説明

複写・印刷機部材用ポリイミド

【課題】耐熱性、耐磨耗性、離型性(剥離性)等の各種特性に優れ、複写機のトナー定着、転写用ベルト等の用途に好適に用いることができるポリイミドを提供する。
【解決手段】酸二無水物とジアミンとを用いて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸含有組成物から得られるポリイミドであって、該ポリイミドは、ポリアミド酸含有組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理して得られる複写・印刷機部材用ポリイミドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写・印刷機部材用ポリイミドに関する。より詳しくは、トナー定着、転写用ベルト等の複写・印刷機部材の材料として好適に用いることができる複写・印刷機部材用ポリイミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド酸をイミド化して得られるポリイミドは、そのイミド結合に由来して、高強度で優れた耐熱性を有し、誘電特性や電気特性等にも優れるものであるため、各種用途に利用されている。また近年では、用途に応じて種々の性能を併せ持つことが期待されており、ポリイミドの用途の一つとして、複写・印刷機部材における定着や転写用ベルト(ベルト状のシート、フィルム)用途も検討されている。このような複写・印刷機部材においては、耐熱性、耐磨耗性、離型性(剥離性)、撥水性等の各種特性が要求される。特に、定着、転写用ベルトでは、印刷時に印刷用紙と高速・高圧・高温下で接触する事となり表面が磨耗するため、耐摩耗性が低い材料の場合は頻繁なベルト交換が必要となり、高コストの要因となる。従って、トナー定着、転写用ベルト用途に用いられる材料は、離型性(剥離性)、撥水性、耐熱性と高温時の耐摩耗性が高度に両立された材料が求められている。一般的に、定着、転写用ベルト用途では耐熱性の高いポリイミドが用いられているが、ポリイミドに離型性を付与する為には、フッ素化アルキル基を導入したり、ポリイミドの主骨格中にフッ素置換基を導入したりする手法が知られている。例えば、特許文献1及び2には、分子内にフッ素原子又はフッ素置換アルキル基を有するジアミンを用いてポリイミドを形成する手法が開示されている。
一方、特許文献3には、ポリアミド酸重合時に水分を添加することで低分子量ポリアミド酸を得ている。その結果、高濃度且つ低粘度のワニスにて所望の厚みの無端ベルトを得る製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−21350号公報(第2、3頁)
【特許文献2】特許第3425854号明細書(第2、3頁)
【特許文献3】特開2009−84536号公報(第2、3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、複写・印刷機部材用途に用いられるポリイミドには、各種の特性を発揮することが求められるが、従来、この用途に用いられてきたポリイミドは、これらの特性が充分に高いとはいえないものであった。特に、複写・印刷機部材用途の中でも、複写機のトナー定着、転写用ベルト等に用いられるポリイミドには、良好なトナーの定着、転写性やベルトの耐久性の点から、更なる耐磨耗性、離型性(剥離性)の向上が求められるところである。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れるだけでなく、耐磨耗性、離型性(剥離性)にも優れ、複写・印刷機部材用途、特に、複写機のトナー定着、転写用ベルト等の用途に好適に用いることができるポリイミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、耐熱性、耐磨耗性、離型性(剥離性)等の各種特性に優れたポリイミドについて種々検討し、酸二無水物とジアミンとを用いて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸含有組成物からポリイミドを製造する際の熱処理に着目した。そして、ポリアミド酸含有組成物の熱処理を280℃以上、330℃以下の温度で行うようにすると、得られるポリイミドが、耐熱性、耐磨耗性、及び、離型性(剥離性)に優れ、複写・印刷機部材用途に好適に用いることができるものとなることを見出した。更に本発明者は、このようにして得られるポリイミドの重量平均分子量が特定の範囲にあると、耐磨耗性により優れたものとなり、複写機のトナー定着、転写用ベルト等の用途に特に好適なものとなることを見出すとともに、ポリアミド酸含有組成物としてフッ素系樹脂及び/又はカーボンブラックを含むものを用いて熱処理を280℃以上、330℃以下の温度で行うと、フッ素系樹脂及び/又はカーボンブラックがポリイミド中に均一に分散し、これにより、耐磨耗性、離型性(剥離性)に更に優れ、磨耗後もその優れた特性を維持したポリイミドを製造できることや、ポリアミド酸含有組成物中のフッ素系樹脂及びカーボンブラックの割合を特定の範囲とすることで複写・印刷機部材用途に用いられるポリイミド製造の原料として最適なポリアミド酸含有組成物となることも見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、酸二無水物とジアミンとを用いて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸含有組成物から得られるポリイミドであって、上記ポリイミドは、ポリアミド酸含有組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理して得られることを特徴とする複写・印刷機部材用ポリイミドである。
本発明はまた、酸二無水物とジアミンとを含み、更に、組成物中の固形分100質量%に対して、フッ素系樹脂を30〜60質量%、カーボンブラックを0.5〜2質量%含むことを特徴とする複写・印刷機部材用ポリイミド製造用ポリアミド酸含有組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において段落に分けて記載される個々の本発明の好ましい特徴を2つ以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態である。
【0008】
本発明の複写・印刷機部材用ポリイミドは、酸二無水物とジアミンとを用いて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸含有組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理して得られるものである。本発明のポリイミドは、このような熱処理を行う工程を含む方法によって得られるものである限り、その他の工程を含む方法によって得られるものであってもよい。熱処理は、空気中で行ってもよいが、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
熱処理温度は、好ましくは、325℃以下であり、より好ましくは、320℃以下である。また、300℃以上であることが好ましく、より好ましくは、310℃以上である。
また、熱処理の加熱時間は0.5〜5時間とすることが好ましく、より好ましくは1〜2時間である。
熱処理は、段階的に行ってもよいし、連続的に行ってもよい。
【0009】
上記熱処理は、有機溶媒中で行ってもよいし、有機溶媒の不存在下で行ってもよいが、反応効率等を考慮すると有機溶媒中で行うことが好適である。この際、上記ポリアミド酸含有組成物としては、後述するポリアミド酸を得るための反応で得られた溶液の形態をそのまま使用してもよいし、また、ポリアミド酸含有組成物を固体として分離した後、有機溶媒に再溶解して加熱処理してもよい。有機溶媒としては、後述するポリアミド酸を得るための反応で用いられる極性溶媒や非極性溶媒が好ましく採用され、1種又は2種以上を使用することができる。
【0010】
上記熱処理に供するポリアミド酸含有組成物としては、固形分濃度が3〜80質量%に設定されていることが好適である。この範囲外であると、当該組成物をフィルムやシート状に展開して熱処理を行う際に、当該組成物を均一に展開できず、厚みにバラツキが生じるおそれがある。より好ましくは5〜60質量%である。
【0011】
上記ポリアミド酸含有組成物が含むポリアミド酸は、重量平均分子量が5万〜60万であることが好ましい。ポリアミド酸の重量平均分子量は、より好ましくは、7万〜50万であり、更に好ましくは、10万〜30万である。ポリアミド酸がこのような重量平均分子量を有するものであると、ポリアミド酸含有組成物から得られるポリイミドが耐磨耗性により優れたものとなる。その理由は以下のように推察される。
ポリアミド酸は通常、酸二無水物とジアミンとを等モル付近の比率で重合して得られる。ここで、系中に存在する水が一部の酸二無水物と反応することで開環し、フタル酸構造となるため、系中には、フタル酸構造となった酸二無水物が存在している。該フタル酸構造となった酸二無水物は低温ではジアミンと反応しにくい為、重合の終点となる。従って、得られたポリアミド酸の末端部はフタル酸基とアミノ基が等確率で存在していると考えられる。ポリアミド酸を加熱する事でアミド酸部が脱水を伴う閉環反応を起しポリイミドとなる事が知られている。一般的なポリイミドは不溶不融の為、末端部の挙動については知見が得られていないが、以下の事が推察される。すなわち、末端の2つのカルボン酸それぞれが他の重合末端のアミノ基と反応し2つのアミド結合が形成される結果、アミド結合を有する架橋構造が形成されると推察される。架橋密度はポリアミド酸の分子量が低いほど高くなり、架橋密度が高いほどポリイミド膜の強度(耐摩耗性)が向上していることが考えられる。ただし、ポリアミド酸の重量平均分子量が5万未満であると、粘度が非常に低くなり、ポリイミドフィルムを得ることが困難となる事や、架橋密度が高くなり過ぎて逆にフィルムが脆くなるため好ましくない。したがって、重量平均分子量は上記範囲にあることが好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
【0012】
上記ポリアミド酸の重量平均分子量を上記好ましい範囲にする方法は、特に制限されず、水等の酸二無水物の一部を開環させる添加剤をポリアミド酸重合時に添加する方法、重合時の温度を制御する方法を用いることができる。これらの中でも、酸二無水物の一部を開環させる添加剤を添加する方法が好ましく、水を添加する方法が工業的に安価で行える事から最も好ましい。
【0013】
上記ポリアミド酸含有組成物は、酸二無水物とジアミンとを用いて得られるポリアミド酸を含むものであるが、ポリアミド酸を1種含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。すなわち、ポリアミド酸の原料となる酸二無水物やジアミンは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
酸二無水物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好適であり、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。中でも、芳香族系酸無水物が好適である。なお、下記一般式(1)中のYは、4価の有機基を表すが、例えば、直鎖若しくは分岐鎖、又は、環を含んでいてもよい脂肪族有機基;芳香族有機基;2以上の脂肪族基や芳香族基が炭素原子で結合した有機基;2以上の脂肪族基や芳香族基が炭素原子以外の原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)で結合した有機基等が好適である。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明におけるポリアミド酸の原料となる酸二無水物及びジアミンのうち少なくとも1種の化合物は、エーテル結合を有する化合物であることが好ましい。ポリアミド酸の原料としてエーテル結合を有する化合物を用いると、当該ポリアミド酸から得られるポリイミドが撥水性、柔軟性に優れたものとなる。
上記酸二無水物の中でも、分子内にエーテル結合を有する酸二無水物としては、例えば、下記の化合物等が好適である。
3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3′,3,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボンジフェニルエーテル酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)ベンゼン酸二無水物。
【0016】
上記分子内にエーテル結合を有する酸二無水物の中でも、1分子内にエーテル結合を2個以上有する化合物が好適であり、特に、下記一般式(i):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Aは、同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子を表す。Qは、2価の有機基を表す。)で表される化合物を使用することが好適である。上記ポリイミドがこのような酸二無水物に由来する構造を有することによって、有機溶剤への溶解性や耐熱性、耐吸湿性、撥水性、離型性等に更に優れたポリイミドを得ることが可能になる。このように上記酸二無水物が、少なくとも、上記一般式(i)で表される化合物を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。なお、Aとの表記は、Aで表される原子がベンゼン環に3つ結合した形態となっていることを表す。後述する化学式(iii−1)〜(iii−5)、(3−a)〜(3−h)における複数の原子がベンゼン環に結合することを示す記号も同様に、当該複数の原子がベンゼン環に結合した形態となっていることを表す。
【0019】
上記Qで表される2価の有機基としては、例えば、直鎖若しくは分岐、又は、環を含んでいてもよい2価の脂肪族有機基;芳香族有機基;2以上の脂肪族基や芳香族基が炭素原子で結合した2価の有機基;2以上の脂肪族基や芳香族基が炭素原子以外の原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)で結合した2価の有機基等が挙げられる。具体的には、例えば、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコール等に由来する2価の脂肪族有機基;ベンゼン、ビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼン等に由来する2価の芳香族有機基;これらの脂肪族有機基や芳香族有機基が炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子等で結合した2価の有機基等が好適である。これらの中でも、下記一般式(ii−1)〜(ii−7):
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、*部分が、上記一般式(i)中のO原子と結合する。)で表される2価の有機基であることが好適である。
【0022】
上記Qで表される2価の有機基としてはまた、少なくとも1つのハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)又はハロゲン化アルキル基(ハロゲン置換アルキル基)を有するものが好適である。これにより、耐熱性や耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性、光学特性等の各種物性に優れたポリイミドが得られやすくなる。中でも、少なくとも1つのフッ素原子又はハロゲン化アルキル基を有するベンゼン環を持った基であることが好ましい。また、ハロゲン化アルキル基としては炭素数1〜20のアルキルフッ素基(例えば、三フッ化メチル基等)がより好ましい。特に好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜20のアルキルフッ素基で全置換されたベンゼン環を有する基である。
【0023】
上記一般式(i)で表される化合物として具体的には、例えば、下記式(iii−1)〜(iii−5)で表される化合物(1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)ベンゼン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)テトラフルオロベンゼン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン酸二無水物);下記式(iii−6)で表される2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物;下記式(iii−7)で表される1,1−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}シクロヘキサン二無水物;下記式(iii−8)で表される9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン二無水物;下記式(iii−9)で表される2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。これら(iii−1)〜(iii−9)で表される酸二無水物の1種又は2種以上を用いることが特に好適である。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
分子内にエーテル結合を有するジアミンを選択した場合、分子内にエーテル結合を有さない酸二無水物を適宜選択してもよく、分子内にエーテル結合を有さない酸二無水物としては、下記化合物等が好適である。
ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルメタン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、3,3′,4,4′−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、ジフルオロピロメリット酸二無水物、ジクロロピロメリット酸二無水物、トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、1,4−ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル酸二無水物、1,2′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル酸二無水物、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシベンゾフェノン酸二無水物、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸無水物;
【0027】
ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a.4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物等。
【0028】
本発明におけるポリアミド酸の原料となるジアミンとしては、下記一般式(2);
【0029】
【化6】

【0030】
で表される化合物が好適である。なお、一般式(2)中のXは、2価の有機基を表すが、例えば、直鎖若しくは分岐、又は、環を含んでいてもよい2価の脂肪族有機基;芳香族有機基;2以上の脂肪族基や芳香族基が炭素原子で結合した2価の有機基;2以上の脂肪族基や芳香族基が炭素原子以外の原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)で結合した2価の有機基等が挙げられる。具体的には、例えば、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコール等に由来する2価の脂肪族有機基;ベンゼン、ビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼン等に由来する2価の芳香族有機基;これらの脂肪族有機基や芳香族有機基が炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子等で結合した2価の有機基等が好適である。
【0031】
上記Xで表される2価の有機基として具体的には、下記一般式(3−a)〜(3−h):
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、Zは、同一又は異なって、水素原子(すなわち無置換)、置換基で置換されていてもよいアルキル基若しくはアリール基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)を表す。なお、Zは、各有機基中で同一であってもよいし、異なるものであってもよいし、また、各ベンゼン環中で同一であってもよいし、異なるものであってもよい。Rは、同一又は異なって、フッ素原子又は水素原子を表す。X′は、酸素原子、窒素原子、炭素原子、−S−、又は、−S(=O)−を表す。なお、X′は、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。)で表される基が好適である。
【0034】
上記一般式(3−a)〜(3−h)で表される有機基はまた、少なくとも1つのフッ素原子又はハロゲン化アルキル基(ハロゲン置換アルキル基)を有するものであることが好適である。すなわち、各有機基が有するZで表される基の少なくとも1つがフッ素原子又はハロゲン化アルキル基であることが好適である。これにより、耐熱性や耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性、光学特性等の各種物性に優れたポリイミドが得られやすくなる。中でも、各有機基が有する各ベンゼン環が、それぞれ、少なくとも1つのフッ素原子又はハロゲン化アルキル基を有することが好ましい。また、ハロゲン化アルキル基としては炭素数1〜20のアルキルフッ素基(例えば、三フッ化メチル基等)がより好ましい。特に好ましくは、各有機基が有するZの全てがフッ素原子又は炭素数1〜20のアルキルフッ素基であることである。
【0035】
上記ジアミンの中でも、例えば、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン(4FMPD)、4,4′−ジアミノ2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、ビス(4−アミノフェニル)エーテル(ODA)、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−アミノフェニル)エーテル(8FODA)、1,4−ジアミノ−2−トリデカフルオロヘキシルベンゼン(13FPD)、ビス(オクタフルオロ−4′−アミノビフェニル−4−イル)エーテル(16FPD)等が好適である。
【0036】
上記分子内にエーテル結合を有するジアミンとしては、上述した一般式(2)で表されるジアミンの中から、エーテル結合を有するものを用いることが好適である。
【0037】
上記酸二無水物とジアミンとの反応工程、すなわちポリアミド酸を得るための重合反応工程において、これら原料の配合比としては、酸二無水物の総量1モルに対し、ジアミンの総量が0.6〜1.4モルとなるように設定することが好ましい。これにより、耐熱性や耐吸湿性等により優れたポリアミド酸含有組成物及びポリイミドを得ることが可能になる。より好ましくは0.75〜1.25モルである。
【0038】
上記酸二無水物とジアミンとの反応工程は、有機溶媒中で行われることが好適である。
上記有機溶媒としては、ポリアミド酸の原料であるジアミンと酸二無水物との反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メタノール等の極性溶媒;トルエンやキシレン等の非極性溶媒等が挙げられる。中でも、極性溶媒を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。
【0039】
上記有機溶媒の量は、ポリアミド酸を得るための重合反応が効率よく進行できる量であれば特に限定されず、例えば、有機溶媒と、ポリアミド酸の原料(酸二無水物及びジアミン)との合計量100質量%に対し、該ポリアミド酸の原料の合計量が1〜60質量%となるように設定することが好適である。より好ましくは3〜50質量%である。
【0040】
上記反応工程において、反応条件としてはポリアミド酸の原料が充分に反応し得るものであれば特に限定されないが、例えば、空気中(好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴン等による不活性ガス雰囲気中)で、重合反応温度を−20〜80℃に設定することが好適である。このような温度で重合反応を行うことで、ポリアミド酸の重量平均分子量を上述した好ましい範囲にすることができる。より好ましくは0〜50℃である。
また、重合反応時間は、1時間〜10日とすることが好ましく、より好ましくは1日〜7日である。
【0041】
上記ポリアミド酸含有組成物においては、組成物中の水分が多いと、ポリアミド酸の解重合が起こり、ポリアミド酸の分子量が低下するおそれがある。また、それに起因して、ポリイミドフィルムを得ようとする場合には、ポリイミドフィルムの可撓性が充分とはならず、膜として取り出すことができなくなるおそれもある。したがって、上記ポリアミド酸含有組成物においては、水分量が1000ppm以下であることが好適である。また、水分量は、30ppm以上であることが好ましい。水分量が少なすぎると、ポリアミド酸の分子量が大きくなりすぎ、得られるポリイミドが耐磨耗性に劣るものとなるおそれがある。
なお、後述するようにカーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂を、分散液として、ポリアミド酸の重合後に混合する場合にも、水分が混入しないようにすることが好ましい。
【0042】
上記ポリアミド酸含有組成物は、所望の用途に応じて上記ポリアミド酸以外の成分(他の成分)を含有することができる。他の成分としては、例えば、カーボンブラック、フッ素系樹脂、分散剤、有機溶媒、無機充填材、離型剤、カップリンク剤、難燃剤等の各種添加剤が挙げられるが、カーボンブラック及びフッ素系樹脂のうち少なくとも1種以上を含むものであることが好ましい。このように上記ポリアミド酸が、更にカーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂を含むことは、本発明の好適な形態の1つである。この組成物においては、カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂が、組成物中に分散している形態であることが好適である。
なお、本発明において、ポリアミド酸含有組成物が上記ポリアミド酸以外の成分(他の成分)を含有する場合、当該ポリアミド酸含有組成物から得られる複写・印刷機部材用ポリイミドは、重合体であるポリイミド(ポリイミド重合体)以外の成分を含むことがある。本発明において、ポリアミド酸含有組成物から得られる複写・印刷機部材用ポリイミドは、このようなポリアミド酸含有組成物由来の他の成分も含めたものを意味するが、ポリアミド酸含有組成物からポリイミド重合体含有組成物が得られるということもできる。
【0043】
上記カーボンブラックを用いることで、ポリイミドの耐磨耗性が向上し、フッ素系樹脂を用いることでポリイミドの撥水が向上する。カーボンブラックを用いることで、ポリイミドの耐磨耗性が向上する理由については以下のように推察される。
カーボンブラックがポリアミド酸含有組成物中に存在すると、カーボンブラック表面に存在する官能基(カルボン酸や水酸基等)とポリアミド酸末端のアミンやカルボン酸が熱処理温度下で反応しグラフト化が起こる。ポリイミドから得られた複写・印刷機部材においては、研磨によって、カーボンブラック粒子がポリマーマトリクスから滑落し磨耗が起こる。この滑落を抑えるためにはカーボンブラック粒子とポリマーとの界面での相溶性を高める構造を持つ事が良く、グラフト化は相溶性を高める効果がある。よって、カーボンブラックを用いることで、ポリイミドの耐磨耗性が向上すると考えられる。なお、グラフト化率はポリアミド酸のアミンもしくはカルボン酸末端数が多い程高くなることが考えられるため、ポリアミド酸の分子量が低いほどグラフト化率が高くなる。よって、低分子量のポリアミド酸ほど、研磨によるカーボンブラック粒子の滑落がより抑制され、耐摩耗性がより向上すると考えられる。ただし、上述したように、ポリアミド酸の重量平均分子量が5万未満であると、粘度が非常に低くなり、ポリイミドフィルムを得ることが困難となる事や、架橋密度が高くなり過ぎて逆にフィルムが脆くなるため好ましくない。したがって、優れた耐磨耗性を有するポリイミドフィルムを得るためには、重量平均分子量は上述した範囲にあることが好ましい。
【0044】
上記カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂を含むポリアミド酸含有組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理をしてポリイミドを製造すると、カーボンブラックとフッ素系樹脂とがポリイミド中で均一に分散されることになり、上記カーボンブラックやフッ素系樹脂を含むことによる耐磨耗性、撥水性の向上の効果がより顕著に発揮されることになるのみならず、表面抵抗値(電気抵抗値)のバラツキが低減され、例えば、画像形成・記録装置用ベルトに用いた場合には、ムラ等の発生が抑制され、良好な画像を転写・定着等することが可能になる。このため、複写・印刷機部材、特に、中でも、複写機のトナー定着、転写用ベルト等の用途に好適に用いることができるポリイミドを得ることができる。
この効果は、カーボンブラックとフッ素系樹脂とを含むことと、ポリアミド酸含有組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理をすることとの組み合わせによって得られる相乗的な効果である。
【0045】
上記ポリアミド酸含有組成物は、組成物中の固形分100質量%に対して、フッ素系樹脂を40〜60質量%、カーボンブラックを0.5〜2質量%含むものであることが好ましい。このような組成物から得られるポリイミドは、カーボンブラックとフッ素系樹脂とを含むことによる耐磨耗性、撥水性を向上させる作用をより効果的に発揮することになる。また、フッ素系樹脂やカーボンブラックをこのような割合で含む組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理をしてポリイミドを製造すると、上記カーボンブラックとフッ素系樹脂とを含むこととポリアミド酸含有組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理をすることとの相乗的な効果がより顕著に発揮され、耐磨耗性、撥水性に優れ、磨耗後もその優れた特性を維持することができ、画像形成・記録装置用ベルトに用いた場合には、ムラ等の発生が抑制され、良好な画像を転写・定着等することができる効果により優れたポリイミドを得ることができる。
【0046】
上記カーボンブラックとしては、導電性カーボンブラックとして上市されているものが挙げられるが、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、気体又は液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラック等が挙げられ、また、カーボンナノチューブを使用することもできる。中でも、結晶子やストラクチャーが高度に発達したケッチェンブラックやアセチレンブラック、カーボンナノチューブが好適である。また、これらは単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0047】
上記フッ素系樹脂とは、フッ素原子を含むオレフィン(フルオロオレフィン)に由来する構成単位を含む重合体であれば特に限定されるものではない。フルオロオレフィンとしては、例えば、フッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。上記フッ素系樹脂として具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン樹脂(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、パーフロロ環状重合体、フッ化ビニル樹脂(PVF)等が好適である。また、これらを1種又は2種以上を使用することができる。
【0048】
上記カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂を含むポリアミド酸含有組成物の調製方法としては、例えば、(I)カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂の存在下で、ポリアミド酸の原料である酸二無水物とジアミンとを重合反応させる方法や、(II)ポリアミド酸の原料である酸二無水物とジアミンとを重合反応させてポリアミド酸を得た後、このポリアミド酸と、カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂とを混合する方法等が挙げられる。
【0049】
上記調製方法において、カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂は、必要に応じ、有機溶媒にこれらを分散させた分散液として用いてもよい。例えば、カーボンブラックやフッ素系樹脂を有機溶媒に分散させた分散液として、上記(I)における重合反応工程や、上記(II)におけるポリアミド酸との混合工程に用いることが好適である。有機溶媒としては、カーボンブラックやフッ素系樹脂を分散若しくは溶解できる溶媒であれば特に限定されず、例えば、後述する重合反応工程で使用可能な有機溶媒を好適に用いることができる。なお、カーボンブラックを有機溶媒に分散させる際や、また、カーボンブラックをポリアミド酸と直接混合させる際には、分散剤を用いることが好適である。分散剤としては特に限定されないが、例えば、アニオン性、ノニオン性又はカチオン性界面活性剤や、高分子分散剤等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。中でも、分散性能の点から高分子分散剤を使用することが好ましい。
【0050】
上記高分子分散剤としては、例えば、分子内に複数のカルボキシル基を有するポリカルボン酸系高分子分散剤、分子内に複数のアミノ基を有するポリアミン系高分子分散剤、分子内に複数のアミド基を有する高分子分散剤、分子内に複数の多環式芳香族化合物を含有する高分子分散剤等が好適であり、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記ポリカルボン酸系高分子分散剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、無水マレイン酸共重合体とアルキルアミン等の各種アミンやアルコールとのアミド化又はエステル化物、ポリ(メタ)アクリル酸共重合体等のポリカルボン酸のポリエステルやポリアルキレングリコールをグラフトさせた櫛型ポリマー等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0051】
上記ポリアミン系高分子分散剤としては、例えば、ポリアルキレンアミン、ポリアリルアミンやN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のポリアミンにポリエステルをグラフトさせた櫛型ポリマー等が挙げられる。
上記分子内に複数のアミド基を有する高分子分散剤としては、例えば、縮合反応によって得られるポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリN,N−ジメチルアクリルアミドの共重合体や、これらにポリエステルやポリアルキレングリコールをグラフトさせた櫛型ポリマー等が挙げられる。
上記多環式芳香族化合物を含有する高分子分散剤としては、例えば、ピレンやキナクリドン骨格を有するビニルモノマーと各種モノマーとの共重合体が挙げられる。
【0052】
上記分散剤を使用する場合、分散剤の添加量は、分散を好適に行う観点から、分散対象物(ポリアミド酸含有組成物)100重量部に対して、0.1〜20重量部とすることが好適である。より好ましくは0.5〜10重量部である。
【0053】
上記調製方法におけるポリアミド酸を得るための重合反応工程は、上述したとおりであるが、カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂を有機溶媒に分散させ、その分散液の存在下に重合反応を行う場合は、有機溶媒を更に追加して重合反応を行ってもよいし、当該分散液中の有機溶媒を重合溶媒として使用してもよい。また、この場合、重合反応工程における有機溶媒の量は、カーボンブラック及び/又はフッ素系樹脂の分散液中の有機溶媒の量も合わせて、そのトータルが、上述した有機溶媒の使用量範囲になるように設定することが好適である。
【0054】
本発明のポリイミドは、耐熱性、耐磨耗性に加え、撥水性に優れるものであるが、撥水性は、その表面の水に対する接触角により評価することができる。例えば、水に対する接触角を90°以上とすることができ、このように上記ポリイミドが、水との接触角(水に対する接触角とも称す。)が90°以上である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。これによって、複写機部材用途に特に有用なものとなる。水に対する接触角は、例えば、協和界面化学社製の接触角計「CA−X」により測定することができる。
【0055】
本発明のポリイミドの原料である酸二無水物及び/又はジアミンとしてエーテル結合を有するものを用いると、得られるポリイミドが柔軟性に優れたものとなるが、柔軟性は、引張弾性率によって評価することができる。例えば、引張弾性率が5MPa以下とすることができ、このように上記ポリイミドが引張弾性率が5MPa以下である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。これによって、複写機部材用途に更に優れたものとなる。より好ましくは4MPa以下、更に好ましくは3MPa以下である。引張弾性率(MPa)は、後述するように、動的粘弾性測定方法により測定することができる。
【0056】
本発明のポリイミドは、上述のように、ポリアミド酸含有組成物をイミド化することによって得ることができるが、本発明のポリイミドは、フィルムやシート状のものであってもよいし、成形体であってもよいが、複写機部材により好適なものとするには、フィルム状であることが好適である。
ポリイミドをフィルムやシート状にする場合、厚みは特に限定されないが、複写機部材用途では0.5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは1〜30μmである。
【0057】
上記ポリアミド酸含有組成物の基板やフィルムへの塗布方法としては、例えば、キャスティング(流延法)、スピンコーティング(回転塗布法)、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷及びディップコーティング等の通常の手法で行うことができる。
【0058】
上記ポリイミドフィルムを複写機部材用途に用いる場合には、ポリイミドフィルムを加熱した状態で研磨したものを用いることが好ましい。これにより、ポリイミドフィルムをトナー離型性により優れたものとすることができる。
ポリイミドフィルムを加熱する温度は、ポリイミドフィルム製造時の焼成温度以下であればよいが、260℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。焼成温度以上の温度では、ポリイミドフィルム中の構成成分の分散状態が変わる等、ポリイミドフィルム自体の変質がおこるため好ましくない。また、加熱温度は、100℃以上であることが好ましい。ポリイミドがフッ素系樹脂を含有する場合、より好ましくは、該フッ素系樹脂の融点の1/2以上の温度(例えば、該フッ素系樹脂の融点が327℃であれば、163.5℃以上)である。更に好ましくは、180℃以上である。加熱温度が低いと、所定の効果を得るまでの研磨時間が長くなる他、フッ素系樹脂を含有する場合には、表面のフッ素系樹脂の剥離により、かえって表面状態が悪くなるおそれがある。
このように、本発明の複写・印刷機部材用ポリイミドを100℃以上、260℃以下の温度で研磨する表面処理方法もまた、本発明の1つである。
なお、上記研磨は、ポリイミドフィルムが加熱された状態で行われることになる限り、その方法は特に制限されず、ポリイミドフィルムを上記温度に加熱して研磨してもよく、研磨剤を上記温度に加熱したものを用いて研磨してもよい。
【0059】
上記研磨に用いる研磨剤は特に制限されないが、硬度の高いものはポリイミドフィルムに傷を残すおそれがあるため好ましくない。市販のコピー用紙等の紙で研磨することでも充分な効果が期待できる。
上記研磨を行う工程は、ポリイミドフィルムの製造工程の後に行われる限り特に制限されず、ポリイミドフィルムの焼成後に所定の温度まで冷却してから行ってもよく、充分に冷却した後に再度加熱をして所定の温度にしてから行ってもよい。特に、ポリイミドフィルムを組み込んだ複写・印刷機を製造した後に、トナーを定着させない状態で紙を送る方法が最も簡便な方法である。
【0060】
上記研磨は、ポリイミドフィルムがフッ素系樹脂を含むものである場合に特に効果を発揮する。その理由は以下のように考えられる。すなわち、ポリイミドフィルムの表面を研磨することで、ポリイミドフィルムの表面に浮き出したフッ素系樹脂の角が取れ、潰されることにより、膜表面が平坦になり、その結果、トナー離型性が向上すると考えられる。
このように、フッ素系樹脂を含むポリイミドフィルムに対して上記研磨工程を行うことは、本発明の表面処理方法の好適な実施形態の1つである。
【0061】
上記ポリアミド酸及びポリアミド酸含有組成物は、上述したように耐熱性、耐吸湿性、撥水性、離型性(剥離性)、耐久性(機械的強度)誘電特性、電気特性等に優れるものであるため、これを原料として得られるポリイミドは、電気・電子部品、機械部品、光学部品等の各種用途に好適に適用できるが、複写機部材用途に特に有用であり、例えば、転写ベルトや定着ベルト等(ベルト状のシート、フィルム)の他、インクジェットプリントプリンターヘッドのコーティング膜等の複写・印刷機部材として好ましく使用される。また、このようなポリアミド酸やポリアミド酸含有組成物は、耐熱性や撥水性、離型性、耐久性(機械的強度等)に優れ、しかも電気抵抗値のバラツキが充分に小さいポリイミド組成物を与えることができるため、ムラ等が発生することなく、優れた定着性、転写性及び離型性等を有し、かつ耐久性の高い複写機部材を与えることが可能になる。また、このようなベルトを用いれば、安定的に連続して画像形成・記録を行うことができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の複写・印刷機部材用ポリイミドは、上述の構成よりなり、耐熱性、耐磨耗性、離型性(剥離性)等の各種特性に優れるものであり、複写・印刷機部材、中でも、複写機のトナー定着、転写用ベルト等の用途に好適に用いることができるポリイミドである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ポリアミド酸の重量平均分子量と該ポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液から得られたポリイミド膜の研磨量との関係を示したグラフである。
【図2】フッ素系樹脂としてPTFEを含むポリイミド膜(フィルム)について、200℃で研磨を行う前後のフィルム表面の状態をFE−SEMにより観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0065】
下記実施例及び比較例においては、次のようにして分析し、評価を行った。
<重量平均分子量測定(GPC測定)>
装置:東ソー株式会社製 HCL−8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・HO、リン酸入りNMP):0.01mol/L
<研磨量>
ポリアミド酸含有組成物から得られたポリイミド膜の研磨量測定は、以下の装置、測定条件により行った。
装置:ドクターラップ ML−180(マルトー社製)
研磨方法:装置の研磨盤に番手#800の耐水研磨紙を装着し回転数20rpmで回転させる。研磨面にサンプル表面を押し当てサンプルを77rpmにて回転させ、適量の水を滴下し360秒研磨を行い、サンプル全面が研磨されている事を確認する。番手#8000の耐水研磨紙を新品に交換後、同様に180秒研磨を行い、研磨前後のフィルムの膜厚の差から研磨量(μm/分)を算出する。
<接触角>
協和界面化学社製の接触角計「CA−X」により測定した。
【0066】
調製例1
[カーボン分散溶液の作製]
200mlのガラス容器中に、溶媒としてN−メチルピロリドン98gと、ケッチェンブラック(LION社製:カーボンECP600JD)2g、分散剤としてポリビニルピロリドン(日本触媒社製:K−30)0.4gと、直径1mmのビーズを入れ、ペイントシェーカーによリ1時間分散処理を行った後、ろ過することで、カーボン分散液(1)を得た。得られたカーボン分散液(1)をナノ粒子測定装置(掘場製作所社製:LB−500)で粒度分布を測定したところ、算術平均計算径0.22μmであり、カーボンブラックが均一に分散した溶液が得られていることがわかった。
【0067】
調製例2
[ポリアミド酸溶液(1)の製造]
50ml容量の三口フラスコに、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン5.0g、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン酸二無水物(別名:4,4′−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)2.5g、及び、予め水を規定量添加し水分量を調整したN−メチルピロリドン22.5gを仕込んだ。窒素雰囲気下、室温で、5日間攪拌することで、ポリアミド酸溶液(1)30g(ポリアミド酸の固形分濃度:25%)を得た。また、GPCによる測定でポリアミド酸の重量平均分子量を測定した。
【0068】
調製例3〜8
[ポリアミド酸溶液(2)〜(5)、比較ポリアミド酸溶液(1)〜(2)の製造]
各原料の使用量を表1のように変更した以外は、調製例2と同様にしてポリアミド酸溶液(2)〜(5)、及び、比較ポリアミド酸溶液(1)〜(2)を製造し、GPCによる測定でポリアミド酸の重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1中の略号はそれぞれ以下のものを表す。
TPE−Q:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン
10FEDAN:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン酸二無水物
NMP:N−メチルピロリドン
【0071】
実施例1
[ポリアミド酸含有組成物の調製、ポリイミド化、及び、研磨量測定]
50mL容量のサンプル管に、調製例2で得られたポリアミド酸ワニス(固形分濃度25%のポリアミド酸溶液(1))5.0gに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液(N.V.:40質量%)2.1g、調整例1で得られたカーボンブラック(CB)分散液(N.V.:2質量%)0.9gを加え、あわとり錬太郎(自転公転式回転攪拌装置、商品名、シンキー社製)で分散させ、ポリアミド酸含有組成物(1)を調製した。得られた組成物(1)をSiウエハー上にスピンコートにて塗布し、320℃にて1時間加熱し、焼成して、フッ素樹脂含有ポリイミド膜(1)を得た。得られたフッ素樹脂含有ポリイミド膜(1)の研磨量、水との接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
実施例2〜5、比較例1、2
ポリアミド酸ワニスの種類、及び、ポリアミド酸ワニス、PTFE、CBの使用量を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸含有組成物(2)〜(5)及び比較ポリアミド酸含有組成物(1)〜(2)を調製した。また、これらの組成物を用い、焼成温度を表2のように変更した以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂含有ポリイミド膜(2)〜(5)及び比較フッ素樹脂含有ポリイミド膜(1)〜(2)を得た。フッ素樹脂含有ポリイミド膜(2)〜(5)及び比較フッ素樹脂含有ポリイミド膜(1)〜(2)についても研磨量、水との接触角を測定した。結果を表2に示す。また、これらの結果からポリアミド酸の重量平均分子量と該ポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液から得られたポリイミド膜の研磨量との関係をグラフ化した。グラフを図1に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2中、ポリアミド酸溶液の欄の(1)〜(5)は、ぞれぞれポリアミド酸溶液(1)〜(5)を表し、比較(1)、(2)は、それぞれ比較ポリアミド酸溶液(1)、(2)を表す。
測定不可*1は、目詰まりにより測定ができなかったことを表す。
測定不可*2は、フィルム破損により測定ができなかったことを表す。
【0075】
実施例6については、次のように分析し、評価を行った。
<トナー剥離力>
装置:タッキング試験機TAC−II (レスカ社製)
測定方法:トナーを紙上に乗せ、200℃のホットプレート上で溶かした後に、タッキング試験機のプローブ(半径5mm)に両面テープで貼り付ける。トナー剥離性を測定したいPTFE 添加ポリイミドフィルムをスライドガラス上に両面テープで固定し、スライドガラスごと200℃のホットプレートに乗せ、プローブについたトナー付着紙を100gfにて30秒間押し付ける。その後、600mm/minのトナー紙を引き剥がし、剥離した際に生じる力を測定する。
【0076】
実施例6
実施例2で作成したPTFE添加ポリイミドフィルムについて、トナー離型性の測定を行ったところ、最表面では9.5gf・secであったが、200℃のホットプレート上でスパチュラにつけた紙で軽くこすることにより、トナー離型性は6.1gf・secとなった。紙でこする前後について、FE−SEM(FE−SEM Hitachi S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)により形態観測を行い、レーザー顕微鏡(カラー3Dレーザ顕微鏡 VK−9700、キーエンス社製)にて表面粗さ(Ra)を算出した。FE−SEMによる表面の形態観測結果を図2に示した。
紙でこする前の表面粗さはRa=0.46μmであったのに対し、紙でこすった後の表面粗さはRa=0.30μmとなった。これは紙でこすることで表面に浮き出したPTFE粒子の角が取れ、潰されることにより、膜表面が平坦になったことが主な原因と考えられる。上記研磨量測定に用いた方法によって研磨した場合のように、研磨され、フィルムの膜厚が減少した後のポリイミドフィルムについても、同様の現象が得られている。複写・印刷機の定着ベルトは使用される度に印刷する紙と接触し、表面がこすられることになるため、PTFE添加ポリイミドフィルムを高温で定着ベルトとして使用することで、磨耗してもトナー離型性が悪化せず、良好なトナー離型性を維持することができると考えられる。
【0077】
実施例及び比較例から以下のことが分かった。
フッ素系樹脂、カーボンブラックを添加したポリアミド酸含有組成物を340℃で焼成したポリイミドフィルムの場合、研磨量が多いため、研磨紙が目詰まりを起こし測定できず、また研磨後の水との接触角が大きく低下した。これはフッ素系樹脂が表面に偏在化したため、研磨量が多くなり、内部の接触角が低下した為と考えられる。一方、250℃での焼成はポリイミドのイミド化が充分ではなく、膜の強度が大きく低下し、割れや剥がれを生じた為、研磨量の測定ができるサンプルが得られなかった。
また、フッ素系樹脂、カーボンブラックを添加したポリイミドの耐摩耗性は、分子量と相関性があり、5〜60万の重量平均分子量のポリアミド酸を用いたときに、特に高い耐摩耗性を有することが確認された。
これらの結果から、本発明の280℃以上、330℃以下で焼成して得られたポリイミドは耐摩耗性に優れることが確認された。更に、重量平均分子量5〜60万のポリアミド酸を用いることやポリアミド酸含有組成物がフッ素系樹脂及び/又はカーボンブラックを含むことで、より耐摩耗性に優れ、研磨後も撥水性を高く維持したポリイミドとなり、剥離性、撥水性、耐熱性と高温時の耐摩耗性という特性が高度に両立したポリイミドが得られることが確認された。
また、実施例6の結果から、フッ素系樹脂を含むポリイミドフィルムを高温で定着ベルトとして使用すると、定着ベルトが磨耗しても良好なトナー離型性を発揮できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸二無水物とジアミンとを用いて得られるポリアミド酸を含むポリアミド酸含有組成物から得られるポリイミドであって、
該ポリイミドは、ポリアミド酸含有組成物を280℃以上、330℃以下の温度で熱処理して得られる
ことを特徴とする複写・印刷機部材用ポリイミド。
【請求項2】
前記ポリアミド酸は、重量平均分子量が5万〜60万であることを特徴とする請求項1に記載の複写・印刷機部材用ポリイミド。
【請求項3】
前記酸二無水物は、少なくとも、下記一般式(i);
【化1】

(式中、Aは、同一又は異なって、水素原子又はフッ素原子を表す。Qは、2価の有機基を表す。)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の複写・印刷機部材用ポリイミド。
【請求項4】
前記ポリアミド酸含有組成物は、更に、フッ素系樹脂及び/又はカーボンブラックを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複写・印刷機部材用ポリイミド。
【請求項5】
前記ポリアミド酸含有組成物は、組成物中の固形分100質量%に対して、フッ素系樹脂を40〜60質量%、カーボンブラックを0.5〜2質量%含むことを特徴とする請求項4に記載の複写・印刷機部材用ポリイミド。
【請求項6】
酸二無水物とジアミンとを含み、更に、組成物中の固形分100質量%に対して、フッ素系樹脂を30〜60質量%、カーボンブラックを0.5〜2質量%含むことを特徴とする複写・印刷機部材用ポリイミド製造用ポリアミド酸含有組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−97254(P2012−97254A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187676(P2011−187676)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】