説明

複合シート

【課題】本発明は、種々の異方性導電フィルムを使用する圧着工程に適した、繰り返し使用寿命が長く、かつ良好な離型特性を有する複合シートを得ることを課題とする。
【解決手段】電子機器の製造工程の一つである熱圧着工程で使用される複合シートにおいて、耐熱性樹脂フィルムと、この耐熱性樹脂フィルムの両面に形成されたシリコーンゴム系組成物からなるシートとを具備し、前記シートのシリコーンゴム系組成物は、重量部で、シリコーンゴム100に対し、シリカ粉末:2〜100、カーボンブラック:0〜200、酸化マグネシウム:10〜1000、酸化鉄:0〜20、酸化セリウム:0.1〜0.5を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器,特にフラットパネルディスプレイ(FPD)、更に詳しくはカラーTFT液晶モジュールやカラーSTN液晶モジュールプラズマディスプレィパネル(PDP),有機エレクトロルミネッセンスディスプレィパネルの製造工程の一つである圧着工程に使用される複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の製造プロセスにおいては、図1〜図3に示すような圧着工程が行なわれている。ここで、図1は全体図、図2は図1のA部分を拡大して断面を示すX矢視図、図3は図1のB部分を拡大して断面を示すY矢視図である。但し、図1は圧着前、図2,3は圧着後の状態を示している。
【0003】
図中の符番1は、上部に第1の電極2が形成されたガラス基板を示す。このガラス基板1の端部には、フレキシブルプリント基板(FPC)3の一方の端部が熱圧着により積層される。ここで、FPC3は、ドライバーIC4を形成したフィルム5と、このフィルム5の片側に形成された第2の電極6とを有している。前記ガラス基板1とFPC3との熱圧着予定部上には、下端部に離型シート7を備えたヒータ8が配置されている。FPC3の他方の端部は、端部に第3の電極9が形成されたPCB(printed circuit board)基板10と熱圧着により積層される。前記PCB基板10とFPC3との熱圧着予定部上には、下端部に離型シート11を備えたヒータ12が配置されている。なお、付番13は異方性導電フィルム(ACF)、符番14はシール材を示す。また、第3の電極9,第2の電極6,第1の電極2の順に厚みが薄く設定されている。
【0004】
図1の圧着工程では、ガラス基板1の第1の電極2とFPC3の第2の電極6間にACF13を介在させた状態で、ACF13上のFPC3とヒータ8の間に離型シート7を介してヒータ8によって熱圧着させることにより、ガラス基板1の第1の電極2とFPC3の第2の電極6との電気的な接続を行う。また、PCB基板10の第3の電極9とFPC3の第2の電極6間にACF13を介在させた状態で、ACF13上のFPC3とヒータ12の間に離型シート11を介してヒータ12によって熱圧着させることにより、PCB基板10の第3の電極9とFPC3の第2の電極6との電気的な接続を行う。
【0005】
ところで、圧着工程に使用される離型シート7,11には、均一な圧着を行うためのクッション性と共に圧着時にはみ出したACF13に対する離型性が要求されている。特に、PCB基板の第3の電極9とFPC3の第2の電極6との接続を行うB箇所ではガラス基板用の離型シートより大きなクッション性を要求される。従来、シリコーンゴムシート、あるいは離型性を有したフッ素樹脂フィルム、あるいはシリコーンゴムとフッ素樹脂フィルムの複合シート等が種々提案、使用されている。
【0006】
従来、上記離型シートと同様な目的を有したゴム複合シートとしては、例えば特許文献1が提案されている。このゴム複合シートは、樹脂フィルムと、この樹脂フィルムの一方の面(フレキシブル基板側)に形成されたフッ素樹脂層と、樹脂フィルムの他方の面に形成されたゴム層とから構成され、変形に強く、且つ異方性導電膜との離型性を確保するための構成を有している。
【0007】
しかしながら、近年、圧着サイクルを短縮して生産性を向上させるために、ACFの材質が低温短時間タイプに替わり、接続信頼性の維持,向上が求められている。また、ACFを使用する圧着工程も用途的に多岐に渡っており、提案されている離型シートでも満足な離型特性、繰り返し使用寿命を提供しているとは言い難いのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−55687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、耐熱性樹脂フィルムとこのフィルムの両面に形成されたシリコーンゴム系組成物からなるシートとを備えた構成とするとともに、前記シートのシリコーンゴム系組成物を特定の組成にすることにより、種々の異方性導電フィルムを使用する圧着工程に適した、繰り返し使用寿命が長く、かつ良好な離型特性を有する複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の複合シートは、電子機器の製造工程の一つである熱圧着工程で使用される複合シートにおいて、耐熱性樹脂フィルムと、この耐熱性樹脂フィルムの両面に形成されたシリコーンゴム系組成物からなるシートとを具備し、前記シートのシリコーンゴム系組成物は、重量部で、シリコーンゴム100に対し、シリカ粉末:2〜100、カーボンブラック:0〜200、酸化マグネシウム:10〜1000、酸化鉄:0〜20、酸化セリウム:0.1〜0.5を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、種々の異方性導電フィルムを使用する圧着工程に適した、繰り返し使用寿命が長く、かつ良好な離型特性を有する複合シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】回路基板の電極端子部とガラス基板,PCB基板の導電部との熱圧着を、離型シートを用いて行う場合の説明図。
【図2】図1の要部を拡大して示すX矢視図。
【図3】図2の要部を拡大して示すY矢視図。
【図4】本発明の実施例1に係る複合シートの概略的な断面図。
【図5】本発明の複合シートの厚み減少率を試験するための試験装置の説明図。
【図6】本発明の複合シートの圧着耐久性を試験するための試験装置の説明図。
【図7】本発明の実施例9に係る複合シートの概略的な断面図。
【図8】本発明の実施例10に係る複合シートの概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明において、前記耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂のいずれかの耐熱性樹脂からなるフィルムが挙げられるが、特に限定されない。
【0014】
本発明において、シリコーンゴム100重量部に対してシリカ粉末を2〜100重量部とするのは、次の理由による。即ち、シリカ粉末が2重量部未満では、ゴム硬度が低くなって残留圧縮歪みが大きくなる。また、シリカ粉末が100重量部を超えると、ゴム硬度が高くなりすぎてクッション性が劣るとともに、成形性が悪化する。
【0015】
本発明において、シリコーンゴム100重量部に対してカーボンブラックを0〜200重量部とするのは、カーボンブラックが200重量部を超えると、電気伝導度が高くならず帯電防止特性の向上が少ないとともに、成形性が悪化するからである。
【0016】
本発明において、シリコーンゴム100重量部に対して酸化マグネシウムを10〜1000重量部とするのは、次の理由による。即ち、酸化マグネシウムが10重量部未満では、熱伝導速度が低く、昇温に時間がかかる。また、酸化マグネシウムが1000重量部を超えると、熱伝導速度が高くならずに充填量の増加に対する効果が得られないとともに、成形性が悪化し硬化後のゴムが脆くなる。
【0017】
本発明において、シリコーンゴム100重量部に対して酸化鉄を0〜20重量部とするのは、20重量部を超えると、高温加圧下でのシリコーンポリマーの低分子量化を抑制できず、残留圧縮歪みを低下することができないからである。
【0018】
本発明において、シリコーンゴム100重量部に対して酸化セリウムを0.1〜0.5重量部とするのは、次の理由による。即ち、酸化セリウムが0.1重量部未満では、高温加圧下でのシリコーンポリマーの低分子量化が生じ、残留圧縮歪みが大きい。また、酸化セリウムが0.5重量部を超えると、高温加圧下でのシリコーンポリマーの低分子量化を抑制できず、残留圧縮歪みを低下することができない。
【0019】
本発明において、総厚は0.01〜5mmであることが好ましい。ここで、総厚が0.01mm未満の場合は強度不足により使用寿命を満足せず、総厚が5mmを越えると熱伝導速度が低く圧着に時間がかかる。
【0020】
以下、この発明の各実施例に係る複合シートについて、図面を参照して説明する。なお、下記実施例1〜8は、図1のA部分での電極間の圧着に用いられる複合シートである。また、下記実施例9,10は、図1のB部分での電極間の圧着に用いられる複合シートに関する。
【0021】
(実施例1)
図4を参照する。
図中の付番21は、ポリイミドからなる厚み50μmの耐熱性樹脂フィルム(ポリイミドフィルム)を示す。このポリイミドフィルム21の両面には、コロナ放電処理により粗面化された凹凸面21a,21bが夫々形成されている。凹凸面21a,21bが形成されたポリイミドフィルム21の両面には、夫々シリコーンゴム系組成物からなる黒色のシート22a,22bが形成されている。ここで、シート22a,22bは、オルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)100重量部に、シリカ粉末12重量部,カーボンブラック42重量部,酸化マグネシウム260重量部,酸化鉄2重量部及び酸化セリウム0.1重量部を均一に混合してなるシリコーン系組成物を積層、乾燥、硬化して形成される。
【0022】
次に、図4の複合シートの製造方法について説明する。
(1)まず、基材としての厚さ50μmのポリイミドフィルムを使用した。このポリイミドフィルムは、プライマーとしてポリアルコキシシラン、白金化合物、テトラエトキシシランをn−ヘキサンに溶解したものを用いて両面にコーティングし、室温で10分乾燥した。この時の目付け量は片面2.0g/mであった。また、これとは別に、オルガノポリシロキサン100重量部に、シリカ粉末12重量部,カーボンブラック42重量部,酸化マグネシウム260重量部,酸化鉄2重量部及び酸化セリウム0.1重量部を混練機で均一に混合することにっよってシリコーンゴム系組成物を得た。
【0023】
(2)次に、前記シリコーン系ゴム組成物をトルエン溶剤に溶解し、更に白金加硫剤を加えてゴムペーストを作成した。つづいて、前記プライマー処理を施した厚さ50μmのポリイミドフィルムの片面に前記ゴムペーストをコーティング後、熱気加硫炉により170℃下で10分間加硫した。ひきつづき、この処理をポリイミドフィルムの他方の面にも繰返して行うことによって、ポリイミドの芯材を中間として上下面を対称な構造とした。更に、200℃の熱風乾燥炉で4時間処理することによって2次加硫を行い、総厚み200μmのシリコーンゴム組成物被覆の複合シートを得た。
【0024】
実施例1によれば、凹凸面21a,21bを有したポリイミドフィルム21と、このポリイミドフィルム21の両面に形成された,所定の組成を有するシリコーンゴム系組成物からなるシート22a,22bから複合シート23が構成されている。従って、本発明の複合シート23は、種々の異方性導電フィルムを使用する圧着工程に適した、繰り返し使用寿命が長く、かつ良好な離型特性を有する。
【0025】
事実、図5に示すような試験機を用いて上記複合シートの厚み減少率(%)の試験を行った。この試験は、ヒータ下盤31上に複合シート32を載置し、この複合シート32を加熱したヒータ上盤33でプレスし、複合シート32の厚み減少の割合を測定することにより行った。また、図6に示すような試験機を用いて上記複合シートの圧着耐久性の試験を行った。この試験は、加熱したヒータ下盤31上にプリント基板34a,異方性導電性フィルム35,パターン設計していない銅蒸着ポリイミドフィルム34bを順次介して複合シート32を載置し、この複合シート32を加熱したヒータ上盤33でプレスすることにより行った。
【0026】
厚み減少率は、プレス圧力:4MPa,ヒータ上盤温度:300℃,ヒータ下盤温度:常温,プレス保持時間:10sec,プレス間隔:5sec,プレス回数:80回として求めた。
圧着耐久性は、プレス圧力:3MPa,ヒータ上盤温度:280℃,ヒータ下盤温度:45℃,プレス保持時間:15sec,プレス回数:20,40,60,80回(各プレス回数後にACFの圧着状態を圧着試験後の導通によって確認)として求めた。
【0027】
(実施例2〜8及び比較例1〜3)
原料の組成物の成分の配合割合を変えること以外、上記実施例1と同様な操作で複合シート得た。但し、比較例3についてはポリイミドフィルムを使用していない。
下記表1は、実施例1〜8及び比較例1〜3の原料の組成物の成分、厚み減少率、昇温速度、帯電防止性、成形加工性及び圧着耐久性(夫々20回,40回,60回,80回)について調べた結果を示す。但し、表1において、昇温速度、帯電防止性、成形加工性及び圧着耐久性は、最良のものを二重丸で、良好のものを一重丸で、普通のものを三角で、不良のものをバツで表した。なお、表1において、実施例1〜8及び比較例1,2のシート22a,22bの厚さは夫々75μm、比較例3のゴム層の厚みは200μmである。
【表1】

【0028】
上記表1に基づく実施例1〜8及び比較例1〜3の複合シートについての考察は次の通りである。
【0029】
実施例1の場合、特性としての昇温速度、帯電防止性、成形加工性、圧着耐久性がバランス良く設定されており、ACFの圧着に用いられる熱圧着シートに要求される特性を満足することが確認できた。
実施例2の場合、昇温速度は低熱伝導であり圧着時間を短縮し、また帯電防止性は低導電性を有するものの帯電を防止している。しかし、シリコーンゴム組成物からなる被覆層の強度低下が見られ、圧着耐久性が乏しいことが確認できた。
【0030】
実施例3の場合、昇温速度は弱熱伝導であり圧着時間の短縮は不十分であり、また帯電防止性は高導電で良好である。また、シリコーンゴム組成物からなる被覆層に若干の強度低下が見られ、圧着耐久性が不足していることが確認できた。
実施例4の場合、昇温速度は低熱伝導性で圧着時間を短縮し、また帯電防止性は高導電で極めて良好である。しかし、シリコーンゴム組成物からなる被覆層に若干の強度低下が見られ、圧着耐久性も不足していることが確認できた。
【0031】
実施例5の場合、昇温速度は中熱伝導であり圧着時間を良好に短縮し、また帯電防止性は高導電で極めて良好である。しかし、シリコーンゴム組成物からなる被覆層に若干の強度低下が見られ、圧着耐久性も若干不足していることが確認できた。
実施例6の場合、昇温速度は中熱伝導であり圧着時間を極めて良好に短縮し、また帯電防止性は低導電性であるものの帯電を防止している。また、シリコーンゴム組成物からなる被覆層に強度低下が見られず、圧着耐久性も十分であることが確認できた。
【0032】
実施例7の場合、昇温速度は高熱伝導であり圧着時間を極めて良好に短縮し、また帯電防止性は低導電性であるため帯電防止不良である。また、シリコーンゴム組成物からなる被覆層に強度低下が見られず、圧着耐久性も十分であることが確認できた。
実施例8の場合、昇温速度は高熱伝導であり圧着時間を極めて良好に短縮し、また帯電防止性は高導電性で極めて良好である。しかし、シリコーンゴム組成物からなる被覆層に強度低下が見られ、圧着耐久性も不十分である。なお、成形性に支障はないが、成分配合量が多いため、複合シートが柔軟性に欠け、健全なACFの圧着に不確実性が残ることが確認できた。
【0033】
比較例1の場合、昇温速度は弱熱伝導であり圧着時間の短縮は不十分であり、また帯電防止性は弱導電性であるため帯電防止不良である。また、シリコーンゴム組成物からなる被覆層の強度が著しく低下する為、変形量が大きく、繰返しの圧着が出来ないことが確認できた。
比較例2の場合、成形加工性として成分配合量が多く成形不能であることが確認できた。
比較例3の場合、昇温速度は高熱伝導であり圧着時間を極めて良好に短縮し、また帯電防止性は高導電でありきわめて良好である。しかし、シリコーンゴム組成物からなる被覆層の強度が著しく低下するため、変形量が大きく、繰返しの圧着が出来ないことが確認できた。
【0034】
(実施例9)
図7を参照する。なお、実施例9及び後述する実施例10の複合シートの場合、FPCの端子部分の凹凸が大きい用途で使用することを想定しているので、第1・第2シートの厚みは十分厚く形成されている。ここで、図7において、複合シートは、第1のシート42aがACF側,第2のシート42bがヒータ側となるようにセットする。
【0035】
図中の付番41は、ポリイミドからなる厚み25μmの耐熱性樹脂フィルム(ポリイミドフィルム)を示す。このポリイミドフィルム41の両面には、コロナ放電処理により粗面化された表面粗さ(Ra)が1.4の凹凸面41a,41bが夫々形成されている。凹凸面41a,41bが形成されたポリイミドフィルム41の両面には、夫々シリコーンゴム系組成物からなる黒色の第1のシート(厚み210μm)42a,シリコーンゴム系組成物からなる灰色の第2のシート(厚み115μm)42bが形成されている。
【0036】
ここで、第1のシート42aは、平均重合度4000のオルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)100重量部に、シリカ粉末12重量部,カーボンブラック42重量部,酸化マグネシウム262重量部,酸化鉄2重量部及び酸化セリウム0.1重量部を均一に混合してなるシリコーン系組成物を積層、乾燥、硬化して形成される。第2のシート42bは、平均重合度3700のオルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)100重量部に、シリカ粉末31重量部,酸化マグネシウム698重量部,酸化鉄6重量部及び酸化セリウム0.1重量部を均一に混合してなるシリコーン系組成物を積層、乾燥、硬化して形成される。下記表2は、実施例9及び後述する実施例10における各原料の配合割合、第1,第2のシートの厚み、厚み減少率、昇温速度、帯電防止性、成形加工性及び圧着耐久性(夫々20回,40回,60回,80回)について調べた結果を示す。但し、表2において、昇温速度、帯電防止性、成形加工性及び圧着耐久性は、最良のものを二重丸で、良好のものを一重丸で、普通のものを三角で、不良のものをバツで表した。
【表2】

【0037】
次に、図7の複合シート43の製造方法について説明する。
(1)まず、基材としての厚さ25μmのポリイミドフィルムを使用した。また、オルガノポリシロキサン100重量部に、シリカ粉末12重量部,カーボンブラック42重量部,酸化マグネシウム262重量部,酸化鉄2重量部及び酸化セリウム0.1重量部を混練機で均一に混合することにっよってシリコーンゴム系組成物を得た。
【0038】
(2)次に、前記シリコーン系ゴム組成物をトルエン溶剤に溶解し、更に白金加硫剤を加えてゴムペーストを作成した。つづいて、前記プライマー処理を施した厚さ25μmのポリイミドフィルムの片面に前記ゴムペーストをコーティング後、熱気加硫炉により170℃下で10分間加硫した。ひきつづき、この処理をポリイミドフィルムの他方の面にも繰返して行うことによって、ポリイミドの芯材を中間とした両面構造とした。更に、200℃の熱風乾燥炉で4時間処理することによって2次加硫を行い、総厚み350μmのシリコーンゴム組成物被覆の複合シート43を得た。
実施例9によれば、凹凸面41a,41bを有したポリイミドフィルム41と、このポリイミドフィルム41の一方の面に形成された,所定の組成を有するシリコーンゴム系組成物からなる厚みが夫々210μmの第1のシート42aと、ポリイミドフィルム41の他方の面に形成された,所定の組成を有するシリコーンゴム系組成物からなる厚みが夫々115μmの第2のシート42bから複合シート43が構成されている。従って、本発明の複合シート43は、実施例1と同様な効果が得られる他、以下に述べる効果を有する。
【0039】
即ち、用途によっては、複合シートに要求されるクッション性の程度は異なる。例えば、クッション性を必要とする用途に対しては、シートの厚さを厚くする必要がある、ここで、両面の第1・第2のシートの厚さを厚くすると、クッション性は付与できるが、熱伝導性が損なわれる。そこで、ワーク(フレキシブル基板)に接触する第1のシート42aの厚みを厚くし、第2のシート42bの厚みを薄くすることで、熱伝導性を損なうことなくクッション性を付与することができる。上記実施例9の場合、第1のシート42aの厚みを210μmとし、第2のシート42bの厚みを115μmとしているので、複合シート43の熱伝導性を損なうことなく、クッション性を付与することができる。なお、図5の複合シート43において、第1のシート42aは機能性発現のため、第2のシート42bは反り防止のために必要である。
【0040】
また、同じ色のシートをポリイミドフィルムの両面に形成すると、複合シート43の表裏の識別が目視できない。そこで、上記実施例9の場合、第1のシート42aの色を黒色とし、第2のシート42bの色を灰色としているので、複合シート43の表裏の識別を容易に行うことができる。更に、ポリイミドフィルムの厚みを25μmとしているので、実施例1と比べ、熱伝導性を改善できる。
このように、実施例9の複合シートは、昇温速度を改善し、帯電防止性、成形加工性、圧着耐久性がバランス良く設定されており、実施例1と比べよりクッション性を要求される用途にも適している。
【0041】
(実施例10)
図8を参照する。但し、図7と同部材は同符番を付し、説明を省略する。
上記表2に示すように、第1のシート52aは厚みが150μmで黒色であり、第2のシート52bは第1のシート52aと厚み及び色が同じである。従って、第1のシート51aと第2のシート52bの配合割合は同じである。また、実施例10に係る複合シート53の製作方法は実施例9の場合と同様である。
【0042】
実施例10によれば、昇温速度を改善し、帯電防止性、成形加工性、圧着耐久性がバランス良く設定されており、実施例1と比べ厚さ減少率,熱伝導性が若干改善された複合シートが得られる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
21,41…ポリイミドフィルム(耐熱性樹脂フィルム)、21a,21b,41a,41b…凹凸面、22a,22b…シリコーンゴム系組成物からなるシート、31…ヒータ下盤、23,32,43,53…複合シート、33…ヒータ上盤、34a…プリント基板、34b…パターン設計していない銅蒸着ポリイミドフィルム、35…異方性導電フィルム,42a,52a…第1のシート、42b,52b…第2のシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の製造工程の一つである熱圧着工程で使用される複合シートにおいて、
耐熱性樹脂フィルムと、この耐熱性樹脂フィルムの両面に形成されたシリコーンゴム系組成物からなるシートとを具備し、
前記シートのシリコーンゴム系組成物は、重量部で、シリコーンゴム100に対し、シリカ粉末:2〜100、カーボンブラック:0〜200、酸化マグネシウム:10〜1000、酸化鉄:0〜20、酸化セリウム:0.1〜0.5を含むことを特徴とする複合シート。
【請求項2】
耐熱性樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂のいずれかの耐熱性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の複合シート。
【請求項3】
総厚が0.01〜5mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の複合シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−286114(P2009−286114A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58434(P2009−58434)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000211156)中興化成工業株式会社 (37)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】