置したことを特徴としている。
【0012】
また、本発明では、(イ)製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る認識マーク読取ステップと、(ロ)この認識マーク読取ステップで読み取った認識マークの前記した製造物上における予め定めた位置情報を基準にして前記した製造物上の任意の位置を判別する位置判別ステップとを製造物位置決め方法が具備する。
【0013】
更に本発明では、(イ)製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る認識マーク読取ステップと、(ロ)この認識マーク読取ステップで読み取った認識マークに応じて、その製造物の種類を判別する種類判別ステップとを認識マーク判別方法が具備する。
【0014】
また、本発明では、製造物位置決めプログラムとして、コンピュータに、(イ)製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る認識マーク読取処理と、(ロ)この認識マーク読取処理で読み取った認識マークの前記した製造物上における予め定めた位置情報を基準にして前記した製造物上の任意の位置を判別する位置判別処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、製造物の光学的な読取面に認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークを配置するので、異なった光学性能を有する製造設備が共通の製造物を製造することができる。また、製造物によっては加工条件の違いによって認識情報の形成の具合にバラツキが発生したり、加工ミスによって一部の認識マークが欠損する場合がある。このような場合でも異なった光学特性の認識マークが同一の製造物に存在するので、その判読が可能になる可能性が高くなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造物のクレーム対応図である。
【図2】本発明の製造物位置決め方法のクレーム対応図である。
【図3】本発明の認識マーク判別方法のクレーム対応図である。
【図4】本発明の製造物位置決めプログラムのクレーム対応図である。
【図5】本発明の実施の形態による製造設備と製造物の位置関係を表わした説明図である。
【図6】本実施の形態における製造設備の回路構成の概要を表わしたブロック図である。
【図7】本実施の形態の製造物の一部についてその上面を拡大した平面図である。
【図8】本実施の形態で認識マークの中心位置を通るX軸と平行な直線でプリント基板を板面に垂直に切断したときの第1の認識マークの断面構造を表わした断面図である。
【図9】本実施の形態で認識マークの中心位置を通るX軸と平行な直線でプリント基板を板面に垂直に切断したときの第2の認識マークの断面構造を表わした断面図である。
【図10】本実施の形態の製造設備におけるプリント基板の制御の様子を表わした流れ図である。
【図11】本実施の形態のプリント基板における先端位置と、目的とする認識マークの撮影位置の関係を示した説明図である。
【図12】本実施の形態のプリント基板上に4種類の認識マークを形成する可能性を示した平面図である。
【図13】図12で示した4つの認識マークのうちの3つを用いて認識マーク部を構成した変形例を示す製造物の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の製造物のクレーム対応図を示したものである。本発明の製造物10は、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性をそれぞれ相違させた認識マーク111、112、……11nを、光学的に検出可能な面12上に複数互いに近接するように配置している。
【0018】
図2は、本発明の製造物位置決め方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の製造物位置決め方法20は、認識マーク読取ステップ21と、位置判別ステップ22とを備えている。ここで、認識マーク読取ステップ21では、製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る。位置判別ステップ22では、この認識マーク読取ステップ21で読み取った認識マークの前記した製造物上における予め定めた位置情報を基準にして前記した製造物上の任意の位置を判別する。
【0019】
図3は、本発明の認識マーク判別方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の認識マーク判別方法30は、認識マーク読取ステップ31と、種類判別ステップ32とを備えている。ここで、認識マーク読取ステップ31では、製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る。種類判別ステップ32では、この認識マーク読取ステップ31で読み取った認識マークに応じて、その製造物の種類を判別する。
【0020】
図4は、本発明の製造物位置決めプログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の製造物位置決めプログラム40は、コンピュータに、認識マーク読取処理41と、位置判別処理42とを実行させるようにしている。ここで、認識マーク読取処理41では、製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る。位置判別処理42では、この認識マーク読取処理41で読み取った認識マークの前記した製造物上における予め定めた位置情報を基準にして前記した製造物上の任意の位置を判別する。
【0021】
<発明の第1の実施の形態>
【0022】
次に本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0023】
図5は、本発明の実施の形態による製造設備と製造物の位置関係を表わしたものである。製造設備100は、図示しない不動部材によって空間的に位置を固定された製造設備本体101を備えている。製造設備本体101には、読取部102と処理部103がこれらの位置関係が固定されるように取り付けられている。読取部102と処理部103は、これらの直下に配置されたベルトコンベア等の移動機構部104と所定の間隔を保っている。製造設備100は、以上説明した製造設備本体101、読取部102、処理部103および移動機構部104を備えている。
【0024】
移動機構部104上には製造物111が載置されるようになっている。製造物111にはその上面に認識マーク部112が形成されている。認識マーク部112は、製造物111の上面における予め定めた位置に配置されている。移動機構部104によって製造物111がたとえば矢印方向113に適宜の量だけ移動した結果として、読取部102が製造物111上の認識マーク部112を認識したとする。すると、製造設備100はこの時点における製造設備本体101に対する製造物111の位置関係を把握することができる。そこで、この時点で移動機構部104をたとえば静止させて、製造設備本体101に取り付けられた処理部103が製造物111の所望の位置に図示しない部品を取り付ける等の処理を行うことができる。
【0025】
図6は、本実施の形態における製造設備の回路構成の概要を表わしたものである。図5と共に説明する。
【0026】
製造設備100は、CPU(Central Processing Unit)121と、このCPU121が実行する制御プログラムをその一部に格納するメモリ122とを備えた主制御部123を有している。主制御部123は、データバス等のバス124を介して製造設備100内の各部と接続されており、これらの制御を行うようになっている。ただし、これら各部の少なくとも一部は、CPU121が制御プログラムを実行することでソフトウェア的に構成されるようになっていてもよい。
【0027】
このうち読取部102は、製造物111に形成された認識マーク部112に焦点を合わせてその光学像を読み取るための光学系125を備えている。光学系125の焦点位置には、二次元イメージセンサ等の読取素子126が配置されている。読取素子126が読み取った画像信号は画像処理部127で処理される。光源128は、認識マーク部112を照明する。装置ID(Identification)格納部129は、読取部102の光学特性に対応づけられた識別子としての装置IDを格納している。装置IDは、後に説明するように認識マーク部112を構成する複数の認識マークのいずれを読み取るかを決定するようになっている。
【0028】
位置判別部131は、読取部102から得られた画像処理後の画像信号と装置ID格納部129から得られた装置IDを基にして特定の認識マークの位置を判別する。位置判別部131内には判別テーブル132が備えられている。判別テーブル132には、後に説明するように、認識マーク部112を構成する複数の認識マークのそれぞれの中心位置に対応する位置データが格納されている。
【0029】
移動機構制御部133は、移動機構部104の移動を制御する。移動機構部104は製造設備本体101に取り付けられている。したがって、移動機構部104を構成する図示しないモータの回転数やギアの回転角あるいは回転方向を検出することにより移動機構部104の移動量等の移動の様子は移動機構制御部133によって正確に測定することができる。
【0030】
処理部103は、位置情報受信部135と、移動機構指示部136および処理機構部137を備えている。位置情報受信部135は製造設備100に対する製造物111の処理面の現在位置を示す位置情報を受信する。移動機構指示部136は処理機構部137と連携して移動機構部104上の製造物111の処理面が所望の位置で一時的に停止して加工等の処理を受けるように移動位置の指示を行う。処理機構部137は、製造物111の所望の位置に対する各種の処理を行う。
【0031】
先端検知部138は、移動機構部104上を移動する製造物111が読取部102の手前まで移動してきたとき、その先端を検知する。この検知は、図示しないマイクロスイッチを用いて機械的に行ってもよい。また、図示しない光センサを移動機構部104の移動経路上の所定位置を挟むように配置して、製造物111が光路を遮断したときにその先端位置を検知してもよい。もちろん、読取素子126を使用して画像処理部127が出力する画像信号を解析して製造物111の先端の到来を検知してもよい。あるいは磁気センサ等の他のセンサを用いて検知することも可能である。検知における位置の精度は高い必要がない。検知結果を基にして、認識マーク部112を構成する複数の認識マークのうちの所望のマークの存在場所を特定できる位置精度で十分である。
【0032】
図7は、製造物の一部についてその上面を拡大したものである。図5および図6と共に説明する。なお、製造物の一例として、プリント基板111Pを例に挙げて具体的に説明する。
【0033】
プリント基板111Pの上面には、認識マーク部112が配置されている。本実施の形態で、認識マーク部112には第1の認識マーク141と第2の認識マーク142の2つの認識マークが形成されている。第1の認識マーク141と第2の認識マーク142のそれぞれの中心位置は、プリント基板111Pの図で左上の角を示す位置143を座標の原点(0,0)としたとき、予め定めた座標位置(X1,Y1)、(X2,Y2)に設定されている。本実施の形態でY軸方向の座標位置Y1,Y2は等しくなっている。したがって、第1の認識マーク141の中心座標位置は(X1,Y1)であり、第2の認識マーク142の中心座標位置は(X2,Y1)である。もちろん、Y軸方向の座標位置Y1,Y2が互いに異なるものであってもよい。
【0034】
認識マーク部112を光源128で均一な照度で照射したとする。このとき、第1の認識マーク141は、一番目に明るい第1の濃度D1の矩形状の背景領域145の中心に三番目に明るい第3の濃度D3の円形領域146が配置された光学像を生じさせる。第2の認識マーク142は、二番目に明るい第2の濃度D2の矩形状の背景領域147の中心に一番暗い(四番目に明るい)第4の濃度D4の円形領域148が配置された光学像を生じさせる。本実施の形態では、第1の認識マーク141と第2の認識マーク142の矩形のサイズは共に等しくなっており、2つの円形領域146、148の直径は共に等しく、矩形の一辺の長さのそれぞれ3分の1となっているものとする。もちろん、2つの円形領域146、148の直径と矩形の一辺の長さの比率は、これに限るものではない。
【0035】
図8は、図7で示した認識マークの中心位置を通るX軸と平行な直線でプリント基板を板面に垂直に切断したときの第1の認識マーク周辺の断面構造を表わしたものである。図6および図7と共に説明する。
【0036】
プリント基板111Pの表面には、導体151によるパターンが形成されており、第1の認識マーク141に相当する領域以外の領域では表面処理材152の層が表面に塗布されている。第1の認識マーク141に相当する領域では、表面処理材152が塗布されていない。
【0037】
このため、第1の認識マーク141における円形領域146に相当する領域では、光源128による導体151の反射光が読取素子126に入射し、三番目に明るい第3の濃度D3を認識させる。また、第1の認識マーク141における背景領域145では、光源128による基板表面の反射光が読取素子126に入射し、一番目に明るい第1の濃度D1を認識させる。
【0038】
図9は、図7で示した認識マークの中心位置を通るX軸と平行な直線でプリント基板を板面に垂直に切断したときの第2の認識マーク周辺の断面構造を表わしたものである。図6および図7と共に説明する。
【0039】
プリント基板111Pの表面には、図8と同様に導体151によるパターンが形成されている。第2の認識マーク142の場合には、その全域の表面に表面処理材152の層が塗布されている。第2の認識マーク142における導体151自体のパターンは、第1の認識マーク141と変わらない。
【0040】
この結果、第2の認識マーク142の場合には、円形領域148に相当する領域で、光源128による表面処理材152および導体151の反射光が読取素子126に入射し、一番暗い(四番目に明るい)第4の濃度D4を認識させる。また、第2の認識マーク142における背景領域147では、光源128による表面処理材152の反射光が読取素子126に入射し、二番目に明るい第2の濃度D2を認識させる。
【0041】
もちろん、本実施の形態では1つの製造設備100が第1の認識マーク141と第2の認識マーク142の2種類のマークを位置決めのために使用するのではない。装置ID格納部129に格納された装置IDを用いて、第1の認識マーク141と第2の認識マーク142のいずれを使用するかを選択する。そして、プリント基板111Pの表面における認識マーク141または142の中心位置の座標位置を算出する。この後は、処理部103が処理を行う位置を、認識マーク141または142の中心位置の座標との関係で求めることができる。
【0042】
図10は、本実施の形態の製造設備におけるプリント基板の制御の様子を表わしたものである。図5〜図9と共に説明する。
【0043】
製造設備100の図示しない電源が投入されると、主制御部123が移動機構制御部133に指示を与えて移動機構部104の移動が開始する(ステップS201)。これと共に、移動機構部104上に間隔を置いて配置された製造物としてのプリント基板111Pが順にX軸方向に移動して読取部102の方向に近付く。主制御部123は移動機構部104が移動している状態で、先端検知部138がプリント基板111Pの先端を検知するのを待機している。先端検知部138がプリント基板111Pの先端を検知すると(ステップS202:Y)、移動機構制御部133は所定の距離だけ移動機構部104を更に移動させて停止する(ステップS203)。先端検知部138の検知後に移動する距離は、認識マーク部112におけるこの製造設備100が読み取りの対象とする認識マーク141または142が読取部102によって撮影可能とする位置まで移動するおおよその距離に相当する。具体的には、移動機構部104の移動速度と、装置ID格納部129に格納された装置IDによって特定される認識マーク141または142がプリント基板111Pの先端から離れたおおよその距離を基にして、ステップS203による移動距離が算出される。
【0044】
図11は、プリント基板における先端位置と、目的とする認識マークの撮影位置の関係を示したものである。図5〜図7と共に説明する。
【0045】
個々のプリント基板111Pは、比較的広い基板面に導体パターンを一括して形成し、この基板面を幾つかに分割するように切断して製造する場合がある。このような場合、切断時に生じる位置誤差によって、切断後のプリント基板111Pの先端位置161は、基板面に形成された回路を構成する導体パターンの位置と正確には一致しない。個々の基板に対して導体パターンを後に形成する場合にも、プリント基板111Pの先端位置161と、実際に形成された導体パターンの位置が製造する装置が異なることで不揃いとなる場合もある。
【0046】
本実施の形態の認識マーク部112を構成する第1の認識マーク141と第2の認識マーク142は、回路を構成する導体パターンと共に同一プロセスで基板上に形成される。したがって、第1の認識マーク141と第2の認識マーク142のいずれかを基準として位置決めを行えば、プリント基板111Pにおける導体パターン形成領域162内の各部で処理機構部137が正確な処理位置で処理を行うことができる。
【0047】
本実施の形態では、第1の認識マーク141と第2の認識マーク142のそれぞれの部位の反射特性が異なっている。読取部102の読取特性も製造設備100によって異なっている可能性がある。そこで、既に説明したように読取部102が正確な座標位置を定めることができるように、装置ID格納部129に格納された装置IDを用いて、第1の認識マーク141と第2の認識マーク142のいずれを使用するかを選択するようにしている。選択した認識マーク141または142でプリント基板111Pの先端位置161からの距離が異なるので、判別テーブル132を用いて基準位置の補正を行う。
【0048】
なお、ステップS203による移動距離の算出および撮影位置までの追加的な移動は、製造設備100における読取部102と先端検知部138の配置関係を工夫することで、省略することができる。すなわち、たとえば、ある製造設備100が第2の認識マーク142を基にして導体パターン形成領域162内の位置決めを行うとする。この場合には、プリント基板111Pの先端位置161と第2の認識マーク142の中心位置までの距離と、先端検知部138の配置位置と読取部102の読み取りの中心位置をほぼ等しく設定しておけばよい。これにより、プリント基板111Pの先端位置161を先端検知部138が検知した時点で第2の認識マーク142の中心位置が読取部102のほぼ直下の位置になる。
【0049】
また、プリント基板111Pが図7のY軸方向に移動するとした場合、第1の認識マーク141と第2の認識マーク142はプリント基板111Pの先端位置161からほぼ同一距離となる。したがって、この場合には読取部102がいずれの認識マークを読み取るかによる移動方向の移動量の制御は原則として不要になる。また、先端検知部138の検知位置と読取部の読み取りのY軸方向における中心位置までの距離を適宜調整しておくことで、先端検知部138の検知した時点で認識マーク部112の撮影が可能である。ただし、プリント基板111PがY軸方向に移動する場合には、読取部102を読取対象の認識マーク141または142に応じてX軸方向に移動させるか、撮影した画像から必要な画像領域を特定する処理が必要となる。
【0050】
図10に戻ってプリント基板111PがX軸方向に移動する場合の処理の説明を続ける。なお、図11も用いて説明する。読取部102のほぼ直下の位置に読取対象となるマークとして第2の認識マーク142が位置したとする。この時点で主制御部123は読取部102を制御して光源128からの光を認識マーク部112に照射して読取素子126による画像の読み取りを行わせる(ステップS204)。画像処理部127は画像処理後の画像信号を位置判別部131に送って、ここで第2の認識マーク142の中心位置が特定される(ステップS205)。具体的には一番暗い(四番目に明るい)第4の濃度D4の円形領域148が判別されて、その円の中心位置が特定される。
【0051】
位置判別部131は次に判別テーブル132から装置IDをキーとして第2の認識マーク142の中心位置に関する位置データを取得する。そしてこの位置データと移動機構部104上のプリント基板111Pの現在位置のずれ量との画像上での比較から、図11に示した導体パターン形成領域162における現在位置の位置情報を算出する(ステップS206)。そして、この導体パターン形成領域162における現在位置の位置情報を処理部103に供給する(ステップS207)。
【0052】
処理部103は位置情報受信部135で導体パターン形成領域162における現在位置の位置情報を受信する。移動機構指示部136は、今から処理を行う部位の位置座標との関係で、プリント基板111Pのパターン面を処理に適した座標位置に移動させる指示を移動機構制御部133に与えて、移動機構部104を移動させる(ステップS208)。これにより、処理機構部137がプリント基板111Pの特定位置で処理を実行する(ステップS209)。
【0053】
もちろん、処理機構部137が移動自在なアームを備えているような場合には、移動機構部104を移動させる代わりに、アーム側で導体パターン形成領域162における位置調整を行うことができる。また、ステップS207では第2の認識マーク142の中心位置にまでプリント基板111Pを移動させずに、位置ずれを補正する形で移動制御を行ったが、これに限るものではない。たとえば、第2の認識マーク142の中心位置が読取部102の直下となるように一度位置決めを行った後に、処理機構部137の処理に適する位置まで必要に応じてプリント基板111Pを移動させるようにしてもよい。
【0054】
ステップS209による所定位置での処理機構部137の処理が終了したら、同一のプリント基板111Pに対する処理のための他の位置への移動が必要であるかの判別が行われる(ステップS210)。このような移動が必要とされる場合には(Y)、ステップS208に戻って移動が行われ、処理機構部137による処理が行われる(ステップS209)。
【0055】
これに対して、処理機構部137による処理が終了したと判別された場合には(ステップS210:N)、後続のプリント基板111Pについての処理が必要であるかのチェックが行われる(ステップS211)。後続のプリント基板111Pについての処理が必要な場合には(Y)、ステップS201に処理が戻る。後続のプリント基板111Pについての処理が不要な場合には(ステップS211:N)、移動機構部104を移動させてプリント基板111Pを製造設備100から排出して(ステップS212)、処理を終了する(エンド)。
【0056】
以上説明した本実施の形態では、認識マーク部112に位置決めを行うために読取特性の異なる第1の認識マーク141と第2の認識マーク142の2つの認識マークを形成することにした。これにより、たとえば光の反射が強い第1の認識マーク141と光の反射が弱い第2の認識マーク142が存在したような場合、製造設備100側の読取特性によって都合のよいマークの方を選ぶことができ、認識精度の向上を簡単に図ることができる。これにより、認識マーク141、142として特別の工程を必要とするものに変更したり、特別の材料を使用する必要がなく、製造物111自体を安価に製造することができる。
【0057】
また、製造設備100が複数種類のプリント基板等の製造物111を取り扱うとき、その製造物111の認識マーク部112の光学的な特性に応じて読取部102の認識性能を調整することが不要になる。また、製造設備100を交換したり、他の場所に設置されている製造設備100に製造物111の処理先を変更したような場合にも、同一の認識マーク部112を使用して処理が可能になる。
【0058】
<発明の変形可能性>
【0059】
図12は、プリント基板上に4種類の認識マークを形成する場合のマーク構成部品の選択の様子を示したものである。同図(A)の認識マークは、図8に示した第1の認識マーク141であり、矩形状の背景領域145は基板表面が露出している。また、中心の円形領域146は導体パターンを構成する導体が露出している。第1の認識マーク141以外の領域には、表面処理材152の層が表面に塗布されている。
【0060】
同図(B)の認識マークは、図9に示した第2の認識マーク142であり、矩形状の背景領域147と円形領域148は、第1の認識マーク141の上に表面処理材152の層を全面塗布して形成している。これにより、第2の認識マーク142は第1の認識マーク141よりも表面処理材152の存在による反射率の減少分だけ濃度が全体的に高くなっている。
【0061】
同図(C)の認識マーク301は、矩形状の背景領域302を導体パターンを構成する導体で構成している。また、中心の円形領域303は基板表面が露出している。認識マーク301以外の領域には、表面処理材152の層が表面に塗布されている。
【0062】
同図(D)の認識マーク304は、矩形状の背景領域305を導体パターンを構成する導体で構成し、その上に表面処理材152が塗布されている。中心の円形領域306は導体が存在せず、基板表面に直接、表面処理材152が塗布されている。
【0063】
もちろん、表面処理材152の種類や厚さを変更することで、2つの異なった濃度あるいは反射光からなる認識マークであっても、更に多くのマークを形成することができる。背景領域の形状や中心部分に配置される図形の形状あるいは個数を変更することで、光学特性の異なった更に多くの認識マークを製造物111上に形成することができる。
【0064】
図13は、図12で示した4つの認識マークのうちの3つを用いて認識マーク部を構成した例を示したものである。プリント基板111P上の認識マーク部112Aには、第1の認識マーク141と第2の認識マーク142および他の認識マーク301が間隔を置いて形成されている。これにより、読取部102(図6参照)のより多くの光学特性に対応できることになり、認識不良の可能性を減少させることができる。
【実施例1】
【0065】
次に、実施例としてプリント基板上に形成する認識マークの材料を例示する。各種の材料は、たとえば次のものがある。
(1)電解金メッキ(厚さ0.5μm)
(2)無電解金メッキ(厚さ0.03μm)
(3)銅の上に塗布するプリフラックス(厚さ0.2μm)
(4)ハンダレベラ(半田)
(5)基板レジスト(一般には緑色であるが各色あり)(厚さ0.5μm)
(6)ポリイミドカバーレイ(厚さ0.2μm)
【0066】
以上、本発明をプリント基板111Pについて具体的に説明したが、認識マークの形成製造物111はこれに限るものではない。工業的に製造される各種の製造物111に本発明を適用することができる。また、認識マークは製造物111の上に形成される必要はなく、たとえば製造物111に貼付されるものであってもよい。もちろん、認識マークは2種類の材料によって形成する必要はない。3種類あるいはそれ以上の材料や加工方法によって、光学的な違いとして認識されるものであってもよい。
【0067】
更に認識マークの数は、製造物111に4つ以上配置されていてもよい。同一の認識マークを複数個ずつ複数種類配置するものであってもよい。これにより、同一の認識マーク相互の位置を検出することで、製造物111の傾き(回転角)を検出し、特定位置の位置決めを更に精度よく行うことができる。
【0068】
また、認識マークは位置決めだけに用いる必要はなく、製造物111の種類の判別に用いるようにしてもよい。この場合には、認識マークを構成する図形の形状を複数用意して、それぞれの形状と製造物111の種類を対応付ければよい。この用途の場合にも、同一種類の製造物111を表わす光学特性の異なった複数の認識マークが1つの製造物111に使用されるので、種類の判別の信頼性を向上させることができる。
【0069】
更に実施の形態では、物体からの反射率の違いによる濃度の違いで認識マークを複数組設けることにしたが、これに限るものではない。すなわち、製造物によっては光の透過率を変化させてもよいし、仮に濃度が同一であっても色が異なるものであってもよい。もちろん、赤外光や紫外光といった可視領域以外の波長領域の光学的な特性の違いを用いた複数の認識マークが使用されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
10、111 製造物
11 認識マーク
12 光学的に検出可能な面
20 製造物位置決め方法
21、31 認識マーク読取ステップ
22 位置判別ステップ
30 認識マーク判別方法
32 種類判別ステップ
40 製造物位置決めプログラム
41 認識マーク読取処理
42 位置判別処理
100 製造設備
101 製造設備本体
102 読取部
103 処理部
104 移動機構部
111P プリント基板
112、112A 認識マーク部
121 CPU
122 メモリ
123 主制御部
126 読取素子
127 画像処理部
128 光源
129 装置ID格納部
133 移動機構制御部
137 処理機構部
138 先端検知部
141 第1の認識マーク
142 第2の認識マーク
145 (第1の濃度D1の矩形状の)背景領域
146 (第3の濃度D3の)円形領域
147 (第2の濃度D2の矩形状の)背景領域
148 (第4の濃度D4の)円形領域
151 導体
152 表面処理材
162 導体パターン形成領域
301 認識マーク
304 矩形状の背景領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性をそれぞれ相違させた認識マークを、光学的に検出可能な面上に複数互いに近接するように配置したことを特徴とする製造物。
【請求項2】
前記複数の認識マークは、認識マークごとに物体上における位置が予め定めた位置関係に設定されている位置決め用のマークであることを特徴とする請求項1記載の製造物。
【請求項3】
前記複数の認識マークは、製品の種類を特定する種類判別用のマークであることを特徴とする請求項1記載の製造物。
【請求項4】
前記認識マークは、基板上の導体の有無からなる導体パターンとその導体パターン上に塗布される仕上げ材の有無からなる仕上げ材パターンの組み合わせからなる光学パターンで形成されることを特徴とする請求項1記載の製造物。
【請求項5】
製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る認識マーク読取ステップと、
この認識マーク読取ステップで読み取った認識マークの前記製造物上における予め定めた位置情報を基準にして前記製造物上の任意の位置を判別する位置判別ステップ
とを具備することを特徴とする製造物位置決め方法。
【請求項6】
製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る認識マーク読取ステップと、
この認識マーク読取ステップで読み取った認識マークに応じて、その製造物の種類を判別する種類判別ステップ
とを具備することを特徴とする認識マーク判別方法。
【請求項7】
コンピュータに、
製造物の読取面に互いに近接して配置され、認識すべき情報としての認識情報が共に同一で光学特性を予め相違させた複数の認識マークのうちから予め定めた1つの認識マークを選択して読み取る認識マーク読取処理と、
この認識マーク読取処理で読み取った認識マークの前記製造物上における予め定めた位置情報を基準にして前記製造物上の任意の位置を判別する位置判別処理
とを実行させることを特徴とする製造物位置決めプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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