説明

複列型ロープセット

【課題】同径又は異径の複数本のロープを有しながら端末金具数が少なく、ブーム伸縮装置などに適用することにより、必要金具数の削減、装置の軽量化、装置コストの低減を実現可能な複列型ロープセットを提供する。
【解決手段】一端部に端末金具を設けた複数本の第1ロープとこれと反対側にあって一端に端末金具を設けた第2ロープの各他端を、相互に位相をずらして単一の共用金具に挿着圧締している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複列型ロープセットに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械や荷役機械などにおいてはテレスコピックブームが装備されており、このブームの伸縮方式として機械式あるいは油圧・機械併用式が採用された場合には、伸縮手段としてワイヤロープが利用される。
【0003】
たとえば、従来の油圧・機械併用式の3段伸縮装置においては、図14のような装置構成となっていた。
すなわち、2段ブーム7の先端に滑車13が設けられ、これを経由して3段ブーム8の後端付近と基本ブーム6の先端付近が3段ブーム伸長用ロープW1でつながれる。また、2段ブームの後端付近に滑車12が取り付けられ、これを経由した3段ブーム縮小用ロープW2が3段ブーム8の後端付近と基本ブーム6の先端付近に接続されている。3段ブーム伸長用ロープW1は第2の3段ブーム縮小用ロープW2よりも径が大きい。
【0004】
しかしこのような構造では、図15(b)のように、各ロープにはそれぞれ両端に端末金具T、Tを設けることが必要であり、かつそうした複数本のロープを異なる位置に組付けて各端末を金具で接続することが必要である。すなわち、この例では、3段ブーム伸長用ロープW1と3段ブーム縮小用ロープがそれぞれ2本づつ用いられ、端末金具Tは8個となり、装置側も8箇所に接続用機構を設ける必要がある。このため、使用する金具が多く、装置重量が大となるとともに装置が複雑化し、装置コストが高くなる問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、同径又は異径の複数本のロープを有しながら端末金具数が少なく、ブーム伸縮装置などに適用することにより、必要金具数の削減、装置の軽量化、装置コストの低減を実現可能な複列型ロープセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、一端部に端末金具を設けた複数本の第1ロープとこれと反対側にあって一端に端末金具を設けた第2ロープの各他端を、相互に位相をずらして単一の共用金具に挿着圧締していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるときには、左右反対方向に延在する複数本のロープを有しながら、各方向に属するロープ他端側が共通金具に圧締されているので、簡単な構造のロープアッセンブリーとなり、端末金具数を半減することができるというすぐれた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1ワイヤロープと第2ワイヤロープの径が異なっている。
これによれば径が相対的に太いロープと細いロープが共用金具を介してひとつのセットになっているので、たとえばブーム伸縮装置に適用したときに、太いロープ側を伸長用、細いロープ側を縮小用に使って一箇所で伸縮動作を行えるとともに、少ない接続数で作動可能になるので、装置構造の簡素化と軽量化を図ることができるというすぐれた効果が得られる。
【0009】
端末金具が複数本のロープを挿着圧締した共通金具からなっている。
この態様によれば、端末金具の数も少なくすることができ、装置構造のよりいっそうの簡素化を図ることができるというすぐれた効果が得られる。
【実施例1】
【0010】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1ないし図3は本発明による複列型ロープセットの第1実施態様を示しており、図4と図5はその製作段階を示している。
1は複数本(この例では2本)の第1ワイヤロープであり、右方に延びる先端にそれぞれ接続用の端末金具3,3を有している。
2は複数本(この例では2本)の第2ワイヤロープであり、前記第1ロープ1よりも相対的に太い外径(たとえば第1ロープが直径8mmであるときに直径12mm)を有し、左方に延びる先端にそれぞれ接続用の端末金具3,3を有している。
4は共用金具であり、SCM415で代表されるねばりのある合金鋼などからなり、前記第1ワイヤロープ1、1と第2ワイヤロープ2,2の後端部が左右で位相をずらせて挿着・圧締されている。
【0011】
前記第1ワイヤロープ1、1と第2ワイヤロープ2,2の長さは限定がなく、同じ長さの場合、異なる長さの場合がありえる。ワイヤロープ1,2の構造は、たとえばIWRC6×Fi(29)0/0など任意である。
第1ワイヤロープ1、1と第2ワイヤロープ2,2はこの例ではそれぞれ互いに平行状をなし、第1ワイヤロープ1、1の相互の間隔は広く、第2ワイヤロープ2,2の相互の間隔は狭く比較的近接している。
前記共用金具4は、第1ワイヤロープ1、1と第2ワイヤロープ2,2の直径の8倍程度の長さを有し、図4(a)のように、外径に近い180度対称部位に前記第1ワイヤロープ1,1の外径とほぼ一致する通孔40,40を有し、また通孔40,40の間の領域に第2ワイヤロープ2,2の外径とほぼ一致する通孔41,41を有している。
前記通孔40,40、41,41は側面では同一平面状に並んでおり、共用金具4はこの並びと平行状に平坦面4a、4aが除去加工により形成されている。これは使用対象の装置に組み込むのに適したコンパクト化ないし薄型化と軽量化および配置状態での回転規制に好適である。しかし、円形断面である場合を除外するものではない。
【0012】
前記前記通孔40,40、41,41には、図4(b)のようにそれぞれ第1ワイヤロープ1,1の端末部10,10と第2ワイヤロープ2,2の端末部20,20が挿入され、この状態で図5の矢印のように共用金具4を直径方向から連続打撃し、あるいはプレスなどで強力に圧縮することにより断面積を減少させ、それに伴う図5の実線と仮想線ような通孔40,40、41,41の縮径作用により、図2、図3のように塑性流動した組織をワイヤロープ外表面に圧接させた圧締状態を得ているのである。40´、41´は縮径した圧締通孔を指している。
【0013】
図6は本発明の第2態様を示しており、この例では、第2ロープ2は1本であり、第1ロープ1は2本である。第2ロープ2は共用金具4の断面の中心に挿着・圧締され、その両側に第1ロープ1,1が挿着・圧締されている。
他は第1態様と同様であるから、同じ箇所に同じ符号を付し、説明は援用する。
【0014】
図7は本発明の第3態様を示しており、この例では、第1ロープ1は2本、第2ロープ2も2本であり、第1ロープ1,1の先端部は共通端末金具3´を有し、第2ロープ2,2の先端部も共通端末金具3´を有しており、それら共通端末金具3´は、第1態様における共用金具4とロープ端末との関係と同じように、金具に設けた通孔(袋穴を含む)に端末を挿入して、断面積の縮減により圧締したものである。
共通端末金具3´はこの例では1方がフラットエンドとなっており、他方は本体3aにねじ軸3bを一体に延設したねじエンドとなっている。しかしこれに限定されるものではなく、図8のように端部に貫通孔3cを有するアイエンドであってもよいし、図示しないフォークエンドであってもよい。
【0015】
この態様によれば、第1ロープと第2ロープの端末金具が単独でなく、共通化されているので、端末金具の数を減ずることができ、この例では、4本のロープを使用しながら、端末金具は2個で足りる。したがって、ロープの接続構造を簡素化することができる。また、ロープ径が太い場合に端末金具をそれぞれのロープに設けた場合には、干渉を回避するためロープ間隔(ロープピッチ)を一定以上狭めることが困難であるが、共通端末金具3´を用いた場合には、ロープ間隔を詰めて小さくすることができるので、シーブを小型にすることができ、軽量化に好適である。
【0016】
本発明は図示の態様に限定されるものではない。
1)第1ロープと第2ロープの数は少なくとも1方が複数本であることが必須であるが、3本以上であることもある。また、第1ロープと第2ロープは、必ずしも径が異なる場合に限定されず、同じ径である場合も含まれる。径が同じであるが、ロープ構造が異なっていたり、材質が異なっている場合ももちろん含まれる。
2)共通端末金具は第1ロープと第2ロープのいずれか1方である場合を含んでいる。
【0017】
3)共用金具4の長手方向と直角の断面における第1ロープと第2ロープの挿着・圧締位置は、図9(a)のように三角配置、(b)のように並列配置、(c)のように十字配置など任意である。
4)共用金具4はそれ自体に装置固定用部たとえばボルト孔やボルト孔付の座を有していてもよい。
【0018】
本発明複列ロープセットの使用例と作用を説明すると、図10のように、ブーム伸縮装置に適用した場合には、伸縮シリンダー9に連結した2段ブーム7の基端部位に第1シーブ12を取り付け、また、2段ブーム7の先端部位に第2シーブ13を取り付け、基本ブーム6の先端付近の内部と外部に支持金具14、15を設ける。
そして、本発明複列ロープセットSの共用金具4を、第3ブーム8の基端側下部などの適所に保持固定する。その手段としては、たとえば共用金具4の前後移動を規制する端壁を有するボックスなど任意である。
【0019】
第1ロープ1、1は前記第1シーブ12を経由して反対方向に導かれ、端末金具3、3が基本ブーム6の支持金具14につながれる。また、第2ロープ2,2は前記第2シーブ13を経て反対方向すなわち基本ブーム方向に導かれ、端末金具3,3が基本ブーム6の支持金具15につながれる。この例ではいずれの端末金具3,3もねじエンドタイプであるため、支持金具からねじ軸を突出させ、そこにナットを螺合している。
【0020】
このような構造によれば、伸縮機構が、従来のような紙面において上下2系統でなく片側の一系統で足り、かつブームに対する接続固定は従来の8箇所でなく5箇所ですむ。したがって、構造の簡素化と組み立ての容易化を実現できる。なお、端末金具として共通金具3´を使用した場合には、より接続作業が容易化できる。
伸縮シリンダー9により2段ブーム7を基本ブーム6から伸ばすと、2段ブーム先端の第2シーブ13と基本ブーム先端のワイヤ固定点との距離が広がることになるが、第2ワイヤロープ2の長さは一定なので、その分だけ第2シーブ13から3段ブーム後端のワイヤ固定点までの距離が短くなる必要があることから、3段ブーム8が引き出されることになる。
逆に、伸縮シリンダー9が縮んで2段ブーム7が格納されるときには、第1ワイヤロープ1、1の働きで3段ブーム8が格納される。したがって、スムーズに動作を行える。なお本発明は、6段式ブームなどにも適用されるのは言うまでもない。
【0021】
本発明は、応用例として、図11ないし図13のようなセットとすることができる。図11は複数本(この例では5本)の平行なロープ1´の一端と他端を、図12のように共通端末金具3´に挿着圧締して複列ロープセットとしたものであり、一端の共通端末金具3´としてアイエンドタイプを、他端の共通端末金具3´としてねじエンドタイプを用いている。図13は4本のロープを使用した例であり、一端の共通端末金具3´としてフラットエンドタイプを、他端の共通端末金具3´としてねじエンドタイプを用いている。
【0022】
このような構造とすれば、ロープ径が1本の場合に100とした場合、3本を用いればそれぞれの径を63%に、4本の場合には56%に、5本の場合には50%にすることができるので、使用ロープ径を小さくすることができ、また、同じ強度であれば複列としたことで可撓性が増すので、シーブ径を小さくすることができ、たとえば5列とした場合、シーブ径は1本の場合に比べて半分とすることができる。
このため、テレスコピックブームなどに適用した場合、ブーム本体の小型化が可能になる。また、ロープ間ピッチを小さくすることもできるので、軽量化や使用機械の小型化を図ることができる。たとえば、工作機械やエレベータなどのカウンターウエイトに用いた場合も、機械全体の小型化を実現できる。
さらに、共通端末金具であるため、接続部も1個所で足り、接続作業も容易化でき、さらに、ロープの保証荷重×本数以上の破断強度が得られるので、加工効率をよいものにすることができる。
【0023】
なお、この応用例において、複数本の平行なロープ1´の中間を共用金具4に設けた通孔に貫通させ、前記したように共用金具4の断面積を減少させて通孔部分でロープ1´を圧締してもよい。こうすれば、左右ロープ部分が同数・同一径の複列ロープセットとすることができ、図10のような伸縮装置に使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明に複列ロープセットの第1態様を示す平面図、(b)はその側面図である。
【図2】図1(a)のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図3】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図4】(a)は第1態様に用いた共用金具の断面図、(b)は圧締の前段階を示す縦断側面図である。
【図5】圧締段階の断面図である。
【図6】(a)は本発明に複列ロープセットの第2態様を示す平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図である。
【図7】(a)は複列ロープセットの第3態様を示す平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う拡大断面図
【図8】(a)(b)は他の共通端末金具の例を示す平面図である。
【図9】(a)(b)(c)は本発明の複列態様の他例を示す断面図である。
【図10】(a)は本発明による複列ロープセットの一使用例(油圧+機械併用型ブーム伸縮装置)を示す縦断側面図、(b)はその底面図である。
【図11】(a)は本発明の応用例を示す平面図、(b)はその側面図である。
【図12】図11のE−E線に沿う拡大断面図である。
【図13】本発明の他の応用例を示す平面図である。
【図14】従来の油圧+機械併用型ブーム伸縮装置の縦断側面図である。
【図15】図14の従来装置に用いられるワイヤロープの平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 第1ワイヤロープ
2 第2ワイヤロープ
3 端末金具
3´ 共通端末金具
4 共用金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に端末金具を設けた複数本の第1ロープとこれと反対側にあって一端に端末金具を設けた第2ロープの各他端を、相互に位相をずらして単一の共用金具に挿着圧締していることを特徴とする複列型ロープセット。
【請求項2】
第1のロープと第2のロープの径が異なっている請求項1に記載の複列型ロープセット。
【請求項3】
端末金具が複数本のロープを挿着圧締した共通金具からなっている請求項1または2に記載の複列型ロープセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−118069(P2006−118069A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304538(P2004−304538)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(501237501)東綱橋梁株式会社 (4)
【Fターム(参考)】