説明

複合シート

【課題】多層プリント配線板を製造する際に、機械強度、加工性、誘電特性、薄膜化を可能とする剛性に優れる複合シートを提供する。
【解決手段】耐熱樹脂層、無機酸化物層、熱硬化性樹脂組成物層を含有する複合シートを用いることにより上記課題を解決できることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合シート、金属張積層板、多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の、電子機器や電子部品の小型化のニーズにより、多層プリント配線板においては、コア基板の薄型化や、省略化が要求される傾向にあり、その際多層プリント配線板の機械的強度を維持しながら薄型化を図る必要がある。そこで、ガラスクロスをエポキシ樹脂中に含浸させて製造した機械強度に優れたプリプレグを絶縁層に使用することにより、機械的強度を付与した上で内層回路基板を薄型化し、実装信頼性等を確保する工法が考案されている(特許文献1)。しかしながら、ガラスクロスには、機械強度が優れるものの薄型化に限界がある点、バスケットホールと呼ばれる網目状の構造を有するため、作製した絶縁層が平坦ではなくムラを生じ誘電特性が悪い点、加工性が極めて悪い点などの問題点がある。
【0003】
上記問題を解決する方法としては、耐熱樹脂層を熱硬化性樹脂組成物層で挟み込む方法が提案されている。例えば、特許文献2にはアラミドフィルムを熱硬化性樹脂組成物層で挟み込み、機械強度に優れる絶縁層を形成する方法が開示されている。しかし、該特許のアラミドフィルムと熱硬化性樹脂組成物層での構成は、各種信頼性に耐えうる十分な密着が確保できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−342871号
【特許文献2】国際公開2001/097582号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、多層プリント配線板を製造する際に、機械強度、加工性、誘電特性、薄膜化を可能とする剛性に優れる複合シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、耐熱樹脂層、無機酸化物層、熱硬化性樹脂組成物層を含有する複合シートを用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
[1]耐熱樹脂層(A層)、無機酸化物層(B層)、熱硬化性樹脂組成物層(C層)を含有することを特徴とする、複合シート。
[2]耐熱樹脂層(A層)の少なくとも片面に無機酸化物層(B層)が形成され、その両面に熱硬化性樹脂組成物層(C層)が形成されたことを特徴とする、複合シート。
[3]耐熱樹脂層(A層)がプラスチックフィルムであることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の複合シート。
[4]耐熱樹脂層(A層)が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルサルホンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合シート。
[5]無機酸化物層(B層)がシリカ、アルミナ、酸化クロムから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の複合シート。
[6]耐熱樹脂層(A層)の厚みが2〜50μmであることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の複合シート。
[7]無機酸化物層(B層)の厚みが0.00001〜5μmであることを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の複合シート。
[8]更に、金属層(D層)を含有することを特徴とする、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の複合シート。
[9]金属層(D層)が、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、クロム、ニッケル・クロムアロイから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、上記[8]記載の複合シート。
[10]無機酸化物からなる絶縁物層(B層)がスパッタ又は/及び蒸着、イオンプレーティングにて形成されたことを特徴とする、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の複合シート。
[11]金属層(D層)がスパッタ又は/及び蒸着、イオンプレーティング、金属箔にて形成されたことを特徴とする、上記[8]〜[10]のいずれかに記載の複合シート。
[12]比誘電率が0.01〜3.37であることを特徴とする、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の複合シート。
[13]上記[1]〜[12]の複合シートを用いて製造された金属張積層板。
[14]上記[1]〜[12]の複合シートを用いて製造された多層プリント配線板。
[15]上記[1]〜[12]の複合シートを用いて製造された半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
耐熱樹脂層、無機酸化物層、熱硬化性樹脂組成物層を含有する複合シートを用いることにより、機械強度、加工性、誘電特性、薄膜化を可能とする剛性に優れる複合シートを提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の銅張積層板の剛性を測定するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(A)耐熱樹脂層、(B)無機酸化物層、(C)熱硬化性樹脂組成物層、を含有することを特徴とする複合シートである。
【0011】
[(A)耐熱樹脂層]
本発明の複合シートに用いる耐熱樹脂層(以下、A層ともいう。)は、多層配線基板に用いられる絶縁層に適したものであれば特に限定されない。具体的には、自己支持性を有するフィルム又はシートが挙げられ、プラスチックフィルムが好ましい。プラスチックフィルムとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリエーテルニトリル、フッ素樹脂、ポリカーボネート、変成ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、およびポリアクリレート等の耐熱樹脂又は、これら2種類以上のアロイも挙げられ、ガラス転移温度が200℃以上であるか、または分解温度が300℃以上であるプラスチックフィルムがより好ましい。中でもコスト低減、耐熱性向上、汎用性を有するという観点から、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルサルホンが好ましく、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルホンがより好ましい。
【0012】
耐熱樹脂層の厚さの上限値は、コスト高となるのを防止し、複合シートが厚いため製造される金属張積層板又は多層プリント配線板が厚くなるのを防止するという観点から、50μm以下が好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。一方、耐熱樹脂層の厚さの下限値は、複合シートや、製造される金属張積層板又は多層プリント配線板の機械強度が不足するのを防止するという観点から、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、4μm以上が更に好ましく、5μm以上が更に一層好ましい。
【0013】
本発明における耐熱樹脂はフィルム状で市販されているものを用いることができ、例えば、宇部興産(株)製ポリイミドフィルム「ユービレックス−S」、東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム「カプトン」、鐘淵化学工業(株)製ポリイミドフィルム「アピカル」、(株)クラレ製液晶ポリマーフィルム「ベクスター」、東レ(株)製ポリフェニレンサルファイドフィルム「トレリナ」、アラミドフィルム「ミクトロン」、ビクトレックスジャパン(株)製ポリエーテルエーテルケトンフィルム「APTIV Films」等のフィルム状の耐熱樹脂を用いることができる。
【0014】
[(B)無機酸化物層]
本発明の複合シートに用いる無機酸化物層(以下、B層ともいう。)の無機酸化物は、多層配線基板に用いられる絶縁層に適したものであれば特に限定されない。具体的には、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム等の単体のほか、適宜2種類以上の固溶体(アロイ)などのあらゆる種類の無機酸化物を使用することができる。なかでも、コスト低減、蒸着法やスパッタリング法の汎用性の観点から、シリカ、アルミナ、酸化クロムが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカが更に好ましい。また、無機酸化物層は単層であっても異なる無機酸化物の2層以上の積層で構成されていてもよい。
【0015】
[(C)熱硬化性樹脂組成物層]
本発明の複合シートに用いる熱硬化性樹脂組成物層(以下、C層ともいう。)の熱硬化性樹脂組成物は、多層配線基板の絶縁層に適したものであれば特に限定されない。具体的には、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の熱硬化性樹脂にその硬化剤を少なくとも配合した組成物が使用される。特にエポキシ樹脂及びその硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0016】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体及び水素添加物等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
エポキシ樹脂は、これらの中でも、耐熱性向上、絶縁信頼性向上の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製「jER828EL」(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D](ナフタレン型2官能エポキシ樹脂)、DIC(株)製「HP4700」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、東都化成(株)製「ESN−475V」「ESN−185V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」、「NC3000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、東都化成(株)製GK3207(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8800」(アントラセン骨格含有型エポキシ樹脂)などが挙げられる。
【0018】
エポキシ樹脂は、樹脂シートの形態で使用する場合、耐熱性や破断強度とラミネート性を両立するために、1分子中に2以上のエポキシ基を有する室温(25℃)で液状の芳香族系エポキシ樹脂、若しくは融点以上で溶解させた後、室温にて液状となる結晶性芳香族系エポキシ樹脂と、1分子中に3以上エポキシ基を有する室温(25℃)で固体状の芳香族系エポキシ樹脂を併用して用いるのが好ましい。また該固体状の芳香族系エポキシ樹脂は、ガラス転移温度等の物性向上のため、エポキシ当量が230以下のものが好ましく、エポキシ当量が150〜230の範囲にあるものがより好ましい。該液状の芳香族系エポキシ樹脂と固体状の芳香族系エポキシ樹脂の割合は、質量比で1:(0.3〜2)の範囲が好ましく、1:(0.5〜1)の範囲がより好ましい。ここでエポキシ当量(g/eq)とは、エポキシ樹脂の平均分子量を1分子あたりのエポキシ基数で割った値のことである。
【0019】
エポキシ樹脂の配合量は、絶縁信頼性向上、耐熱性向上という観点から、熱硬化性樹脂組成物中の不揮発分を100質量%としたとき、0.1〜50質量%の範囲が好ましく、10〜45質量%の範囲がより好ましく、15〜40質量%の範囲が更に好ましい。
【0020】
(硬化剤)
硬化剤としては、特に限定はされないが、例えば、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等を挙げることができる。なかでも、熱硬化性樹脂組成物の耐熱性向上の観点から、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤が好ましく、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。硬化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成(株)製)、TD2090(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤の具体例としては、LA7052、LA7054、LA1356、LA3018(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0022】
活性エステル系硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステルが好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル化合物は1種又は2種以上を併用してもよい。活性エステル化合物としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとして、EXB−9451、EXB−9460(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製)、などが挙げられる。
【0023】
ベンゾオキサジン系化合物の具体例としては、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。ベンゾオキサジン系化合物は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0024】
シアネートエステル系硬化剤は、特に限定はされないが、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル樹脂およびこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。なかでも、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが好ましい。市販されているシアネートエステル樹脂としては、ロンザジャパン(株)製PT30(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂、シアネート当量124)、ロンザジャパン(株)製BA230(ビスフェノールAジシアネートの一部または全部がトリアジン化され、三量体となったプレポリマー、シアネート当量232)、ロンザジャパン(株)製DT4000(ジシクロペンタジエン型多官能シアネートエステル樹脂、シアネート当量140)等が挙げられる。シアネートエステル樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤の場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対してこれら硬化剤のフェノール性水酸基当量が0.3〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.4〜1.0の範囲となる比率がより好ましい。反応基当量比がこの範囲外であると、硬化物の機械強度や耐水性が低下する傾向にある。ここでフェノール性水酸基当量とは、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤のそれぞれの平均分子量を1分子あたりのフェノール性水酸基数で割った値のことである。
【0026】
エポキシ樹脂と硬化剤の合計配合量は、熱硬化性樹脂組成物中の不揮発分を100質量%としたとき、0.1〜60質量%の範囲で使用するのが好ましい。この範囲よりも少ないと十分な硬化物性が得られない傾向があり、この範囲より多いと樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向がある。
【0027】
(硬化促進剤)
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、さらに硬化促進剤を含有させることにより熱硬化性樹脂を効率的に硬化させることができる。このような硬化促進剤としては、特に限定はされないが、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、有機ホスフィン・ホスホニウム化合物等が挙げられる。具体例としては、例えば、四国化成(株)製の2MZ(2-メチルイミダゾール)、C11Z(2-ウンデシルイミダゾール)、C17Z(2−ヘプタデシルイミダゾール)、1.2DMZ(1,2−ジメチルイミダゾール)、2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ(2−フェニルイミダゾール)、2P4MZ(2−フェニル−4−メチルイミダゾール)、1B2MZ(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール)、1B2PZ(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)、2MZ−CN(1 - シアノエチル−2−メチルイミダゾール)、C11Z−CN(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)、2E4MZ−CN(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ−CN(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)、C11−CNS(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト)、2PZCNS−PW(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト)、2MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、C11Z−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2E4MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2MA−OK(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)、2PHZ−PW(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)、2P4MHZ−PW(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)、TBZ(2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、SFZ(1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド)、P−0505(エポキシ−イミダゾールアダクト)等のイミダゾール化合物、サンアプロ(株)製のU-CAT SA 1(DBU-フェノール塩)、U-CAT SA 102(DBU-オクチル酸塩)、U-CAT SA 506(DBU-p-トルエンスルホン酸塩)、U-CAT SA 603(DBU-ギ酸塩)、U-CAT SA 810(DBU-オルトフタル酸塩、U-CAT SA 831、841、851、U-CAT 881(DBU-フェノールノボラック樹脂塩)、U-CAT 5002(N-ベンジルDBU-テトラフェニルボレート塩)等のジアザビシクロ化合物、北興化学工業(株)製のTPP−S(トリフェニルホスフィントリフェニルボラン)、TPP−K(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)、TBP−DA(テトラブチルホスホニウムデカン酸塩)などの有機ホスフィン・ホスホニウム化合物などが挙げられる。硬化促進剤を用いる場合、エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いるのが好ましい。硬化促進剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
(熱可塑性樹脂)
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、さらに熱可塑性樹脂を含有させることにより硬化後の熱硬化性組成物層に適度な可撓性を付与することができる。熱可塑性樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリスルホン等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂組成物中の不揮発分を100質量%としたとき、0.5〜60質量%の割合で配合するのが好ましく、3〜50質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂の配合割合が0.5質量%未満の場合、樹脂組成物の粘度が低いために、均一な熱硬化性樹脂組成物層を形成することが難しくなる傾向となり、60質量%を超える場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、基板上の配線パターンへの埋め込みが困難になる傾向となる。
【0029】
フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YL6954、YL6974、YL7482、YL7553、YL6794、YL7213、YL7290等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ポリイミドの具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ポリアミドイミドの具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ポリエーテルサルホンの具体例としては、住友化学(株)社製のポリエーテルサルホン「PES5003P」等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ポリスルホンの具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(無機充填材)
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、さらに無機充填材を含有させることにより硬化後の熱硬化性組成物層の低熱膨張性を付与することができる。無機充填材としては、特に限定はされないが、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。なかでも、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、中空シリカ、合成シリカ等のシリカがより好ましい。また、シリカとしては球状のものが好ましい。
【0036】
無機充填剤の平均粒径は絶縁信頼性向上の観点から、3μm以下であるのが好ましく、1.5μm以下であるのがより好ましく、1μm以下であるのが更に好ましい。また、凝集を防止するという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更にこのまし。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0037】
無機充填材は、表面処理剤で表面処理してその耐湿性、分散性等を向上させたものが好ましい。表面処理剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートのチタネート系カップリング剤などが挙げられる。これらは1種又は2種以上の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0038】
熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、20〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましく、25〜60質量%が更に一層好ましい。無機充填材の含有量が20重量%未満の場合、熱膨張率の低下効果が十分に発揮されない傾向にあり、無機充填材の含有量が90重量%を超えると、硬化物の機械強度が低下するなどの傾向となる。
【0039】
(他の成分)
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等の難燃剤、ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0040】
[複合シート]
本発明の複合シートは、A層、B層、C層を含有してさえいれば、特に限定されるものではない。本発明の複合シートの構成は、以下のものが例示される。
(1)A層+B層+C層
(2)B層+A層+C層
(3)C層+B層+A層+C層
(4)C層+B層+A層+B層+C層
A層、B層、C層はそれぞれ2層以上含有していても良い。A層上にはマッド処理やコロナ処理をほどこしておくことが出来る。なお、上記構成は本発明のフィルムの積層された順番を示している。
【0041】
本発明の複合シートは、まずA層上にB層を形成する。A層の両面にB層を形成する場合には、A層の両面同時にB層を形成してもよい。また、A層の片面にB層を形成し、その後もう一方の面にB層を形成するようにしてもよい。
【0042】
本発明の複合シートに用いるB層の形成は、蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法から選ばれる1種又は2種以上の方法で行うことができ、膜性能の点から、前述の耐熱樹脂層に蒸着法及び/又はスパッタリング法で行うのが好ましい。
【0043】
スパッタリング法は、公知の方法を用いることができ、A層を真空容器内に入れ、アルゴン等の不活性ガスを導入し、高周波電源を用い、ターゲットである無機酸化物をA層上に膜形成を行うことができる。また、蒸着法(真空蒸着法)も、公知の方法を用いることができ、A層を真空容器内に入れ、無機酸化物を加熱蒸発させることによりA層上に膜形成を行うことができる。また、イオンプレーティング法も、公知の方法を用いることができ、A層を真空容器内に入れ、グロー放電雰囲気下で、無機酸化物を加熱蒸発させ、イオン化した蒸発無機酸化物によりA層上に膜形成を行うことができる。
【0044】
なお、予め他の支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に形成しておいたB層をA層上にラミネートする等の、上述の蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法以外の方法でB層を形成することも可能である。
【0045】
B層の厚みの上限値は、コストが高くなることを防止するという観点から、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましく、2μm以下が更に一層好ましく、1μm以下が殊更好ましい。一方、B層の厚みの下限値は、絶縁基材として所望される剛性を得るという観点から、0.00001μm以上が好ましく、0.0001μm以上がより好ましく、0.001μm以上が更に好ましい。
【0046】
本発明の複合シートのC層を形成する方法としては、例えば、有機溶剤に熱硬化性樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、ダイコーターによりA層及び/又はB層上にコーティングし, 更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させる方法、あるいは前述の樹脂ワニスの浴を用意しA層及び/又はB層を樹脂ワニス浴に浸し、取り出し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させる方法が挙げられる。
【0047】
ワニスを調製する場合の有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。有機溶剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
熱硬化性樹脂組成物層の乾燥条件は、熱硬化性樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合は5質量%以下が好ましく、より好ましくは2重量%以下となるような条件であれば、特に限定されない。例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、80〜180℃で、3〜13分間乾燥させることが好ましい。
【0049】
また、C層を形成する方法としては、前述の樹脂ワニスを別途用意した自己支持性を有するフィルム上にコーティングし、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させる方法も挙げられる。この場合には、C層をA層及び/又はB層上にラミネートすることで複合シートを作製できる。
【0050】
ラミネート方法としては、市販の真空ラミネーターを使用する方法が挙げられる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製「バキュームアップリケーター」、(株)名機製作所製「バッチ式真空加圧ラミネーター MVLP−500」、日立テクノエンジニアリング(株)製「ロール式ドライコータ」、(株)日立インダストリイズ製「ロール式ドライコーター」、日立エーアイーシー(株)製「真空ラミネーター」等を挙げることができる。
【0051】
樹脂ワニスをコーティングする支持体には、自己支持性を有するフィルム又はシート状物が好適であり、特にプラスチックフィルムが好適に用いられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、中でも、安価なポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。樹脂ワニスと接触する側の支持体フィルム表面には、シリコン系離型剤、アルキッド系離型剤、フッ素系離型剤等の離型剤による離型処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。
【0052】
支持体層の層厚は、10μm〜70μmが好ましく、15μm〜70μmがより好ましい。層厚が小さすぎると、取り扱い性に劣る傾向となり、また支持体層の剥離性が低下する傾向にある。層厚が大きすぎると、コスト的に実用的でない傾向となる。
【0053】
ラミネートの際の加熱温度は、60〜140℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。圧着圧力は、1〜11kgf/cm2(9.8×10〜107.9×10N/m2)の範囲が好ましく、2〜7kgf/cm2(19.6×10〜68.6×10N/m2)の範囲がより好ましい。また、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。
【0054】
C層の厚さは、10〜150μmが好ましく、15〜80μmがより好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物層は異なる種類の熱硬化性樹脂組成物からなる2層以上で形成されていてもよい。また、複合シートの両面にC層を形成する場合には、A層及び/又はB層の両面同時にC層を形成してもよい。また、A層及び/又はB層の片面にC層を形成し、その後もう一方の面にC層を形成するようにしてもよい。
【0055】
また、A層をさらに形成する場合には、C層上に上記ラミネート条件を用いることによってA層を形成することができる。
【0056】
複合シートの比誘電率は電気信号の伝送損失を軽減するという観点から、3.37以下が好ましく、3.35以下がより好ましく、3.33以下が更に好ましく、3.31以下が更に一層好ましく、3.29以下が殊更好ましく、3.27以下が特に好ましく、3.25以下がとりわけ好ましい。また、実用的であるという観点から、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましい。
【0057】
[(D)金属層]
本発明の複合シートは、さらに金属層(以下、D層ともいう。)を、A層上あるいはC層上に形成させることができ、以下のものが例示される。
(1)D層+複合シート
(2)D層+複合シート+D層
(3)複合シート+D層+複合シート
なお、上記構成は本発明のフィルムの積層された順番を示している。
【0058】
D層としては、金、白金、銀、銅、コバルト、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、亜鉛、鉄、スズ、インジウム、アルミニウム等の金属単体のほか、適宜2種類以上の金属の固溶体(アロイ)などのあらゆる種類の金属を使用することができる。中でも、コスト低減、蒸着法やスパッタリング法の汎用性、電気伝導性向上の観点から、亜鉛、クロム、ニッケル、チタン、ニッケル・クロムアロイ、アルミニウム、金、銀、銅が好ましく、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、クロム、ニッケル・クロムアロイがより好ましく、銅が更に好ましい。また、D層は単層であっても異なる金属の2層以上の積層で構成されていてもよい。
【0059】
D層をA層上に形成させる方法は、上述したような蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法から選ばれる1種又は2種以上の方法で行うことができ、膜性能の点から、蒸着法及び/又はスパッタリング法で行うのが好ましい。
【0060】
D層をC層上に形成させる方法は、予め他の支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に金属層が形成されている金属層転写フィルム、又は市販品の金属箔を使用することができる。この場合、複合シートのC層上に前述金属層転写フィルム、又は金属箔をラミネートする等の方法で形成することができる。予め他の支持体上に形成されている金属層転写フィルムの金属層は、上述の蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法で形成される。ラミネートも上述の条件を用いる事ができる。
【0061】
また、C層をさらに形成する場合には、D層上に上記ラミネート条件を用いることによってC層を形成することができる。
【0062】
市販品の銅箔として具体的には、三井金属鉱業(株)製「NA−DFF」、「NA−VLP」、「Micro thin Ex」、「MT−H」、古河電工(株)製「F2−WS」等が挙げられる。
【0063】
D層の厚みの上限値は、コストが高くなることを防止するという観点から、70μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましい。一方、D層の厚みの下限値は、導電性向上の観点から、0.0001μm以上が好ましく、0.001μm以上がより好ましく、0.005μm以上が更に好ましい。また、複合シートの両面にD層を形成する場合には、複合シートの両面同時にD層を形成してもよい。また、複合シートの片面にD層を形成し、その後もう一方の面にD層を形成するようにしてもよい。
【0064】
本発明の複合シートの用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、金属張積層板、多層プリント配線板、半導体装置の製造において絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
【0065】
[金属張積層板]
本発明の複合シートを用いた金属張積層板を製造する具体的な方法について、以下に説明する。
【0066】
本発明の金属張積層板は、以下のものが例示される。
(1)D層+複合シート+D層
(2)D層+複合シート
なお、上記構成は本発明のフィルムの積層された順番を示している。
【0067】
本発明の金属張積層板は、上記(1)のように本発明の複合シートを1枚あるいは必要により数枚重ね、複合シートの最外層がD層となるように積層させ、離型フィルムを介して金属プレートにて挟み、減圧下、加熱及び加圧条件下でプレス積層することが出来る。また、複合シートの片側にすでにD層が形成されている場合には、その反対側に支持体上に形成されたD層を別途用意することで、上記(2)のようにしてD層を形成してもよい。
【0068】
減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、作業性及び一様な接触状態が得られやすい点から、市販の真空ホットプレス機を使用し、プレス圧着等によって貼り合わせる方法が挙げられる。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を複合シートの両面からプレスすることにより行うことができる。
【0069】
市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0070】
金属張積層板の成型においては、減圧度は1×10−2MPa以下が好ましく、1×10−3MPa以下がより好ましい。圧力は5〜40kgf/cm(49×10〜392×10N/m)の範囲が好ましく、温度は120〜200℃の範囲が好ましく、時間は20〜100分の範囲が好ましい。
【0071】
また、加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うことができる。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cmの範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜250℃、圧力が1〜40kgf/cmの範囲で行うのが好ましい。
【0072】
金属張積層板のD層を利用して導体層形成を行うことによって回路基板を製造することができる。かかる導体層形成はセミアディティブ法、サブトラクティブ法等の公知の方法により行うことができ、例えば、めっきレジストを形成し、上記の金属膜層をめっきシード層として、電解めっきにより導体層を形成する、もしくはD層をそのまま導体回路に使用する場合、D層上にレジストを形成し、エッチングにより不要なD層を削除し、導体層を形成する。電解めっきによる導体層は銅が好ましく、その厚みは所望の回路基板のデザインによるが、3〜35μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。電解めっき後、めっきレジストをアルカリ性水溶液等のめっきレジスト剥離液で除去後、めっきシード層の除去を行い、配線パターンが形成される。
【0073】
金属張積層板を使用した回路基板の製造方法では、スルーホールの形成工程を含ませることができる。スルーホール形成には、一般に機械ドリルが用いられるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等レーザーを用いても良い。
【0074】
[多層プリント配線板]
本発明の複合シートにおいて、最外層の少なくとも片面がC層となっている複合シートを用いた場合には、以下のような具体的な方法で多層プリント配線板を製造することができる。
【0075】
本発明の多層プリント配線板は、例えば、以下の工程(a)〜(f)を含む方法を典型例として挙げることができる。
(a)複合シートのC層を回路基板の片面又は両面に積層する工程、
(b)C層を硬化させる工程、
(c)穴あけする工程、
(d)粗化処理する工程
(e)導体層を形成する工程
(f)導体層に回路を形成する工程、
【0076】
なお、本発明における回路基板とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層が形成されたものをいう。また、導体層と絶縁層が交互に層形成してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層となっているものも本発明にいう回路基板に含まれる。なお、導体層表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層と導体層との密着性向上の観点から好ましい。
【0077】
(工程(a))
本発明の複合シートを回路基板に積層する際、回路基板側に位置するC層が保護フィルムで保護されている場合は保護フィルムを剥離した後、そのC層を回路基板側にして回路基板の片面又は両面に積層する。
【0078】
複合シートの積層方法は、上述のようなラミネート方法を用いることができ、ロールやプレス圧着等でC層を回路基板上にラミネートする場合、真空ラミネート法により減圧下でラミネートするのが好適である。また、ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また、ラミネートを行う前に複合シート及び回路基板を必要によりプレヒートしておいてもよい。
【0079】
また、本発明の複合シートは、上述のような真空プレス機を用いて積層させることも出来る。
【0080】
(工程(b))
熱硬化の条件は樹脂によっても異なるが、硬化温度は100〜200℃、硬化時間は10〜90分の範囲で選択する事が好ましい。比較的低い硬化温度から高い硬化温度へ段階的に硬化させる、又は上昇させながら硬化させる方が、形成される絶縁層表面のしわ防止の観点から好ましい。なお、硬化後において最外層に保護フィルムが存在する場合には該保護フィルムを剥離する。
【0081】
また、本発明の複合シートは、上述のような真空プレス機を用いて積層させた場合には、工程(a)の積層からそのまま工程(b)の硬化をさせることも出来る。
【0082】
(工程(c))
回路基板上に形成された複合シートは必要に応じて穴開けを行い、ブラインドビアやスルーホールの形成を行うことが出来る。多層プリント配線板のビルドアップされた絶縁層では、一般にブラインドビアにより層間の導通が行われる。スルーホールの形成は一般にコア基板において行われるが、絶縁層形成後にスルーホールが形成されてもよい。この場合、その後の粗化処理する工程をスルーホールに適用することができる。穴あけは、機械ドリル、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができる。
【0083】
(工程(d))
粗化処理する工程は、絶縁層表面の粗化処理、スローホール内及び/又はビア底のスミア除去を行うことができる。
【0084】
上記絶縁層表面の粗化処理、スローホール内及び/又はビア底のスミア除去は、乾式法、湿式法又はこれらの方法を組み合わせた方法で行うことができる。乾式法としては、パフ、サンドブラスト等の機械研磨による粗化処理やプラズマエッチングによる粗化処理などを挙げることができる。湿式法としては、アルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤溶液、または強アルカリ溶液など、化学薬品による粗化処理を挙げることができる。粗化処理を行う絶縁層表面が耐熱樹脂層である場合は、メッキにより形成される導体層のビール強度等の観点から乾式法で粗化するのが好ましい。一方、粗化処理を行う絶縁層表面が熱硬化性樹脂組成物層である場合は、酸化剤を用いた湿式法による粗化処理により粗化が可能な熱硬化性樹脂組成物層とするのが好ましい。酸化剤による粗化処理は、ビルドアップ工法による多層プリント配線板の製造において導体層を形成する手段として好適に用いられる。
【0085】
酸化剤による粗化処理工程は、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行うことによって行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤としては、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を挙げることができる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に10分〜30分付すことで行われる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%とするのが一般的である。市販されている酸化剤としては、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントP(中和液)が挙げられる。
【0086】
(工程(e))
導体層を形成する工程としては、乾式メッキ法、湿式メッキ法等を挙げることができる。乾式めっき法としては、例えば、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキ法の場合は、無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で導体層を形成する。また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。なお、導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール処理することにより、導体層とのピール強度を向上させ、安定化させることができる。なお、最外層がD層の場合には、D層をそのまま導体層として用いることができる。
【0087】
スルーホール壁面、ビア壁面の導通化処理も、上述の導体層を形成する方法を用いることができる。
【0088】
(工程(f))
導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。
【0089】
[半導体装置]
さらに本発明の複合シートを用いることで本発明の半導体装置を製造することができる。複合シートを用いて製造された多層プリント配線板上の接続用電極部分に半導体素子を接合することにより、半導体装置を製造する。半導体素子の搭載方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装、異方性導電フィルム(ACF)による実装、非導電性フィルム(NCF)による実装などが挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
【0091】
〔測定方法・評価方法〕
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0092】
<銅張積層板の剛性の評価>
銅張積層板の剛性に関しての評価は、銅張積層板の変形量を測定することで行った。作製した銅張積層板を縦1cm×横12cmの大きさにカッターで切り取って評価サンプルとし、当該サンプルを図1に示すように12cm幅のそれぞれ両端から0.5cmの位置で、作業台からの高さが2.5cmとなるような正三角形を両底面とする三角柱を用いて支え、12cm幅の中点における位置に1gの分銅(JIS B 7609)の重心が中点になるようにして置くことで、荷重を加え、非荷重時と比べた中点の位置の変形量を測定した。
【0093】
<比誘電率(εr)の測定>
比誘電率測定用サンプルを長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプルとした。この評価サンプルについてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製HP8362B装置を用い空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて比誘電率を測定した。
【0094】
<熱硬化性樹脂組成物層の密着性の評価>
密着評価用サンプルに、カッターにより切り込みを入れた際に、熱硬化性樹脂組成物層がその接している層から剥離してしまう場合を「×」とし、剥離しない場合を「○」とした。
【0095】
<加工性の評価>
三菱電機(株)製炭酸ガスレーザー(ML605GTWII−P)によりビアを形成した(マスク径1.0mm)。ビア形成後、走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立ハイテクノロジーズ製、型式「SU−1500」)にて熱硬化性樹脂層と垂直な角度から1000倍の倍率でビアを観察しSEM写真を得て、SEM写真から耐熱樹脂層、あるいはガラスクロスの突き出し量を算出した。突き出し量は、ビアホール上部の径を基準点とし、この基準点から耐熱樹脂層、あるいはガラスクロスの先端までの径の中心への水平方向(絶縁層の上面と平行な方向)の直線距離で定義した。上記のようにしてビアを観察し、耐熱樹脂層、あるいはガラスクロスの突き出し量が2μm未満の場合を「○」とし、2μm以上の場合を「×」とした。
【0096】
<実施例1>
[シリカ/ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製]
厚み38μmのPETフィルムに、スパッタリング(E−400S、キャノンアネルバ(株)製)によりシリカ層約500nmをフィルム両面に形成し、シリカ/PETフィルム/シリカの3層フィルムを作製した。
【0097】
[熱硬化性樹脂組成物層/PETフィルムの作製]
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、DIC(株)製「N740」)25部、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量208、ジャパンエポキシレジン(株)製「157S70B75」)25部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量170、DIC(株)製「EXA4710」)35部及びフェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「YX6954BH30」)25部を、MEK15部とシクロヘキサノン15部の混合液に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」)30部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分60%のMEK溶液20部、硬化触媒(四国化成工業(株)製、「2E4MZ」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」)60部、有機リン系難燃剤(三光(株)製、「HCA−HQ」)25部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)をエタノールとトルエンの質量比が1:1の混合溶媒に溶解した固形分15%の溶液10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。支持体である厚み25μmの離型PETフィルム上に上記ワニスをダイコータにより塗布し、熱風乾燥炉を用いて溶剤を除去した。これにより、厚み25μmの離型PETフィルムと厚みが40μmである熱硬化性樹脂組成物層からなる樹脂シートを作製した。
【0098】
[複合シートの作製]
上記のシリカ/PETフィルム/シリカの両面のシリカ層に上記樹脂シートの熱硬化性樹脂組成物層が接するようにし、バキュームアップリケーター(ニチゴー・モートン(株)製)を用いてラミネートした。ラミネートは、20秒間減圧した後、20秒間プレスすることにより行った。上面90℃、下面70℃で貼り合わせることで行った。熱硬化性樹脂組成物層/シリカ/PETフィルム/シリカ/熱硬化性樹脂組成物層の厚みは119μmであった。
【0099】
[銅張積層板の作製]
支持体を剥離した上記複合シートを2枚重ね合わせ、さらにJTC銅箔(日鉱マテリアルズ(株)製、厚み12μm)で、その銅箔のM面が熱硬化性樹脂組成物層と接するように重ね合わせた複合シートの両面をはさみこみ、高温真空プレス装置(北川精機(株)製)を用いてプレスした。プレスは、温度を130℃、圧力を10kgfで30分間加圧した後、更に温度を190℃、圧力を30kgfで30分間加圧して熱硬化性樹脂組成物層を硬化させ、銅張積層板を作製した。銅張積層板の厚みは262μmであった。
【0100】
[比誘電率測定用サンプルの作製]
上記複合シートを二枚重ね合わせ、該複合シートの熱硬化性樹脂組成物層同士を向かい合わせて高温真空プレス装置(北川精機(株)製)を用いてプレスした。プレスは、温度を130℃、圧力を10kgfで30分間加圧した後、更に温度を190℃、圧力を30kgfで30分間加圧して熱硬化性樹脂組成物層を硬化させ、比誘電率測定用サンプルを作製した。
【0101】
[密着評価用サンプルの作製]
18μm厚の銅層で回路が形成されているガラスエポキシ基板の銅層上をCZ8100(アゾール類の銅錯体、有機酸を含む表面処理剤、メック(株)製)処理にて粗化を施した。次に熱硬化性樹脂組成物層が銅回路表面と接するようにし、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500((株)名機製作所製)を用いて、基板の両面に積層した。積層は30秒間減圧して気圧を13hPa以下で行った。さらに、無機酸化物層を積層した耐熱樹脂層を、無機酸化物層と熱硬化性樹脂組成物層が重なるように、同条件にて両面に貼り合わせた。その後、180℃で30分間熱硬化し絶縁層を形成し、熱硬化性樹脂組成物層の密着評価用サンプルを作製した。
【0102】
[ビアの形成]
上記複合シートの片面の離型PETフィルムを剥離し、(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、厚さ0.8mmの銅張積層板に積層した。積層は、熱硬化性樹脂組成物層と銅張積層板の銅層が接するように、温度120℃、圧力7kgf/cm、気圧5mmHg以下の条件で両面にラミネートし、さらに連続的に温度120℃、圧力5kgf/cmの条件でSUS鏡板による熱プレスすることにより行われた。その後、オーブンにて、100℃で30分、続いて180℃で30分熱処理することで、熱硬化性樹脂組成物層を硬化させた。その後、離型PETフィルムを剥離し、熱硬化性樹脂組成物層上からビア形成を行った。レーザー加工条件は、パルス幅4μs、エネルギー0.33mj、ショット数1回にて行った。
【0103】
<実施例2>
[複合シートの作製]
PETフィルムの代わりに、厚み6μmのポリフェニレンサルファイドフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同じ工程で複合シートを作製した。その複合シートの厚みは87μmとなった。
【0104】
[銅張積層板の作製]
PETフィルムの代わりに、ポリフェニレンサルファイドフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、銅張積層板を作製した。銅張積層板の厚みは198μmであった。
【0105】
[比誘電率測定用サンプルの作製]
PETフィルムの代わりに、ポリフェニレンサルファイドフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比誘電率測定用サンプルを作製した。
【0106】
[密着評価用サンプルの作製]
PETフィルムの代わりに、ポリフェニレンサルファイドフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、密着評価用サンプルを作製した。
【0107】
[ビア形成]
PETフィルムの代わりに、ポリフェニレンサルファイドフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ビア形成を行った。
【0108】
<比較例1>
[銅張積層板の作製]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で銅張積層板を作製した。銅張積層板の厚みは260μmであった。
【0109】
[比誘電率測定用サンプルの作製]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比誘電率測定用サンプルを作製した。
【0110】
[密着評価用サンプルの作製]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、密着評価用サンプルを作製した。
【0111】
[ビアの形成]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ビア形成を行った。ただし、レーザー加工条件は、パルス幅4μs、エネルギー1.2mj、ショット数2回にて行った。
<比較例2>
[銅張積層板の作製]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で銅張積層板を得た。銅張積層板の厚みは196μmであった。
【0112】
[比誘電率測定用サンプルの作製]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例2と同様にして、比誘電率測定用サンプルを作製した。
【0113】
[密着評価用サンプルの作製]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例2と同様にして、密着評価用サンプルを作製した。
【0114】
[ビア形成]
シリカを積層させなかったこと以外は、実施例2と同様の方法でビア形成を行った。ただし、レーザー加工条件は、パルス幅4μs、エネルギー1.2mj、ショット数2回にて行った。
【0115】
<比較例3>
[銅張積層板の作製]
実施例1の熱硬化性樹脂組成物層と同組成のワニスを、(株)有沢製作所製1015ガラスクロス(厚み15μm)に含浸し、縦型乾燥炉にて140℃で5分間乾燥させプリプレグを作製した。プリプレグの残留溶剤量はガラスクロスを含まない熱硬化性樹脂組成物層中0.8wt%、プリプレグの厚みは122μmであった。その後、当該プリプレグを複合シートの代わりに用いて、実施例1と同様にして銅張積層板を作製した。銅張積層板の厚みは268μmであった。
【0116】
[比誘電率測定用サンプルの作製]
当該プリプレグを複合シートの代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比誘電率測定用サンプルを作製した。
【0117】
[密着評価用サンプルの作製]
当該プリプレグを複合シートの代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、密着評価用サンプルを作製した。
【0118】
[ビア形成]
当該プリプレグを複合シートの代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でビア形成を行った。ただし、レーザー加工条件は、パルス幅4μs、エネルギー1.2mj、ショット数2回にて行った。
【0119】
実施例及び比較例の結果を表1、表2に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
表1、表2から、プラスチックフィルム上に無機酸化物層を積層して銅張積層板の作製を行った場合には、変形量が減少しており、剛性が得られることがわかる。さらには、無機酸化物層を形成することで、比誘電率が低下し、樹脂との密着性が得られ、加工性も良好となることがわかる。
【0123】
表3に実施例1、比較例1、比較例3のレーザー加工性の評価結果を示し、表4に実施例2、比較例2、比較例3のレーザー加工性の評価結果を示す。
【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
表3、4より、実施例1、2は良好なビア形状となっており、突き出しがないことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
多層プリント配線板を製造する際に、機械強度、加工性、誘電特性、薄膜化を可能とする剛性に優れる複合シート、金属張積層板、多層プリント配線板、半導体装置を提供できるようになった。更にこれらを搭載した、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機等の乗物も提供できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱樹脂層(A層)、無機酸化物層(B層)、熱硬化性樹脂組成物層(C層)を含有することを特徴とする、複合シート。
【請求項2】
耐熱樹脂層(A層)の少なくとも片面に無機酸化物層(B層)が形成され、その両面に熱硬化性樹脂組成物層(C層)が形成されたことを特徴とする、複合シート。
【請求項3】
耐熱樹脂層(A層)がプラスチックフィルムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合シート。
【請求項4】
耐熱樹脂層(A層)が、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルサルホンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項5】
無機酸化物層(B層)がシリカ、アルミナ、酸化クロムから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項6】
耐熱樹脂層(A層)の厚みが2〜50μmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項7】
無機酸化物層(B層)の厚みが0.00001〜5μmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項8】
更に、金属層(D層)を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項9】
金属層(D層)が、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、クロム、ニッケル・クロムアロイから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項8記載の複合シート。
【請求項10】
無機酸化物からなる絶縁物層(B層)がスパッタ又は/及び蒸着、イオンプレーティングにて形成されたことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項11】
金属層(D層)がスパッタ又は/及び蒸着、イオンプレーティング、金属箔にて形成されたことを特徴とする、請求項8〜10のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項12】
比誘電率が0.01〜3.37であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合シート。
【請求項13】
請求項1〜12の複合シートを用いて製造された金属張積層板。
【請求項14】
請求項1〜12の複合シートを用いて製造された多層プリント配線板。
【請求項15】
請求項1〜12の複合シートを用いて製造された半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−143718(P2011−143718A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280256(P2010−280256)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】